【表紙 題箋】
瓢軍談五十四場 貮編
【資料整理ラベル】
SMITH-LESOUEF
JAP
128(2)
瓢(ひさご)軍(ぐん)談(だん)五(ご)十(じふ)四(よ)場(じやう)
二十八
武智(たけち)右馬之助(うまのすけ)
浮橋(うきはし)を 造(つく)り
勢田(せた)をわたす
瓢(ひさご)軍(ぐん)談(だん)五(ご)十(じふ)四(よ)場(じやう)
一英齋
芳艶画
二十九
久吉(ひさよし)京都(きやうと)の
密使(みつし)を
捕(とら)ゆる
冨士田源八
瓢(ひさご)軍(ぐん)談(だん)五(ご)十(じふ)四(よ)場(じやう)
第三十
四方傅(しはうでん)左二馬頭(さじまのかみ)
久吉(ひさよし)を追(お)ふて
勇力(ゆうりき)を顕(あらは)す
四方傅左二馬頭
眞柴久吉
《割書:実、》淺田初右エ門
一英齋
芳艶画
瓢(ひさご)軍(ぐん)談(たん)五(ご)十(しふ)四(よ)場(じやう)
一英齋
芳艶画
三十一
佐藤(さとう)正清(まさきよ)
四方傳(しはうでん)左二馬(さしまの)
頭(かみ)を討(うつ)
佐藤正清
四方傳左二馬頭
瓢(ひさご)軍(ぐん)談(だん)五(ご)十(じふ)四(よ)場(じやう)
一英齋
芳艶画
三十二
百姓(ひやくしやう)太之助(たのすけ)
久吉(ひさよし)の陣中(ぢんちう)へ
瓜(うり)を献(たてまつ)る
百姓太之助
真柴筑前守久吉
瓢(ひさご )軍談(ぐん だん) 五十四(ご じふ よ) 場(じやう)
一英齋
芳艶画
三十三
久吉(ひさよし)道秀(ひで)
天王山(てんのうざん)を
あらそふ
道秀勢
折尾宇助
真柴勢
瓢(ひさご )軍談(ぐん だん) 五十四(ご じふ よ) 場(じやう)
三十六
武智(たけち)十左衛門(じふざゑもん)
偽(いつはつ)て死人(しにん)と成(な)り
久吉(ひさよし)に近付(ちかづ)く
武智十左衛門
真柴筑前守久吉
一英齋
芳艶画
瓢(ひさご )軍談(ぐん だん) 五十四(ご じふ よ) 場(じやう)
三十八
右馬之助(うまのすけ)
馬(むま)をもつて
湖水(こすい)を渡(わた)す
武智右馬之助
一英齋
芳艶画
瓢(ひさご )軍談(ぐん だん) 五十四(ご じふ よ) 場(じやう)
一英齋
芳艶画
三十九
折尾宇助(おりをうすけ)
内藤由良(ないとうゆら)の
すけを生(いけ)どる 折尾宇助
内藤由良之助
瓢(ひさご )軍談(ぐん だん) 五十四(ご じふ よ) 場(じやう) 宅間玄蕃 一英齋
芳艶画
四十一
英雄(ゑいゆう)勇名(ゆうめい)を
賤(しつ)ケ(が)岳(たけ)【嶽】に
とゞむ
和賀川清秀
一英齋
芳艶画
瓢(ひさご )軍談(ぐん だん) 五十四(ご じふ よ) 場(じやう)
四十二
生笹(なまざゞ)の指物(さしもの)
北兵(ほくへい)を
恐(おそ)れしむる
佐藤虎之助
瓢(ひさご )軍談(ぐん だん) 五十四(ご じふ よ) 場(じやう)
四十三
賎(しづ)ケ(が)岳(たけ)【嶽】七本 鎗(やり)
の内(うち)佐藤富久(さとうふく) 羽伊宮小左エ門
知間(ちま)高名(かうめい)
山木將監
富久知間石松
佐藤正清
一英齋
芳艶画
一英齋
芳艶画
瓢(ひさご )軍談(ぐん だん) 五十四(ご じふ よ) 場(じやう) 吉良野近平
四十四
賎(しづ)ケ(が)岳(たけ)【嶽】七 本(ほん)
鎗之内(やりのうち)吉良野(きらの)
賀津谷(かつや)高名(かうみやう)
賀津谷捨右エ門
咲奈井作吉 宅間源七郎
矢鳥谷吉左エ門
瓢(ひさご )軍談(ぐん だん) 五十四(ご じふ よ) 場(じやう)
四十五 和志見堅治
賎(しづ)ケ(が)岳(たけ)【嶽】七本
鎗之内(やりのうち)和毛坂(わけざか)
新内(しんなひ)高名(かうめう)
市川藤助
和毛坂新内
一英齋
芳艶画
瓢(ひさご )軍談(ぐん だん) 五十四(ご じふ よ) 場(じやう) 一英齋
芳艶画
四十六 畑切捨作員元
賎(しづ)ケ(が)岳(たけ)【嶽】七本
鎗之内(やりのうち)捨作(すてさく)
萬一郎(まんいちらう)高名(かうめい)
赤井七兵衛
歳島仁兵衛
中井四郎左エ門
佐藤萬一郎
八十彦弥九右エ門
【絵の縁布に】
【丸の中に落款風文字】
蔦吉板
瓢(ひさご )軍談(ぐん だん) 五十四(ご じふ よ) 場(じやう) 宅間玄蕃正盛
四十七
正盛(まさもり)一騎(いつき)
久吉(ひさよし)を
襲(おそ)ふ
真柴筑前守久吉
一英齋
芳艶画
瓢(ひさご )軍談(ぐん だん) 五十四(ご じふ よ) 場(じやう)
四十八
久吉(ひさよし)の伏兵(ふせぜい)
宅間玄蕃頭(たくまけんばのかみ)
を生捕(いけどる)
宅間玄蕃頭
一英齋
芳艶画
瓢(ひさご )軍談(ぐん だん) 五十四(ご じふ よ) 場(じやう)
四十九
久長(ひさなが)久次(ひさつぐ)
和気(わけ)の城(しろ)を
責(せむ)る
知宇曽羽部篭城
一英齋
芳艶画
瓢(ひさご )軍談(ぐん だん) 五十四(ご じふ よ) 場(じやう) 一英齋
芳艶画
第五十
左砂正成(さつさまさなり)
峯(みね)越(こ)し
の図(づ)
左砂陸奥守正成
瓢(ひさご )軍談(ぐん だん) 五十四(ご じふ よ) 場(じやう)
五十二
他伝政峯(たてまさみね)降参(かうさん)
して
はからず久吉の
陣営(ぢんえい)を見聞(けんもん)す
他伝政峯
真柴筑前守久吉
一英齋
芳艶画
瓢(ひさご )軍談(ぐん だん) 五十四(ご じふ よ) 場(じやう) 一英齋
芳艶画
五十三
保条直氏(ほうでうなほうぢな)
佐枝時家(さえだときいへ)に
着(つき)て降参(かうさん)を乞(こふ)
保条直氏
【武士の持つ旗】
降参
【右下ラベル】
89
仙台林子平先生著
三国通覧輿地路程
全図《割書:共五 附|紙》略説一冊
東都書林申椒堂蔵版
此(この)図(づ)は朝鮮国(てうせんこく)琉球(りうきう)国 蝦夷(えぞ)国 無人島(むにんじま)等(とう)の海陸(かいりく)を天(てん)の分野(ぶんや)に里数(みちのり)を配当(あわ)して
度(ほど)を計(はか)り山嶽(さんがく)江河(こうが)城地(じやうち)郷邑(がうゆう)遺蹟(ゐせき)名勝(めいしやう)湊(みなと)駅(むまつぎ)まで設色(さいしき)を以(もつ)て目標(めじるし)をわかち且(かつ)
其(その)国々(くに〳〵)通俗(つうぞく)の文字(もんじ)器財(きざい)人物(じんぶつ)の風俗(ふうぞく)鳥獣(てうじう)の形状(かたち)に至(いた)るまで悉(ことごと)く書(かき)あらはす
可謂(いゝつべし)実(じつ)に今古(こんこ)未発(みはつ)一珍(いつちん)なる物(もの)なり于時天明丙午立夏日梓既成
三国通覧図説 図五枚附 全
三国通覧図説序
図記之用其博矣哉義皇画
卦易道以起夏后図鼎九志
以顕若乃秦府所蔵漢相所
収知波天下阨塞戸口多少土
地風気之殊異民俗吏治之利
苦鳥獣草木之所産衣服器
具之所用皆聚諸此燦然明
備如足至其土目覩其物唯図
書之功也豈不博且大哉今見
林氏所著三国図説薄海之
外万里之遼波濤所阻舟航
所途皆載此書而其土地之殊
風俗之別職貢之法服属之事
至我賓接之礼羈縻之道詳
悉審到先所謂足其土目其
物此書有焉是豈一家所秘
一人所玩哉刊之行於天下或
蔵之御府為後王遇詩夷狄
之汰亦豈不美哉
国家有文之治継跡夏暃九
物之録周官職方説則此書
之功一世尊奉千歳尸祝可
不謂偉哉因其請序言図
記之用為弁数言者尓
天明 丙午(1786)之夏
東都侍御毉
桂川甫周国瑞【印:国瑞】【印:公鑑】
三国通覧図説
題初
大哉地理ノ肝要ナルコト。蓋廊廟ニ居テ国事ニ与ル者地理ヲ
不_レ知トキハ治乱ニ臨テ失有。兵士ヲ提テ征伐ヲ事トスル者地理
ヲ不_レ知トキハ安危ノ場ニ失有。跋渉スル者地理ヲ不_レ知トキハ遅速ノ際
ニ失有。人々能思惟スベシ。是ヲ知コト難キニアラズ是ヲ知
コト難キニアラズ。抑世ニ地理ヲ言者不_レ少。然レトモ或ハ万国
ノ図ニ走リ亦ハ本邦ノ地ニ限レリ。小子竊ニ憶。皆過不及
歟ト此故ニ今新タニ本邦ヲ中ニシテ朝鮮。琉球。蝦夷。及ビ
小笠原嶋《割書:即伊豆ノ|無人嶋也》等ノ図ヲ明スコト小子微意アリ。夫此三
国ハ壌ヲ本邦ニ接シテ実ニ隣境ノ国也。蓋本邦ノ人。無_二貴
賤_一無_二文武_一知ベキモノハ此三国ノ地理也是ヲ諳ルトキハ治
乱ニツイテ不_レ迷不_レ疑。万機施シ易シテ時有テ力ヲ陳ベク
時有テ知テ楽ムベシ。且政ニ従テ三国ニ入ル人有トモ此図ヲ
懐ニスルトキハ三国ノ分内了然トシテ目睫ニ在ガ如ク泰
然トシテ彼コニ至ルベシ是小子此図ヲ作テ世人ニ示ス
所ナリ。小ク武術ニ補アルニ似タリ
万国ノ輿地。知ニ如ハナシ然レドモ強テ泥ムトキハ必鑿
ス。只其方位。大小。寒暖。強弱。等ノ大略ヲ知テ足ベシ
本邦ノ図ハ只其四方渡海ノ国ノ港口耳図シテ全形ヲ不_レ挙。
是元ヨリ本邦ノ全図。世ニ多クシテ且近頃。水府ノ赤水著
ス所ノ詳密ノ図アル故也。本邦ノ地理ヲ知ント欲スル者
ハ赤水ノ図ニ因ベシ
此数国ノ図ハ小子敢テ杜撰スルニアラズ。朝鮮ノ図ハ朝鮮
大象胥ノ伝ル所ノモノ。﨑陽人楢林氏秘蔵ノ珍図アリ是
ヲ以テ拠トス。琉球ハ元ヨリ中山伝信録アリ是ヲ証トス
蝦夷ハ古ヨリ自己有スル所一図アリ今又新タニ三図ヲ
得タリ。大同小異ナレトモ皆以テ証トスルニ足レリ加之白
石先生ノ蝦夷志及ビ淘金【左ルビ:カネホリ】家ノ著セル北海随筆等ヲ以テ
考定メ間亦北海舟人ノ説ヲ交記ス耳。無人嶋ハ﨑陽ノ嶋
谷家ノ記録ニ拠レリ一モ私照ナシ
三国海陸道路ノ里数ハ皆本邦ノ道法。三十六町一里ヲ以テ
記ス異国ノ道法ヲ不_レ用。是本邦ノ人暁シ易カラン為也
朝鮮ハ清ノ法ニ俲テ。本邦ノ三町半許ヲ以テ一里ト
ス朝鮮ノ十里ハ即本邦ノ一里ナリト知ヘシ。琉球ハ
即本邦ノ三十六町一里ヲ用ユ。蝦夷ハ本邦ノ四十九
町ヲ以テ一里ト為ト云ドモ其国元ヨリ都城駅亭等ノ
処ナキ故其里数ヲ量リ定メタル人モ無レバ其詳ナ
ルコト得テ不_レ可_レ知也此ニ記ス所ハ其乗馴タル舟人ノ
説ニシテ大概ノ測量ナリト知ベシ
朝鮮。琉球。蝦夷。及ビ小笠原嶋。幷ニカラフト。ラ(ra)ツ(tsu)コ(ko)嶋。カムサ
スカ。等数国接壌ノ形勢ヲ見セシメン為ニ別ニ一面数国
ノ小図ヲ作テ四図ニ相合シテ都テ五図トス此小図ヲ見
テ接壌ノ方位ヲ知ベシ
計五首
天明 五年(1785)乙巳秋九月 仙台(sinday) 林子平(Rinsfie)述 【印:越智友直】【印:不朽者文】
○朝鮮八道 国図ハ別ニ一枚ニ作テ此巻ニ附
其国九州ノ北ニ在。肥(bi)前(zen)国 唐津(タウシン)【左ルビ:カラツ】ヨ(jo)リ(ri)壱岐嶋エ海上十三里。壱
岐嶋ヨリ対馬嶋エ海上四十八里。対馬嶋。豊ノ浦ヨリ朝鮮
ノ東港。釜山浦エ四十八里ト云ドモ四十里ニ不_レ足也
其国。南北ニ斜ニ長ク東西ニ陜シ大概南北日本道三百里。東
西八九十里ノ国也
其国三十五度ヨリ四十三度ニ係ル○釜山浦ハ三十六度。王
都ハ三十八度
古代。新羅(Siraki)【左ルビ:シラキ】。高麗(Koma)【左ルビ:コクリ】。百済(kutara)【左ルビ:クタラ】。ト云亦ハ三韓ト云或ハ雞林。楽浪ナドヽ云
シモ今ノ朝鮮ノコト也
其国ノ西方ト北方ニ二ッノ長江アリ即チ朝鮮地境ノ尽ル処
也。此両江ノ中間ニ白登山。長白山等ノ大山有テ地勢ヲ隔
ル故。唐山(カラ)ト陸地ノ通路ハ無_レ之ト云トモ其実ハ遼東ト地続
ニシテ離レ嶋ニハアラズ
其国ノ両都ト云ハ京畿道ノ王城ト慶尚道ノ普州也○国ヲ
八道ニ分ツコト左ノ如シ
京畿道(ケンキタイ)二十八管 四牧。九府。八郡。五令。十二監。六駅。六堡。海水
軍判官二。番船九艘。中船九艘。水使一。検使一。万戸二。
江原道(カアンタイ)二十六管 一牧。六府。七郡。三令。九監。四駅。五堡。検使一。
万戸二。
黄海(バハイ)道二十四管 二牧。四府。七郡。四令。三駅。七堡。兵使一。検使
三。万戸五。
忠清(チグシヤグ)道五十四管 四牧。一府。十一郡。一令。三十七監。六駅。六堡。
番船二十艘。中船二十艘。兵使一。虞候二。
全羅(テルラ)道五十七管 四牧。四府。十二郡。六令。三十一監。六駅。十八
堡。番船四十二艘。中船十二艘。兵使二。水使二。虞候二。検使四。
万戸十三。権官一。
慶尚(ケクシヤグ)道六十九管 四牧。十一府。十四郡。一令。三十四監。十一駅。
二十四堡。番船五十六艘。中船五十一艘。兵使二。虞候二。水使
二。検使二。万戸十九。権官六。
平安(ベアン)道四十二管 二牧。十府。十七郡。八令。五監。二駅。十八堡。兵
使一。虞候一。判事一。検使十一。万戸七。権官二十九。
咸鏡道(ハミキヤンタイ)三十二管 二牧。十五府。四郡。二監。三駅。三堡。北兵使一。
南兵使一。虞候二。検使十二。万戸十八。権官二十一。
都テ八道也
此国ノ西辺義州ヨリ遼東エ至ル日本道五十里。北京エ至ル
同二百五十里也
此国大閤征伐ノ頃迄ハ風儀懦弱ニシテ武備ノ沙汰モ当世
ノ如クニ無リシ故。八道ヲ只三ヶ月ノ間ニ陥レラレ其後大
ニ悔懲シト覚ヘテ代々武ヲ講シテ今ハ水陸ノ備。能整レリ
ト聞及ベリ水営モ十四ケ処有テ平生水戦ヲ習ハシムト
云リ況ヤ陸ヲヤ是等ノコトハ俗諺ノ雨降テ地堅マルト云
譬ノ如シ
釜山浦ニ対馬ノ陣屋有テ平生士卒数百人ヲ対州ヨリ遣シ
置也此等ノコト即チ日本エ手ヲ下(サゲ)シ所ナルヘシ
其国常行ノ銭ヲ常平通宝ト云《割書:小銭十|ニ当》
其国全ク清ノ正朔ヲ奉レドモ本邦ト通信スル書ニハ憚テ清ノ年号ヲ不_レ用
只支干ヲ記シテ某ノ月ト書スル也是亦日本ヘ手ヲ下(サゲ)シ所ナルベシ
其国ノ人物ハ都テ日本唐山等ノ人ヨリ壮大ニシテ筋骨モ
ツヨシ食量モ大概日本ノ二人ノ食ヲ朝鮮ノ一人ニ充ベ
シ然レドモ其心機アクマテ遅鈍ニシテ不働也此故ニ太閤
ノ征伐ニヨク負タリ
其国ニテ作レル文字ヲ諺文ト云。一字一音也是ヲ本邦ノ以(イ)
呂(ロ)波(ハ)ニ配スレバ其文。左ノ如シ
イ ロ ハ ニ ホ ヘ ト チ リ ヌ ル ヲ ワ カ
【カタカナの左に該当するハングル文字】
ヨ タ レ ソ ツ ネ ナ ラ ム ウ ヰ ノ オ ク
【カタカナの左に該当するハングル文字】
ヤ マ ケ フ コ エ テ ア サ キ ユ メ ミ シ
【カタカナの左に該当するハングル文字】
エ ヒ モ セ ス
【カタカナの左に該当するハングル文字】
右伝写ノ誤モアルベキナレドモ伝ラレシ侭ニ書記ス
也識者ノ比校ヲ侍ベシ
此国ノ人物ハ代々本朝エ来聘シテ諸人ノ見ル所ナレバ其
人物ノ図ハ不挙○朝鮮王ヨリ奉幣ノ物ハ人参。虎皮。豹皮。青
■【㤗泰ヵ】皮。魚皮。繻子。白綿紬。鷹子。駿馬。等也其報物ハ貼金ノ屏風。描金
ノ鞍。■【攃擦ヵ】金ノ料紙箱。同硯箱。染羽二重。乱茶宇ノ類也。正使。副使。従
事ノ三使ヘハ各白銀五百枚。綿三百把。上々官エ白銀二百
枚ヅヽ。中下官ノ者ドモヘ銀千枚ヲ賜フ也是献酬ノ大略也
鴻荒ノ世ニ其国ヲ開ク者ヲ檀君ト云。世ヲ続コト千余年。其後
唐山ヨリ入テコレヲ治ルハ箕子ヲ始トス。初テ朝鮮ノ号
アリ。箕子ニ代テ其地ニ王タル者ヲ衛満ト云。其後孫。或ハ
唐山ニ入。或ハ不入。終ニ内乱シテ其国分レテ三トナル。所謂三
韓也。其後新羅。二韓ヲ滅シテ一統ス又其後高麗ノ王氏。新羅
ヲ滅シテ一統ス又其後高麗ノ李氏。王氏ニ代テ三韓ヲ統
有テ再ビ朝鮮ノ号ニ復シテ今ニ至レリ。都テ上檀君ヨリ
下今世ニ至ル迄ノ事及ビ神功皇后征伐以来。其国代々。本
朝ニ調庸貢献シタルアリサマ。又ハ太閤征伐ノ事ナド悉
ク記スベキナレドモ文長ケレバコレヲ略ス。且其治乱興廃
ノ詳ナルコトハ東国通鑑アリ。コレニ由テ知ベシ
右朝鮮略説
○琉球《割書:三省|三十六嶋》国図ハ別ニ一枚ニ作テ此巻ニ附
琉球一名龍虬。或ハ悪鬼納嶋(オキノシマ)。亦 屋其惹(オキノ)嶋
其国南北五日半《割書:日本道六|十里許》東西一日余《割書:日本道十|四五里》此外ニ三十
六嶋アリ
中山ヲ中頭省ト云属府十四
山南ヲ嶋窟省ト云属府十二
山北ヲ国頭省ト云属府十
其国北極ノ出地二十五度二十六度ニシテ女牛ノ分野也
其国薩摩ノ南。百四十里ニアリ
奇界。大嶋。徳ノ嶋。等ヲ薩人。道ノ嶋ト称ス
其国。主城ノ在ル地ヲ首里ト云
其国。暖気ニシテ稲粱再熟シ冬月霜雪ヲ不知也
其国。郭府ノ在所ヲ間切(マキリ)ト称ス
其国。王子ト称スルハ主ノ子弟也。位。正一品○按司ハ在所持
ニテ処々ノ領主也。本邦ノ大名ノ如キモノ也。位従一品《割書:大|概》
《割書:采地二|千石也》○三司官親方ト云ハ天曹司一員。地曹司一員。人曹
司一員。是即本邦ノ三公ノ如キモノ也。位各正一品○親方
ト云ハ位従二位○親雲上ト云ハ三品ヨリ七品マデ各正
従アリ○里之子ハ一村一郷ヲ領スル貴族ノ嫡子ニテ部
屋住也位正従八品○筑登之ハ正従九品
其国。常行ノ銭ハ本邦ノ寛永通宝也《割書:古ヨリ国|銭ナシ》
其国。小ニシテ日本。唐山(カラ)両大国ノ間ニ摂(ハサマ)ル然ル故ニ両国ニ
服従シテ両朝エ聘使ヲ奉ル。日本エ聘スルニハ日本ノ年
号ヲ用ヒ。唐山エ聘スルニハ唐山ノ年号ヲ用ユ。其国力不_レ
足バ也然レドモ唐山エ聘スルコトヲバ日本エ不_レ秘。日本エ聘
スルコトヲバ唐山エ秘ス。是ヲ以テ見レバ唐山ノ威権。日本
ヨリ重シトモ言ベキ歟
其国中ニ伊勢大神宮。八幡。熊野。天満宮。等ヲ祠リシ社。数多ア
リト云リ
今ノ琉球国主ハ正シク八郎為朝ノ血脉ナリト其国人モ称
スル由也。琉球開闢ノ主ハ天孫氏ト云テ世々国主タリ。世
ヲ続コト数千年。徳衰テ諸按司コレニ叛クツイニ賊臣ノ為
ニ弑サレテ其位ヲ簒(ウバ)ハル添浦按司其賊ヲ誅ス国人コレ
ヲ推テ君位ニ登ラシム是ヲ舜天王ト云。主ハ即日本国鎮
西八郎為朝ノ子也。其母ハ大里按司ノ妹也。二條帝ノ永萬
年中。為朝海ニ浮テ遊テ琉球ニ至ル国人其武勇ニ畏レ服
ス。ツイニ大里按司ノ妹ニ相カタライテ舜天王ヲウム是
則異朝ニテハ宋ノ孝宗ノ乾道二年ノコト也其後為朝。故土
ヲ思フ心禁ジガタク終ニ日本エ皈レリ。為朝。日本エ皈ル
ノ後ハ其母ニ従テ添浦ニテ成長ス十六歳ニシテ器量骨
【「添浦」は「浦添」の誤・以降同】
柄常人ニスグレシカバ国人ノ為ニ推貴ビラレテ添浦ノ
按司トナリ。二十二歳ノ時乱賊ヲ誅シテ国主トナレリ。是
ヲ始トシテ今ノ世迄其統脉綿連トシテ変革ナシト云リ
第一舜天王在位五十一年薨壽七十二
第二舜馬順凞在位十一年
第三義本在位十一年
第四英祖在位四年
第五大成在位九年
第六英慈在位四年
第七玉成在位三十三年
第八亜威在位十三年
第九察度在位四十六年
此時代。中山ノ主。始テ明ノ封爵ヲ受○明ノ大祖洪武二十
八年○本朝後小松帝応永二年
第十武寧在位十年
第十一尚思紹在位十六年
第十二尚巴志在位十八年
此時代。山南。山北。ヲ合セテ中山一統ノ琉球トナル
第十三尚志在位五年
第十四尚思達在位五年
第十五尚金福在位四年
此時代。琉球人来テ義政将軍ニ物ヲ献ス。是ヨリシテ其国
人年々摂州兵庫ノ浦エ来テ交易ヲナスト云。琉球使ノ本
朝ニ来ルコトハ此時ヲ始トスベシ。後花園帝ノ宝徳三年也
第十六尚寧威在位六十月
第十七尚眞在位五十年
第十八尚清在位二十九年
第十九尚元在位二十九年
第二十尚寧在位三十二年
此時代。国主。薩摩ノ軍ニ生捕レテ本朝ニ在コト凡四年ニシ
テ国ニ皈ルコトヲ得タリ此時ヨリ世々本朝ニ臣服ス〇明
神宗ノ萬暦三十七年○本朝後陽成帝ノ慶長十四年也
第二十一尚豊在位二十年
第二十二尚賢在位七年
第二十三尚質在位二十一年
第二十四尚貞在位四十一年
第二十五尚益在位三年
本朝正徳二年薨○是ヨリ後今世迄。四主ノ名字及ビ在位
ノ年数等不詳。追加スベシ
其国主。代替ノトキハ本邦ヨリ嗣封【左ルビ:ツギメ】ノ儀ヲ命セラルヽナリ亦
清主ヨリモ嗣封ノ儀ヲ命シテ冊封使ヲ遣シ印璽ヲモ賜
フ也其印文。左ノ如シ猶委キコトハ中山伝信録及ビ琉球事
略等ニ詳ナリ
【印の図】
琉球国
王之印
左ハ満。右ハ篆。大サ如図
前文ニ言シ如ク清主ヨリハ冊封使ヲ遣シ印璽ヲ与ヘラルレドモ
只一代一度ノ大礼耳ニシテ平生唐山ニ馴親マザル故ニ唐山
ノ事ニハ習ハザル也本邦トハ境モ近ク其上薩琉ノ交リシゲキ
故。自然ニ大国ノ風ニ化セラレテ。今ハ其国ニテ謡ヲモウタイ。能。
囃子ヲモ奥行シ或ハ大橋。玉置。等ノ日本流ノ書法モ行ハレ
又本邦ノ平仮名ヲ其国一統ニ用ル也然ル故ニ和歌ヲモ。ヨミ
覚ヘシ由也近ゴロ明和元年ニ来聘使タリシ読谷山王子朝恒ノ
詠ゼシ和歌アリ聞シ侭ニ此ニ記ス琉球ノ本邦ニ化服シタル
コト推テ知ベシ
明和元年の秋賀慶の使として武蔵の国へ趣ける時
肥前の松浦といふ所に至り追風なくて十日余り舟を
停し頃よめる
読谷山(ヨミタンザ)王子 朝恒(トモツネ)
追手ふく風たよりを松浦かた幾夜うき寝の数つもるらん
伏見の里に月を見て 同
いつもかくかなしきものか草まくらひとりふしみの夜半の月かけ
深草にて 同
降雪にうつらの床のうつもれて冬もあはれはふかくさのさと
不二山を 同
人問はゝいかゝかたらん言の葉も及はぬふしの雪のあけほの
浮嶋が原にて 同
ふしの根の雪吹おろす風見へて一むらくももる浮しまかむら
霜月の初つかた武蔵の国に至りかの取に月を見て
同
旅ころもはる〳〵来ても故さとにかはらぬものはむかふ月かけ
祝 同
波かせもおさまる君か御代なれはみち遠からぬ日の本の国
右朝恒ハ本朝ノ学ニ熟シタル故。其ヨミ歌モ和歌ノ躰ヲ
備ヘタリト云リ。下ノ一首ハ先年八丈嶋ヘ漂着シタル。琉ノ大嶋
船主ノ歌也本朝学ニ不熟ナル故。悉ク片言ニシテ通シ難シ傍
訓ヲ見テ歌ノ意ヲ知ベシ其歌ハ豆州御代官ノ芳意ニア
ヅカリシヲ謝スル意也
中栄(ナカヱイ)《割書:大嶋人也中栄|ハ其名ナリ》
ながれ舟。よゑ(故)に御(ヲン)かみ(上)。さま(様)おが(拝)で。お(仰)よせ う(得)る事の。う(嬉キナリ)なつかしゆへん
右一首ハ琉ノ邊土迄モ本朝ノ風ニ化シ タル証ヲ見スル為ニ挙ル也
其国ノ人物ハ時々本朝ニ来聘シテ諸人ノ見ル所ナレバ其図ヲバ挙ザ
ルナリ○琉球主ヨリ進献ノ物ハ太刀。駿馬。壽帯香。龍涎香。香餅。
太平布。芭蕉布。青貝卓。羅紗。縮緬。泡盛酒等也其報賜ハ白銀五
百枚。綿五百把。正使ヘ銀二百枚。時服十。惣人数ヘ銀三百枚ヲ賜フ
也是献酬ノ大略也
鴻荒ノ世ニ其国ヲ開ク者ヲ天孫氏ト云。世ヲ続コト数千年。徳衰テ内
乱シ其国分レテ三トナル所謂。山南。中山。山北也其後。中山ノ主。山南。山北
ヲ合テ一統シタル次第。又唐山ノ冊封使。其国ニ至レル式。或ハ八郎
為朝其国ニ入シ事跡。又ハ其国或ハ唐山ニ入。或ハ本邦ニ入シコト又ハ
其国。薩摩ノ軍ニ破ラレシ次第等詳ニ記スベキナレドモ地図ニ因ナ
キコトナレバ不書。且其治乱興廃ノ詳ナルコトハ中山伝信録及ビ
白石先生ノ琉球事略アリ此二書ニ因テ琉球古今ノアリ
サマヲ知ベシ
右琉球略説
蝦夷 国図ハ別ニ一枚ニ作テ此巻ニ附
其国奥州ノ北ニ在テ津軽ノ竜飛(タツヒ)﨑。南部ノ大間ケ嶽。等ヨリ
只一條ノ海水ヲ隔ル耳也
其国凡四十三度ヨリ五十一二度ニ係テ大寒地也。大概南北
日本道三百里。東西一百里許ノ国也然レドモ東西ハ屈曲広
狭。一ナラズ石カリ。イブツノ処ニテハ僅ニ二十四五里ニ
クビルヽナリ
蝦夷一洲ノ地ヲ五部ニ分ツ《割書:松前七十里ノ地|ハ五部ノ外ナリ》
○ハラキヨリキイタフ迄直径【左ルビ:サシワタシ】日本道百七八十里ヲ東ノ
部ト云聚落五十一在《割書:東部ヲ夷語ニ。メナシクルト云。メナ|シハ東也。クルハ猶部衆ト云カ如シ》
○キイタフヨリウラヤシベツ迄直径【左ルビ:サシワタシ】八九十里許ヲ東北
ノ部ト云聚落七在
○ウラヤシベツヨリソウヤ迄北西エ廻ツテ百四五十里
ノ地ヲ北ノ部ト云聚落四在
○ソウヤヨリウスベチ迄直径二百余里ヲ西ノ部ト云聚
落四十一在《割書:西部ヲ夷語ニ。シユム。クルト云|シユムハ西ナリ。クルハ上ニ同》
○両潴【左ルビ:ミヅタマリ】幷ニ大河ニ添フ処ヲ中部ト云。聚落十三在。都テ五
部ナリ
右五部トモニ本邦ノ商船入テ賑フ村々ニハ運上屋ト云テ本
邦商估ノ軰ヨリ会所ヲ建置。夷人ヲ指引シテ交易ヲナ
サシムル也且此交易ノトキ其産物少計ヲ松前ノ公室ヘ納メシム
ル也是ヲ。サシ荷ト云テ則チ年貢ノ心持ナリト云リ
右ノ如ク村々ニ運上屋有テ指引ヲ致スト云ドモ其運上屋ニ在。
軰悉ク俗商ナル故夷人ニ接対スルコト間(マヽ)見苦キコトアリト聞及
ベリ願クハ此等ノコトヲ禁シテ礼意徳意ヲ以テ相接シテ夷人
ヲシテ心服セシムベキコト俗商ノ上ニモ心得アリ度コト歟
東ノ部ニ御味方蝦夷ト云モノアリ是ハ家中同然ニテ年毎ニ
松前ヘ年始ノ礼ニ出仕スル也其始終甚謹メリト云リ
其国。文字無ク。財貨無。穀帛無。熟銅鉄ナシ。只海物ヲ取。又鳥獣
ヲ狩テ食トシテ生ヲ遂ルマデノコト也
其国醫薬ナシ。病アルトキハ只祈祷アリ然ト云トモ何等ノ神ニ
祈ルコトヲ不知。量ルニ天ニ祈ルナルベシト云リ○小子按
ニ絶テ醫薬ナシト云ニモアラズ。イケマ。エブリコ。ノ二薬
ヲ以テ腹痛。切疵等ヲ療スルコトアリト云。二薬ノコトハ下ノ
産物ノ所ニ記ス
其国。木綿。純帛【左ルビ:キメ】ナシ。其服ハアツシト云テ藤蔓ノ如キ物ノ皮
ヲ剥テ粗ク織テ用ユ其織面。筵【左ルビ:ムシロ】ノ如ク其形。腰ト等クシテ
筒袖也コレヲ十徳ト云。此物耳【左ルビ:ノミ】蝦夷ノ産服也此外ハ獣皮
ヲ用ユ又近年。本邦及ビ唐山【左ルビ:カニ】。満洲。莫斯歌未【左ルビ:ムスコウビ】。【。衍ヵ】亜【左ルビ:ヤ】等ノ古手【左ルビ:フルデ】ヲ
渡シテ服サシム。然ル故ニ一家ノ内ニテモ父子兄弟其服
ヲ殊ニスル者アリ親ハ日本ノ服ヲ着テ子ハアツシヲ服
シ妻ハ唐山ノ服ニテ娘ハ莫斯歌未亜人ノ如クナル者ア
リト云リサモアルベク思ハル実ニ無制ノ夷狄ナリ
其国躰ヲ一句ニ言バ百里ニ三百里許ノ一大石山也然ル故
ニ地面悉ク嶮岨ニシテ中土ニ樹芸ヲナスベキ耕地ナシ
此故ニ只海岸ニ添テ僅ニ百七ケ村アル耳也《割書:松前七十里|ノ村ト山住》
《割書:ノ夷人ノ村|ハ此外ナリ》
東北ノ方ニ山住ノ夷人アリ。是ヲ夷語ニメナシト云海産ニ
乏キ故ニ菽麦粱稗等ヲ植ルト云ドモ寒気ノ粗田ナル故ニ
実リ甚微少ニシテ只耕ス者ノ腹ニ充シメテ他ニ施スノ
余粟ナシ。此山夷獣皮及ビ山物ヲ携テ時々海辺エ出テ海
物ト交易スルコトアリト云ドモ其住所幷ニ村落幾許ト云コトヲ
知コトナシ○或説ニツコロ。ハ々ジリ等ノ西ノ方。山ニ入コト
二日程。山住ノ夷人ノ村落アリト云リ
蝦夷国ノ北ニ又一国アリ蝦夷ノ西北界ヨリ僅ニ海上六七
里ヲ隔ツ此地ヲ カ(ka)ラ(ra)フ(fu)ト(to)嶋ト云《割書:本名タ(ta)ラ(ra)イ(i)カ(ka)イ(i)|亦タ(ta)ラ(ra)カ(ka)イ(i)トモ云》聚落二
十一在テ廻リ三百里ノ嶋ト云伝レドモ其詳ナルコトヲ見タ
ル人ナシ然レトモ近頃輿地ノ学精クナリシ故此地ノコトモ
大略弁ズベキニ似タリ此地全ク離レ嶋ニアラズ東韃靼
ノ地続。室韋ノ地方ニテ東南海ノ一出﨑ナリト云リ図ヲ
見テ知ベシ白石先生ハ万国図ノ野作ト云ル地ハ此カ(ka)ラ(ra)
フ(fu)ト(to)。ナ(na)ル(ru)ベ(be)シ(ʃsi)ト云レタリ扨其西北方エ続キタル処ハ皆
嶮山岩石ニテ通路シガタシ。其山ヲ越テ西北ノ方ニ。サン
タン。マンチウト云地アリ。サンタン。末考。マンチウハ満洲
ナルヘシト云リ。憶フニ。カラフトヨリ満ノ都マデ甚相遠
カラザル歟○寛永中。越前国。三国浦。藤右衛門等ガ漂流ノ記ヲ
按ニ初メ北高麗ノ辺ヘ着岸シテ。ソレヨリ陸路三十日ニシテ満ノ都ニ
至リ又三十余日ニシテ北京エ入。又三十余日ニシテ朝鮮ノ都ニ来リ又十
二日ニシテ釜山浦ニ至テ対馬エ皈ルト云リ。彼等ガ一日ノ行
程ハ日本道七八里ナレバ其里数ノ大略ハ日数ヲ量テ知ル々ナリ
カラフトヨリ蝦夷エ交易スル産物ニ青玉。雕羽。煙管。蟒純。文
繒。綺帛。等アリ其中。青玉ハカラフトノ産也。雕羽ハカラフ
ト及ビ蝦夷ノ産也。煙管ハ韃靼ノ物ト覚ヘテ皆満字ヲ彫
也。蟒純。文繒。綺帛。ハ唐山ノ物也北京ヨリ満州ニ道シテ。カ
ラフトニ至リ。ソウヤヲ経テ松前ニ来ル也然レトモ蝦夷。カ
ラフトノ間。海ニハ暗瀬【左ルビ:カクレイワ】多ク陸ニハ千山峩々トシテ両道
ノ通路難義ナル故大交易ハ無シテ僅ニ貨ヲ通スル耳也
蝦夷ノ東海中ニ千嶋ト称シテ図書ニ載ルモノ三十七嶋ア
リ此中。蝦夷ト通スルモノ只二ツ。曰。クナシリ。曰。ヱドロフ
也。此三十七嶋ヲ過テ東ニ又国アリ加模西葛杜加(カムシカツトカ)ト云《割書:蝦|夷》
《割書:人コレヲ。カム|サスカト云也》是又韃靼ノ地続ニテ蝦夷国ノ北ヲ取巻テ
東ヘ延タル遠地也。日本寛文ノ頃。欧羅巴(ヱーロツパ)洲。莫斯哥未亜(ムスコウビヤ)ノ
女帝。大豪傑ニシテ五世界ニ一帝タラント志ヲ振イ起シ。
制ヲ定メ令ヲ下シテ曰。吾ヨリ後。子々孫々。我ガ制ヲ不_レ改。
土地ヲ広クシ功ヲ大ニスルヲ以テ帝業トセヨトナリ。ソ
レヨリ日々月々ニ人才ヲ挙用テ次第ニ韃靼ノ北辺ヲ略
シテ終ニ日本元文ノ頃迄ニ東ノ限リ。加模西葛杜加(カムシカツトカ)ノ岬
マデ《割書:則カムサ|スカ也》日本道三千余里ヲ莫斯哥未亜(ムスカウビヤ)ノ領国ト為
テ。彼ノ国ヨリ代官ヲ置テ国事ヲ勤メシムル也然レドモ其
地。穀帛ナシ其貢物ハ。人別ニ因テ一人ヨリ一獣皮ヲ取ト
云リ扨此加模西葛杜加ヨリ東ニハ略スベキ土地ナシ。故
ニ又西ニ顧テ彼ノ千嶋ヲ手ニ入ベキ機【左ルビ:キザシ】アリト覚ユ其故
ハ。千嶋ノ極東ニ。ラツコ嶋一名クルムセト云一大嶋在《割書:ク|ル》
《割書:ムセハ加模西葛杜加ノ別名也。ラツコ嶋。加模西葛杜加ニ|近キ故。ヱゾ人相混シテ。此嶋ヲモ。クルムセト称スルナリ》
此嶋モ彼ガ手ニ入タリト覚ヘテ近頃ハ此嶋ニ莫斯哥未
亜人。多ク居住スル由也是ヲ基本【左ルビ:モトデ】ニシテ此頃ハ蝦夷ニ近
キ。ヱドロフエ来テ交易ヲスル也《割書:此交易物ノ中ニ胡椒。沙|糖。猩々緋ノ如キ。南海ノ》
《割書:産物。相雑ルト云。其南国ノ産品。此|地エ来ルユヘハ如何。考アリヤ》然レドモ其交易ニ来ル本
心計リ難シ。若クハ。ヱドロフヲ呑ノ志意ニハ不_レ有歟。扨何
国ヨリ来ルト問ヘバオロシヤト答フト蝦夷人。語ルト聞
及ベリ《割書:按ニ。オロシヤハ。ルシヤノ一転語ナルベシ。如何ト|ナレバ。ルシヤト云ハ莫斯哥未亜ノ都城ノ地ニシ》
《割書:テ猶日本ノ江戸ト云ガ如シ。ヱゾ人。何国ヨリト問シトキ。|ルシヤト答シヲ。オロシヤト聞ウケタルコトト思ハル》其
服ハ阿蘭陀ノ服ニ似テ色ハ悉ク赤キヲ用ユ然ル故ニ蝦
夷人等。是ヲホリ。シイ。シヤモト称スル也《割書:一統ニ赤色ノ服|ヲ用ルコトモ彼ノ》
《割書:女帝ノ制令也○夷語ニ赤キヲ。ホリト云。善ヲ。シイト云。人|ヲ。シヤモト云。ホリシイシヤモハ赤色ノヨキ人ト云意ニ》
《割書:テ。彼ノ赤色ノ人ニ|親附(ナツイ)タル詞ナリ》既ニラツコ嶋ヲ取テ。ヱドロフヲナツ
ケシ上ハ又一タビ西ニ顧ミバ蝦夷ノ東北部ニ至ルベシ
日本ト蝦夷トハ唇歯ノ国也可_レ察
蝦夷ノ性。愚ニシテ善也。オロシヤ人ノ蝦夷ニ接スルヲ聞ニ
曽テ干戈ヲ不_レ用。暴逆ヲ不_レ為。蝦夷ハ寒地ナル故。胡椒ヲ食
ハセテ氷寒ヲ凌ガセ。褞袍ヲ与ヘテ寒気ヲ防カセ又ハ沙糖
ノ甘美ヲ食ハセ或ハ淳酒ノヨキ酒ヲ飲セテ夷人ノ口ヲ
悦ハセ又ハ大炮ヲ轟カシテ威厳ヲ示シ文武相兼テ夷人
ヲシテ己レニ馴懐クベキ術ヲ施スト聞リ。オロシヤ人ハ
大躰ヲ知レリト云ベシト。ヘイト。語レリ
其国ニ第一金山甚多シ然レトモ掘コトヲ不_レ知。空ク埋レテアル
也【。】銀山。銅山。亦然リ又砂金ノ出ル地多シ。クンヌイ。ウンベ
ツ。ユウバリ。シコツ。ハボロ等也。此砂金。河水ニ流レ出ル耳
ニ非ズ砂金ノアル地ハ十里二十里モ土地一面ニ生スル
也。ハボロノ砂金ハ海底ヨリ打上ルト覚ヘテ西北風ノ大
荒シタル後ハ海浜四十里ノ間。一帯金色ヲナスト云リ是
等ノ金銀ヲ不取シテ空ク捨置コト可_レ惜コト也。竊ニ憶フ今取
スンバ後世必。莫斯歌未亜取ベシ。莫斯歌未亜。既ニ是ヲ取
バ。臍ヲ噛トモ。遅カルベキ歟○或説ニ砂金ヲ取ンコトヲ欲
シテ。ハボロニ冬コモリ。ナドスレバ極寒ニ撃レテ必死ス。
タトヒ。不死トモ病身廃人トナル故。行人ナシト云伝フ。小子
按ニ其 事(コト)実ナラバ無術無謀ノ甚キ也。ハボロニテ寒気
ノ為ニ人死スルナラバ。ハボロヨリ北方ノ人ハ何ヲ以テ
カ活ルコトヲ得ベキヤ。其寒気ノ為ニ人死スルト云ハ暖地ノ
人。強寒ノ地ニ入テ預メ寒気ヲ防ガザル故也。防グ術アラバ
何ノ死ト云コトカアラン可_レ思
蝦夷国ノ産ニ良材多シ第一桧葉甚多シ○蝦夷松ト云テ桧
ニ類セル良材多シ当世障子。曲物。白木台。等ニ作ルハ皆此
木也其外用多シ○五葉松多シ蝦夷松ヨリ劣ルト云ドモ是又
良材也此外桂。櫔。榞。黄栢。等多シ○草ニハ春菊ニ白花ノ物
アリ。百合ニ黒花ノ物アリ。虎杖【左ルビ:イタドリ】ニ太キコト廻リ六七寸ニシ
テ高キコト一丈五六尺ナルモノアリ。欸冬【左ルビ:フキ】ニ茎ノ廻リ六七
寸ニシテ葉ノ大サ方一丈余ナルモノアリ○山獣ニ羆【左ルビ:オホクマ】熊【左ルビ:コクマ】
アリ羆ハ人畜ヲ害 ̄シ。熊 ̄ハ害セズ。又希ニ緋熊【左ルビ:ヒクマ】アリ。赤キコト
猩々緋ノ如ク。疾コト電光ノ如シ。現ハルヽコト希也。コレヲ見
者ハ必病。実ニ神獣也○牛馬ハ松前ノ地ニ在テ蝦夷地ニ
ナシ○水獣ニ猟虎【左ルビ:ラツコ】。海狗【左ルビ:オツトセイ】。海獺【左ルビ:アシカ】。海豹【左ルビ:アザラシ】。アリ皆珍トスベシ○鳥
ニ鷹。■【左ルビ:シマトヒ】【骨+隹・鶻ヵ】。雕。■【咢+隹・𩀇鶚ヵ】【左ルビ:大ワシ】。アリ然ル故ニ多ク箭羽ヲ出シテ絶品トス
ル也○魚ニハ鮭魚【左ルビ:サケ】。鰊魚【左ルビ:カト】。此国ノ大産物ニシテ夷人ノ常食
ニ充ルモノ也。沿海ノ諸水鹹淡相雑ル処。鮭魚ヲ産スルコト
他邦ニ比類ナシ歳ノ七八月鮭魚河ニ泝【左ルビ:サカノボル】ルトキ河水コレガ為ニ塞ツテ
不_レ流。乃チ徒手ニシテ是ヲ捕ルコト山ノ如シ則チ火上ニ熏
シ乾シテ腊ト為ス《割書:則 干鮭(カラサケ)|ナリ》又鰊魚アリ此魚ノ聚ル所 嘘沫【左ルビ:シラアハ】
雪ノ如シテ水上ニ浮ブ乃チ網シテ。コレヲ捕ルコト又山ノ
如シ。又乾魚ニ作ル。此魚。子アリ腹ニ満。剖取テ脠ト為《割書:則数ノ|子ナリ》
此二魚。以テ一年ノ食ニ充ベシ《割書:蝦夷地五穀不可植天此物|ヲ生シテ人ノ食ニ充実ニ》
《割書:造化ノ|妙ナリ》此二魚ノ外。海鼠。蚫魚。多シ是又食ニ充ベシ○鯨魚
多シト云トモ夷人等是ヲ捕ル術ヲ不知。只カミキリト云魚
ニ噛レテ死セル鯨魚ノ磯ニ寄モノヲ取テ利スル耳○カ
ミキリ魚ノ形。江豚【左ルビ:イルカ】ノ如シ其鬣。鋭【左ルビ:スルド】ニシテ長シ。蓋シ剣魚ノ
類歟。此魚能鯨魚ヲ斃スト云リ○東海ニオキナト云大魚
アリ甚長大ニシテ能鯨魚ヲ呑ト云伝レトモ其全躰ヲ見タ
ル人ナシ只希ニ浮ヒ出ルトキ背ト鰭トヲ見ノミ也其背ノ
大ナルコト嶋山ノ如シト云リ此魚ノ来ルトキハ海底雷ノ如
ク鳴響テ鯨魚東西エ迯走ルトキハ漁舟モ。オキナノ来ル
コトヲ知テ速カニ上陸スルト云リ都テ東海ノ漁舟ハ度々
出逢トナリ〇キナボウト云魚アリ形。海鷂魚ノ如シ腹中
ニ油腸アリ。夷人以テ珍味トス○鱝魚【左ルビ:アカヱエイ】甚大ナル者アリ。希
ニ浮ビ出ルトキ其背ノ広キコト方六七十丈ノ者アリト云是
又大奇異也。都テ偏気ノ地故。異物モ生スル歟○昆布ノコト
ハ世ニ知所ナレバ不記○薬品ニイケマ。ヱブリコ。アリ此
二薬ハ夷人疾病ノトキ服用スル也此外ニ薬品アレトモ用ル
コトヲ不知也。ヱブリコハ茸也或ハ云深山ノ大桧樹ニ生ズ
ト未実否ヲ不知。疝気。虫積。悪心。嘔吐。ヲ療スルニ。ヱブリコ。
ヲ用。打身。切疵。風邪。腫物。ヲ療スルニハ 。イケマヲ用ト云リ
近来本邦ニモ此二品ヲ遣イ覚ヘテ治療ヲ施ス者アリ能
病ヲ治スト云《割書:イケマハ蔓草也仙台ノ駒ケ嶽|下野ノ日光山ニモ生スルナリ》〇此二薬ノ
外ニ附子。黄精。黄連。人参。黄栢。等アレトモ取用ルコトヲ知ザル
ナリ《割書:附子ハ毒箭ニ用ル也其法ハ附子。蕃椒。足高蜘ノ|三味ヲ搗テ泥トナシ。火ニ煉テ用ユト聞及ベリ》
右産物ノ大略ヲ記ス只可惜ハ金銀山ヲ不_レ掘ト土地一
面ニ生スル砂金ヲ取ザルノ二ツ也何レノ時カ術者出
テ蝦夷地ノ金銀ヲ得コト有ン
寛文壬子ノ年十二月二十三日。伊勢国ノ米船一隻。帆ヲ志摩
国鳥羽ニ開イテ東行ス同二十四日申ノ刻。北風大ニ起テ
東南方ニ漂流スルコト九昼夜。風又南ニ転シテ却テ東北方
ニ漂流スルコト七ケ月。其幾千里ナルコトヲ不_レ知。至ル処。海気
昏黒ニシテ日月ヲ不_レ見コト百余日。風止ムノ故ニ針路ヲ南
ニ求テ漸々ニ舟ヲ進ルコト数日ニシテ忽チ一大国ヲ見。其
国ヲ。ヱドロフト云海岸ニ傍テ西南ニ行コト八昼夜ニシテ
其国ノ地境尽。此処ヨリ西南十二三里ニ山ヲ見ル渡レバ
又一国アリ其国ヲ。クナジリト云又海岸ニ傍テ西南ニ行
コト九昼夜ニシテ地境尽タリ。又西方二十余里ニ山ヲ見ル
渡レバ乃チ蝦夷ノ。ノツサブ也。ソレヨリ同国。トガチヲ経
テ松前ニ至ルト云記録アリ。小子按ニ其始メ至シ。海気昏
黒ノ処ハ加摸西葛杜加(カムシカツトカ)ノ東ヲ過テ夜国ノ境ニ漂イ居タルナ
ルベシ。扨ヱドロフ。クナシリ。トモニ海岸ニ傍テ行コト。八昼夜
九昼夜ト記ストキハ古来ヨリ図スル如ク弾丸墨子様ノ一
小嶋ニテハ無ク皆台湾。琉球ニ等キ大サノ国ト思ハル。世
ニ有所ノ図ハ只蝦夷人ノ言ニ因テ其国名ヲ現ハス耳ト
知ルヽ也
加藤清正。朝鮮ヲ陥レテ几良哈【左ルビ:オランカイ】ヘ乱入シ其都城ヲ焼払テ後。
高山ニ登テ東ヲ眺望スレバ日本ノ富士山ヨク見ユルト
テ清正モ軍士モ大ニ不思儀ヲナシタルコトアリ貝原篤信
コレヲ評シテ曰。其山ハ富士ニハ非ズ薩摩ノ開門ナルベ
シト云リ又或説ニ伯耆ノ大 山(セン)ナルベシト也。小子按ニ皆
非也。其山ハ蝦夷国ノ西海中ニ在。リイシリ。ナルベシ。三国
接壌ノ小図ヲ見テ方位ヲ知ベシ
船乗ノ詞ニ。根ノアル雲ヲ。ワウレウト云テ山アル方ヲ知也
蝦夷国ノ西方ハ漫々タル大海ニシテ更ニ国ナシ然レドモ
蝦夷ノ。ハボロ。ウヱベツ。等ヨリ西南ニ当テ希ニ。ワウレウ。
ヲ見コトアリ是ハ朝鮮山ナリト云伝フト語レリ。此言。中レ
リト思ハル是又小図ヲ見テ知ベシ
坪ノ碑ニ五方ノ行程ヲ記シテ。去蝦夷国界一百二十里ト刻
メリ《割書:坪ノ碑ハ古ノ多賀城ノ門碑也今ノ仙台|宮城郡市川村ハ其城趾也古碑猶存在ス》此時代ハ小
道ニテ今ノ六町ヲ以テ一里トシタルコトナレバ《割書:一町ハ六|十間。一間》
《割書:ハ六|尺也》此碑ニ記シタル一百二十里ハ乃チ今ノ道法ニテ只
二十里ナリ然レバ即チ今ノ桃生郡ノ辺ニテ。今仙台封域
ノ真中也。是古ノ蝦夷国界也。扨今ノ蝦夷国界ト云ハ松前
ノ熊石(クマゼキ)ニテ。多賀城趾ヨリ小道一千三百二十里。今道二百
二十里也。此如ク古ト今ト蝦夷国界ニ遠近ノ差アルコトハ
天平宝字ノ頃迄。奥羽ノ両州ハ王化ニ服セザリシ国也然
ル故ニ京家ニテハ奥羽ノ人ヲバ真ノ蝦夷ト心得テ外国
人ニ等キアツカイ。ナリキ此故ニ東征ノ役止コトナカリシ也
天平宝字ノ頃。恵美朝猲等漸ク桃生郡ノ辺マテ切従ヘテ鎮府
ヲ宮城郡ニ造営シテ蝦夷ノ押ト。セラレタリ其比。石碑ヲ
城門ノ前ニ建テ去蝦夷国界一百二十里ト記シテ今ノ桃
生郡ノ辺ヨリ南ヲ日本ノ地トシ北ヲ夷地ト定メラレタ
リ。是古ノ蝦夷国界也。其ヨリ四十余年ノ後。桓武帝ノ延暦
中ニ征東将軍坂上大宿祢田村麿。大ニ征伐シテ終ニ多賀
城ヨリ。小道八百四十里。今道一百四十里北ノ方。南部ノ大間。津
軽ノ外ガ浜迄。服従セシメテ海ヨリ南ヲ日本ノ地トシ北ヲ夷地ト
定メラレタリ。是中ゴロノ蝦夷国界也。又其後六百七十余
年ヲ経テ。後花園帝ノ嘉吉三年。武田太郎源信広。海ヲ越テ
蝦夷国ヘ乱入シ。終ニ地ヲ得コト小道四百二十里。今道七十
里。是即チ今ノ松前也。此松前ノ北ノ限リヲ熊石(クマゼキ)ト云。多賀
城趾ヨリ熊石マデ小道一千三百二十里。今道二百二十里
也。是今ノ蝦夷国界ニシテ日本風土ノ限リトスル也《割書:是ヲ|以テ》
《割書:考レバ天平宝字ノ頃ヨリ蝦夷国|界ノ広クナリシコト九陪余ナリ》此如ク奥ノ地。次第ニ開
ケシ故ニ古ト今ト蝦夷国界ノ遠近。大ニ差アル也。今人其
義ヲ不知。此故ニ今。坪碑ヲ読者。其文ニ因テ蝦夷国界。大ニ
近シト言テ惑ヲ取人多シ仍テ筆シテ以テ今ノ蝦夷国界
ハ古ノ蝦夷国界ニ非ルコトヲ弁ズ
右ノ如ク熊石ヲ以テ日本風土ノ限リト見ルハ蝦夷ヲ外国
ト立シコトナル故。柔和正直ノ見識トモ云ベキ歟。亦竊ニ憶ヘハ
強テ。蝦夷ノ極北。ソウヤ。シラヌシ。等ヲ以テ日本風土ノ限
トスベシ是蝦夷国ヲ以テ日本ノ分内ニシタル見識也其故如何
トナレバ往昔ハ真ノ蝦夷ハ言ニ不及奥羽ノ地モ王化ニ不服シテ常
ニ朝家ヲ蔑ニ仕奉タルヲサヘ両三将ノ武徳ヲ以テ平服セシメテ
今ハ却テ蝦夷地七十里ヲ上国荒服ノ国トナン【シ】タリ《割書:即松前七十|里ノ地ナリ》
然シヨリ以来夷人等上国ヲ推貴テ今世ニテハ夷人挙テ上国ノ
人タランコトヲ欲スル情多シト云リ此時ニ当テ少ク術ヲ施サバ
其俗忽チ変化シテ速ニ上国ノ人物トナルヘキコト掌ヲ反スヨリ易
カルヘシ都テ此條ニ意味アル物語アレドモ忌譚ヲ顧テ不記
日本紀ニ蝦夷ノコトヲ記セルコト数多アリ就中。斉明紀ニ政所ヲ後方(シリベ)
羊蹄(シ)ニ置ルコトアリ小子按ニ此後方羊蹄ハ真ノ。シリベシ。ナル歟
不審(イフカシ)。蝦夷ノ。シリベシハ松前ヨリ七十余里奥也。斉明ノ朝。此地ニ
政所ヲ置程ニ蝦夷ヲ手ニ入レシナラバ今世ハ。ソウヤ。カラフト迄モ
悉ク日本ノ人物ナルヘキハヅ也然ルニ西ハ熊石。東ハ汐首ヲ過レバ
悉ク夷躰異言也。愈 不審(イブカシ)。其前後ノ文勢ヲ考見ベシ竊ニ憶。津軽
山ヲ。シリベシト心得タルニハ非スヤ。多罪。又按ニ斉明ノ朝ヨリ一百余
年ノ後。天平宝字ノ頃。宮城郡多賀城ニ碑ヲ建テ去蝦夷国界一百二十
里ト刻メリ又愈不審。以テ後識ヲ待也《割書:蝦夷国界。古今遠近ノ差アルコト|ハ上ノ坪碑ノ條ニ詳ニ弁ズ》
蝦夷モ同類ノ人也然レドモ其国文華開ケズ今ノ世迄モ開闢ノ
時ノ如ニテ宝貨。穀帛。文字。礼服。紀年。【右に傍線】等無クシテ只食ヲ求
ルコトト男女交合ノ業ヲ知レル耳ニシテ実ニ蠢爾タルコト
【上部欄外】
紀年【囲線】或人ノ
説ニ紀年ア
リ建子ノ月
ヲ以テ正月
ト定メ建亥
ノ月ヲ以テ
十二月トナ
スト云リ且
十二ケ月ノ
名ノ方言有
テ本邦ノ詞
ト殊ナリト
聞及ブト語
レリ小子按
ニ是欧羅巴
ノ暦法也蝦
夷人此暦法
ヲ用ルコト怪
ムベシ恐ル
ベシ
ハ彼ノ国。智者出テ教ルコトナキ故也。扨各国ノ其初メヲ思
ヘバ日本モ唐山モ朝鮮モ阿蘭陀モ今コソ文物国トハ成
タレトモ開闢ノ当坐ハ皆今ノ蝦夷ノ如ニアリシヲ大智ノ
人。交出テ数千年ノ間。油断ナク教化アリシニ因テ各文物
国トハ成シ也蝦夷モ大智ノ人出テ教化セバ漸々ニ開コト
疑ナシ然レトモ其国飽マデ気運否塞ノ下国ナル故ニヤ開
闢以来智者出タルコトヲ不_レ聞。猶此末世トテモ聖智ノ人ノ
出ルコトモアルマジケレバ済度ノ為ニ隣国ヨリ教化シテ
人道ヲ知シメ物産ヲ開テ生育ナサシムベキコト是神仏儒
ノ旨ナルベシ殊ニ蝦夷ハ界モ近ク其上。日本ヲ尊信スル
国俗ナレバ少ク教諭セバ其俗忽チ化服スベシ是其国エ
立入。商估【左ルビ:アキビト】。舟人【左ルビ:フナノリ】ノ輩タリトモ心得アルベキコト歟
安永ノ初年ニ小子。松前ノ人ト旅宿ヲ共ニス《割書:其人名ハ|六兵衛》終夜
蝦夷地ノコトヲ問シニ彼人数條ノ物語ノ上。蝦夷人ハ悉ク
日本ヲ慕テ本邦ノ風俗タランコトヲ欲スル者多シト。又其
地ニ金銀山及ビ砂金ノ夥ク出ルコトヲ語リ又オロシヤ。ト
ヤラン云ル国ヨリ。アヤシキ人来ルコトアリト聞及ブト語
レリ其後安永ノ末年小子。肥前ノ鎮台館ニ遊事シテ崎陽
ニ至リ和蘭人。アヽレントウエルレヘイトニ逢フ。ヘイト語
テ曰蝦夷ハ日本ト一條ノ海水ヲ隔タレバ其地勢。別国ニ
似タレトモ併ラ日本ヨリ少ク招諭セバ上国ノ風ヲ望テ其
俗忽チ変化スヘシ其俗変化セバ其国悉ク日本ノ分内ト
ナルベシ。和蘭ハ云ニ不及。欧羅巴(エロツパ)諸州ノ風ニテ遠ク万里
ヲ隔タル国ヲサヘ能招諭シテ皈服セシメ。己レガ分国ト
ナシテ永ク本国ノ助トス。然ル故ニ近頃。欧羅巴ノ莫斯歌(ムスカウ)
未亜(ビヤ)。遠ク北海ヲ越テ蝦夷ヲ招諭スルノ志アリト語レリ
此二子ノ言ニ因テ熟思ヘバ蝦夷ヲバ早ク招諭スベシ。早
クセズンバ後世必。莫斯歌未亜ノ賊。至ベシ其時臍ヲ嚙トモ
遅カラン歟。竊ニ憶バ。風ヲ移シ俗ヲ易テ一州ヲ経邦シ其
金銀ヲ取テ上国ノ宝貨ヲ増。其九百里ノ地ヲ招テ上国ノ
郡ト為ノ術有ニ似タリ。然ト云トモ尋常ノ商估【左ルビ:アキビト】。舟人【左ルビ:フナノリ】ノ輩ニ
不_レ可_レ説。術アル商估。舟人等ニ会テ口自ラ語ルベシ。只心憎
キハ莫斯歌未亜ノ姦賊等。先達テ蝦夷地ニ入テ上国ノ商
估。舟人等ヲ拒ムコトアラン歟。若拒ムコトアラバ速ニ其赤賊
ヲ鏖ニシ。災ノ根本ヲ除テ後。快ク教諭セバ前文ノ如ク其
俗忽チ上国ノ風ニ移テ。遠ク。カラフト。迄モ松前ニ等キ風
俗トナルベシ然ルトキハ金銀ヲ得テ宝貨ヲ増而己ナラズ其九
百里ノ地悉ク上国ノ郡ト成テ目出度コト此上モナキコトナ
ルベシ是又商估。舟人等ノ大義ナル哉
和蘭人。ヘイト。語テ曰北地ヨリ南国ヲ取コトハ仕易ク。南地ヨ
リ北国ヲ取コトハ仕難シ其故如何トナレバ北地ヨリ南地
ニ入コト五七日ナレバ風土モ暖カニ産物モ多シ。又入コト十
日二十日ナレバ愈暖カニ愈多シ。此故ニ進ムニ精神増テ。
地ヲ得テ益アリ是北ヨリ南ヲ侵シ易キ所ナリ。亦南ヨリ
北地ニ入コト五七日ナレバ風土寒ク産物モ不_レ多。又入コト十
日二十日ナレバ愈寒ク愈無シ此故ニ進ムニ精神薄ク地ヲ得テ
モ益ナシ是南ヨリ北ヲ不 ̄ル_レ欲 ̄セ所ナリ。如 ̄キ_レ此趣意ナル故。和蘭
ハ呱哇【左ルビ:ジヤカタラ】ヲ取。韃靼ハ唐山【左ルビ:カラ】ヲ取。莫斯歌未亜(ムスカウビヤ)ハ韃靼ヲ取。是皆
北ヨリ南ヲ取シ也ト云リ。小子憶。此言前人未発ノ説ニシ
テ人情 如斯(カク)有ベキコトニ思ハル。是ニ因テ考レバ莫斯歌未
亜ノ蝦夷ニ至レル志意。甚憎ムヘシ。然レトモ其蝦夷ニ至レ
ルコト末_レ久。今猶両葉ト云ヘシ
其国鴻荒ノ世ノコトハ不可知。中古以来。日本紀及ビ異国ノ書
ニ蝦夷ノコトヲ言シモノ数多ナレトモ其説紛々トシテ據ト
シガタキコト多シ其後。嘉吉年中。松前ノ地。荒服ト成シ以来
其封域始テ定ルト云ドモ夷地ノコトニ於テハ猶不可知モノ
多シ又其後。源君美子。能考索シテ蝦夷志ヲ作テ始テ其一
州ノ大略ヲ可_レ見。然レトモ此時代蝦夷国ノ事跡。未精密ナラ
サル歟。今ヲ以テコレヲ見レバ猶遺漏アルニ似タリ其後
北海随茟。蝦夷随筆等アレトモ亦復闕遺多シ然ト云トモ。蝦
夷国ノ大躰ヲ可見モノ。此三書ヲ外ニシテ更ニ書ナシ此故ニ今小子
ガ述ル所モ此三書ニ本ツイテ且コレニ加ルニ。ヘイトガ言ヲ以テシ
亦其国渡海ノ舟人ノ説ヲ撰采テ彼是相照シテ浄写スル故。
新説既ニ多シ其旧説ハ三書ニ多ク載ル故。茲ニ不書
朝鮮。琉球ノ人物ハ世々本朝ニ来聘シテ諸人ノ見所ナレバ其図ヲ
不載。蝦夷人ニ至テハ奥羽ノ人ト云トモ見コトナシ況ヤ其余ヲヤ仍
テ其人物及ビ衣服器物等ノ大略ヲ図スル耳
其国ノ方言。聞伝シコト数多アレトモ文長ケレバ不記。只其一ヨリ
十迄ノ数ノ名ノ方言ヲ左ニ挙ル耳
一(シネツプ) 二(トツプ) 三(レツプ) 四(イネツプ) 五(アシツキ) 六(イワン) 七(アルワン) 八(トベシ) 九(シネベシ) 十(トオ)
蝦夷国ニ。王ト云者モナク大名ト云者モナシ只一村切ニ聚落ヲナ
シテ其中ニテ家筋正ク。人望アル老年ノ者。其部長ト成テ。事
ヲ計ルト云リ。然ルトキハ誰(タレ)蝦夷国ノ主(アルジ)ト云コトモナシ其上。夷人ノ性。
至愚至善ニシテ且其国人挙テ上国ノ風ヲ望ムコト孤児ノ父母
ヲ慕フガ如シト聞及ベリ。コレニ因テ思べハ【ママ】其国ニ立入。商估。舟人。
ノ輩タリトモ。夷人ヲ諭シテ上国ノ風ニ移シ。俗ヲ易シメバ。公ニ
言ハヾ忠義ニモ准ズベキ歟。私ニ於テハ愚人ヲ済度スルノ類ナレ
バ其人ニ取テハ善根トモ云ヘキ歟。都テ此国ノ物語。聞及ビシコトドモ
此書ニ記シタキコト数多アレドモ忌諱ヲ顧テ不筆大尾
右蝦夷略説
甲(ヨロイ)ヲヨケベト云。革三重トヂ也。長二尺二寸。上ニテ幅三
尺四寸。下ニテ六尺
冑(カブト)ヲコンチト云
又タカラカ
ウシトモ云
小手ハイタヤノ
木ヲ筋金ノ
如ニシテ。木綿ニ
トヂ付テ作ル。臑当亦同
此図ハ蝦夷ノ部長【左ルビ:オトナ】
ナドニ テ上品ノ姿也
男ノ惣称ヲ。
ツカイト云。女ノ
惣称ヲ。メノコシト云
夫ヲ ホクト云。妻ヲ マチト云
此図ハ蝦夷人。唐山(カラ)ノ服ヲ着テ。莫斯哥未(ムスカウビ)
亜(ヤ)ノ被(カブ)リ物ヲ被リ。日本ノ太刀ヲ帯ル躰也
此女夷ハ上品ノ姿也
女ハ皆面ニ草花。或ハ破(ヤブレ)格子ナドヲ黥(イレスミ)ニ スル也。脣(クチビル)ヲバ
薄ク黥シテ青色ニ
スルナリ
此衣服ノ織物
モ自国ノ物ニ アラズ。
皆日本。唐山(カラ)等ノ織物也
帯ハ ヒツコキニテ前ニ テ結ブ也。下品ハ藤縄等ヲ用
蝦夷ハ男女トモニ眉毛。一文字ニ生
中品ノ女夷。大概 ツヾク也。其外。惣身毛多シ
此等ノ姿也一
上下トナク男
女皆。徒足(スアシ)ニテ
霜雪岩石ヲ踏(フミ)
テ少モ痛ムコトナシ男夷。
山ニ入テ獣ヲ猟(カル)モ皆徒足也
中品ノ男夷。大概
此等ノ姿也
是蝦夷人。日本
ノ古着(フルギ)ヲ服シ
鹿(シカ)ノ皮ヲ腹巻
ニシタル躰也
中下品ノ拵ハ。白鞘ニテ。櫻カバ
ヲ以テ巻。其身ハ甚ナマグサシ
下品ノ夷人。獣皮ヲ
着タル姿也。被リタ
ル物ハ本邦ノ
雪帽子ヲモ
用ヒ又自国
ニテモ制スル也
中下品ノ者ドモノ帯ル。脇差ヲ。タシロ
或ハマキリト云。皆本邦ヨリ渡ス也。出刃包丁ノ類ニシテ悉酒田打也
下品ノ女夷。大概此等ノ
姿也
此衣服ノ地ヲ。アツ
シト云。此物バカリ
自国ニテ制スル也
藤ノ如キ蔓草ノ皮ヲ以テ
織ト云リ精粗品々アリ
蝦夷ノ男児。弓ヲ
射習フ躰
木ノ枝ヲ輪ニ
シテ是ヲ。コロ
バシテ射ル。走リ
物ノ目付ヲ習フナリ
下品女夷鮭魚ヲ負テ運送スル躰
下品女夷。間(マヽ)。熊ノ子ニ乳ヲ飲スル者アリ
鷲。嶋鴞(シマフクロウ)ノ類ヲ養テ箭
羽ヲ取也
蝦夷ノ家。皆一 間(マ)造リ也掘立柱
ニシテ藤蔓ノ類ヲ以テ結固ル
也。其国。鋸斧ノ類ナシ。然ル故ニ
上品ノ家ト云ドモ皆此制也
夷人。ヤスヲ以テ。
オツトセイヲ。ナ
ゲ突ニ スル躰
蝦夷ノ舟。多ク
丸木舟也。大木
ヲ鐫テ制ス。又
板ヲ縄 結(ユイ)ニシテ
造ルアリ二人
乗(ノル)ニモ。三人乗
ニモ。一人。阿伽(アカ)汲
ノ役有テ不_レ断汲
ザレバ水入テ。舟
沈ム ト云リ
此図ハ丸木
舟也。縄 結(ユイ)ノ
舟ノ図ハ。コ
レヲ略ス
シトキノ図
五色ノ吹玉
銀或ハシンチ
ウノ。ハリガネ也
径リ三四寸
銀或ハ白メ流シ
女夷ノ首ニ掛ル物也。守袋ノ類ト云リ
アツシ 都テ衣服ヲ。アツシ。亦ハ。ジツトクト称ス
袖縁ハ木綿也 長ハ対丈(ツイタケ)ニスル也
此服ハ男夷。晴(ハレ)
ノトキ服ス皆日
本ノ古着ニシ 左マヘニ
テ純子(ドンス)。繻珍(シユチン)ナ 合スル也
ドノ単物也模
様ハ紺ノ木綿
ヲ様々ニ切テ
縫付ル也。女夷ノ服ハ模様禁制也
ア(a)ツ(zu)シ(ʃsi)
此織物バカ
リ自国ニテ
制スル也
男夷ノ
衣服也
是即。唐山ノ物ニシテ。満洲。カラフトヲ経
テ蝦夷ニ来ル也。世ニ蝦夷錦ト云モノ即是也
袖口ヲ四五寸折返シテ着ル也。是ヲ馬脚(マアキヤ)ト云
是即韃靼ノ風ニシテ今ノ唐山モ皆此制也
女夷ノ
衣服
男服ニ似テ袖ニ馬脚ノ折反シナシ
是亦唐山ノ物也
【矢の絵の説明】
竹也
骨也
真ノ根ニハ毒ヲ
塗故。竹ヲ添テ糸
ニテ巻置也
矢ノ根ハ。鹿ノ
足骨ヲ用ユ
【弓の説明】
弓夷語ニ ハ(fa)グ(gu)ト云
オツコノ木ニテ作ル。世
ニ伽羅木ト云モノ也。廻
リ二寸六七分。長サ三尺
七八寸。皆革ニテ巻也。弦
ハ。アイト云草ノ皮ヲ以
テ三グリニヨル也
【矢の説明】
矢
羽二寸八九分
長サ一尺二三寸
太サ一寸廻リ皆
四ツ羽也
根ノ長サ二寸余
【矢筒の説明】
矢筒夷語イ(y)カ(ka)イ(i)フ(fu)
長サ一尺七八
寸。径二寸四五
分。革ニテ丸ク
作ル。金具ハ白
メ流シ也。或ハ
平ク作ルモアリ
ユマサ《割書:脇差ノ類也。正身ハナシ|木ヲケヅリテ指込置也》
裏表ニ小刀櫃アリ長一寸五六分
柄ノ長サ五寸。鞘一尺五六寸。幅一寸七八分。厚サ三四分
惣金具ハ薄真鍮打出シ模様。柄頭ハ白メ流
【「木+遺」は「櫃」の誤記】
【上部】
笄カ(ka)ウ(u)ガ(ga)イ(i)
模様ハ銀ノ置彫也
幅五分余。長サ六寸
計。樋ノ中ハ赤銅ナ
々子也是全ク日本
細工ナリ
【下部】
同
模様スカシ彫。幅
七八分。長サ五寸
余。惣地真鍮
右何レモ。ユマサ
ノ小刀櫃ニ指也
【「木+遺」は「櫃」の誤記】
ヱモシツホ是ハ正真ノ身アリ
【上部】
柄ノ長五寸。鞘ノ
長一尺三寸。幅一
寸二分。厚四分
クリカタ
白メ流シ
【下部】
サスガマキリ《割書:小刀ノ|類也》
刃四寸計。柄一尺
二寸。鹿角ヲ以テ
鞘トス
蝦夷太刀 惣金具或ハ真鍮或ハ白メ
【束頭部分】
薄金滅
金打出
模様
【鍔部分】
白メ薄金三枚鍔
正身ナシ。柄ノ長七寸余。鞘ノ長二尺二寸余
幅一寸二分。鍔二寸五分
【銚子の説明】
銚子
径五寸五六分
深サ二寸計
【盃の説明】
盃
径三寸余
深一寸五六分
【髭上の説明】
髭上(ヒゲアゲ)
長サ一尺二寸余
幅六七分。彫モノ
アリ夷人。酒ヲ飲
トキ此物ニテ髭ヲ
スクイ上テノム
ト云リ
蝦夷国ニ酒ナシ本邦ノ商舶。夷物ト交易スルトキハ酒一舛
ニ水二舛ヲ加テ与フト云リ
ク(ku)ワ(va)サ(ʃsa)キ(ki)
地金鉄。模様真鍮
頭ノ径リ五寸余。両脚ノ
長サ七寸計
夷人病アルトキ祈祷ノ為ニ
枕本ニ置。カザリ物也
懸刀 平身作無刃
鐺ハ角也
【上部】
此懸緒
蝦夷ニ
テ織也
日本ノ
サナダ
打ノゴ
トシ
【下部】
鞘ハ革巻模様ハ朱黒相雑
ルナリ○鞘ノ幅一寸五分
【上部】
此緒ヲ
筋違ニ
肩ニ掛
ル也
【下部】
太刀ノ長二尺余。柄ノ長
七寸計。掛緒ノ幅二寸余
鍔ハ三枚重。
柄ハ黒革巻
人死ルトキ葬送畢テ。一類ノ者トモ集リテ其施主タル人ノ頭ヲ
此刀ニテ一打ツヽ打テ血ヲ出ス。是不孝。不悌等ノ罪ヲ攻ル心ナ
リト云リ是ヲ。メカ打ト云
【上部】
シヨキネ棒
戦ニ用ユ足ノ
甲ヲ突ト云
鉄也
長サ六尺計
頭ノ太サ四
寸。持ツ所ハ
一寸余
【下部】
スヅウチ棒
メカ打ニ モ用ユ
長サ二尺四五
寸。太サ一寸七
八分
【上部】
惣色黒シ
【下部】
処々糸ニテ
巻ナリ
無人嶋 地図ハ別ニ一枚ニ作テ此巻ニ附
《割書:此嶋本名小笠原嶋ト云ドモ世挙テ無人嶋ト称|スル故。称ニ随テ無人嶋ト表スル也。小笠原嶋》
《割書:ト名ツケシコトハ昔時小笠原某此嶋ヲ見出シ|テ地図ヲ持皈シ故。名付シ也○二百年前。伊太》
《割書:里亜人。メガラニユスト云者南方ニ新世界ヲ|見付タルヲ直ニメガラニカト名ツケタルガ如シ》
無人嶋ハ伊豆ノ辰己【巳】二百七十里ニ在○伊豆国下田ヨリ三
宅嶋ヘ十三里○三宅嶋ヨリ新嶋ヘ七里○新嶋ヨリ三倉
嶋ヘ五里○三倉嶋ヨリ八丈嶋ヘ四十一里○八丈ヨリ北
ノ無人嶋ヘ凡百八十里。南ノ無人嶋ヘ二百里
八丈ヨリ無人嶋ヘ渡ル洋中ニ五嶋アレドモ只一大石山ニ シ
テ産物ナシ
三倉嶋ヨリ八丈嶋ヘ渡ル洋中ニ黒瀬川ト云テ急流ノ瀬ア
リ舟人ノ難所トスル処也図ヲ見テ知ベシ
嶋々大小都テ八十九山アリ其中。大嶋二。中嶋四。小嶋四。此十
嶋ハ土地広ク草木多ク処々平地有テ人居住スベシ其余
七十余嶋ハ岩石嶮峻ノ小嶼ナル故ニ人居住スルコトアタ
ハズ只産物ヲ探ルベシ
此嶋二十七度ノ暖地ナル故ニ山嶺澗谷ト云ドモ猶菽麦粱稗
蕃藷等ヲ植ベシ又烏臼木【左ルビ:ナンキンハゼ】ヲ植テ蝋ヲ得ベシ又漁猟ニ珍
ヲ得ヘシ
此嶋ニ産スル草木及ビ諸物。下ニ記ス然レトモ獣類ハ絶テ無
ト云リ○木ニハ根本ニテ一囲【左ルビ:ヒトカヽヱ】計有テ高キコト三十余尋ノ
堅木アリ是珍トスベシ。又椶梠ニ似テ甚高キ木アリ。椰子
樹。梹榔木。白欒子。カチヤンノ木。栴檀樹。榎木。樟木。山柿。藤ノ
葉ニ似タル大木。桂樹。桑木。等也○草ニハ山皈来。当皈ニ似
タル草。丸葉ノ牽牛花等也○鳥ニハ音呼(インコ)ニ似タル鳥。五位
鷺ニ似タル鳥。梅首雞(バン)ニ似タル鳥。白鴎ニ似テ大サ三尺余
ノ大鳥等也都テ此嶋ノ鳥ハ皆徒手ニシテ捕ヘラルヽト
云リ○石ニハ明礬。緑礬。五色石。菊面石此外異石多○海産
ニハ鯨魚。大海老。大牡蠣。海膽等也右ノ外産品猶多
此無人嶋ハ延宝三年肥前国長崎ニ於テ唐舩仕立ノ舩ヲ造
営有テ其舩ヲ伊豆国ヘ廻シ長崎ノ住人嶋谷市左衛門。中
尾庄左衛門嶋谷太郎左衛門《割書:此三人ハ学術有テ|天文地理ヲ知者也》江戸小網
町ノ大工八兵衛等ヲ首立トシテ惣人数三十余人。御印【印に左ルビ:シルシ】ノ
旗ヲ賜テ同年潤【閏】四月五日伊豆ノ下田ヲ出帆シ先ツ八丈
ニ至テソレヨリ段々東南ノ洋中ヲ探テ終ニ八十余嶋ヲ
見定メ。嶋ノ大小。天度の高下。草木産物等ヲ詳ニシテ同年
六月二十日再ヒ伊豆ノ下田エ皈帆スト云リ此ニ記ス所
ハ彼ノ嶋谷家ノ記録ニ拠モノ也◯私按ニ彼ノ嶋谷家ノ
記録ニ黒瀬川ノコトヲ不言。黒瀬川ハ三倉嶋ト八丈嶋トノ
中間ニアリ幅二十余町有テ東西百里ニ渡リタル大急流
ノ黒潮【左ルビ:クロシホ】ナリ。此瀬ヲ乗切コト大ニ心得アルコト聞及ヘリ然レ
トモ夏秋ハ此瀬ノ流レ穏カ也冬春ハ大急流ナリト云リ嶋
谷家ノ者ドモ無人嶋ヘ渡リシハ潤【閏】四月初旬ニ下田ヲ出帆
シテ同年ノ六月下旬同所ヘ皈帆スルトキハ此瀬ノ穏カナ
ル時節故。此瀬ノ難所ヲ不見シテ乗過シト思ハル此故ニ
不記歟◯私按ニ彼ノ嶋八十余嶋ノ中。第一ノ大嶋。廻リ十
五里ナルトキハ壱岐嶋ニ比スヘシ其次ノ大嶋廻リ十里ナ
ルトキハ天草嶋ニ比スベシ其余廻リ二里以上六七里ニ及
ブモノ八嶋有。都テ此十嶋ハ湊アリ平地アリ人居住スベ
シ五穀植ベシ且暖気ノ辺地ナル故。珍異ノ物ヲ産スル也
其余七十余山ハ岩石小嶼ナレドモ亦復小ク物ヲ産スル也是ニ因
テ竊ニ工夫スレバ此嶋ヘ人ヲ蒔テ樹芸ヲ為。村落ヲ建立シテ山
海ノ業ヲ起シ一州ノ産物国ヲ仕立テ後。此嶋渡海ノ常舩ヲ造テ
歳ニ一渡海シテ産物ヲ収ムベシ舩ヲ造ルノ費ハ一渡海ニテ償フベシ
是尋常商估ノ知ザル所ナル故。後業ノ為ニ此ニ記ス也願クハ好事ノ
商估憤発シテ此業ヲ興サハ巨万ノ利。目前ニアルベシ勉之勉之
安永年中小子肥前ノ鎮台館ニ遊事シテ﨑陽ニ至リ和蘭人
アヽレントウェルレヘイトニ会フ。ヘイト其地理書。ゼオガ
ラーヒノ説ヲ談ジテ。日本ノ辰己【巳】二百余里ニ嶋アリ。ウー
スト。ヱーランド。ト名ヅク。ウーストハ荒地。ヱーランドハ
嶋ノコト也ト語レリ。又言テ曰此嶋。無人ナレトモ草木多キヲ
見レバ不毛トハ言難シ。日本ヨリ人ヲ蒔テ一州ノ地ト為
テ五穀産物等ヲ仕立バ海遠カラザル故。大利アルベシ。和
蘭ヨリ。コンハンヤヲ立ルニハ海遠ク国小ニシテ費ニア
タラズト云リ小子ヘイトガ言ヲ然リトス。仍テ亦復参考
ノ為ニ此ニ記耳。無人嶋略説大尾
右惣計五図四説
天明五年乙己【巳】秋 仙台 林子平図幷説【印:越智友直】【印:不朽者文】
右三国通覧図説ハ小子敢テ経済ヲ言ニ非ズ亦妄リニ地
理ノ学ヲ玩ブニモ非ズ。只武門ニ携ハレル人ヲシテ三隣ノ
地理ヲ知シメンコトヲ欲スル耳也是武芸ノ余計ナルニ
似タレドモ併ラ竊ニ憶ヘバ却テ武門ノ奥旨トモ言ベキ歟。観者
以テ経済ノ書トスルコト勿レ同年林子平自ラ一句ヲ跋ニ言コト尓
室町三町目
天明丙午夏 東都書林 須原屋市兵衛梓
《割書:万国一器界方量総図|大明十三省之絵図》全二牧大絵図 《割書:此書は日本国より万国へ通路の行程をはかり|天の分野日月の行道度数を配当して方を記ㇲ》
歴代事跡之図 清 呂君翰選図 《割書:世々の遷都名獄古戦の地名跡等を委|集しるし歷史の考証とす大絵図なり》
天球之図 全壱紙 《割書:天文分野天の度数日月四季行道星の|遠近大小名目二十八宿あるひは不_レ見の星まで記ㇲ》
地球一覧之図 中根玄覧子著述 《割書:万国を一ㇳ目に見わたし国々の名をくわしくして|なを見分ヶやすからむ為に彩色にてわかつものなり》
三国通覧之図 《割書:附略説一冊 図全五牧|仙台 林子平著》 《割書:此書は。朝鮮。琉球。夷蝦【ママ】。無人島の国なり海陸の|行程を天の分野に当て度を斗り山川人物風土を彩色に分ッ》
大清広輿之図 《割書:全十牧 別に継合て一紙とす| 水戸 赤水長先生 著》 《割書:事跡名獄山川湖江等を彩色をもつて|委わかち見やすきこと誠に清の国にいたる心地す》
唐土古今胎革之図 全十牧 同作 清朝の地理を一省ずゝに分ち見やすくして猶くわしくす
《割書:翻訳万国之図 全|同 説 全五冊》法眼桂川先生著 《割書:此書は阿蘭陀の元本を以て漢語和語に訳して|渾天器に当て天の度地の理を明し其国へ属する島は|彩色にて分ち説には通商考の異同を正し人物風土を記ㇲ》
春秋指掌之図 《割書:列国の地名を委して会読の|便利に備ふ 敬■堂著》
大成年代広記 《割書:和漢の年代と一ㇳ目にてらして|歷史の考証とす 小冊折本》
小戎車之図 《割書:大宰先生之序| 唐紙一牧摺》
右件《割書:江戸日本橋通宝町三丁目■側| すはら屋市兵衛板》
三国通覧輿地路程全図
三国通覧輿地路程全図
朝鮮国全図
朝鮮八道之図
東莱ヨリ王城ヘ日本道九十六里二町。朝鮮道九
百六十二里○右路。中路。左路ノ三道アリ。道毎ニ
駅ト息トヲ置○朝鮮道三十里ヲ一息トス。日本
道百四十町程也○右路二十六駅。中路二十九
駅。左路三十一駅也
仙台 林子平図
日本橋北室町三丁目
天明五年秋 東都 須原屋市兵衛梓
朝鮮国全図
琉球国全図
琉球国全図
蝦夷国全図
【左上部】
此地韃靼ノ地ツヾキニテ東ノハテ也近年。オロシヤ人。此
地ヲ領スル故。国ノ名ヲ。オロシヤトモ云也亦カムサスカトモ
云。カムサスカハカムシカツトカノ一転語ナルベシ。又オロシ
ヤ人。皆赤色ノ服ヲ着スル故。蝦夷ノ里諺ニ赤ヱゾトモ云也
日本元文ノ比迄ニ莫斯哥未亜(ムスカウビヤ)ノ本国ヨリ日本道三千余
里東略シテ取ツメタルハ即此地也
【左横上部】
此地韃靼ノ東方。室韋葦ノ地方ニテ北極ノ出地六十
二三度也夜国。氷海ニ隣テ五穀不生。夏月猶霜雪
アル下国也○此国ノ北海ハ即夜国ノ南海也
【左横下部】
此川ハ欧羅巴(ヱーロツパ)。亜細亜(アジヤ)ノ界ヲナス。オービイト云大河ヨリ泒レテ韃靼ノ
真中ヲ東エ流ルヽ水ニテ長キコト一千里ト云リ○此川ヨリ北ノ地ハ云ニ
不及。東ノ限リ加模西葛杜加ノ地迄。日本正徳ノ比ヨリ悉ク莫斯
哥未亜ノ領国トナレリ
【左下部】
日本寛文ノ頃。韃靼ヨリ唐山(カラ)ヲ幷セシ後。韃靼。数多ニ分レタリ。所謂。莫斯哥未(ムスカウビ)
亜(ヤ)韃靼。東韃靼。北韃靼。独立韃靼。支那韃靼。満洲等也。此中。支那韃靼ト満
洲トハ清ニ属ス其余ハ不属○満洲ノ西南。北京省。山西省ニ接スル地ヲ支那韃靼ト云
ナリ○清ノ康凞中。満洲ノ北ニ新長城ヲ築テ北寇ニ備フ是ヲ盛都ト云
【左中央部】
此国ヨリ蝦夷ヘ渡リ口ノ地名ヲ。
カラフトト云故ヱゾ人此地ヲ。カ
ラフト嶋ト称スレトモ本名ハタラ
イカイ。ト云也此地ノ童子ヲ満
洲ト蝦夷トエ渡シテ詞ヲ習
ハセ。両国交易ノコトヲ此地ニテ
世話スルト云リ
蝦夷国全図
無人島之図 附録
クロセ川ト云幅二十余町有テ大急流也
一文字ニハ舟乗切ガタシ大ニ心得アルコト
也都テ夏秋舟乗易ク。冬春舟乗
ガタシ。又志摩国鳥羽ヨリ南ノ沖ヘ乗
出シテ東スレバ海路甚易シト云リ
無人島之図《割書:附録》
【カバー】
【背】
【天】
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【地】
【表紙 題箋】
すゝりわり 中
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2
【右丁 表紙裏(見返し) 文字無し】
【左丁 資料の整理番号のラベル】
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4260
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【右丁 文字無し】
【左丁】
さてしもあるへきことならねは御しかい【死骸】
をかたへ【片方】によせたてまつりたつとき御てら
へをくらはやとてそんしやうゐんと申僧
都をしやうし【請じ】たてまつり一日一夜かあいた
一せうめうてんをとくしゆ【読誦】したまひてこく
けん【刻限】をさため【定め】すてに御てらにをくらんとし
給ふところにいつくよりきたるともしれぬ
御僧のよはひはたとせ【二十年】はかりなるかきたら
せ給ひておほせけるはいかに人〳〵さのみな
けかせ給ふそやわれしやうしむしやう【生死無常=人生のはかないこと】のなら
【右丁】
ひあいべつりく【愛別離苦=愛する親・兄弟・妻子などと生別・死別する苦しみ】のことはりをつれさきたつ
はこれしやう【生】あるものゝおきてなりたれかひ
とりものこるへき此なけきはひとへにほ
とけのはうへん【方便】にてちゝはゝをあんらく
せかいへいんたう【引導】すへきちかひとはしられす
やとのたまひてかのわかきみのしかい【死骸】をいた
きとらせ給ひて庭上にたちいて給ふと
見えしかにはかにそらよりしうん【紫雲】たなひき
いきやう【異香=極楽浄土の芳香】よもに【四方に】くんし【薫じ=かおる】花ふりくたるとお
もへは八えう【八葉】のれんけ【蓮花】にうちのりこくう【虚空=大空】に
【左丁】
あからせ給ひけるこれをみる人〳〵きたい【稀代=世にも不思議なこと】の
おもひをなしこはありかたき御ことかなとを
の〳〵かうへ【頭】をちにつけてたなこゝろ【掌】をあは
せてらいはいする
【絵画 文字無し】
【右丁】
僧都はこれを御らんして仰けるいかにめん
〳〵よく〳〵きこしめせこのわかきみをいま
ちゝうへの御手にかけさせ給ふことまつたく
わたくしにあらすこのしゝうのきみはひとへ
にほとけのけしんにてわたらせ給へはをの〳〵
をふたらく【補陀落=観音の浄土】せかいへみちひきたまはんかため
にかくならせ給ふそやゆめ〳〵かなしみ給ふ
へからすたゝほたいしん【菩提心=無上の悟りを求め、成仏しようとする心】をふかくおこしおはし
ませとそすゝめられけるさるほとに仲太は
一まところ【一間所=縦横とも柱と柱との間一つしかない小さい部屋】にひきこもりものゝこゝろをあんす
【左丁】
るにさてもせひなきことゝもかなそれ人の
しんとしては君の御をんをかうふりさいしを
ふちし身をたてゝ世をあんせんにすこすこ
とそのをんのたかきことはしゆみせん【須弥山=仏教の世界観で、世界の中心、大海に聳える高山】もかきり
御なさけのふかきことはさうかい【蒼海】かへつてあ
さしこのをんをいかてかほうす【報ず】へきされと
も一命をすてゝあやうきをすくひたてま
つることこれ臣のみちなりしかるにそれか
しはいかなるすくせ【宿世】つたなき身なれはわか
とか【咎】をきみにおほせ【負せ=背負わせる】て御いのちをほろほす
【右丁】
こときやくさい【厄災】のかるゝところなししゝても
あきたることなしいかゝしてをつきま
いらせてこのとかをわひ奉らんとおもへと
もきみはすてにふたらくせかい【補陀落世界=観音が住むといわれる山】にいたり
たまへはわれをろかなる身のいかてかち
かつきたてまつるへきとやせんかくやあら
ましとあんし【案じ=思いめぐらす】かねてはうせん【忙然】としてゐ
たりしかあまりにあんしくたひれてす
こしまとろみたるゆめにいつくともなくた
つとき御こへ【「ゑ」とあるところ】聞えてなんちこのをんをほう
【左丁】
せんとおもはゝほたいしん【菩提心】をおこして諸国
をしゆきやうしてほとけのみちをねかひ
諸人をたすけんにはしかしとのたまふとお
もへはゆめはさめにけり仲太はこれをうけ
たまはりまことにありかたきをしへかなこれ
こそのそむところなれとて八さいになる
をんなこ六つになるわかこありしをはゝに
あつけよくかいしつゝすへきよしをかきを
きへんしもはやくいそかんとてとる物も
とりあへすやとを出てよかはのくわうみやう
【右丁】
ゐんにまいりひころたのみしそうつ【僧都】にあ
ひてことのよしをかたりてかみをそり名を
しんかいとあらため五かい【五戒】をさつかりをこ
なひけるか二とせありてそうつにいとま
申たまはりてしよこくしゆきやうに出に
ける
【左丁 絵画 文字無し】
【右丁】
さすか御はうのなこりもおしけれは坊の
はしらに一しゆのうたをそかきつけける
いつの世にこの身を人のなそらへて
もとめてやらんにこり江【濁り江=水の濁っている入江】の月
かやうにゑ【「え」とあるところ。】いし【詠じ】て山をたち出たつときみね
〳〵をめくりけるかあるときはくさのまくら
に露をかたしきあるときはいはのはさま
にこけのころもをむしろとしてかせをふせ
きよもすから【夜もすがら=夜どおし】ほとけの御名をとなへわかき
みもろともにひとつはちすのうてな【一つ蓮の台=注】に
【注 「はちす」=蓮の古名。「蓮の台(うてな)=極楽往生した者の座るという蓮の花の形をした台。 「一つ蓮の台=死後は一緒に極楽に生まれかわり同じ蓮華のうてな(台)にすわるという意】
【左丁】
むかへ給へとゑかう【回向】しさうしてんはいに
も仏のみなをわするゝことなしあるとき
ならのみやこの大ふつてんにまいりて仏の
御まへにつや【通夜】してよもすから御きやうを
たつてよみてあかつきかたになれは自他
ひやうとう緒所異とゑかうし給ひけるこ
そしゆせうなれかくてたうすの御坊あか
つきのつとめに出給ふかこのしんかいのあり
さまをみていとあはれさよとおほしけれは
ちかくよりそひ御身はいつちよりいかなる人
【右丁】
のしゆきやうしやとなり給へるそとた
つね給へはしんかいうけたまはりてわれは
ようせう【「えうせう」とあるところ。「幼少」】よりみやこにありてほつけつ【北闕=皇居、内裏】に
あさゆうしこう【伺候】の身なりしかしか〳〵のうれ
ひによりてかやうにうき世をいとひはんへ
るなりとかたりたまへはたうすいとあは
れに聞給ひてさてもありかたき御こゝろ
さしにこそとそかんし給ひける
【左丁 絵画 文字無し】
【右丁】
そのゝちしんかいとひ給ふはそも〳〵この御
ほとけは三国一のによらいとうけたまはり
侍るいかなる人の御さう〳〵【造像】にておはす
やらんととひ給ひけれはたうす【堂司】はきこし
めしてされはとよこ【横】のからん【伽藍=寺の建物の総称】はしやうむく
はうてい【聖武皇帝】のごこんりう【御建立】たうし【「たうす」に同じ】はりやうへん
そうしやう【良弁僧正=奈良時代の僧】と申て世にたくひなきかうそ
のにておはしますしかるにこの僧正のしやう
こく【生国】はさかみ【相模】の国おほやまのこほりうるしへ
むらのとみん【土民=土着の住民】の子にてましますこゝになん
【左丁】
えんたう【擔頭=軒先】に北のかたにしゆこんかうほさつ【執金剛菩薩】
みなみのかたにはくはんせをんほさつ【観世音菩薩】おはし
ますさてこのしゆこんかうほさつこかねの
わし【鷲】とへんけ【変化】ましましさかみの国へとひ
ゆき給ふこのりやうへんはそのころとし二さ
いなるかわら【藁】にて作りたるうつはものに入て
田のあせ【畔】にをきおやはたかやしてゐたりし
かこのわしかの子をかいつかみ【「搔き掴み」の変化した語=ぐいと掴む】てこくう【虚空=大空】へあかり
けるほとにちゝはゝかなしむことかきりなし
かくてこのわしなんと【南都】へきたり藤原のさいし
【右丁】
やう殿といふ人のもとへおとしをきたりこの
人しひしん【慈悲心】ふかくおはしけれは世にふひん
なることにしたまひてやしなひをかれけ
れはとしのかさなるにしたかひちゑさいかく
人にすくれたることたとへんかたなしさては
たゝ人にてはなしとて十三のとし出家せ
させけれはそのかくもん【学問】のそうめいなること
千人にもすくれたりさて廿一になるとき
みかとのきゑ【「え」とあるところ。帰依】そうとあふかれて僧正ゆるさ
れゑいりよ【叡慮=天子のお考えやお気持ち】をひとしうしてこの大らん
【左丁】
を御こんりうありしなり御ほそん【「御本尊」のことか】はるし
やなふつにてまつせしよくらん【末世濁乱…注】のほんふ【凡夫】
をさいとし給はんとの御ちかひいかてかむなし
かるへきひとへにしん〳〵【信心】をつくしてたのみ
きこしめしまことにありかたき御ことにこ
そ侍れとて
ちりはかり【塵ばかり=わずかばかり】くもりもあらすいる月は
らん世のやみのみちをともなへ
たうすの御坊もうち聞給ひていとありかたく
【注 世の中の秩序が乱れること】
【右丁】
おほして
いかてかはくもりはせまし月かけの
こゝろの水のにこりあらすは
かやうになかめて夜もほの〳〵とあけぬ
れはまたこそまいり侍らめとてたかひに
なこりをおしみてわかれ給ひけるさるほ
とに大なこんとの北の御かたは仲太三郎
かとんせい【遁世】して国〳〵をしゆきやうするよし
をきこしめしさても〳〵ありかたきこゝろさ
しにこそ侍れつら〳〵ものをあんするに
【左丁】
この侍従のきみと申ははつせのくはんせ
をんにいのりたてまつりてえたかわか子なれ
はいかてかゝるわさはいにはあふへきし
かるに父の手にかゝりてむなしくなりぬ
ることはいかさまにもほとけの御はうへん【方便】
にて生あるものはたかきもいやしきかし
こきもをろかなるものかれかたきことをし
らしめてのちの世をたすけたまはんとの
御ちかひなるへしかくありかたきことをまの
あたりにみなからなにゝこゝろをなくさみて
【右丁】
むなしくあたら月日ををくり侍るへきこ
のたひ仲太かいとくをこなはすはいかてか
侍従のきみかさきたちたるしやうと【浄土】には
いたるへきとおもひさため給ひてあるとき
大なこんとのさんたいし給ひたる御留主に
横川のそうつ【僧都】をしやうし【請じ=招き】たまひてみつ
からこときのをんなの身は五しやう【五障…女性がもっている五種の障害。次の15コマを参照】三しう【三従 注①】
の雲あつうしてしんによの月【注②】はれかた
く侍るよしうけ給はれはなけきても
なを【「ほ」とあるところ】あまりありねかはくはいかなるを
【左丁】
こなひをもしてこのたひしやうしのる
てん【しょうじ(生死)の流転 注③】をまぬかれたく侍るわれらこときの
ものゝのち世をたすかることさふらはゝ御
しめしにあつかりたく侍るなりとのた
まへはそうつきこしめされてこはあり
かたき御こゝろさしにこそ侍れそれ三かい【三界】
はくかい【苦海】なりまた猶如火たくともとかれ
てへんし【片時=少しの間、かたとき】もやすきことなしたうりまにてん【意味不明】
のたのしみもをよそかきりありつゐには六道
にりんゑ【「りんね(輪廻)に同じ】すへきことかへす〳〵もなけかし
【注① 女性が従うべきとされた三つの道。幼きときは父母に従い、少(わか)きときは夫に従い、老いたるときは子に従う。】
【注② 真如の月=名月の光が闇を照らすように、真理が人の迷妄を破ること。】
【注③ 衆生が、その業因によって生死の迷界を限りなく輪転し浮沈する意】
【右丁】
きことなりされは女人はおとこの子のつみを
一人にきすともとけり又おもてはほさつ【菩薩】に
して同心はやしや【夜叉】のことしともありある
程にはよくほとけのたねをたつてちこくの
つかひなりともきこゆかゝるあくこうふかき
女人のいかてうかむへきをかたしけなくけう
しゆしやくそん【教主釈尊】女人のために一せう【「一生」或は「一抄」か】めうてん【「妙典」カ】
をときたまひて女人のしやうふつ【成仏】をし
めし給ふされは五のまきのたいはほん【だいばぼん(提婆品) 注①】に
一しやふとくさほんてんわう【一者不得作梵天王 注②】ニしや大しやく【二者帝釈 注③】
【左丁】
三しやまわう【三者魔王 注④】四しやてんり【「わ」に見えるが「り」とあるところ】んしやうわう【四者転輪聖王(じょうおう) 注⑤】
五しやふつしん【五者仏身 注⑥】うんか女しんそくとくしやう
ふつ【云何女身速得成仏 注⑦】ととき給へりこれほつけのめいもん【明文。めいぶんとも。法典などに明らかに定めてある条文】
なりしかれはけたい【懈怠(けだい)=おこたり、なまけること】なく此きやうをわすれ
すしん〳〵にふかくおさめくちにはみたのみやう
かう【弥陀の名号】となへ給はゝあんらくせかいにいたりて
ほとけのたいさ【台座】はつらなりたまはんことうた
かひあるへからすされはすいこてんわうと申
すははんせうのくらい【万乗の位=天子の位】にそなはり給へとも
女人の身なれはうかひかたきことをなけ
【注① 提婆達多品(だいばだったぼん)の略。「妙法蓮華経」巻五の最初の品名】
【注② 一には梵天王となることを得ず。梵天王=インドの古代宗教で、世界の創造主として尊崇された神。仏教にはいって仏教護持の神となった。】
【注③ 二には帝釈 帝釈=帝釈天の略。インドの古代の神。仏教にはいり梵天とならび称される仏教の守護神。】
【注④ 三には魔王。 天魔の王。常に正法を害し、衆生が仏道にはいるのを妨げる者。】
【注⑤ 四には転輪聖王 四天下(須弥山の四方にあるという四つの大陸)を統一して正法をもって世を治める王】
【注⑥ 五には仏身】
【注⑦ 云何に女身速やかに成仏することを得ん】
【右丁】
き給ひて四てんわうし【四天王寺】をこんりうまし〳〵
てつねにはほつけをとくしゆ【読誦(どくじゅ)】したまへり
いはんやほんそく【凡俗】の女人しんせさるへきと
ねんころにをしへさせ
たまひ
けれは
【左丁 絵画 文字無し】
【右丁】
北の御かたもめのとの女はう【女房】もたねん【他念】なくち
やうもん【聴聞】申てかんるい【感涙】う【「宇」カ】をうるほしまことに
ありかたき御ことかなかゝるけうけ【教化】をうけた
まはれはしはしもかゝるすまゐいとはしく
さふらへいよ〳〵後の世をねかはんかの師に
はそうつ【僧都】をたのみ奉るへきとて御うちき【袿】
からのかゝみ【唐の鏡】をとり出し御ふせにたてまつり
給ふあるとき北の御かた大納言殿に申させ
給ふやうむなしくなりしわかことはちたひ【千度】
もゝたひ【百度】くいてもかへらぬことなりされは
【左丁】
いもうとのひめ今ははや十さいになりはへ
れはかれをいかならん人にもみせて世をつかせ
はやとおもひてあけくれやすきこゝろもなき
ところに花そのゝ大臣殿御ちやくし三位の
ちうしやう【中将】ことし十七さいときゝ侍るまゝこのへ
のかたへ申いれてさふらへはちゝはゝよろこひた
まひておさなくましますともちうしやうにあ
らせ申すへし今一とせ二とせはかりはこなたへ
わたさせ給へなしませまいらせんとあるほとに
をくり侍らはやとおもひさふらふなりとのたま
【右丁】
へは大なこん殿はなみたをなかしてしはし後いらへ
もましまさすやゝありてのたまふは侍従をわか手
にかけてうしなひしことよく〳〵おもへはてんま【天魔 注】の
わか心にゑたく【依託=神仏、霊魂などがのりうつること】してかゝるふるまひをしたるとこ
そおほゆれこうくはい【後悔】さきにたゝすこのうへはひ
めかこといかやうとも御身にまかせはんへれはいかやう
にもよくはからひ給へとおほせけるきたのかたも
この御いらへを聞て御なみたとゝめかねてち
やう【帳】のうちへいり給ひけるそのゝちめのとをめし
て大納言殿御こゝろもいまはしたいなしひめか
【左丁】
ことつくろへとてよろつこゝろのまゝにしたし【仕出し=用意する】め
てかいしやく【介錯=世話をすること】の人あまたえらひつけて大臣殿へま
いらせたまへはふうふの御よろこひはかきりなし
さてあけくれはやさしきあそひことなとなら
はせていとをしみ給へはちうしやう【中将】にあひな
れてむつひあそひ給ふ
【注 人が善事をなそうとするとき邪魔をするという】
【両丁 絵画 文字無し】
【右丁】
さるほとに北の御かたは今ははやこの世におもひの
こすことさらになし大納言殿御目をしのひ
そうつのかたへまいりかみをおろしおもひのまゝ
に後の世をねかひて侍従のきみかむまれん
しやうと【浄土】へまいりひとつはちすになりなんと思ひ
つめてめのとをめしておほせけるはいまははや
ひめはありつけ【在り付け=結婚して落ち着かせる】はべりぬうき世におもひのこ
すこと露はかりもなし御身もいまはこゝろ
さしのあらんかたへゆきたまへ我もしほた
いしん【菩提心】とけ【遂げ】てしつかなるかたにあんしつ【あんじつ(庵室)=世を捨てた人が住む仮のいおり】を
【左丁】
むすひなはを【「お」とあるところ】とつれをすへしそのときは
かならすとひたまへとそのたまひけるめのと
うけたまはりこはなさけなきことをうけたま
はり候ものかなたとひとらおほかみのすむのへ
のすへしゝくまのゐる谷のそこまてもはな
れたてまつらしとこそおもひ侍れことにこれ
はみつからもねかふところの御ほつこん【ほつごん(発言)】の御
のそみなれはいかてかはなれたてまつるへき
もろともにたきゝをとり水をくみてひとつ
はちすにむまれたてまつらんとそへしさふ
【右丁】
らへとかきくときけれは北の御かたきこしめし
さやうにほたい【菩提】をおもひたつならはなとかは
みはなし侍るへきさあらはあすおもひたつ
へきなりしつらひをせよとてちやうたい【帳台】に
いらせたまひ大納言殿へはひころのあらまし
をこま〳〵とかきをき給ひ見くるしき物とも
はこと〳〵くとりしたため【取り認め=きちんとする】御身にそへるものな
し五更の空もちかつけはとくしていて
なんといそき給ふかさすかとしころ【多年】すませ
給へるところなれはたちいてたまはんな
【左丁】
こりもすてかたくいつかへるへきみちにもあ
らす御なみたのおつるをとゝめて
たちかへるみちにあらねはまきはしら
くつるをたれかあはれともみん
かやうにあそはしてはしらにかきつけてひそ
かに御所をいてさせ給ひけるいつなれさせ
給はぬかちはたし【徒跣=履物をはかないで歩くこと】の御あゆみのいたはしさよた
ま〳〵ゆきあふ人にもをそれす横川といふ
所へはいつちより行そとたつねたまへはな
さけあるものゝくはしくをしへ侍れはやう
【右丁】
〳〵そうつのもとへおはしつきぬそうつは見
たまひてうちおとろきあはれにおほしめし
二三日はいたはりまいらせてよろつありかた
きものかたりなとあそはしけるそのゝち北の
かた御くしおろしたきよしをきこし給ふそう
つもちからなくかつうは【「且は」の長音化。一方では】又さいと【済度】のためなれ
はほとけの御まへにむかひてるてんさんかいち
う【流転三界中】をんあいふのうたん【恩愛不能断】きをんにうむゐ【棄恩入無為】しん
しつほうをんしや【真実報恩者…「流転」からここまでは出家剃髪の際に誦する偈の最初の一句】といふもん【文】をさつけ給ひ
て二人なから御くしをおろし給ふて哀なり
【左丁 絵画 文字無し】
【右丁】
けれよりこの山のふもとにしはのいほりをひき
むすひ【庵を構える】三そんのふつさう【三尊の仏像】をあんちし奉り北
のかたはみねにのほりてつま木【薪】をひろひめ
のとはたにゝくたりてあかの水【閼伽の水=仏に供える水】をくみてほとけ
にさゝけゝる六時ふたんのかう【不断の香】のけふり【煙】はみね
のきりとたちのほりつねのともし火のかけは
谷のほたるの夜をてらすにひとしたゝあけ
くれはほつけをとくしゆ【読誦】しねんふつを申
て侍従のきみもろともにひとつはちすの
えんとなし給へとゑかうあるこそあり
【左丁】
かたけれあるとき二条の右大臣殿の御むす
め大はらのまつりのかへるさ【帰り道】に御こしにめされ
て供奉のひと〳〵あまためしつれてこのあん
しつ【あんじつ(庵室)】にたちよりてひくに【比丘尼】たちのおこなひも
のゝしつらひを御らんしていかさまにもこれは
たゝならぬ人の世をいとひたるにこそあら
めありかたき御心さしかなとて御なみたをな
かし給ひて
世をすてゝ月のいるさ【入り際】のやまのおく
うらやましくもすめるいほかな
【右丁】
北の御かたきこしめしやさしくもきこゆるもの
かなといとあはれにて
おもひいる山のおくなるいほりこそ
つゐのすみかのうてななりけれ
とうちなかめるまへはいとたうとくてたち
いらせたまひうちつけなからさま〳〵ありか
たき御ものかたりなとありて時うつれは又
こそとちきりてなく〳〵わかれさせ給ふ
【蔵書印】
【左丁 文字無し】
【両丁 文字無し】
【両丁 文字無し】
【両丁 文字無し】
【裏表紙 文字無し】
【文字なし】
【「子、井、木」は、それぞれ「ネ、ヰ、ホ」とした。】
【各章末は「〇」が記載されている。それ以外の場所でも句読点の位置に時折「〇」と記載されている。記載通りに翻刻し、注記を付した。】
【文末は、節の最後は「。(日本語の句点)」、節の途中は「.(英語のピリオド)」で記載されている傾向にあるが、そのようになっていない所もあるので全て「。」に統一した。】
【「エ」と「ヱ」は区別し、記載通りとした。】
【明治学院大学 聖書和訳デジタルアーカイブスに同版と思われるものが公開されている。一部の不明瞭な文字については同書を参照した。】
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《題:約翰福音之傳》
善徳纂
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約翰之福音伝 ヨアンネスノ タヨリ ヨロコビ
ハジマリニ カシコイモノゴサル。コノカシコイモノ ゴクラクトモニゴザル。コノカシコイモノワゴクラク。
ハジマリニコノカシコイモノ ゴクラクトモニゴザル。ヒトワコトゴトク ミナツクル。ヒトツモ シゴトワツクラヌ、
ヒトワツクラヌナラバ。ヒトノチカニイノチアル、コノイノチワ ニンゲンノヒカリ。コノヒカリワ クラサニカヽヤク。
タヾシワ セカイノクライ ニンゲンワ カンベンシラナンダ。ニンゲンワアル ナワヨハン子ス、ゴクラクカラツカワシタ。
アノヒトワ ダンギヲカタリニイータ、ヒカリユヱタンギカタル、ミナニンヒトヨリ ゾンジル。コノヒトワヒカリワ
ナイ、タヾシワ ヒカリユヱ ダンキヲカタル タメニ。 コノマコト ヒカリ ミナニンゲンタセカイヱクル カヽヤク。
ヒトワセカイニヲル、セカイワ ヒトニツクラレタ、タヾシワ セカイワヒトヲ シラナンダ。ヒトワ チジンノヤシキヱ
マイタ、タヾシワヂシンノ ニンゲン ヒトヲムカイニ デナンダ。タントニンホド ヒトヲムカイニデタ、ヒトワイ
セイヲトラシタ、ゴクラクノ コドモニナル、コノニンゲン ヒトノナヲゾンジル。アノヒト〴〵 チヨリナイ、ニンゲンノ
ニクヨクヨリナイ、ヲツトノヨクヨリナイ。タヾシワ ゴクラクカラ ウマレタ。カシコイモノワ ニンゲンニナラノタ、
ワタクシドモ トモニヲツタ。ワタクシドモ ヒトノクライヲミタ、クライワ チヽノ ヒトリムスコ、ヲンゲイホントニ
イイパイ〇【。】ヨハンネス ヒトユヱ ダンギヲカタル、ヨバアテユフタ。ワシワユフタ、コノヒトワシニツイテクル。
ワシガ マヱニヲータヒトガ、ワシノイヂバン サキニヲル。ミナワシドモ ヒトノアマタノコト ヲンゲイノタメニ オンゲ
イオ ウケトル。 ムゼスカラ ハツトヲ ユイツケタ。 タヾシワ エズヽクニ クレストシク オンゲイホントニセル。
イマダニ ニンゲンヲラヌ ゴクラクヲミル。タヾシワ ヒトリムスコ チヽガダイテヲル ワシドモニ ハナシヲシタ。
ユダイニンゲン イルサレム ヂヨカカラ シントシマドモ ネビニンゲン ツカイニ ヤアタトキニ ヨハンネスニトウ。。
オマエワダレ ヒトワカヨウニ タンギヲカタアタ。 ヒトワヘントコタエル ムリワナイ ユフタト。ワシワ クレストシデ
ワナイ。アノヒト〴〵 ヒトニオタ、ナニヲ オマエワ ヰリヤスカ。ヒトワスヲタ、ワシデワナイ。オマエワ マエカラ
シイテオルヒトカ。ヒトワヘントコタエル ワシデワナヰ。アノヒト〴〵 ユフタ。オマエワタレガ、ヂシンカラ ナニヲモ
ノユフカ、ワシドモヲ ツカイニヤータヒト〴〵ニ ヘントコタエル。ヒトワユフタ、ワシアレチニ ヨバルヒトノコエ、ソホラミ
カドノ ミチヲナヲセヨ。シタガツテ ヰザイヤス マエカラ シヰテヲルヒト モノユフタ。コノツカイニヤラレタ
ヒト〴〵フワリサイ ニンゲン。アノヒトタチ ヨハンネスニトウテユフタ、ヲマエワ クレストシデワナイ、ヰリヤスデワナヰ。
マエカラシヒテヲル ヒトデワナヰ。ナセヲマエ ミヅデ コリヲトラセル。ヨハンネス ヘントコタエテユフタ。ワシミヅデ
コリヲトラセル。タヾシ オマエタチノナカニ タツテヲルヒト、オマエタチワシラヌ。アノヒトワ ワシニ ツヰテクル、
ワシノマユニ オータ、ワシコヽロヤスヰカラクツノヒボヲトク。ミナコト〴〵ク ヨルダノカワムカエ ベタバラトコロニ ナツタ、
ドコニ ヨハンネスワ ミヅデコリヲトラセル〇【。】ミヤウゴニチ ヨハンネス エズヽクヲ ヒトノトコエクルノヲ ミテユフタ。ゴクラ
クノムタ「ヒツジノコヲミヨ、ヒトワセカイノツミオトリヲクユク。アノヒトユエ ワシワユフタ、アノヒトワ ワシニツヰテクル、ワシノ
マエニオタ、ヒトワ ワワシノ ヰチバンサキニオルユエ。ワシヒトヲシラナンダ。タヾシワ ワシミヅデ ココリヲトラセルニイタ、
ヰスラヱル ニンゲンニ ケブツ サセルユヱ。ヨハンネス ダンギヲカタアテユフタ。ワシカミワ ウナジコト ヰヘバト
テンカラ アマクダル、ヒトノウエニ オルノヲミタ。ワシガ ヒトオシラナンダ。タヾシワ ワシヲ ミヅデ コチヲトラセルニ
ツカイニヤツタヒト、アノヒトワシニアノヒトワシニユフタ、オマヱワカミヲ ヒトニアマクダルオルノヲミタ、コノヒトワカミデ アリガタヰデ
コリヲタラセル。ワシワミタ、ダンギヲ カタアタ。コノヒト ゴクラクノ ムスコ〇【。】ミヤウニチ ヨハンネス フタリノ
デシドモニ フタヽビ タアテオル。エズヽクヲ アヨブモノヲ ナガメテユフタ。 ゴクラクノムクヒツジノコヲミヨ。フタリノ
デシドモ モノユフノヲキイタ、ヱズヽクニ ツヰテクル。ヱズヽク ウシロヱ フタリノツイテクルモノヲミテ ユフタ。
マエタチ ナニヲタヅネルカ。アノヒトタチユフタ、ラビ コノコトバシヽヨウチガウドコニヲル。ヒトワユフタ、ミニイケ。アノヒト
タチ ヒトヲ ドコニヲルノヲミニイータ。ソノヒ アノヒトタチ ヒトワトモニヲル、ヨツドキヲマチル。フタリノニンゲン
ヒトリ ヨハンネスヲ キイタツイテキタ、アンダレヤス シモン ペトロシノアニ。アノヒトハジマリ ヂシンンオ オトゝ
シモンミテユフタ。ワシドモ メシヤス、コトバチガウクレストシ、メケタ。ヒトワ ヒトヲヱズヽクノ トコロエツ
レテヰク。ヱズヽクヒトヲ ナガメテユフタ。オマヱワ シモン、ヨナノムスコ、ヲマエワ ナヲツケラレヅ ケパス、コノナワ
チガウペトロシ。ミヤウニチ ヱズヽク ガリナヰノ トコロエ ソトイヰキタイ
ピニポスヲメケテユフタ。ワシニツイテ
コイ。ピニポス ベツアヰダカラ アンダレヤト ペトロノトコロヨリクル。ピニポス ナタナヱル ヌケテユフタ。ワシドモ
ヱズヽクヲ ナサレスノニン。ヨゼフノ ムスロ ムゼスワト マエカラ シヰテヲルヒト〴〵、ハツトホンノナカニ ヒトユヱ
カイタノヲ ヌケタ。ナタナヱル ヒトニユフタ。ヨヰモノ ナサレテヨリクルカ。ピニポスユフタ。ミニコヰ。 ヱズヽク
ナタナヱル ヂシンンオ トコロエクルノヲミテ。ヒトユヱユフタ。マコト ヰスラヱル ニンゲン ウソヰワヌミヨ。ナタナヱル
ヒトニユフタ ドヲシテ オマヱワワシヲシヒテヲル。ヱズヽク ヘントコタヱル ヒトニユフタ、ワシオマヱヲミタ ピニポス
オマヱワ ヰチジクノキノシタニ オータモノヲ マダヨバラヌ。ナタナヱル ヘントコタエテ ヒトニユフタ。 ラビ オマエワ
ゴクラクノムスコ。ヲマエワ ヰスラヱルノトノサマ。ヱズヽク ヘントコタエテ ヒトニユフタ。ワシオマエワ ヰチジヂジクノキノシ
タニオータノヲミテユフタ、ソレユヱゾンジル、コノタカイヨリコトヲヤガテミヅ。ヒトワヒトニユフタ。ワシマコト ホントニ
オマエタチニユフ、イマヨリ テンガアヰタ。ゴクラクノカミサマアガル、ニンゲンノムスノウユイアマクダルノヲミズ〇【。】
ミイカミイカアトニ ガリナヤクニ カナトコロヱ フルマイヲシタ、ヱズヽクノハヽ ソコニオータ。ヱズヽク デシドモトニシタガツテ
フルマイエヰヽタ。ブシyドウシユワ ナカアタトキニ ヱズヽクノハヽヒトニユフタ。アノヒトタチ ブドウシユワナヰ。ヱズヽク
ヒトニユフタ。オナゴ、ヲマヱ ワシトモニナニヲセルカワシノトキニマダコヌ。ハヽ シモヲトコドモニユフタ。ヒトワナニヲ オマヱ
タチニ ヰヒツケル、シタガツテシヨ。アスコニヰシノチヨヅバチ ムムツノ ナカニヲノ〳〵 ニサンジヨアル ナラベテアル、
シタガツテ ユダイニンサマ〴〵 キレニセル。ヱズヽク アノヒトタチニユフタ。チヨヅバチニ ミヅヲ イーパヰ イレヨ。アノ
ヒトタチ ヰパイ クビキシイレル。ヒトワアノヒトタチニ。 ヰマカイダセ、ヰヒツケヤクニ モテキテヤレ。
ヒツケヤクワ ドコカラドコカラクルシラヌ。タヾシワ シモヲトコドモ ミヅヲ カヱダシタノヲ シヰテヲル。ヒトワミヅヲ ブド
ウシユニシテ ハカツタ アジヲシテミタ、コノヒツケヤクワ ムコヲヨバル。ヒトニユフタ、ミナニン ハジマリハジマリニ ヨイブド
ウシユナラベル、ニンゲンワ ヨヲタトキニ、ウスイブドウシユヲトラセル。ヰマカラヲマヱワヨイブドウシユヲタバウ。ヱズヽクワ
イチバン サキニ フシギナコトガ カナトコロニ、ガリナヤクニヱツクウタ、ヂシンノ クライミセル、デシドモト ヒトニゾンジル
ソレカラヒトワ ハヽキヤウダイ デシドモトモニ カパナウ トコロユヲリタ。ソコニ チイトアヰダヲータ。ユダヰニンノゴセワ
チコナルトキニ、ヱズヽク ヰルサレムジヨカヱ ノボヲタ。ヒトワワテラヰ ウシ ムクヒツジ、 ハト ウルモノヲ リヤウガヰヤコシカ
ケテヲルモノヲミタ。ヒトワナワヲモテキテ、クンデ シペヲコシラヱル、ミナ〳〵 ムクヒツジ ウシヲ テラノソトヱ ダヰ
テヤル、リヤウガイヤノ ゼニヲ バラマケテ、カキモノダヰ ヒクラカヤス。ハトヲウルヒト〴〵ニユフタ。 オマヱワ コノアソコヱ
モテヰケ、ワシノチヽノ シロノトコロエ ミセヲツクルナ。ソノトキニヒトノデシドモ ヲモツタ カヰテアル。オマエノ シロユニ
ハナハダ ホシヰクタブレル。ユダヰニン ヘントコタヱルヒトニユフタ。 オマエコノコトヲツクル、ナニヲフシギナヲ ミセルカ
ヱズヽク ヘントコタヱテ アアノヒトタチニユフタ。コノテラヲコワセヨ、ミカドアヰダニ ワシガツクル。ユダイニンユフタ。コノ
テラ シヂユロクネンガアイダニ ツクウタ、タヾシワ オマヱミイカヾ アヰダニ ツクルカ。 ヒトワヒトノカラダノテラユヱコノ
コトヲユフタ。ヱズヽク シンデカラ ヰキカエタトキニ、デシデシドモ オモータ、ヱズヽクコノコトヲ ユフタ、キヨモンノホンニ
ヱズヽクユフタ コトバヲゾンジル。パスカ ゴセクノトキニ、ヱズヽクヰルサレム ジヨカニ オルトキニ、タントニン
ゲンヒトヲ フシギナコトヲ ツクリノヲミタ、ヒトノナヲ ゾンジル。タヾシワヱズヽクミナニン シヒテオル
ヂシンヲ アノヒトタチニマカセヌ。ヒトワニンゲンユヱ アラワスコトヰラヌ、ヂジンニンゲンノナカニ ナニガアルシヒテヲル〇【。】
ソレガシヒト フワリサヰニン ユダイニンゲンノ カシラヒシラヒト ナワニクデモス、アノヒトワ ヨルヱズヽクノトコエヰーテユフ
タ。シヽヨウ、ワシシヰテヲル、 オマエワ ゴクラクカラクル センセヰ、ニnニンゲンノ カタチワヲラス、オマヱワ ツクル
モノガ フシギナコトガツクレル、ゴクラク タタスカラヌニヲヰテワ。ヱズヽク ヘントコタヱテ ヒトニユフタ。ワシマコト ホントヲ ヲマヱニユフ。 ニンゲンワ フタタビウマレヌナラバ、ゴクラクノ クニワミヱヌ。ニクデモス ヒトニユフタ。トシ
ヨリニン ドウシテウマレル、フタヽビ ハヽノ ハラニ ハヰレテウマレルカ。ヱズヽク ヘントコヱル。ワシヲマヱニ マコト
ホントヲユフ。ニンゲンワ ミヅデ カミデ ウマレヌナラバ ゴクラクノ クニヱハイレヌ。ニクデ ウマレルモノ ニクワ。
カミデウマレルモノシンワ。オマヱワ ヲドロクナ、ワシヲマヱニモノユフ、オマヱタチワ フタヽビシカリウマレル。カゼドコニモ
ホシヰフク。ヲマヱワ ヰキヲキク、タヾシワ ドコカラクル、ドコヱイクシラヌ、ミナニン カミデウマレタノヲウナシ
コト。ニクデモス ヘントユタヱテ ヒトニユフタ。ヰカイニ コノコトナレルカ。\tヹズヽクヘントコタエテ ヒトニユフタ。
\tヲマヱワヰスラヱル ニンゲンノ シヽヨウ、コノコトヲ シラヌカ。ワシヲマヱニ ホントマコトニユフ。ワシシヰテヲ
\t\tルコトヲ モノユフ。ワシミタコトヲ ダンギカタル。タヾシワ オマヱタチワシノ ダンギヲキカヌ。ヲマヱ
ゾンジヌナラバ、ワシヲマヱニ ジノモノユフ。ワシテンノ コトヲ ユフニヲヰテワ、イカヰニオマヱタチゾンジルカ。
ミカラダワヲラヌ テンヱノボル。タヾシワ テンカラ アマクダル テンニヲヽタ ニンゲンノムスコワ。ムゼスワ
アレチニクチナワヲ サシアゲタ。ニンゲンノムスコウナジコトニサシアゲラレズ。ミナニンヒトニゾンジル クサラヌ
タヾシワヰノチヲ アランカギリアルユヱ。ゴクラク セカイノニンゲンヲ タシカニカワイガル、シトリムスコヲトラ
シタ、ミナニン ヒトニゾンジル クサラヌ。タヾシワ アランカギリイノチヲアルユヱ。ゴクラクワコノムスコヲ セカイヱ
ツカヰニワヤラヌ、セカイノ ニンゲンヲ ヰマシメルタメニ。タヾシワ セカヰノ ニンゲンヲスクウタメニ。ミナニン
ヒトニゾンジル ヰマシメラレヌ。タヾシワ ゾンジヌヒト ヰマシメラレタ、ゴクラクノヒトリ ムスコノナヲゾンジヌ。
アノヰマシメルワ タシカニ、ヒカリガ セカイヱカヽヤク。タヾシワニンゲン クラサワホシヰ ヒカリワヰラヌ、アノ
ヒト〴〵ノ sシゴトガワルイユヱ。ミナミナニンワルイモノヲツクル、ヒカリヲキラウ、ヒカリノトコユヱコヌ、アノシゴトアラワレヌ
タメニ。ミナニンマコトヲツクル、ヒカリノトコヱクル、ヒトノゴクラクラクデ ツクラレタ シゴトヲアラワレルタメニ。
ソノノチヱズヽク デシドモトモニ ユダイクニキタ、アノヒトタチトモニ ソコニヲータ、コリヲトラセル。タヾシワヨハン
ネス アヰノンサレムトコロヱチカヰ コリヲトラセル、タントミヅアル、ニンゲンワ ツイテキテ、コリヲトルユヱ。ヨハン
ネスクロヲナカヱワ マダイレテレヌ。ソノトキニ ヨハンネスノ デシドモユダイニンゲントモニキレニセルエ□ アラソヲタ。アノヒト
タチヨハンネスノ トコヱキテヒトニユフタ。シヽヨウオマヱトモニヨルダノカワノムコヲニオル、オマヱワダンギヲカタルヒト、
ミヨコノヒト コリヲトラセル、ミナニンヒトノトコヱツヰテクル。ヨハヨハンネス ヘントコタヱテユフタ。テンカラクダサレナンダ
ナラバ、ニンゲンワ ナニモトレス。オマヱタチヂシンワシニシルシアラワシタデ、ワシワユフタ、ワシクレストシテワナヰ。
タヾシワ ヒトノ マヱニツカヰニ ヤラレタヒト。ハナヨメアルヒトムコノ、ムコノトモダチ タアテキテ、ムコノコヱユヱタント ヨロコブ。
ワシヰマ アマタノコトヲ ヨロコブ。 ヒトワ シイカリヒロガル、ワシシヰカリヘラス。ウヱカラ アマクダルヒト、ミナニンニアガ
ル。ヒトワミタリキイタリ シタコトヲ ダンギニカタル。タヾシワニンゲンノ カタチワヲラヌ ヒトノダンギヲキク。ヒトノ
ダンギヲキクヒト、ゴクラクノ マコトニハンヲオス。ゴクラクヱ ツカイニヤラレタヒト、ゴクラクノコトバヲユフ。ゴクラクカラカミサマ
タントホド クダサレル。テンノチヽワ テンノムスコヲカワイガル、アマタノコトヒトニ ヰヒツケテ サシテトラセル。テンノムス
コニザンジルヒトヰノチヲアランカギリアル。タヾシワテンノ ムスコニゾンジヌヒト、ヰノチヲミルマイ。タヾシワゴクラクヒトニ
バチガ アタアタリヲル〇【。】
カシラヒト モノシリトキニ、フワリサヰ ニンゲンヱズヽク ヨハンネスタントヨリ デシドモニセル、コリヲトラセルノヲ キイタ。
タヾシワヱズヽクヂシン コリワトラセナンダ、ヒトノデシドモ ツクル。ヒトワユフダヲ ハナレテ、フタヽビガリナヤクニヱイヰテ。ヒト
ワシイカリサマラヤクニヲ トヲテヰク。サマラヤクニノトコロヱナワ スヰカアル、チカヰヤコプ ヨゼフムスコニトラシタ デンジワ
ツイテキタ。ソコニヤコプノヰドワ、ヱズクムツドキタビヲ シテカラツカレテ、ヰドヱコシカケル。ソレガシヲナゴ サマラヤ
トコロヨリミヅヲ カヱダシニキタ、ヱズヽクニユフタ、ワシニノムニトラセヨ。タヾシワヒトノ デシドモムラヱ クヒモノカイニイヽタ。
サマラヤノヲナゴ ヒトニユフタ。ワシサマラヤノヲナゴ、ユダイニンゲン サマラヤサマラヤノニンゲントワ ツキヤイデワナヰ。ヰカイニヲマヱワ
ユフダイニンワ【「ワ」に濁点】シニ ノムニコウカ。ヱズヽクヘントコタヱル ヒトニ工フタ。ヲマヱゴクラクカラ クダサレタモノ、ダレガ
ヲマヱニハナシヲセルト ワシニノムニトラセヨノヲ モノシリナラバ。ヲマヱワヒトニコウ、ヒトワトヲマヱニ ヰノチノミヅヲトラセル。
ヲナゴヒトニユフタ。ヰドワノカイ、カシラヒト ツルベワナヰ、ドヲシテイノチノ ミヅヲトルカ。ヲマヱワタカヱヨリクシノセン
ゾヲヤコブ、ワシドモニヰドヲ トラシタヒト、ヒトワジシン、ヒトノムスコドモ、ケダモノトモニ ミナノムヰドヨリ。ヱズヽクヒー【「ト」】ニ
ヘントコタヱテエフカ。ミナニンコノミヅノム、フタヽビクチガカワク。ワシトラセルミズ ノムヒト、アランカギリクチカワカヌ。
タヾシワワシトラセルミヅ、ヒトノナカニ ワキミヅニナル、ヰノチノアランカギリフキデル。ヲナゴヒトニユフタ。カシラヒト
コノミヅヲワシニトラセヨ、クチガカワカヌヨニ、フタヽビワミヅヲカイダシニワコヌ。ヱズヽクヒトニユフタ。オマヱノオトヲヨバレコヽヱ
コイ。ヲナゴベントコタヱテユフタ。ワシヲートワナイ。ヱズヽクヒトニユフタ、ヲマヱワヨイハナシヲシタ、ワシオートワ
ナヰ。ヲマヱワゴニン ヲトガアータ、ヰマアルワヲマエノ オートデワナヰ。コノコトマコトニユフタ。オナゴヒトニユフタ。カシラ
匕ト、ワシヲマヱワマヱカラ シヒテヲルヒトミル。ワシノセンゾヲ コノヤマヱオガンダ。タヾシワオマヱタチ ヰルサレム
ジヨカヱシヰカリオガム ココロハナシヲセル。ヱズヽクヒトニユフタ。オナゴワ【「ワ」に濁点】シニゾンジヨ、ヰヒトキスギテカラコヰ、オマヱ
タチ コノヤマニナイ、イルサレムジヨカニナヰ、テンノチヽニ マヰルマイ。ヲマヱタチ シラスコトヲオガム。ワシトモシヒ
テヲルコトヲ ヲガム、スクウコトユダイニンゲンカラ コルユヱ。ヰヒトキスギテカラコイ、ヰマノアイダニワ、マコトマヰル
ヒト〴〵テンノ チヽニシンカラマユトヲガム。テンノチヽワカヨヲニ マイルヒト〴〵 ダヅネル。ゴクラクワ シンワヒトヲ
マヱルヒト〴〵、マコトシンノヨホニヒトヲキヤマツテヲガム【ムの右側に丸印。その後空白。】 。ヲナゴヒトニユフタ。ワシシイテヲル、メシヤスクレ
ストシトナヲツケラレタ、ヤガテクルヒトワ、クルトキニミナ コトゴトクワシドモニ ハナシヲセル。ヱズヽクヒトニユフタ。
ワシラニ、オマヱニモノユフヒト。ソノトキニデシドモキテ、ヒトワオナゴニ ハナシヲセルノヲオドロク。タヾシワニンゲン
ワオラヌニ、ユウタ、オマヱナニヲ タヅネルカ、ナニヲヒトニ ハナシヲセルカ。オナゴミヅカメ ヲイテ、コノトコロヱ
ヰーテ、チヤウニンニユフタ。ミナワシワ ツクウタコトワシニ ハナシヲセルヒトヲミニコヰ、ヒトワクレストシカ。アノ
ヒトタチトコロヨリヰーテ、ヱズヽクノトコロヱ ツイテクル。イマノアイダニデシドモヒトニ シタガツテユフタ。シー
ヨウタベヨ。ヒトワアノヒトタチニユフタ。ワシオマヱタチ シラヌタベモノ タベルニアル。デシドモ モノヰヒヤウ、
ダレガヒトニ タベルニトラシタカ。ヱズヽクアノヒトタチニユフタ。ワシヲツカイニヤータヒトノゴジヨヒヲキヰテツクル、
ヒトノシゴトヲシマウ、ワシノタベモノワ。オマヱタチワ モノユフカ、モヲヨツキ ヰネヲカリコムミ【「ミ」に濁点】ヨ。ワシヲマエタチニユフ
メヲアースヰテ デンジヲミヨ。イネガアカラムデカリコム。カリコムヒト ヒヨチントル、クダモノ ヰレテヲク、マダキヰノチ
アランカギリ。マクヒトカリコム ヒトモニヨロコブタメニ。コノコトバ カヨウニマコト、ホカノヒトマク、ホカノヒトカリコム。
ワシヲマヱタチヲ ツクラナンダコト カリコムニツカヰニヤル、ホカノニンゲンオコシタ、ヲマヱタチワアノヒトビトノ シゴト
ヲハヰル。コノトコロノサマラヰ ニンゲンヱズヽクニ タントゾンジル、オナゴガアラワレテユフタ、ヒトワシニミナツクラ
レタコト ハナシニシタユヱ。サマラヰノニンゲン ヱズヽクノトコヱ ヂシントモニヲル シタガイニキタ、アノヒトワ
アシコニフツカヾアヰダヲル。タントヨリ ニンゲンヒトノコトバユヱゾンジル。コノヲナゴニハナシヲシタ。ワシドモヰマノアヰダニ
オマヱノコトバユヱクゾンジヌ。ジシンキイテシイテヲル、アノヒトマコトクレストシワセカイノ スクウヒト。フツカアトニヱズヽク
アーチエヰーテ、ガリナヤノ クニヱツイテキタ。ヱズヽクヂシンハナシヲシタ、マヱカラシヒテヲルヒト ヂシンノクニヱヲヰテワ。
タトヌルコトワナヰ。ガリナヤニンゲンゴセクニギタヒト〴〵、ヒトワヰルサレム ジヨカユゴセクノトキニツクルコト ミナミテ、ヱズ
メクガリナヤクニヱツイテキタ、ムカイニデタ。ヱズヽクフタヽビ ガリナヤクニヱカナムラヱ、ミヅヲブドウシユニシテハカアタ
トコロヱツヰテキタ、テンカノサムラヰ アシコニゴザル、ヒトノムスコ カパナウムラヱヤマアル。コノヒトヱズヽク ユダヰクニヨリ
ガリナヤクニヱ ツイテキタトキヒタ、ヒト〳〵シタガヰニキタ。ヲリテコイ ワシノヤガテシヌ ムスヲナヲセヨ。ヱズヽクヒトニ
ユフタ。ヲマヱタチワ フシギガハレヌコトガ ミナンダナラバ、ゾンジヌ。テンカノサムラヰヒトニユフタ。カシラヒト、ワシノムス
コシナスマヱニ、シタヱヲリヨ。ヱズヽクヒトニユフタ。ヰク ヲマヱムスコタスカル、コノヒトヱズヽクユフタ コトバヲゾンジテヰータ。
ヰマノアイタニヒトワ シタヱヲリテゴザル、シモヲトコドモ ヰキヤアテハチシヲシダ。ヲマヱノムスコタヅカル。アノヒトナンドキニ
ナヲタトトヲタ。シモヲトコドモユフタ、サクジツ、ヨツドキニネツヒヤウナヲータ。チヽワシーテヲル、アノトキニヱズヽクオマヱノムスコ
ワタスカルトユフタ。ヒトワジシン カナイノモノマデゾンジル。ヱズヽク ユダヰクニヨリ ガリナヤクニヱ ツヰテクルトキニ、コノフ
タヽビフシギナコトヲシタ〇【。】
コノヽチコダイニンゲンノゴセクノトキニ ヱズヽクヰルサレムジヨカヱノボル。ヰルサレムジヨカヱ ムクヒツジモンヱチカイ、ヰケスワ
ゴホンデクンデアル、ソノチワヘブラヱコトバ、ベテスタ。コノナカニタント クゼイビヤクニン、メクラ、チンバ、テクネヒト
〴〵ネテヲル、ミヅノヰゴクヲマチテヲル。アマツカミワトキ〴〵ニ ヰケスヱアマクダアテ、ミヅヲヰゴカス。ミナニンミヅガヰ
コイテカライチバン サキヰハイル、ミナヰチドウニナヲル。アスコニワ ビヨニンサンジユハチネンワヅラアテヲル。ヱズヽクコノヒトヲ
ネテヲルノヲミテ、ナガイアヰダヲルノヲ シヰテユフタ。オマヱワナヲリタヰカ。ビヤウニンヒトニ ヘントコタヱル、カシラヒ
ト、ミヅガヰゴイテカラ、ヒトワナシ、ワシヲ ヰケスチカヱ ホヲリコム。ワシヨリサキヱ ベツノニンゲンハヰル。ヱズヽク
ヒトニユフタ。タテヨ、ネドグヲマクウテ カヅイテイケヨヒトワタチマチニナヲタ、ネドグヲマクウテカツイデ アヨブトキニ、
コノモンピノヒニ。ユダイニンゲン ナヲタヒトニユフタ。コノアヰダノモンピニ、ネドグヲカツヰデイクノヲトメル。ヒトワヘン
トコタヱル。ワシヲナヲスヒトワ、ワシニユフタ。ネドグヲカツヰデヰケヨ。アノヒトタチヒトニトウ、ドノヒトガヲマヱニエフタ、
ネドクヲカシ【ツ?】ヰデヰケ。タヾシナヲタヒト、ドノヒトカシラヌ。ヱズヽククンゼイヒト〴〵 ソノトコロニヲルニ、トヲテヰータ。
ソノヽチヱズヽク ヒトヲテラデメケタ、ヒトニユフタ。ミヨ、ヲマヱヨヲナタラ、ツミヲツクルナ、モワルワナラヌ。コノヒト
アーチヱヰーテ、ユダイニンゲンニハナシヲシタ、ヱズヽクヂシンヲナヲシタ。ソレユヱ ユダイニンゲンヱズヽクソコナウ、ヒト
ヲコロシタヰ、モンピニコノコトヲツクルユエ。ヱズヽクアノヒトタチニヘントコタヱル。ヰマヽデワシノチヽワ シゴトヲセル、ワシガ
シゴトヲセル。ソレユヱユダイニンゲン マツ【フ?】トシトヲコロシタイ、モンピバカリワナイ ソムク。タヾシワヒトガ ゴクラクヂシン
ノチヽヲモノユフユヱ ウヌツカラ ゴクラクヱウナジコトヲツクル。ヱズヽクヘントコタヱテ アノヒトタチニユフタ、ワシヲマヱタチニ
ホントマコトヲユフ、ムスコジシンカラ コトワツクラヌ、チヽノツクルコト ミナンダナラバ。タヾシワヒトノツクルコトヲ
ムスコワウナジコトニツクル。チヽワムスコヲカワイガル、ミナツクルコトヒトニミセル、コノシゴトヲタイヨリヤガテミセル、
ヲマエタチワヲドロク。チヽワシンダノヲ タスケルトヰキカヤストホリニ、ムスコワウナジコト ミナニンヒトワ、ホシヰイキカ
ヤス。チヽワニンゲンヲセヰバイヲセヌ。タヾシワセイバヰヲスルノヲ ミナムスコニトラシタ。ミナニンムスコニジニヲセル、チヽ
ニジギヲセルトホリニ、ムスコニジギヲセヌヒト、ヒトヲツカヰニヤル チヽニジギヲセヌ。ワシヲマヱタチニ ホントマコトヲユフ、ワシ
ノコトバヲキクヒト、ワシヲツカイニヤルヒトニゾンジルモノワ、ヰノチヲアランカギリアル、ヰマシメラレルコトワナヰ。タヾシワ
ジンデカラヰノチヲカヱル。ワシナマヱタチニ ホントマコトヲユフ、ヰヒトキスギテカラコヰ、イマノアヰダニワ、シンダモ
ノガゴクラクノムスコノコヱヲキガズ、キクヒト〴〵ヰキテヲル。チヽワジシンノナカニ ヰノチヲアルトホリニ、ウナジコトムスコ
ニヂシンノナカニイノチヲアルトラシタ、ヒトニヰセイヲトラシタ。ヒトニヰセイヲトラシタ、セイバヰヲセルニ、ヒトワニ
ンゲンノムスコワユヱ。ヲドロクナ、イートキスギテカラコヰ、ハカノナカニミナヲルヒト〴〵ワ、ヒトノコヱヲキカズ、ヨイシ
ゴトヲツクルヒト〴〵 ホリダス、ヰキテヲーテ、イノチアル。ワルイシゴトヲツクルヒト〴〵、ヰキテヲテ、イマシメラ
レル。ワシガヂシンカラ コトワツクレヌ、ワシキクトホリニワヰマシメル、ワシシヨジキニヰマシメル、ワシノコヲサ
ツワツクラヌユヱ、タヾシワワシヲツカイニヤル ヒトノコヲサツワ。ワシヂシンカラ ダンギヲカタル、ワシノダンギワ
マコトナイ、ベツノヒトワシカラ ダンギヲカタル、ワシガヒトワワシカラ マコトニダンギヲカタルトシヰテヲル。
ヲマヱタチワヨハンネスノトコヱ ツカイニヤータ、ヒトワマコトニダンギヲカタアタ。ワシワニンゲンノダンギヲウケトヲラヌ。
タヾシワヲマヱタチヲスクウタメニ コノコトバヲモノユフ。アノヒトワヒカリワアカルヰカヽヤク。ヲマヱタチワチヒトノアヰダニコノ
ヒカリニヨロコビタヰ。ワシワダンギヲ タカイヨリヨハンネスワアル、チヽワワシニトラシタシゴトワ ワシワシマウ、ワシツクル
コノシゴトワ、ワシカラダンギヲカタル、チヽワワシヲツカイニヤータ。ワシヲツカイニヤルチヽワ、ヒトワワシカラダンギヲカ
タアタ。ヲマヱタチヒトノコヱヲ マダキカナンダ、ヒトノカタチヲミナンダ。ヒトノコトバヲマヱタチノナカニヲラヌ。ヲマヱタチアノヒ
トツカヰニヤータヒトニゾンジヌユヱ。ヲマエタチワキヨモンノホンヲ アケテミヨ、ヲマヱタチワコノナカニヰノチヲアランカギリアル
トヲモウ。コノホンワシカラ ダンギヲカタル。ヲマヱタチワシノトコロヱヰキトワナヰ、ヰノチヲアルタメニ。ワシワニンゲン
ノジギヲウケトラヌ。タヾシワワシゴクラクノカバウ、オマヱタチノナカニヲラヌコトヲシヰテヲル。ワシチヽノナヲユヰニキ
タ、タヾシヲマヱタチワシヲムカヰニデヌ。ベツノニンヂシンノ ナヲユヰニクルトキニ、オマヱタチワヒトヲムカイニデヅ。
ヲマヱタチワヲノ〳〵ジギヲウケヤウ。タヾシワヒトリゴクラクノ ジギワタヅネヌ、ヰカイニヲマヱタチワ ゾンジルカ。ヲマ
ヱクチワヲモウナ、ワシヲマヱタチノコトヲ チヽニウータヱル。オマヱタチヲウツタエルヒトムゼスワ、ヲマヱタチノマカスヒト。
ヲマヱタチワムゼスニ ゾンジルナラバ、ワシニゾンジル。ヒトワワシカラカイタユヱ。ヒトノキヨモンノホンヲゾンジヌナラバ。
ヰカイニワシノコトバヲゾンジルカ〇【。】
コノアトニヱスヽク ガリナヤクテテベリヤヌ ミヅウミサシワタシ。タントクンゼイヒト〴〵 ヱズヽクフシギナコトヲツクウタ、ビヤウ
ニンヲ ナヲシタノヲミテ、ヒトニツヰテクル。ヱズヽクヤマエノボヲテ、デシドモトモニコシカケル。ユダヰニンゲンノ
パスカノゴセクチカヨル。ヱズヽクタントクンゼイヒト〴〵 ヒトノトコヱクルノヲカンガヱテナガメテヲル、ピネポスニユフタ。
ドコデワシドモモチヲカアテクル、アノヒトタチワタベルカ。ヒトワヂシンヤガテツクルノヲシヒテヲル、ヒトヲコヽ
ロミテヲヰテユフタ。ヒネポスヘントコタヱル。ニヒヤクリヨモチタラヌ、ヲノ〳〵チヰトツワケル。アンダレヤス
シモン ペトロノアニ、デシドモノヒトリニン、ヒトニユフタ。コヽニヲトコノコヲル、オホムギモチガヰツヽ、サカナ
ガニヒキアル、タヾシワタントノニンゲンニタルカ。アノトコロニワクサガタントアル。ヱズヽクユフタ、ヲマヱタチワチヤウニ
ンニヰヽツケテコシカケサセヨ。アノヒト〴〵ヲカゾヱテミタラ ゴセンニンコシカケル。ヱズヽクモチヲモチテ、アリガト
ゴザル、デシドモニトラセル。タヾシデシドモ マダホシカコシカクルヒト〴〵ニトラセル、ウナジコトサカナ。モラ
アテタベタトキニ。デシドモニユフタ。コボレテヲルノヲヨセヨ、コボシワセヌ。ソレユヱヰツヽヲホムギモチタベテカラコボレテ
ヲルノヲヨセテ、ジユニカゴヱツメル。ニンゲンワヱズヽクツクウタ フシギナコトヲミテユフタ。アノヒトマコトセカイヱクルマエ
カラシヒテヲルヒト。ヱズヽクアノヒトタチヒトヲ ツカマルニ、ヒトヲトノサマニセルニキタイコトヲシヒテヲル、フタヽビヒトリ
ヤマヱノボヲタ。ヒノクレドキニデシドモ ミヅウミヱヰータ。フネヰノヲテ、ミヅウミヲサシワタシ。カパナウムラヱツヰ
テイク。クライトキニ ヱズヽクマタツイテワコヌ。オホカゼブキニ ミヅウミヲホナミダチ、フネワハシイテカラニジユコリカ
サンジユリモアル。アノヒトタチヱズヽクヲウミノウヱヲアヨブ チカヨルノヲミテヲドロク。アノヒトタチニユフタ ワシラニ、
ヲドロクナ。ヒトヲフネヱノシタイ、タチマチニフネワ ハシルヤマヱチカヨル。ミヤウゴニチクゼイノヒト〴〵 ウミノ
ムコヲニタアテヲル、ベツノフネヲ コヽデワミタコトワナヰ、タヾシヒトノデシドモノルフネワ、ヱズヽクデシドモニフネヱノ
ラヌ、タヾシワデシドモ ヒトリアーチヱヰヽタ。カシラヒトアリガトゴザルトキニ、トコロヱチカイドコデモチヲタベタ、
ベツノフネワテベリヤスヨリツヰテクル。クゼイノヒト〴〵 ヱズヽクデシドモワ コヽニワミタラヲラヌ、アノヒトタチフネイノヲ
テ、ヱズヽクヲタヅネルニ、カパナウムラヱキタ。ヒトヲミヅウミノムコヲニヲルノヲミテユフタ、シヽヨウ、ナンドキニ
コヽヱキタ。ヱズヽクアノヒトタチニヘントコタヱテユフタ、ワシヲマヱタチニ マコトホントヲユフ、ヲマヱタチワシヲフ
シギナコトヲミタユヱワタヅネヌ、タヾシワモチヲタベタデ ハラガフクラタユヱ。タベモノクラルニセルナ。タヾシワタベ
モノコイテヲイテモマダヰノチ アランカギリヲル、ニンゲンノムスコワ ヲマヱタチニトラセルモノヲ、チヽワゴクラク
カラヒトニハンヲヲス。アノヒトタチユフタ、ナニヲワシガツクル。ゴクラクノシゴトヲセルカ。ヱズヽクアノヒトタチニヘン
トコタヱテユフタ。ゴクラクノシゴトワ、ヲマヱタチヒトワツカイニヤルヒトニゾンジル。アノヒトタチユフタ。ヲマヱナニフ
シギナコトヲツクルカ、ワシドモミテゾンジル、ヲマヱナニシゴトヲツクルカ。ワシノセンゾヲアレチデマナタベタ、カヨヲニ
ホンニカイテダヰテアル、ヒトワテンカラアノヒトタチニ タベルニモチヲトラシタ。ヱズヽクアノヒトタチニユフタ。ワシヲ
マヱタチニホントニマコトヲユフ、ムゼスワヲマヱタチニ テンカラモチヲクダサレナンダ。ダ【タ?】ヾシワシノチヽヲマヱタチニマコ
トモチヲ テンカラトラセル。ゴクラクノモチワ テンカラアマダル、セカイノニンゲンニ ヱヰノチヲトラセル。アノヒト
タチヒトニユフタ。カシラヒトワシドモニ ヰツデモワシニ コノモチヲトラセヨ。ヱズヽクアノヒトタチニユフタ。ワシラニイノチ
ノモチワ、ワシノトコヱクルヒト、ハラワヘラヌ、ワシニゾンジルヒト、ヰツデモクチワカワカヌ。タヾシワワシヲマヱタチニユフ、
ヲマヱタチワ ワシヲミテモゾンジヌ。チヽワワシニ ミナクダサレルモノワ、ワシノトコヱツイテクル。ワシノトコヱクルモノワ、ワ
シクヲシダイテワヤラヌ。ワシワテンカラアマクダル、ワシノコヲサツワ ハジメテワツクラヌ、タヾシワワシヲツカイニヤータヒ
トノコヲサツユヱ。ワシヲツカイニヤルチヽノコヲサツワ ミナクシニクダサレルモノヲ、ウシナヰワセヌ、タヾシワアトノツキニヒト
ヲヰキカヤス。ワシヲツカイニヤルヒトノコヲサツワ、ミナニンムスコヲミテゾンジル。アランカギリイノチヲアル。ワシワ
アトノツキニヒトヲヰキカヤス。ソレユヱユダイニンゲン ヒトワユヱツボヒク。ヒトワユフタ、ワシラニテンカラアマクダルモチ
ユヱ。アノヒトタチニユフタ。ヒトワヱズヽクカ、ヨゼフノムスコ、ワシドモヒトノチヽハヽヲシイテヲル、ヰカイニヒトワユフ、ワシラ
ニテンカラアマクダサレタ。ヱズヽクヘントコタヱテ アノヒトタチニユフタ。ツボワヒクナ、ニンゲンワシノトコヱワツイテコヌ、ワシヲ
ツカイニヤータチヽワヒトヲヒパラヌナラバ。ワシワヒトヲアトノツキニヤガテイキカヤス。マヱカラシヒテヲルヒト〴〵ノホンノナカニカ
イテアル、ミナニンゴクラクカラナラワシタ。ミナニンチヽノユフコトヲキヰテナラウ、ワシノトコヱコヰ。ニンゲンテンノチヽヲミヌ。
タヾシワゴクラクトモニヲータヒトワ、チヽヲミタ。ワシヲマヱタチニホントマコトヲユフ。ワシニゾンジルヒト、アランカギリヰノチ
アル。ワシラニヰノチノモチワ。ヲマヱノセンゾヲタチ アレチデマナタベテシンダ。テンカラアマクダルモチワ、コレヲタベルモノ
ワシナヌ。ワシガヰノチノモチワ、テンカラアマクダルワ、ニンゲンコノモチヲタベテ、アランカギリイキテヲル。ワシワトラセルモテ【チ?】ワ、
ワシノニクワ、ワシガセカイノヰノチタメニトラセルノヲ。ユダイニンゲンアラソヲテユフタ。イキニアノヒトワシドモニ
ニクヲトラセルカ。ヱズヽクアノヒトタチニユフタ。ワシヲマヱタチニ ホントマコトヲニユフ、オマヱタチニンゲンノムスコノニク
ヲタベナンダナラバ、チヲノマナンダナラバ、ヰノチワヲマヱタチノナカニヲラヌ。ワシノニクヲタベルヒト、ワシノチヲノムヒトイノチ
ヲアランカギリアル、ワシガアトノトキニヒトヲイキカヤス。ワシノニクマコトタベモノ、ワシノチワマコトノミモノ。ワシノニクヲタベ
ルヒト。ワシノチヲノムヒト、ワシノナカニヲル、ワシワヒトノナカニヲル。ワシヲツカイニヤルヰキテヲル チヽワトヲリニ、ワシガ
チヽニイキテヲル。ワシヲタベルヒトワ。ワシニイキテヲル。コノテンカラアマクダルモチワ、ヲマヱタチノセンゾヲワマナタベ
テシンダトヲリニクナイ。コノモチヲタベルヒト、アランカギリヰキテヲル。ヱズヽク カパナウトコロノテナライ ヲリエテコノ
コトバヲユフ。デシドモノタント ニンゲンコノコトヲキイテユウタ。コノコトバ ムツカシキ、ダレガキヽワケルカ。ヱズヽク
ハラノナカニ デシドモソノコトユヱ ツボヒクコトシヰテユフタ。ヲマヱタチワソノコトユヱハラタツカ、ヲマヱタチワ ニンゲンノ
ムスコヲ ココニヲルトコロヨリノボルノヲミルカ。シンワヰノチヲトラセル、ニクワツカワス。ワシガヲマヱタチニ モノユフコトバ
シンワ、イノチワ。タヾシワコヽニターテヲル ヲマヱタチノ ゾンジヌ ソレガシヒト、ヱズヽクワハジマリニゾンジヌヒト〴〵、
ジシンヲツクルヒトヲシヒテヲル。ヒトワユフタ。ソレユヱワシヲマヱタチニユフタ、チヽワクダサレヌナラバ、ヒトワヲラヌワシノト
コヱツイテワキレヌ。ソノトキカラタントデシドモウシロヱヰーテ、ヒトワトモニマダアヨバム。ヱズヽクワ シユニニンノデシドモニユ
フタ。ヲマヱタチワ アーチヱヰキタイカ。シモンペトロシヒトニ ヘントコタヱル、カシラヒト、ヲマヱワ アランカギリイノチノコト
バヲアル、ドノヒトノトコヱワシドモイクカ。ワシドモゾンジテシヰテヲル、ヲマヱワクレストシワ、イキトヲル ゴクラクノムスコワ。
ヱズヽクワアノヒトタチニ ヘントコタヱル。ワシガヲマヱタチヲジユニンヲ ヱリダシタカ。タヾシワヲマヱタチノ ヒトリニンヲニワ。
ヒトワジユニヽンノデシドモノ ヒトリヒトナワユダスシモンカリヨトムテノヒト、ヱズヽクヲツゲタヰヒト、イビサシシテユフタ。〇
コノノチヱズヽクガリナヤクニヱアヨブ、ユダイニンゲン ヒトヲコロシタイユヱ、ユダイクニヱワイキトワナイ。ユダイニンゲンノマクノゴセ
クチカヨル。ヒトノキヤウダイユフタ。アヽチヱヰヽテ、ユダイノクニヱツイテコヰ、ヲマヱノデシドモ ヲマヱノツクルシゴトヲミル
タメニ。ヒトワヲラヌカクイテツクル。タヾシワアリヤカニシタイ。ヲマヱワコトゴトツクルトキニジヽンヲセカイノ ニンゲンニセヨ。
キョダイワヒトニゾンジヌ。ヱズヽクアノヒトタチニユフタ。ワシノトキマダコヌ、ヲマヱタチノトギヰツデモデキテヲル。セカイ
ノニンゲンヲマヱタチヲ キラヱス。ワシガヒトノシゴトヲワルイユヱアラワス、ソレユヱワシヲキラウ。ヲマヱタチワ ゴセクノトコ
ロヱノボレヨ、ワシノトキ マダヰーパイニワナラヌユヱ、ワシガゴセクノトコヱマダノボラヌ。コノコトユウテカラ、ガリナヤクニヽヲル。
キヤウダヰノボヲテカラ、ヱズヽクアリヤカニワナイ、タヾシワカクレテゴセクノトコヱノボル。ヱダイニンゲンゴセクノトキニヒト
ヲタヅネテユフタ。アノヒトワドコニヲル。クゼイノヒト〴〵 ヱズヽクユヱタントツボヒク、コノヒトワヨイコトヲユフ、ソノヒトワクンゼ
イヲダマストユフ。アノヒトタチユダイニンゲンヲ ヲドロクユヱ、ヒトワヲラヌ アカリニヱズヽクユヱモノユフ。ゴゼクノナカイキニ、
ヱズヽクテラヱノポヲテオソヱル。ユダイニンゲン アキレテユフタ。アノヒトワナラワナンダ、イカヰニアノヒトワ キヨモンノホンヲ
シヒテヲルカ。ヱズヽク ヘントコタヱテ、アノヒトタチニユフタ、ワシヲソヱルコト、ワシノコトワナイ、タヾシワシヲツカイニヤ
ルヒトノコトバ。ニンゲンワヒトノコヲサツヲツクリタイナラバ。ヲシヱヲシイテヲル、ゴクラククルカ、ワシガヂシンカラモノユフカ。
ヂシンカラモノユフヒト、ジシンノジギヲダヅネル。ヒトヲツカイニヤルヒトノ ジギヲタヅネルモノワ、マコトワヒトノナカニウリ
グナヰ。ムゼスワヲマヱタチニ ハツトヲオホセツクル、ヲマヱタチノニンゲンワヲラヌ、コノハツトヲツクル、ナゼオマヱタチワワシヲ
コロシタイ。クンゼヰノヒト〴〵 ヘントコタヱテユフタ。ヲマヱワヲニガアル、ダレガヲマヱヲコロシタイ。ヱズヽクヘントコタヱテ
アノヒトニユフタ。オマヱタチミナヲドロク、ワシヒトツモ シゴトヲツクウタユヱ。ソレユヱムゼスワ ヲマヱタチニカワキヲキルレイギ
ヲホテツケタ。コノレイギセンゾヲカラ、ムゼスカラコヌ。タヾシワヲマヱタチ モンピニ ニンゲンノカワヲキル。モピニ ニンゲン
ワカワキラレル、ムゼスノハツトヲワ ソムカヌ、ワシガモンピニ ミナカラダヲ ナヲシタユヱ、ヲマヱタチワシニハラタツ。ヲマヱ
タチミルニワヰマシメルナ。タヾシワヨロシイサマ〴〵 イマシメヨ。ヰルサレムジヨカノニンゲン アノヒトカア【アに濁点】ノヒト〴〵
コロシタイトウ。ミヨヒトワアカリニモノユフ、ニンゲンワヲラヌキンゼヰスル、カシラヒト〴〵ワマコトニヒトワホント クレストシ
ワシヰニノヲルカ。タヾシワワシドモヒトワ ドコカラクルトシヒテヲル。タヾシワクレストシクルトキニ、ヒトワヲラヌ。ドコカ
フクルトシヰテヲル。ヱズヽクテラデヲリヱルニ ヨバアテユフタ。ヲマヱタチワシヲシヒテヲル、ドコカラクルトシヒテ
ヲル、ワシガヂシンカラコヌ。タヽシ ヲマヱタチワ シラヌ ベツノマコトノヒト ワシヲ ツカヰニヤア
タ。ワシガヒトヲシヒテヲル、ヒトカラクルユヱ、アノヒトワ ワシヲツカイニヤル。シカシナガラ アノヒトタチワヒトヲ
ツカメタイ。タヾシヒトノコキマダコヌ、ヒトワヲラヌ ヒトヲトラヌル。クンゼイノ ヒト〴〵タントゾンジテ ヒトニユフタ。
クレストシワィリトキワ、アノヒトワタントヨリ フシギナコトワツクラヌ、ヒトワツクウタノヲ。フワリサイニンゲンクンゼイ
ヒト〴〵 ヱズヽクユヱ ツボヒクトキイタ、シカシナガラ フワリサイニン クゲノカシラヒト〴〵
ニンヒトヲツカマヱニツカイニヤル。ヱズヽクユフタ。チヒトノアイダニ、ワシヲマヱタチトモニヲル、ワシガワシ
ヲツカイニヤルヒトノ トコロヱヰク。ヲマヱタチワシヲタヅネテモメケヱヌ。ワシガイクトコロワ、ヲマヱタチツ
イテコレヌ。シカシナガラ ユダイニンカンガヱテ、ユフ、ユフタドコヱ アノヒトワイキタヰ、ワシドモヒトヲメケヌチ【チではなくノナ?】ラ
カサレタ ヘレヰニンゲンノナカニ アヨビタイ、ヘレイノニンゲンヲヲソヱルニカ。ヰカイニヒトワユフコトバ、ヲマ
ヱタトワ ワシヲタヅネテモメケラレヌ、ワシワイクトコヱワ、ヲマヱタチツイテコレヌ。アトノツキニゴセクノマツリノヒニ
ヱズヽクタアテヨバアテユフ。ニンゲンワカワクナラバ、ワシノコトヱノミニコヰ。シタガアテ キヨモンノホンノナカニユ
フテアル、ワシニゾンジルヒトノハラヨリ、イノチノミヅカワヲナガレル。アノヒトカミワヨリ、ヒトニゾンジルヒト〴〵ヤ
ガテウケテヲルノヲ、コノコトヲモノユフ、ソレニヨヲテヱズヽクマダ ジギヲセナンダ 、アリガタイカミワマダコヌ。
クンゼイノヒト〴〵 タントコトバヲキイテユフタ。ヒトワマコトマヱカラシヰテヲルモノワ。ベツノニンユフタ。アノヒトワク
レストシ、ホカノニンユフタ、クレストシワ ガリナヤクニヨリコヌカ。キヨモンノホンチ【チではなくノナ?】カニ ユフテアルカ。クレストシワ
ダビヰデノアトツギヨリ、ヘツネヘムムラ ダビイテヲルムラヨヨリクル。クンゼイヒト〴〵 フタヽビ ヱズヽクユヱアラソウ。
ソレガシニンヒトヲ ツカメタイ。タヾシワニンゲンヲラヌ、ヒトヲトラマヱル。トリテノヤクニンクゲノカシラヒトビ
トニ フワリサイニンゲンノトコロヱ ツイテクルトキニ、アノヒトタチユフタ。ナゼヲマヱタチヒトヲツレテワコスカ。
トルテノヤクニンヘントコタヱル、ニンゲンワソノヒト コノトヲリニマダヰワヌ。フワリサイニンゲンアノヒトタチニ ヘントコタ
ヱル。オマヱタチダマサレタカ、カシラヒト〴〵ノニン フワリサイノニンゲンヒトニゾンジルカ。タヾシワハツトヲシラヌ、
クンゼイノヒト〴〵ニ クサヽレタ 。ヨルドキニヱズヽクノ トコヱクルヒト ナワニクデモス アノヒトタチノ ヒトリノヒトガユフ、
ワシノハツトヲノヒトノツクルコト ヲマヱニキイテシヒテヲル ニンゲンヲイマシメルカ。アノヒトタチヘントコタヱテヒトニユフタ、
ヲマヱワガリナヤヨリクルカ、ヲマヱワカンガヱヨマヱカラ シレテヲルヒト ガリナヤクニヨリコヌ。ソレカラヲノ〳〵 ウチヱ
モドル〇【。】
ヱズヽクハボリノヤマヱイヱイヽタ。アサフタヽビテラヱモドヲテ、チヤウニンヒトノトコヱミナキタ、ヒトワ コシカケテアノヒ
トタチニヲソヱル。ガクシヤフリサイニンゲン ヒトノコヱ ヲナゴイマアイダニマヲトコセル
ナカヱヰレル。アノヒトタチヒトニユフタ、アノヲナゴ マヲトコツクルアイダニツカマヱラレタ。ムゼスワハツトヲニ カヨニヲナゴ
ドモニイシヲホヲリツク【ケ?】テ コロセトヰーツケル。ヲマヱワナニヲユフ。アノヒトタチヒトヲコヽロミニユフタ、アノヒトタチコトヲ
ウツタヱル。タヾシワヱズヽク ウツブイテイユビデジダニカク。アノヒト〴〵ヒトニトヲテヲータ、ヒトワアーヌヰテ、アノヒト
タチニユフタ。ヲマヱタチノツミノナイヒト、イチバンサキニ ヰシヲホヲリツケル。フタヽビウツブイテジダニカク。アノヒト
タチワキイテ、ハラノナカニ サトヲテ、ヒトリヅヽジユン〳〵ニ トシヨリハジマリカラ アトヨリソトヱイヽタ、ヒトリヱズヽク
ヲナゴナカニタテヲルトモニノコヲタ。ヱズヽクアーヌイテヲナゴヨリ ベツノヒトワミヌデユフタ。ヲナゴヲマヱヲウツ
タヱルヒト〴〵 ドコニヲルカ、ニンゲンワヲラヌ ヲマヱヲイマシメルカ。ヲナゴユフタ、カシラヒト、ニンゲンデワナイ。ヱズヽク
ユフタ、ワシワヲマヱヲ ヰマシメヌ、イケヨ、モヲツミヲセルナ 〇【。】ヱズヽクフタヽビハナシテ アノヒトタチニユフタ。ワシラ
ニセカイノヒカリワ、フシヲツイテクルヒト、クライニアヨバヌ、タヾシワイノチヒカリヲアル。フワリサイニンゲンヒトニ
ユフタ、ヲマヱワヂシンカラ ダンギヲカタル、ヲマヱノダンギワマコトニワナヰ。ヱズヽクヘントコタヱテ アノヒトタチニユフカ。
フシガシンカラ。ダンギヲカタレドモ、ワシノダンギワマコト。ニヨツテワシドコカラクル、ドコヱヰクトシヒテヲル。オマヱ
タチニクノサマ〳〵 イマシメル、ワシワニンゲンヲヰマシメヌ。ワシガイマシメルナラバ、ワシノイマシメルコト マコト、ニヨヲ
テワシガ ヒトリノシトナヰ、タヾシワ ワシガ ワシヲ ツカイニヤルチヽワトモニ。ヲマヱタチノハツトヲニ カイテダイテ
アル、フタリノニンゲンノシルシ アラワスマコト。ワシワジシンカラダンギヲカタル。ワシヲツカイニヤータチヽワ ワシガ
ダンギヲカタル。アノヒトタチヒトニユフタ、ドコニヲマヱノチヽワ。ヱズヽクヘントコタヱル、ヲマヱタチワシト ワシノチヽヲ
シラヌ、ヲマヱタチワシヲシイテヲルナラバ、ワシノチヽヲシヒテヲル。ヱズヽクコノオトバヲテラヱチカイゼニグラデヲソヱ
テユフタ。トキワマダコヌ ニンゲンワヒトヲツカマヱヌ。ヱズヽクアノヒトタチニ フタヽビユフタ。ワシイヽテカラ、ヲマヱ
タチワシヲタヅネル、オマヱタチノツミノナカニシナズ、ヲマヱタチワ ワシワヰクトコロヱツイテワコレヌ。ユダイニン
ンカシナガラユタ、ヒトワワシヰクトコロヱ、ヲマヱタチツイテワキレヌトユタ、ヒトワジシンヲコロスカ。ヒトワアノヒト
タチニユフタ。ヲマヱタチシタヨリクル、ワシガウヱヨリクル、ヲマヱタチワセカイヨリクル、ワシガコノセカヰヨリ
ワコヌ。ワシガヲマヱタチニユフタ、ヲマヱタチノツミノナカニシナズ、ヲマヱタチワ ワシラニゾンジヌナラバ、ヲマヱタチ
ノツミノナカニシナズ。アノヒトタチヒトニユフタ。ヲマヱダレガ、アズヽクアノヒトタチニユフタ、ワシガハジマリニユフタ。
ワシタントコトヲマヱユヱモノユフ、ヰマシメルニアル。タヾシワシヲツカイニヤアタヒト マコト、ワシガヒトノキ
イタコトヲセカイニモノユフ。アノヒトタチ ヒトワチヽワユヱ モノユフシラナンダ。ヱズヽクアノヒトタチニユフタ、
ヲマヱタチワ ニンゲンノムスコヲ アゲテレタノヲミズトキニ、ヲマヱタチワ ワシラニヂシンカラ コトヲツクラヌトシ
ヒテヲル。タヾシチヽワ ワシヲ オソヱタ サマ〴〵、カヨヲニワシモノユフ。ワシヲツカイニヤアタヒトワシトモニヲル
チヽワワシヲヒトリヲノコサヌ。ニヨヲテ ワシガヰツデモ ヒトノヨロコブコトヲツクル。カヨヲニモノユフトキニ タントニ
ンヒトニゾンジル。ヱズヽクヒトニゾンジル ユダイニンゲンニユフタ。ヲマヱタチワシノコトバニヲルトキニ、ヲマヱタチマコト
ワシノデシドモ。ヲマヱタチワホントノコトヲ シヒテヲル。コノホントノコトワ ヲマヱタチヲヰルイテトラセル。アノヒト
タチヘントコタヱル、ワシドモアブラハムノ アトツギタチ、ニンゲンニマダタトメヌ。ヰカイニヲマヱワユフタ、ヲマヱ
タチワヰルサレル。ヱズヽクアノヒトタチニ ヘントコタヱル。ワシガヲマヱタチニ ホントマコトニユフ、ミナニンツミヲ
ツクル、ツミノネンキモノワ。ネンキモノワ ウチニヰツデモヲラヌ タヾシワ ムスコワヰツデモヲル。ムズ【ス?】コワヲマヱ
タチヲ イルヰテトラセルナラバ、ヲマヱタチマコトニ ヰルサレタ。ヲマヱタチ アブラハムノ アトツギタチワ、
ワシシイテヲル。タヾシワ ワシノコトバ ヲマヱタチノナカニヲラヌ。ソレユヱヲマヱタチ ワシヲコロシタヰ。ワシガ
チヽノミタコトヲ ハナシヲセル、シカシナガラ ヲマヱタチノ チヽノミタコトワツクル。アノヒトタチ ヘントコタヱテ
ヒトニユフタ。ワシノセンゾヲアブラハムワ。ヱズヽクアノヒトタチニユフタ。ヲマヱタチ アブラハムノコドモナラバ、アブラハ
ムノシゴトヲツクル。ヰマワシホントノコトヲマヱタチニユフテカラ、ワシガゴクラクカラキタ、ヲマヱタチ ワシヲコロシタ
ヰ。アブラハムコノコトヲツクラナンダ。ヲマヱタチヂシンノ チヽノシゴトヲツクル。アノヒトタチ ヒトニユフタ、ワシド
モチヽワカワータコドモデワナヰ、ワシドモヒトリノチヽワ ゴクラクワアル。ヱズヽクアノヒトタチニユフタ。ゴクラクワヲマ
ヱタチノチヽワ、ヲマヱタチワシヲカワイガル。ニヨヲテワシガ ゴクテ【ラ?】クカラクル。ワシガヂシンカラコヌ。タヾシヒトワ
ワシヲツカイニヤータ。ソレユヱヲマヱタチ ワシノモノユフコトシラヌ、ヲマヱタチワシノコトバヲキケヌ。ヲマヱタチ
ノチヽク【ノ?】オニワ、ヲマヱタチノチノ【ヽ?】ヨクツクリタヰ、ヒトワハジマリカラヒトヲ コロスヒト、マコトワサダマラヌ、ニヨヲ
テ ヒトノナカニマコトワナイ、ウソユフトキニ ヂシンノウソヲユフ。ニヨヲテ ヒトワウソユフヒト、ウソノチヽワ。ワシ
ガマコトヲyフユヱ、ヲマヱタチワシニゾンジヌ。オマヱタチノナカニ ダレガワシヲツミヲサセル、ワシワマコトヲユウ、
ナゼヲマヱタチワ ワシニゾンジヌ。ゴクラクカラクルヒト、ゴクラクノコトバヲキク、ヲマヱタチ ゴクラクカラコヌ。ソレ
ユヱヲマヱタチキカヌ。エダイニンゲン ヘントコタヱテヒトニユフタ。ワシドモヨヰコトユウカ、ヲマヱサマラヱニンゲン
ハラニヲニガアル。ヱズヽクヘントコタヱル。ワシハラニヲニワナヰ、ワシチヽニジギヲセル、オマヱチヽトワシヲハジシムル。
ワシガジシンノジギヲタヅネヌ、ベツノヒトタヅネルト ヰマシメル。ワシヲマヱタチニ ホントマコトヲユフ、ワシ
ノコトバヲマムルヒト シヌコトワアランカギリミヱヌ。シカタナシ ユダイニンヒトニユフタ。ヰマワシヲマヱノハラニヲニ
ノアルノヲシヰテヲル、アブラハムマヱカラシヒテヲルヒト〴〵 ミナシンダ。タヾシヲマヱワユフ。ワシノコー【ト?】バヲマムル
ヒトアランカギリシヌコトヲミヌ。ヲマヱワ ワシドモノセンゾヲ アブラハムタカイヨリカ。ヒトワシンダ、マヱカラシ
ヒラヲルヒト〴〵 シンダ。ヲマヱヂシンナニヲツクルカ。ヱズヽクヘントコタヱタル。ワシヂシンニ ジギヲセルナラバ。
ヂギワゴムヨウ。チヽワヲマヱタチノゴクラクワユウモノヲ ワシニジギヲセル。ヲマヱタチワ ヒトヲシラナンダ、ワシ
ヒトヲシヒテヲル。ヒトヲシラヌコトヲユフナラバ、ワシヲマヱタチメトホリニウソユフ。タヾシワシヒトヲシイテヲル。ヒト
ノコトバヲマムル。アブラハムヲマヱタチノ センゾヲ ワシノヒヲミズユヱヨロコブ、ミデカラヨロコブ。ユダヰニンゲン ヒトニユフタ。
ヲマヱワマダゴジユニワナラヌ、アブラハムヲミタカ。ヱズヽクアノヒトタチニユフタ。ワシヲマヱタチニホント マコトヲユフ、ワシ
ガ アブラハムノサキニヲル。ソレユヱアノヒトタチ ヰシヲモヲテホヲリツクル、タヾシヱズヽク アノヒトタチノナカヲトヲテイク、
カクレテ、テラノソトヲヱデヽ、カヨヲニアヽチヱヰヽタ〇【。】
ヱズヽクヲテヰクトキニ、メクラデウマレタヒトヲミタ。デシドモヒトニトヲテユフタ。アノヒトワ メクラレデウコレ
タ、ヂシンアルイワオヤノツミカ。ヱズヽクヘントコタヱル、ヒトノトチヤワツミヲツクラヌ。タヾシゴクラクノシゴトワ ヒトニア
ラワレル。ヒルノアヰダニワシヲツカイニヤータヒトノ シゴトヲシヒカリツクル。ヨルドキニナアタ ニンゲンワツクレヌ。
セカイニヲルトキニ、ワシガセカイノヒカリ。ユフテカラジダヱツバヲハイテ、ツバデホリヲネヱテ、メクラノメヱヌリ
ツケル。ヒトニユフタ、アヽチヱヰケシロアムイケデ アラヱ シロアムコノコトバチガウ ツカヰニヤラレタ。ヰヽテアラテカラメ
アミヱルヨヲニナアテモドル。トナリノヒト〴〵 アノトキニワメクラノモノヲミテユフタ。コノヒトコシカケテタノンダカ。ベツノ
ヒト〴〵ユフタ、アノヒトワ ヂシン。ホカノヒトユフタ、ヒトワウナジコトニン。ヒトワジシンユフタ、ワシラニ。アノヒトタチ ヒト
ニユフタ。ヰカイニヲマヱノノ【メ?】ワアケラレタカ。アノヒトワヘントコタヱテユフタ。ニンナワヱズヽク ホコリヲネヱテ、メヱヌ
リツケテクレタ、ワシニシロアン イケヱヰヽテアラヱトユフ。ワシガアヽチヱイヽテ、アラアテカラミヱル。アノヒトタチ ヒト
ニユフタ、ドコノヒトガ。ワシワシラヌトユフタ。アノヒトタチマヱニメクラヒトヲ フワリサヰノニンゲンノトコロヱツレテイータ。
ヱズヽクモンピニホコリヲ ネヱテメヲアケタ。フワリサイニンヒトニ ヰカイニフタヽビミヱルトウ。ヒトワアノヒトタチニ
ユフタ、アノヒトホコリヲ、ワシノメヱヌリツケテカラ、ワシガアラアテカラミヱル。フワリサヰノ ソレガシニンユフタ。コノヒト
モンピヲマムラヌ、ゴクラクカラコヌ。ホカノニンユフタ ツミノニン ヰカイニカヨヲニフシギナコトヲ ツクレルカ。ソレユヱ
アノヒトタチアラソヰヤウ。フタヽビメクラヒトニユフタ。ヒトワヲマヱノメヲ アケタヲマヱナニヲ ハナシヲセルカ、
ヒトワユフタ。アノヒトワ、マヱカラシヒテヲルヒト。ユダイニンゲン ミヱルヒトノヲヤヲヨバアタ マヱニゾンヂヌ、ヒトワサキニメ
クラミヱル。ヒトニトヲテユフタ、ヲマヱタチアノヒトワ メクラデウマレタトユウ、ヲマヱノムスゴ【コ?】ガ、イカヰニイマミヱルカ。
ヒトノヲヤ アノヒトタチニ ヘントコタヱテユフタ。アノヒトワ ワシノムスコ、メクラデウマレタノヲシヒテヲル。ヰカイニヒト
ワイマミル、ワシワシラヌ、ダレガ ヒトノメヲアケタ ワシンラヌ。ヒトワトシヨヲタ、ヒトニトヱ、ヒトワヂシンカラ
モノユフ。ユダイニンダレガアノヒトヲ クレストシクダンギヲカタル ダイテヤレトユイツク【ケ?】タ。ソレユヱヲヤワ ユダイニン
ニ ヲドロヰテ コノコトヲユフタ。ニヨヲテヒトノヲヤワユフタ、アノヒトワ トシヨヲタ、ヒトニトヱ。アノヒトタチ フタヽビマヱ
ニメクラヒトヲ ヨバアテユフタ。ヲマヱワゴクラクヱ ジギヲシヨ、ソノヒトワツミノヒト ワシトモシヒテヲル。ヒトワヘントコタヱ
テユフタ。アノヒトツミノヒト ワシヽラヌ、ヒトツノコトヲシヒテヲル、ワシマヱニメクラ、ヰマミヱル。アノヒトタチ ヒトニフ
タヽビ ユフタ。ナニヲヒトワセルカ、イカヰニヲマヱノ メヲアケタカ。ヒトワアノヒトタチニ ヘントコタヱル。ワシユフテス
ンダ、ヲマヱタチワキカヌカ、ナゼフタヽビキヽタヰ、ヲマヱタチヒトノ デシドモニナリタヰカ。アノヒト〴〵 ヒトヲシカアテ
ユフタ。ヲマヱワシトノデシ、ワシドモムゼスノデシドモ。ゴクラクムゼスニ ハナシヲシタ、ワシドモシヒテヲル、アノヒト
ワドコカラ クルヤラシラヌ。アノヒトワ ヘノトコタヱテ アノヒトタチニユフタ。ヒトワ ワシノメヲアケタ、トコカラクル
ヤラ ヲマヱタチワシラメ【ヌ?】、ソレホントノコトナリ。ゴクラク ツミノニンゲンキカヌ。ワシシヒテヲル。タヾシニンゲンワコニ
セル、ソノコヲサツヲツクル、ヒトワキク。ヒトワメクラデウマレタ ヒトノメヲアケタ ツヰニキイタコトワナヰ。アノヒトワ
ゴクラクカラ コヌナラバ、アノヒトワミナツクレヌ。アノヒトタチ ヒトニヘントコタヱテユフタ。ヲマヱアマタノツミノナカ
ニウマレタ、オマヱワ ワシドモヲ ヲソヱルカ。シカタナシ ヒトヲダヰテヤル。ヱズヽクアノヒトタチ ヒトヲダシテヤツ
タノヲキイタ、ヰキヤアテヒトニユフタ。ヲマヱワ ゴクラクノ ムスニゾンジルカ。アノヒトワ ヒトニヘントコタヱテユフタ、
カシテヒト ダレガ、ニヨヲテ ワシヒトニゾンジル。ヱズヽクヒトニユフタ。ヲマヱワヒトヲミタ。ヲマヱニモノユフヒト、
アノヒトワ。ヒトワユフタ。カシラヒトワシガ ゾンジル、ヱズヽクヲ ヲガンダ。ヱズヽクユフタ。ワシコノセカヰヱ ヰマシメニキタ。ニ
ヨヲテ ミルヒト〴〵ミヌ、ミルヒトビト メクラニナル。フワリサイニンゲン ヒトワトモニヲヽタ、コノコトヲキイテユフタ。ワシ
ドモメクラカ。ヱズヽク アノヒトタチニユフタ。ヲマヱタチ メクラナラバ、ツミワナイ。ヰマヲマヱタチワユフ、ワシドモミル。
ツミヲヲチツカセル〇【。】
ワシガ ヲマヱタチニ ホントマコトニユフ、トウヨリ ムクヒツジノヘヤヱ ハイラヌヒト、ベツノトコロヨリ ノボルヒト、アノヒト
ワ ヌスビトヲイハギ。トヲヨリハイルヒト、ムクヒツジノモヲリノヒト。モンバンヒトニ アケテトラセル、ムクヒツジワ
ヒトノコヱヲキク、ヂシンノ ムクヒツジノ ナヲヨバアテ ヲヱダス。ヂシンノ ムクヒツジヲ ボイダストキニ、ヒトワ
マヱニヰク、ムクヒツジ ヒトニツヰテヰク、ヒトノコヱヲシイテヲルユヱ。アノヒトタチ タビノモノニワ ツヰテワヰカヌ。
タヾシヒトニヲジテ ニゲテイク、タビノモノヽコヱヲ シラヌユヱ。ヱズヽク カヨニタトヱテユフ、アノヒトタチ ヒトノユフコト
ヲ シラヌ。 ヱズヽク アノヒトタチニ フタ【ヽの抜け落ち】ビユフタ、ワシヲマヱタチニ ホントマコトニユフ、ワシラニ ムクヒツジノトヲ。ミナ
ワシノマヱニクルヒト〴〵、ヌスビト ヲヰハギタチ、ムクヒツジアノヒトタチニワ キカヌ。 ワシラニ トヲワ、ワシヨリハイ
ルヒト、スクワレズ、アノヒトワハヰラズ デズ、タベモノヲメヱケズ。ヌスビトクルトキニ ヌスミタイ、コロシタ、コロバ
シタヰ。タヾシアノヒトタチ ダイマイアル ワシヰノチヲトラシニキタ。ワシガ ヨイモヲリノヒト、ムクヒツジノ タメニ
イノチヲハテル。ヤトイビト モヲリノヒトクナイ、ヂシンノ ムクヒツジナヰ、ヲホカメノクルノヲミテ、ムクヒツジヲ
ハナイテヤアテ ニゲル。ヲホカメワ ムクヒツジヲクワヱル トヲチラカス。ヤトイビト チンヲカク ヒトユヱニゲル、
ムクヒツジヲ ツヽシマヌ。ワシヨイモヲリノヒト、ワシノムクヒヅ【ツ?】ジヲシイテヲル、アノヒトタチ ワシヲシヒテヲル。
チヽワ ワシヲシヒテヲル トホリニワ。ワシガ ウナジコト チヽヲシヒテヲル、ムクヒツジノ タメニ ヰノチヲハテル。
ワシガホカノ ムクヒツジヲアル、ソノヘヤヨリナヰ。ワシガシヒカリ アノヒトタチヲ ツレテクル。ワシノコヱヲキク、ヒト
トコヱアツマル、ヒトリモヲリニナル。ソレユヱ ワシノチヽワ ワシヲカワイガル。ワシガイノチヲハテルユヱ、ニヨヲテワシ
フタヽビウケトル。ニンゲンワヲラヌ ワシノイノチヲトル。タヾシ ワシジシンカラ イノチヲハテル。ワシガハテルノヲヰセ
イヲアル、フタヽビウケトルノヲ ヰセヲアル。ワシガチヽワカカラ コノヲーセツケヲウケトル。ユダイニンゲン コノコト
バユヱ フタヽビ アラソイヤウ。アノヒトタチノナカニ タントニンゲン ユフタ。アノヒトハラノナカニ ヲニワキチガイ、
ナゼヲマヱタチ ヒトニキクカ。 ホカノニンゲンユフタ。 ハラニ ヲニノアルヒトノ コノコトバナヰ、ヲニワメクラノメヲア
ケルカ。 ソノトキワ アタラシイゴセク、 ヒトワヰルサレム ジョカニヲル。ヱズヽク サロモン テラノヌレヱンニ アヨベル。ユダイ
ニンゲン ヒトヲトリマワシテユフタ、ヰクツキヲマヱワ ワシドモヲ ウタガワセルカ、ヲマヱクレストシナラバ、ワシドモニ
アカリニユヱ。ヱズヽクヘントコタヱル。ワシガコノコトヲマヱタチワ ゾンジヌ。ワシガ チヽノナヲユヱ ツクルシゴトヲ、ワシ
ユヱシルシアラワス。シタガツテ ワシガユフタ、ヲマヱタチ ワシノ ムクヒツジナヰ。ソレユヱゾンジヌ。ワシノムクヒツジ
ワシノコヱヲキク、ワシガアノヒトタチヲ シヒテヲル、アノヒトタチ ワシニツヰテクル。ワシアノヒトタチニ ヰノチヲ
アランカギリトラセル、アノヒトタチ イツデモクサラヌ、ニンゲンヲラヌ、ワシノテイモタシテ ヒキトル。ワシニアノヒトタチヲ
トラセル チヽワ コト〴〵クミナタカヰヨリ。ニンゲンワヲラヌ チヽノテイモタシテ ヒキトレル。チヽワ ワシドモニ ヒトツニナル。
ユダイニン フタヽビ ヰシヲヒロヲテ ヒトニホヲリツケタイ。ヱズヽク アノヒトタチニ ヘントコタヱル。ワシガヲマヱタチニチヽ
ノタントヨイシゴトヲミセタ、ニアニヲシゴトヲユヱ オマヱタチ ワシニ イシヲホコリツケタヰ。ユダイニン ヒトニ ヘノトコタ
ニテユフ。ワシドモヲマヱニ ヨイシゴトノユヱ ヰシヲホヲリツケヌ。ダヾシ ワルクチユフユヱ、ヲマヱワニン ヂシンヲ ゴクラク
ニセル。ヱズヽクアノヒトタチニヘントコタヱル。ヲマヱタチノ ハツトヲノカニ カイテダイテアル。ワシガヲマヱタチヲ カミ
サマダトユフ。キヨモンノホンワ ハネノケラレヌ。ゴクラクハナシヲセル ヒト〴〵カミサマトヲツケル。ワシゴクラクノ
ムスコトユフタユヱ、ヲマヱタチ ワルクチヲ。タヾシノチヽワ ワシヲ ゴシヨウヲ ネガウ、ソノセカイヱ ツカヰニヤ
ハト〇【。】ワシガチヽノシゴトヲ ツクラヌ、ヲマヱタチワシニゾンジルナ。ワシガツクルナラバ、ヲマヱタチ ワシニゾンジナン
ダ、シゴトヲゾンジヨ。シヒテゾンジル、チヽワ ワシノナカニ、ワシガ チヽノナカニヲル。アノヒトタチ フタヽビヒトヲ
ツカマヱタヰ、テヲフリトヲテニグル。ヨハンネスワ サキニコリヲトラセルトユヱ ヨルダノカワムコヲニ、ヱズヽクフタヽビ
ツイテキテヲル。タントニンゲン ヒトノトコロヱキテユフタ。ヨハンネスワ フシギナコトワ ツクラヌ。タヾシヨハンネ
スワ ヒトワユヱユフタコト ホントワ。タントニンゲン ソコニ ヒトニゾンジル〇【。】
ベタニトコロノニン イモヲトモニマリヤト マルタノムラ、ナワナサレス。ビヨキアル。コノマリヤカシラヒトニ バイカ
ヲ ヌリツケテ、コノアセヲカミデヒイタ。ソノキヤウダイ ナサレスビヨキアル。ソレユヱヰモヲト ヱズヽクノトコロヱ ツカヰ
ニヤアテユフタ。カシラヒト、カワヰガルモノワ ビヨキアル。ヱズヽクキイテユフタ、コノビヨキ シナヌニヨヲテ、タヾシゴ
クアクノ ケライユヱ、ゴクラクノムズ【ス?】コ ソレユヱクライヲモラウ ニヨヲテ。ヱズヽクマルタ、イモヲトヲ ナサレストモニ
カワイガル。アアノヒトワ ビヨキモノヲキイタ、ヱズヽクソノトコロニ フツカヾアイダヲル。ソレカラ デシドモニユフタ。
ワシドモ フタヽビ ユダヰクニヱヰク。デシドモ ヒトニユウタ。シヽヨウ、イマユダイニン オマヱニ イシヲホヲリツケタヰ。
ヲマヱワフタヽビ ソコヱイクカ。ヱズヽク ヘントコタヱル、イチニチノヒワ ジユニトキアル、ヒルドキニ アヨブヒト、セカヰ
ノヒカリヲミテ、ケツマヅカヌ。ヨルドキニ アヨブヒトノナカニ ヒカリワナヰデ、ケツマツク。yフテカラ アノヒト
タチニ、ハナシヲセル、ワシドモノトモダチネテヲル、タヾシワシヒトヲ ヲコシニヰク。ヒトノデシドモユフタ。アノヒトネテ
ヲルナラバ、スクワレズ。ヱズヽクヒトク【ワ?】 シンダトユフ、タヾシデシドモ ヒトワネルトヰネブルユウタヲヲモヲテヲル。ソノ
トキニ ヱズヽク アノヒトタチニ アリヤカニユフタ、ナサレスシンダ。ワシガ コヽニワヲラヌユヱ。ヲマヱタチ ゾンジルニヨヲテ
ヨロコブ。ワシドモ ヒトノトコヱヰケヨ。トマスワフタゴト ナヲツケラレタ、ベツノデシドモニユフタ。ワシドモイーテ トモ【モに濁点】ニ
シネヨ。ヱズヽクツヰテクルトキニ、アノヒトワヨヲカヾアイダ ハカノナカニヲルノヲメケタ。ベタニヤムラヱ ヰルサレムジ
ヨカヱチカイ、シユゴリホドアル。タントユダヰニン マルタト マリヤノコトヱ アニユヱ クヤミニキタ。マルタヱズヽククルノ
ヲキイテ、ヒトニヰキヤウ、タヾシマリヤ ウチニヲル。マルタヱズヽクニ ユフタ。カシラヒト コヽニヲルナラバ、アニ
ワイナヌ、タヾシヰマ ワシシヒテヲル、ヲマヱワ ナニヲ ゴクラクタノムコト、ゴクラクワトラセズ。ヱズヽクヒトニユフタ、
ヲマヱノ アニイキカヱラズ。マルタユフタ。ワシシヒテヲル、ヒトワノチノトツキ ヰキテヲルトキニ、ヰキカヱラズ。ヱズヽク
ヒトニユフタ。ワシラニ イノチ ヰキカヱラセルヒト、ワシニゾンジルヒト シンダレドモ、ヰキカヱラズ。ミナイキテヲルヒト
ワシニゾンジルヒト、アランカギリシナヌ、ヲマヱワ コノコトヲゾンジルカ。ヲナゴ ヒトニイユフタ、カシラヒトハイ、ワシガゾン
ジタ、ヲマヱワ クレストシ、ゴクラクノムスコ セカイヱクルヒト。ユフテカラ マリヤ イモヲトヲ ヨビニヰーテ、ナイシヨ
デ ハナシヲセル、カシラヒト ツイテヲル、ヲマヱヲヨバル。ヲナゴキヰテ、イソシデタアテ、ヱズヽクノトコヱヰク。ヱズヽク
マルタ イキアウトコロニ マダヲル、 ムラヰハイラヌ。ユダイニン ヲナゴトモニ ウチヱ クヤミニヰーテヲル、マリヤ
ハヨタテ ソトヱイクノヲミテ ツヰテキテ ユフタ。ヲナゴ ハカヱ ナキニユク。マリヤ ヱズヽクノ トコヱツイテキタ、
ヒトヲミテカラ ウツブイテユフタ。カシラヒト コヽニヲルナラバ、アニワ シナヌ。ヱズヽク ヲナゴナクノヲミテ、トモニ
クル ユダヰニンゲンナク、ハラノナカニ ヲソレル クルシ ユフタ。ドコヱヒトヲ ヰケタカ。アノオヒトタチ ヒトニユフタ、
カシラヒトミニヰケ、ヱズヽクナク。ソレユヱ ユダイニンゲン ユフタ。ミヨ、イカヰニ アノヒトワ ヒトヲカワイガル。ベツノ
ヒト〴〵ユフタ。メクラノメヲ アケルヒト、ヰカイニシタラ ヒトワシナヌカ。ヱズヽクフタヽビ ハラノナカニ ヲソレテハカ
ヱキタ、コノアナヲ イシデフタグ。ヱズヽクヰシヲトレト イヒツケル、マルタノシンダモノヽイモト ヒドニユフタ、カシ
ラヒト、ミイカスギタデ、ヒトワクサヰ。ヱズヽク ヲナゴニユフタ。ワシ ヲマヱニ ハナシテ スンダカ、ヲマヱワゾンジル、
ゴクラクノ クラヰヲミズ。シンダモノヲ イレタトコロノ ヰシヲトヲテカラ、ヱズヽクアヽヌイテ ウヱヲミテユフタ、
チヽワ ワシニキクユヱ アリガトゴザル。 ワシガシイテヲル、ヲマヱワ ワシニイツデモキク。ダヾシ クンゼイノヒトガ トリマワ
スユヱ。ワシガモノヲユフタ、アノヒトタチ ゾンジルタメニ、オマヱワ ワシヲツカイニヤアタ。ユフテカラ ヲヽゴヱヲ ダイテ
ヨバル、ナサレス デテコヰ。シンダモノガ デルトキニ、アサヌノデ テヲマヰテ アタマヲツヽンデ、ヱズヽク アノヒトタチ
ニユフタ。トケヨヒトヲハナイテヤレ。タントユダイニンゲン マリヤノトコヱ キタヒト〴〵 ヱズヽクノツクルコトヲ ミテ
カラ ヒトニゾンジル。ソレガシニン フワリサヰニンゲンノ トコヱイーテ、アノヒトタチニ ヱズヽクノ ツクウタコトヲ ハナ
シニセル。ソレユヱ クゲノカシラヒト〴〵、フワリサイニンゲン ミナヨリアツマレト。ヨバアテユフタ、ワシドモ ナニヲツク
ロヲカ、アノヒトワタントフシギナ コトヲツクルユヱ。ワシドモ ヒトヲユルスナラバ、ミナニン ヒトニゾンジル。ロヲマノ
ヒト〴〵 ワシドモノトコロー【ト?】 チヤウニンヲ トリニクル。アノヒトタチノ ヒトリノニン ナワ カヰフワス ソノネンノクゲタ
カヰゴサル、アノヒトタチニユフタ オマヱタチ ミナシラヌ、ヲマヱタチ ヲモワヌカ、チヤウニンノタメニ ヒトリノニンシヌ
ヨヰヨリ、ミナチヤウニン クサラヌタメニ。ソノコトワ ヒトワジシンカラ ヰワヌ。 タヾシソノ□【ニ?チ?】ンノ クゲタカイゴザルユヱ
ナヱニコトユウ、ヱズヽクチヤウニンノ タメニ ヤガテシヌ。ソノチヨニンバカリワナイ、ゴクラクヱリ【?】ワケラレタ コドモヲミナ
ヨリアツマルタメニ。ソノヒイカラ アノヒトタチ アイハカラウ、ヱズヽクヲ コロストテ。ソレユヱ ヱズヽクユダイニンゲン
ノナカニ マダアキラカニアヨバヌ、タヾシ アシコカラ アレチノチカイ トコロヱ ムラノナワ ヰフライン キタ、デシドモト
モニ ワコニヲル。ソノトキ ユダイニンノ バスカゴセクチカヨル。ソノトコロノ タントニンゲン ゴセクユヱ ヰルサレム ジヨ
カヱノボル、ヂシンヲキレニセルタメニ。アノヒトタチ ヱズヽクヲ タヅネル、テラデタアテヲーテ ヰーヤウ、オマヱワ
ナニヲヲモウカ、アノヒトワマダ ゴセクノトコロヱコヌカ。クゲノカシラヒト〴〵 フワリサヰニンゲン ヲホセツケタ、ニヨヲテ
ニンゲンワ ヱズヽクノ オルトコロヲ シヒテヲル ハナシヲシヨ、ヒトヲツカマヱタヰトテ〇【。】
バスカゴセクノ ムイカマヱニ、ヱズヽク ベタニヤムラヱ ヒトワシンダモノワ ナサレス シンデカラ ヰキカヤシタ トコロヱツ
ヰテキタ。アノヒトタチ ソコニフルマイセル、マリヤキウジヲセル、ナサレスワ キヤクノヒトリノヒト。ソノトキ マリヤヰー
キン マコト ネガタイタント ニホウクスリ モヲテ、ヱズヽク アシヱヌリツケテ、アシヲカミデヒイテヤル。ソヲセル
デ ウチジユノ アマタノモノガニホウ。ユダスシモン カリヨトノヒト デシドモノ ヒトリノニン、ヱズヽクノ ツゲタイヒト
ユフタ。ナセコノ コヲヤク サンジウゼニデ ウルカ、コノゼニヲ ヒニンニトラセル。コノコトヲ ヒトワユフタ、ヒニンヲ ヨ□【木?】ジンス
ルコトワナヰ。タヾシアノヒトワ ヌスビト、カネブクロアル、フクロヱヰレタノヲ カクス。ソレユヱ ヱズヽクユウタ。オ
ナゴヲ ユルセヨ、ワシノ ヰケルヒマデ マムル。ヒニン ヲマヱタチトモニ ヰツデモヲル。ワシガ ヲマヱタチトモニヰ
ツデモヲラヌ。タントクンゼイノヒト〴〵 ヱズヽク ソコニヲルノヲ シヒテヲル、ヱズヽクユヱ バカワナヰ。タヾシヒトワシ
ンデカラ ヰキカヤシタ ナサレスヲミニイータ。クゲノカシラヒト〴〵 ハカラテ ナサレスヲコロシタヰ。ニヨヲテ タントユ
ダイニン ヒトワユヱ アーチヱヰーテ、ヱズヽクニ ゾンジル。ミヤウニチ タントクンゼイ ヒト〴〵ゴセクノ トコロヱ キテ
カラ、ヱズヽクヰルサレンジヨカヱ クルノヲキイテ。アノヒトタチ ナツメノキノハヲモヲテ ソトヱヰキアイニイーテ、ヨバル、
カシラヒトノ ナユヱ クルヒト ヰスラヱルンノ トノサマホメヨ、サヰワイヲメグメヨ。ヱズヽク ウサギムマヲ メヱケ
テノル、シタガアテ カイテダイタ。ジヨン ムスメゴ、ヲドロクナ、ヲマヱノ トノサマ ウサギムマノコニ ノヲテ オマヱノト
コロヱ コルノヲミヨ。ヒトノデシドモワ サキニコノコトヲシラヌ。ダヾシ ヱズヽク クラヰヲウケラレタトキニ、アノ
ヒトタチ ヲモヲテヲル、コノコトヲ ヒトユヱカイテ ダイテアル、アノヒト〴〵 ヒトニカヨヲニツクル。ヒトワトモニ
ヲル クンゼイヒト〴〵 アラワシタ、ヒトワナサレスヲ ハカヨリヨバアテ シンデカラ ヰキカヱシタ。ソレユヱ クン
ゼイヒト〴〵 ヰキアイニヰータ、ニヨヲテ アノヒトタチ ヒトワフシギナコトヲ ツクウタノヲキイタ。フワリサヰ
ニンゲン ユイアウ、ヲマヱタチ デキヌモノヲミヨ。セカイノニンヒトニ ツイテクルノヲミヨ。ソレガシ ヘレヰノ ニン
ゲン ゴセクノトコロヱ ヲガミニ ノホヲタ。アノヒトタチ ガリナヤクニヨリ ベツアヰダ ムラノニンナワ ピネポスノ
トコヱ ツイテヰータ、コヲテユフタ。カシラヒト ワシドモ ヱズヽクヲ ミタヰ。ピニポスキテ アンデレヤスニ ハナ
シヲセル、アンテレヤス ピニポス トモニ ヱズヽクニ モノヲユフ。ヱズヽク アノヒトタチニ ヘントコタヱテ ユフタ。トキ
ワキタ、ニンゲンノムスコ クラヰヲウケラレズ。ワシヲマヱタチニ ホントマコトユフ、ムギノホヲ ヂヱヲトヰテ、クサ
ラヌナラバ、ヒトツボバカリ。タヾシ クサルナラバ、クダモノ タントナル。イノチヲ カワイガルヒト、ウシナワズ、
ヰノチヲ キラウヒト セカイニ アランカギリ イノチヲモラワズ。ニンワサシニツトメル ナラバ、ワシニツヰテコヰ、ワシガヲルトコロ ワシノシモ
ヲトコトモニヲル、ニンワ ワシニツトヌルナラバ、チヽワ ヒトニジギヲセル。ヰマワシノタマシン ヲドケル ワシガナニヲユウ、チヽワコノトキヨリ
ワシヲスクヱ。タヾシ ソレユヱ ワシガ ソノトキニクル。チヽワ ヲマヱノチヲ クラヰニツケヨ。ソノトキニ コヱガ テンカラ キコヱルトユフ。ワシ
クライニ ウケタ、フタヽビ クライニウケズ。タアテヲル クンゼイヒト〴〵 キヰテユフタ。カミナリナアタ、ベツノニンゲン ユフタ、カミ
サマ ヒトニハナシヲシタ。ヱズヽク ヘントコタヱテ ユフタ、コノコヱワ ワシユヱナヰ、タヾシ ヲマヱタチユヱ キコヱタ。イマコ
ノセカイヲ イマシメルトキ、イマコノセカイノ カシラヒト ソトヱダヰテ ヤラレル。ワシガ チヨリ タコヲセラ
レタトキニ、ワシガ ミナ〴〵【濁点のない〳〵?】 ワシノトコヱ ヒヰパラズ。コノコトユフタ。アラワス ヰカイニ シナズ。クンゼイヒト〴〵
ヒトニ ヘントコタヱル。ワシドモ ハツトヲヨンデキヒタ。クレストシワ アランカギリヲル、イカヰニヲマヱ ユフカ、ニンゲン
ノムスコ シイカリ タカクセラレズ。ダレガ ニンゲンノムスコ。ヱズヽク アノヒトタチニユウタ。チヰトノアヰ
ダニ マダヒカリワ ヲマヱタチトモニヲル、ヒカリヲアルトキニ、アヨベヨ、クラサ ヲマヱタチヲ クラクセルナ。クラサニ アヨベル
ヒトドコヱ ヰクラシレヌ。ヲマヱタチ マダヒカリヲアル、ヒカリヲゾンジヨ、ヒカリノムスコドモニ ナルタメニ。コノコトヲユフテ
カラ、ヱズヽク アーチヱイーテ、ヂシンヲカクレル。ヒトワ タントホドフシギナコトヲ アノヒトタチノマヱニ ツクレドモ、ヒトニ
ゾンジヌ。ニヨヲテ ヰザイヤス マヱカラ シヒテヲル。ヒトノコトバ マコトナリ、アノヒトワユフタ。カシラヒト ダレガ□【ワ?】シノダン
ギヲ ゾンジル、カシラヒトノテ ドノヒトニ アラワセラレルカ。ソレユヱ アノヒトタチ ゾンジラレヌ。ニヨテヰザヤスフタヽ
ビユフ。アノヒトタチノ メワツブレタ、ハラガタツタ、メデミナンダ、ハラデ ワカラナンダ、アノヒトタチ モドラナンダ、ヒヨツ
デワシガアノヒト〴〵 ナヲサヌ。ヰザイヤス ヒトノクライヲ ミルトキニ、カヨヲニユフタ、ヒトユヱ ハナシセル。タヾシ タント カシラ
ヒト〴〵ヒトニ ゾンジル、フワリサヰ ニンゲンユヱ ソノシサイワ アカリニヰワヌ、オドロク アノヒトタチ ヂシンヲ ダイテヤル。
ニンゲンノヂギヲ マアトホシイヨリ ゴクラクノ ジギ。ヱズヱヽク ヨバアテユフタ、ワシニゾンジルヒト、ワシヲツカヰニヤアタ
ヒトニゾンジル。タヾシ ワシニゾンジヌ。ワシヲミルヒト、ワシヲツカイニヤ ヒトヲミル。ワシガセカイヱ ハイタヒカリ、
ニヨヲテ ミナニン ワシニ ゾンジタ、クラサニヲラヌ。タヾシワシノ コトバヲ キイテ ゾンジヌ、ヒトワワシガ ヰマシメヌ。ソレ
ニヨテ セカイヱ ヰマシメニ コナンダ、タヾシワシガ セカイヲスクヰニキタ。ワシヲハネノケル、ワシノコトバヲ キカヌヒト、
ヒトヲ ヰマシメル モノヲアル、ワシモノユフ コトバスヱノトキニ ヒトヲ イマシメズ。ワシガ ヂシンカラ ヰワヌ。タヾシ
ワシヲ ツカイニヤアタ チヽワ ワシニ ナニヲユウ、ナニヲ ハナシニセルト ヰヽツケル。ワシガ ヒトノヲキテワ アランカギ
リヰノチヲ シヒテヲル。ワシガ モノユフコト、シタガアテ チヽワワシニヰヽツケタ、ワシガカヨヲニ ハナシヲセル〇【。】
パスカゴセクノ マヱニ ヱズヽク シヰテヲル トキニ チカヨヲタ、コノセカイヲ ハナイテ、チチニ モドラズ、ヂシンノ
ヒト〴〵 セカイニ カワイガル、マアタ スヱノトキニ アノヒトタチヲ カワイガル。フルマヰドキニ、ヲニワ カリヨトノニン
ユダズシモンノ ハラニハイテ、アノヒトワ ヱズヽクヲ ツゲタイ。ヱズヽクチヽワ ヂシンニ ミナコト〴〵ク テヰワタス、ミカ
ラダ ゴクテ【ラ?】クヨリキタ、ゴクラクヱ モドラズト シヒテヲル。フルマイヲシテカラターテ、キリモノ ノヰデタヽム、マヱ
ダレヲ モヲテ シメル。 スナワチ チヤウズダライヱ ミヅヲヰレテ、デシドモノ アシヲアライ、ハジメル シメタマヱダレ
デ ヒク。 ヒトワ シモンペトロシノ トコロヱキタ トキニ アノヒトワユフタ。カシラヒト、ワシノ アシヲ アラウナ。ヱズヽクヘントコ
タヱテ ヒトニユフタ。ワシガ ツクルコト ヲマヱワ マダシラヌ、ソレカラ ヲボヱズ。ペトロス ヒトニユウタ。ツイニ ワシノ
アシヲ アラアタ コトワナヰ。ヱズヽク ヘントコタヱル、ワシガ ヲマヱヲアラツヌナラバ、ヲマヱワ ワシノホヲバイデワナヰ。
シモンペトロス ヒトニユフタ。カシラヒト アシバカリワナイ、タヾシ テアタマトモニ。ヱズヽク ヒトニユフタ。アラワレタヒト、
アシバカリ シイカリ アラウ、タヾシ カラダワ ミナキレイナ。オマヱタチワ キレイナ、タヾシ ミナニンナイ。ヒトワヂシ
ンヲ ツグルヒトヲシヒテヲル。ソレユヱ ユウタ、ヲマヱタチ ミナニン キレイニワナヰ。アシヲアラアテカラ、キリモノヲキテ、
フタヽビ ネコロブ、アノヒトタチニユフタ。ヲマヱタチ ワミ【シ?】ガ ツタウタコト シヒテヲル。ヲマヱタチ ワシヲ シーヤウト カ
シラヒト、ナヲツケルデデ、ヨイモノユフ、ワシラニ。ワシガ カシラヒト シーヤウ ヲマヱノ アシヲ アラウナラバ、オマヱ
タチ シイカリ アシヲ アライヤウ。ワシヲマヱタチニ タトヱテミセタ、ワシ オマヱタチニ ツクルコト ニセテツクレ。
ワシヲマヱタチニ ホントマコトニユフ。シモヲトコ ヒトノヌシ タカヰヨリナヰ、ツカイニヤラレタヒトワ ヒトヲ ツカイニ
ヤアタヒト タカイヨリナイ。ヲマヱタチ ソノシヒテヲル ナラバ、ヰワウ カヨヲニツクル ナラバ。ワシガ ヲマヱタチ ミナ
ユヱ カヨヲニイワヌ。ワシガ ヱリダスヒト〴〵 シヒテヲル。タヾシキヨモンノホン マコトニナリ。ワシトモニ モチヲタベル
ヒト、ワシヲ アクトデ ハネル。ヰマ ナランダ マヱニ、ヲマヱタチユフ、コノコトナルトキニ、ニヨテ ヲマヱタチ ワシラニゾン
ジル。ワシヲマヱタチニ ホントマコトニユウ。ワシガ ツカイニヤルモノヲ ウケトルヒト、ワシヲウケトル、ワシヲ
ウケトルヒト、ワシヲツカイニヤルヒトヲ ウケトル。ユフテカラ、ヱズヽクサハノナニヲジテ アラワレテユウタ。ワシガ
ヲマヱタチニ ホント マコトヲユフ、ヲマヱタチノ ヒトリノヒト ワシヲツゲズ。デシドモソレユヱ ミイテヤアテ ウタガウ、
ヒトワ ドノヒトヽユヱ モノユフ。ヱズヽク カワイガル デシドモノ ヒトリノヒト、ヱズヽクノ ムナイタニ モタレル。ソレユヱ
シノンペトロス ヒトニ ナイシヨデトウ。ドノヒトユヱ アノヒトワ モノユウ。アノヒトワ ヱズヽクノ ムナイタニ モタレテ
ユフタ。カシラヒト ドノヒトガ。ヱズヽク ヘントコタヱル、ワシガ シトクチ ツケテ タベテ トラセルモノニ。アノヒトワ
シトクチ ツケテ ツケテカラ、カリヨトノ ニンニ ユダスシモンニ トラセル。シトクチウケトヲテカラ、ヲニワ ハラ
ノナカヱハヰル。ソレユヱ ヱズヽク ヒトニ ユフタ。ヲマヱ ツクリタヰコトヲ ハヨツクレヨ。ネコロブヒト〴〵 ミナシラヌ、
ナニヲヒトニユフタ。ソレガシニン ユダスフクロヲ アルユヱ、ヱズヽクヒトニ ゴセクノトキニ タベモノカウ、アルイワ ヒニ
ンニ ホドコスト ヰヽツケル。ヒトクチ ウケテカラ、 アノヒトワ タチマチニ ソトヱユク。ソノヨルドキ アノヒトワ ソトヱ【ユの脱落】ク。
ヱズヽクユフタ。 イマニンゲンノ ムスコ クラヰヲ ウケトル、ゴクラクワ ヒトデ クライヲ ウケトル。ゴクラクヒトデクライヲ
ウケトルナラバ、ゴクヂ【ラ?】クヂシン ヒトヲ クライヲツケル、ハヨヲヒトヲ クライヲ ツケズ。コドモ ワシ オマヱタチトモニ
チヒトノアヰダ マダヲル、シタガアテ ワシ ユダイニンニユフタ、ワシイクトコロ、ヲマヱタチワ ツヰテコレヌ。コノフタヽビ
ハナシヲセル。ワシヲマヱタチニ オホセツケ アタラシイ トラセル、ヲマヱタチ カワヰガラレヤウ、ワシヲマヱタチヲ カワイ
ガル トホリニ、オマヱタチ カワイガリヤウ ウナジコト。ヲマヱタチ カワイガラレヤウ ナラバ、ミナニン ヲマヱク【タ?】チ
ワシノデシドモ カヨヲニ シテヲル。シモンペトロス ヒトニユフタ。カシラヒト、ドコニイクカ。ヱズヽクヒトニ ヘントコタ
ヱル、ワシヰクトコロヱ、ヲマヱワ ヰマ ワシニツイテ コレヌ、ソレカラワシニ ツイテヰカズ。ペトロス ヒトニユフタ、カシラ
ヒト、ナゼ ワシガ ヲマヱニ イマ ツイテワコレヌカ、ワシ ヲマヱノタメニヰノチヲイズル。ヱズヽクヒトニ ヘント
コタヱル。ヲマヱワ ワシノ タメニ イノチヲ イズルカ。ワシガ ヲマヱニ ホント マコトヲユウ、ニワトリ ナカズマヱニ、
ヲマヱワ ワシヲ サンドシラントユフ〇【。】
ハラノナカニ ヲドロクナ、ワシニゾンジヨ、ゴクラクニ ゾンジヨ。ワシノ チヽノウチヱ タントイタク、カヨヲニナヰ、
ワシヲマヱタチニユフ、ワシトコロヲ ソナヱニヰク。ワシガトコロヲ ソナヱニイクナラバ、ワシガ フタヽビコル、ヲマヱタチヲ
ワシノトコヱ アヅカル。ワシガヲルトコロヲヱ、ヲマヱタチトモニヲル。ワシガ イクトコロヱ、ヲマヱタチ シヒテヲル、ミチ
ヲト シヒテヲル。トマス ヒトニユフタ。カシラヒト、ヰクトコロヱ ワシシラヌ、イカイニ ミチヲシヒテヲルカ。ヱズヽク
ヒトニユフタ。ワシガミチワ、ホントノコトワ、ヰノチワ、ニンゲンワヲラヌ、チヽノトコロヱクル、タヾシ ワシユヱバカリ。ヲマヱタチ
ワシヲシテヲルナラバ、ワシノチヽヲ シヒテヲル。ヰマヲマヱタチ ヒトヲミテ シヒテヲル。ピニポス ヒトニユフタ。カシ
ラヒト、チヽヲ ワシドモニ ミセヨ、ワシドモニタアタ。ヱズヽク アノヒトタチニユフタ、タントノトキニ ヲマヱタチトモニヲ
ータ、ピニポス ワシヲ シラヌカ。ワシヲ ミルヒト チヽヲミル、イカイニ ヲマヱワユフ、チヽヲワシドモニ ミセヨ。ヲマヱ
ゾンジヌカ、ワシガ チヽノナカニ、チヽワ ワシノナカニヲル。ワシガ ヲマヱタチニ ユフコトバ、ヂシンカラヰワヌ、ワシノ
ナカニヲルチヽワ、アノヒトワコノシゴトヲツクル。ワシニゾンジヨ、ワシガ チヽノナカニ、チヽワ ワシノナカニヲル。カヨ
ホニナヰ、コノシゴトヲユヱ ワシニ ゾンジヨ。ワシヲマヱタチニ ホント マコトニユフ。ワシニゾンジルヒト、ワン【シ?】ガ
ツクルシゴトヲ アノヒトワ ツクル、コノタカイヨリツクル、ニヨヲテ ワシチヽノ トコヱヰク。ヲマヱタチワ ワシノナユヱ
ナンデモタノム、ワシガツクル。ニヨヲテ チヽワ ムスコデ クライヲ ウケトル。ヲマヱタチ ワシノナユヱタノム、ワシ
カ【ガ?】ツクル。ヲマヱタチ ワシヲ カワイガルナラバ、ワシノ ヲホテツケルクル。ワシガ チヽニコウ、アノヒトワホカノ グ【ダ?】
ラ【マ?】カスヒトヲトラセル、ヲマヱタチトモニ イツデモヲル。アノヒトワ マコトノカミサマ、セカイノ ニンゲンヒトヲミナンデ
シラヌ、アノヒトヲ ウケトレヌ。タヾシ ヲマヱタチ ヒトヲ シヒテヲル、ヲマヱタチトモニ ヲマヱタチノナカニヲルユヱ。
ワシ ヲマヱタチヲ ヒトリモノコサヌ、 フ【ワ?】シ ヲマヱタチノ トコヱコズ。チヒトノチニセカイワ ワシヲマダミヌ、タヾシヲマヱ
タチ ワシヲミル、ニヨヲテ ワシガヰキテヲル、ヲマヱタチワ イキテヲラズ。ソノヒニ オマヱタチワ シイテヲル、ワシ
ガ ワシノチヽノナカニ、ヲマヱタチ ワシノナカニ、ワシガ オマヱタチノナカニ ヲルトシヒテヲル。ワシノ ヲホセツケヲ、
アルトキクヒト、ワシヲカワイガル。ワシノ【ヲ?】 カワヰガルヒト、チヽニ カワイガラレル、ワシガ ヒトヲ カワイガラズ、ヂシ
ンヲ ヒトニアラワサズ。ユダスコノカリヨトノ ニンデワナヰ、ヒトニユフタ。カシラヒト、ヰカイニナリ、ヲマヱヂシンヲワシ
ドモニ アラワsタヰ、セカヰデワナイ。ヱズヽクヒトニ ヘントコタヱテユフタ。ニンゲン ワシヲカワイガルナラバ、ワシノコトバヲ
キク、ワシノチヽ ヒトヲ カワイガル、ワシドモ ヒトワトモニ ヲリニコズ。ワシヲ カワイガラヌヒト、ワシノコトバヲキカヌ、
ヲマヱ キタコトバ、ワンデワナイ。タヾシ ワシヲツカイニヤヽ【ー?】タチヽノコトバ。コノコト ワシヲマヱタチトモニヲルトキニユフタ
ダラカスヒト、アリガタイ カミサマ、ワシノチヽ ワシノナユヱ ツカイニヤルモノヲ、オマヱタチニ ミナ〴〵【〳〵?】ヲソヱル、ワシガ
ヲマヱタチニ ユフタコトヲ ヲモイダサセル。ワシガ ヲマヱタチニ ナサケヲ ヲクル、ワシノ ナサケヲ ヲマヱタチニ トラセル
セカイノ ニンゲン トラセルヨヲニ、ワシガ ヲマヱタチニ トラセヌ。ハラノナカニ ヲドロクナ、ヲソレルナ。ヲマヱタチ ワシノ
ユフタコトヲ キヰタ、ワシアーチヱ ヰヽテ、ヲマヱタチノ トコヱコル、ヲマヱタチ ワシヲ カワイガルナラバ、ワシガユフタ、
チヽノトコヱ ツイテヰクユヱ、ヲマヱタチ ヨロコブ、チヽワ ワシタカヰヨリ ニヨヲテ。イマナカナンダマヱニ、ワシガヲマヱタチニ
ハナシヲシタ、ヲマヱタチ ナルトキニ、ゾンジル。ワシガ ヲマヱタチニ タントコトヲイワヌ、コノセカイノカシラヒト
クルユヱ、タヾシ ワシヲ ウツタヱルコトワナイ。ソレユヱ セカイノニン ワシガチヽヲ カワイガルト シヒテヲル、シタ
ガアテ チヽワ ワシニ ヲホセツケタ トヲリニツクル、タアテ アーチヱ ヰケヨ〇【。】
ワシガ マコト ブドウノキ、ワシノチヽワ ハタケツクリ。ミナツルニワ クダモノワ ナラヌ、アノヒトヒイテシマウ、ミナク
ダモノ ナルツル、アノヒトワツクル、マアト クダモノナルヨヲニ。ワシヲマヱタチニ ユフコトバユヱ、ヲマヱタチ キレニナアタ。
ワシノナカニ ヲレヨ、ワシガヲマヱタチノナカニヲル、ツルボドウノギ【キ?】ニ ツイテヲラヌナラバ、クダモノナレヌ トヲリニワ、
カヨホニ ヲマヱタチ ワシノナカニ ヲラヌ。ワシガ ブドウノキ、ヲマヱタチ ツルワ。ワシノナカニ オルヒト、ワシガヒトノ
ナカニオル、アノヒトワ タント クダモノナル、ワシガナヰナラ、ヲマヱタチ ミナツクレヌ。ワシノナカニ ヲラヌヒトツル
ワウナジコト。ダイテ ヤラレタカレル、ニンゲンワ ヨセテ ヒノナカヱ ホヲリコンデ クベル。ヲマヱタチ ワシノナカニヲルナラバ、
ワシノコトバ ヲマヱタチノ ナカニヲル、ナンデモホシカ、タノメヨ、ヲマヱタチニ トラセラレル。カヨヲニ ワシノチヽワ ワラ
イウケトル、ヲマヱタチ タントクダモノナル、ワシノデシドモニナル。チヽワ ワシヲ カワイガル トヲリニワ、ワシガヲマヱ
タチヲ ウナジコト カワイガル、ワシノメグミノナカニヲレヨ。ヲマヱタチ ワシノ ヲホセツケヲ キクナラバ、ワシノメグミ
ノナカニヲレヨ、ワシガチヽノ ヲホセツケヲキイタ メグミノナカニ トヲリニヲル。ワシガ ヲマヱタチニ ハナシタ。ワシノ
ヨロコビ ヲマヱタチノ ナカニヲル、ヲマヱタチノ アマタノコトヲ ヨロコブタメニ。ヲマヱタチ カワイガラレヤウ、ワシガ ヲマヱ
タチヲ カワイガルトヲリニ、コノワシノ ヲホセツケ。ニンゲンヲラヌ トモダチノ タメニ イノチヲイルス、メグミヲホ
キイヨリナイ。ヲマヱタチ ワシノ ヲホセツケキクナラバ、ワシノトモダチ。ワシガ ヲマヱタチヲ シモヲトコドモ マダナ
ヲツケヌ、ニヨテシモヲトコ カシラヒトノ ツクルシゴトヲシラヌ、タヾシ ワシガ ヲマヱタチヲ トモダチト ナヲツケル、
ニヨテ ワシガ チヽノ キイタコトヲ、ヲマヱタチニ ミナスラ【テ?】サセル。ヲマヱタチ ワシヲ ヱリダサヌ、 タヾシ ワシガ
ヲマヱタチヲ ヱリダイテ サダメタ、クダモノナラセニ ヰクタメニ、ヲマヱタチノ クダモノ ナガラヱル、ヲマヱタチ
ナンデモ チヽニタノム、アノヒトワ ヲマヱタチニ ワシノナユヱ トラセル。ワシガ ヲマヱタチカワヰガラレヤウ、コノコト
ヰヽツケル。セカイノ ニンゲン ヲマヱタチヲ キラウナラバ、ワシヲ ヲマヱタチ マヱニキラアタト シヒテヲル。ヲマヱ
タチ セカイヨリ クルナテ【ラ?】バ、セカイワ ジシンノコト カワイガル、タヾシヲマヱタチ セカイヨリコヌ、ワシガヲマヱ
タチヲ セカイヨリ ヱリダシタ。ソレユヱ セカイワ ヲマヱタチヲ キラウ。ヲマヱタチ ワシノ ユフタコトバ ヲモヲテヲ
レヨ、シモヲトコ カシラヒト タカイヨリワナイ。ワシヲリ【ソ?】コナウ、ヲマヱタチヲ ソコナワズ。ワシノコトバ キク
ナラバ、ヲマヱタチノ コトバ キカズ。アノヒトタチ ワシヲツカイニ ヤアタ ヒトヲ シラヌ。ソレユヱ ワシノナアユヱ
ヲマヱタチニ ミナコトヲ ツクラズ。ソシアノヒトタチニ ユイニコナンダ、アノヒトタチ ツミワナヰ。イマアノヒトタチ
ツミユヱナダメヌ。ワシヲ キラウヒト、ワシノチヽヲキラウ。ワシガ ベツノヒトノ ツクラナンダシゴト、アノヒトタチノ
ナカニ ツクラヌナラバ、アノヒトタチ ツミワナヰ。イマミンチカラ ワシトチヽヲトモニ キラウ。タヾシ ハツトヲニ
カイテアルコトバ マコトナリ。アノヒトタチ ワシヲ ユヱワナイ キラウ。ダラカスヒト マコトカミサマ チヽワヨリコルワシ
ガ ヲマヱタチニ ツカイニヤルヒト ツイテクルトキニ ワシユヘ ハナシヲセル。ヲマヱタチワ ハジマリニ ワシトモニ
ヲル ハナシヲセル〇【。】
ワシヲマヱタチニ コノコトユフタ、ヲマヱタチワ ナブラレルナ。アノヒトタチワ ヲマヱタチヲ ダイテヤラズ、イヒト
キ スギテカラコイ、オマヱタチヲ ミナコロスニン ゴクラクヱ マツルコト ヲモヲテヲル コト〴〵ク。アノヒトタチ チヽヲ
ワシヲ シラヌユヱ、ヲマヱタチニ カヨヲニツクル。ワシガヲマヱタチニ ココトヲユフタ、ヰヒトキスギテカラ、ヲマヱ
タチ ワシノ ユウコトヲ ヲボヱル。ワシガ ハジマリニ ヲマヱタチ トモニヲルトキニ コノコトワイワヌ。イマイマワシヲ ツカ
ヰニヤアタヒトノ トコロヱヰク、オマヱタチノナカニ ニンゲンワヲラヌ、ワシニ ドコヱヰクトトウ。ワシガ ヲマヱタチニ
コノコトヲ ハナシヲシタユヱ ハラガハアテカナシイ。タヾシワシ ヲマヱタチニ マコトヲユフ、ワシガ アヽチヱイク、マシアリ、
ワシガ アーチヱイカヌ ナラバ、ワシガツカイニヤル ダラカスヒト ヲマヱタチノ トコロヱコヌ。アノヒトワ クルトキニ セカ
イノニンゲン ツミユヱ、ヨロシイユヱ。セイバヰユヱ サトラズ。ツミユヱ、ニヨヲテ アノヒトタチ ワシニ ゾンジヌ、ヨロシイユヱ
ニヨヲテ、ワシガチヽノトコヱ アハチヱヰヽテカラ、ヲマヱタチ ワシヲ モヲミルマヰ。セイバイユヱ、ニヨヲテ コノセカイノ
カシラヒト イマシメラレタ。ワシヲマヱタチニ タントユウコトガアル、タヾシ ヲマヱタチ マダコラヱラレヌ。
サマクルトキニ、ヲマヱタチヲ、ミナマコトノ トコロヱ ミチビカズ、ジシンカラ ヰフマイ、キタコトヲハナサズ、ヤガテクル
ココトヲ ヲマヱタチニ ハナシヲセズ。アノヒトワ ワシニ タライヲツケズ、ワシノコトヲトヲテ、ヲマヱタチニ ハナシヲセズ。チヽ
ワ アルコト ミナワシノコト。ソレユヱ ワシユフタ、アノヒトワ ワシノコトヲトヲテヲマヱタチニ ハナシヲセズ。チイトノ ア□【イ?】
ダニ ヲマヱタチ ワシヲミマヰ。フタヽビ チヒトノアイダニ ヲマヱタチワ ワシヲミズ。ワシガチヽノ トコロヱヰク ニヨツテ。
ソレガシデシドモ ユイヤウ、ナニヲアノヒトワ ワシドモニユフ、チヒトノアヰダニ ヲマヱタチ ワシヲミマイ、フタヽビ チヰトノ
アイダニ ヲマヱタチワ ワシヲミズ。ワシガチヽノ トコロヱヰク ニヨテ。ソレユヱ ユウタ、モノユフ チヒトノアヒダニ ナニヲ
ヒトノユフコト、ワシドモワカラヌ。ヱズヽク シカタナシ アノヒトタチ ジシンニ シイテヲルコトヲ トイタヰ、アノヒトタチニ
ユフタ。ワシハナシヲシタ、ヲマヱタチ チヒトノアイダニ ワシヲミマヰ、フタヽビ チイトノアイダニ、ヲマヱタチワ ワシヲミズ、
ソレユヱ ヲマヱタチ トイヤウ。ワシヲマヱタチニ ホント マコトニユフ、ヲマヱタチ ナカズ ナミダ ナガレズ、タヾシ
セカイノニンゲン ヨロコバズ、ヲマヱタチ カナシヰ、タヾシ ヲマヱタチ カナシヰ、ヨロコビ カワル。ヲナゴ コヲウムトキニ
クルシヰ、ソノトキワキタ、タヾシ コヲウンデカラ クルシヰコト マダヲボヱヌ、ニンヲ セカイヱウンダユヱ ヨロコブ。ヲマヱ
タチヰマ カナシイ、タヾシ ワシガ ヲマヱタチヲミズ、ハラニヨロコブ、ニンゲンワ ヲラヌ ヨロコブ コトヲスマス。ソノヒニ
ヲマヱタチ ワシニ ミナコトヲ トワヌ、ワシヲマヱタチニ ホントマコトヲユフ ヲマヱタチ ナンデモ チヽニ ワシノ ナアユヱタノ
ムコト、ヒトニトラセラレズ。ヲマヱタチ ワシノナアユヱ ミナマダ タノマナンダ、ヲマヱタチ タノンデ ウケトラズ、アマタノ
コトヲ ヨロコブタメニ。 ワシ ヲマヱタチニ コノコトヲ タトヱテユフタ、タヾシ イヽトキスギテカラコヰ、ワシガ ヲマヱタチニ
タトヱテワ ヰワヌ、タヾシ チヽノコトヲ ヲマヱタチニ アカリニ ハナシヲセズ。ソノヒトニ ヲマヱタチ ワシノナアユヱ タノマ□【「ユ」に濁点】
ワシガ ヲマヱタチニイワヌ、ワシヲマヱタチユヱ チヽニコウ。チヽワヂシン ヲマヱタチヲ カワヰガル、ニヨヲテ ヲマヱタチ
ワシヲ カワイガアタ、ワシワ ゴクラクカラ キタノヲ ゾンジタ。ワシガ チヽカラキテ、セカイヱ アマクダル、フタヾ【ヽ?】ビ
セカイヲ ハナイテ チヽノトコヱモドル。テ【デ?】シドモ ヒトニユフタ、ヰマワ タトヱチ【テ?】イワナンデ、アカリニユウ。ヰマワシワカル、
ヲマヱミナ シヒテヲル、シヒカリワナヰ ニンゲン ヲマヱニトウ。ワシドモ カヨヲニ ゾンジル、ヲマヱワ ゴクラクカラ
キタ。ヱズヽク アノヒトタチニ ヘントコタヱル、ヰマワゾンジルカ。ヰヽドキスギテカラコヰ ヰマワキタ、ヲマヱタチ ミナヤ
シキニ ヒロゲラレズ、ワシヲ ヒトリノコス。タヾシ ワシヒトリワナヰ、ニヨヲテ チヽワ ワシトモニヲル。ワシ ヲマヱタテ【チ?】ニ
コノコトヲユフタ、ヲマヱタチ ワシノナカニ ナサケアルタメニ、セカイヱヲルトキニ カナシヰ、タヾシリキメヨ。
ワシガ セカイニカツ〇【。】
ユフテカラ、ヱズヽク アヽヌイテ、テンヲナガメテユフタ。チヽワ トキワキタ、ムスコヲ クライヲツケヨ、ウナ
ジコト ムスコワ ヲマヱヲ クラヰヲツケタ。ヲマヱワ ヒトニ ミナニンゲンノ ヰセイヲトラシタ トヲリニワ、アノヒト
ワ アノヒト〴〵ニ アランカギリ ヰノチヲ トラセルタメニ。コノアランカギリ ヰノチワ、アノヒトタチ ヒトリ
ノマコト ゴクラクヲト ツカヰニヤアタ ヱズヽクヲ クレストシヲ シヒテヲルタメニ。ワシガ ヲマヱヲ チユク
ラヰヲツケタ、ヲマヱワ ワシニ ツクルニトラシタ シゴトヲ ズンダ。チヽワ、ヲマヱヂシントモニ、ワシガ セ
カイワ、デキヌマヱニ ヲマヱトモニアルクラヰ ヰマワシニ クライヲ ツケヨ。ワシガ ニンゲンニ ヲマヱノナヲ
アラワシタ、ソノニンヲ ワシニ セカイカラ トラシタ、ヲマヱノ ニンニナアタ、ヲマヱワ ワシニ アノヒトタチ
ヲ トラシタ、ヲマヱノコトバヲキイタ。ヰマシイテヲル、ヲマヱワ ワシニ トラシタコト、ヲマヱカラクル。ヲマヱワシニ
トラシタコトバヲ、ワシ アノヒトタチニ トラシタ、アノヒトタチ ウケトヲテ、マコトニシヒテヲル。ワシガ ヲマヱ
カラキタ、ヲマヱワ ワシヲ ツカイニヤアタ ゾンジル。ワシガ アノヒトタチノタメニ タノム。ソノセカイユヱ タノ
マヌ。ヲマヱ ワシニ トラシタヒト〴〵 ヲマヱノニンゲン。ワシノコト ミナヲマヱノコト、ヲマヱノコト ワシノコト。ソノヒト
〴〵ニ ワシガ クライツケラレズ。ワシガ マダセカヰヱヲラヌ、アノヒト〴〵 セカイニヲル、ワシガ ヲマヱノ トコヱ
クル。アリガタイ チヽワ ワシニトラシタヒト〴〵、ヲマヱノ ナノナカニ マムレヨ。アノヒトタチ ワシドモウナジコト、
ヒトクニナルトテ。ワシアノヒトタチトモニ セカイニ ヲルトキニ、ヲマヱノ ナノナカニ アノヒトタチヲ マムウラ、
ヲマヱワシニ トラシタヒト〴〵 モヲリヲシタ、ヒトリノニン クサラヌ、タヾシ クサルヒト、ニヨテ キヨモンノホン
マコトナル。イマワシ ヲマヱノ トコロヱコヰ、コノコトヲ セカイニ モノユフ。アノヒトタチ ハラノナカニ アマタノコトヨ
ロコブユヱ 【句点の前に空白有】。クシガ アノヒトタチニ ヲマヱノ コトバヲトラシタ、アノヒトタチ セカイヨリコヌ、ワシガ セカイヨリコヌ
トホリニ ソレユヱ セカイノ ニンゲン アノヒト〴〵ヲ キラウ。ワシガ タノマヌ、オマヱ アノヒトタチヲ セカヰ
カラ ツレテヰク。タヾシニヨテ アノヒトタチヲ ワルヰカラ マムル。アノヒトタチ セカイヨリコヌ、ワシガ セカイヨ
リ コヌホリニ。アノヒトタチノ ナカnナカニ マコトヲ サダメヨ、ヲマヱノ コトバマコト。ヲマヱワ ワシヲ セカイヱツカ
ヰニ ヤアタトホリニ、ワシ アノヒトタチヲ ウナジコト セカイヱ ツカヰニヤル。ワシガ アノヒトタチノタメニ ジシン
ヲサダメル、ニヨヲテ アノヒトタチ マコトニ サダメラレタ。ワシガ アノヒトタチユヱ バカリタノマヌ。タヾシ ワシニ
アノヒトタチ ユフコトバユヱ ゾンジル ヒト〴〵ノタメニ。ミナニン ヒトツニナルヨヲニ。チヽワ ワシノナカニ、ワシガチヽノナ
カニ、ワシガ ヲマヱタチナカニ、アノヒトタチ ウナジコト ワシドモノナカニ ヒトリニナル。セカイノニンゲン ヲマヱワ ワシヲ
ツカイニ ヤアタ ゾンジル。ヲマヱワ ワシニトラシタ クラヰワ、ワシガ アノヒトタチニ トラシタ。アノヒトタチヒト
リニナルタメニ、ワシガ ヒトリニナアテヲル トホクニ。ワシガ アノヒトタチノナガニ、ヲマヱワ ワシノナカニ、ニヨツテ
アノヒトタチ ヒトリモフソクナシヨニ、セカイワヲマヱ ワシヲ ツカイニ ヤアタトシヒテヲル、ヲマヱワ アノヒトタチヲ
カワイガアタ、ワシヲカワヰガアタ トホリニ。チヽワ ワシガ ホシイ、ヲマヱワシニ トラシタヒト〴〵 ワシトモニ ヒトツ
トコロニヲル、アノヒトタチ ヲマヱ ワシニ トラシタ クラヰヲ ミルヨヲニ、ニヨテ セカヰワ デキヌマヱニ、ヲマヱワ ワシヲ
カワヰガアタ。ヨロシヰチヽワ。セカヰノニンゲン ヲマヱヲシラヌ、ワシガ ヲマヱヲ シイテヲル。アノヒト〴〵 ヲマヱワ ワシ
ヲツカイニヤアタ シヒテヲル。ワシガ アノヒトタチニ ヲマヱノナヲ ステサシタ、ワシガ ステサセズ、ニヨヲテ ヲマヱ ワシヲ
メグミデカワヰガアタ、アノヒトタチノナカニ、ワシガ アノヒトタチノナカニ〇【。】
ユウテカラ、ヱズヽク デシドモトモニ ヰミゾノ ムコヲニ、ナワ ケヅロヲン ヰヽタ。アノトコロヱ ハタケ、ジシンデシ
ドモトモニ ハヰテヰク。ヒトヲ ツゲタヰヒトノ ナワユダス ソノトコロヲ シヒテヲル、ニヨヲテ ヱズヽク デシドモト
モニ ソコニタビ〳〵 アツマル。ソレユヱ ユダス クゼイ ツキビト フワリサイニンノ クゲノカシラ ヒト〴〵ノ
カヽヱビト、ロヲソクト タイマツヲ トボシテ イクサノドウグヲ モヲテ、ツレテヰヽタ。ヱズヽクミナクルコトシヒ
テヲル、ソトヱヰヽテ、アノヒトタチニ ユフタ、ダレ□【「ヲ」に濁点】 タヅネルカ。アノヒトタチ ヒトニ ヘントコタヱル、ナサレス
ムラノニン ヱズヽクヲ タヅネル。ヱズヽク アノヒトタチニ ユウタ、ワシラニ。ツゲルヒト ナワユダス クゼイトモ
ニ タアテヲル。ヒトワ ワシラニユフトキニ、アノヒトタチ ヲドロイテ アトヱヒイサアタ、ヂダヱコケル。フタヽビアノ
ヒトタチトウ、ダレガタヅネルカ。アノヒトタチユフタ ナサレス ムラノニシ ヱズヽク。ヱズヽク ヘントコタヱル、ワシガ
ヲマヱタチニ ワシラニユフタ、ヲマヱタチ ワシヲ タヅネルナラバ、アノヒト〴〵ヲ ハナシテヤレヨ。カヨヲニ ヒト
ワユフコトバ マコトナリ、ヲマヱ ワシニトラシタ ヒト〴〵、ワシガ ヒトリモクサラヌ。 シモンペトロス ワキザシサイ
テ ヌイテ、タカイクゲノ ヤトイビトニ ナゲカケテ、ミギリノ ミヽヲヲトス、ヒトノナ マルコス。ソレユヱ ヱズヽク
ペトロスニユフタ。カタナヲ ヲサメヨトユフ、チヽワシニ トラシタ チヨクヲワシガノマヌカ。クンゼイノツキビトセンニ
ンノサムライノ カシラヒト、ユダイニンノ ヤトイビト ヱズヽクヲ ツカイマヱテバル。アノヒトタチ ヒトヲ ソノトシノセ
カイクゲナワ カイフワスノシユト アンナノトコロヱ ハジマリニ ツレテユク。コノカヰフワス ユダイ ニンゲンヲスヽメル、ヒト
リノニン チヤカニンノタメニシヌ、マシアリコト。シモンペトロシ ベツノデシトモニ タカイクゲヲ シヒテヲル デシ
ヱズヽクニツイテクル、ヱズヽクトモニ タカイクゲノ カドヲハイル。ペトロシワ トノワ【ソ?】トニ タアテヲル、タカイクゲヲ
シヒテヲル ホカノデシ ソトヱイーテ、モンバント ハナシヲシテ、ペトロシヲ ツレテハヰル。コノモンバンヲナゴ ペトロシ
ニユフタ。ヲマヱワ コノニンノデシカ。アノヒトワユフタ、ワシガデワナヰ。ヤトイビト サムイトキ タアテスミヲ ヲコシテ、
アタラセル。ペトロシワ トモニタアテ アタル 【句点の前に空白有】。タカイクゲ ヱズヽクニ デシドモノコト ヲソヱルノヲトウ。ヱズヽク
ヒトニ ヘントコタヱル、ワシガ セカイノ ニンゲンニ アキラカニ ハナシヲシタ、ワシガ イツデモ ヨリヤイヤドデ
テラデ ユダイニンゲン ヰツデモ アツマルトコロデ ヲワヱタ、ワシガ ナイシヨデ ハナシワセヌ。ナゼワシニトウカ、ヲマ
ヱワ ワシノユフコトヲ キイタ ヒト〴〵ニトヱ、アノヒト〴〵 ワシノユフコトヲ シヒテヲルニミヨ。カヨホニ モノユフトキ
ニ、ヒトリノヤトイビト キワニタアテ、ヱズヽクノヨコヽビンヲ ハアテユフタ。ヲマヱワ カヨヲニ タカイゲクニ ヘント
コタヱルカ。ヱズヽク ヒトニヘントコタヱル。ワシガワルイコトヲ ユウタナラバ、アラワセヨ。ヨイコトヲ ユフタナラバ、
ナゼワシヲタヽクカ。アンナ ヒトヲシバアテ タカイクゲ カイフワスノ トコロヱ ツカイニヤル。シモンペトロス タア
テアタルトキニ、アノヒトタチ ヒトニユフタ。ヲマヱワ ヒトノデシドモノ ヒトリノニンカ。アノヒトワ ワシワデシデワ
ナイトユウ。ペトロシ ミヽヲキイタヒトノ タニンノヒト クゲノタカイ ヤトイビト ユウタ、ワシガ ヲマヱヲ ヱズヽク
トモニ、ハタケノ ナカデミタカ。ペトロスワ フタヽビ ナイトユフ。タチマチニ ニワトリガ ウタウ。アノヒトタチヱズヽク
ヲ カヰヤフワヨリ ヤシキガタヱ ツレテイク、アノヒト〴〵ヂシン アサドキニ ヤシキヱワ ハヰラヌ、カラダヲ ヨゴサヌ、
タヾシ パスカ ゴセクノトキニ ムクヒツジノコヲ タベル。ピナトス ソトヱヰヽテ、アノヒト〴〵ニユフタ。ヲマヱタチ
ナンオコトヲ ソノニンニ ウヽタヱルカ。アノヒトタチ ヒトニヘントコタヱル。ヒトガ トガニンデナイナラバ、ワシドモヒトヲ
ヲマヱニワ ワタサヌ。ピナトス アノヒトタチニユウタ。ヒトヲ ツレテ、シタガアテ ヲマヱタチノ ハツトヲ ヰマシメヨ。
ユダイニン ヒトニユフタ、ヒトヲコロス ワシドモトメル。カヨホニ ヱズヽクノ ユウコトバ マコトナリ。アノヒト アラワスト
キニ、ヰカイニシテ シナズ。ピナトス フタヽビ ヤシキカタヱ ハイテ、ヱズヽクヲ ヨバテユフタ。ヲマヱワ ユダイニンゲンノ
トノサマカ。ヱズヽクヒトニ ヘントコタヱル。ヲマヱワ ヂシンカラ コノコトヲユフカ、アルイワ ホカノニン ヲマヱニハナシ
ヲシタカ。ピナトス ヘントコタヱル。ワシガ ユダイニンカ。ヲマヱノ トコロノヒト クゲノカシラ ヒト〴〵ヲマヱヲ ワシニ
ワタシタ、ヲマヱワ ナニヲツクウタカ。ヱズヽク ヘントコタヱル ワシノクニ コノセカイデワナイ タヾシ ワシノクニ
コノセカイニ オルナラバ、ワシノヤトイビト、ワシヲ ユダイニンゲンニ ワタサヌトテエ【ユ?】ヱ、ヰサカウ、イマワシノクニコヽデ
ワナイ。ピナトス ヒトニユフタ。ソレユヱ ヲマヱワトノサマカ。ヱズヽク ヘントコタヱル、ヲマヱワユフタ、ワシガトノサマ、ソレユヱ
ワシガ ウンダ、コレニヨヲテ ワシガ セカイヱ アマクダアタ、マコトヲ アラワス タメニ。ミナマコトニン ワシノコヱヲキク。
ピナトスヒトニ ユフタ。ナニヲ マコト、ユフテカラ フタヽビ ユダヰニンゲンヲ ミニイヽテ ユフタ、ワシガ ヒトノツミワミヱヌ。
パスカゴセクノトキニ ヲマヱタチ ナラアタ、ワシガヒトリノ ヒトヲ イルス、ヲマヱタチ ホシイカ ワシガ ユダイニンノ ト
ノサマヲ ヰルスカ。ミナニン フタヽビ ヨバアテユフタ、アノヒトデワナヰ。ダ【タ?】ヾシ バラバ、コノヒト ヒトヲコロスヒト〇【。】
ソノトキニ ピナトス ヱズヽクヲ ツカマヱテ ナグル。サムライタチ アザミデ カブトヲ クンデ アタマヱカブセル、アカイ
ハレギヲ キセル。ユダイノ ニンゲンノ トノサマ ヲガンデ ユフテカラ、ヒトノコビンヲハル。ピナトス フタヽビ ソトヱイーテ、
アノヒト〴〵ニ ユフタ。ワシガ ヒトヲ ソトヱツレテイヽタ、ヲマヱタチ シヒテヲル、ニヨヲテ ワシガ ヒトノ ツミヲミヱヌ。ヱ
ズヽク アザミノ カブトヲカブウテ、アカイ ガレギヲキテ、ソトヱイヽタ。ピナトス アノヒト〴〵ニユフタ、ミヨコノニン。クゲノ
カシラヒト〴〵 ヤトイビト ヨバアテユフタ。ヒトヲ ハリツケ ニセヨ、ヒトヲ ハリツケニサセヨ。ピナトスユウタ、ヲマヱタチ
ヒトヲツレテ、ハリツケニセヨ、ワシガ ヒトノツミヲ ミヱスユヱ。ユダイニンゲン ヒトニ ヘントコタヱル。ワシドモ ハツトヲアル、シタ
ガアテ ワシドモノ ハツトヲ、アノヒトワ シヌコトガ キヤマル、アノヒトワ ヂシンヲ ゴクラクノ ムスコニシタユヱ。ピナトス
コノコトバヲ キクキクトキニ、マタヲドロク。フタヽビ ヤシキガタイ ハヰテ、ヱズヱヽクニユフタ。ヲマヱワ ドコカラ、タヾシヱズヽク
ヘントコタヱヌ。ピナトスヒトニユウタ。ヲマヱワ ワシニイワヌ、ワシガヲマヱヲ ハリツケニセル ヰセイガアル、ヲマヱヲイルス
ヰセイガアル、ヲマヱワ シヒテヲルカ。ヱズヽク ヘントコタヱル、ヰヱカラ クダサレナンダナラバ、ヲマヱワ ワシノホドニワ
ヰセイワナイ。ソレユヱワシヲ ヲマヱニ ワタスヒト、ツミガヲホイヨリアル。ソレカラ ピナトス ヱズヽクヲ イルシタヰ。タヾシ
ユダイニンゲン ヨバアテユフタ。ヲマヱワ ヒトヲ イルスナラバ、テンカサマノ トモダチデワナヰ。ミナニン ヂシンヲ トノサ
マニセル、テンカサマニ ソムク。ピナトス コノコトバヲ キイテ、ヱズヽクヲ ソトヱツレテヰヽテ、ヘブライコトバガバタ、シキ
ガワラ ナヲツケラレタノ トコロヱ、キヨクロクヱ コシカケル。ソノアヰダ ムツドキ、ゴセクノ シタゴシテヱヒ、ピナトスユダ
イニンゲンニユウ、ヲマヱタチノ トノサマミヨ。アノヒトタチ シヨビイテヰケヨ、シヨビイテヰケヨ、ハリツケニ シヨトヨバル、
ピナトス アノヒトタチニユウタ、ワシガ ヲマヱタチノ トノサマヲ ハリツケニセルカ。クゲノカシラノヒト〴〵 ヘントコタヱル、ホカノ
テカサマ、ワシドモ トノサマデワナヰ。ソノトキニ アノヒトワ ヱズヽクヲ アノヒト〴〵ニ ハリツケニ サセニワタス、アノヒトタチ
ヱズヽクヲツカマヱテ ツレテヰク。ヱズヽクニハリツケノ キエオカツカシテ、ヘブライ コトバナ ゴルゴタ シヤリコヲベノトヲツケラ
レタ トコロヱヰヽタ。アノヒト〴〵 ヒトヲ ビエツノフタリノニントモニ リヨワキヱシテ、ヱズヽクヲ ナカニシテ ハリツケニサセ
ル。ピナトスガケヲカイテ、ハリツケノキノ ウヱイ ウチツケル。ソコニカイテアル、ヱズヽク ナサレスノニン、ユダヰニンゲンノ
トノサマ。コノガク ヘブラノ ヘレイノ ロヲマノ ヂデカヰテアル。ヱズヽクヲ ハリツケニ サラレタトコロ ジヨカヱチカヰ、
タント ユダイニンゲン コノガクヲヨム。ユダイニンゲンノ カシラヒト〴〵 ピナトスニユフタ アノヒトワ ユダイニンゲンノ トノ
サマカクナ、タヾシ アノヒトワユウタ、ワシラニユダイニンノトノサマ。ピナトス ヘントコタヱル、ワシガ カヰタコト、ワシガ
カヰタ。サムライタチ ヱズヽクヲ ハリツケニ サシテカラ、キリモノヲ トヲテ ヨヲツニ ワケテミナヲノ〳〵 サムライ
シトツヽ、ウワギトモニ、タヾシ コノウワギヱリカラ アマタノ ヌヰメワナヰヨヲニ ヲータ。アノヒトタチ ヰヒヤウ、ヤブ
ルナ、クシヲヒケヨ、ダレガ モトメルカ。カヨホニ キヨモンホンノユウコトバ マコトニナリ。アノヒトタチ ワシノキリモノヲワケテ、
カワギユヱ クジヲヒク。サムライタチ コノコトツクル。ヒトノハヽト クロパノ ニヨボ マリヤ ヒトノヲバ、マガダラ ムラノ
□【横棒が多い「ヲ」】ゴノヲナワマリヤトモニ ヱズヽクノ ハリツケノキノ チカイトコロニ タアテヲル。ヱズヽク ハヽヲ カワヰカルデシヲトモニ キワ
ニ タアテヲルノヲミテ、ハヽニユウタ。カカサマ コノアナタノ ムスコヲミヨ。ソレカラ デシニユウ。コノヲマヱノ ハヽヲミヨ。
アノトキヨリ コノデシ ヲナゴヲ ヤシキヱ アヅカル。ソノヽチ ヱズヽク ミナコトゴトク スンダコトヲ シイテヲル、キヨモ
シノホン マコトニナアタ。アノヒトワ クチガカワクトユフ。ツボヱ スヲヰーパイ ヰレテ ソコニスヱアル、アノヒトタチ ムシノ
スヤヲ モヲテ、スノナカヱ ツウコンデ、タケノクダヱツメテクチヱ スワセル。ヱズヽク スヲノンデカラ。スンダトユフタ、カシ
ラヲ ウツブク、タマシンワ ヌケテヾル。コノゴゼクノ マツリノヒモンピニ シタゴシラヱ。ソレユヱ ユダイニン コノアイダニ
シガイ ハリツケノキニアルノヲ ヰラヌトユフ、ピナトスニ ムコヅネヲヲル シガイヲシタヱ ヲロスト ネガウ。ソノトキ
サムライタチキテ サアキニ ヱズヽクトモニ ハリツケラレル ホカノトガニンノ ムコズネヲル。ヱズヽクノ トコロヱイータトキニ、
ヒトノシンダモノヲミテ、ムコヲヅネワ ヲラヌ。タヾシ ヒトリノサムライ ヤリヲモヲテ、ヨコハラヲ ツキヤブル。タチマチ
ニチミヅガデル。ミルモノガ コノコトヲ アラワス、ソノアラワスコト マコト、ヒトワホントヲ シヒテヲル、ヲマヱタチゾンジ
ルタメニ。コノコト キヨモンノホン マコトニナリ タメニナアタ、ヒトノホネ ヰチポンヲラヌ。フタヽビ ホカノキヨモン
ノホンニ ユウテアル。アノヒトタチ ツキヤブラレタモノヲ ナガメズ。ソノヽチ ヱズヽクノデシ ユダイニンゲン ヲドロクユヱ
カクヰテヲル、アリマタヱノ ムラノヒト ナワヨゼフ、ピナトスニ ヱズヽクノ シガイヲ シタヱヲロスト ネガウ。ヒトワユフス。ワレ
ユヱヨゼフ ヱズヽクノ シガイヲ シタヱヲロス。ヨルドキニ ヱズヽクノ トコヱキタモノ ナワニクデモス、モツヤク ロクワイニヨ
ヰグスリヲ ヒヤクキン モテキテ。シタガアテ ユダイニン ホヲムル フウゾク、ヱズヽクノ シガイヲモヲテ、ニホイグス
リヲ ヌリツケテ、モメンデツヽム。ハリツクニセルトコロ ハタケヱ チカヨル、ソコニ アタラシイ シンダモノ マダホ
ヲムラヌ ハカ。ユダイニンゲン シタゴシラヱノヒユヱ、ハカヱチカヨル、ソコニヱズヽクノシガイヲイケル〇【。】
ハジマリノ モンピニ マグダラ ムラノヲナゴ マリヤ、アサマダクラヰトキニ、ハカヱツイテキテ、ハカヨリヰシヲ トヲカ
ノヲミタ。シモンペトロスノ ヱズヽクノホカノカワイガル デシノトコヱ ツイテヰヽテ、アノヒトタチニ ユウタ。ニンゲン カシ
ラヒトヲ ハカヨリトヲタ、ヰケタトコロヲ ワシワシラヌ。ソノトキ ペトロス ホカノデシトモニ ソトヱイヽテ、ハカヱツイ
テクル。フタリノニントモニ ニゲル、ホカノデシ ペトロシヨリ ハヨヲニグ【ゲ?】ル、サキニナアテ、ハジマリニ ハカヱ ツイテキタ。
ノゾイテ モメンノ イレテアルノヲミル、タヾシハイラヌ。シモンペトロシニ ツイテキテ、ハカヱヰテ、モメンノヰレ
テアルノヲミル、アタマヲツヽム モメン ホカノモメントモニ イレテワ ナヰ、タヾシ イチタン タヽンデ ベツノトコ
ニ アゲテアル。ソノトキニ ハジマリ ハカヱツイテクル ホカノデシ ハヰテミテ ゾンジル。アノヒトタチ マダキヨモンノ
ホンヲワカラヌ、ヱズヽク シンダモノガ シイカリ イキカヱル。アノヒトタチ フタヽビ ウチヱモドル。マリヤ ハカノソ
トニ ナヰテタアテヲル ナクトキニ、ハカヲノゾイタ、フタリノ アマツカミ ヱズヽクノ シガイヲヰケテアル トコロヲヱ、
ヒトリノニン アタマノキワニ、ヒトリノニン アシノキワニ コシカケルノヲミル。アノヒト〴〵 ヲナゴニユフタ。ゴシンゾ、ヲマヱワ
ナゼナクカ。ヲナゴユフタ、ニンゲン ワシノカシラヒトヲ トヲタ、イケテアルトコロヲ ワシワシラヌ。ユウテカラ アトヲナガ
メテ、ヱズヽクノ タアテヲルノヲミル アノヲナゴ ヱズヽクトワシラヌ。ヱズヽク ヒトニユフタ。ゴシンゾ、ナゼナクカ、ナニヲタヅ
□【ネ?】ルカ。オナゴヲモヲテヲル、アノヒトワ ハタケツクリノヒト、ヒトニユタ。カシラヒト、シガイヲ トヲタナラバ、ワシニヰケ
テアル トコロヲ ヲリ【ソ?】ヱヨ、ワシガ ヒトヲ モヲテユク。ヱズヽク オナゴヲ マリヤトユフテヨバル。ヲナゴ アトヲミヨトユフタ、
ラブニ、コノコトバチガウ シヽヨウ。ヱズヽク ヒトニユフタ。ワシヲヲサヱルナ。ワシワマダ チヽノ トコヱワ ノボラヌ。タヾシ ワシ
ノキヨダイノトコロヱヰヽテ、ハナシヲシヨ。ワシガ ワシノチヽノ、ヲマヱタチノ チヽノ、ワシノゴクラク、ヲマヱタチノ ゴクラクノ
トコロヱノボル。マガダラノ ムラノオナゴ マリヤ、デシドモニ カシラヒトノミタコトヲユワコトヲ ハナシヲシニイヰタ〇【。】
モンピニ、ソノヒノクレドキニ、デシドモ アツマルトコロノ トヱジヨヲヲロス、ユダイニンゲンニ オドロクユヱ、ヱズヽクツヰテキテ、
アノヒトタチノ ナカニタアテユフタ。ヲマヱタチ ナサケヲカケヨ。ユフテカラ、アノヒト〴〵ニ テトヨコハラヲ ミセル、デシドモ
カシラヒトヲ ミテヨロコブ。ヱズヽク アノヒト〴〵ニ フタヽビユフタ。ヲマヱタチ ナサケヲカケヨ、チヽワ ワシヲ ツカイニヤア
タトホリニ、ワシガ ヲマヱタチヲ ツカイニヤル。コノコトユフタトキニ、アノヒト〴〵ヲ フヰテヤアテユウタ。アリガタイカミサマヲ
ウケトレヨ。ヲマヱタチ ツミヲハナストキニ、ソノニンノ ツミワ ハナサレタ。ヲマヱタチツミヲトヾメル、アノヒト〴〵ノ ツミ
ワトドメラレタ。ジユニヽンデシドモノヒトリノヒト トマス フタゴト ナヲツケラレタ、ヱズヽク クルトキニ トモニヲラヌ。ベツ
ノデシドモ ヒトニ ワシドモ カシラヒトヲ ミタトユフタ。アノヒトワユフタ、ワシガテイ クギノアナガアク ミヌナラバ ワシ
ノイビヲクギノアナヱ イレヌナラバ、ワシノテヲ ヨコハラヱ ヰレヌナラバ、ワシガ ゾンジヌ。ヨヲカアトニ、フタヽビデシド
モノナカニ トマスワ トモニヲル、トヱジヨヲ ヲロシタトキニ、ヱズヽク アノヒト〴〵ノナカニタアテ ユフタ。ヲマヱタチナサ
ケヲ カケヨ。ワノトキ トマスニユフタ。ヰビヲイレヨ、ワシノテヲミヨ、ヲマヱノテヲ ヒイパアテ、ヨコハラヱイレヨ ゾンジ
ルナ、タヾシ ゾンジヨ。トマス ヘントコタヱテ ヒトニユフタ。ワシノカシラヒト、ワシノゴクラク。ヱズヽク ヒトニユフタ。トマ
スワシヲ ミタユヱゾンジタ。 ミナニン ミナンダナレドモゾンジル、メデタヰ。ヱズヽク デシドモノマヱニ コノホンニカイテ
ワナイタントベツノ フシギナコトヲツクル。コノコトワ カヰテダイテアル。ヲマヱタチ ヱズヽクワ クレストシ ゴクラクノムスコ
ゾンジルタメニ、ヒトニゾシ【ン?】ジテ、ヒトノナユヱ ヲマヱタチ イノチヲアアル〇【。】
ソノヽチ ヱズヽク フタヽビ デシドモニ テベリヤス、ミヅウミノキワニ ヂシンヲ アラワレル。カヨヲニ アラワレル。シモン
ペトロス フタゴト チヲツケラレタ トマス ガリナヤ カナムラヨリ、ヒトナワ ナタナヱル、セベダイノ ムスコタチ、デシドモノ
ホカノフタリノニン トモニヲル。シモンペトロス ワシガ サカナヲトリニイクト ユウタ。アノヒトタチ ヒトニユフタ。ワシドモ
ヲマヱトモヰク、ソトヱイヽテ、タチマチニ リヨセンニノヲテ、ヒトヲサカナワトラヌ。アサハヤイトキニ ヱズヽクヲカニタアテヲル
タヾシ デシドモ アノヒンワ ヱズヽクヲ シランデヲル。ヱズヽク アノヒト〴〵ニユフタ、コドモ クヒモノアルカ。アノヒトタチ ナイトヘ
ントコタヱル。アノヒトワユフタ。アミヲリヨセンノ ミギリヱ ヲイテトラズ、ヲイテカラ タントサカナガハヰル、アミガ アガラヌ。ヱズヽク
ノ カワイガルデシ ペトロスニユフタ、ソノカシラヒト。シモンペトロシ ハダカハラヲビヲシメテ ウミヱトビコム。コノリヨセンヲカヨリ
ニヒヤクヒロバカリ アラカアテヲル。リヨセンニヲル ホカノデシドモ サカナノ アミヲ ヒキコミニキタ。ヲカヱ アガアテカラ、
スミヲ ヲコヰテ、サカナト モチヲ ナラベテヲルノヲミタ。ヱズヽク アノヒト〴〵ニユウタ。コノトヲタサカナヲモヲテコイ。
シモンペトロシ アゲテカラ、アミヲヲヽキナサカナガ ヒヤクゴジユ サンビキイヽパイヲカヱ ヒキアゲル、タントサカナ
ガアレドモ、アミガヤブレヌ。ヱズヽク タベルニコイトユウタ。デシドモノ ニンワヲラヌ アヰテニナル ヒトニトウヲマ
ヱワ ダレダ、アノヒトタチ ヒトワ カシラヒトヲ シヒテヲル。ヱズヽクキテモチヲモヲテ、アノヒト〴〵ニトラセル、トホリ
ニ サカナ シデカラ ヰキカヱヽタ、ヱズヽクコノサンド デシドモニジシンヲ アラワス。タベテカラ ヱズヽクシモン
ペトロシニ モノヲユフ。ヨナノムスコ シモン、アノヒト〴〵ヨリ、ヲマヱワ ワシヲカワイガルカ、アノヒトワユフタ、ハヰ、カシラ
ヒト ワシガ アナタヲ カバウコト シヒテヲル。ヒトワユフタ、ワシノムクヒヅジノコニ カヰバヲカウ。フタヽビニド ヒトニ
ユフタ。ヨナノムスコシモン、ワシヲカワイガルカ、ヒトワユフタ、ハイ、カシラヒト ワシガ アナタヲ カバウコトヲ シヒテヲル
アノヒトワユウタ、ワシノ ムクヒツジニカヰバヲカウ。アノヒトワ サンドヒトニ ユウタ、ヨナノムスコ シモン ワシヲ
カバウカ。ソレユヱ サンド ワシヲ カワヰガルカトユウユヱ、ペトロスワ カナシガアテユフタ。カシラヒト ミナコト〴〵ク
シヒテヲル、ワシガアナタヲ カバウコト シヒテヲル。ヱズヽク ヒトニユフタ。ワシノ ムクヒツジニ カイバヲカウ。ワシガ
ヲマヱニ ホントマコトヲユウ。ヲマヱノワカイトキニ、ジシンニ ヲビヲサシタ、ドコイデモ ホシカアヨベ。トシヨリトキニ
ヲマヱワテヲダス、ベツノヒトニヲビヲシテモラウ、トコデモ ホシクナイトユフガ、ヲマヱヲ ツレテヰク。ソノコトバユフテ
アラワス、イカヰナ シニヨヲシテモ ゴクラクイ クライヲツケル。ユフテカラ ヱズヽク ヒトニ ワシニツイテコイトユウ。
ペトヱスワ ヱズヽクノ カワイガルデシヲ ウシロヲムイテ ツヰテクルノヲミル。コノデシサキニ メシヲタベルトキニ、
ヱズヽクノ ムナイタヱ モタレテ、ダレガ カシラヒトヲ ツケルカトユフ。ペトロス アノヒトヲミテ、ヱズヽクニユフタ。コノ
ヒトワ ダレカ。ヱズヽク ヒトニユフタ、ワシガ ヒトヲ マダクルトキニ ヲリタイ、ヲマヱワ ナニヲ シニキタ。ヲマヱワ
ワシニツイテコイ。ソレユヱ キヨダイ ゾンジル、コノデシワ シナマヰ。タヾシ ヱズヽク ヒトニ イワナンダ、アノヒトワシナ
マイ。タヾシ ワシガ ヒトヲ マタクルトキニ ヲリタイ、ヲマヱワ ナニヲシニキタトユフ。コノデシ コノコトヲ アラワシテカイタ、
ワシガ ヒトノ アラワシタコト マコトヲシヒテヲル。ヱズヽク タンド【ト?】 ホカノコトヲツクル、ミナイチ〳〵ニ カヽセルナラバ、
ワシガ ヲモヲテヲル、セカイノニンゲン コノカヽレタ ホンルイ カンベンシラス。コノマコトナリ〇【。】
終シマヰ
【文字なし】
【文字なし】
【文字なし】
【文字なし】
【日本語の文字なし】
【アルファベット筆記体の文字あり。】
【文字なし】
【文字なし】
【文字なし】
新嘉坡堅夏書院蔵板
《題:約翰上中下書》
善徳纂
【文字なし】
【裏写りの鏡文字】
約翰上書 ヨハンネスノ タイヰチバンノテガミ
ハジマリニハジマリニヲルコト、ワシドモワシドモキイタ、ヂシンメデ ミテナガメタ、ヂシンノテヾヲサヱルコト、ヰノチノコトバユヱ。ヰノチヲアラ
ワシテ、ワシドモミテ、シルシアラワシテ、ヲマヱタチニ アランカギリヰノノチヲ ツゲル。コノイノチワ テンノヲヤトモニオヽテ、ワシド
モニ アラワレタ。ミタリ キイタマコト、ワシドモ ヲマヱタチニ ハナス、ワシドモ ヲマヱタチトモニ ホヲバイアルタメニ、ワシドモ ホヲ
バイガアル、テンノチヽワト ヒトノムスコ ヱズヽク クレストシトモニ。ワシドモ ヲマヱタチニ コノコトヲカヽセル。ヲマヱタチ ミナコ
ト〴〵ク ヨロコブタメニ。ワシドモキヰタ、タンヂヲ ヲマヱタチニツゲル、テンノツカサヒカリ、ヒトノナカニ クラサワナヰ。ワシドモ
ヒトワトモニ ホヨバイアルトユウ、クラサノナカニ アヨベルナラバ、ワシドモ ウソヲユウ、マコトヲツクラヌ。アノヒトワ ヒカリノナカ
ニヲル トヲリニ、ワシドモ ヒカリノナカニ アヨベル、ワシドモ ホヲバイニヰキヤウ、ヒオノムスコ ヱズヽク クレストシノチ
デ ワシドモノ ルミヲ ミナキヨメル。ワシドモ ツミワナヰトユウナラバ、ワシドモ ヂシンヲダマス、マコトワ ワシドモノ ナカニ
ヲラヌ。ワシドモ ツミヲ アラワセルナラバ、アノヒトワ シヨジキナヨロシイ、ワシドノ ツミヲハナス、ミナワルイコト キヨメル。
タヾシ ワシドモ ツミワナヰトユフ、ヒトヲウリユウ ヒトトユウ、ヒトノコトバ ワシドモノナカニ ヲラヌ〇【。】
ワシノコドモ、ワシガコノコトヲ カヽセル、ヲマヱタチ ツミヲツクルナ。タヾシ ニンワ ツミヲツクルナラバ、ワシドモ ヱズヽク クレスト
シヲ ヨロシイヒト テンノチヽトモニヲル ダラカスヒトアル。アノヒトワ ワシノツミユヱミガハリニタツ。ワシドモ バカリワナヰ、タヾシ
ミナセカイユヱ。ワシドモヒトノ ヲホセツケヲキクナラバ、ワシドモ ヒトヲ シルスト ワカル。ヒトヲ スルスト yユフヒト、ヒトノヲホセツ
ヲキカヌ、ウソユウヒト、ヒトノナカニ マコトワナヰ。タヾシ ヒトノコトバヲキクヒトノナカニテンノツカサノ メグミメチパイニナルカヨヲニ
ワシドモ ヒトノナカニヲルノヲ シヒテヲル。ヒトノナカニ ヲルトユフヒト、アノヒトノ ツクルコト ニセテ キヤマルツクル。
アニキ、ワシガ アタラシヰ ヲホセツケヲ ヲマヱタチニ カヽセヌ。タヾシ ヲマヱタチ ハジマリヨリアータ フルイヲホセ
ツケ、ハジマリヨリ キイタコトバ フルヰヲヽセツケ。ワシガ フタヽビ アタラシイ ヲホセツケ ヲマヱタチニ カヽセル、コノマコト
ヒトノナカニ、ヲマヱタチノナカニ クラサヲ トリヲク、マコトヒカリ ヰマカー【ヽ?】ヤク。ヒカリノナカニ ヲルトユフヒト、タヾシ ヒトノキヤウ
ダイヲ キラウ、マダクラサノ ナカニヲル。ヒトノキヤウダイヲ カワイガルヒト、ヒカリノナカニヲル。コノヒトノナカニ ワルイコトワナ
ヰ。ヒトノキヤウダイヲ キラウヒト、クラサノナカニヲル、クラサノナカニ アヨベル、ドコヱイクヤラシレヌ、ニヨヲテクラサメヲメク
ラニセル。コドモ、ワシカヽセル、ヲマヱタチノ ツミヲ ヒトノナアユヱ ハナサレタ。チヽサマ、ワシヲマヱタチニカヽセル、ヲマヱタチ
ハジマリヨリヲル ヒトヲ シルスタメニ。レキ〳〵、ワシヲマヱタチニ カヽセル、ニヨヲテヲマヱタチ ワルイモノニカアタ。チノミゴ、
ワシガ ヲマヱタチニ カヽセル。ニヨヲテ ヲマヱタチ チヽヲ シルス。チヽサマ、ワシガ ヲマヱタチニ カヽシタ、ニヨテ ヲマヱタチ
ハジマリヨリヲルヒトヲ シルス、レキ〳〵、ワシガ ヲマヱタチニカヽシタ、ニヨヲテ ヲマヱタチ タアシヤニナアタ、テンノツカサノコトバ
ヲマヱタチノ ナカニヲル、ワルイモノニ カアタ。セカイヲセカヰノナカノコト カワイガルナ。セカイヲ カワイガル ヒトノナカニ
テンノチヽノ メグミヲラヌ。セカイノナカノコト ニクヨク、メノヨク、ヰノチノイワイ、テンノチヽノ ナカニヲラヌ、タヾシ セカヰヨリ
クル。セカイワ ヨクトモニ ムセル、タヾシテンノツカサノ コヲサツヲキクヒト、アランカギリヲル。ゴドモヽヰマノチノトキ、シタガアテ
ヲマヱタチ キイタコト、 クレストシノ カタキクル、イマタント クレストシノ カタキタチナアタ、ソレユヱ ワシドモ □□□□【炭塗り】
シヒテヲル。アノヒトタチ ワシドモノニンデワナイ、ワシドモヲノコス。タヾシワ アノヒトビト ワシドモノ ニンナラバ、ワシドモトモニヲ
ル。ニヨヲテ アラワレル、ミナニン ワシドモヨリデワナヰ。ヲマヱタチ アリガタイヒトノ ヌリツケタ コトヲアル、ミナコト〴〵クシ
ヒテヲル。ヲマヱタチ マコトヲシレヌユヱ、ワシガカヽセヌ、タヾシ ヲマヱタチ シヒテヲル、ミナウソユフコト、マコトヨリナイ。ダレガ
ウソユフヒト、ヱズヽクワ クレストシ シラサヌ、コノヒトワ クレストシノ カタキ、テンノチヽヲ テンノムスコヲトモニ シラサヌ。ミナニン
テンノムスコヲ シラサヌ、ヒトワテンノ チヽワナヰ。ヲマヱタチ ハジマリヨリ キイタコトバ、ヲマヱタチノナカニヲレヨ。タヾシ ハジマ
リヨリ キイタコト、ヲマヱタチノナカニヲルナラバ、ヲマヱタチ テンノムスコノナカニ、テンノチヽノナカニヲル。アノヒトワ ヲマヱタチニ
ヤクソクシタコト、アランク【カ?】ギリヰノチ。ワシガ ヲマヱタチニ ダマスヒト〴〵ユヱ コノコトヲカヽシタ。ヲマヱタチ ヒトノ ヌリツケ
タコトヲ ウケトヲタ。ヲマヱタチワ ナカニヲル、ヲマヱタチ シカリワナイ、ニンワ ヲマヱタチニ ヲソヱル。タヾシ ヌリツケタコトユヱ、
ミナコト〴〵ク ヲマヱタチニ ヲソヱル。ソノマコト ウソワナイ、アノヒトワ ヲマヱタチニ ヲリヱテ、カヨヲニ ヒトノナカニヲレヨ。
コドモ、ヰマヒトノナカニヲレヨ、ヒトワ アラワレルトキニ、ワシドモ アイテニナル、アノヒトワ キクニヲルトキニ ハジカヽヌ。ヲマヱ
タチ アノヒトワ ヨロシイモノ シヒテヲル、ミナニン ヨロシイコトヲ シヒテヲル、ヒンヨリ ウマレタコトガ ワカル〇【。】
テンノチヽワ テンノツカサノコドモト ナヲツケタ、タントホドメグミヲ ワシドモニ トラシタノヲミヨ。ソレユヱ セカイノニンゲン ワシドモヲシラ
サヌ、ヒトヲシラサヌタメニ。カワイガラレタ ヒト〴〵 ワシドモヰマ テンノツカサノコドモ、ワシドモ ナルコトヲ、マダアラワレナンダ。タヾシ
ワシドモシヒテヲル、ヒトワアラワレルトキニ、ワシドモヒトニ ニセテナラズ、ヒトノカタチヲミルユヱ。ミナニンヒトニ カヨ
ヲニノゾム ヂシンヲキレイニセル、ウナジコト アノヒトワキレヰニアヽタ。ミナツミヲツクルヒトワルヰ コトヲツクル、ツミワワ
ルイ。ヲマヱタチ シヒテヲル、アノヒトワ アラワシタ、ヒトノナカニツミワナイ。ニヨヲテワシドモノツミヲハナス。ミナニンヒト
ノナカニヲル、ツミワツクラヌ。ミナツミヲツクルニン ヒトヲミナンデ シラサヌ。コドモニンワ ヲマヱタチヲダマスナ、ヨロシイ
ツクルヒト、ヒトノヨロシイコトニニセテ ヨロシイヒト。ツミヲツクルヒトヲニカラクル。ニヨテ ヲニワハジマリヨリ ツミヲツクル。
タヾシテンノツカサノムスコ アラワシタ、ヲニノシゴトヲジヤマス タメニ。ゴクラクカラ ウマレタヒト、ツミヲツクラヌユヱ、ヒトノ
タネワ アノヒトノナカニヲルユヱ、ヒトワツミヲツクレヌ。ニヨテ ゴクラクカラ ウマレタ。テンノツカサノ コドモ、ヲニノコドモ、カヨホニ
アカリニナル。ヨロシイコトツクラヌヒト、キヨダイヲ カワイガラヌヒト、ゴクラクカラデワナヰ。ヲマヱタチ ハジマリヨリ キ
イタヲホセツケワシドモカワイガリヤウ。ワルイモノ カアイン ウナジコトデワナイ、ヒトノヲト〳〵ヲ コロスヒト。ナゼヒトヲ
コロシタカ。ニヨヲテ ヒトノシゴトガワルヰ、タヾシ ヲト〳〵ワ ヨロシヰ。アニキ、フシギカルナ、セカイノ ニンゲン ヲマヱタチヲ
キラウユヱ。ワシドモ キヨヲダイヲ カワイガルユヱ シヒテヲル、ワシドモ シンデカラ イノチヲカヱタ。キヨダイヲ カワ
イガラヌヒト シンデヲル。キヨダイヲ キラウヒト。ヒトヲコロスヒト。ヲマヱタチ シヒテヲル、ミナヒトヲ コロスヒト ヂシン
ノナカニ アランカギリイノチワヲラヌ。カヨヲニ ワシドモ メグミシヒテヲル、アノヒトワ ワシドモノタメニ イノチヲハテル、
ワシドモ キヨダイノ タメニ キヤマツテヰノチヲハテル。セカイノ タカラガアルヒト、キヨダイワ フビンナノヲミテ、ハラ
ノナカニヨクヲ ツクル、ヰカイニテンノツカサノメグミ ヒトノナカニヲルカ。ワシノコドモ クチサキデワカワイガリヤウナ、タヾシ
マコトノシゴトデ カワイガリヤヱヨ。ワシドモ カヨホニ シヒテヲル、ワシドモ マコトノニン、ヒトノマヱニ コヽロシヅカ。ワシドモノ
コヽロウヽタヱル。テンノツカサワシドモノ コヽロヨリタカイ、ミナコト〴〵ク シヒテヲル。カワイガアタヒト〴〵、ワシドモノコヽロ ウヽ
タヱヌナラバ、ワシドモテンノソ【ツ?】カサノマヱニ アイテニナル。ナンデモ ワシドモコウ、ヒトカラウケトル。ヒトノヲホセツケキク、ヒト
ノマヱニ ヨヰコトヲ ツクルユヱ。コノヒトノヲホセツケ、ワシドモヒトノムスコ ヱズヽク クレストシノナヲゾンジテ カワイガリヤウ、
シタガアテ アノヒトワ ワシドモニ ヲホセツケトラシタ。ヒトノヲホセツケキクヒト、ヒトノナカニヲル。アノヒトワ ヒトノナカニヲル、
ワシドモニ カミサマヲ トラシタユヱ、カヨヲニ シヒテヲル、ワシドモ ヒトノナカニヲル〇【。】
カワイガラレタヒト〴〵、ミナカミニゾンジルナ、タヾシカミサマノコヽロミヨ、ゴクラクカラ クルカ。ニヨヲテタントウソユフ
シヽヨウ セカヰヱアヨベル。カヨヲニ ヲマヱタチ テンノツカサノ カミサマ シテヲル、ミナカミ ヱズヽク クレストシ ニンニナア
タシラス、テンノツカサカラクル。ミナカミ ヱズヽク クレストシ ニンニナアタ コトヲシラサヌ、ゴクラクカラコヌ。タヾシ クレスト
シノ カタチ。ヲマヱタチ アノヒト セカイヱコズ ヰマヲルノヲキイタ。コドモ、ヲマヱタチ ゴクラクカラ アノヒト〴〵 カアタ。ニヨテ
ヲマヱタチノ ナカニヲルヒト、セカイニヲルヒトヨリタカヰ。アノヒトタチ セカイカラクル、ソレユヱ セカイノコトヲ モノユフ、セカイ
ノニンゲン アノヒト〴〵ニキク。ワシドモゴクラクカラクル、テンノツカサヲ シルヒト、ワシドモニキク。ゴクラクカラ コヌヒト、ワシドモ
ニキカヌ。カヨヲニ マコトノカミ ダマスカミヨリ クラベテミル。カワヰガラレタヒト〴〵、ワシドモ カワイカリヤヱヨ。メグミ
ゴクラクカラクル、ミナカワイガルニン、ゴクラクカラ ウマレタ、テンノツカサヲシル。テンノツカサヂシン メグミガアル。カワイガラ
ヌヒト テンノツカサヲシラヌ。ゴクラク ヒトリノムスコヲ セカイヱツカヰニヤアタ、ワシドモ ムスコデイキテヲルタメニ。カヨホニゴ
テンノツカサメグミ ワシドモノナカニ アラワレタ。ミグミワカヨヲニ ワシドモテンノツカサヲ カワイガラナンダ、タヾシ ヒトワワシドモ
ヲ カワイガアタ、ワシドモノツミノミガハリニタツタメニ、ヒトノムスコヲ ツカイニヤアタ。カワイガラレタヒト〴〵、テンノツカサワシドモヲ タ
ントホド カワイガル、ワシドモ キヤマル カワイガリヤウ。ニンゲンワテンノツカサヲ マダミナンダ。ワシドモ カワヰガリヤウナラバ、
ゴクラク ワシドモノナカニヲル、ヒトノメグミ ワシドモノナカニ ヰチパイニナル。カヨヲニ ワシドモ シイテヲル、ヒトノナカニヲ
ル、アノヒトワ ワシドモノナカニヲル。ニヨテ アノヒトワ ヒトノカミサマヲ ワシドモニトラシタ。ワシドモミテ シルジアラワレル。
テンノチヽワ ムスコニ セカイヲ スクイヒトニ ツカイニヤアタ。ヱズヽクテンノツカサノムスゴ シラセルヒト、ヒトノナカニテンノツカサ
ヲル、アノヒトワテンノツカサノ ナカニヲル。ワシドモテンノツカサノ メグミ ワシドモノナカニ シヒテゾンシタ、テンノツカサノ メグミワ、
メグミノナカニヲルヒト、テンノツカサノナカニヲル、テンノツカサヒトノ ナカニヲル。カヨヲニ ワシノメグミヰヽパイニナル、ワシドモヰ
マシメルトキニ アイテニナル。ワシドモガ ヒトワトヲリニ コノセカイヱヲル。メグミヲ アルヒト、ヲドロカヌ メグミガヰチパヰヲド
ロイタコトヲ タイテヤル。ヲドロクヒト セ、【この句読点は不要?】イバイセラレル、ヲジルヒトメグミ ヰヽパイワナイ。ワシドモワ ヒトヲ カワイガレヨト、
アノヒトワ マヱニワシドモヲ カワイガアタユヱ。ニンワユウナラバ、テンノツカサヲ カワヰガル、タヾシ キヤウダイヲキラウ、アノヒトワ
ウソユフヒト。ミヱル キヨダヰヲ カワイガラヌヒト、ヰカイニ ミヱヌテンノツカサカワイガレルカ。ワシドモ ヒトノヲホセツケカヨホ
ニアル、テンノツカサヲ カワイガルヒト、キヨダヰヲカワイガルトモニ〇【。】
ミナニン ヱズヽク クレストシワ ゾンジル、ゴクラクカラ ウマレタ。ミナニン ウマス ヒトヲ カワヰガル、ウマレタヒトヲ
トモニ カワイガル。ワシドモテンノツカサヲ カワイガル、ヲホセツケヲキクナラバ。ワシドモ カヨヲニ シヒテヲル、テンノツカサノコドモ
カワイガルトホリニ。ワシドモテンノツカサヲ カワヰガルナラバ、ソノヲホセツケヲキク。ヒトノヲホセツケワ ムツカシキワナイ。ゴク
ラクカラ ウマレタニン、セカイニカツ。ワシドモ ゾンジルトキニ セカヰニカテル。セカイニカツヒト、ヱズヽク テンノツカサノムスコ
ゾンジル。アノヒトワヱズヽク クレストシ ミヅトチヲモヲテクル。ミヅバカリワナヰ。タヾシ ミヅトチヰトモニ、カミサマシル
シアラワレル、コノカミサマワ マコト。チヽワ、カシコヰモノアリガタヰカミサマ サンニン テンニ シルシアラワス。コノサンニンヒト
ツニナル。カミサマ ミヅチヰ ミイツノチニ シルシアラワス、コノサンニン ヒトツニナル。ワシドモニンノ アラワシタコト ウケ
トルナラバ、テンノツカサアラワシタコト タカヰヨリ。コノアラワシタコトテンノツカサヂシンノ ムスコユヱ アラワレル。テンノツカサ
ムスコニ ゾンジルヒト、ヒトノナカニ アラワシタコトアル。テンノツカサニゾンジヌヒト。ウソヲユフヒトニヽセル。ニヨヲテテンノツカサヂシ
ンノムスコユヱ アラワシタコトゾンジヌ。コノアラワシタコトテンノツカサワシドモニ アランカギリヰノチヲトラシタ。コノイノチワヒト
ノムスコノナカニ。ヒトノムスコヲ アルヒトヰノチヲアル、テンノツカサノムスコノ ナイヒト、イノチワナヰ。ワシガヲマヱタチ ゴクラクノ
ムスコノ ナヲゾンジル ヒト〴〵ニ、コノコトヲカヽシタ。ヲマヱシヒテヲル タメニ、アランカギリヰノチガアル。ヲマヱタチテンノツカサノ
ムスコノナヲゾンジルタメニ。カヨヲニ ワシドモ ヒトノキワニアイテニナル、ワシドモ シタガアテ ヒトノコヲサツワ、ナンデモネガウ。
アノヒトワキク。ワシドモ ナンデモネガウコト、アノヒトワ キクコトシヒテヲル。ワシドモ ヒトニネガアタコト ウケトルコト シヒ
テヲル。シナヌ 【空白】、ツミヲツクラヌナラバ、ニンワキヨダヰノツミヲツクルモノヲミテ タノメヨアノヒトワ シナヌ 【空白】ツミ
ヲツクラナンダ、ヒト〴〵ニ イノチヲ トラセル。ワシガキヤマツテシヌ ツミユヱ タノムト ヰヽツケヌ。ミナワルヰコト ツミワ
キヤマツテシヌツミガアル。テンノツカサカラ ウマレタヒト ツミヲ ツクラヌコト、ワシドモシヰテヲル。タヾシ ゴクラクカラウマ
レタヒトジヽンヲ ヨヲシンセル、ワルイモノヒトヲ ヲリヱヌ。ワシドモ ゴクラクカラ クルコトヲ シヒテヲル、セカイワ ドコデモワル
ヰ。ワシドモ シヒテヲル テンノツカサノ ムスコ ワシドモニ リコウナコトヲ クダサレニゴザル、マコトノニンヲ シルタメニ、ワシドモ
マコト ニンノ ナカニヲル。 コノヒトノムスコヱズヽク クレストシ。アノヒトワ マコトニテンノツカサアランカギリヰノチワ。コドコドモ ヨヲジ
ンシヨ、ボサツヲ ヲガムナ。コノコトマコトナリ
終シマヰ
約翰中書
トシヨリヒト タノシム ヱリダサムタゴシンゾウ コドモトモニ、ワシガ マコトニ カワヰガル。タヾシワ ワシバカリワナイ、ミナニ
ンマコトヲ シヒテヲルトホリニ。ヲマヱタチノナカニ マコト ヲルユヱ、アランカギリ トヾマル。テンノチヽ、ヲモイツカサヂシンノムスコ
ヱズヽク クレストシノ カシラヒトノヲンゲヰ、アワレミ、ナサケマコトニ メグミ、ヲマヱタチニ クダサレヨ。ワシガタント ヨロ
コブ、ヲマヱノコドモ マコトヲツクルノヲミル、シタガアテ チヽノヲホセツケヲ ウケトヲタ。イマワシガ ゴシンゾニコウ。カワイ
ガリヤウタメニ、アタラシイ ヲホセツケヲカヽセヌ、タヾシ ハジマリヨリノヲホセツケ。コノメグミワ ワシドモヒトノ ヲホセツケヲ
キク、ヲマヱタチ ハジマリヨリ コノヲホセツケヲ トヲリニキヰテ ソムクナ。タントダマスヒト〴〵 セカイヱハイル、アノヒトタチヱズヽク
クレストシ ニンニナアタノヲ シラサヌ、クレストシノカタキ ダマスヒト。ヨヲジン ワシドモ ツクウタコト ウシナウナ。タヾシ
タント ホヲビキン ウケトル。ミナニン クレストシノ ヲホセツケヲソムクキカヌ。ヒトテンノツカサワナイ、クレストシノ ヲホセツケキクヒト
テンノチヽワ ムスコトモニアル。ニンゲン ヲマヱノトコロヱ クルトキニ、コノヲホセツケ シラsヌヒト、ウチヱ アヅカルナ、シタガアテユフナ。
ヒトニ シタガウヒト、ヒトノシゴトノワルイホヲバイワ。ワシガ ヲマヱニタントコト スミデカミヱ カヽシトヲクナヰ タヾシノゾム、
ヲマヱノ トコロヱキテ、フタリノモノユイヤウ。ニヨテ アマタノコトヲヨロコブ。ヱリダサレタ ヰモヲトノ コドモ ヲマヱニ サタヲセル。
コノマコトニナリ〇【。】
約翰下書
トシヨリヒト タノシミ ワシニカワヰガラレタ マコトニカバウヒト ガヨヲンゲヰアル。カワイガラレタヒト、ワシガタノシム、
ヲマヱワ メデタヰマメナ、ヲマヱノ タマシン マメナトホリニ。キヨヲダヰキテ、マコトニキテアラワス、ヲマヱ ホントヲツクル
トユウ、ワシガタント ヨロコブ。ワシガヂシンノコドモ マコトヲ ツクルノヲキヰテ、タントホド ヨロコビ。カワイガラレタヒト シヨジ
キニ ツクル、キヨダイ タニンニ ヨヰアツカウ。ヨリヤイヤドノマヱニ アノヒトタチ ヲマヱノメグミヲアラワシタ。ヲマヱワ ヨイヨニ
タビヱ、アノヒト〴〵ヲ ヲクウテ、 ヨイシゴトヲツクル。アノヒトタチ ワシノナユヱ ソトヱイヽテ、カラチヰコトヲ ウケトラヌ。アノ
ヒトタチ ワシドモニ マコトニツクル。ソレユヱ カヨヲニヒトヲキヤマルアヅカル。ワシガ ヨリヤイヤドニ カヽシタ。タヾシデーヨトレ
ペスコヲマン ワシドモヲムカヰニ□【ラに濁点?】ヌ。ソレユヱ ワシガ クルトキニ、ヒトノシゴトヲヲボヱテセル、アノヒトワ ワルイコトバデ ワシヲ
シカル。コレヲタラヌ、タヾシ アノヒトワ キヨダイヲ アヅカラヌ、アヅカリタイヒトヲ フセグ、ヨリヤドヨリ ダヰテヤル。カワイガラ
レタヒト、 フルイコト ニセルナ、ヨイコトニセヨ、ゴクラクカラ クルヒト ヨヰコトヲツクル、ゴクラクヲミヌヒト、ワルヰシゴトヲツクル。ミナ
ニン デメツレヨス マコトニアラワス、ワシドモアラワス、ヲマヱタチ ニンノアラワシタコト マコトニシヒテヲル。ワシガ ヲマヱタチニ タント
カヽセルコトアル。タヾシスミデ カミヱ カキトヲワナヰ。ワシガノゾンデ ヲマヱヲ ハヨミル、フタリノモノユヰヤウ。ナサケヲカケヨ、
トモダチ ヲマヱニ サタヲセル。ヲマヱワトモダチニ ヲノ〳〵ナヲツkテ サタヲシヨ〇【。】
終シマヰ
【文字なし】
【文字なし】
【文字なし】
【文字なし】
【文字なし】
【文字なし】
【文字なし】
【文字なし】
【文字なし】
【文字なし】
【背表紙】
ÉVANGILE
ET
ÉPITRES
DE
ST JEAN
EN
JAPONAIS
【ラベル】
JAPONAIS
315
【文字なし】
【文字なし】
【文字なし】
【表紙 整理番号のラベル】
JAPONAIS 4322 2
【右丁 表紙の裏にて文字無し】
【左丁】
さて六ゐのしんは大将のもとへ参りさま〳〵のもて
なしにあひ御返事給てかへり参ることのよし出申
せは人々さゝめきよろこひあへりとかくするほとに
その日もなりぬれは中将殿を大将殿よりしきり
によひたてまつるされともふししつみて出しやり
給はすおもひのあまりににしのたいのいもうとの
女御のかたにおはして申給ひけるやうこれに候人
は九月十七日よりかたらひをきて候いまた夜かれ
し侍つらぬにこよひはしめてわかれなはこのひ
のなしみさこそはおもひ候はんすらんめなにかくる
しく候へき御けんさん候て御物かたり候へさも御
【右丁】
はゝなくさむ心もやはんへらんとのたまへはまこと
にいたはしきことかなとて入参らせ給へはひめ
きみはなみたにかきくれて人に見え参らせ給
ふへきやうもなけれとも中将殿の御ことはをたか
へしとてなく〳〵いらせ給ひぬ中将殿はをくり
いれ参らせてかへらせ給へはたき物しめたる御なを
し【「なほし」とあるところ】きせ参らせけれともたゝめいとへおもむく心ち
してなみたはれやるかたもなしをといをめして
かへらんまてはなくさめ参らせよあか月とくかへる
へししゝうにもいとまこひ御くるまにめしけれは
さつしき【雑色=下男】うしかひすいしん【随身】われも〳〵といろめき
【左丁】
御ともに参られけるはこれやこのゑんまのつかひ
のこつめつもかくやとおもふになみたもせきあへ給
はすなく〳〵なかめ給ふ
あられふりしもさゆる夜におきわかれ【注①】
身にたましゐもなく〳〵そゆく
かやうにうちなかめみちすからなをし【なほし】のそてをそ
しほられけるさるほとに大将のもとへおはしけれ
はさすかに人のめをつけてみるおもひゆくかた
はらいたくおほしてとかくまきらかしてきちや
うまぢかくたち入らせ給へはひめおろしますら
む御らんするに何となくそらたきもの【注②】うちか
【注① 「起別」=共寝した男女が朝別れる】
【注② 来客のときなどに、どこからともなく匂ってくるようにたく香】
【右丁】
おりみなしろかさねの十二ひとへくれないのみえの御
はかま【三枚重ねた袴】からあや【唐綾=中国渡来の綾】の二きぬ【「ふたつぎぬ」=袿(うちき)を二枚重ねたもの】めしてうちそはむ〳〵けしき
何となくあをやきのかせになひけるかことくありて
あてやかなる御けしきなりけれは中将殿おもひ
給ふやうこれもなれ人をみすはたやすくたくひ
はあらしとおほしめしけれともいにしへ人にあ
はすれはかたちふぜいにつけてもけすしさかき
りなし御かいしやくの人御めのとをはしめとし
てはしたものにいたるまてきよけにもてなした
てまつるをみるにつけてもあはれひめきみをか
やうにおもふ事なくいつき【敬って大切にする】かしつかはやとおほ
【左丁】
しめすになみたもれ出てありしかたのみこひ
しかりけるかくて八こゑのとり【鶏のこと】もなきけれはゆふ
さりはまたそ参らんとて出給ひぬいまたあけさ
るに出給へはひめきみも御めのとも心えかたくあさま
しくそおほしめしける御くるまよせけれはいまへ
んしもとくとそいそかれけるさるほとにひめき
みも中将殿やう〳〵いらせ給ひぬとてにしのたい
よりもかへり給ひぬ中将殿はくるまよせておりさ
せ給へは御めのとはしり出いかにや御けしからす
いまた夜もあけさるに御かへりさふらふそと申
けれは中将殿の給ふやうゆうへこれを出しより
【右丁】
心はこなたにのみありてあけよといそくこよひし
もなかゝりつるにとりかなくねをきりにてかへり
つるなりとていつもの御しんしよに入給ひてかたら
ひふし給ふまくらならへしそのあたりたかひのなみ
たはうくはかりにそありけるまたさ大しん殿より
いらせ給へと御つかひありけれは心ならすおきわか
れまいり給ふはゝこぜんすゝりかみをとり給ひいか
にやこうてう【後朝】のをそなはれる【遅なわれる=遅くなる】との給へは中将との心
ならすふてにまかせてかきなかし給ふ
あははやとそゝろにものをおもはせし
むくゐにいまはとはし【問はじ】とそおもふ
【左丁】
とかきてうちおかれけれはめのととりて引むすひ
六ゐのしんにとらせけれは大将のもとへもちて参
る中将殿はやかてわか御かたへかへりふししつみ
給ふさるほとに六ゐのしんは大将殿にてさま〳〵
にもてなされいろ〳〵のひきて物を給はりてかへ
り参り御せじ参せけれは中将殿御手にたに
とり給はすはゝ御せん御らんしけれはふてのあと
もなへてならす【並べてならず=普通ではない】
とはしともいふことのははことはりや
夜ふかにかへるこゝろならひに
さて中将殿はあくるまておきもあかり給はすふ
【右丁】
ししつみておはしけるにまた御つかひしきり
なりけれはちからおよはすおきわかれて御なを
し【「なほし」とあるところ】たてまつるくるまよせまてしゝうおといをめし
てやかてかへるへしかへらんまて二人なから御そは
にそいなくさめ参らせにいかにおやのおほせらるゝ
とも三夜まてはゆくへしその後はかなふまし
なを〳〵とかくおほせられはいかなるふかきやまに
こもりさまかへしゆつけはするともさら〳〵ゆく
ことあるましこよひあすの夜はかりは心なかく
まつへしとおほせられてなく〳〵
御くるまにのりて出給ふ
【左丁 絵画 文字無し】
【右丁】
みちすからつく〳〵おほしめしけるあはれこの人
とくしてゆくこちとおもはゝいかにうれしかり
なんあはれひめきみをこの人とおもはゝおもふ事
あらしかゝるうき世にかく物おもふ事のかなしさ
よとおほしめす心のうちそあはれなるさる【「か」に見える】ほとに
かの所へおはしけれはひめきみおほせらるゝやう夜
をこめ御かへりありてまたふくるまてにいらせ給はぬ
も御ことはりなり御さとにおもひ人のましますと
はこそのかくれさふらはすといつしかねたみ給へは
それにつけても心つきなさ【気に入らないこと】かきりなしたゝわか
御かたのみこひしくてつゝむなみたもれいつるを
【左丁】
さらぬやうにもてなしわれにはとかもさふらは
ぬものをにくませ給へは身のほとこそおもひしら
れて御はつかしく候へとてちかつき給ふこともなし
つちによりふし給ひてこまやかなることもなくゆ
めもむすはてとりのねをそまたせ給ひける八こゑ
のとり【鶏のこと】もつらけれはにくませ給ふともゆふさり【夕方】
はとく参らむとおほせられていそき出させ給
へはひめきみゆふへよりふし給へる御すかたのいま
たねなをり【寝直り】給はてなきふし給へるをみ給ひて
いとゝ【いとど=ますます】かなしくそおほしけるにとかくかたらひ
ふしてなくよりほかの事そなき中将殿のたまひ
【右丁】
けるはゆふさりゆきてかへりなはおやのおほせらる
るともゆくましきなりゆふさりはかりおもひねん
してまち給へきひしくちゝのおほせられはやまの
おくにもとちこもりいほりむすびてうき世の中
はすこすともその御かたをははるるまししゝうを
といもゆふさりはかりそあすよりはへちの事あ
るまし心やすくおもひ給へとそおほせられけ
りさるほとにちゝはゝの給ふやう中将のありさ
まをみるにゆふさりよりほかはよもゆかしなか
〳〵かよひそめすはよかりなん大将のためもは
ちかましく侍つるへしいさやだしぬき大将のか
【左丁】
たにおかんとおほせありてともの人にもの給ふ
やう中将をはおくりつけてこしくるまとものも
のともはみなかへれこのふみうちへ参らせよとてい
たされたりそのふみにはけふよりして中将をは
それに御とゝめ候てとしをもそなたにてこさせ
られ候へとそかゝれたる中将それをはゆめにもし
らすおはしけり大将のもとにはきたのかたひめ
きみめのとよりあひておほせありけるは中将殿
のありさまをみるにこよひよりほかよもおはせし
はちかましくおほしけれはいかゝせんとありし
かは御めのと申けるはむかしもある事なれはこ
【右丁】
そまつりことゝゆふ事をはしさふらへあはれまつ
りて見候はやと申けれはきたの御かたにきやう
にはからへとそおほせありけるその時やかて物しり
をめしておもふ事ともしつかにかたりきかせけれは
物しりやすき御事なりとてまつり事をそした
りけるさるほとにとりもなきけれは中将殿ゆふ
さりはとく参らんとて大ゆか【広廂】に出て人やあるく
るまよせよとの給へは六ゐのしん参りて申やう
これに御とゝまり候て御としをもこし給へと
の仰にて候ほとにこしくるまざうしきみなかへり
候てたれも候はすと申せは中将殿なみたをは
【左丁】
ら〳〵となかし給ひたしぬかれぬとおもへはむね
のうちくるしく心うくてよのあくるまて大ゆかに
たちあかし給へりさるほとに物しりにまつられて
心ほれ〳〵として身にたましひもそはぬやうに
なり給ふさてもさとのかたこひしくてさすかに
なきつくしおはしけるふみをかゝんとしたまふ
にも何となきとのみかゝれてひきやふりすてな
むとしてふみたにもやり給はすもう〳〵【濛々=ぼんやりとしているさま】として
心わひしく人の物いふもみゝにも入すなかめ
うちにてありけるかひめきみたにもちかつき給へは
身もかゝるすゝしくいさむ心そし給ひけるさるほ
【右丁】
とに御さとにはその夜もすきぬまたけふもおと
つれもなくておもひなくさむかたもなしいまた
をさなきおといか人にもひめきみを見たてまつ
りあはれたのみなき中将の心かなといふもはつか
しくしゝうかおもはん所も心うしつゆしもとも
きえうせたくは侍れとも心にまかせぬうき世
のならひならひなれはさらぬやうにもてなしみやつか
ひけりまたひめきみしゝうおといかみる時はおも
はぬやうにたはふれかれかみぬ時はふしまろひ【身を投げ出してあちこちにころぶ】
もたへこかれかなしみていかなる人なれはいつはり
のみちきりおき給ひけんいかなるわれなれはへた
【左丁】
つる心なるらんとにかくに【あれこれさまざまに】おもひつゝけてもつき
せぬものはなみたなりかなしみのあまりにおもひ
つゝけ給ふ
いつはりをきみかちきりしことの葉に
かゝるなみたのつゆそかなしき
とうちなかめけふもむなしくくれぬれともな
くさむかたもなくまくらもとこもさひしくて
きぬひきかつきうちふし給ひてかくなむ
いさゝかもたちはなれしとちきりしに
いくよになりぬそてのかたしき
かやうにうちなかめちからおよはぬ事なれは思ひ
【右丁】
しのひてすこし給ひぬさ大しんときたの御かた
仰らるゝやう中将かこれにをきたる物はみめよく
心はへもなへてならす【普通ではない】とき〳〵にゆきかたもなく
してあはれこの人をすかしてわかひめきみの女御
まうての時はわかき女はうたちのあまた入にと
の給へはきたのかたそのきしかるへし【立派だ】さらはおとい
をつかひにたつへしとておといをめしよせて申
侍はこれへはきたるましきものなり御つれ〳〵に
おはしまさは中将かめのとのかすかゞもとへわた
らせ給へと申へきよしを申せはひめきみしさい
あるましきよし御世事し給ふおといかきかぬ
【左丁】
まにしゝうに仰られけるはさても中将殿はさば
かり【それほど】御ちきりな■■【「りか」に見えるが「かり」カ】しにあはれたのみなき人の心
かなふみのひとつも給はらすことつてたにもなし
あまつさへおそく出るとおほしてなさけなく仰
らるゝそはつかしけれいましはらくこれにあら
ははちかましき事も有なんはちをみぬさき
にいつくへもいなんとおもふなりかなしきかなや
ゆきかたもなき身なりとて心のやみにまよふ
かなしさよとてなきむせひ給へはしゝうなみた
にくれて御世事もせさりけりひめきみは思ふ
もくるしわれをくしてとく出よいかなるふち河
【右丁】
のそこのみくつ【水屑】となりなんともたへこかれたまへは
しゝうつく〳〵とおもふにあんし出したる事あり
ちゝかたのおはにたんごのないしとてたいりへ参る
人あり申さはやとてしのひてふみをかきてつか
はすおもはぬほかにさ大しん殿御うちに候か申あ
はせたき事あり参らんとそかゝれたるやかて御
世事ありみ給へはゆふさりしのひやかに御くるま
参らせんとそかゝれたりしゝうひめきみよろこひ
給ひてみすかうしあけてちりはきのこひ【掃きのごひ(掃くき拭ひ)=掃いたり拭いたりする。】御
ふすまをたゝみてさをにかけまくらのひとつになる
さへなけき給ひしにまくらもいまはとりひそ
【左丁】
め【取りまとめて見えないところに隠す】ひとつもなく
中将殿つねにみたまひしさう
しはこ【草子箱】を御らんするに
そのおもかけ
見え
たまはねは
なく〳〵
かくそ
おもひ
つゝけ
給ふ
【右丁 絵画 文字無し】
【左丁】
ますかゝみなれにしかけはしのふとも
またもこのよにいつか見るへき
さてはよりそふまきばしら【真木柱】そむつましきゆか
りをもけふよりほかにいつかみんとおもふこゝろも
きえまとひとりひそめたるとこのこゑにふしま
ろひけふをなこりのなみたなれはたきとも河の
なかれつくしさるほとに中将の手なれ給ひし
ことをおもひ出て御ひは【琵琶】ひきよせあそはし給へは
しゝうもことをかきならしひめきみはえ【「ゑ」とあるところ】をか
き給へはしゝうはほうきやう【方磬】をひめきみにあそ
ひたはふれ給へはきく人身のけよたちておもし
【右丁】
ろく御つれ〳〵さにあそはすよとさらぬよそのた
もとまてもつゆをくはかりにおほしける日もすて
にくれぬれは夜ふけ人しつまりて御むかひのく
るま参りけれはひめきみいまをかきりとおほし
めしおといをめされて仰ありけるはいのちをか
きりにいつまても中将殿入せ給はんほとはこれ
にさふらはんとおもひしにおそくいつるとおほ
すやらん御つかいの有しほとにやかてそのときも
出たく侍りしをさすかにおもひすてかたくてい
まゝては出やらすされともかくて有へきならね
はいとま申ていつくへ侍るへしなこりをしさこ
【左丁】
そなか〳〵ことはにもいひつくしかたけれとて御なみ
たをなかし給ひて御くるまにめしけれはおとい御
たもとにとりつきてこはいかなる御事そや火のなか
みつのそこ野のすへ山のおくまてもはなれ参らせ
ましくしてわたらせ給へこれにのこりても御こひ
しさにいのちもなからふへしともおほえすとな
きかなしみけれはひめきみの給ふやうわれはあし
にまかせて出るほとにゆきかたもおほえすいつく
なりともをちつかん所よりかならすをとつれす
へしと仰られてやかて出給ひけりおといはの
こりてにはにふしまろひなきかなしみけれとも
【右丁】
御くるまはとをさかるさるほとにないしかもとへ御く
るまよせてまつしゝうはおりてうちへ入ないしに
むかひて申やう三てうとののひめきみのこれへ
わたらせ給ひて候かしのはんと仰らるゝはいかゝせん
と申けれはそのときないしはしり出くるまよ
せにさしよりみちのほとの御心くるしさよはやいら
せ給へとてくるまのうちより御手をとり入参らせ
いそきにしのたいをしつらひおきたてまつるよるも
ひるもはなれす卅日はかりそいたてまつりてなく
さめ参らせけりひめきみうれしくおほしめし
けるさてそのゝちないしたいりへ参りけれはみか
【左丁】
と御らんしてなとや此ほと見えぬそいかなる人に
にいまくら【新枕=男女が初めていっしょに寝ること】し侍るそわか〳〵しくそおほゆれとた
はふれさせ給へはないしうちゑみ見めよき人に
そひてはなれかたくさふらひてこのほとはまいり
ゑすと申けれはたれそやみめよき人とはとは
せ給へはとかく申まきらはして人しれぬまに申
やう三でうのきんざねのちうなこんのひめきみ御わ
すれ候やらん七の御としみめうつくしく候とて女御
のせんしかうふらせ給ひておはせしか十のとし
ふたりのおやたかいてのちめのとのはこくみ【はごくみ=育み】にて三
条にすませ給ひ候つるかあまりの御つれ〳〵さに
【右丁】
このほと卅日あまりわらはかかたにおき参らせて
此ほと【この期間】は参りさふらはすと申せはそのとき我
にみせぬほとならはこれへないしはかなふましと
仰けれはいかゝして何のつゐてをもつてかみせ
申へきはしちか【端近…上品でないこと】のわさにはかなふましとそ申け
るそのときみかとしはらく御しあん有てさらは
しはすのぶつみやう【仏名】のちやうもん【聴聞】すらめよと仰られ
けれはないしさとにかへりしゝうにかくとかたれ
はしゝう申やういかなる女御きさきもわかひめ君
にはいかてかまし給ふへしみかと御らんしたらん
にめてさせ給はさるへきいかゝはしてたいりへす
【左丁】
すめ参らせんとしたくしけるしゝうひめきみの御
まへに参りて申けるはふつみやうの御ちやうもん
に参らせ給へかしちやうもんしつれははゝにあふ
と申とゆゝしけに申けれはひめきみはいと心
なくてのちやうもんはなか〳〵つみのふかきなる
われは参らすともしゝうは参れかしとの給へは
しゝう申けるはふつみやうと申は三世のしよふつの
三しやうおうこをまつり給へは一とちやうもんし
つれはらいせにてはかならすおやにあふと申きみ
も御ちやうもん候はゝ二しんにあひ参らせ給ふへ
しわらはも御とも申さはともにふつたうをも
【右丁】
なさんとこそおもひ候へまつ御心え候へかしこんし
やうにもこしやうにもおやにあふ事はすくれた
るくとくにて候にいかなれはわらはかいきなかる
はゝにわかれて御身にそひ参らせてたちまち
にこんしやうのやみにまよひ候そかしふつみやう
を御ちやうもん候はゝきみもちゝはゝにあひ参ら
せ給ふへしわらはもこしやうのおやにそはんこと
ねかはしく候へはこそ申せ御心かたくわたらせ給ふ
物かなと申けれはひめきみ心のうちにおほすやう
けにことはりかなしにたるおやにもあはゝやとね
かふにいきたるおやにわかれてわれにそふほと
【左丁】
の心さしいかてかしらさらんことはりをしらぬ物をは
ちくしやうとこそいふなれしゝうか心さしをはいかて
かたかふへきさらはちやうもんも人ため【ひとだめ(人為)=他人の利益】ならすわれ
も参らんとそ仰られけるそのときおりをへてた
んごのないし申やうしゝうとわらはとたちかへし【折り返し】
参らせてわらはかつほねへ入参らせ御ちやうもんの
後はやかて御くるまにめし御かへりあらんにさら
にくるしかるまし御参り候はゝめてたかるへしと
てしゝうもないしもよろこひけりその日にもなり
けれはたいりへ参り給ひぬ御くるまよせてしゝ
うないしあひそいてつほねへ入参らせけるさてな
【右丁】
いしせいりやうてん【清涼殿】へ参り御かとへかくと申あくれ
はいつくにそととはせ給へはわらはかつほねに
わたらせ給ふと申けれはみかとうちゑませ給ひて
こよい【「ひ」とあるところ】ゆきてみんとそおほせありけるないし申
けるはとうざいもわきまへさせ給はぬをいかゝこ
よひはいとお【「ほ」とあるところ】しやと申せは
みかとけにもと
おほしめして
その夜は
いらせ給は
さりけり
【左丁 絵画 文字無し】
【右丁】
さてもふつみやうはしつまりけれは大しん【大臣】くきや
う【公卿】てん上人【殿上人】参りあひ給ひけり中にも中将との
はとうにてわたらせ給へはことおこなひをそせら
れけるくきやうかんたちめ【上達部】ことわさにつきてま
はりけれはひめきみこれをみ給ひておもひいて
たるけしきもなくほこりたはふれ給へはうらめし
さかきりなしいとゝつゝましくてしのひのなみ
たせきあへすわするゝ事はなけれともかくまの
あたりにきえ入心ちそし給ひけるさてふつみや
うはてぬれはくきやうてん上人をそゑふしと
てつほね〳〵のはんにとまらせ給ふとうの中将は
【左丁】
おりふしないしかつほねのはんにてそのつほねにと
まり給ふしゝうひめきみすをへたてまくらを
あはせにね給ふありあけの月かけ山のはにかた
ふくを夜もすからふるしらゆきふけゆくまゝに
さへまさり心すみておもしろけれは中将こしよ
りやうてう【注①】ぬきだしはんしき【注②】にねとり【注③】らうゑ【「え」とあるところ】
い【注④】をそせられけるあか月りやうわう【注⑤】のその【苑】に入
はゆき【雪】くんさん【群山】にみつ【滿】よるゆふこうかろう【意味不明】にのほ
れは月せんりにあきらかなりと三へんはかり
ふき給ひてやさしくうらみこゑなるせう【笙か】を所
〳〵あそはされけるくものうへまてすみのほり
【注① ようじょう…横笛のこと。字音の「おうてき」が「王敵」に通じるのを忌んで読みかえたものという。】
【注② 盤渉…雅楽の十二律の一つ。】
【注③ 音取り…雅楽で試みに楽器を奏じて音程を決める】
【注④ 朗詠す】
【注⑤ 陵王…舞楽曲の名】
【右丁】
おもしろくそおほしけるみかと夜もすからきこし
めされてことにふれおりにしたかへはおもしろく
おほしめされて夜もほの〳〵の時せいりやうてん【清涼殿】
のくみれ【注①】のこひさし【注②】のもとにみかとたゝせ給ひて
さねあきらとめさるれはみすのきはをおきわ
かれてせいりやうてんに参るひめきみの心のうち
のかなしさたとへんかたそなかりけるさらぬたに
ふゆの夜のあけほのゝそらはわりなき【どうにもならない】に夜も
すからゆきふりつみてみなしろたへにみゆるに
とうの中将ねあかみ給へるかほはせもみちのよ
そほひうつくしうしろくきよけなるはたへのゆき
【左丁】
にまかへて【見間違えて】うつくしく見えけれはみかと御らんし
ておほすやういかにないしかつほねの人うつくしく
ともさねあきらかにほひほとはよもあらしそれ
につけてもせう殿のひめきみゆかしさよとおほえ
てきこゑ【「え」とあるところ】し事はいつやらんととはせ給へは中将
そてかきあはせてあさて【あさって】廿七日に参るとこそう
け給はり候へと申されけれはおさなきくらん
と【蔵人】めしよせてゆき山つかせ【築かせ】よとそ仰けるくらん
と十四五人めしよせてゆき山つき【築く】侍へりさて
そのゝち御けん【剣】めしよせてさねあきらにもたせ
てないしかつほねへ入給ひひゆふ【意味不明】のうへより御
【注① 「くみいれ(組入)」の約。細かい格子に組んで作った天井】
【注② 「こびさし」=小さい庇】
【右丁】
らんしけれはこうばいのにほひ七にくれないの
はかまめしなからよりふし給へり中将殿とみす
をへたてゝまくらあはせにね給ひたりけれはみ
すのうちに人ありとしられしとよもすからつ
つみ給ひてしのひのなみたにまくらはいつみ
となきぬれて中将殿たちのき給はる夜の中
にくるまにのりてかへらんとこそないしかちぎり
しにはやよのあけゝるとしゝうとくときたまふ
ところに御いのひやうふにそよとさはりたりけれ
は夜のあけぬるはいかにないしかとおほせられ
けれはみかとうちゑませ給ひてないし参ると
【左丁】
て御そはへより給ふ
みすの
うちより
そとの
大ゆかには
とうの
中将
御けん
もちて
ゐ給へり
【右丁 絵画 文字無し】
【左丁】
ひめきみ心うくおほしめしてひきかつきてなく
よりほかの事はなしみかとよりそはせ給ひて
なにをなけき給ふそもゝしき【枕詞から転じて「内裏、宮中」のこと】のうちへ入ぬる人
をはさうなくいたす事はなしいまはこれに
わたらせ給ふへき人そとやう〳〵になくさめ
給へともひとことはのせしもし給はすたゝなく
よりほかの事そなしひるほとまてやう〳〵に
したひ給へともとかくの世事もし給はすひるの
かれいの時にもなりぬれはせいりやうてんへいら
せ給ひてないしをめしてわか身まてもよにい
とをしないしをめされてよく〳〵いたはり参
【右丁】
らせて御物参らせよと心ぐるしくおほゆれゆ
たけのかせにしなはぬふせいしてまつにしたかは
せ給ひぬうたてさ【嘆かわしいこと】よいつとなくむつけ【不満に思う】させ給ふい
たはしさよかくのみや有へきとて御なみたくみ
給へはないし見参らせてかたしけなくそおほゆる
みかとはせいりやうてんへいらせ給ひてこのひめき
みをあすしよきやうてんへわたし参らせんとおもふ
に御身まちかき女はうはなきかめしてたてまつ
れとおほせあれはないしかへりてしゝうにかくと
かたれはしゝうよろこひてたいりへ参りたるくるま
のたより【ついで】にのりて三てう殿へそゆきける
さてみか
【左丁】
とさいしやうをめして仰せられけるはまる【男子の自称。ここでは帝のこと】がはから
ひとしてあすのほとに女御をしよきやうてん【しょうきょうでん(承香殿)…女御などが居住】へわ
たしたてまつらんによき女はう廿人御しやうそく
したて参らせよとおほせくたされけるさてしゝう
はまたよをこめてあかつき三てう殿へくるまやり
入けれは三条殿にひめきみしゝうはうしなひぬ
あさゆふなきふして有けるかあか月めをさまし
てゆめ物かたりをしけるににはかにくさふかき
所へくるまくおほゆれとうの中将のいもうとのいか
にうつくしくきこゆるとも此人にはまさらしと
おほつかなくそおほゆるとおほせられけるさてな
【右丁】
いしつほねに参りて申やう此卅よ日参り候はね
はあたりてしゝやうともとりあてられていとなみ
たひまなさにいまゝておそく参りて候たゝいまは
日のうちにいかゞし侍らんゆふさり夜に入てこ
そ御くるまもよせ候はめそも〳〵たれか申てこれ
へうちの御入候やらんあさまし【嘆かわしい】の人のくちのさがな
さ【意地悪さ】よと申せはひめきみけにもふしきの事かなた
れ申てかわれ参らせつらんかくむつからむには中
將にきかれなんいかゝせんかくはしちか【はしぢか(端近)…おくゆかしくないこと】の有さまさ
きの世にいかなるつみをつくりてかゝる身になるや
らんとせきもやらすなき給ふさてみかとはかれ
【左丁】
い【嘉例】の事もすきぬれはやかていらせ給ひて御そ【おんぞ=お召物】ひき
きてなれかほ【なれがお=馴れた様子】にれいのちからつよの【力強の】ひめきみとち
からくらへせんとてすをきにたき給へはこはなに
事そやおもはぬほかの事なれはいなせ【不承知と承知】のいらへ【返答】も
し給はすたゝうちくれなき給へはみかと御そは
へひき参らせて何とてさえたてまつるみかとれい
けいてん【麗景殿…皇后、中宮、女御などが居住】へ御入あつて女御の御そはによりふして
つく〳〵と御まほり【守】ありて三人のきさき四人の女
御たちは御まさりなりけれこれこそ一にて御わ
たりある人けれともないしかつほねの人を御らん
しこれも御心つきにあらさりけれはこまやかな
【右丁】
る御事もなくしてまたやかてないしかつほねへ御
入ありこれもやかてしよき【「さ」に見えるが「き」であるところ】やうでん【承香殿】へいれ参らせん
とておの〳〵ひしめきあへりさるほとにやう〳〵
にないしかつほねのひめきみの女御まうての事を
そおほせつけられけるれいけいてん【麗景殿】におはしま
しけれともいつしかなひ【「い」とあるところ】しかつほねのこひしくて
いまこれにとゝまらすともなかきちきりこそめて
たけれとてついたゝせ【しっかりと立たせ】給ひてさねあきらを御と
もにないしかつほねへいらせ給ふひめきみれいのなく
よりほかのことそなきこよひはこれにとゝまらせ給
ひてなくさめちかつかせ給ふあま【海士】のたくも【藻】ゆふけ
【左丁】
ふり【夕煙り=夕方食事の支度などで立ちのぼる煙】にうらかぜのなひかぬふせいにておはしませ
はみかとよに心くるしくそおほしけるやう〳〵と
なくさめ参らせておはしませともたゝなくより
ほかの事そましなをものみむつかるそいま〳〵
しく候とて御い【御衣】のそてにてひたひのかみのたえま
よりなみたのつゆのこほれるをおしのこはせ【押し拭は(わ)せ】給
へはしゝうないしあらかたしけなの御事やとそお
もひけるみかとやう〳〵になくさめかねてあな心
くるしやさのみなむつかりそかし八のはかまのつい
てにきんさねもわれにゑさせんとちきりしか
おやたかひしたれはいまゝてちゝし侍へりちき
【右丁】
きりはくちせぬ事なれはめくりあひぬるうれ
しさよ何しにかくはむつかるそ有ましきこと
のやうにとさま〳〵になくさめ給ひてせいりやう
てんへ御かへりありてないしをめして此人よく〳〵
なくさめ参らせよとよに【本当に】心くるしけにおほせく
たされけりさるほとに廿七日にもなり侍るけふは
女御まうてとてさゝめきてくきやうてん上人まい
りつとい給ひけり此女御きこゆるひしんにてま
しませはしよきやうてんにすませ奉るへきに
ておはしませともないしかつほねの人おはするほ
とにてん【殿】もちかけれはこれをしよきやうてんに
【左丁】
のほせたてまつるへきにさたまりぬ中将のいもう
とをはれいけいてんへそすをやり入けれはいかに
たれ人そとおもふにしゝうくるまより出申やう
ひめきみこそおもはぬほかのたよりにて女御に
参らせ給へ
みかとより
御めのとゝ
おほせ候
いさらせ給へと
申けれは
【右丁 絵画 文字無し】
【左丁】
はゝはうれしきか中にもおつるなみたをおし
とゝめてひめきみこそ御心つよくわたらせ給ふ共
それにはなといましておとつれし給はぬそお
やのおもふほとなかりけりとてなきけれはしゝう
申やうなに事もみなかゝるめてたき御事とも
にならせ給ふはしめにて候にうちおかせ給へとて
さま〳〵のしやうそくともとりいたしてはゝせ
うなこんにもうちきせしたしき人々めしあつめ
て女はう十よ人ひきくし【引き具し】大り【内裏】へそ参りける御
めのとひめきみの御まへに参りけれはめつらし
くそおほしけりきよみつのことそなきさるほとに
【右丁】
やかてその日しよきやうてんへわたし参らする
くきやうてん上人こゝかしこにたゝすみていかな
る人のひめきみときゝ給ふととうの中将もろと
もにさゝやきあひけれともしりたる人もなしさ
てみかと御としこすよはおやのおもふ所あり
とてれいけいてんへ入せ給ひけれともしよきやう
てんにて御とのこもり【殿籠り…寝る意の尊敬語】有けるさてあか月せいりや
うてんへいらせ給ふとてないしをめしてあまり
に此ひめきみのむつけさせ給ひてしほりもあへ
給はす人のためにあらす申なくさめま参らせて
けふあすはかりなく事を申なため参らせよと
【左丁】
おほせかうふりしゝうにかくと申せはしゝうも
せうなこんもないしにけうくん【教訓】せられていかに
かくいま〳〵しくむつからせ給ひさふらふそによう
はうの身には女御きさきのくわほう【果報】こそねかふ
事にて候へおやのたちそいてもてなしかしつ
きたてまつる女御きさきもみかといらせ給はねは
さひしくてのみおはします御身はみなしこに
てわたらせ給へともかくかたしけなくおほしいら
せ給ひ侍るなり御身ひとりのめてたき御事に
ならせ給ふのみならすかすにもあらぬわれ〳〵
まてももゝしきのうちにあをかれてかたをなら
【右丁】
ふる人もなしきみも天しのきみとならせ給ひ
てはんみん【万民】のまつりことをきはめさせ給ひ何事に
つけてもとほしき事もわたらせ給はぬに何
の御ふそくありてかむつからせ給ふそと申けれは
ひめきみなくをよきことゝはおもはねともなに
とやらんむねのうちかくるしくてつゝむにたえ
ぬなみたのおそふるそてにあまるをいかゝせんと
そおほせられけるしゝうまた申やう御心のうち
もみなしり参らせてさふらふ中将殿の御ことも
さのみおほしめすへからすなに事もせんせ【前世】の
御ちきりなりきよみつにてとかふの御事さふ
【左丁】
らひしにもかゝるめてたき御さいはいになら
せ給ふへき御事そかしわれおもふ人をこそおほ
しめすへけれいかにもきみの御こゝろにたかひ参
らせ給はん御ことはおそれある御事にてこそ候
へとかきくとき申けれはそのときひめきみさら
はいまはなかでこそあらめとおほせけれはいよ
〳〵よろこひあへりさて御けしやうはなやかに
めされはれやかにそおはしけるとうの中将は
こうはいのよほひ十二に大もんのさしぬきに御な
を【「ほ」とあるところ】しきら〳〵しくぜんくう【前駆】のさふらひみずい
じん【御随身】さつしき【雑色】うしかひ【牛飼い】に
いたるまてきら〳〵しく
【右丁】
そおほえ侍る大しんにひとり子さ大しやうにはは
なむこれいけいてんには世のきこゑにもかたを
ならふる人そなきわか身となれはことおこ
なひもきら〳〵しく【容姿が整って美しい】さか〳〵しく【いかにもしっかりしている】おはすれは
みな人なを【「ほ」とあるところ】しのそてをかきあはせおそれぬ人
そなかりけるしよきやうてんのみすのまへをとを
り給へはしゝうさすかにゆかしくてたきもの【練香(ねりこう)】かき
くんし【薫じ】て中将のとをりたまふたひことにけふたき
ほとに何をきかせられけるちうしやうのかく
とはしらすしてときの女御
女はうたち
【左丁 文字無し】
【裏表紙 文字無し】
《題:四十二國人物圖説 全》
肆 拾 貳 國
《割書:崎港西川先生著》
人 物 圖 説
【書入れ】Vente Emile Javal. 9■ November 1933
154.Divers. Shiju Nikoku Jimbutsu Jisetsu. Images des personnages de
quarante-deux nations.
Préface signée :Riusenso et datée année du cheval de Shotoku(1714).
Auteur:Nishigawa à Nagasaki. La post-face dit que I' ouvrage a été fait
d'aprés les dessins des peintres de Nagasaki. Fin datée 5 de Kyoho
(1720). Editeur Embaiten à Yédo.
I vol. contenant 54 pages de gravures en noir.
【見返し】
題四十二国人物図之首
凡 ̄ソ聞_二 ̄ク殊-国之名_一 ̄ヲ者 ̄ハ必 ̄ス当_三【「当」の左に「シ」】 ̄ニ詳 ̄ニ問_二 ̄フ其_俗之所_レ ̄ロ好 ̄ム如何_一 ̄ントイフヲ【本文訓点「ント云フヲ」】苟 ̄モ
其_善 ̄ナルヤ耶記_レ ̄シテ之 ̄ヲ以 ̄テ為(ス)_二吾身之法_一 ̄ト苟 ̄モ其不-善 ̄ナルヤ邪亦記_レ ̄シテ之 ̄ヲ
以為_二 ̄リ吾身之戒_一 ̄ト豈宣_下【「宣」の左に「ンヤ」】 ̄ク漫 ̄リニ問_二 ̄テ其国 ̄ノ人-物 ̄ハ如_何 ̄ン土産品
類 ̄ハ如_何 ̄ン地 ̄ノ之方-位寒暖広狭大小 ̄ハ如_何_一 ̄ント而 ̄シテ止_上 ̄ム邪此 ̄ノ
図 ̄ハ原出_二於紅-毛-蛮 ̄ノ所_一レ ̄ニ伝 ̄ル蓋其/躬(ミ)自 ̄ラ交-易 ̄シ或 ̄ハ被_二 ̄ン風 ̄ニ飄-
至_一 ̄セ或 ̄ハ耳 ̄ニ所_二 ̄ノ確-聞_一 ̄スル者 ̄ナリ也起_二 ̄テ震旦_一 ̄ヨリ迄_二 ̄マテ長人_一 ̄ニ計 ̄ルニ四十一国 ̄ナリ
矣而 ̄ルニ今 ̄マ謂_二 ̄ル之 ̄ヲ四十二国 ̄ノ図_一 ̄ト者 ̄ハ何 ̄ソヤ也吾-邦 ̄ノ之人後 ̄ニ於_二 ̄テ
震-旦 ̄ノ一国_一 ̄ニ並_二 ̄ヒ_出 ̄ス大-明大-清両-朝 ̄ノ人-物_一 ̄ヲ故 ̄ニ更 ̄メテ以_二 ̄テ四十
二国_一 ̄ヲ名_レ ̄クル之 ̄ニ耳(ノミ)大清 ̄ノ得_二 ̄ルコト天下_一 ̄ヲ未_レ ̄タ及_二百年_一 ̄ニ吾国 ̄ノ耆-老猶 ̄ヲ
穫_レ覩_二 ̄ルコト故-明 ̄ノ之人-物_一 ̄ヲ昔大-明 ̄ノ之於_二 ̄ル震旦_一 ̄ニ其在_二 ̄テ祖宗_一 ̄ニ夙
興 ̄キ夜 ̄ニ寝 ̄テ兢-兢業-業 ̄トシテ君臣相_勉 ̄ム此 ̄レ一-時 ̄ノ之所_レ ̄ナリ好 ̄ム也逮_二 ̄テ
其子孫_一 ̄ニ所_レ好相_反 ̄シ燕-晏偷-惰上-下廃_レ ̄シ業 ̄ヲ変起_レ ̄テ不_レ ̄ルヨリ図 ̄ヲ
社-稷失_レ ̄ヒ守 ̄リヲ遂 ̄ニ致_二 ̄シテ大清_一 ̄ヲ不_レ労_二 ̄セ兵-力_一 ̄ヲ坐 ̄カラ有_二 ̄ツ四百 ̄ノ江山_一 ̄ヲ方 ̄ニ
今朝-政若_何 ̄ンソヤ直言無_レ ̄ク隠 ̄スコト如_二 ̄キ張-鵬-翮_一 ̄カ者寵-遇益〻隆 ̄ニ廉-
吏孤-立 ̄スル如_二 ̄キ施-歪_一 ̄カ者官-階愈〻_貴 ̄シ戦-功卓-絶 ̄タル如_二 ̄ク藍-理_一 ̄カ積 ̄テ
有 ̄ヰハ虐_レ ̄スルノ民 ̄ヲ事_一則/褫(ウバフ)_レ ̄テ職(─) ̄ヲ為(ス)_二庶人_一 ̄ト屢〻巡_二-狩 ̄シ於江南_一 ̄ニ亦避_二 ̄ク
暑 ̄ヲ於関外_一 ̄ニ其取-捨好-悪 ̄ノ状出_二 ̄ル於賈-客之談_一 ̄ニ者 ̄ハ大-
略類_レ ̄ス此 ̄ニ夫 ̄レ所謂学-問 ̄ハ非_下 ̄ス独 ̄り目 ̄ニ観_二 ̄ルコトヲ経伝子史_一 ̄ヲ為_レ ̄ル然 ̄ト
而 ̄ノミ已_上 ̄ニ其所_二見-聞_一 ̄スル苟 ̄クモ有_レ益_二於吾身_一 ̄ニ者 ̄ハ皆可_三 ̄シ以 ̄テ為_二 ̄シツ学問_一 ̄ト
也是_以 ̄テ禹 ̄ハ拝_二 ̄シ昌言_一 ̄ヲ大舜 ̄ハ好 ̄テ察 ̄ス邇-言_一 ̄ヲ孔子 ̄ノ曰 ̄ク三人行 ̄トキハ【本文訓点「寸ハ」】
必 ̄ス有_二 ̄リ吾師_一焉展_二-巻 ̄シテ此図_一 ̄ヲ閲_二 ̄シ其人物_一 ̄ヲ読_二 ̄モ其図説_一 ̄ヲ由_二 ̄テ図-
説_一 ̄ニ而 ̄シテ考_二 ̄ヘ其風俗_一 ̄ヲ由 ̄テ風俗_一 ̄ニ而論_二 ̄スルトキハ其所_一レ ̄ヲ好 ̄ム則四十二図
善-悪邪-正無_レ ̄シ不_二 ̄トイフコト【本文訓点「ト云コト」】歴歴 ̄トシテ可_一レ ̄ラ見善 ̄ナル者 ̄ハ記_レ ̄シテ之 ̄ヲ以/為(シ)_二吾身之
法_一 ̄ト悪 ̄ナル者 ̄ハ記_レ ̄シテ之以/為(ス)_二吾身 ̄ノ之戒_一 ̄ト孰 ̄カ非_二 ̄ンヤ吾師_一 ̄ニ哉或 ̄ノ曰 ̄ク子 ̄カ
討_二-論 ̄スル諸国_一 ̄ヲ理固 ̄ニ然 ̄リ矣若_二 ̄キハ所_謂善 ̄キ者 ̄ハ記_レ ̄シテ之 ̄ヲ為_レ法 ̄ト不_レ ̄ル善
者 ̄ハ記_レ ̄シテ之 ̄ヲ為_一レ ̄カ戒 ̄ト是 ̄ノ_言 ̄トヤ也未_レ ̄タ【「未」の左に訓点「ス」】能_レ ̄ハ無_レ ̄キコト疑 ̄ヒ夫 ̄レ善 ̄ノ之足_二 ̄リ以 ̄テ可_一レ ̄キニ法 ̄トス
悪 ̄ノ之足_二 ̄レル以 ̄テ可_一レ ̄ニ戒 ̄メトス者 ̄ハ其孰 ̄カ明_二 ̄ナランヤ於典籍_一 ̄ヨリ乎哉今 ̄マ子不_レ ̄シテ考_二 ̄ヘ
之 ̄ヲ典-籍_一 ̄ニ而惟 ̄タ図 ̄ノミ是 ̄レ考 ̄ルハ豈図 ̄ノ之所_レ ̄ロハ載 ̄ル勝_二 ̄ランヤ於典籍_一 ̄ニ邪予 ̄カ
曰 ̄ク非_二 ̄ス是 ̄レ之 ̄ノ謂_一 ̄ニ也唐虞三代之時既 ̄ニ有_二 ̄テ典籍_一行_レ ̄ルヽコト世 ̄ニ尚 ̄シ
矣然 ̄トモ当時 ̄ノ聖猶 ̄ヲ謂 ̄ラク牖(─)戸(─)座(─)席(─)几(─)杖(─)盤(─)孟(─)皆可_三 ̄シト以 ̄テ
為_二 ̄シツ警戒_一 ̄ト勒_レ ̄シテ銘 ̄ヲ而備_レ ̄フ観 ̄ニ焉是 ̄ノ図 ̄ノ所_レ ̄ロ載 ̄ル殊-国 ̄ノ風-俗其為_二 ̄ル
警戒_一 ̄ト者 ̄ノ顧 ̄フニ不_レ ̄ン逮_二 ̄ハ於/牖(─)戸(─)座(─)席(─)_一 ̄ニ邪(ヤ)
正徳甲午秋八月 劉善聰聡書
総目録
大明 大清 韃靼
朝鮮 兀良哈 琉球
東京 答加沙谷 呂宋
刺答蘭 呱哇 蘇門答刺
暹羅 羅烏 莫臥爾
百児斉亞 亞爾黙尼亞 亞媽港
度爾格 馬加撒爾 槃朶
亞費利加 加拂里 為匿亞
比里太尼亞 莫斯哥米亞 工答里亞
太泥亞 翁加里亞 波羅尼亞
意太里亞 齋爾瑪尼亞 拂郎察
阿蘭陀 諳厄利亞 撒兒木
阿勒戀 加拿林 亞瓦的革
伯刺西爾 小人 長人
総計四十二国
四十二国人物図説
崎陽 西川淵梅軒求林志
渾地五大洲
亞細亞(ヤスイヤ)洲 唐土天竺韃靼等属_二 ̄ス大洲_一 ̄ニ
利未亞(リミヤ)洲 自_二天竺 ̄ノ西方_一至_二 ̄ル南方之界_一 ̄ニ
歐羅巴(ヱフロツパ)洲 在_二 ̄ルノ於天竺 ̄ノ之西北_一 ̄ニ一界
亞墨利加(ヤメリキヤ)《割書:南洲|北洲》 在_二 ̄ルノ於日本 ̄ノ東南_一 ̄ニ之大-界《割書:或分_二南北_一 ̄ヲ|而為_二 ̄ス両洲_一 ̄ト》
墨瓦臘尼加(メガラニキヤ) 自_二赤道_一至_二 ̄ルノ南極下_一 ̄ニ之一大界
已上
大明
【挿絵】
【挿絵】
大明は唐土なり世々国号を改る故に定りたる
号なし国人(くにたみ)みつから称(しやう)して中華(ちうくは)といふ十五/省(せい)を
定めて二/京(けい)十三道を立るは大明の太祖帝なり
日本より唐土と号する事は大唐の世日本に親(しん)
睦(ぼく)繁かりし故なり又/伽羅(から)と号するは古(いにしへ)日本へ
異国より来れる始は三/韓(かん)の内/大伽羅国(おほからこく)の人
なりし故に異国を指て伽羅(から)と号す此故に
漢唐韓(かんたうかん)の字皆伽羅と訓す又/支那(ちいな)といふは
天竺方より称せし名にて梵語なりとそ震旦も
支那の転音(てんをん)なりといへり故に紅毛等の外国
も唐土をもつて智以那(ちいな)と号せり即(すなはち)支那(ちいな)【左ルビ「しな」】也
北極地を出る事四十二度より十九度に至て
南北相/距(こゆ)る事二十三度なり
大清
【挿絵】
【挿絵】
大清は即(すなはち)今の唐土の号なり天子の本国/韃靼(たつたん)なる故に
大明の世の風俗を改む此故に二国の図を分て古
今の風俗をしらしむ二京十三道文字/経史(けいし)学法
前代に随て変改(へんかい)せす
韃靼(タツタン)
【挿絵】
【挿絵】
韃靼(たつたん)は本名/韃而靼(だつじたん)といふ今は而(じ)の字を略す其国
東西黒白の二種有て属類(ぞくるい)甚多く国界四十八道
に相分れて大国也古の胡国(ここく)といひ或は蒙古(もうこ)と云
も皆此国の別号なり南界(なんかい)は唐土に交接(かうせつ)【左ルビ「まじはり」】し北方は
氷海(ひようかい)に近く大寒地にて四季/昼夜(ちうや)の長短(ちやうたん)大に他方と
同しからさるの所々多し最(もつとも)富饒(ふねう)の国也といふ国/人(たみ)弓
馬を好み勇強の風俗なり 北極地を出る事四十三
度より六十四度に至て南北に短く東西に長し
朝鮮(チヤウセン)
【挿絵】
【挿絵】
【挿絵】
朝鮮(ちやうせん)は古の三/韓(かん)にて馬(ば)韓/辰(しん)韓/弁(べん)韓の地也中古
新羅(しんら)百済(はくさい)高麗(かうらい)と分ち末代合て朝鮮と号す国
八道あり寒国なり京畿道(けいきだう)は北極地を出る事三十
八度/釜山浦(ふさんほ)は三十六度なり
兀良哈(ヲランカイ)
【挿絵】
兀良哈(をらんかい)は朝鮮の北東にある寒国也良の字を艮と
するは誤(あやまり)り此国/甚(はなはた)朝鮮に近しといへり或曰/女直国(ぢよちよくこく)
の属(ぞく)也と 北極地を出る事/凡(およそ)四十二度
琉球(リウキウ)
【挿絵】
【挿絵】
琉球(りうきう)は南海中の島国なり古は竜宮(りうきう)といふ中古流
求といひ末代に琉球とす煖地(だんち)なり 北極地を出る
事二十五六度
東京(トンキン)
【挿絵】
【挿絵】
東京(とんきん)は古より唐土に属する国にて中華の文字を
用ゆ詞(ことは)は尤別なり古唐土より交趾(かうち)といひしは此国
なり末代に至て両国にわかれ東辺を東京(とんきん)といひ
南辺を廣南(たいなん)といへり今は廣南のみを交趾と号す
風俗相同しき故に別に交趾を図せすいつれも
煖国也 北極地を出る事凡十五六度
答加沙谷(タカサゴ)
【挿絵】
答加沙谷(たかさご)は唐土東南海中の島国也むかし阿蘭陀(おらんた)
人住居せし時/臺灣(たいわん)と号し国姓爺(こくせんや)居住已後/東寧(とうねい)と
改む煖国なり地民の風俗は甚賎く常に麋鹿(びろく)を
猟(れふ)するを産業(さんげふ)とす農民は甘蔗(かんしや)【左ルビ「さたうきび」】西瓜(すいくは)を種る事を
産とす米麦一歳に二たひ収む 北極地を出る
事二十二三度
呂宋(ロソン)【「宋」の左ルビ「スン」】
【挿絵】
呂宋(ろそん)は臺灣より南方海中にある島国也熱国にて
湿毒深(しつどくふか)き地也といふ末代/邪法(じやはう)の属類(ぞくるい)と成てかの
国の者多く住す地民は風俗はなはた賎と也
刺答蘭(ラタラン)
【挿絵】
刺答蘭(らたらん)は日本の東南大海の中にある島国にて
熱国也昔/蛮船(ばんせん)諸国往来の節船を寄(よせ)て見たり
といふ末代紅毛/等(ら)到る事ありや詳(つまびらか)ならす
呱哇(ジヤワ)
【挿絵】
呱哇(じやわ)は唐土西南方に当て遠き国なり大熱国
にて四時寒暑の次序(しじよ)唐土日本/等(とう)の国と相/反(はん)し
て甚別なり今日本に来る阿蘭陀人居住の咬(か)【「咬」の左ルビ「じや」】
𠺕(ら)巴(ばあ)【「𠺕巴」の左ルビ「がたら」】も此国の北端(ほくたん)【「端」の左ルビ「はし」】なり故に別に人物を図せず
北極は見えす南極地を出る事六度或は七度
蘇門答刺(スマンダラ)【「蘇門」の左ルビ「ソモン」】
蘇門答刺(すまんだら)【「蘇門」の左ルビ「そもん」】は或(あるひ)はさまだらともいふ呱哇国(しやわこく)の北にある
島国也是も大熱国にて人物風俗賎く国主なく面々
に地を領(りやう)して争(あらそ)はず此国金銀を産(さん)すといへとも民
多く取ことをせす偶(たま〳〵)金塊(きんくわい)を得(う)ることあれは旅人に
交易(かうゑき)すといふ 南北の両極星を見る又此国の東に
浡泥国(ぶるねるこく)あり人物風俗相同く常熱の国也故に別に
載(の)せす呱哇蘇門答刺浡泥等は墨瓦臘泥加(めがらにか)に近し
暹羅(シヤムラウ)
【挿絵】
【挿絵】
【挿絵】
暹羅(しやむらう)は南天竺(なんてんぢく)摩羯陀国(まかだこく)の内也唐土より西南に
当れる熱国にて東埔寨(かぼうちや)【「東埔寨」の左ルビ「とんぼちや」】も同類の国也/最(もつとも)仏法を尊(そん)
敬(きやう)す東埔寨は暹羅より暑熱強く人物甚賎し
北極地を出る事暹羅は十四度東埔寨は十二度
羅烏(ラウ)
【挿絵】
羅烏(らう)は暹羅に近き類国にて摩羯陀(まかた)国の内也/尤(もつとも)熱
国にて人物暹羅に異ある故に別にこれを図す此国
多く斑文竹(はんもんちく)を生す
莫臥爾(モウル)
【挿絵】
【挿絵】
莫臥爾(もうる)は面々(かい〳〵)を以て莫臥爾(もうる)とするは誤なり是も
南天竺の内にて第一の大国也十四道有て宝貨富(ほうくはぶ)
饒(ねう)の国也といへり暖(だん)国なれとも気候(きかう)はおよそ唐土の
廣東(かんとう)に等(ひと)しと也 北極地を出る事二十二度
百兒齊亞(ハルシヤ)
【挿絵】
百兒齊亞(はるしや)は亞細亞(やすいや)の内天竺の西辺なる大国なり
獣類(じうるい)土産(とさん)多く四季有て豊(ゆたか)なる国也といふ百兒(はる)の字
又は百爾(はる)とす
亞爾黙尼亞
【挿絵】
亞爾黙尼亞(あるめにや)は西天竺の西に在て四季ある国なり
但し寒国也凡此辺の国上国多し古は西天竺に
属せりといふ
亞媽港(アマカウ)【「港」の左ルビ「カン」】
【挿絵】
亞媽港(あまかう)【「港」の左ルビ「かん」】臥(ご)亞(あ)【左ルビ:わ】波爾杜瓦爾(ぽるとがる)已上三国は皆邪法国
の属(ぞく)にて人物風俗相同しといへり亞媽港(あまかは)は唐土南
海の中にあり卧亞(ごわ)は天竺の南辺に在て煖国(だんこく)なり
といふ波爾杜瓦爾(ぽるとがる)は遥(はるか)に西方/歐羅巴(ゑふろは)の内にて四
季ある国なりと也
度爾格
【挿絵】
度爾格(とるこ)は天竺より西北にあたれる国にて四季あり人倫(じんりん)
勇強(ゆうきやう)にして武を好(この)める国なり隣国(りんごく)是がために併(あは)
せらるゝ多しといふ
馬加撒爾(マカザル)
【挿絵】
馬加撒爾(まかざる)は呂宋(ろそん)の南にあたる島国にて大熱国人
物/賎(いや)し南北の両極星を見る事/蘇門答刺国(すもんだらこく)に
同し
【挿絵】
槃朶(はんだ)は蘇門答刺に近き島国也熱国にて風俗紅
毛に似て又別也尤勇悍を好むといふ
亞(ア)費□加(カ)
【挿絵】
亞費利加(あびりか)は利未亞(りみや)の内にある大国也四季ありといへ
とも暖国(だんこく)にて一年の間寒気少く米麦/肥饒(ひによう)なる
国なり
可払里(カフリ)
【挿絵】
【挿絵】
可払里(かふり)は利未亞の内にて大熱国の大国也風俗/賎(いやし)く下民(かみん)は面色
甚黒く剛強(かうきやう)にして死(し)を恐(おそ)るゝ事を知す愚直(くちよく)にして他人の奴僕(ぬぼく)【左ルビ「つかはれ」】と成ては
能(よく)主人に忠(ちう)をなせり此故に欧羅巴(ゑふろは)の諸国此国の人を買取て
奴僕とす此国の本国を莫訥木太波亞(ものもたつはあ)といふ
為匿亞(ギネイヤ)
【挿絵】
為匿亞(ぎねいや)利未亞 ̄ノ内大国の熱国也武勇を専とし風俗は賎 海上甚遠き国也
比里太尼亞(ヒリタニヤ)
【挿絵】
比里太尼亞(ひりたにや)は利未亞の内にて欧羅巴よりは南方地中海を隔(へたて)
たる国也/最(もつとも)大国にて四季正しき国なりといふ
莫斯哥米亞(ムスコフビイヤ)
莫斯哥米亞(むすこふびいや)は欧羅巴の内阿蘭陀国の東にあり
大国にて大寒国也/異類(いるい)の獣畜(じうちく)多き水土也 石火矢(いしびや)は
此国を根本とす故に多くこれありといへり 此
辺の諸国総て北極地を出る事五十度或は六十度の間也
工答里亞(ゴンタウリヤ)
工答里亞(ごんたうりや)は莫斯哥米亞(もすこひや)に並たる国にて風俗又別也
尤大国にて寒国也/石火矢(いしびや)は此国と莫斯哥米亞(むすこふびいや)とより
始れりといふ此国の馬は皆/驢駝(ろた)なり
大泥亞(タニア)
大泥亞(たにあ)は欧羅巴(ゑふろは)の内にて波羅尼亞(ほろにや)の東にあり大寒国
なり最(もつとも)大国にて南北に長く南は地中海に近く北は極
辺に近くして夏の節(せつ)夜はなはた短(みしか)く昼はなはた永し
冬の節は夜甚永く昼甚短し海魚多く山林/獣類(じうるい)
諸国にすぐれ五穀/宝貨豊饒(ほうくはぶねう)にして天文/暦象(れきしやう)の測(そく)
器(き)此国を最(さい)一とするよし聞伝ふ
翁加里亞(ヲンカリヤ)
【挿絵】
翁加里亞(おんかりや)はうんかりともいふか此国欧羅巴の内に在て産
物はなはた豊饒(ふねう)にて牛羊(ぎうやう)殊に繁殖(はんしよく)すといふ最(もつとも)寒国なり
波羅尼亞(ボロニア)
波羅尼亞(ぼろにや)は欧羅巴の内にて阿蘭陀国(おらんだこく)の東大寒国
なり此国の人礼義仁和の風俗にて国中/絶(たえ)て盗賊(とうぞく)
なし平生盗賊ある事をしらす国王と大臣と古来
の国法を守て少も変(へん)する事なしといふ又此国の東南
天竺の西の境(さかい)に当て如徳亞(じゆでや)といふ国あり六千年以
前聖人在て国法を立たり其/記録(きろく)今に至て失ふ
事なくして国王大臣其記録を守(まもつ)て国政(こくせい)を執(とつ)て
過(あやまつ)事なしといふ最/此等(これら)の国豊饒の土地なりとそ
意太里亞(イタリヤ)
意太里亞(いたりや) 以西把尼亞(いすぱにや)此二国/欧羅巴(ゑふろパ)の内にて大国也
四季ありといふ意太里亞の都を羅媽(ろうま)といへり一国なり
いつれも邪法国(じやほふこく)也と聞伝ふ
齊爾瑪尼亞(ゼルマニヤ)
【挿絵】
斉爾瑪尼亞(ぜるまにや)【ドイツヵ】は阿蘭陀国(おらんだこく)に並(ならび)たる国にて寒国の大国
なり人物風俗阿蘭陀に相類す
拂郎察(フランス)
【挿絵】
拂郎察(ふらんす)は阿蘭陀国に近し武勇軍法(ぶゆうぐんほう)に長(ちやう)して近国
是に併(あはせ)られ属国(そくこく)となるもの多し欧羅巴に於ての
大国にて富饒(ふねう)の国也/最(もつとも)寒国也 此辺の国北極地
を出る事五十余度
阿蘭陀(ヲランダ)
【挿絵】
【挿絵】
阿蘭陀(おらんだ)は欧羅巴北海の地にあり斉爾瑪尼亞(せるまにや)の西(にし)
隣(となり)拂郎察(ふらんす)の北に相/界(さか)ふ国なり尤寒国にて南北
相/距(こゆ)る事三度の小国なり日本唐土の西北に当て
日本より海上一万二三千里あり 北極地を出る事
五十四五度或五十六度
諳厄利亞(インギリヤ)【左ルビ「ヱンゲレス」】
諳厄利亞(いんぎりや)【左ルビ「ゑんげれす」】【イギリス】は阿蘭陀国の西海中の島国也尤寒国
にて風俗阿蘭陀人に似(に)て其/種(しゆ)又/異(い)あり欧(ゑふ)羅(ろつ)【左ルビ「らつ」】巴(ぱ)に
属(ぞく)す
撒兒木(ザルモ)【ウズベキスタンの古都、サマルカンドヵ】
【挿絵】
撒兒木(ざるも)は略してざもともいふ此国も西天竺の北方に在て
最(もつとも)寒国也国人武勇にして獣類(じうるい)はなはた多き水土なり
阿勒戀(アロレン)
【挿絵】
阿勒戀(あろれん)は南/亞墨利加(あめりか)の内の大国にて其人/武勇(ぶゆう)を
好めり此国に世界(せかい)第一の大河有てひろさ日本の
数(す)十里に相あたるといへり熱国にて日本よりは東南
にあたれり阿(あ)の字を略して勒戀(ろれん)ともいふ
加拿林(カナリン)【カナダヵ】
【挿絵】
加拿林(かなりん)は亞墨利加の内にある大国也四季有といへ共
暖気(だんき)の国にて賎しき風俗なり或は加納連(かなれん)とも書す
亞瓦的革(アガレカ)
【挿絵】
亞瓦的革(あがれか)馬瓦的革(まがれか)ともいふ南亞墨利加の内にあり四季在て
暖国なり人物勇/強(きやう)なりといへり淡婆姑草(たばこさう)、此国より始といへり
伯刺西爾(ハラジイル)【ブラジル】
伯刺西爾(はらじいる)は南亞墨利加の東辺に在て熱国なり
人倫(ぢんりん)の作法にあらす奸(かん)勇にして人を殺(ころ)し炙(あぶ)り食(くら)ふと
いふ今代は諸国の人往来し交易(かうゑき)する事多き故に
少く人倫の作法を知り人を食する事なしといへり
小人(セウジン)
【挿絵】
小人(せうじん)は波智亞(ぼちや)といふ国也欧羅巴東北の隅辺(ぐうへん)北の方/冰海(ひようかい)に至
れる地也大寒国にて半年/昼(ひる)のみ続(つゞ)き半年は夜のみ続くと云
人の長(たけ)一尺二三寸と云伝ふ然れ共/実(じつ)は二尺有余也といへり唐土に短人(たんじん)《割書:と云|是也》
長人(チヤウジン)
【挿絵】
【挿絵】
長人(ちやうじん)は智加(ちいか)といふ国也南/亞墨利加(あめりか)の内にあり此国に相/並(なら)
ひて巴太温(はだうん)といふ国も人間長大なりといふ凡其/長(たけ)此方の一丈
二尺といへりいつれも日本の巽(たつみ)の方にあたれり四季あり風俗尤
勇強(ゆうきやう)にして弓矢を好むといへり其矢長さ六七尺といふ
右四十二国人物画図ハ当時(ソノカミ)蛮人紅毛等交易往来ノ
諸国人物ヲ以テ彼国ノ画工ノ図セシヲ写シテ長崎画師ノ
図-画セシヨリ世ニ弘マル事ト成ヌ此人物ノ外猶又奇異
ノ国多シト云トモ蛮人紅毛ノ往来無 ̄フ シテ未タ其伝不_二 ̄ル分明_一
者 ̄ハ素 ̄リ除_レ ̄ク之其始四十国トス後人増加ヱテ四十二トス故 ̄ニ以_二 四十
二_一 ̄ヲ名_レ之者也図考ハ長崎古老ノ談説ヲ以テ撰述 ̄ス焉
享保五年庚子孟春穀旦
東武江都
渕梅軒蔵板
【裏表紙】
【背】
【天或は地】
【小口】
【天或は地】
【表紙 題箋】
三十六人歌仙 jap 110
【資料整理ラベル】
SMITH-LESOUEF
JAP
110
【見返し 文字無し】
【3コマ~75コマまですべて文字の記載無き画集にて翻刻不可。】
【表紙】
【題字】きふね 下
【管理タグ】
JAPONAIS
5331
2
さてちゝ大わうの御まへゝ心ほそくも参り給ふ
心のうのをしはかられていたはしや大わう仰
けるはこのほとはこんつはいつくへおはしけるそ此
ほとはくらまへまいり候てけかう【環向】申也との給へは大
わうきこしめしてさてはせうしこそかヘらん御
しゆまいらせよと有けれは七八人のらんはとも
御しゆとり出したりその御さかなに人をいき
なからまないたのうへにおきてそまいりたる中
しやうみやのそてのうちより御らんすれは中
将はゝかたのいとこ二てう【でう=条】のはなみの少将とて
はる
は花のもとにて日をくらしあきは月のまへにて
夜をあかしよにきこえしいろこのみけいのふなら
ひなき人なり御とし丗五にそならせ給ふちゝはゝに
もひとり子也まないたのうへにて声をあけてそ
なき給ふやうわれ〳〵むなしくなるつゆのいのち
はおしからすちゝはゝおさあひものなけかん事の
かなしさよとてこゑをおしますさけひたまへは
【右丁】
中将は心もうせはてゝわれもこれにありと
いはんとおほしめしけれともみやのまもりのなか
なれはこらへ給ふこのはなみの少将はかすかへまいり
給ふかのおにのけんそくともうつくしき女はうに
へんして有けるにうと〳〵とつきてくらまの
おくそうしやうかたにほうてうかあなへひき入られ
ていまのいのちはうしなひ給ふさて中しやう殿
大わうを御らんするにゐたけ【居丈=座っている時の身の高さ】は十七ちやうはかり八
はうにおもてありつるきをならへたるに事なら
すその身のあかさそめすましたるくれなゐの
ことし一めみては一ときへんしも有へきともおほ
【左丁】
えす大わうの給ふやうはらんはともはや〳〵ほう
てうしてまいらせよと有けれはみやの給ふやう
はおさなかりしときよりほとけをしんしこんと
此身をはなれんとおもひ候へはすきにしかたも
にくしきし給ひしをははゝうへの御心へにてたひ
候はす御とも申給へは大わうきゝ給ひ候て御連はこ
のくにゝもほとけにならんとおもふくせ物いてき
たりとて大きにわらひ給ふよし〳〵くはさらん
物はなくいそきそれ〳〵みな〳〵こなたへまいらせよ
とてとりよせて八のくちにおしいれてくはれ
けりそのゝちみやをまうけてきたるなりまるに
【右丁】
ゑさせよゑしきにせんとの給へはみやかほうち
あかめてゆめ〳〵さる事はなしと申させ給へは
大わう大きにいかり給ひわこせ【我御前=親しい女・子供などをを呼ぶ語】をいままて
そたてをきこれほとのしよまうをきかすはち
をあたへんそなんちかまもりにかけたるおとこは
いかにとてさしおよひみやの御くしをつかみて
ひきよせころさんとし給ふをはゝうへはしり
よりてとりつきてなふいかなるむしけたものに
いたるまてもこをはおもふならひそかしたゝいまの
みやのいのちをはわれにたひ給へとかなしみ給ふ
へはさらはたゝいまのいのちはかりをはたすくるなり
【左丁】
はやくかへりてなんちかをとこをあすのむま【午】の時に
かならすゑにまいらすへしもしおとこをうしなひたら
はわこせをゑにまいるへしそのいはれはこの
くにへはちやうこうかきりあるものならてはきたら
すたすかるにはかはりなくてはかなうましきと仰
けれはみやも中将もきも心もうせはてゝかへり
給ふさて中しやうをとり出しもとのつえにて
さすり給へはもとのことくにはならせ給ふみやなみた
をなかしの給ふやうははしめよりかく有へしとは
申けれともいまはさていかゝし侍るへきちきりも
こよひはかりなりもとのみやこにましまさはかゝる
【右丁】
事はよもあらし月よはなよの御あそひかすを
つくして有へきによしなきわらはにともなひ
てかゝるうきめを御らんする事のかなしけれと
かきくとき給へは中しやうなみたをなかしての
給ふやうわれ〳〵はこれ恋ゆへはかなく成へき
をふつしんの御はからひとしてみやまにともなひ
まいらせていまゝていのちなからへたりみやう日
しなんいのちは露ちりほともおしからすさりなから
おほくの心をつくしつゝいくほとなくしてはなれん
事のかなしさよそれもせんせの事なれはこん
しやうの契りは申にをよはす来世にてはあひ
【左丁】
申さんさたひらかなきあとをよく〳〵とひてたひ
給へかならすひとつはちすのえんとなるへしと
の給へは
【絵後から】
君の御いのちは百廿ねんみつからかいのちは四
万さいなり御身をさきにたて申さはいかに
二世をちきるとも四万さいかそのあひたまつ
事はいかはかりされは御身はたゝもとのみやこへ
御かへり有ておはしませみつから御いのちにかはり
なは二世のちきりもはやかるへし御身をさき
にたてまいらせなはきこくにてはふつほうなけ
れは御とふらひもかなふましみつからはつみもふかき
おにのこにてさふらふなりさこそはつみもふか
かるへしさりなからよくとふらひにたひたまはゝ
やかてむまれもかはるへしはや〳〵中将は都へ
【右丁】
御かへりあれ中将きこしめし仰はさる事にて候
へとも御身にはなれまいらせて都へかへりたり
ともさたひらかいのちあらはこそそのうへ御身の
いのちは四万さいみつからかいのちはわつかなり思ひ
もよらぬ御事なりたとへ御身にうけたる事
なりともみつからこそはかはり申へき事なれはかなふ
ましおもひもうけし事そかしとさま〳〵にのた
まへはみやきこしめしみつからはくわこにててん
によにて有つるかいんくわをはれかたくして
おにの子とむまるゝなりこむとしやうのかれすし
てはなか〳〵ならくにしつみなんされはひしやもんの
【左丁】
御はからひにて御身にちかつき申事もみつから
うかまんそのためなりあねの十らこせんと申せし
ははらなひこくよりおとこをまうけきたりしを
ちゝ大わうきこしめしおとこをとりてくひ給ふ
十らこれをふかくなけきけれはにくしとてまた
十らをいけゑにとり給ふかやうにことかきさふらへは
御とをうしなひたりとてもみつからいのちかあらは
こそたえわかみをたすくるとおほしめし都へ
かへり給ふへしさま〳〵にあとをとふらひてたひ
給ふへしみつからしやうふつするならは御みもうた
かひよもあらしにんけんのゑひくはたゝふうせん
【右丁】
のちりなれはゆめまほろしのことくなりとさま
〳〵かきくときの給へはちうしやうさらはともかくも
仰にしたかひ候はんとてたかひのそてをしほり
けりさてみやもなく〳〵中しやうをくして【具して】よの
うちにはるかのみちをいそきくらまのおくそう
しやうがたにへそ出させ給ひける中将もなみたに
むせひみちもさたかならすみやもこれをかきり
の事なれはなみたにくれてかへり給ふ
【左丁絵のみ】
【右丁】
中将そてをひかへてなみたのひまよりもはなれ
まいらせてそのゝちはいのちあるへき事もなし
さりなからもし一日もあるならはなにをかたみに
まいらすへきとの給へはこれをかたみに後のよ
まて御らんせよとてはなたのおひをなかより
きりてちう将にたひにけり又みやの給ひける
はけふのむまのときにはかならすにゑにそなはる
へしそのときなかんするこゑ御身のみゝに
きこえへしなをもふしんにましまさはたらいに
水をいれてをきて御覧せよくれなゐと
なるへしそれをしるしにてとふらひたひ給へと
【左丁】
いとゝなみたにむせひ給ふさて中将はなく〳〵日
本へそかへり給ふみやはきこくへかへり給ふ中将は
さて有へきにあらされはなく〳〵二てうの御所へそ
おはしますちゝはゝめのとをはしめとしてさても
よみかへり給ふよとてよろこひ給ふ事はなか〳〵
申すもをろかなり
【右丁絵】
【左丁】
中しやうはたゝなみたとともにうちふしてそおはし
けるさるほとにみやはきこくへかへりはなのことく
にいてたちちゝ大わうの御まへにまいり給ふいま
をかきりの事なれは御心のうちをしはかられて
いたはしさよ大わう御らんしてなんちかおとこを
はかへしたるやなんちちやうかうなりちからなしそれ
〳〵よりてほうてうせよと有しかはいつきかしつ
きしみやの御くしをなさけなくひきつなてをき
けれはみやの給ひけるはいまをかきりの事なれ
ははゝうへをいま一めみまいらせてなにゝもならん
とのたまひけれはらんはとも申やうこのことを
【右丁】
きのふよりはゝうへあまりになけかせ給ふほとに大
わう御はらをたてけさよりはいしのからひつに
いれてをきまいらせしほとに此世にてのたいめん
はゆめ〳〵かなふましと申ほとにはやまないた【まな板】に
あかり給ふなさけなくはうちやう【包丁】して大わうに
まいらせける大わう八ツの口にをし入てあちはひ
ての給ふやうこの十六年かあひたやしなひそた
てしいはれにやたゝの人よりもうまきそとて
ゑみをふくみ給ふはゝこの事をきゝたまのやう
なるひめ君を二人まてうしなひてかくて有ても
なにかはせんとてなきかなしみ給へともかきりなき
【左丁】
いのちなれは心にまかせすたゝなけくはかり也さた
ひらははやくむまのとき【午の時】にも成けれはやくそく
のことくにたらひに水をいれて御らんすれはみつ
はくれなゐのことく也みやのなき給ふ御こゑもたし
かにきこえし中将はきもたましひもうせはて
ててんにあをきちにふし給へともそのかひそな
かりけるやう〳〵心をとりなをしてなみたをな
かしこの程の事ともたゝいまのみやの事とも
を人にかたりたまひていまはたゝ一えにとふら
ひよりほかの事はなし一日きやう二日きやう五ふ
の大しやうきやう【五部の大乗経 注①】せんそうくやう【千僧供養 注②】まて申させ給ひ
【注① 大乗の教法を説いたものとして選ばれた五部の経典。すなわち、華厳経、大集経、大品般若経、法華経、涅槃経の五部】
【注② 千人の僧を招いて法華経などの読誦を乞い、供養を行う法会】
【右丁】
てさま〳〵御とふらひかすをつくし給ふ七日にあた
るとき中将御かとへ申させ給ふやうふしきの事
にてなけくも身にあまりて候へは御いとまを
給り候てしゆつけ【出家】せんとそ申されける御かとこの
よしきこしめし此さたひらをうしなひていか斗【ばかり】
なけきつるにたゝいまかへりまいる事なのめなく
おもひけるにしゆつけせんとのいとまこそ中〳〵
思ひもよらぬ事なるへしとおほせけれは
【左丁 絵画 文字無し】
【右丁】
たとひかみをそらすとも心のしゆつけをたし
なむへし心たにまことのみちにかなひなはかみを
そりてもなにゝかせんとて御ゆるされもなかり
けりちからなくして中将はうちには五かい【五戒】をた
もちつゝほかにはしんきの御たしなみひまなき
とふらひはかりなりさてあくるはるにも成しかは
ちうしやうのおはのおはしけるかたゝならすして
月日たちゆくまてまことにたまをのへたるやう
なるひめきみをそうみ給ふよろこひ給ふ事か
きりなしたゝしよろこひのなかなるなけきあり
かのおさあひ【おさない(幼い)の変化した語】人のひたりのゆひてのうちにつきて
【左丁】
おかしけなりいつくも人のくちなれはかたはなる
子をうみ給ふと申ひろめけれはちかましきと
てちからなく夜に入てれんたい野【蓮台野=墓地・火葬場】にすてさせ給ふ
いつものことくれんたいのにいてゝ御らんすれは
うつくしきおさあひ【幼い】ものすてられてなきゐたり
ちう將御らんしておほしけるやうはわれは五かひを
たもちたりけれはいかゝ此おさあひものをこらう
やかん【虎狼野干】にゑさすへきかとていたきとり御めのと
れんせい【廉正=心が清く正しいこと】の御つほねによく〳〵そたてゝたひ候へ
とて御めのとをつけさま〳〵いつくしく【氣品や威厳のあるうつくしさ】そたてける
ほとに月日かさなりけれはまことに玉をのへ
【右丁】
たることくなりたゝゆひなき事をかなしむはかり也
月日にせき【関】をすゑ【据え】されは【月日の経つのを止めることはできない】ほとなく此おさあひ【幼い】
人はや十三にならせ給ふけいのうなさけ【芸能・情け】ことには
くわんけん【管絃】のみちもくらからすあしたに見えゆふ
へにみはいやまして丗二さう【三十二相=仏がそなえている三十二のすぐれた相好をほめたたえたもの。】はかす【数】ならす四十
二さう【四十二相】をくそく【具足】せりひかる程にそ見え給ふかほとに
いつくしきひめ君のたゝゆひのなき事をのみわひ
あひ給ふ有ときに中将れんせいのつほねをめし
ていつそやあつけしおさあひものはなにとなりたる
そゆひはいかゝとの給ひけれはされはその御事に
て候かのひめきみの御ありさまいかなる人のけ
【左丁】
しんにておはしまし候やらんたゝ人【只人=普通の人】にてはなし
まことにいつくしき事かきりなしされとも
ゆひのなき事はかりかなしく候へと申けれは
【右丁 絵画 文字無し】
【左丁】
中将きこしめしかのおさあひものはさたひらか
ためにはしたしきよしをきくなりあかてはな
れしこんつめのめい日にひろひたりまたこん日
もみやのめい日そかしたゝいまよひいたし給ふへ
し宮の事をかたりつねは御きやうをよみ宮を
とふらひ候へと申へしとの給へはかのひめ君きこし
めし中将とのはいのちのしう【主】にてましませはま
いり候てみまいらせたくは候へとも御はつかしくなん
とゝの給へはつほね申やう中将殿は御したしきと
申そのうへ五かいをたもつ御身なれはなにかはくる
しく候へきとていつくしくいてたゝせまいらせ中
【右丁】
しやうの御まへにそまいり給ふこのひめ君を御
覧してふしきやなあかてはなれしみやにす
こしもたかはぬ事のふしきさよと御らんする
にもまつはら〳〵となき給ふひめきみ中将に
の給ふやうなに事を御わひ候やらんとの給へは
中将ひめきみの御すかたをみまいらせ候にあか
てはなれしみやにすこしもたかはせ給ひ候はす
いまさらおもひいてゝふかくのなみたすゝみいてん
とのたまひけれはそのみやにてやらんとの給へは
中しやうその人は十六われは十七にてはなれし
なりことし十四ねんになり候御身はれんたいのに
【左丁】
すてられしをみつからひろいてつほねにあつけたり
なにしにその人にては候へきやひめ君の給ふやう
御身あまりに〳〵御とふらひのそのゆへにさいほう
しやうふつしたりしをほんてんたいしやく【梵天帝釈 注】一さいの
ほさつあつまりてこのものはしやはにてにせの
ちきりをわたしてののちにはさとりをえへし
との給ひてかくむまるゝなりみつからはかやとるへき
はしなくして御身したしき人のゆかしさにその
はらにやとりたりすてられしはひたりてかたは
しき【かたわである】とての事なり御身にはなれし時にとり
わけしはなた【縹=うすい藍色】のおひ【帯】をもちたり御らんせよとて
【注 大梵天王と帝釈天。ともに仏教の守護神。】
【右丁】
十三ねんまてにきり【握り】たる御てをひらきたまへ
はうたかひなきそのおひなりちう將殿もまほり【守り】
につけてもち給ふあはせて御らんすれはうたかふ
所なしこれはゆめかうつゝともわけかたしうれし
きにもまつさきたつはなみたなりさりなからした
しきなかの事なれはひよくのかたらひ有へきに
あらすとの給へはみかとこのよしきこしめしせん
し【宣旨】ありこれ程にふしきなる事はためしなし
これほとむまれあふたるをしたしきなんとゝあるへ
きかはしめてゆるすそとせんしなれはなのめなら
すによろこひ給ひてふうふと成こそめてたけれ
【左丁 絵画 文字無し】
【右丁】
これよりはしまりてこそしたしき中もふう
ふとなるさてきこくのちゝ大わうこのよしをきゝ
て申やうあらにくやこんつめのみやこそ一とにも
こりすしてまたちうしやうにむまれあひぬる
おゝかましさにくゝいさや日ほんへこへてこんと
は二人ならとりてふくせんとけんそくともに
ふれたりけるこのよしくらまのたもんきこし
めしあらたにしけんありしやうきこくより日
ほんへこえんとていてたつなりこのくにへ一ときそ
めは日ほんへは人たね有へからすまさしきはかせを
もつてふうすへし日本の神ほとけもきゝ給ひて
【左丁】
そのきならは御ふせき有へきよしないたん有
けれはみかとへこのよし申されはみかときこ
しめし御はかせあいしんともに仰られけれは
うらなひ申やうはこのおにともはせつふんの夜
かならす日本へわたりて人をとらんする也と七
人の御はかせに四十九千のいゑのものなにして
もとりあつめてくらまのおくそうしやうかたにほう
てうかくりあなのくちにをしこめてふうしふさ
きて三石三斗のまめをいりておにのめをうつ
とてうつへしおに八十六のまなこをうちつふ
されてかへりかのおにの申にかくはんといふ
【右丁】
ものきたらんするにはしめてうをゝやきてさす
へしそののちこせつく【五節句】をはしめてかのおにともを
五たいをてうふく【調伏】するならはゑこそわたりえまし
きと申けれはとて色〳〵にてうふくし給ひける
こせつくは正月七日にはわかなをつみて三ほう
にたてまつるふしきやおにのまなこいるとて大
まとをいる三月三日のもゝのはなはおにのしゝむら【肉】
のいろをなつけてさけにいれのむへし五月五日の
しやうふはほねすちとてさけにいれてのむなり
ちまきはおにのもととりとてこれをくふなり七
月七日のむきはおにのはらわたとてくうなり
【左丁】
九月九日のきくの花はおにのますけあるひはおに
のかしらのなうとなつけてくう也かやうにいろ〳〵に
なつけてくうなりきこくのらんは【藍婆】ともこれを
きゝて日本のものともはわれを色〳〵てうふくする
なりそのうへ日ほんには神といふこわきくせもの
あり中〳〵行てしせんよりも日本へわたる事
をはとゝまるへしとてけんそく【眷属】ともをとゝめけり
さほとにちうしやうはもとのちきりにもをとらす
ひよくれんり【比翼連理=男女の間のむつまじいことにたとえる】のかたらひあさからす心にかゝる事
なくてそおはしけるゑひくはきわまりなく百廿ねん
のよはひをそたもち行ひける
【右丁 絵画 文字無し】
【左丁】
そのゝちまれ人【客人】のかみとあらはれて一さいしゆ
しやうのねかひをみてたまはんとの御ちかひなり
きふねの御ほんちこれ也返〳〵【かえすがえす】これを御らんせん
人々はかみほとけのうやまひしん〳〵をいたし給ふ
へし有かたかりける御□【印カ】なりあまりに〳〵き
とくふしきの事ともに□【「て」カ】□まゝかきつたへあ
りしなり
【両丁 文字無し】
【文字無し】
【裏表紙 文字無し】
享和三癸亥 末広庵撰
画狂人北斎画
不二見の連 全
享和三癸亥 末広庵撰
画狂人北斎画
【ミセケチ】■句狂歌集 全
春ノ不二
不二見の連 全
元日の見るものにせん富士の山と■【「は」ヵ】
山崎の翁のことは蓬莱に桜を
ゑかくはひのもとの故実にて候
とは猿若かことふきなり富士のしら
雪朝日てとけるとうちうめくは
山川のうす春めきたるうたいもの
になん有ける爰に不尽見のつらこと
しも春の歌つとへて例のすりゑに
ものせんとて風の音に近きさかひと
いへとも浅草なる宅居のあたり麦わら
もて造れる蛇のみちはへひのあひ
知れる友とちかり催しつゝわたし
ぬれは其名鳴沢の鳴とよむ歌人ら
不尽のねの高きしらへ湖の深き心
のある言の葉こゝらおこし給へる
そすしめをとりをするか舞霓裳
羽衣の曲をなし羽衣えたる心ち
せられて嬉しさつゝむ我袖の二
寸にたらぬさえの■として不尽見
の同行先達する事ひとすちに
おんゆるしをたのみあけ奉るになん
さて霞にまかふ桜木にちりはめ一ま
きのとち物となして桑まゆの糸
口をひらき素走口のはしり書せる
ことよの人々をこのわさとなあさ
けり給ひそよ
末広庵
自得菴花咲翁
足高に霞をかけて富士の根にはるの陽気や立登るらん
萬歳逢義
幾春も老せぬ門になか〳〵といき延て鳴うくひすの声
東風福子
青柳のいとこはとこは道端の人に他生の袖やふり合ふ
浪華 加 竹
貝拾ふ篭は汐干につくせともかちわたり行住吉の浦
堀川亭石丸
朝日さす霞は山のこしのものつか袋かもむらさきのいろ
山家人広住
ますら男のすなをになれと青柳の枝を輪かねて春の駒とり
○ 尾張 三蔵楼田鶴丸
年礼の客に箒の沙汰なくてお髪の芸もとらぬ元日
ホウキ
同 松井田 弦掛舛成
千金の春にも月の宿かりて横には寝るな宵の一こく
○ 同 沼田 世詰内侍
春雨のたのみを受し柳樽みとりするめや今朝みえ見えぬらん
春雪連来
見あくれは鞍馬の山の児さくら僧正谷にはなの高さよ
榎分根
手をらんと脇の下より手をやれはくすぐつたいと梅笑ふなり
俵杉成
佐保姫のおいてなされはもろ人の日々に詠る花のかほはせ
○ 信濃 松本 小麦金鍔
下戸ならはやつとをはらにふたつほと桃のやう〳〵呑し顔はせ
松蘿道
絵にかけるをふなよりなほいたつらに心のうこく夜の梅か香
糸瓜霍丸
法華経のくとくも匂へ軒端なる花の利昼の深き梅か香
坂上押則
奥州の挑燈よりも紅梅の色はまされる火ともしのひ
巌苦也
世の中のうちとは見えし日の影ももらぬよし野の花盛りか朝
台司基佳
手細工の桜もよその紙ならて名にしあふたる花の盛りは
○ 同 濯耳菴水音
消残る去年の雪間をおしてるや難波の梅の香もつよくして
伊勢 馬上仲則
行すゑは花にそめなん旅衣はるにあふちの関のあけぼの
○ 陸奥 桑折 木刀菴兼成
腹中の歌書をさらすか春の日に天を仰てすたゝ蛙は
笑信丁亭仲成
風の手にけすれる窓の柳かみ梅かかもしも吹いれてよき
上水亭下見
春の夜のみしかからすは中〳〵になかきひ桜たのしからまし
東都 笹の屋厚丸
かなくきのおれ■と人のいはゝいへふつゝけかきの書初やせん
若水汲子
春風に氷はとけて水かゝみうつる柳のめもとやさしき
紐 筒長
書初の梅といふ字の筆勢はそのおや〳〵の口をすくして
耳露菴鉢満
若水て仕かけ直せし漏刻のたれも春とやしるとしの朝
出羽 米澤 白雪連 《割書:列良改| 》千歳松人
何無くも酒はすゝめり山さくらかふりつかはやてもさてもても
玉帚菴上成
たち神の森の霞をかけぬけてからすは今朝の春の先■
醫家の入道
鍬のはにかつちり石をうつ畑の音にひはりの出てとひたつ
《割書:後| 》軒列良
春の雪何と見たてん花のなそけに面白くとけつ流しつ
比羅雪墨
去年雪にとちたるまゝの谷の戸をおし明いつる/鍵の早蕨(カキノサワラヒ)
御免齊綾丸
桜木の根につまつきし庭下駄やはなをゆるめん雨のあしよは
玉結菴蔵満
春雨にみとりもますやかゝらまし川岸の柳の糸の釣はり
連葉菴春木
とふつきの石場縄手も初霞ひつはつてたつ春のあけほの
○陸奥 須加川 平方菴早樹
是もまた弓はつとらせてとゝめたしあはれ春日のなかれ武者には
川邊凉見
おしなへて今朝は雑煮の腹つゝみうちおさまりし君か代の春
鷺白羽
流儀ほと蛙は水をかきわけてふてのさやまか池になくなり
幾世菴久門
七種をはやすまな板かなひはしこれも古今の春の序ひらき
尾張 熱田 超歳坊
春風の音侘て来る谷の戸にくち明て出る鴬の声
柳百朶
尺八の虚空吹とも春の風はなさく門はわけて御無用
芦邊潮満
一番に花のはやをゝとく舩のかせに乗り出す浦の梅か香
堀川芳香
さえかへりまた綿入はきさらきのあかつき寒き山々の裾
○同 名古屋 北亭歌政
明て今朝月の噂は逃水や初日を仰く武蔵野のはる
玉章菴有武
家軒のつまに添ひねの鴬を梅やねたしとひらく唇
千雀菴雛人
あかねさす初日の影も東よりとその袋井越て来つらん
五葉舎乗打
日くれまてなかむる花に影法師の脊長となりてをらん一枝
三河 吉田豊木連 冬雨亭友茶
○三河 吉田豊木連 冬雨亭友茶
鼻紙の折を得てけふ春霞すこし見せたる山の懐
新玉年武
朱を/奪(ウボヲ)ふ紫色に咲藤のなかにも花のしら波もあり
豊橋欗干坊
/盥(タライ)とも見る池水に青柳はかせの手添て髪洗ふなり
垣元帯丸
一夜明春としなれは奥座敷ひらき直つて梅か香をする
厩戸真仲
垣ひとへ咲梅枝のへだてなくうらからうらへおくる花の香
下戸餅好
あし引の山も/熨斗(ノシ)目を着初てはあらたまりたる今朝の横雲
○伊勢 四日市 真草菴文人
春雨はよしふらすとも大佛のはなへさしこめ梅かからかさ
○同 桑名 福邉菴長生
三鳥の傳より聞てうれしきは古今かはらぬ初鳥の声
陸奥 相馬 中邑連 宇和空也
をかしさに千軒口もゆり出す万歳楽の春は来にけり
突々法師
咲花の三番叟なる梅か香をほかへはやらし袖に留けり
嘉世福也
いつかはや十日の雨のめくみとて草もはつかに萌にけらしな
橋上凉風
火吹竹あな面白く吹出すかせにそろ〳〵もゆる若草
算盤玉丸
やつと立春の重荷は山〳〵のかたにかゝれるはつ霞かな
千歳亭鶴束
福寿草花の強さは石臺のつちをもり出す亥のとしの春
長橋 渡
百日もちらてあれかし九十九夜かよひても見ん小町桜は
千唐有武
ふんといふ匂ひは風に愛相のこほれかゝれる桜の/英(ハナブサ)
鹽 美照
跡先の友まといして大名とかたをならふるかこの鴬
雲津高盛
立出る長上下の着こゝろもをりめたゝしき君か代の春
徐々菴春風
見ても猶たゝ薄白くあやなきは夜の錦の花にそ有ける
○仝 白川 雪木菴宿成
とし毎に春はかはれとかはらすに梅は梅なる匂ひこそあれ
東仙堂花守
咲花に袖すりあふて見てもとる梅か駕籠より匂ひこほるゝ
蜻蛉樓延人
此花のうはさの外は難波津の梅かかなかき筆こゝろ見ん
○仝 川俣 銭充樓望主
そたちよき田舎生れの鴬は都の梅の花むこにせん
遅路館為俊
おきつ舩霞のうちのうせものは見れともわかぬ今朝のうらかた
東都 李下齊東邑
和音さへ舌もまはらぬ鴬のまたいとけなき春の口もと
笆屋星員
/洞床(ホラトコ)に今朝かけそむる春なれやそらにかすみのふとしくもあり
辛崎松元
舩子ともとりつく綱のはる霞引て登れる淀の明ほの
上総 和氣吉丸
春の野のしはゐにひらく弁当も雪に真白き三角の飯
○陸奥 白川 徳井笛安
かけとりはとこへかとんて明ほのゝよろこひからす告渡る春
豊御代住
をりくへるたきゝの小野にかまとほとこゝやかしこにもゆる若草
○仝 郡山 紀喜賀内
人はいさ磯家が軒にほすあみのめにさへとまる花の夕風
仝 湯原 龍岳亭苦成
南山のかたより帰る雁かねはとひ行列もかけす崩れす
碁經石盛
長閑さに梅はそろ〳〵化粧してたちえ見事に踊る花笠
一笑徳成
砂の男が畑をうたんとかた肌もぬくころ空に雲雀鳴なり
○仝 会津 夫鵞堂張兼
鴬にやさしき声をかけられて雪も氷も早うとけたり
初夢鷹見
三の朝と云は賑はし面白しうれしき春に逢にけるかな
前川月満
門〳〵の神楽太鼓や獅子の舞はるのけしきのあくまたになし
桃林舎員生
胡粉地の雪かきわけて緑青の若なつむなり絵のごとき春
○美濃 大垣 夏目齋始変
汐干して昔をおもふ壇の浦かふと貝にも烏帽子貝にも
翫月菴峨山
折もうしをらぬもうしの願ひからはなにひかるゝ我心かな
○上野 相生 萬歳連 竹葉守数
白酒をくまぬあたこの土器【かわらけ】もそこのくもりて引霞かな
布喜朝興
春くれはほかにけしきはあらゐのりひゝにかゝれる霞またよし
○仝 小幡 則 有挻
舎人まて袖に若菜を二葉三葉御相伴とてつむも春の野
仝 山中 瓢亭百成
八重霞たちふさかつて春の野に哥をしつかり置てゆけとや
附子盛兼
紙碪うてる山谷のうら小田にすきかへしぬる苗代のつち
○常陸付中 霞陽菴浦人
千金の日影さすてふ春の野に二分三分つゝ生ふる若草
仝 土師 身上持義
咲梅のはな香も匂ふ朝茶より声たてそめる春の鴬
仝 完戸 右箸持兼
今朝ははや白酒売の頭巾から浅黄にかすむ春の山川
○上野 南谷連 息齊延命
春霞ひけるとうふの豆ならめひと口ほとに残るあは雪
藍 染 見
見渡せは今朝は浜辺にみち汐の引やのこれる浪のあは雪
田夫堂野人
野辺もまたなかき葉なしの初若菜そこらこゝそをちょっとつまゝん
辺田横月
糖味噌のしきりに匂ふ梅か香はふすまを越て鼻につくらん
仝 妙義 白雲連 山楼庵腰成
明初てたまの礼者も花の香もはらひかほする宿の梅かえ
○仝 藤丘 古笠雨守
佐保姫のおとし咄にくつ〳〵と笑ひ出したる春の山〳〵
平井亭賎歌
帯のたけ壱丈つもる白雪もとけて流るゝ春の谷川
眞字亭唐文
天の戸のあくれば事のたるひろう酒屋の御用春も来にけり
○ 櫻川亭近樹
春雨のあしとやは見ん門口にたるゝ柳の枝のひとふり
荒川亭貴達
きれ字より耳にとまるは箱根路の初音か原のうた鳥の声
○武蔵 神奈川 不二見連 笹林堂茂
梅柳蛙うぐひすも揃ふ春に花とも見せて雪はぬかるな
浪 宋 女
賤か家も明て霞の引窓やからりとかはる春の長閑さ
三巴窓鈴丸
飼にあさる蛙はそれにつられけん岸の柳の糸のうこきに
金川堂亀丸
春のひも延れば梅のほころひて匂ひふくろの薫る袖垣
栖原亭重丸
小銭ほとえたに咲たる梅の花風にかほりの通用のよき
○常陸 笠間 不二見連 不了軒跡頼
去年よりも今朝は格別長閑さに氷も薄く春のまね〳〵
○ 下野 那須 仝 気延友行
若水は今朝と去年との境めもかはして千代のつるべにそ汲
舎楽齋口成
山里も明の春とて谷の戸をひらきし梅にきなくうくひす
名葉三徳
残りたる雪の白地にすかぬひのいとめたちてそ見ゆる若草
長生家住
若水を汲やわく井に影うつし東風くり延す青柳のいと
寳菜亭嶋人
小謡の声はるめけは庭もせに一ふしのひる青柳の枝
○仝 佐久山 不二見連 梅枝花麻呂
遠山に霞の衣きそはしめけふのはれきの春の空色
鱗哥白麻呂
舩人の帆柱おこす仕度かも霞の綱をひける海原
勝糸哥肩
けふよりはなかねをやめんはつ春のあしたことには鴬の鳴
上野 大間々 千載連 東田舎丁稚
摘入てかいまの若菜かそふれはひと色見えぬ野路の夕暮
一丁羽狩
七種の芹/摘(ツム)沢に春しりてねをあらはせる今朝のうくひす
知部方頼
酒くせと人やいふらん桜狩またあとをひく翌の相談
鳴子網彦
たつ筆にみくたりはかり書始も暦の文字もふとき初春
若草末繁
今朝向ふ雑煮の膳の吸口にふきいれてよき風の梅か香
霍岡舎有人
野を遠み毛色はそれとわかねとも遊ふかけのみ見ゆる春駒
○下野 鹿沼 芙蓉連 山望亭安良
くり返す日記より筆のしん〳〵とねむけをつける宿の春雨
奧津堂宮住
庭つもりなたつくりしもうるはしく東邊ほくの梅は咲ぬる
春笑亭咲掛
うつりゆくはるも弥生のみかは水鶏合せてふ時を告たり
谷雪丸
唐人も寝言のはしにうらやまんよし野の花を夢になかめて
雄々館平記
世話しさよ霞もたては松もたつ門の礼者にすはる間もなし
旭亭赤根
淡雪の白粉水や口紅粉をなかす春日の梅のよそほひ
栗御膳
日のあしものひて嬉しやうとんほとうちをさめたる玉の初春
真白菴綿法師
みちのくのおくのひと間に咲みちぬ小金色なる粟の餅花
崑崙舎黒人
咲梅の主をは問はて山里にゆきゝの人の香はかりをきく
時雨菴萱根
をりにあへはこれものとけし陽炎のもゆる春日のてんかく火鉢
【不二之絵】画狂人
北斎画
一粒亭万盃
退屈の老に柳のひきかへてのひやしつらん春の此ころ
三河 三味森好
小倉山花見て哥も思ひ出ん小町さくらに人丸さくら
下館 五葉亭永樹
けふ幾日春の日数をすき箸のさけは心をやしなふる花
仝 堪忍舎深記
漁舟も休みし春のしつけさはそらに霞の網の引そめ
仝 千箱玉廣
おしてるやなにはともあれ遠村の花にはちかくあしをはこへり
徳意持方
鴬の初音のつゝみしめるかとしらへかえたる雨のしつかさ
桐原駒彦
梅か枝に棹をもたせて干衣は袖よりそでへとふせ花の香
北陸堂道近
雲雪と見あくる不二の山さくら開きし花も麓よりして
○ 出世鯉人
春の海真帆も片帆も朝凪のかすみにはるか引おくれたり
浅草例 田原常則
鴬のつけ子に経はすり餌よりかんてふくめるやうに教る
東山堂数良
春来ても田舎産の鴬ははにかむ虫やひらひ鳴する
浅葉菴音芳
田の西の水にも枝をあらひ髪風にはりつく春の青柳
浅子亭市成
野遊のくわへきせるも長閑には煙の霞たつはなのさき
浅縁菴春告
蒲団着た都の山もあたゝかく春の日あしの踏延したり
馬足亭繁岐
若かへる春は霞に親舩もこふねのやうに見ゆる海つら
○下総 結城 不二見連 淀川 網彦
子日とて姫子の松を千代かけて根引にしたる春の麗
紺屋安染
青柳のやさしき糸やいせしまに霞をませておりわけのあや
○常陸 府中 不二見連 一秀齋貫良
散花ををしみて駕籠に乗れはまた二人にふます志賀の山越
葉山芝住
ひろいものしたる心地よ鳴声はきゝすてかたき野路の鴬
○ 下妻 仝 梅香亭沼住
賣買の夷の膳の相場よりたかくねを出す鴬の声
青松庵春人
花に目のくたひれるとも吹風にこゝろつかひの休むまはなし
○陸奥 岩城 不二見連 甘露菴道遠
松嶋やあかねさす日の袴着てきさきの嶋に霞わたれり
信濃 軽井澤 仝 薄井麓
大名も花にみとれて春雨にふりこめされし宿の梅か香
下野 烏山 常陸帯長
長閑さは/妹(ミメ)も春来てつくはねのかつもひいふうみよの目出たさ
紙則薾
春雨に人めも草も若やきてめたつ柳に蛙とひつく
久保裏住
あたらしく羽色をそめる鴬茶こゑをしいしにはりつよく鳴
阿古木浦住
待侘てゆひをりくらすをさな子のまねく手もとに春は来にけり
○下総 佐原 北總菴楫取
つはくらは壁をぬれとも春寒し霜の柱はまたたてるなり
仝 笹川 夢告成
たをやめか手桶かた手にふりかへりすかたうつれるとしの若水
仝 佐倉 櫻下堂壽歴
わきも子か髪に見たてし青柳のめてたうなかうなりし春の日
常陸 下館 不二見連 板谷棟成
春されは峯に霞の色そひて冨士のけふりのいとゝたちます
成蹊舎枝也
真さきに立たる春の伊達道具万石とりの鑓梅の花
民家軒貫
穴を出るけものも春の山の端は霞のほらにいるかとそ見る
松元亭繁樹
宮人の御通りよりも春風にかたよる野路の青柳の枝
西陳舎一村
こけかゝる賤か垣根のむかふよりおこして嬉し風の梅か香
谷嶋亭浦人
春雨はやめと淋しき賤か家ののきにたれたる青柳のいと
奈良花住
打つけし板へしつかりのりすしやすのかけんよくつくるつはくら
浪風於左丸
雨を乞哥ならなくに鴬のはつ音にひらく梅の花かさ
錐美津女
佐保姫もおやまのまねよ夕山のひたひにかすむ紫帽子
矢立薄墨
たて横も尺長にひくちゝふ山霞のきぬの春の織出し
嶋田真毛女
咲梅の匂ひくるわの三味線にとなり座敷は風にちり侍ん
冨艸生達
たん〳〵とはや棚引て立そめるひなに霞の幕をはるの日
古山人
煙かと見れば霞にたん〳〵とあたゝかになるひのもとの春
八幡老補禮
天の戸の明の方より春くれはちそうかましくうとふ鴬
田柳舎緑
千金の春の/價(アタイ)は賣出しのはつねをひらく鴬の宿
鳩禮舎三枝
池水に影のうつれはあめつちもすたく蛙の歌にうこかす
陸奥 相馬 中邑連 結尾志丸
姿をは底に見るともまよはたとやなきはまゆをぬらす池水
三河 桜木亭皮人
ぬり鞘のはけめのかすみ引空にくりかたなりの三日四日の月
庭柯菴連成
また鍬も入さる春のあら小田にすきもあらせす性なくなり
十千亭道成
宇治山にひける霞は薄茶ほときせんの人の目やさますらん
文喜亭早雄
冨士の山今朝はかすみのほころひて綿ほと峯に見ゆるしら雪
浪上則速
賎の子か手習ふ砂の文字に似てかきけすことく帰る厂かね
朝倉菴三笑
春の来る手本と人のいひならふほにはの梅の青軸
○東都 不二見連 能琴有鶴
此ころの日和はしかとすはらねと横にはならぬ春雨のあし
柳花菴春芳
声もまた梢をもりて雨水のえたから枝へうつるうくひす
柳向亭百帒
今月とはらみて居たる茶屋の梅まつははやめになんし咲ける
狐子玉持
一升の酒も徳利や肴にはこゝろのひるのたまの野遊
高根常雪
山寺の花にをし見て入相のかねをかけても春をときたき
紀侭成
須磨明石案内かけてはつ霞名所〳〵を引廻しける
百生比左古
なにしあふ鋸山は安房上総真ふたつにして引霞かな
奈夏藏持
雲雪のにせものとよし見るとてもあらはれてさく峯の初花
青雲亭業丈
寒さをもやゝさる沢の池の辺にけさは霞のきぬかけ柳
仝 桜井 三有舎河島
箸紙とともに我手もしのゝめに水引むすふ初手水かな
仝 干泻 捨貝堂干泻
去年よりも手まはしをして咲いたすはしら暦の日あたりの梅
山玉亭数義
好に身をやつすはかりよきのふけふあすかの山の花にうかれて
○下野 大田原 釜臍主
子日する野辺より大夫買にいなはいとし若松根曳にやせん
安気方頼
故郷へはれの袂や飾るらんにしきたかたと帰る厂金
玄仲那言匕盛
煎豆にうち出して歟けふ春の山は青鬼花は赤鬼
紀画楽多
手を出して見れはふれとも柔術の屋わらかにのみあたる春雨
紀津々丸
ほねと見るよし野の山のさくら鯛とりわけ花のみところにして
山中里近
護摩をたく日待に初の客もうけあけもの料理はねた御手きは
紅井天世羅
菖餝の太郎かあけし奴凧二合半まて見ゆるなるらん
千数菴矢藤
たへな音の出ところいつこはしか舌かのとかな春の庭の鴬
○武蔵 川崎 曲水連 田毎守豊
みとり子のそたつさかりよのひをしつみふるひもする風の青柳
酒上喜三二
左官師のいともかしこき春雨にぬれる軒端のてての柳葉
中野吉人
むらさきの和尚もほめん筆の海しの字引出す初霞をは
釋種奈志
苗しろを藁人形に守らせて作大将の水のかけ引
栖篁亭三鳥
見わたせはふるき野守か宿よりもあれこそまされ春の若駒
浅呂菴牧廣
若やいた心みかてら梅暦見れはめかねもいらぬ老らく
浅流菴清志
三めくりに船よふ声も咲梅もかはむかふまでおくる夕風
浅月堂春人
今朝ははや口にひやりときみかよや豊に春のたつくり鱠
浅津菴永世
/蚰(けち〳〵)もうかとは庭に捨られす門に若やく青柳の髪
○ 六蔵亭守舎
たらちねにすゝむる屠蘇の酒の名ももと養老の瀧水にして
判者
千種菴
琵琶湖にもならひし形の池の面にかゝりてたるゝ四つのを柳
仁義堂
雨の日に坊主合羽のそてもなきみちもとめつゝ梅そたつぬる
浅瀬菴
梅見道問いて通れはおひかけてにほひはこゝと知らすこち風
貢菴
散をいとふ花のしら波くしりてはほつといきつくあまのかた山
桑楊菴
万歳のすはうの袖にとめられてたまる物かは宿の梅か香
浅草菴
鴬の籠のとまり木は丸木橋なれてみかるに谷渡りする
末廣菴
元日に先むかはなん蓬莱は喰つみ臺とするかなるほも
書そめに子もいさみたつ春駒の
はねたる黙のつよき
筆勢
享和癸亥春日
末廣菴藏板
Hokusai, Fujimi no Tsura. Les admirateurs du Fuji
Preface signee: Suiro Han.
Fin datee Mizunoto Hi de Kiowa(1803) Editeur Suiro Han.
Les planches sont signees: Gwakiojin
Hokusai. Hayashi, n. 1711, decrit un ouvrage semblable, maris ne
contenant qu'une planche de gravure.
1 vol., haut.,219 millim.: large.,157 millim., contenant 2 planches
de gravures en couleur.
Charmanl petit ouvrage, assez rare et d'un tres beau tirage.
Etat agreable.
【文意はおよそ
北斎、不二見の連。富士の崇拝者
序文署名者:末広菴。
享和三年(1803)出版社末広菴板。
署名は画狂人北斎。高さ,219 mm.:巾157 mm
色彫刻は小品だが非常に美しく保存状況は良好。】
日清戰闘畫報 第四篇
【表紙 題箋】
すゝりわり 上
【資料の整理番号のラベル】
JAPONAIS
4260
1
【右丁 表紙裏 文字無し】
【左丁 白紙 整理番号のラベルあり】
JAPONAIS 4260 1
【右丁 白紙】
【左丁】
いつれの御代にかかしこきみかとにつかへたて
まつり給ふ大なこんときとものきやうと申
公卿おはしけるさいかくゆうちやうにして詩
哥みちにちやうし【長じ】給へは君の御おほえも
めてたくわたらせ給ふされはこの人はたい
しよくはん【藤原鎌足】よりも九代のそん【孫】せうせんこう【昭宣公=藤原基経の諡号】の
一男后宮の御せうと【兄人=姉妹からみた兄弟】左大臣ときひらの卿
の御まこにてそおはしけるたい〳〵せつ
しやうかういの家にしてまつりことを御
かさとり【嵩取り】世のおほえすくれてめてたくさかえ
【右丁】
給ふきたの御かたはふちはらのなかふさ
のきやうの御むすめにておはします御
とし十七さいのころよりむかへさせ給ひて
あさからぬ御なからひ【仲らい=間柄】にてそ侍りける春
は花のもとにてなかき日のつれ〳〵もな
くかたらひくらし秋分月にうそふきて
なかきよのふけゆくそらをおしみうたを
よみ詩をつくりくわんけん【管絃】をともとして
とし月をすこさせ給ふほとにすてに
御としははしめのおひに【初めの老い=初老=四十才の異称】にあまらせ給ひける
【左丁 絵画 文字無し】
【右丁】
しかれとも男子にても女子にても御子
ひとりもいてきさせ給はねはこれをの
みあけくれなけかせ給ひけるあるとき
ときとものきやうは北のかたにうちむかひ
おほせられけるはすてにわれ〳〵は大しやく
はんの御すゑとしてせつろく【摂籙=摂政・関白の異称】ちう代の家
たりこのときにあたつて一人もすゑをつく
へき子のあらされはたちまち家のたえなん
ことこそなけきてもあまりありいかなる
人の子をもやういくしてしそんをたえ
【左丁】
さしとおもふはいかゝはんへるへきとうち
なけきのたまへはきたの御かたはきこしめ
し【お聞きあそばし】されはこそみつからもこのことをこゝろ
くるしくあちきなくおもひ流れしかあれ
はとていまさら人の子をやしなひたてん
もほいなしねかはくはほとけ神にもいの
りてそれかなはすはいかにも御はからひ
あるへきことはこそおもひ侍れと仰られけ
れは大なこんとのきこしめしまことにこれは
しかるへき御はからひにこそあれしからはい
【右丁】
つれの神ほとけをたのみ奉るへきそやされ
はことよはつせのくはんおんはいこく国まて
も聞えさせ給ひたるれいけんなれはよも
わか國のしゆしやう【衆生】のねかひはすてさせ給は
しいさらせ給へはつせへまいりていのりたて
まつらんとの給へは吉日をえらひて大なこん
殿ふうふ御こしにめしさうしき【ぞうしき(雑色)。「ざっしき」ともいう。雑務に従事する下級の官人】御すいしん【御随身】
めしつれはつせにまうて給ひふつせんに
むかひて三十三とのらいはいを奉りそも〳〵
たうしの御なそんはわか家のなうそ【曩祖(のうそ)=祖先】春
【左丁】
日大明神てんたい大しと御こゝろをあはせ
て十一めんの御そうをさなくましましまつ
せ【末世】濁あく【注】の衆生をさいとおはしましり
しやうちうへんをめくらしみらいはふたらく
せん【補陀落山=観音の浄土】のしやう公にいんたう【引導】し給へとふかく
きせい【祈誓】をこらし給ひけるとかやその御願い
かてむなしかるんしかれはわれらに
一人のそ【先に書いた文字の上に「そ」を書く】うしをあたへさせ給ひなうそ
の家をつかしめたまへとかんたんくたき【肝胆砕き…精根をつくす】
いのらせ給ひけるすてに一ち日にまんする
【注 じょくあく(濁悪)=人心がけがれ、悪が満ち満ちていること。】
【右丁】
あかつきくはうみやう【光明】を十方にてらし【照らし】いき
やう【異香(いきょう)=極楽浄土の芳香】はなはたくんし【薫じ】いとけたかき御こゑ
きこえてなんち【汝】ふうふに子といふもの
はあらねともわかちかひむなしからんも
ほいなし又あまりになけくをみるもたえ
かたけれはこれをこそあたゆるなりとて
るり【瑠璃】のかうはこ【香箱】ひとつたまはると
おもへはゆめにて
ありけり
ふうふ
【左丁】
のひと〳〵
は
よろこひ給ひて
かさねて
らいはいを
まいらせて
御けかう
ある
【両丁 絵画 文字無し】
きたのかたれいならぬ御心ちまし〳〵てあた
る月には何の御いたつき【病気】もなく御さんのひ
もをとかせ給ふとりあけ御らんすれはま
ことに玉をのへたることくなるわかきみにて
そおはしましける父母の御よろこひかきりな
くめのとかいしやくの人えらひてあまたつけた
まひいつきかしつき給ふことかきりなしかく
てあけぬくれぬとそたて給ふほとにはや
五さいにもならせ給ふ御はかまきせ給ひて
てんしやう【殿上=昇殿】せさせ七さいにてうゐかうふり【初冠】
【左丁】
ありてしゝうのきみ【侍従の君】とそ申たてまつりける
そのゝちわかきみの御つきにひめきみいくき
させ給ふこれもいつきかしつき給ふことわかき
みにもおとらせ給はすせいたんにしたかひて
御かたちひかるやうにそみえ給ふ抑この大納言
殿の御家にちう代【重代】つたはりたるてうほう【重宝】
にひとつのすゝりありこのゆらいをつたへきく
にむかしみけこの大将の御ちやうしにかまたり【中臣(藤原)鎌足】
の大臣と申おはしますちよくめいをうけたま
はりているか【蘇我入鹿】の臣と申けきしん【逆臣=主君に反逆する家臣】をほろほし
給ふこのいるか【(蘇我)入鹿】の大臣と申は二さうをさとる【注①】
ほとの人なれはてうてい【朝廷】をかたふけまいら
せてわれはんせうのくらゐ【万乗の位=天子の位】にならんとふる
まひしによつてかまたり【(藤原)鎌足】に仰つけらるゝ
されとかれをほろほさんこと人のちからに
をうふへからすとおほしめしてなうそ【曩祖(のうそ)=先祖】春日の
明神とすみよしの大みやうしんへふかくき
せい【祈誓】をかけさせ給ふにそのしるしけんちう【厳重…神仏の霊験があらたかな様子】
にしてみとせかほとになんなくほろほし
給ふ君のえいかん【叡感=天子・上皇などの感嘆・賞讃】あさからすしてそのちう
【左丁】
しやう【忠賞=忠功のあった人に褒美を与えること】に大しよくはん【大織冠】のつかさをそ給はりけ
るまことにためしなきことともなりさてかま
たりは御よろこひにすみよし大明神に
まいらせ給てさま〳〵のたからも【「たからもの」カ】をさゝけ
きくはんのほうへい【祈願の宝幣】を奉らるいよ〳〵当家
るいそん【「累孫」カ】にをいてなかくくはんろく【官禄=官位と俸禄】をまも
らせ給へとてせい〳〵をいたししん〳〵【信神】のかうへ
をかたふけ【注②】給ふかたしけなくも明神はかりに
すかたをらうをう【老翁】にへんしたつとき御声
にてなんちちよくめい【勅命】にしたかひうちかたき
【注① 二相を悟る=外面によって内面をおしはかり知る】
【注② 頭を傾け=深く信仰するさま】
【右丁】
けきしん【げきしん(逆臣)=主君に反逆する家臣】をほろほししんきん【宸襟=天皇の御心】をやすめ奉る
もつともそのこうふかしるいそんなかくさか
ゆへしまたしそんにいたつてつかさくらゐ【官職】を
たまはらんおりふしはこのすゝりにてしるしを
くへきなりさあらはしそんにをいてくはん
ろく【官禄=官位と俸禄】つかさふそくあるましとしめし給ひ
てひとつのすゝりをそへたされける大しよ
くはんはなゝめならすによろこひくはい
ちうすると思へは夢はすなはちさめたり
【左丁 絵画 文字無し】
【右丁】
うちおとろきおきあかりみたまへはけに
もうつゝにすゝりありけりこはありかたき御
ことかなとてすなはちいたゝきまつりて家
にかへりてにしきのふくろにおさめ八重の
しめをかさりてあかめをき御しけん【示現】にまかせ
代〳〵くはんろく【官禄】たまはるおりふしはこの
すゝりをとりいたししるし給ふにこゝろに
かならすといふことなしさるよつてたう
けだい第一のたからとそ聞ゝしあるときれい
ならん殿ふしきの夢をそみたまひける
【左丁す】
ところはくはう〳〵【「荒荒」カ】としてさしもいみしき
庭前にしよく【卓】にかゝりてふみをひろけて
みてくたんのすゝりにてすみをするおはし
けるにいまゝてせいてんにはれらかなりし
日のたちまちそらかきくもり雨しやちく
をなかし【車軸…車軸のように雨あしの太い雨が降りしきる。】かせ大木をたをしいかつちなりは
ためき天地とうよう【動揺】することおひたゝし
こはいかなることやらんと身のけよたちて
おそろしく思ひわけたるかたもなくてあき
れはてゝおはしますところにくものうちよ
りそのさますさましきなにのかたちなる
ものあらはれ出て身より火えんをはなし
こほりのことくなるつるきをよこたへていふや
うはなんちはわれにあたをなしゝものゝす
へなりいまわれにくたりてしんするものなら
はあくしんをえるかへしてなんちかいへを
まもるへしさらすは【然らずは=そうでなければ】ちかきほとになけき
をいたくへしとたからかにのゝしりて又
もとのことくくものうちにしりそきぬ
あはやいかなることやらんとゆめこゝろに
【左丁】
も身のけたちてひやゝかなるあせ出ゆめ
うちさめぬ
【右丁 絵画 文字無し】
【左丁】
そのゝちも人こゝちあらさりしかなをも心
もとなくて北の御かたにかゝるゆめをなん見
つることこそおほつかなけれとてかたらせた
まひけるかゝるところにみかとよりちよくし
ありしよきやうのくわいかうのしたいありをの
〳〵まいりたりはやかくさんたいあるへしと
なりこれによりて大なこんとのとるものも
とりあへす出給ふこゝに大なこんとのゝ家
の子に仲太の■■【「ちゝ」カ】よしひさといふもの有
これはせんそなかふとのきやうふよしかぬと
【右丁】
いふものゝしそんにて代〳〵この家につかへ
けるか大なこんとのゝ御ちやくししゝうのきみ
御とし八さいのころなるにいたきたてまつり
て花そのに出てなくさめ奉る木々のこ
すゑにさきみたれたる花にたはふれて
もゝちとり【百千鳥=いろいろな小鳥】のとひかふをおかしとうちなかめ
あそひ給ふかわか君おほせけるはいかにちう
太ちゝうへのかくもん所のしつらひをみはや
とありけれはうけたまはりて御手をひ
きさしいりかなたこなたのしやうしをひき
【左丁】
あけ〳〵入けれは一まなる所にからやまと
のふみともを四はうにつみかさねてありと
あるたなのうへにひとつの箱ありいかにも
ふつかうにこしらへてしめをひきたる
ありなにゝかあるらんとあやしみみけれ
はかの御すゝりを入たるはこなり仲太わか君
に申けるはこのすゝりは御家につたはりたる
みたからなり我代〳〵当家にめしつかはる
るといへともつゐにこれをおかむことはん
へらすと申けれはわかきみきこしめしそ
【右丁】
れかしもいまたみることなしそれとり出せ
かしすこしみはやとおほせけるほとに仲太
はよきついてなりと思ひかしこまりてしめ
をはつしてとりいたしみけれはにしきの
ふくろ七重につゝみていみしくしたゝめ
給へりしをとりいたしわかきみにまいら
せけれはかしこくもをしいたゝかせたまひ
とりなをしつく〳〵と御らんしてそのゝち仲
太によく〳〵おかむへしいまならてはいかて
又もみるへきとてわたさせたまへは仲
【左丁】
太たまはりてこつといたゝくとせしかあや
まちておとしたるに下に石のうつはものゝ
ありけるにあたりてあやまたす【予想どうりに】ふたつに
われけるこそなさけなけれ
【右丁 絵画 文字無し】
【左丁】
仲太はこれをみてこはいかにゆめかやあさ
ましやかゝるあやまちしけることよとて
あまりのことのあきれはてたるはかり
なりわかきみもこれを御らんしてとかく
のこともおほせられす色をへんしてお
はしますちう太申けるはあらくちおし
やこれひとへにそれかしかわさにはあらし
たゝてんまはしゆん【注】のしよい【所為】なるへしさら
すはしんりよ【神慮=神のみこころ】のとかめなるへしそれを
いかにといふにこのすゝりと申はかたしけ
【注 天魔波旬(てんまはじゅん)=欲界第六の魔王。人が善事をなそうとするとき邪魔をするという】
【右丁】
なくもすみよしの大明神より当家の
せんそ大しよくはんにたまはらせ給ひたる
ごてうほう【重宝】なりされはわかきみたにもた
やすく御らんすることなき神器なるを
われこときのいやしきものの御ゆるされ
もなくてなをさりにあつかひけかした
てまつるその御とかめにかくそんし給へる
にこそあらめたゝいまにも大なこんとのか
へらせ給ひなはいかなるうきめにあふへ
きかなしさよせんするところ【所詮=結局】かへらせ給は
【左丁】
ぬさきにしかい【自害】をせんとおもひそのきそく
あらはれるれはわか君御らんしてありふ
ひん【不憫】のありさまやさのみなゝけきそしぬ
るまてのことはあらすちゝの御らんしていか
らせたまひなんみつからかみるとてあや
まちてわりたるよしを申てとかをはうくへき
そこゝろやすくおもへとおほせけりそやさ
しけれ仲太は御ちやうをうけたまはりて
さても〳〵ありかたしやさしき御こゝろさしか
なそれかしかあやまちを主君にをはせた
【右丁】
てまつらんこともてんのとかめおそろし身
の後の世もいかゝせんさりなからこれは御て
うあいのわかきみなれはすこしは御いかり
もあさからんかとのちのわさはいをもわす
れてたうさのおほせのかたしけなけれは
なみたををさへてすゝりをはもとのことく
したゝめて大なこん殿の御かへりをまつほ
とはちゝに物をそおもひけるそのこゝろの
あやうきことはたゝしんえんにのそんてはく
ひようをふむ【注】にことならすさるほとに
【左丁】
大なこんはみかとの御まへにちもく【ぢもく(除目)】のことに
よりて一の人の御子に大なこんあきたかの卿
とさうろんのこといかめしくなりてすてに
こといてくへきありさまに見え給ふときの
くはんはくにておはしますひてふさのこう
このひやうきこと大義なり当座にすむへき
にあらす後日のさたしかるへしとて座
をたゝせ給へはをの〳〵かへらせ給ひけるかしる
ことによりて御きしよくよからすしてかへ
り給ふしかれはみうちの人〳〵いつにかはり
【注 深淵に臨んで薄氷を踏むがごとし=危険な立場にあることのたとえ】
【右丁】
をそれをなしつゝしんてそゐたりけるされは
おくにつといらせ給ひてかくもん所にいりて御
らんすれはよろつとりちらしたるありさま也
こはいかにとおほしめし御すゝりのはこをとり
おろしたま給ふにありしさまにもみえされは
あやしくていそきひらき御らんすれはふた
つにわれてありされはこそすきしゆめの
さとしはこれにやあるらんと大きにおとろ
き給ひこのところへはいかなるものゝいりき
て家のてうほうをひきいたしあまつさへ
【左丁】
うちわりけるそ心えねとこそいからせ給ひ
けれみうちの人〳〵されはこそ御きしよく【顔色、様子】
のあしきうへにかゝる大事のあることよとい
よ〳〵つゝしんていらへ申ものもなかりけり
大なこんとの仲太はいつくにあるそとてめ
しよせられなんちなしてはこのことし
るへからすときしよくへんしておほせられ
けれは仲太はこのありさまをみてとても
のかれぬみちなりかくあるへきことはもとより
こしたることなれはありのまゝに申あけて
【右丁】
ともかくも【どうにでも】ならはやとおもひすまして御
せんちかくすゝみよる所にわか君はする〳〵と
はしりよらせ給ひて仰けるはいかに父うへ
そのすゝりは何ともしらすわれ〳〵かとり出
し見侍るとてとりおとしてわりはんへる
なり仲太はいかてかそんすへきと申させ
給へは大なこんとのきこしめしもとより
御きしよくあしきうへなれはいよ〳〵御け
しきそんしてなんてう【なんじょう=何を言うか】あのすゝりはほん
ふ【凡夫】のみることにてはあらすわれよう〳〵の
【左丁】
あるおりふしもまつ七日かほとしやうしんけつさい
してつかふことなるかたやすくさかしいたして
かゝる家のてうほうをうしなふことこそ心えね
なんちはわか代をつくへき子にはあらす家を
ほろほへきかたきのうまれきたるにこそあ
らめとて御はかせを【守り刀の刀剣】引ぬきてあへなくかはし
給ふそむさんなる御ちゝうへもめのともはし
りよりあはてさはき御しかい【死骸】にいたきつき【抱きつき】
これはゆめかやうつゝかとしはしたえいり給ひ
【絵画 文字無し】
【右丁】
やゝありてなみたのひまよりあゝなさけな
のちゝうへやたゝひとりあるこのわかはわしか子
なからも大かたならす【並み大抵でない】なき子をはつせの
くはんせをんにきせい【祈誓】して申たまはりし
なりたとへはなにたるあやまちありとも一と
はゆるし給ふへきことなりことにおさなき
ものゝななれはなとかはいのちをたつほ
とのことのあるへきそよその聞しもつき〳〵
しあゝうらめしのちゝうへやとりうていこかれ【流涕焦がれ=涙を流し大そう悲しみ】
てなき給ふもことはりとこそおほえたれ御
【左丁】
めのともわれ〳〵ちのうち【乳のうち=乳飲み子】よりやういく【養育】しまい
らせてにはのまつのすゑひさにおひたち給
ふをまつこゝろへんくわかたまのおもひをなし
よるひるいたきかゝへしにいまよりのちたれ
をかいたきたてまつらんあゝなさけなの御あ
りさまやないま一とめのとかと仰いたされ
よかしと御しかい【死骸】にとりつきてなきこかるゝ
ありさまはよそのみるめもあはれなり
【両丁 白紙】
【両丁文字無し】
【裏表紙 文字無し】
【資料番号 4322 2は同じものが重複していて翻刻済】
さて六ゐのしんは大将のもとへ参りさま〳〵のもて
なしにあひ御返事給てかへり参ることのよし出申
せは人々さゝめきよろこひあへりとかくするほとに
その日もなりぬれは中将殿を大将殿よりしきり
によひたてまつるされともふししつみて出しやり
給はすおもひのあまりににしのたいのいもうとの
女御のかたにおはして申給ひけるやうこれに候人
は九月十七日よりかたらひをきて候いまた夜かれ
し伝へらぬにこよひはしめてわかれなはこのひ
のなしみさらてはおもひ候はんすらんめなにかくる
しく候へき御けんさん候て御物かたり候へきも御
はゝなくさむ心もやはんへらんとのたまへはまこと
にいたはしきことかなとて入参らせ給へはひめ
きみはなみたにかきくれて人に見へ参らせ給
ふへきやうもなけれとも中将殿の御ことはをたる
へしとてなく〳〵いらせ給ひぬ中将殿はをくり
いれ参らせてかへらせ給へはたき物しめたる御なを
しきせ参らせけれともたゝめいとへおもむく心ち
してなみたはれやるかたもなしをといをめして
かへらんまてはなくさめ参らせよあか月とくうつる
へししゝうにもいとまこひ御くるまにめしけれは
さつしきうしかひすいしんわれも〳〵といろめき
御ともに参られけるはこれやこのゑんまのつかひ
のこつめつもかくやとおもふになみたもせきあへ給
はすなく〳〵なかめ給ふ
あられふりしもさゆる夜におきわかれ
見にさましゐもなく〳〵そゆく
かやうにうちなかめみちすからなをしのそてをそ
しほられけるさるほとに大将のもとへおはしけれ
はさすかに人のめをつけてみるおもひゆくかた
はらいたくおほしてとかくまきらかしてきちや
うまぢかくたち入らせ給へはひめおはしますら
む御らんするに何となくそらたきものうちか
おりみなしろかさねの十二ひとへくれないの三えの御
はかまからあやの二きぬめしてうちそはむくけしき
あとなくあをやきのかせになひけるかことくありて
あてやかなる御けしきなりけれは中将殿おもひ
給ふやうこれもなれ人をみすはたやすくたへひ
はあらしとおほしめしけれともいにしへ人にあ
はすれはかたりふぜいにつけてもけすしさかさ
りなし御かいしやくの人御めのとをはしめとし
てはしたものにいたるまてきよけにもてなした
てまつるをみるにつけてもあはれひめきみをか
やうにおもふ事なくいつきかしつかはやとおほ
しめすになみたもれ出てありしかたのみこひ
しかりけるかくて八こゑのとりもなきけれはゆふ
さりはまたそ参らんとて出給ひぬいまたあけさ
るに出給へはひめきみも御めのとも思しかたくあさま
しくそおほしめしける御くるまよせけれはいまへ
んしもとくとそいそかれけるさるほとにひめき
みも中将殿やう〳〵いらせ給ひぬとてにしのたい
よりもかへり給ひぬ中将殿はくるまよせておりさ
せ給へは御めのとはしり出いかにや御けしからす
いまた夜もあけさるに御かへりさふらふそと申
けれは中将殿の給ふやうゆふへこれを出しより
ししつみておはしけるにまた御つかひしきり
なりけれはあからおよはすおきわかれて御なを
したてまつるくるまよせまてしゝうおといをめし
てやかてかへるへしかへらんまて二人なから御そは
にそいなくさめ参らせよいかにおやのおほせらるゝ
とも三夜まてはゆくへしその後はかなふまし
なを〳〵とかくおほせられはいかなるふかきやまに
こもりさまかへしゆつけはするともさふ〳〵ゆく
ことあるましこよひあすの夜はかりは心なかく
まつへしとおほせられてなく〳〵
御くるまにのりて出給ふ
【挿画】
しめすになみたもれ出てありしかたのみこひ
しかりけるかくて八こゑのとりもなきけれはゆふ
さりはまたそ参らんとて出給ひぬいまたあけさ
るに出給へはひめきみも御めのとも思しかたくあさま
しくそおほしめしける御くるまよせけれはいまへ
んしもとくとそいそかれけるさるほとにひめき
みも中将殿やう〳〵いらせ給ひぬとてにしのたい
よりもかへり給ひぬ中将殿はくるまよせておりさ
せ給へは御めのとはしり出いかにや御けしからす
いまた夜もあけさるに御かへりさふらふそと申
けれは中将殿の給ふやうゆふへこれを出しより
【7ページと同じ】
心はこなたにのみありてあけよといそくこよひし
もなかゝりつるにとりかなくねをかきりにてかへり
つるなりとていつもの御しんしよに入給ひてかたら
ひふし給ふまくらならへしそのあたりたかひのなみ
たはうへはかりにそありけるまたさ大しん殿より
いらせ給へと御つかひありけれは心ならすおさわか
れまいり給ふはゝこぜんすくりかみをとり給ひいか
にやこうてうのをそなはれるとの給へは中将との心
ならすふてにまかせてかきなりし給ふ
あははやとそゝろにものをおもはせし
むくゐにいまはとはしとそおもふ
とかきてうちおりれけれはめのととりて引むすひ
六ゐのしんにとらせけれは大将のもとへもちて参
る中将殿はやかてわか御かたへかへりふししつみ
給ふさるほとに六ゐのしんは大将とのにてさま〳〵
にもてなされいろ〳〵のひきて物を給はりてかへ
り参り御返じ参せけれは中将殿御手またに
とり給はすはゝ御せん御らんしけれはふてのあと
もなへてならす
とはしともいふことのははことはりや
夜ふかにかへるこゝろならひに
さて中将殿はあへるまておきもあかり給はすふ
ししつみておはしけるにまた御つかひしきり
なりけれはあからおよはすおきわかれて御なを
ししつみておはしけるにまた御つかひしきり
なりけれはあからおよはすおきわかれて御なを
したてまつるくるまよせまてしゝうおといをめし
てやかてかへるへしかへらんまて二人なから御そは
にそいなくさめ参らせよいかにおやのおほせらるゝ
とも三夜まてはゆくへしその後はかなふまし
なを〳〵とかくおほせられはいかなるふかきやまに
こもりさまかへしゆつけはするともさふ〳〵ゆく
ことあるましこよひあすの夜はかりは心なかく
まつへしとおほせられてなく〳〵
御くるまにのりて出給ふ
【8ページと同じ】
【挿画】
【9ページと同じ】
みちすからつく〳〵おほしめしけるあはれこの人
とくしてゆくみちとおもはゝいかにうれしかり
なんあはれひめきみをこの人とおもはゝおもふ事
あらしかゝるうき世にかく物おもふ事のかなしさ
よとおほしめす心のううちそあはれなるさるほとに
かの所へおはしけれはひめきみおほせらるゝやう夜
をこめ御かへりありてまたふへるまてにいらせ給はぬ
も御ことはりなり御さとにおもひ人のましますと
はそのかくれさふらはすといつしかねたみ給へは
それにつけても心つきなきかきりなしたゝわか
御かたのみこひしくてつゝむなみたもれいつるを
さらぬやうにもてなしわれにはとりもさふらは
ぬものをにくませ給へは身のほとこそおもひしら
れて御はつかしく候へとてちかつき給ふこともなし
つちによりふし給ひてこまやかなることもなくゆ
めもむすはてとりのねとそまたせ給ひける八こゑ
のとりもつらけれはにくませ給ふともゆふさり
はとく参らむとおほせられていそき出させ給
へはひめきみゆふへよりふし給へる御すかたのいま
たねなをり給はてなきふし給へるをみ給ひて
いとゝかなしくそおほしけるにとかくかたらひ
ふしてなくよりほかの事そなき中将殿のたまひ
けるはゆふさりゆきてかへりなはおやのおほせらる
るともゆくましきなりゆふさりはかりおもひねん
してまち給へきひしくちゝのおほせられはやまの
おくにもとちこもりいなりむすびてうき世の中
はすこすともその御かたをははなるまししゝうを
といもゆふさりはかりそあすよりはへちの事あ
るまし心やすくおもひ給へとそおほせられけ
りさるほとにちゝはゝの給ふやう中将のありさ
まをみるにゆふさりよりほかはよもゆかしなか
〳〵かよひそめすはよかりなん大将のためもは
ちかましく伝へるへしいさやだしぬき大将のか
たにおかんとおおせありてともの人にもの給ふ
やう中将をはおくりつけてこしくるまとものも
のともはみなかへれこのふみうちへ参らせよとてい
たされたりそのふみにはけふよりして中将をは
それにおとゝめ候てとしをもそなたにてこさせ
られ候へとそかくれたる中将それをはゆめにもし
らすおはしけり大将のもとにはきたのかたひめ
きみめのとよりあひておほせありけるは中将殿
のありさまをみるにこよひよりほかよもおはせし
はちかましくおほしけれはいかゝせんとありし
かは御めのと申けるはむかしもある事なれはこ
そまつりことゝゆふ事をはしさふらへあはれまつ
りて見候はやと申けれはきたの御かたよきやう
にはからへとそおほせありけるその時やかて物しり
をめしておもふ事ともしつかにかたりきかせけれは
物しりやすき御事なりとてまつり事をそした
りけるさるほとにとりもなきけれは中将殿ゆふ
さりはとく参らんとて大ゆかに出て人やあるく
るまよせよとの給へは六ゐのしん参りて申やう
これに御とゝまり候て御としをもこし給へと
の仰にて候ほとにこしくるまざうしきみなかへり
候てたれも候はすと申せは中将殿なみたをは
ら〳〵となかし給ひたしぬかれぬとおもへはむね
のうちくるしく心うくてよのあへるまて大ゆかに
たちあかし給へりさるほとに物しりにまつられて
心ほれ〳〵として身にたましひもそはぬやうに
なり給ふさてもさとのかたこひしくてさすかに
なきくらしおはしけるふみをかゝんとしたまふ
にも何となきとのみかゝれてひきやふりすてな
むとしてふみたにもやり給はすもう〳〵として
心わひしく人の物いふも見候も入すなかめ
かちにてありけるかひめきみたにもちかつき給へは
身もかゝるすゝしくいさむ心そし給ひけるさるほ
とに御さとにはその夜もすきぬまたけふもおと
つれもなくしておもひなくさむかたもなしいまた
をさなきおといか人にもひめきみをみたてまつ
りあはれたのみなき中将の心かなといふもはつか
しくしゝうかおもはん所も心うしつゆしもとも
きしうせたくは侍れとも心にまかせぬうき世
のならひなれはさらぬやうにもてなしみやつか
ひけりまたひめきみしゝうおといるみる時はおも
はぬやうにたはふれかれりみぬ時はふしまろひ
もたへこかれかなしみていかなる人なれはいつはり
のみちきりおき給ひけんいかなるわれなれはへた
つる心なるらんとにかくにおもひつゝけてもつき
せぬものはなみたなりかなしみのあまりにおもひ
つゝけ給ふ
いつはりをきみかちきりしことの葉に
かゝるなみたのつゆそかなしき
とうちなかめけふもむなしくくれぬれともな
くさむかたもなしまつらもとこもさひしくて
きぬひきかつきうちふし給ひてかくなむ
いさゝかもたちはなれしとちきりしに
いくよになりぬそてのかたしき
かやうにうちなかめちからおよはぬ事なれは思ひ
しのひてすこし給ひぬさ大しんときたの御かた
仰らるゝやう中将かこれにをきたる物はみめよく
心はへもなつてならすとき〳〵にゆきかたもなく
してあはれこの人をすかしてわかひめきみの女御
まうての時はわかき女はうたちのあまた入にと
の給へはきたのかたそのきしかるへしさらはおとひ
をつかひにたつへしとておといをめしよせて中
将はこれへはきたるましきものなり御つれ〳〵に
おはしまさは中将かめのとのかすかじもとへわた
らせ給へと申へきよしを申せはひめきみしさい
あるましきよし御返事し給ふおといかきかぬ
まにしたうに仰られけるはさても中将殿はさば
かり御ちきりなりしにあはれたのみなき人の心
かなふみのひとつも給はらすことつてたにもなし
あまつさへおそく出るとおほしてなさけなく仰
らるゝそはつかしけれいましはらくこれにあら
ははちかましき事も有なんはちをみぬさき
にいつくへもいなんとおもふなりかなしきかなや
ゆきかたもなき身なりとて心のやみにまよふ
かなしさよとてなきむせひ給へはしゝうなみた
にくれて御返事もせさりけりひめきみは思ふ
もくるしわれをくしてとく出よいかなるふち河
のそこのみへつとなりなんともたへこかれたまへは
しゝうつく〳〵とおもふにあんし出したる事あり
ちゝかたのおはにたんごのないしとてたいりへ参る
人あり申さはやとてしのひてふみをかきてつか
はすおもはぬほかにさ大しん殿御うちに候か申あ
はせたき事あり参らんとそかゝれたるやかて御
返事ありみ給へはゆふさりしのひやかに御くるま
参らせんとそかゝれたりしゝうひめきみよろこひ
給ひてみすかうしあけてちりはきのこひ御
ふすまをたゝみてさをにかけまくらのひとつになる
さへなけき給ひしにまくらもいまはとりひそ
めひとつもなく中将殿つねにみたまひしさう
しはこを御らんするに
そのおもかけ
見へ
たまはねは
なく〳〵
かくそ
おもひ
つゝけ
給ふ
【挿画】
ますかゝみなれにしかけはしのふとも
またもこのよにいつか見るへき
さてはよりそふまきばしらそむつましきゆか
りをもけふよりほかにいつかみんとおもふこゝろも
きのまとひとりひそめたるとこのよゑにふしま
ろひけふをなこりのなみたなれはたきとも河共
なかれつくしさるほとに中将の手なれ給ひし
ことをおもひ出て御ひはひきよせあそはし給へは
しゝうもことをかきならしひめきみはこんをり
き給へはしゝうはほうきやうをひめもすにあそ
ひたはふれ給へはきく人身のけよたちておもし
ろく御つれ〳〵さにあそはすよとさらぬよそのた
もとまてもつゆをくはかりにおほしける日もすて
にくれぬれは夜ふけ人しつまりて御むかひのく
るま参りけれはひめきみいまをかきりとおほし
めしおといをめされて仰ありけるはいのちをか
きりにいつまても中将殿入せ給はんほとはこれ
にさふらはんとおもひしにおそくいつるとおほ
すやらん御つかいの有しほとにやかてそのときも
出たく侍りしをさすかにおもひすてかたくてい
ましては出やうすされともかくて有へきならね
はいとま申ていつくへ侍るへしなこりをしさこ
そなか〳〵ことはにもいひつくしかたけれとて御なみ
たをなかし給ひて御くるまにめしけれはおとい御
たもとにとりつきてこはいかなる御事そや火のなか
みつのそこ野のすへ山のおくまてもはなれ参らせ
ましくしてわたらせ給へこれにのこりても御こひ
しさにいのちもなからふへしともおほらすとな
きかなしみけれはひめきみの給ふやうわれはあし
にまかせて出るほとにゆきかたもおほらすいつく
なりともをちつかん所よりかならすをとつれす
へしと仰られてやかて出給ひけりおといはの
こりてにはにふしまろひなきかなしみけれとも
御くるまはとをさかるさるほとにないしかもとへ御く
るまよせてまつしゝうはおりてうちへ入ないしに
むかひて申やう三てうとののひめきみのこれへ
わたらせ給ひて候かしのはんと仰らるゝはいかゝせん
と申けれはそのときないしはしり出くるまよ
せにさしよりみちのほとの御心くるしさよはやいら
せ給へとてくるまのうちより御手をとり入参らせ
いそきにしのたいをしつらひおきたてまつるよるも
ひるもはなれす卅日はかりそいたてまつりてなく
さめ参らせけりひめきみうれしくおほしめし
けるさてそのゝちないしたいりへ参りけれはみか
と御らんしてなとや此ほと見らぬそいかなる人に
にいまくらし侍るそわか〳〵しくそおほゆれとた
はふれさせ給へはないしうちゑみ見めよき人に
そひてはなれかたくさふらひてこのほとはまいり
ゑすと申けれはたれそやみめよき人とはとは
せ給へはとかく申まきらはして人しれぬまに申
やう三でうのきんざねのちうなこんのひめきみ御わ
すれ候やらん七の御としみめうつくしく候とて女御
のせんしかうふらせ給ひておはせしか十のとし
ふたりのおやたかいてのちめのとのはこくみにて三
条にすませ給ひ候つるかあまりの御つれ〳〵さに
このほと卅日あまりわらはかかたにおき参らせて
此ほとは参りさふらはすと申せはそのとき我
にみせぬほとならはこれへないしはかなふましと
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申へきはしちかのわさにはかなふましとそ申け
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けれはないしさとにかへりしゝうにかくとかたれ
はしゝう申やういかなる女御きさきもわかひめ君
にはいかてかまし給ふへしみかと御らんしたらん
にめてさせ給はさるへきいかゝはしてたいりへす
すめ参らせんとしたくしけるしゝうひめきみの御
まへに参りて申けるはふつみやうの御ちやうもん
に参らせ給へかしちやうもんしつれははゝにあふ
と申とゆかしけに申けれはひめきみはいと心
ならてのちやうもんはなか〳〵つみのふかきなる
われは参らすともしゝうは参れかしとの給へは
しゝう申けるはふつみやうと申は三世のしよふつの
三しやうおうこをまつり給へは一とやうもんし
つれはらいせにてはかならすおやにあふと申きみ
も御ちやうもん候はゝ二しんにあひ参らせ給ふへ
しわらはも御とも申さはともにふつたうをも
なさんとこそおもひ候へまつ御心え候へかしこんし
やうにもこしやうにもおやにあふ事はすくれた
るくとくにて候にいかなれはわらはかいきなから
はゝにわかれて御身にそひ参らせてたちまち
にこんしやうのやみにまよひ候そかしふつみやう
を御ちやうもん候はゝきみもちゝはゝにあひ参ら
せ給ふへしわらはもこしやうのおやにそはんこと
ゐかはしく候へはこそ申せ御心かたくわたらせ給ふ
物かなと申けれはひめきみ心のうちにおほすやう
けにことはりかるしにたるおやにもあはしやとね
かふにいきたるおやにわかれてわれにそふほと
の心さしいかてかしらさらんことはりをしらぬ物をは
ちくしやうとこそいふなれしゝうか心さしをはいかて
かたかふへきさらはちやうもんも人ためならすわれ
も参らんとそ仰られけるそのときおりをへてた
んごのないし申やうしゝうとわらはとたちかくし
参らせてわらはかつほねへ入参らせ御ちやうもんの
頃はやかて御くるまにめし御かへりあらんにさら
にくるしかるまし御参り候はゝめてたかるへしと
てしゝうもないしもよろこひけりその日にもなり
けれはたいりへ参り給ひぬ御くるまよせてしゝ
うないしあひそいてつほねへ入参らせけるさてな
いしせいりやうてんへ参り御かとへかくと申あくれ
はいつ〳〵にそととはせ給へはわらはかつほねに
わたらせ給ふと申けれはみかとうちゑませ給ひて
こよいゆきてみんとそおほせありけるないし申
けるはとうざいもわきまへさせ給はぬをいかゝこ
よひはいとおしやと申せは
みかとけにもと
おほしめして
その夜は
いらせ給は
さりけり
【挿画】
さてもふつみやうはしつまりけれは大しんくきや
うてん上人参りあひ給ひけり中にも中将との
はとうにてわたらせ給へはことおこなひをそせら
れけるくきやうかんたちめことわさにつきてま
はりけれはひめきみこれをみ給ひておもひいて
たるけしきもなくほこりたはふれ給へはうらめし
さかきりなしいとゝつゝましくてしのひのなみ
たせきあへすわするゝ事はなけれともかくまの
あたりにきえ入心ちそし給ひけるさてふつみや
うはてぬれはくきやうてん上人をそゑふしと
てつほね〳〵のはんにとまらせ給ふとうの中将は
おりふしないしかちほねのはんにてそのつほねにと
まり給ふしゝうひめきみみすをへたてまくらを
あはせにね給ふありあけの月かけ山のはにかた
ふくを夜もすからふるしらゆきふけゆくまゝに
さへまさり心すみておもしろけれは中将こしよ
りやうてうぬき出しはんしきにねとりらうゑ
いをそせられけるあか月りやうわうのそのに入
はゆきくんさんにみつよるゆふこうかろうにのほ
れは月せんりにあきらかなりと三へんはかり
ふき給ひてやさしくうらみよゑなるせうを品
〳〵あそはされけるくものうへまてすみのほり
おもしろくそおほしけるみかと夜もすからきこし
めされてことにふれおりにしたかへはおもしろく
おほしめされて夜もほの〳〵の時せいりやうてん
のくみれのこひさしのもとにみかとたゝせ給ひて
さねあきらとめさるれはみすのきはをおきわ
かれてせいりやうてんに参るひめきみの心のうち
のかなしさたとへんかたそなかりけるさらぬたに
ふゆの夜のあけほのゝそらはわりなきに夜も
すからゆきふりつみてみなしろたへにみゆるに
とうの中将ねありみ給へるかほはせもみちのよ
そほひうつくしうしろくきよけなるはたへのゆき
にまかへてうつくしく見しけれはみかと御らんし
ておほすやういかにないしかつほねの人うつくしく
ともさねあきらかにほひほとはよもあらしそれ
につけてもせう殿ひめきみゆかしさよとおほし
てきこゑし事はいつやらんととはせ給へは中将
そてかさあはせてあさて廿七日に参るとこそう
け給はり候へと申されけれはおさなきくらん
とめしよせてゆき山つかせよとそ仰けるくらん
と十四五人めしよせてゆき山つき侍へりさて
そのうち御けんめしよせてさねあきらにもたせ
てないしかつほねへ入給ひひゆふのうへより御
らんしけれはこうばいのにほひせにくれないの
はかまめしなからよりふし給へり中将殿とみす
をへたてゝまくらあはせにね給ひたりけれはみ
すのうちに人ありとしられしとよもすからつ
つみ給ひてしのひのなみたにまくらはいつみ
となきぬれて中将殿たちのき給はく夜の中
にくるまにのりてかへらんとこそないしかちぎり
しにはやよのあけくるとしゝうとくときたまふ
ところに御いのひやうふにそよとさはりたりけれ
は夜のあけぬるはいかにないしかとおほせられ
けれはみかとうちゑませ給ひてないし参ると
て御そはへより給ふ
みすの
うちより
そとの
大ゆかには
とうの
中将
御けん
もちて
ゐ給へり
【挿画】
ひめきみ心うくおほしめしてひきかつきてなく
よりほかの事はなしみかとよりそはせ給ひて
なにをなけき給うふそも〳〵したのうちへ入ぬる人
をはさうなくいたす事はなしいまはこれに
わたらせ給ふへき人そとやう〳〵になくさめ
給へともひとことはの返しもし給はすたゝなく
よりほかの事そなしひるほとまてやう〳〵に
したひ給へともとかくの返事もし給はすひるの
かれいの時にもなりぬれはせいりやうてんへいら
せ給ひてないしをめしてわか身まてもよにい
ををしないしをめされてよく〳〵いたはり参
らせて御物参らせよと心ぐるしくおほゆれゆ
たけのかせにしなはぬふせいしてまつにしたかは
せ給ひぬうたてさよいつとなくむつけさせ給ふい
たはしさよかくのみや有へきとて御なみたくみ
給へはないし見参らせてかたしけなくそおほゆる
みかとはせいりやうてんへいらせ給ひてこのひめき
みをあすしよきやうてんへわたし参らせんとおもふ
に御身まちかき女はうはなきかめしてたてまつ
れとおほせあれはないしかへりてしたうにかくと
かたれはしゝうよろこひてたいりへ参りたるくるま
のたよりにのりて三てう殿へそゆきけるさてみか
とさいしやうをめして仰られけるはまるがはから
ひとしてあすのほとに女御をしよきやうてんへわ
たしたてまつらんによき女はう廿人御しやうそく
したて参らせよとおほせくたされけるさてしゝう
はまたよをこめてあかつき三てう殿へくるまやり
入けれは三条殿にひめきみしゝうはうしなひぬ
あさゆふなきふして有けるかあか月めをさまし
てゆめ物かたりをしけるに女はうにくさふかき
所へくるまくおほゆれとうの中将のいもうとのいか
にうつくしくきこゆるとも此人にはまさしくと
おほつかなくそおほゆるとおほせられけるさてな
いしつほねに参りて申やう此卅よ日参りはて
はあたりてししやうともとりあてられていとなみ
たひまなさにいまゝておそく参りて候たしいまは
日のうちにいかゞし侍らんゆふさり夜に入てこ
そ御くるまもよせ候はめそも〳〵たれか申てこれ
へうちの御入候やらんあさましの人のくちのさがな
さよと申せはひめきみけにもふしきの事かなた
れ申てかわれ参らせつらんかくむつからむには中
将にきかれなんいかゝせんかくはしちかの有さまさ
きの世にいかなるつみをつくりてかゝる身になるや
らんとせきもやらすなき給ふさてみかとはかれ
いの事もすきぬれはやかていらせ給ひて御そひき
きてなれかほにれいのちからつよのひめきみとち
からくらへせんとてすをきにたき給へはこはなに
事そやおもはぬほかの事なれはいなせのいらへも
し給はすたゝうちくれなき給へはみかと御そは
へひき参らせて何とてさえたてまつるみかとれい
けいてんへ御入あつて女御の御そはによりふして
つく〳〵と御まほりありて三人のきさき四人の女
御たちは御まさりなりけれこれこそ一にて御わ
たりあるへけれともないしかつほねの人を御らん
しこれも御心つきにあらさりけれはこまやかな
る御事もなくしてまたやかてないしかつほねへ御
入ありこれもやかてしよきやうてんへいれ参らせん
とておの〳〵ひしめきあへりさるほとにやう〳〵
にないしかつほねのひめきみの女御まうての事を
そおほせつけられけるれいけいてんにおはしま
しけれともいつしかなひしかつほねのこひしくて
いまこれにとゝまらすともなかきちきりこそめて
たけれとてついたゝせ給ひてさねあきらを御と
もにないしかつほねへいらせ給ふひめきみれいのなく
よりほかのことそなきこよひはこれにとゝまらせ給
ひてなくさめちかつかせ給ふあまのたくもゆふけ
ふりにうらかせのなひかぬふせひにておはしませ
はみかとよに心くるしくそおほしけるやう〳〵と
なくさめ参らせておはしませともたゝなくより
ほかの事そなくなをものみむつかるそいま〳〵
しく候とて御いのそてにてひたひのかみのたへま
よりなみたのつゆのこほれるをおしのこはせ給
へはしゝうないしあらかた思けるの御事やとそお
もひけるみかとやう〳〵になくさめかねてあな心
くるしやさのみなむつゝりそかし八のはかまのつい
てにきんさねもわれにゑさせんとちきりしか
おやたかひしたれはいまゝてちく〳〵伝へりちき
きりはくちせぬ事なれはめくりあひぬるうれ
しさよ何しにかくはむつかるそ有ましきこと
のやうにとさま〳〵になくさめ給ひてせいりやう
てんへ御かへりありてないしをめして此人よく〳〵
なくさめ参らせよとよに心くるしけにおほせく
たされけりさるほとに廿七日にもなり侍るけふは
女御まうてとてさゝめきてくきやうてん上人まい
りつとい給ひけり此女御きこゆるひしんにてま
しませはしよきやうてんにすませ奉るへきに
ておはしませともないしかつほねの人おはするほ
とにてんもちかけれはこれをしよきやうてんに
のほせたてまつるへきにさたまりぬ中将のいもう
とをはれいけいてんへそすをやり入けれはいかに
たれ人そとおもふにしゝうくるまより出申やう
ひめきみこそおもはぬほかのたよりにて女御に
参らせ給へ
みかとより
御めのとゝ
おほせ候
いさゝせ給へと
申けれは
【挿画】
はゝはうれしきか中にもおつるなみたをおし
とゝめてひめきみこそ御心つよくわたらせ給ふ共
それにはなといまゝておとつれし給はぬそお
やのおもふほとなかりけりとてなきけれはしゝう
申やうなに事もみなかゝるめてたき御事とも
にならせ給ふはしめにて候にうちおかせ給へとて
さま〳〵のしやうそくともとりいたしてはくせ
うならんにもうちきせしたしき人々めしあつめ
て女はう十よ人ひきつし大りへそ参りける御
めのとひめきみの御まへに参りけれはめつらし
くそおほしけりきよみつのことそなきさるほとに
やかてその日しよきやうてんへわたし参らする
くきやうてん上人こゝかしこにたゝすみていかな
る人のひめきみときゝ給ふととうの中将もろと
もにさゝやきあひけれともしりたる人もなしさ
てみかと御としこすよはおやのおもふ所あり
とてれいけいてんへ入せ給ひけれともしよきやう
てんにて御とのこもり有けるさてあか月せいりや
うてんへいらせ給ふとてないしをめしてあまり
に此ひめきみのむつけさせ給ひてしほりもあへ
給はす人のためにあらす申なくさめ参らせて
遣ふあすはかりなく事を申なため参らせよと
おほせかうふりしゝうにかくと申せはしゝうも
せうなこんもないしに遣うくんせられていかに
かくいま〳〵しくむつからせ給ひさふらふそにより
はうの身には女御きさきのくわほうこそねかふ
事にて候へおやのたちそいてもてなしかくつ
きたてまつる女御きさきもみかといらせ給えねは
さひしくてのみおはします御身はみなしこに
てわたら給へともかくかたしけなくおほしいら
せ給ひ侍るなり御身ひとりのめてたき御事に
ならせ給ふのみならすかすにもあらぬわれ〳〵
まてももゝしきのうちにあをかれてかたをなら
ふる人もなしきみも天しのきみとならせ給ひ
てはんみんのまつりことをきはめさせ給ひ何事に
つきてもとほしき事もわたらせ給はぬに何
の御ふそくありてかむつからせ給ふそと申けれは
ひめきみなくをよきことゝはおもはねともなに
とやらんむねのうちかくるしくてつゝむにたへ
ぬなみたのおそふるそてにあまるをいかゝせんと
そおほせられけるしゝうまた申やう御心のうち
もみなしり参らせてさふらふ中将殿の御ことも
さのみおほしめすへからすなに事もせんせの
御ちきりなりきよみつにてとかふの御事さふ
らひしにもかゝるめてたき御さいはいになら
せ給ふへき御事そかしわれおもふ人をこそおほ
しめすへけれいかにもきみの御こゝろにたかひ参
らせ給はん御ことはおそれある御事にてこそ候
へとかきくとき申けれはそのときひめきみさら
はいまはなかでこそあらめとおほせけれはいよ
〳〵よろこひあへりさて御けしやうはなやかに
めされはれやかにそおはしけるとうの中将は
こうはいのにほひ十二に大もんのさしぬきに御な
をしきら〳〵しくぜんくうのさふらひみずい
じんさつしきかしかひにいたるまてきら〳〵しく
そおほし侍る大しんにひとり子さ大しやうにはは
なむこれいけいてんには世のきこゑにもかたを
ならふる人そなきわか身となれはことおこ
なひもきら〳〵しくさか〳〵しくおはすれは
みな人なをしのそてをかきあはせおそれぬ人
そなかりけるしよきやうてんのみすのまへをとを
り給へはしゝうさすかにゆかしくてたきものかき
くんして中将のとをおりたまふたひことにけふたき
ほとに何をきかせられけるちうしやうのかく
とはしらすしてときの女御
女はうたち
【裏表紙見返し】
【裏表紙】
【丸ラベル「185」】
【角ラベル「SMITH-LESOUEF JAP 185」】
【色紙白紙・文字なし】
【花鳥画図・文字なし】
【花鳥画図・文字なし】
【花鳥画図・文字なし】
【花鳥画図・文字なし】
【花鳥画図・文字なし】
【花鳥画図・文字なし】
【禽鳥画図・文字なし】
【花鳥画図・文字なし】
【花鳥画図・文字なし】
【花鳥画図・文字なし】
【禽鳥画図・文字なし】
【花鳥画図・文字なし】
【禽鳥画図・文字なし】
【飛鳥画図・文字なし】
【禽鳥画図・文字なし】
【禽鳥画図・文字なし】
【禽鳥画図・文字なし】
【禽鳥画図・文字なし】
【禽鳥画図・文字なし】
【禽鳥画図・文字なし】
【色紙白紙・文字なし】
【色紙白紙・文字なし】
【花鳥画図・文字なし】
【禽鳥画図・文字なし】
【花鳥画図・文字なし】
【花鳥画図・文字なし】
【花鳥画図・文字なし】
【花鳥画図・文字なし】
【竹鳥画図・文字なし】
【花鳥画図・文字なし】
【花鳥画図・文字なし】
【花鳥画図・文字なし】
【花鳥画図・文字なし】
【花鳥画図・文字なし】
【花鳥画図・文字なし】
【松鳥画図・文字なし】
【禽鳥画図・文字なし】
【花鳥画図・文字なし】
【花鳥画図・文字なし】
【花鳥画図・文字なし】
【禽鳥画図・文字なし】
【色紙白紙・文字なし】
【色紙・題箋・文字なし】
【冊子を閉じた状態での正面側または背中側からの写真】
【冊子の上側まはた下側からの写真】
【冊子を閉じた状態での正面側または背中側からの写真】
【冊子の上側まはた下側からの写真】
1– Garrulax - ?【ガビチョウ(画眉鳥)属鳥類】
2- Zostera Japonica. 【コアマモ(小甘藻)ヵ】
3- Microcelis Acuaurutis. 【不詳】
4- Garrulus Japonicus. 【カケス属鳥類】
5- Gecinus 【対】Awakera. 【不詳】
6-
7- Heterornis 【Heterosis(雑種)ヵ】 Pyrrogenis.【不詳】
8-
9-
10-Parus minor. 【シジュウカラ】
11-
12-Emberiza Elegans. 【ミヤマホオジロ】
13-
14-Coccothraustes Melanura. 【シメ属鳥類】
15-
16- Turdus Cardis. 【クロツグミ】
17-
18- Loxia curvirostra. 【イスカ】
19- Accentor 【イワヒバリ属】 Rubidus.
20- Turdus Fuseater. 【ツグミ属鳥類名ヵ】
21-
22-
23- Hypothymis Phanomelanar. 【カササギヒタキ科鳥類名ヵ】
24-
25- Sturnus Cineraceus. 【ムクドリ】
26- Asupelis phoenicurus. 【ジュウビタキ属鳥類名ヵ】
27- Fringilla Montifringilla. 【アトリ】
28- Chrysotnitris Sinus. (?)
29- Parus Varius. 【ヤマガラ】
30- Chloropira Kawariba y. (?)
31-
32-
33-
34- Alauda Japonica. 【ヒバリ】
35- Calliope Kamtebatkeusis. (?)
36- Phyllopueuste Coronatus. (?)
37-
38- Calumaherpe (?) orirntalis.
【この資料は重複していてすでに翻刻済】
さ大じん殿の御子にきんたち二人おはします
一人はひめきみ世にすくれておはしましけれ
はうちへ参らせんとおほしめしけりいてたゝせ
給ふところににはかにかせの心ち出きさせ給ふ
さとにていのらんよりとてきよみつにそ御こ
もりありけるさて二三日にもなりけれはおほ
つかなくおほしめして御あにの中将殿をきよ
みつへやりまいらせ給ひけるもみちようのかり
きぬにこむらさきのさしぬき御けしやうあ
てやかにあらはしてぜんくさふらひめしくして
きよみつのさいもんへいらせたまひけれはまいり
けかうの人々めをおとろかしてみたてまつりける
さるほとに女御の御かせの心ちおほつかなけれは
とくとくいそくへきよしさふらひともにおほせ
けれはおのおのいそきのほるほとにきよみつの
たうのへんをさざめきてのほる
ところに
にはかに
そら
かきくもりはしたなふ
しくれ
ふりけり
【表紙 文字無し】
【表紙裏(見返し) 資料整理番号のラベル】
JAPONAIS
333
【文字無し】
【白紙 文字無し】
【白紙 文字無し】
【上部に数字】
1081【横線を引いて消している】
333
R.B
1843【この二行を大ガッコで括り横に】
3296 bis
【白紙 文字無し】
蕙齊先生筆
《割書:草|花》略画式
【左端に】
草花略画式
いたゝきのうへをほうらいの山になしたなうらにこかねの
大殿をつくるわさもこそあれ春のあした萩すゝきの
にほへるを見秋のゆふへさくら山ふきのめてたくさき
たらんを見んことはいかなるたからのわうなりとも
なしやはうへき【放僻】いてやゑにかけるは草にまれ木にまれ
あらき風つゆしもにあてしといとはるゝこともなし
夏のよもみちのかけにすゝみ冬のつとめてはちすの
はなのひらくるを見るさまをゑかゝんともおのか心の
まゝなるをやたとへは花をめて月をあはれまんにも
ゑをこそかゝまほしけれされはむかし人も手ならひの
かたへにはまつはこの道をこそまなはれしかその本と
すへきはこのふみにしくやはあらんしかもこのふみのこと
風をもゑかゝすして風のけはひいちしるくつゆをもあらは
には見せて枝のおもけなるさま花のさきこほれたるいろとり
くちきかき【朽木書き=焼筆で絵をかくこと】のすみをにほはせたるなとことそき【ことそぎ=簡略にする】たるものから
すへてたゝそのものと見ゆるにはかのもろこしふりなる十日と
いふになかれひとすちをうつしいつ五日といふにいしひとつを
ゑかきむつののりをそなへとをあまりふたつのいむ
ことをまもるともこのふみの右にいつへきことかたく
なんあるへきかくいへるは文化とゝせといふとしの
しはすこのふみのあるしのともなる平由豆流しるす
福寿草【艸】
なたねの花
しやくやく
もくふよう
もくらん
ゆきの下
ふしはかま
菊
【前コマの続きか 菊の絵 文字無し】
夕かほ
きちかう【桔梗のこと】
をみなへし
ほたん
せにあふひ
おしろい
なてしこ
ひあふき
ゆり
あさかほ
かきつはた
やまふき
水なき
かうほね
藤
あやめ
さんひち【さんしち(三七)草】
まんしゆさけ
かうさい
ふとゐ
よめな
すゝき
あちさひ
しとめ
のうせんかつら
かふそ
をくるま草
さくら草【艸】
すみれ
つくし
けし花
さきこけ【さぎごけ】
ひしん草【艸 「美人草」=ひなげしの異名】
さくろ
とりかふと
露
草【艸】
すまふとり草【艸】
はす
ひるかほ
せんおうけ【仙翁花】
姫ゆり
小菊
けし
とらのを
つゝし【躑躅】
萩
しをん
花さうふ
ひきり【緋桐】
ふさうけ【扶桑花。仏桑花とも。】
はまきく
すいせん
【右上から時計まわりに】
うこん
ふくしゆ草【艸】
ゆり
あさかほ
きゝやう
【右から縦に】
菊
すいせん
かきつはた
はす
をみなへし
【右から時計回りに】
かうほね
やまふき
ふよう
藤
【右から時計まわりに】
しうかいたう
夕かほ
けし
あちさひ
【右から時計回りに】
せん翁
たんほゝ
けゝ花【げげばな=「げんげ(れんげ)の古名】
桜草【艸】
すみれ
【右から時計回りに】
すゝき
はき
ゆきの下
しやくやく
【右の行から縦に】
らん
けいとう
なてしこ
たちあふひ
蕙齊筆
【印】紹真
文化十年酉十月
文政八年酉六月改発
鶴屋喜右衛門
東都書林
同 金 助
浪速書林 河内屋木兵衛
【白紙】
【白紙】
【白紙】
【白紙】
【白紙】
【見返し 文字無し】
【裏表紙の裏(見返し) 文字無し】
【裏表紙 文字無し】
【背表紙】
SO
KWA
ROK
KWA
SIKI
【資料整理番号のラベル】
(JA)PONA(IS)
333
【冊子の天或は地から撮った写真】
【冊子の小口からの写真】
【冊子の天或は地からの写真】
日清戰闘畫報 第一篇
Smith-Lesouëf japonais 237 (1)
【白紙】
【白紙】
○詔勅
天佑ヲ保全シ萬世一系ノ皇祚ヲ踐メル大日本帝國
皇帝ハ忠實勇武ナル汝有衆ニ示ス
朕茲ニ淸國ニ對シテ戰ヲ宣ス朕カ百僚有司ハ宜ク
朕カ意ヲ體シ陸上ニ海面ニ淸國ニ對シテ交戰ノ事
ニ從ヒ以テ國家ノ目的ヲ逹スルニ努力スヘシ苟モ
國際法ニ戻ラサル限リ各〻權能ニ應シテ一切ノ手段
ヲ盡スニ於テ必ス遺漏ナカラムコトヲ期セヨ
惟フニ朕カ卽位以來茲ニ二十有餘年文明ノ化ヲ平
和ノ治ニ求メ事ヲ外國ニ構フルノ極メテ不可ナル
ヲ信シ有司ヲシテ常ニ友邦ノ誼ヲ篤クスルニ努力
セシメ幸ニ列國ノ交際ハ年ヲ逐フテ親密ヲ加フ何
ソ料ラム淸國ノ朝鮮事件ニ於ケル我ニ對シテ著著
鄰交ニ戻リ信義ヲ失スルノ擧ニ出テムトハ
朝鮮ハ帝國カ其ノ始ニ啓誘シテ列國ノ伍伴ニ就カ
シメタル獨立ノ一國タリ而シテ淸國ハ毎ニ自ラ朝
鮮ヲ以テ屬邦ト稱シ陰ニ陽ニ其ノ內政ニ干渉シ其
ノ內亂アルニ於テ口ヲ屬邦ノ拯難ニ籍キ兵ヲ朝鮮
ニ出シタリ朕ハ明治十五年ノ條約ニ依リ兵ヲ出シ
テ變ニ備ヘシメ更ニ朝鮮ヲシテ禍乱ヲ永遠ニ免レ
治安ヲ將來ニ保タシメ以テ東洋全局ノ平和ヲ維持
セムト欲シ先ツ淸國ニ告クルニ協同事ニ從ハムコ
トヲ以テシタルニ淸國ハ翻テ種々ノ辭抦ヲ設ケ之
ヲ拒ミタリ帝國ハ是ニ於テ朝鮮ニ勸ムルニ其ノ秕
政ヲ釐革シ內ハ治安ノ基ヲ堅クシ外ハ獨立國ノ權
義ヲ全クセムコトヲ以テシタルニ朝鮮ハ既ニ之ヲ
肯諾シタルモ淸國ハ終始陰ニ居テ百方其ノ目的ヲ
妨碍シ剰ヘ辭ヲ左右ニ托シ時機ヲ緩ニシ以テ其ノ
水陸ノ兵備ヲ整ヘ一旦成ルヲ告クルヤ直ニ其ノ力
ヲ以テ其ノ欲望ヲ逹セムトシ更ニ大兵ヲ韓土ニ派
シ我艦ヲ韓海ニ要撃シ殆ト亡狀ヲ極メタリ則チ淸
國ノ計圖タル明ニ朝鮮國治安ノ責ヲシテ歸スル所
アラサラシメ帝國カ率先シテ之ヲ諸獨立國ノ列ニ
伍セシメタル朝鮮ノ地位ハ之ヲ表示スルノ條約ト
共ニ之ヲ蒙晦ニ付シ以テ帝國ノ權利利益ヲ損傷シ
以テ東洋ノ平和ヲシテ永ク擔保ナカラシムルニ存
スルヤ疑フヘカラス熟〻其ノ爲ス所ニ就テ深ク其ノ
謀計ノ存スル所ヲ揣ルニ實ニ始メヨリ平和ヲ犠牲
トシテ其ノ非望ヲ遂ケムトスルモノト謂ハサルヘ
カラス事既ニ茲ニ至ル朕平和ト相終始シテ以テ帝
國ノ光榮ヲ中外ニ宣揚スルニ專ナリト雖亦公ニ戰
ヲ宣セサルヲ得サルナリ汝有衆ノ忠實勇武ニ倚頼
シ速ニ平和ヲ永遠ニ克復シ以テ帝國ノ光榮ヲ全ク
セムコトヲ期ス
御名 御璽
明治二十七年八月一日
內閣總理大臣 伯爵 伊藤 博文
遞 信 大臣 伯爵 黑田 淸隆
海 軍 大臣 伯爵 西郷 從道
內 務 大臣 伯爵 井上 馨
陸 軍 大臣 伯爵 大山 巖
農商務 大臣 子爵 榎本 武揚
外 務 大臣 陸奥 宗光
大 蔵 大臣 渡邉 國武
文 部 大臣 井上 毅
司 法 大臣 芳川 顯正
自序
古事を描冩するは、猶雲霞を隔て、
艶花を望むに均しく、未だ嘗て隔鞾
掻痒の感ならむはあらす、前古用
ゆる處の、衣冠什器の類、物換り星移
るに従ひ、変遷跡を遺すことなし、若し
幸に當年の状況を模冩したるものあら
は後世大に資益するところあるへし、然
れとも数百年の後に至ては、いかに精
攻研究するも、尚差異なきこと能はす、
然らは即ち、謬り多き古寺を冩して、
矻〻以て労せむよりは、寧ろ其自睫の間に
縦横せる、今事を描くの容易にして、而も
真を得るの宜きには如かざる也、
信實の畫師草紙、覚猷の福當艸子
又平一蝶、長春輩の、浮世絵の今人に
尊重せらるゝものは、豈啻其筆墨の
秀抜なるのみならむや、蓋し衣冠を
知り、風俗を察するに朙らかなるを以てな
り、所謂六籍と功を同ふするものならむは
あらす、
余曩に國民新聞通信員として、鶏
林に航し、京城之変、成歓の戦挙、親しく
これを目撃することを得たり、帰来、友
人の当時の状況を尋問する者多し、一〻
これに応答するの煩なるに堪へす、且此
等の事は、世人皆知らむと欲する所のも
のなれは、以謂らく、今もし絵画にして、
其真を寫したるものを以て、江湖の清覧に
供せは、庶幾くは人皆其一班を知り、思ひ半
に過るものあらむかと、遂に砲烟弾雨の
間に、写真し来りたる者を、更に浄寫
して、梓に上すことゝせり、然れとも拙陋麤
笨の筆、画虎類狗の譏を免る能はす
といへとも、又以て後世史を修むる人の一
助たるもの有らは大幸なり、
稿を草するの初め、偶ま役務あり、専ら
これか浄寫に従事する能はす、而し
て、書肆主人の督促すること甚急な
れは、舎弟金僊をして、其二三を画か
しむ、龍山野営、大鳥公使入闕、戦利品
運搬、日本兵衛王城諸門、及ひ龍山凱
旋の諸図、乃はち是なり、
朙治甲午小春
米齋田朙識
朝鮮全羅道に於て
東學党蜂起し
招討使鎮撫に向ふ
韓廷遂に援を清國に請ふ
李鴻章其麾下の精兵数千
を送り牙山に上陸せしむ
明治廿七年六月 日大鳥公
使は仁川に着し翌拂暁水
兵四百餘名を與に陸行し
て京城に入る
同月
十二日
より以
後日
本陸
軍兵
陸続
として
仁川に
来る
我兵京城に
入りて日本居
留地を衛る
日本軍隊の仁
川に駐屯せるも
の一半は居留地
に舎営し一半
は日本公園地
に野営し時
々これを交代
せり
日本軍隊は龍
山に幕営をなし
同處萬里倉に
参謀本部を置
く又漢江一帯要
害の地は哨兵を
置き以て之を扼
取せり
龍山は京城を厺
百里許にして漢
江の瀕にあり
(此図 金仙筆)
【米斎の弟の金僊は金仙と表記されることあり】
南山野営
月高くして千里
明かき風冷にし
て露気深く鴻
雁度り草蟲
吟す秋風この夕
豼貅の心緒果して
什麼
數日來病
と稱し居
たる哀世
凱は七月十
九日午前
四時突然
微行して
京城を出
て直に仁川
に下り軍
艦揚威に
搭して本
國に帰り
去れり
【袁世凱の「袁」が亠口衣ですが書き手は「哀」の異体字と承知で使っていると考えます】
七月十九日
大鳥公使
韓廷に照會
せることあり
二十三日午後
十二時を期し
て回答を望
めり期に至て
答へは來れ
り大鳥公使
はこの答に對
して何か決
する所あり
且韓廷王の
委嘱に依て
兵を送りて
王宮を守
護せしむ時
に七月二十三日
午前五時過
なりき而し
て我兵の王
城裏門より
入らんとせし
ものに向ひ閔
族雇兵の
發砲せし
より已むを
得す應戦
し十五分時
にして是を
追ひ退けた
り韓兵多
く北岳(王城
の後に峙てるも
の)の上に遁け
去る
この朝大
鳥公使は
大禮服を
着して王城
に参内し
王に謁して
韓廷改革
の事に付奏
上する所あ
り程なく王
使は大院
君の邸に
到りて弊
政改革の
任に當ら
れんことを
托せり王使
一度ひにし
て大院君
起つ
大院君我兵一中
隊に護せられて王
宮に来【木の下に木】り其正門
光化門より入るを欲
せずるを以て西門
より入闕したりけり
此時驟雨沛然と
して至り天地為に
暗澹たり
大院君
国王に面
謁するや
暫く相對
して一語な
く互に涙
の泫如たる
を覚へざ
りきといふ
王城四面の諸門は遂
に我兵の守護する
䖏となりぬ蓋し王
城の内に於て騒擾あ
らざらしめんか為也
この朝閔兵より分
捕したる刀槍砲□【石篇に充 u2549d 𥒝】
は一時預り置かんと
て悉く龍山野営
に送りたり
金仙補筆
二十三日午
前三時頃
我兵一中隊
は親軍総
衛営に至
り韓廷に不
忠なる閔
兵に向ひ穏
かに戎器を
渡して引
拂ふへしと
言ひ入れた
るも彼の發
砲したるよ
り直に門
を破りて入
り遂に我兵
の守䕶と
なりぬ
海戦
其一
七月廿五日午前
七時我艦隊は
回航中南陽湾
前豊島附近に
於て清兵を載せ
たる運送船を軍
艦の護送し来
れるに出遇ひ彼
の発砲したるにより
直にこれに應し
激戦一時二十分
に互りしに遂に
其の運送舩を
打沈め廣乙號
を焼失せしめ
軍艦操江號
を捕獲したり
けり
海戦
其三
明治廿七年八月一日を以て我邦は淸國に對し戰端を開くべき旨を
各國に通達し、仝九月十三日畏くも 天皇陛下御親征として大纛を
廣島に進められ遂に同地に臨時議會を招集せらるヽに至りき。今そ
の淸國と開戰せし所以を尋ぬるに朝鮮國に東學黨の蜂起せしに基
きたるものなりける。
抑東學黨なるものは朝鮮地方官の壓制甚しきに堪へかね鬱憤を霽
らさんとて起りし一揆にして年々朝鮮各道に蜂起し左程珍らしか
らざる事なりしも年毎にその黨人の增加し行ことまことに夥しと
いへり。本年の春も亦全羅道に蜂起するや。兼て閔泳駿の一族に對す
る不平家。政府の暴政に憤懣せる有志者等は風を望て馳せ集り。忽ち
にして無慮數千の多きに達したり。こヽに於て首領を戴き全羅道中、
古阜、井邑、泰仁、といへる三地方を根據地と定め、全州(全羅道の首府)泰
仁の間に在る白山に本營を設け天儉に頼りて官軍を引受けこヽに
戰を開きしは四月廿二日を初めとせり。
この第一戰には東學黨官軍八百の兵に脆くも破られしが、越て四月
廿六日といへるに大擧して寄せ來る官軍を導きて伏中に陷れ四面
より一度に起りて攻め立てけるに官軍大に亂れ戰死するもの二百
數十人に及び。其征討軍の本營所在地なる全州は全く東黨の手中に
落ちたりき。これより東黨は氣脈を各道に通ずるに風を聞て應援す
るもの殆んど二萬人。其勢猛烈にして當るべからず。こヽに於て各部
署を定め各地に向て進撃を初めたり。
是れより先き京城政府にては東學黨蜂起して勢猖獗なりとの報に
接して狼狽一方ならず遂に洪啓黨を征討使として親軍總營衛の精
兵八百を率ひ直ちに進撃の途に上らせたり。
去程に洪啓黨は仁川より船に乗じ布帆恙なく群山に着せしは五月
一日の事なり洪等は初め東學黨もし親軍の派遣せられたりと聞か
ば未だ戰ずして逃亡すべしと確信し又一は直ちに上陸して東黨と
戰ひ萬一にも敗北するとあらば東黨の勢いよ〳〵振はんことを恐れ。
左右(さう)なくは上陸せず船に留りて敵の樣子如何と伺ひ居たり。されど
東學黨は親軍の來りしとて遁亡せざるのみならず却て我一に討ち
取て巧妙手柄せんとその準備おさ〳〵怠りなし。この事洪の軍に聞
へければ偖こそかヽる事もあつたりけりとて。一方には京城に援兵
を請ひ。一方には二分隊の兵を全州監衞李璟鎬に附して一時の急に
赴かしめ、勝敗如何と待ち居たりしが、李璟鎬は遂に賊兵に敗られ、京
城の援兵は來るべき模樣もなし、こヽに於て洪啓黨も意を决して上
陸し、全隊を二分して一隊は全州に、一隊は羅州に向ひ雙方立ち併て
進發せんとしたりしも。賊勢尚も屈する色なく却て全力を進めて迎
へ戰はんと用意を整へ居るよし聞ゆるに、さらばとて再び兵を群山
に集め一手となりて井邑に向ふことヽせり。
東學黨もまた四萬の大兵の一部を分ちて各地を侵略せしめ本軍は
井邑に於て親軍と會戰せんとて本營より動き出る途次全州を襲ひ
其監司監營を走らせたり。
偖ても官軍は五月十二日未明井邑に着し諸軍を休めて犒ふひまも
なく賊兵は早や犇々と攻め寄せて互に入り亂れ。激闘奮戰數時に亘
りしが官軍遂に支へ得ず一方の圍を破り纔かに血路を開きて全州
さして落ち延びける。この戰に官軍死するもの百七十名。逃亡せし者
二百名にして征討使に隨ひ漸く一身を全ふせしもの僅かに四百數
十人なりき。
この井邑の大捷は東學黨をしていよ〳〵威を振はしむるに引換へ
征討使は大に落膽して神色沮喪して爲すべき術もなく唯々京城に
向て急ぎ援兵を送らるべしといひ送るのみ。
京城政府にては敗報漸りに來りけるより、かくては外國の兵を借り
て討ち拂ふべしなどいふものもありしかども、若しヽかするときは
獨立自主の本旨に違ふのみならず日、淸、孰れの兵を借らんにも條約
のあるあれば萬一これを破らしむる曉に於ては當朝鮮は其交戰地
となりて人民いよ〳〵騒動すべければ此議然るべからずとてこれ
を排斥し更に徐丙炳薰をして江華營兵五百人の總督たらしめ五月二
十二日海路仁川を發して全羅道に向ひ直ちに上陸して全州なる洪
招討使の軍と合したり。然れどもこれ又東黨の敗る所となり全州は
遂に全く賊兵に略取せられぬ。かヽる有樣なるを以て賊はいよ〳〵
蔓延し、破竹の勢を以て洪州石城をも占據し將に京城にも進まんず
有樣なりける。
斯くと聞へし京城政府の搔動大方ならず。この時に當りて日頃より
朝鮮に事あらば其機に乗じ朝鮮をして支那屬邦の實を擧げしめん
と待搆へゐたる袁世凱は時こそ至れりとて韓廷の權力者なる閔泳
駿を説きて支那政府に援兵を請ふべしとすヽめけるに泳駿も同意
し公然韓廷より助力せられたき旨を五月三十日電報を以て淸國に
言ひ送れりき淸國乃はちその請に應じ李鴻章より令を傳へて天津、
旅順口の兵三千を送り出して忠淸道牙山に上陸せしめこれと同時
に天津條約に基き外國居留人民保護を名として出兵せし旨を我邦
に通達し來りたり、これ六月六日の事なりき。こヽに於て我邦も又淸
國政府へ公使、領事の兩舘及び人民保護の爲其兵員を派遣する由を
通報したりけり。
これより先き大鳥圭介氏は朝鮮特命全權公使となりて未た任に赴
かでありしか、外務省參事宮本野一郎氏と與に六月五日の一番滊車
を以て東京を出發したり。また警視廳巡査二十名も高崎警部か引卒
して大鳥公使の一行に隨ひ行けり。仝し月の八日の午後四時海上恙
もなくて無事仁川に達したり折柄碇舶なし居たる各國軍艦よりは
祝意を表して發砲せり。
其夜公使一行を護送し來りたる日本帝國軍艦松島、赤城、千代田、八重山諸艦の水兵四百名ばかり上陸し、翌九日の拂曉公使一行と與に陸
【表紙 文字なし】
【見返し 資料整理ラベル】
JAPONAIS
366
【見返し 文字なし】
【白紙に数字加筆】
【抹消】1826
【訂正】366
【題箋】
画本両筆 全
【貼紙】
Ye-hon rio hits. Dessins
des deux dessinateurs
Hoksai et Riou Kosai
1 Vol. comp.
No. 552 du Cat. lib. Jap.
【白紙】
春雨降日ひとり文つくゑにむかひ烏羽玉の
やみをもてらすはけあたまもしたら
ちねのなて過しにやなとよみ老を
かこちありけるをりしも書肆東壁堂
きたりさきに浪速の立好斎か海山の
けしき画きたるに近き比むさしなる北斎
是に人物かきくはへ尾張美濃のすき人
の狂歌を添たるひと巻をとうてつ是を
見るに目をよろこはしめ心をよろこはしむ
実や五十年の栄花の夢よりまのあたり
四季のけしきを見つるは此両筆の
一巻ならんとたちまち老をわすれ
此はしに筆とるは
九花街なる
堂理宝
斧の
柄の
くちぬ
齢や
囲む碁の
石さへ長う
延る仙人
橘五園
東雲庵
短冊の
ひもに
くゝらば
よしの川
影も
おはるゝ
花の
白波
於久亭
稲丸
みよし野の
河 瀬
おほひて
咲花の
盛七日は
流るゝ
か如
月花庵
けすも
をし
けさぬも
つらし
ころひぬと
人に
よまれん
雪の
手の跡
竹意庵
白鷺の
立にし跡に
一ところ
ふらぬ
枝見る
雪の
並松
東ミノクロせ
龍樹園千代成
あたゝまる酒を
もとめに
雪の日も
樽の雫は
氷らさり鳬
龍の屋
うたひ女に
獅子つくらせて
見はやさん
花飛蝶と
おとろける
雪
楽々亭
朝ほらけ
桜見に来る
人音に
飛のくやうな
花の
横雪
竜の屋
朝起を
わすれて
花の
下臥を
長居も
奈良に
何頼み
けん
東ミノクロせ
龍樹園千代成
初花を
まちて
しひりの
きるゝ
比
みやこへ
のほる
春の
旅人
方聖園玉清
盛には
いとひな
からも
やかて
咲
花に
またるゝ
入相
の
鐘
於久亭
稲丸
あきたらぬなかめに
しはし
柴人の
閑をや
偸む
滝つ白波
竹意庵
柴刈かしはし
昼寐の
夢山に
ゆり
おこす
やうな
蝉の声
かな
山彦に
谷
わたら
せて
白
い
と
は
松
の
笠
ぬふ
鴬の滝
東ミノクロセ
璧の屋唐器
硝子の簾つくりて
あみぬらん
白石を粉に
砕く滝の緒
竜の屋
於久亭
稲丸
ありかたや
雪かきよせて
作りたる
仏に
門の
道も
ひらけて
林泉亭
綾女
箒より
先筆とれは
山里は
雪に
けしきの
かき
まさる物
東ミノクロセ
舮の屋水器
大達摩
作れる
雪の古畳
深う
くほみし
人の足跡
竜の屋女
大仏つくりて
寒き
雪の日に
火を吹
おこす
達摩
やさし
も
於久亭
稲丸
神祭る
秋の浜辺に
かけてけり
波のつゝみや
月の
白ゆふ
東ミノクロセ
竜舟園
水器
海原の
月の眼の
出汐に
まつ毛と
見ゆる
沖の
帆柱
一ノミヤ
朋来庵
放生会御輿の
鳥の
うつ向て
なと此月を
見ぬにや
有らん
竜の屋
かつく
蜑に
鏡の
ゆらく
姿あり
御輿か崎の
波の
上の月
竜の屋
橘は昔男よ
さく梅は
今の女の
袖の
香そ
する
東ミノクロゼ
雲の屋永女
雨風にあふなと
国て
いのるらし
春出し
旅の
花の
大和路
一ノ宮
六菓園種丸
旅を行
人なら道も
速きものを
長うて遅き
春の
日のあし
同
六蔵楼蓑丸
宮奴もおそ
れし
神の
広前
の
簾をくゝる
風の
うめか
香
於久亭
稲丸
橋の名も
神の
うませし
日の本や
千
五百頭に
あ
まる
市
人
おのか
尾の
剣の外に
玉ちれる
水をはく
なり
神垣の
竜
一ノミヤ
林下風
木下やみ
緋桜の
火をけし
てけり
葉守の
神の
宮遷
かも
竜の屋
竹友園鶴年
針川の
岸に
柳の糸たれて
思はす
つりし
田螺一疋
六撰園哥盛
雪分て
つむや
つめたき
鴬菜
先手に
ほうと
息を
かけ
けり
竹意庵
朝風に声を残して
ほとゝきす
遠山
なりに
うねり
行
かな
竜の屋
遅桜若葉の
山の杜宇
こたまは
みとり
声は
くれなゐ
六撰園歌盛
水にひを
取にし
宇治の
里人は
氷にもゆる
芹や
つむ
覧
ふきつくし
つめる
未通女
は
琴にさへ
あらさぬ
爪を
つかふ
やさしさ
平安亭
七辻
蕭夜軒
興恒
雪解てすへる
野道の
春霞
なにをたよりに
高う
たつらん
不匱堂
浅緑画の
いろとりの
小松原
くさのやう
にも
霞む
遠方
春の屋千垣
夕煙
立花鳥も
浅間山
声の
行へを
見やは
とかめぬ
時鳥啼
此頃は
無沙汰
せし
山家も
繁く
音つれに
けり
ツシマ
笠の屋夕管
於久亭
稲丸
吹捨し
いつの煙草の
跡ならん
飛〳〵もゆる
野辺の
若
草
竜の屋
野遊に
投し
扇の
行方を
霞に
さかす
遠の
富士の根
新田
寿長雄
寒けさに赤い面
して
炭焼の
ひゝとなくらん
雪の
山猿
東ミノ黒瀬
竜樹園千代成
降つみし
山路
わからす
狐
より
雪の獣そ
人を
迷はす
クロセ
竜舟園
水器
一時に
六の花さく
よしの山
冬も
梢に
春や
有らん
六の花
さけと
告んと
来る人も
行人も
なし
雪の山里
ツシマ
栢樹園常人
新田
富士の屋
葭丸
壇の浦
嵐はけ
しく
吹ちぎる
しころの
形の
有明の
月
新田
鷹の屋
夢丸
壇の浦
嵐と波の
たゝかひに
こゝを
船頭と
漕渡る
らん
一ノミヤ
六魚園波穂
日本の
鉄のかきりを
買よせて
月の御舟の
いかり
つくらん
竜の屋
かしま浦のうかれ鴉は
さやけさに
日の中よりも
月見にや
出し
新田
星橘楼
長雄
山里の
家土産
なれや
六の花
かさに
かさして
かへる
はつ雪
竹友園鶴年
見渡
せは
真白に
比えも
水海も
庭の泉水
雪の
築山
終夜降
つかれけん
松か枝に
嵐も
やすむ
雪の曙
竜の屋
氷室守人にも
夏は貸て
まし
雪の囲へ
通ふ
路次笠
竹意庵
新田
匕の屋回
広々と
むさし
野
よりも
はてなく
て
霞に
逃る
水海の舟
平安亭
七辻
さゝ波も音せぬ
はるの
水海の
ふたに
成たる
夕日
のとけし
竹意庵
棹と成て
月の御舟を
漕出ぬと
人には告よ
天つ
かりかね
竜の屋
三井の鐘
堅田の雁も
声なから
声のなき
詩に
うつし
てし
かな
東美濃黒瀬
竜樹園千代成
真野の浦や
月の蛙は
声なくて
かた〳〵ふるふ
風の枯芦
同
竜舟園
水器
明暮に
鐘はつけ
とも
ゆるきなし
名さへ
動かぬ
寺の
礎
竹意庵
冬は猶
軒の板間に
落葉
して
月さへ
もらぬ
木々の
下庵
竜の屋
花もみち
過て
あれ行
冬枯は
墨画に
かきし
志賀の
故里
ツシマ
砂原浅薮
そよ〳〵と
なひく
薄の
糸口
に
くり出す
浦の秋の
はつ
風
一陽雨
鬼影
蘆の屋の
あし火に
海士の寄合
て
袖やほすらん
秋の夕暮
ツシマ
鶏の屋
寐覚
遠さかり
行かと
見れは
行もせす
我家島に
帰る白波
竜の屋
芦辺より
汐満来れは
鷺にさへ
おはるゝやうな
鷹島の
波
そほぬれて
あらたに
髪をあらふ
如
かふり物をも
はしく
夕たち
竜屋
ゆふ立の雨
しのくへき
位あり
五たい
ふとりし
山のかさ松
東ミノ黒瀬
竜珠園唐器
彫物
の
雲
より
ふるか
夕立
に
下から
も
なる
塔の
風鈴
平安亭七辻
笠やとり
せんとかけ込
柴の戸を
人より先に
たゝく白雨
西美濃黒野
竜雲園
玄器
ツシマ
砂原浅薮
逢坂のむかしの
関はこゝら
かと
庵の戸たゝく
月の
下風
一ノ宮
朋来庵
逢坂の
関も
野分に
ねち
むきて
思はぬ
月を
窓に
見るらん
竹意庵
かたわれ
の
月に
昔を
しのふ
なり
琵琶湖
も
近き
逢坂の
関
入影の
とまらは月の
都路の
西にも
かもな
逢坂のせき
竜の屋
明烏
初日にうつる
ひかりあり
へにを
いれたる
書初の墨
竜の屋
弘器
初日さす
其山鳥の
尾張にも
黄金花さく
青柳の城
竹意庵為丸
山水草木 浪花立好斎筆
人物鳥獣 東都北斎戴斗筆
尾陽名古屋本町通七丁目
書肆 永楽屋東四郎【印=永楽堂記】
【原本には画のみ文字なし】
【上部に書き込み】
No.24
Leudt(?)【人名ヵ】
【文字なし】
【文字なし】
【文字なし】
【文字なし】
【表紙 題箋】
団扇絵
【資料整理番号のラベル】
SMITH-LESOUEF
JAP
248
【表紙裏 資料整理番号ノのラベル】
SMITH-LESOUEF
JAP
248
【文字無し】
【若松の絵に落款】
伊川方眼筆【直下に落款印】
【桜の枝に小鳥の絵の落款】
伊川法眼筆【直下に印】
【卯の花の絵の落款】
伊川法眼筆【直下に印】
【藤の花の落款】
祐清筆【直下に落款】
【芍薬の花の絵の落款】
祐清筆【直下に印】
【朝顔の鉢花の絵の落款】
祐清筆【直下に印】
【数種の秋花の絵の落款】
祐清筆【直下に印】
【紅葉の山の上を雁が飛ぶ絵の落款】
洞寿筆【直下に印】
【小鳥の群れ飛ぶ絵の落款】
探信筆【直下に印】
【枝にとまる小鳥の絵の落款】
祐清筆【直下に印】
【山茶花に降る雪景色の落款】
洞白筆【「筆」に半分掛る位置に印】
【小鳥のとまる松の雪景色の落款】
洞寿筆【「筆」に少し掛る位置に印】
【水に泳ぐ二羽の鴨の絵の落款】
洞白筆【「筆」に半分掛る位置に印】
【住之江の風景と思われる絵の落款】
法眼洞白画【直下に印】
【文字無し】
【裏表紙の裏 文字無し】
【裏表紙 資料整理番号のラベル】
269
【文字無し】
【文字無し】
【山茶花の雪景色の落款】
探信齊画【直下に印二つ】
【小さな花束の絵の落款】
伊川院法印筆【「筆」に少し掛る位置に印】
【枝にとまる鳩の絵の落款】
伊川法眼画【「画」に少し掛る位置に印】
【花木の枝に小鳥の絵の落款】
伊川院法印筆【「筆」に少し掛る位置に印】
【花枝の絵の落款】
伊川院法印筆【「筆」に少し掛る位置に印】
【燕の絵の落款】
祐清筆【直下に印】
【草花の絵の落款】
祐清筆【「筆」に少し掛る位置に印】
【草花の絵の落款】
祐清筆【「筆」に少し掛る位置に印】
【なでしこの花の絵の落款】
祐清筆【「筆」に少し掛る位置に印】
【あやめの絵の落款】
祐清筆【「筆」に少し掛る位置に印】
【兔の絵の落款】
伊川院法印筆【「筆」に半分掛る位置に印】
【花木に小鳥の絵の落款】
探信齊画【直下に印二つ】
【冠雪する松の絵の落款】
探信筆【「筆」に半分掛る位置に印】
【松林の風景の絵の落款】
法眼洞白画【直下に印】
【文字無し】
【文字無し】
【冊子の小口の写真か】
【冊子の背の写真か】
【冊子の天の写真か】
【冊子の地の写真か】
【文字なし】
JAPONAIS 353
【文字なし】
【文字なし】
【文字なし】
1813
【題箋】肘下選蠕
【文字なし】
【文字なし】
【文字なし】
【文字なし】
蜻蜓域内二百余年不聞蝸
角之争擾年無蝗螽之害
民有蛾子之術脈望道人悠
然閑臥槐陰蝶夢始覚時
春谿子携此帖至画之妙一々
逼真不啻螟蛉之貌似而刻
之精緻亦可数蚊睫把玩楽之
不復知身之為蜉蝣於天地
間也庚辰七夕後一日題
筱弼【落款二】
【文字なし】
幸因腐草出敢
近太陽飛未足臨
書巻時能点客衣
随風隔幔小帯雨
傍林微十月清霜重
飄零何処帰
杜少陵詩 小竹【落款二】
【文字なし】
【絵のみ】
【文字なし】
一声能遣一人
愁終夕声々暁
未休不解繅糸替
人織強来出口
促衣裘
竈馬 竹窗書【落款】
【文字なし】
【絵のみ】
【文字なし】
春晴逢穀雨泛濫
繞林篁逐酔縈軽
袂纏花猟異香叢
棲懸玉宇畳構隠
金房霊化知何術
神功寄薬王
兪允文詩 原吉録【落款】
【文字なし】
【絵のみ】
【文字なし】
【絵のみ】
【文字なし】
螳蜋飛虫揮
斧奮臂当轍
不廻勾践是避
勇士致斃属之
義
晋郭璞螳蜋賛
竹窗書【落款】
【文字なし】
偸咀仙霞伝
秘訣戯塗猩
血点織腰写
生好倫毘陵
筆濃蘸臙脂
上軟綃
瞿佑詩 溪水書【落款】
【文字なし】
【絵のみ】
【文字なし】
【絵のみ】
【文字なし】
【絵のみ】
【文字なし】
腥涎不満殻
聊足以自濡
升高不知回
竟作粘壁
枯
蝸牛 竹窓書
【文字なし】
喓々草虫趯々
阜螽未見君
子憂心忡々亦
既見止亦既覯
止我心則降
原吉録【落款】
【文字なし】
【絵のみ】
【文字なし】
両角徒自長
空飛不服箱
為牛竟何事
利吻穴枯桑
天水牛 竹窓書
【落款】
【文字なし】
【絵のみ】
【文字なし】
寂々宮槐雨乍晴
高枝微帯夕
陽明臨風忽起悲
秋思独聴新蝉
第一声
寇莱公詩
小竹書【落款二】
【文字なし】
【絵のみ】
【文字なし】
睅目知誰瞋
皤腹空自張
慎勿困蜈蚣
饑蛇不汝放
録東坡詩
小竹【落款二】
【文字なし】
【絵のみ】
【文字なし】
月叢号耿々
露葉泣溥々
夜長不自暖
那憂公子
寒
録蘇公詩 原吉【落款】
【文字なし】
文政庚辰春
夏之間写於
究光堂之北
窓
森春溪【落款】
【文字なし】
細眉双聳敵秋毫冉々
芳園日幾遭清宿露花
応自得暖争風絮欲
相高情人没後魂猶在
傲吏斉来夢亦労【栄】間【閑】掩
遺編若【苦】堪恨不并香草
入離騒
抄林和靖詩 小竹【落款二】
【文字なし】
【文字なし】
【文字なし】
【文字なし】
【文字なし】
【文字なし】
【文字なし】
【文字なし】
【文字なし】
【文字なし】
【文字なし】
【文字なし】
【文字なし】
【文字なし】
【表紙】
【題字】立正安國論
【管理タグ】
JAPONAIS
225
【表紙裏】
【管理タグ】
JAPONAIS
225
立正安國論 大日本帝國沙門日蓮撰
旅客來嘆曰自近年至近日天變地夭飢饉疫癘遍
満天下廣迸地上牛馬斃巷骸骨充路招死之輩既
超大半不悲之族敢無一人然閒或專利劔即是之
文唱西土教主之名或恃衆病悉除之願誦東方如
來之經或仰病即消滅不老不死之詞崇法華真實
之妙文或信七難即滅七福即生之句調百座百講
之儀有因秘密真言之教灑五瓶之水有全坐禅入
定之儀澄空觀之月若書七鬼神之號而押千門若
圖五大力之形懸萬戸若拜天神地祗而企四角四
堺之祭祀若哀萬民百姓而行國主國宰之德政雖
然唯摧肝膽彌逼飢疫乞客溢目死人滿眼卧屍爲
觀並尸作橋觀夫二離合璧五緯連珠三寶在世百
王未窮此世早衰其法何廢是依何禍是由何誤矣
主人曰獨愁此事憤悱胸臆客來共嘆屢致談話夫
出家而入道者依法而期佛也而今神術不協佛威
無驗具覿當世之體愚發後生之疑然則仰圓覆而
吞恨俯方載而深慮倩傾微管聊披經文世皆背正
人悉歸惡故善神捨國而相去聖人辭所而不還是
以魔來灾起不可不言不可不恐
客曰天下之灾國中之難余非獨嘆衆皆悲今入蘭
室初承芳詞神聖去辭灾難並起出何經哉聞其證
據矣
主人曰其文繁多其證弘博金光明經云於其國土
雖有此經未甞流布生捨離心不樂聽聞亦不供養
尊重讃歎見四部衆持經之人亦復不能尊重乃至
供養遂令我等及餘眷屬無量諸天不得聞此甚深
妙法背甘露味失正法流無有威光及以勢力増長
惡趣損减人天墜生死河乖涅槃世尊我 等四王
并諸眷屬及藥叉等見如斯事捨其國土無擁護心
非但我等捨棄是王亦有無量守護國土諸大善神
皆悉捨去既捨離已其國當有種種灾禍喪失國位
一切人衆皆無善心唯有繫縛殺害瞋諍互相讒諂
枉及無辜疫病流行彗星數出兩日並現薄蝕無恒
黒白二虹表不祥相星流地動井内發聲暴雨惡風
不依時節常遭飢饉苗實不成多有他方怨賊侵掠
國内人民受諸苦惱土地無有可樂之䖏《割書:已| 上》大集經
云佛法實隱沒鬚髮爪皆長諸法亦忘失當時虚空
中大聲震於地一切皆徧動猶如水上輪城壁破落
下屋宇悉圯坼樹林根枝葉華葉菓藥盡唯除淨居
天欲界一切處七味三精氣損减無有餘解脫諸善
論當時一切盡所生華菓味希少亦不美諸有井泉
池一切盡枯涸土地悉鹹鹵剖裂成丘澗諸山皆燋
燃天龍不降雨苗稼皆枯死生者皆死盡餘草更不
生雨土皆昏闇日月不現明四方皆亢旱數現諸惡
瑞十不善業道貪瞋癡倍増衆生於父母觀之如獐
鹿衆生及壽命色力威樂減遠離人天樂皆悉墮惡
道如是不善業惡王惡比丘毀壞我正法損减天人
道諸天善神王悲愍衆生者棄此濁鬼神亂故萬民
亂賊來劫國百姓亡喪臣君太子王子百官共生是
非天地恠異二十八宿星道日月失時失度多有賊
起亦云我今五眼明見三世一切國王皆由過去世
侍五百佛得爲帝王主是爲一切聖人羅漢而爲來
生彼國土中作大利益若王福盡時一切聖人皆爲
捨去若一切聖人去時七難必起《割書:已|上》藥師經云若刹
帝利灌頂王等灾難起時所謂人衆疾疫難他國侵
逼難自界叛逆難星宿變恠難日月薄蝕難非時風
雨難過時不雨難《割書:已|上》仁王經云大王吾今所化百億
日月一一須彌有四天下其南閻浮提有十六大國
五百中國十千小國無量粟散國其國土中有七可
畏難一切國王爲是難故云何爲難日月失度時節
反逆或赤日出黒日出二三四五日出或日蝕無光
或日輪一重二三四五重輪現爲一難也二十八宿
失度金星彗星輪星鬼星火星水星風星刁星南斗
北斗五鎮大星一切國主星三公星百官星如是諸
星各各變現爲二難也大火燒國萬姓燒盡或鬼火
龍火天火山神火人火樹木火賊火如是變恠爲三
難也大水𣿖沒百姓時節反逆冬雨夏雪冬時雷電
霹礰六月雨氷霜雹雨赤水黒水青水雨土山石山
雨沙礫石江河逆流浮山流石如是變時爲四難也
大風吹殺萬姓國土山河樹木一時滅没非時大風
黒風赤風青風天風地風火風水風如是變爲五難
也天地國土亢陽炎火洞然百草亢旱五穀不登土
地赫燃萬姓滅盡如是變時爲六難也四方賊來侵
國内外賊起火賊水賊風賊鬼賊百姓荒亂刀兵劫
起如是恠時爲七難也大集經云若有國王於無量
世修施戒慧見我法滅捨不擁護如是所種無量善
根悉皆滅失其國當有三不祥事一者穀貴二者兵
革三者疫病一切善神悉捨離之其王教令人不隨
從常爲隣國之所侵嬈暴火横起多惡風雨暴水増
長吹漂人民内外親戚其共謀叛其王不久當遇重
病壽終之後生大地獄中乃至如王夫人太子大臣
城主村主郡守宰官亦復如是《割書:已| 上》夫四經文朗萬人
誰疑而盲瞽之輩迷惑之人妄信邪說不辨正教故
天下世上於諸佛衆經生捨離之心無擁護之志仍
善神聖人捨國去所是以惡鬼外道成灾致難矣
客作色曰後漢明帝者悟金人之夢得白馬之教上
宮太子者誅守屋之逆成寺塔之搆爾來上自一人
下至萬民崇佛像專經巻然則叡山南都園城東寺
四海一州五畿七道佛經星羅堂宇雲布鶖子之族
則觀鷲頭之月鶴勒之流亦傳鷄足之風誰謂褊一
代之教廢三寶之跡哉若有其證委聞其故矣
主人喻曰佛閣連甍經藏並軒僧者如竹葦侶者似
稲麻崇重年舊尊貴日新但法師諂曲而迷惑人倫
王臣不覺而無辨邪正仁王經云諸惡比丘多求名
利於國王太子王子前自說破佛法因縁破國因緣
其王不別信聽此語橫作法制不依佛戒是為破佛
破國因緣《割書:已| 上》涅槃經云菩薩於惡象等心無恐怖於
惡知識生怖畏心爲惡象殺不至三趣為惡友殺必
至三趣《割書:已| 上》法華經云惡世中比丘邪智心諂曲未得
謂爲得我慢心充滿或有阿練若納衣在空閑自謂
行眞道輕賤人間者貪著利養故與白衣說法爲世
所恭敬如六通羅漢乃至常在大衆中欲毀我等故
向國王大臣婆羅門居士及餘比丘衆誹謗說我惡
謂是邪見人說外道論議濁劫惡世中多有諸恐怖
惡鬼入其身罵詈毀辱我濁世惡比丘不知佛方便
隨宜所說法惡口而嚬蹙數【婁+殳】數見擯出《割書:已| 上》涅槃經云
我涅槃後無量百歳四道聖人悉復涅槃正法滅後
於像法中當有比丘似像持律少讀誦經貪嗜飲食
長養其身雖著袈裟猶如獵師細視徐行如猫伺鼠
常唱是言我得羅漢外現賢善内懷貪嫉如受啞法
婆羅門等實非沙門現沙門像邪見熾盛誹謗正法
《割書:已| 上》就文見世誠以然矣不誡惡侣者豈成善事哉客
猶憤曰明王因天地而成化聖人察理非而治世世
上之僧侣者天下之所歸也於惡侣者明王不可信
非聖人者賢哲不可仰今以賢聖之尊重則知龍象
之不輕何吐妄言強成誹謗以誰人謂惡比丘哉委
細欲聞矣
主人曰後鳥羽院御宇有法然作選擇集矣則破一
代之聖教徧迷十方之衆生其選擇云道綽禪師立
聖道淨土二門而捨聖道正歸淨土之文初聖道門
者就之有二乃至准之思之應存密大及以實大然
則今眞言佛心天台華嚴三論法相地論攝論此等
八家之意正在此也曇鸞法師往生論注云謹案龍
樹菩薩十住毗婆沙云菩薩求阿毗跋致有二種道
一者難行道二者易行道此中難行道者即是聖道
門也易行道者即是淨土門也淨土宗學者先須知
此㫖設雖先學聖道門人若於淨土門有其志者須
弃聖道歸於淨土又云善導和尚立正雜二行捨雜
行歸正行之文第一讀誦雜行者除上觀經等往生
淨土經已外於大小乘顯密諸經受持讀誦悉名讀
誦雜行第三禮拜雜行者除上禮拜彌陁已外於一
切諸佛菩薩等及諸世天等禮拜恭敬悉名禮拜雜
行私云見此文弥須捨雜修專豈捨百即百生專修
正行堅執千中無一雜修雜行乎行者能思量之又
云貞元入藏錄中始自大般若經六百巻終于法常
住經顯密大乘經揔六百三十七部二千八百八十
三巻也皆須攝讀誦大乘之一句當知隨他之前蹔
雖開定散門隨自之後還閇定散門一開以後永不
閇者唯是念佛一門又云念佛行者必可具足三心
之文觀無量壽經云同經䟽云問云若有解行不同
邪雜人等防外邪異見之難或行一分二分群賊等
喚廻者即喻別解別行惡見人等私云又此中言一
切別解別行異學異見等者是指聖道門《割書:已| 上》又最後
結句文云夫速欲離生死二種勝法中且閣聖道門
選入浄土門欲入淨土門正雜二行中且抛諸雜行
選應歸正行《割書:已| 上》就之見之引曇鸞道綽善導之謬釋
䢖聖道淨土難行易行之旨以法華眞言揔一代之
大乘六百三十七部二千八百八十三巻一切諸佛
菩薩及諸世天等皆攝聖道難行雜行等或搭或閇
或閣或抛以此四字多迷一切剰以三國之聖僧十
方之佛弟子等皆號群賊併令罵詈近背所依淨土
三部經唯除五逆誹謗正法誓文遠迷一代五時之
肝心法華經第二若人不信毀謗此經乃至其人命
終入阿鼻獄誡文者也於是代及末代非聖人各容
冥衢並忘直道悲哉不拊瞳矇痛哉徒催邪信故上
自國主下至土民皆謂經者無淨土三部之外經佛
者無彌陁三尊之外佛仍傳教義眞慈覺智證等或
渉萬里之波濤而所渡之聖教或廻一朝之山川而
所崇之佛像若高山之巔建華界以安置若深谷之
底起蓮宮以崇重釋迦藥師之並光也施【方+色】威於現當
虗空地藏之成化也被益於生後故國主寄郡郷以
明燈燭地頭充田園以備【亻+夂+用】供養而依法然之撰擇則
忘教主而貴西土之佛陀抛付属而閣東方之如來
唯專四巻三部之經典空抛一代五時之妙典是以
非彌陁之堂皆止供佛之志非念佛之者早忘施僧
之懐故佛閣零落瓦松之煙空老僧房荒庭草之露
屢深雖然各捨護惜之心並廢建立之思是以住持
聖僧行而不歸守護善神去而無來是偏依法然之
選擇也悲哉數十年之間百千萬之被蕩魔縁多迷
佛教好謗忘正善神不成怒哉捨圓好偏惡鬼不得
便哉不如修彼萬祈禁此一㐫矣
客殊作色曰我本師釋迦文說浄土三部經以來曇
鸞法師捨四論講說一向歸浄土道綽禪師閣涅槃
廣業偏弘西方行業善導和尚抛雜行立專修慧心
僧都集諸經之要文宗念佛之一行貴重彌陁誠以
然矣又徃生之人其幾哉就中法然聖人幼少而昇
天台山十七而渉六十巻並究八宗具得大意其外
一切經論七遍反覆章䟽傳記莫不究看智齊日月
徳越先師雖然猶迷出離之趣不辨涅槃之旨故徧
覿悉鑑深思遠慮遂抛諸經專修念佛其上蒙一夢
之靈應弘四裔之親踈故或號勢【執+力】至之化身或仰善
導之再誕然則十方貴賤低頭一朝男女運歩爾來
春秋推移星霜相積而忝【夭+氺】踈釋尊之教恣譏彌陁文
文何以近年之灾課聖代之時強毀先師更罵聖人
吹毛求疵剪皮出血自昔至今如此惡言未聞可惶
可慎罪業至重科條争遁對座猶以有恐携杖而則
欲歸矣
主人笑止曰習辛蓼葉忘臰【白+死】溷厠聞善言而思惡言
指謗者而謂聖人疑正師而擬惡侶其迷誠深其罪
不淺聞事起委談其趣釋尊說法之内一代五時之
間立先後辨權實而曇鸞道綽善導既就權忘實依
先捨後未探佛教淵底者就中法然雖酌其流不知
其源所以者何以大乘經六百三十七部二千八百
八十三巻并一切諸佛菩薩及諸世天等置捨閇閣
抛之字蕩一切衆生之心是偏展私曲之詞全不見
佛經之說妄語之至惡口之科言而無比責而有餘
人皆信其妄語悉貴彼選擇故崇浄土之三經而抛
衆經仰極樂之一佛而忘諸佛誠是諸佛諸經之怨
敵聖僧衆人之雔敵也此邪教廣弘八荒周遍十方
抑以近年之灾難課往代之由強恐之聊引先例可
悟汝迷止觀第二引史記云周末有被髮祖身不依
禮度者弘決第二釋此文引左傳曰初平王之東遷
也伊川見被髮者而於野祭識者曰不及百年其禮
先亡爰知徴前顯灾後致又阮藉逸才蓬頭散帶後
公卿子孫皆敩之奴苟相辱者方逹自然撙節兢持
者呼為田舎是爲司馬氏滅相《割書:已| 上》又案慈覺大師入
唐巡禮記云唐武宗皇帝㑹昌元年勑令章敬寺鏡
霜法師於諸寺傳彌陁念佛教毎寺三日巡輪不絶
同二年廻鶻國之軍兵等侵唐堺同三年河北之節
度使忽起亂其後大蕃國更拒命廻鶻國重奪地凢
兵亂同秦項之代灾火起邑里之際何況武宗大破
佛法多滅寺塔不能撥亂遂以有事《割書:已上|取意》以此惟之法
然者後鳥羽院御宇建仁年中之者也彼院御事既
在眼前然則大唐殘例吾朝顯證汝莫疑汝莫恠須
捨凶歸善塞源截根矣客聊和曰未究淵底數知其
趣但自花洛至柳營釋門樞楗佛家在棟梁然未進
勘狀不及上奏汝以賤身輙吐莠言其義有餘其理
無謂
主人曰予雖為少量忝學大乘蒼【艹+人+君】蝿【偏が「䖝」】附𩦸尾而渡萬
里碧蘿懸松頭而延千尋弟子生一佛之子事諸經
之王何見佛法之衰【襄-吅】微不起心情之哀惜其上涅槃
經云若善比丘見壞法者置不呵責駈遣舉處當知
是人佛法中怨【夕+匕+心】若能駈遣呵責舉䖏是我弟子眞聲
聞也余雖不爲善比丘之身爲遁佛法中怨【夕+匕+心】之責唯
𢲻大綱粗示一端其上去元仁年中自延暦興福兩
寺度度經奏聞申下勑宣御教書法然之選擇印【卬+丶】板
取上大講堂爲報三世佛恩令燒失之於法然墓所
仰付感神院犬神人令破却其門弟隆觀聖光成覺
薩生等配流遠國其後未許御勘氣豈未進勘狀云
也
客則和曰下經謗僧一人難論然而以大乘經六百
三十七部二千八百八十三巻并一切諸佛菩薩及
諸世天等載捨閇閣抛四字其詞勿論也其文顯然
也守此瑕瑾成其誹謗迷而言歟覺而語歟賢愚不
辨是非難定但灾難之起因選擇之由盛増其詞彌
談其旨所詮天下泰平國土安穩君臣所樂土民所
思也夫國依法而昌法因人而貴國亡人滅佛誰可
崇法誰可信哉先祈國家須立佛法若消灾止難有
術欲聞
主人曰余是頑愚敢不存賢唯就經文聊述所存抑
治術之旨内外之間其文幾多具難可舉但入佛道
數廻愚案禁謗法之人重正道之侣國中安穩天下
泰平即涅槃經云佛言唯除一人餘一切施皆可讃
歎純陁問言云何名爲唯除一人佛言如此經中所
說破戒純陁復言我今未解唯願說之佛語純陁言
破戒者謂一闡提其餘在所一切布施皆可讃歎獲
大果報純陀復問一闡提者其義云佛言純陁若有
比丘及比丘尼優婆塞優婆夷發麤惡言誹謗正法
造是重業永不改悔心無懴悔如是等人名爲趣向
一闡提道若犯四重作五逆罪自知定犯如是重事
而心初無怖畏懴悔不肯發露於彼正法永無護惜
建立之毀呰輕賤言多過咎如是等人亦名趣向一
闡提道唯除如此一闡提輩施其餘者一切讃歎又
云我念往昔於閻浮提作大國王名曰仙豫愛念敬
重大乘經典其心純善無有麤惡嫉恡善男子我於
爾時心重大乘聞婆羅門誹謗方等聞已即時斷其
命根善男子以是因緣從是已來不堕地獄又云如
來皆爲國王行菩薩道時斷絶爾所婆羅門命又云
殺有三謂下中上下者蟻子乃至一切畜生唯除菩
薩示現生者以下殺因緣墮於地獄畜生餓鬼具受
下苦何以故是諸畜生有微善根是故殺者具受罪
報中殺者從凢夫人至阿那含【人+爫+口】是名爲中以是業因
墮於地獄畜生餓鬼具受中苦上殺者父母乃至阿
羅漢辟支佛畢定菩薩墮於阿鼻大地獄中善男子
若有能殺一闡提者則不墮此三種殺中善男子彼
諸婆羅門等一切皆是一闡提也《割書:已| 上》仁王經云佛告
波斯匿王是故付屬諸國王不付屬比丘比丘尼何
以故無王威力涅槃經云今以無上正法付屬諸王
大臣宰相及四部衆毀正法者大臣四部之衆應當
苦治又云佛言迦葉以能護持正法因緣故得成就
是金剛身善男子護持正法者不受五戒不修威儀
應持刀劔弓箭鉾槊又云若有受持五戒之者不得
名爲大乘人也不受五戒爲護正法乃名大乘護正
法者應當執持刀劔器仗【仗+丶】雖持刀杖我說是等名曰
持戒又云善男子過去之世於此拘尸那城有佛出
世號歡喜増益如來佛涅槃後正法住世無量億歳
餘四十年佛法未滅爾時有一持戒比丘名曰覺德
爾時多有破戒比丘聞作是說皆生惡心執持刀杖
逼是法師是時國王名曰有徳聞是事已爲護法故
即便往至說法者所與是破戒諸惡比丘極其戰闘
爾時說法者得免厄害王於爾時身被刀劔箭槊之
瘡體無完處如芥子許爾時覺德尋讃王言善哉王
今眞是護正法者當來之世此身當爲無量法器王
於是時得聞法已心大歡喜尋即命終生阿閦佛國
而為彼佛作第一弟子其王將從人民眷属有戰闘
者歡喜者一切不退菩提之心命終悉生阿閦佛國
覺德比丘却後壽終亦得往生阿閦佛國而爲彼佛
作聲聞衆中第二弟子若有正法欲滅盡時應當如
是受持擁護迦葉爾時王者則我身是說法比丘迦
葉佛是迦葉護正法者得如是等無量果報以是因
緣我於今日得種種相以自莊嚴成就法身不可壊
身佛告迦葉菩薩是故護法優婆塞等應執持刀杖
擁護如是善男子我涅槃後濁惡之世國土荒亂互
相抄掠人民飢餓爾時多有爲飢餓故發心出家如
是之人名為秃人是秃人輩見護持正法駈逐今出
若殺若害是故我今聽持戒人依諸白衣持刀杖者
以爲伴侣雖持刀杖我說是等名曰持戒雖持刀杖
不應斷命法華經云若人不信毀謗此經即斷一切
世閒佛種乃至其人命終入阿鼻獄《割書:已上|經文》夫經文顯然
私詞何加凢如法華經者謗大乘経典者勝無量五
逆故墮阿鼻大城永無出期如涅槃經者設許五逆
之供不許謗法之施【方+色】殺蟻子者必落三惡道禁謗法
者定登不退位所謂覺徳者是迦葉佛有徳者則釋
迦文也法華涅槃之經教者一代五時之肝心也其
禁實重誰不歸仰哉而謗法之𫞀忘正道之人剰依
法然之選擇彌増愚癡之盲瞽是以或忍彼遺體而
露木𦘕之像或信其妄說而彫莠言之模弘之海内
翫之墎外所仰則其家風所施則其門弟然間或切
釋迦之手指結彌陁之印【卬+丶】相或改東方如來之鴈宇
居西土教主之鵝王或止四百餘迴之如法經成西
方浄土之三部經或停天台大師講爲善導講如此
群類其誠難盡是非破佛哉是非破法哉是非破僧
哉此邪義則依選擇也嗟呼悲哉背如來誠諦之禁
言哀矣隨愚侣迷惑之麤語早思天下之靜謐者湏
斷國中之謗法矣
客曰若斷謗法之輩若絶佛禁之違者如彼經文可
行斬罪歟若然者殺害相加罪業何爲哉則大集經
云剃頭著袈裟持戒及毀戒天人可供養彼則為供
養我是我子若有撾打彼則爲打我子若罵辱彼則
爲毀辱我料知不論善惡無擇是非於為僧侣可展
供養何打辱其子忝悲哀其父彼竹杖之害目連尊
者也永沉無間之底提逹多之殺蓮華比丘尼也久
咽阿鼻之焔先證斯明後昆㝡恐似誡謗法既破禁
言此事難信如何得意
主人云客明見經文猶成斯言心之不及歟理之不
通歟全非禁佛子唯偏惡謗法也夫釋迦之以前佛
教者雖斬其罪能仁之以後經說者則止其施然則
四海萬邦一切四衆不施其惡皆歸此善何難並起
何灾竸來矣
客則避席刷襟曰佛教斯區旨趣難窮不審多端理
非不明但法然聖人選擇現在也以諸佛諸經諸菩
薩諸天等載捨閇閣抛其文顯然也因兹聖人去國
善神捨所天下飢渇世上疫病今主人廣引經文明
示理非故妄執既飜耳目數朗所詮國土泰平天下
安穩自一人至萬民所好也所樂也早止一闡提之
施永致衆僧尼之供収佛海之白浪截法山之緑林
世成𦏁農之世國為唐虞之國然後斟酌法水之淺
深崇重佛家之棟梁矣
主人恱曰鳩化為鷹雀變爲蛤恱哉汝交蘭室之友
成麻畒之性誠顧其難專信此言風和浪靜不日豊
年耳但人心者隨時而移物性者依境而改譬猶水
中之月動波陣前之軍靡劔汝當座雖信後定永忘
若欲先安國土而祈現當者速廻情慮急加對治所
以者何藥師經七難内五難忽起二難猶殘所以他
國侵逼難自界叛逆難也大集經三灾内二灾早顯
一灾未起所以兵革灾也金光明經内種種灾過一
一雖起他方怨賊侵掠國内此灾未露此難未來仁
王經七難内六難今盛一難未現所以四方賊來侵
國難也加之國土亂時先鬼神亂鬼神亂故萬民亂
今就此文具案事情百鬼早亂萬民多亡先難是明
後何疑若所殘之難依惡法之科並起竸來者其時
何為㦲【㦲-丿】帝王者基國家而治天下人臣者領田園而
保世上而他方賊来而侵逼其國自界叛逆而掠領
其地豈不驚㦲豈不騷哉失國滅家何所遁世汝湏
思一身之安堵者先禱四表之靜謐者歟就中人之
在世各恐後生是以或信邪教或貴謗法各雖惡迷
是非而猶哀歸佛法何同以信心之力妄宗邪義之
詞哉若執心不翻亦曲意猶存早辭有為之郷必墮
無閒之獄所以者何大集經云若有國王於無量世
修施戒慧見我法滅捨不擁護如是所種無量善根
悉皆滅失乃至其王不夂當遇重病壽終之後生大
地獄中如王夫人太子大臣城主村主郡主宰官亦
復如是仁王經云人壞佛教無復孝子六親不和天
神不祐疾疫惡鬼日來侵害灾恠首尾連禍縱横死
入地獄餓鬼畜生若出爲人兵奴果報如響如影如
人夜書火滅字存三界果報亦復如是法華經第二
云若人不信毀謗此經乃至其人命終入阿鼻獄又
同第七巻不輕品云千劫於阿鼻地獄受大苦悩涅
槃經云遠離善友不聞正法住惡法者是因緣故沉
沒在於阿鼻地獄所受身形縱横八萬四千廣披衆
經專謗法悲哉皆出正之門而深入邪法之獄愚矣
各懸惡教之綱而鎮纒謗教網此朦霧之迷沉彼盛
焔之底豈不愁哉豈不苦哉汝早改信仰之寸心速
歸實乘之一善然則三界皆佛國也佛國其衰哉十
方悉寳土也寳土何壞哉國無衰微土無破壊身是
安全心是禪定此詞此言可信可崇矣
客曰今生後生誰不慎誰不恐披此經文具承佛語
誹謗之科至重毀法之罪誠深我信一佛抛諸佛仰
三部經而閣諸經是非私曲之思則隨先逹之詞十
方諸人亦復如是今世者勞性心來生者墮阿鼻文
明理詳不可疑彌仰貴公之慈誨益開愚客之癡心
速廻對治早致泰平先安生前更扶沒後唯非我信
又誡他誤耳
【白紙】
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【裏表紙】
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【題字】立正安國論
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