《割書:増補|頭書》訓蒙図彙大成 七
【手書き】
龍魚
虫介
頭書(かしらがき)増補(そうほ)訓蒙(きんもう)図彙(づゐ)巻之十四
龍魚(りようぎよ)
此部(このぶ)には海水(かいすい)川谷(せんこく)にすむ
もろ〳〵の龍蛇(りようじや)魚鱗(ぎよりん)をしるす
【上段】
○蛟(みつち)は龍(たつ)の角(つの)なき
ものなり四 足(そく)あり
せなか青(あを)まだらに
わき錦(にしき)のごとく水(すい)
中(ちう)又 深山(しんざん)幽谷(ゆうこく)にす
むなり
○龍(たつ)は鱗虫(りんちう)の長(ちやう)也
せなかに八十一の鱗(うろこ)有
九々の数(すう)をそなへたり
よく雲雨(うんう)をおこす
【下段】
蛟(かう) みつち
【手書き】
拾冊之内
【上段】
○螭(あまれう)は蛟(みつち)に似(に)て角(つの)
なし龍(りう)ににていろ
黄(き)なり
○魚虎(しやちほこ)一名 土奴魚(ととぎよ)
といふ海中(かいちう)にありて
よく潮(しほ)をふくよつて
城門(じやうもん)に此魚(このうを)をつくるは
火災(くはさい)をさへるの心
なりといへり
○鯨(くじら)は海中(かいちう)の大魚(たいぎよ)
なり浪(なみ)を鼓(く)して雷(らい)
をなし沫(あわ)をはいて
雨(あめ)をなす雄(を)を鯨(げい)と
いひ雌(め)を鯢(げい)といふ
○鰐(わに)はかたち大にし
て四 足(そく)あり口大に人
をのめば海上(かいしやう)にうく
鱷(かく)同
○鯪(りよう)はかたち鯉(こい)にゝ
て陵(をか)に穴(あな)して居(を)る
よつて鯪鯉(りようり)といふ
四 足(そく)あり首(かしら)鼠(ねづみ)の如(こと)
く鱗(うろこ)かたきこと鉄(てつ)の
ごとし
○鯛(たひ)は棘鬣魚(きよくれうぎよ)と云
水腫(すいしゆ)を消(せう)し小 便(べん)を
利(り)し痔(ぢ)を治(ぢ)し上(じやう)
気(き)虚労(きよらう)を治(ぢ)す但
【下段】
龍(りよう)
たつ
螭(ち)
あまれう
【上段】
産後(さんご)百 余日(よにち)があいだ
かたくいむべし若(もし)あ
やまつて食(しよく)すれは必(かならず)
死(し)す
○鯖(さば)は湿痺(しつひ)によし
韮(にら)と同しく煮(に)て
食(しよく)すれは脚気(かつけ)煩(はん)
悶(もん)を治(ぢ)し気力(きりよく)をま
すなり
○鯵(あぢ)は水腫(すいしゆ)を治(ぢ)し
痢疾(りしつ)を治(ぢ)すわすれ
て尿(いばり)するものはくら
ふべからず
○鰷(せいご)は煮(に)て食(しよく)すれば
うれひをやめ胃(ゐ)をあ
たゝめ冷泻(れいしや)をとむ
鮂魚(しうぎよ)同
○鮸(くち)は中(うち)をおぎなひ
気(き)をます多(おゝ)く食(しよく)
すべからず瘡(かさ)を発(はつ)
し脾湿(ひしつ)をうごかし
足膝(あしひざ)に利(り)あらず
○鰩(とびうを)は婦人(ふじん)難産(なんざん)
にくろやきにして
酒(さけ)にて壱匁ふくす
れば産(さん)しやすし
文鰩(ぶんよう)同
○鯼(いしもち)は五 臓(ざう)をおぎな
【下段】
魚虎(ぎよこ)
しやちほこ
鯨(けい)
くじら
鯪(りよう)
穿山甲(せんざんかう)
鰐(がく)
わに
【右丁上段】
ひ筋骨(すじほね)をまし脾(ひ)
胃(ゐ)を和(くは)すおゝく食(しよく)
してよし
○鮏(さけ)は一名/過臘魚(くはらうぎよ)と
いふ鮭(けい)につくるは非(ひ)也
○鰶(このしろ)は□(い)【田+日、胃の誤ヵ】をあたゝめ
人を益(えき)し痢(り)をやむ
多(おゝ)く食(しよく)すれは風(ふう)
熱(ねつ)をうごかしかさを
発(はつ)す
○尨魚(はうぎよ)は今いふくろ
だひなり又はちぬた
いともいふ
○黄檣(わうしよく)は今いふはな
【左丁上段】
おれたいなり
○烏頬魚(うけうぎよ)は今いふ
すみやきだいなり
○梭魚(かます)は五/臓(ざう)をおぎ
なひ肌(はだへ)をうるほし
気力(きりよく)をまし積(しやく)を
治(ぢ)し虫(むし)をころす
○鰈(かれい)は王餘魚(わうよぎよ)とも
比目魚(ひもくぎよ)ともいふ虚(きよ)を
おぎなひ気力(きりよく)をま
す多(おゝ)く食(しよく)すれば
気(き)をうごかす
○海鰻(はも)は五/疳(かん)湿痺(しつひ)
面目(めんもく)うそばれ脚気(かつけ)
【右丁下段挿絵】
鯖(せい)《割書:さば》 鯵(さん)《割書:あぢ》
鰷(でう)《割書:せいご》 鯛(しう)《割書:たひ》
【左丁下段挿絵】
鮸(ばん)《割書:くち》 鮏(せい)《割書:さけ》 鰩(よう)《割書:とびうを》
鯼(そう)《割書:いしもち》 石首魚(せきしゆきよ)《割書:ともいふ》
【右丁上段】
風気(ふうき)によしはらみ女
の水気(すいき)あるによし
○鯧(まながつほ)は人をして肥(こへ)すこ
やかならしめ気食(きしよく)を
ます鱂魚(しやうぎよ)同
○鯔(なよし)は胃(ゐ)をひらき五
臓(ざう)を利(り)し人をして
肥(こへ)すこやかならしむ
○江鮏(あめ)は胃(ゐ)をあたゝめ
中(うち)を補(おぎな)ふ多(おゝ)く食(しよく)す
れば瘡(くさ)を発(はつ)す又/鯇(あ)
魚(め)といふ又/水鮏(すいせい)とも
書(かく)なり
○馬鮫(さはら)は一名/章鮌(しやうけん)
【左丁上段】
といふちいさきものを
青前(せいせん)といふさごし
なり章鮌(さはう)擺錫(さはう)同
○鱈(たら)は風(かぜ)をさり酒(さけ)を
さまし煮(に)て食(しよく)すれ
は水腫(すいしゆ)を治(ぢ)し小便(しやうべん)
を利(り)す
○䰵(ゑぶな)はまへの鯔(なよし)の所(ところ)
に見みたり かうきち
ぼら いな いせごゐ
ゑぶな すばしりい
づれも同物(とうぶつ)異名(いみやう)也
○鱸(すゞき)は五/臓(ざう)をおきな
ひ筋骨(すじほね)を益(ます)腸(ちやう)胃(ゐ)
【右丁下段挿絵】
鰶(せい)《割書:このしろ》 鰮(うん)《割書:いわし》 尨魚(はうぎよ)《割書:くろだひ》
黄檣(わうしよく)《割書:はなおれだひ》 烏頬(うけう)《割書:すみやきだひ》
【左丁下段挿絵】
梭魚(さぎよ)《割書:かます》 鰈(てう)《割書:かれひ》
海鰻(かいまん)《割書:はも》狗魚(くぎよ)白鰻(はくまん)鮦鮵(とうだつ)慈鰻(じまん)鱺(れい)並同
【「胃」は「田+日」で書かれている】
【右丁上段】
を和(くは)し水気(すいき)を逐(おふ)
おゝく食(しよく)すれば痃(けん)
癖(づき)はれ物(もの)いづる
○鰹(かつほ)は生(なま)は膈(むね)をきよ
くし炙(あぶれ)は脾(ひ)胃(ゐ)をとゝ
のふ多(おゝ)く食(しよく)すれは血(ち)
をうごかす
○䲍(おこじ)は虚労(きよらう)をおぎな
ひ脾(ひ)胃(ゐ)をまし腸(ちやう)風(ふう)
瀉血(しやけつ)を治(ぢ)し気力(きりよく)を
ます人をして肥(こへ)すこ
やかならしむ
○魴鮄(はうぼ)は鯄(かながしら)に似(に)て
色(いろ)あかし一名/藻魚(もうを)と
【左丁上段】
もいふ
○江猪(いるか)は脯(ほぢゝ)となして
食すれば虫(むし)をころし
瘧(おこり)を治(ぢ)す又/海豚(いるか)と
も書(かく)なり
○鱪(しいら)は其(その)性(しやう)未(いまだ)_レ考(かんがへ)
秋(あき)の末(すへ)に多(おゝ)く出る
○鱣(ふか)は長(たけ)二/丈(じやう)はかり
灰(はい)いろなりせなかに
三/行(かう)あり鼻(はな)ながく
してひげあり玉版(ぎよくはん)
魚(きよ)同
○鮫(さめ)は首(かしら)鼈(かめ)に似(に)て
脚(あし)なく尾(を)の長(なが)さ尺(しやく)
【右丁下段挿絵】
鯧(しやう)《割書:まながつを》扁魚(へんぎよ)《割書:同》 江鮏(こうせい)《割書:あめ》
鯔(し)《割書:なよしぼら》 馬鮫(ばかう)《割書:さはら》
【左丁下段挿絵】
鱸(ろ)《割書:すゞき》 鱈(せつ)《割書:たら》
䰵(し)《割書:ゑぶな》 鰹(けん)《割書:かつほ》
【右丁上段】
余(よ)あじはひ美(び)なり
皮(かわ)は刀(かたな)の柄(つか)さやに
つくるなり
○鯄(かながしら)は魴鮄(はうほ)に似(に)た
り小児(せうに)のくひぞめに
かならず用ゆ
○鱠残魚(きすご)は一名/王餘(わうよ)
魚(きよ)といふ呉王(ごわう)船中(せんちう)
にて鱠(なます)を海(うみ)にすつる
に魚(うを)となれり今の
王余魚(わうよぎよ)これなり
○鯽(ふな)は小鯉(こごい)に似(に)て
色(いろ)くろし五/味(み)に合(がつ)
して煮(に)て食(しよく)すれば
【左丁上段】
虚羸(きよろい)をつかさどる中(うち)
をあたゝめ気(き)をくだ
し下痢(げり)腸(ちやう)痔(ぢ)を
やむ蓴(ぬなは)に合(かつ)してあ
つものとなしては胃(ゐ)
よはくして食(しよく)くだ
らざるをつかさどり
中をとゝのへ五ざうを
ます
○鮧(なまづ)は水腫(すいしゆ)を治(ぢ)し
小便(しやうべん)を利(り)し下血(げけつ)だ
つこうのいたみに葱(ひともし)
と同しく煮(に)て食(しよく)
してよし
【右丁下段挿絵】
䲍(ちん)《割書:おこじ》 魴鮄(はうぼ)
江猪(こうちよ)《割書:いるか》 鱪(しよ)《割書:しいら》
【右丁下段挿絵】
鱣(はん)《割書:ふか》 鮫(かう)《割書:さめ》
鯄(きう)《割書:かながしら》 鱠残魚(くはいざんぎよ)《割書:きすご》
【右丁上段】
○鯉(こい)は頭(かしら)より尾(を)に
いたるまで鱗(うろこ)に大
小なしみな三十六
鱗(りん)あり煮(に)て食(しよく)す
れば欬逆(がいきやく)上気(しやうき)黄(わう)
疸(だん)を治(ち)し渇水腫(かつすいしゆ)
を治(ぢ)す
○杜父(とふ)はいしもちと
もうしぬすびととも
又ふぐりくらひとも
いふなり五/臓(ざう)をおぎ
なひ脾(ひ)胃(ゐ)を和(くは)す
又/杜文(とぶん)はいかりいを也
土鯆(とほ)土鮒(とふ)土附(とふ)同
【左丁上段】
○鮞(はす)は虚労(きよらう)をおぎ
なふ油(あぶら)をとりてやけ
どにぬりて妙(めう)なり
○鱓(やつめうなぎ)は中(うち)をおぎな
ひ血(ち)をまし虚(きよ)をお
ぎなひさんこのあく
露(ろ)を治(ぢ)す
○鰻(うなぎ)は虫(むし)をころし瘡(かさ)
を治(ち)し脚気(かつけ)腰(こし)腎(じん)
のあいだの湿痺(しつひ)を治(ぢ)
し陽(やう)をたすく
○黄鱨(きゞ)はおゝく食(しよく)す
べからず脾(ひ)胃(ゐ)をそんじ
洩痢(せつり)す一名/黄顙(わうさう)
【右丁下段挿絵】
鯽(せき)《割書:ふな》 鮧(い)《割書:なまづ》 鯉(り)《割書:こひ》
【左丁下段挿絵】
杜父(とほ)《割書:うしぬすびと》《割書:ふぐりくらひ》 鮞(し)《割書:はす》
鱓(せん)《割書:やつめうなぎ》 《割書:小なるを》鰌鱓(しうせん)《割書:といふ》
鰻(まん)《割書:うなぎ》鰻鱺魚(まんれいぎよ)《割書:同》
【右丁上段】
魚といふ
○鰌(どぢやう)は中(うち)をあたゝめ
気(き)をまし酒(さけ)をさまし
かわきをやめ痔(ぢ)を治(ぢ)す
○金魚(きんぎよ)は藻(も)のうち
に生(しやう)ず甘(あまく)平毒(へいどく)なし
久痢(きうり)を治(ぢ)す銀魚(ぎんぎよ)
朱鯉(ひごい)朱鮒(ひぶな)あり
○年魚(あゆ)は煮(に)て食(しよく)
すれば憂(うれい)をやめ胃(ゐ)
をあたゝめ冷瀉(れいしや)を止(やむ)
○鮅(うぐひ)は眼(まなこ)あかく鱒(そん)と
なづく又一名/赤眼魚(せきがんぎよ)
ともいふ
【左丁上段】
○鱭魚(たちを)は火(ひ)をたす
け痰(たん)をうごかし疾(やまひ)を
発(はつ)し瘡(かさ)をはつす
多(おゝ)く食(しよく)すべからず
○鯃(こち)は能毒(のうどく)いまだつ
まびらかならず鯒(こち)
とも書(かく)なり
○河㹠(ふぐ)は虚(きよ)をおぎな
ひ湿(しつ)をさり腰(こし)脚(あし)
をおさめ痔(ぢ)をさり
虫(むし)をころす此(この)魚(うを)に
大/毒(どく)あり食(くらふ)べからず
○魥(はまち)は効能(こうのう)いまだつ
まびらかならず
【右丁下段挿絵】
黄鱨(わうしやう)《割書:きゞ》 鰌(ゆう)《割書:どぢやう》 金魚(きんぎよ)朱魚(しゆぎよ)《割書:同》
年魚(ねんぎよ)《割書:あゆ》銀口魚(ぎんこうぎよ)
【左丁下段挿絵】
鮅(ひつ)《割書:うぐひ》 鯃(ご)《割書:こち》
鱭魚(せいぎよ)《割書:たちを》鮆魚(せつぎよ)鮤魚(れいぎよ)/𩽣(へつ)魚(ぎよ)魛魚(とうぎよ)《割書:同》
河㹠(かとん)《割書:ふぐ》鯸䱌(こうい)《割書:同》
【右丁上段】
○小鮦(こんぎり)は鱧(はも)の少(ちいさ)き
ものなり功能(こうのう)はも
に同し
○鱵(さより)【㊟】は甘(あまく)平毒(へいどく)なし
これを食(しよく)すれば疫(えき)
病(ひやう)をやまず針魚(しんぎよ)同
○鱒(ます)は胃(ゐ)をあたゝめ
中を和(くは)す
○鰕(えび)は鼈瘕(へつか)を治(ぢ)し
痘瘡(とうさう)につけてよし
陽(やう)をさかんにし乳(ち)
を通(つう)ず小児(せうに)食(しよく)す
れは足(あし)よわくなる
蝦(か)同
【左丁上段】
○鰝(うみえび)は鮓(なます)にして食(しよく)
すれは虫(むし)くひばを
治(ぢ)し頭(かしら)のかさを治(ぢ)
す紅鰕(こうか)龍鰕(りうか)海(かい)
鰕(か)同
○河鰕(かか)はかはえび也
俗(ぞく)にてながゑびと云
○醤蝦(あみ)はゑびのこま
かなるものなり苗蝦(べうか)
線蝦(せんか)泥蝦(でいか)ともいふ
○麪條(しろうを)は中(うち)をゆるく
し胃(ゐ)をすこやかにし
水(みづ)を利(り)し欬(せき)をやむ
○蝦姑(しやくなげ)はゑびのたぐ
【右丁下段挿絵】
魥(ぎう)《割書:はまち》 小鮦(しやうたう)《割書:ごんぎり》
鱵(しん)【㊟】《割書:さより》 鱒(そん)《割書:ます》
【左丁下段挿絵】
鰕(か)《割書:えび》 鰝(かう)《割書:うみゑび》
河鰕(かか)《割書:てながゑび かはえび》
【㊟「鱵」は「魚+葴」】
【右丁上段】
ひなり海馬(かいば)といふは
この事なり産婦(さんふ)に
手にもたすれば平産(へいさん)
すといへり
○鰤(ぶり)は肝(かん)を利(り)し血(ち)
をおぎなふ脾(ひ)胃(ゐ)実(じつ)
するものはくらふ事
なかれ
○鰣(ゑそ)は虚労(きよらう)をおぎな
ふ油(あぶら)をとりてやけど
にぬりて妙(めう)なり
○鰚魚(はらか)は腹赤(はらか)とも
かくなりはらかの魚
を帝(みかど)に献(けん)ぜし事
【左丁上段】
あり
○矢幹魚(やからいを)ははもに
似(に)て色(いろ)あかし膈症(かくしやう)
のどに食(しよく)つまるを治(ぢす)
○青前(さごし)魚は諸病(しよびやう)に
いまず馬鮫(さはら)のちい
さきものなり
○鯡(にしん)は能毒(のうどく)つまび
らかならず猫(ねこ)の病(やまひ)を
いやす
○鱓(ごまめ)は鼡頭(いわし)魚の
ちいさきものなり能(のう)
毒(どく)いまだつまびらか
ならず
【右丁下段挿絵】
醤蝦(しやうか)《割書:あみ》 麪條(めんでう)《割書:しろいを》
蝦姑(かこ)《割書:しやくなぎ》 鰤(し)《割書:ぶり》
【左丁下段挿絵】
鰣(じ)《割書:ゑそ》 鰚魚(せんぎよ)《割書:はらか》 矢幹魚(しかんぎよ)《割書:やがらいを》
青前(せいせん)《割書:さごし》 鯡(ひ)《割書:にしん》
【右丁上段】
○水母(くらげ)は婦人(ふじん)の虚(きよ)
損(そん)積血(しやくけつ)こしけ小児(せうに)
の丹毒(たんどく)又やけとに付(つけ)
て妙(めう)なり
○烏賊(いか)は気(き)をまし
志(こゝろざし)をつよくし人に
益(えき)あり月経(ぐはつけい)を通(つう)す
○鱝(えい)は男子(なんし)の白濁(ひやくだく)
膏(かう)淋玉茎(りんぎよくけい)のいたみを
治(ぢ)す小/毒(どく)あり人に
益(えき)あらす海鷂魚(かいようぎよ)同
○土肉(なまこ)は元気(げんき)をおぎ
なひ五/臓(ざう)をまし三焦(さんせう)
の熱(ねつ)をさる鴨(かも)と同じ
【左丁上段】
く食(しよく)すべからず
○海馬(かいば)は血気(けつき)のいたみ
を治(ぢ)し水臓(すいざう)をあたゝ
め陽道(やうだう)をさかんにし
かたまりを消(せう)し疔(てう)
はれいたむによし
○海牛(すゞめいを)は功能(こうのう)いまだ
つまびらかならず
○章挙(たこ)は血(ち)をやしな
ひ気(き)をます冷(れい)なる
ものなれば脾(ひ)胃(い)よは
きものは食(しよく)すべからず
章魚(しやうぎよ)同/石鮔(せききよ)はあし
ながだこ飯蛌(はんくは)いゐだこ
【右丁下段挿絵】
鱓(せん)《割書:ごまめ》 水母(すいも)《割書:くらげ》海月(かいげつ)石鏡(せききやう)《割書:並同》
烏賊(うぞく)《割書:いか》 鱝(ふん)《割書:えい》邵陽魚(えい)魟魚(えい)鯆魮(えい)
【左丁下段挿絵】
土肉(とにく)《割書:なまこ》 海馬(かいば)
海牛(かいぎう)《割書:すゞめいを》 章挙(しやうきよ)《割書:たこ》
【右丁上段】
○鮪(しび)はかしらちいさく
してとがりかふとに似(に)
たり口(くち)おとがいの下(した)に
あり大なるは七八尺ばか
りあり
○䱱(さんせういを)は疫病(やくびやう)を治(ぢ)し
瘕(かたまり)を治(ぢ)し虫(むし)をころす
又/鯢(げい)とも書(かく)
○魚子(はらゝご)は目(め)のうちかす
むによし鱖(さけ)又は鯇(あかめ)にあり
○乾鱖(からざけ)は鱖(さけ)のしらぼし
なり能毒(のうどく)鱖(さけ)に同し
目(め)の玉(たね)は煮出(にだ)しによし
【左丁上段】
かつほにまされり
○鯟鯑(かずのこ)は鯡(にしん)の子(こ)なり
正月又はしうげんに用(もちゆ)
○鰑(するめ)は烏賊(いか)のほし
たるなり能毒(のうどく)いかに
同し産後(さんご)によろし
○鱲子(からすみ)は鯔(ぼら)の子(こ)
のほしたるなり
○鰭(き)は魚(うを)の背(せなか)をいふ
俗(ぞく)にひれといふ又はた
ともいふ鬣同/夏(なつ)は
陽気(やうき)上(かみ)にあるゆへ魚(うを)
の美味(びみ)鰭(ひれ)にあり冬(ふゆ)は
陽気(やうき)下(しも)に有ゆへに魚(うを)の
【右丁下段挿絵】
鮪(ゆう)《割書:しび》 䱱(てい)《割書:さんせういを》
【左丁下段挿絵】
鱲子(らうし)《割書:からすみ》 鯟鯑(とうき)《割書:かずのこ》 乾鱖(かんけつ)《割書:からざけ》
魚子(ぎよし)《割書:はらゝご》 鰑(しやく)《割書:するめ》
【右丁上段】
美味(びみ)腹(はら)にあり
○鱗(うろこ)は魚龍(ぎよりやう)のうろこ
なり鱗(うろこ)あるもの龍(りやう)
これが長(ちやう)なり鯉(こい)は大小
ともにせなかに鱗(うろこ)の数(かず)
三十六/鱗(りん)あり
○鰓(さい)は魚(うを)の頬(ほう)の中(なか)の
骨(ほね)なり俗(ぞく)にこれをえ
らといふ又おさとも云
○鰾(へう)は魚(うを)の腹中(ふくちう)に有
ふえといふ魚脬(ぎよはう)なり
膠(にかは)につくりてにべと云
【右丁下段挿絵】
鰭(き)《割書:はた ひれ》 鱗(りん)《割書:うろこ うろくず》
鰓(さい)《割書:えら おさ》 鰾(へう)《割書:ふえ にべ》
【左丁】
頭書(かしらがき)増補(ぞうほ)訓蒙(きんもう)図彙(づゐ)巻之十五
虫介(ちうかい)《割書:此/部(ぶ)には野草(やさう)にすむもろ〳〵の虫(むし)|川谷(せんこく)にすむ甲(かう)介ある虫(むし)の類(るい)をしるす》
【左丁上段】
○亀(かめ)は四/肢(し)ひき
つりなへたるにゝて
くらふ瀉血(しやけつ)血痢(けつり)
をとめ三十/年来(ねんらい)
の寒嗽(かんさう)を治(ぢ)す
○鼈(どうがめ)は瘀血(をけつ)を下し
陰(いん)を補(おぎな)ひ婦人(ふじん)の
難産(なんざん)腰痛(こしいたむ)を治(ぢ)す
○鱟(かぶとかに)は痔漏(ぢろ)を治(ぢ)す
虫(むし)をころす多(おゝ)く食(くら)
【左丁下段挿絵】
亀(き)《割書:かめ》 鼈(べつ)《割書:どうがめ すつほん》
【上段】
へは咳(せき)および瘡(かさ)を
はつす
○𧔒(かざめ)は一名を黄甲(わうかう)
といふがざめなり
○蟳(しまがに)は一名を蝤蛑(ゆうほう)
といふ小児(せうに)のつかへ熱(ねつ)
気(き)によし
○螺(さゞい)は瘰癧(るいれき)結核(けつかく)
むねのうち鬱気(うつき)
してのひざるを治ス
蠃(ら)蟸(れい)同
○田螺(たにし)は小便(せうべん)を利(り)
し目(め)の痛(いたみ)を治(ぢ)す
○蟹(かに)は血(ち)をさんじ
筋(すじ)をやしなひ気(き)
をまし食(しよく)を消(せう)す
うるしまけにすり
て付てよし螃(はう)
蠏(かい)郭索(くはくさく)同 石蟹(いしかに)
蟛螖(はうくはつ)あしはらかに螯(かにのかう)
○毛亀(みのがめ)は陽道(やうどう)をた
すけ陰血(いんけつ)をおぎなひ
精気(せいき)をまし痿弱(なへよはき)
を治(ぢ)す
○螄(ばい)は目(め)をあきら
かにし水(みづ)を下(くだ)し
渇(かつ)をやめ熱(ねつ)をさり
大小 便(べん)を利(り)し酒毒(しゆどく)
【下段】
𧔒(しん)
がざめ
鱟(こう)
かぶとがに
蟳(じん)
しまがに
田螺(でんら)
たにし
蟹(かい)
かに
螺(ら)
さゞへ
【上段】
を解(げ)す海螄(かいし)尖
螺 螺螄(らし)はにな
○蛤(はまぐり)は五 臓(ざう)をうるほ
し酒(さけ)をさまし胃(ゐ)
をひらき婦人(ふじん)の血(けwつ)
塊(くはい)によし
○蚶(あかゞひ)は五 臓(ざう)をうる
ほし胃(ゐ)をすこやか
にし中(うち)を温(あたゝ)め食(しよく)
を消(せう)し陽(やう)をおこす
○蜆(しゞみ)は胃(ゐ)をひらき
乳(ち)をつうじ目(め)を
あきらかにし小 便(べん)
を利(り)し脚気(かつけ)酒毒(しゆどく)
を治(ぢ)す
○蚌(からすがひ)は渇(かつ)をやめ熱(ねつ)
をのぞき酒毒(しゆどく)を解(げ)
し目(め)をあきらかにし
帯下(こしけ)によし蜯𧉻(はう〳〵)同
馬刀(ばたう)
○貝(たからがひ)は汁(しる)をとりあら
へば目(め)のいたみを止(やめ)菜(さい)
に合(かつ)し煮(に)て食(くらへ)ば心(しん)
痛(つう)を治(ぢ)す海𧵅(かいば)同
○蟶(まて)は虚(きよ)をおぎな
ひ痢(り)を治(ぢ)し胸中(けうちう)
の熱(ねつ)いきれをさる
○蛎(かき)は虚損(きよそん)を治(ぢ)し
【下段】
毛亀(もうき)
みのがめ
螄(し) ばひ
螺螄(らし) にな
蚶(かん)
あかがひ
魁蛤(くわいかう)
瓦壟子(くわらうし)
蛤(がう) はまぐり
蜆(けん)
しゞみ
扁螺(へんら)
【上段】
中(うち)をとゝのへ生(しやう)にて
くらへは酒後(じゆご)の熱(ねつ)を
さます
○鰒(あわび)は精(せい)をまし身(み)
を軽(かる)くし五 淋(りん)をつう
し目(め)を明(あき)らかにし
風熱(ふうねつ)労極(らうごく)によし
○車渠(ほたてがひ)は神(しん)をやすんじ
諸(もろ〳〵)の薬毒(やくどく)を解(げ)す
能毒(のふどく)あかゞひと同
○淡菜(みるくひ)は虚労(きよらう)精(せい)す
くなく腰痛(こしいたみ)疝気(せんき)帯(こし)
下(け)によし久(ひさし)く食(しよく)すれ
は人の髪(かみ)ぬくる
○辛螺(にし)は飛尸(ひし)遊(ゆう)
虫(ちく)に生(しやう)にて食(くら)ふ
べし
○梭尾螺(ほらのかい)は未(いまだ)【左ルビ:ず】_レ考(かんがへ)
法螺貝(ほらのかい)ともかく
○玉珧(たいらき)は巧用(こうよう)蚌(からすかい)
に同し多(おゝ)く食(しよく)
すれば風(かぜ)をうごか
す𧍧䗯(たいらぎ)ともかく也
○帽貝(ゑぼしかひ)はかたち帽(もう)
子(す)に似(に)たり能毒(のふどく)は
いまだつまびらかな
らず
○海燕(たこのまくら)は雨湿(うしつ)にあ
【下段】
蚌(はう)
からすがひ
貝(ばい)
たからがひ
蟶(てい)
まて
蠣(れい)
かき
肉(にく)を
蛎黄(れいわう)
といふ
鰒(はく)
あわび
石決明(せきけつめい)
九孔螺(きうこうら)
車渠(しやきよ)
ほたてがひ
淡菜(たんさい)
みるくひ
一名 穀菜(こくさい)
辛螺(しんら)
にし
香螺(かうら)
ながにし
梭(さ)
ほらのかひ
玉珧(ぎよくたう)
たいらぎ
海月(かいげつ)
馬頬(ばけう)
江跳(こうてう)
並同
【上段】
てられ身(み)いたむに
汁(しる)に煮(に)てくらふべ
し一名 陽遂足(やうすいそく)又
海盤(かいはん)ともいふ
○寄虫(がうな)は顔色(がんしよく)を
まし心志(しんし)をうるは
しうす
○海胆(うに)は能毒(のふどく)いま
だつまびらかならず
○郎君(すがい)は婦人(ふじん)の
なんざんに手(て)にもた
すれはうまる酢(す)の
中(なか)へ入れはうごくなり
○蛍(ほたる)は腐草(ふさう)又は
爛竹(らんちく)の根(ね)化(くわ)して
ほたるとなる夏(なつ)の
大 火気(くはき)を得(え)て化(くは)
すよつて光(ひか)り有
○蛬(きり〳〵す)は蟋蟀(しつそつ)とも
蜻蛚(せいれつ)ともいふ夏の
蝗(いなご)に似(に)て大(おゝい)なり補 夏(なつ)
の末(すへ)にいづる
○螻(けら)は土中(どちう)の泥(どろ)に
すむ土(つち)をくらふや
一名 土狗(どく)又は石鼠(せきそ)
ともいふ
○螳蜋(かまきり)はいほむじ
【下段】
帽貝(はうかい)
ゑぼしがひ
海燕(かいゑん)
たこのまくら
寄虫(きちう)
かうな
郎君(らうくん) すがひ
相思子(さうしし)同
海胆(かいたん)
かぶとがひ
蛍(けい) ほたる 丹鳥(たんてう)蠗々(よう〳〵)同 蛆蛍(そけい) みづぼたる
螻(ろう) けら
蛬(きやう) きり〳〵す
【右丁上段】
り仲夏(ちうか)に生ずいか
るときは臂(ひぢ)をかゝく
○絡線(こうろぎ)はきり〴〵
すともいふ一名/聒(くはつ)
々(〳〵)児(じ)いとゞといふも
此たくひなり
○螇蚚(けいれき)は一名/蟿(けい)
螽(とう)といふはた〳〵
むし俗(ぞく)にしやう
りやうむし
○竈馬(まるいとゞ)は一名/竈(そう)
雞(けい)といふかたち丸(まる)く
脚(あし)長(なが)し竈(かまど)のほ
とりにすむ
【左丁上段】
○蜻蛉(とんぼう)は六/足(そく)四の
つばさ夏(なつ)生(しやう)ずと
んでむしをとり
喰(くら)ふ (補)大(おゝい)なるをやん
まといふ
○赤卒(あかゑんば)はとんぼう
の色(いろ)赤(あか)きものなり
俗にあかやんまと云
黒(くろ)やきにして喉痺(こうひ)
を治(ぢ)す
○䘀螽(いなご)は稲(いね)に生(しやう)
す𧑄(しう)同
○/𧐍(はた)𧑓(〳〵)は一名/螽(しう)
斯(し)いなごに似たり
【右丁下段挿絵】
螳蜋(たうらう)《割書:かまきり》 絡線(らくせん)《割書:こうろぎ》
螇蚚(けいれき)《割書:しやうりやうむし》 竈馬(そうば)《割書:まるいとゞ》
【左丁下段挿絵】
蜻蛉(せいれい)《割書:とんぼう》 赤卒(せきそつ)《割書:あかゑんば》絳騶(かうすう)《割書:同》
䘀螽(ふしう)《割書:いなご》 /𧐍(しよう)𧑓(しよ)《割書:はた〳〵》
【右丁上段】
蝶(てふ)は蠺(かいこ)化(くわ)して
なる又/麦(むぎ)化(くは)して蝶(てふ)
となる鳳蝶(ほうてふ)はあげ
は胡蝶(こてふ)蛺蝶(けうてふ)野(や)
蛾(が)同
○蠅(はへ)は前足(まへあし)にて縄(なわ)
をなふかたちをなす
よつて虫へんに黽(なわ)の
字(じ)をかく爛灰(らんくはい)の内(うち)
より生ず
○金亀(たまむし)は大さ刀豆(なたまめ)
のごとし夏/蔓草(まんさう)
の中(うち)に生す
○灯蛾(ひとりむし)は燈(ともしび)をはら
【左丁上段】
ふを飛蛾(ひが)とも燭蛾(しよくか)
ともいふひとりむし
○馬蜂(くまばち)は虻(あふ)の大(おゝい)なる
ものなり色くろし
○叩頭(ぬかつきむし)ははたをり
むしとも (補)いねつき虫
ともいふ
○/𧉟(まつむし)は (補)七月の末(すへ)よ
り生(しやう)す声(こへ)枩風(まつがせ)の
音(をと)のごとし広野(くはうや)に
生ず
○金鐘(すゞむし)は一名/金鏡(きんけい)
児(じ)とも月鈴児(げつれいじ)とも
いふなり
【右丁下段挿絵】
蝶(てふ)《割書:あげは》 灯蛾(とうが)《割書:ひとりむし》
蠅(よう)《割書:はへ》 金亀(きんき)《割書:たまむし》
【左丁下段挿絵】
馬蜂(ばほう)《割書:くまばち》 叩頭(こうとう)《割書:ぬかつきむし》
𧉟(たい)《割書:まつむし》 金鐘(きんしやう)《割書:すゞむし》
【右丁上段】
鑾虫(くつはむし)はなく声(こへ)く
つはの音(をと)に似(に)たりよつ
て名(な)づく
○斑蝥(はんはう)は人に大毒(だいどく)
なり斑猫(はんめう)とも書(かく)
○紺蠜(かねつけとんばう)は水上(すいじやう)に飛(とん)で
虫(むし)をとる紺蝶(かんてふ)同
○齧髪(かみきりむし)は一名/天牛(てんぎう)
ともいふよく髪(かみ)をく
ひきる目(め)の前(まへ)に二
角(かく)あり
○蓑虫(みのむし)は一名/木螺(もくら)
結草(けつさう)といふ
○蜂(はち)は腐(くさる)菌(くさびら)化(くは)し
てなる毒尾(どくを)にあり
【左丁上段】
鋒(ほこ)のごとしよつて蜂(ほう)
といふなり
○蠧(のんし)はかいこにゝて木(もく)
中(ちうに)有て木(き)又/葉(は)を
くらふ木(き)をくらふを蝎(けつ)
といふ葉(は)をくらふを
蠋(しよく)といふ
○蟢(あしたかぐも)はあしながきく
もなり蟰蛸(せう〳〵)同
○蝉(せみ)は地虫(ぢむし)化(くは)して
なる口なふして鳴(なき)の
んで食(くら)はず
○蝸(かたつふり)は池(ち)沢(たく)草(さう)樹(じゆ)の
間(あいだ)に生(しやう)ずかたち螺(にし)
【右丁下段挿絵】
鑾虫(らんちう)《割書:くつわむし》 斑蝥(はんはう)《割書:はんめう》 齧髪(けつはつ)《割書:かみきりむし》
紺蠜(かんはん)《割書:かねつけとんばう》 蓑虫(さちう)《割書:みのむし》
【左丁下段挿絵】
蠧(と)《割書:のんし》 蜂(ぼう)《割書:はち》 蟢(き)《割書:あしたかぐも》 《割書:ぢよらうぐも》
蝉(せん)《割書:せみ》 蝸(くわ)《割書:かたつふり》蝸羸(くわら)《割書:同》 《割書:でんぐむし》
【右丁上段】
に似(に)て色(いろ)白(しろ)く角(つの)有
○䖟(あぶ)【㊟】は大(おゝい)なるを木(もく)
䖟(ばう)といふつばさを
以てなく声(こへ)䖟々(ばう〳〵)と
いふよつてなづく
○蛾(か)は蚕(かいこ)化(くは)して蛾(が)
となる灯蛾(とうが)の類(たぐひ)也
○/𧕪(えつ)螉(をう)はさそり又
螺羸(くはら)とも細腰蜂(さいようほう)と
も蒲芦(ほろ)ともいふ俗(そく)
にいふ似我蜂(じがばち)。
○気礬(へふりむし)は一名/行夜(かうや)
つばさ短(みじかく)して遠(とを)く
飛(とば)す
【左丁上段】
○蚋(ぶと) (補)は田野(でんや)に生(しやう)じ
雨(あめ)の前後(せんご)に飛(とん)で人
の肌(はだへ)をさす其(その)あと
愈(いへ)がたし
○蚊(か)は孑々虫(ぼうふりむし)化(くは)して
なる豹脚(へうきやく)はやぶが也
○孑孑(ぼうふりむし)はたまり水
くさりて生(しやう)ず化(くは)し
て蚊(か)となる一名/釘(てい)
倒虫(とうちう)
○蛙(かはづ)は惣名(さうみやう)なりね
ずみ色(いろ)にして背(せ)に小
紋(もん)がた有をかはづと云
なく声(こへ)美(び)なり水(すい)
【右丁下段挿絵】
䖟(ばう)《割書:あぶ》 蛾(か)《割書:ひゝり》 気礬(きはん)《割書:へふりむし》
𧕪(えつ)螉(をう)《割書:さゝり》
【左丁下段挿絵】
蚋(せい)《割書:ぶと》 蚊(ぶん)《割書:か》 孑孑(けつ〳〵)《割書:ぼうふりむし》
蛙(あ)《割書:かはづ》田雞(でんけい)水雞(すいけい)《割書:同》《割書:かはづ》 青蛙(せいあ)《割書:あまかへる》
蝌蚪(くわと)《割書:かへるこ》 蛭(しつ)《割書:てつ》【左側振り仮名】《割書:ひる》
【㊟「䖟」は「虻」の異体字】
【右丁上段】
中(ちう)に住(すむ)又/色(いろ)青(あを)きを
あまがへるといふ色(いろ)赤(あか)
きを赤(あか)がへるといふ
是(これ)を小児(せうに)に食(しよく)せし
めてよし
○蝌蚪(かへるこ)は蟇(ひきがへる)の子(こ)也
水中(すいちう)に生(しやう)ず蛞斗(くわと)
活東(くわと)並同
○蛭(ひる)は大なるを馬(むま)
蛭(ひる)といふよく人の血(ち)
をすふ
○蠼螋(はさみむし)はかたちむか
でに似(に)て色(いろ)黒(くろ)し
人の影(かげ)にいばりすれ
【左丁上段】
ば人かさを発(はつ)す
○蜈蚣(むかて)はせなか黒(くろ)く
みどり色(いろ)足(あし)あかく
腹(はら)黄(き)なりさゝれたる
人は烏鶏(くろきにはとり)の尿(くそ)又は
大蒜(おゝびる)をぬるべし
○蟾蜍(ひきがへる)は腹(はら)白(しろ)く黒(くろ)
き紋(もん)ありせなかにが
んぎあり油(あふら)を蟾(せん)
酥(そ)といふ薬(くすり)に用(もち)ゆ
○蝦蟇(がま)はせなかに黒(こく)
点(てん)あり身(み)小にして
よくおどる化(くは)して
鶉(うづら)となる
【右丁下段挿絵】
蠼螋(くしう)《割書:はさみむし》蛷螋(きうしう)搜夾(しうけう)《割書:同》 蟾蜍(せんじよ)《割書:ひきがへる》
蝦蟆(がま)《割書:かへる》 百足(はくそく)《割書:をさむし》
蜈蚣(ごこう)《割書:むかで》 蚰蜓(いうゑん)《割書:けじ〴〵》螾(いん)𧍢(えん)《割書:同》
【左丁下段挿絵】
蠓(もう:ぼう)《割書:しやう〴〵》 蚘(くわい)《割書:はらのむし》 蛆(そ)《割書:うじ》
糞蛆(ふんそ)《割書:くそむし》 蠐螬(せいさう)《割書:きりうじ》 蚯蚓(きういん)《割書:みゝず》
蛜蝛(いい)《割書:おめむし》 蟫(いん)《割書:しみ》 蚤(さう)《割書:のみ》
蝨(しつ)《割書:しらみ》 蟻(ぎ)《割書:あり》
【右丁上段】
○蚰蜓(けぢ〴〵)はむかでにゝ
て足(あし)長(なが)し毒(とく)あり
人の耳(みゝ)に入(いり)たるに
龍脳(りうのう)をふき入べし
○百足(おさむし)は長(なが)さ七八分
色(いろ)黒(くろ)し足(あし)百にいたる
一名/馬蚿(ばけん)
○蠓(しやう〴〵)は雨(あめ)によつて
生(しやう)じ陽(ひ)をみて死(しす)
□(うすひく)【虫+豊】がでかき時は風(かぜ)吹(ふく)
舂(うすつく)がごときときは
雨(あめ)ふる
○蚘(はらのむし)は人の腹中(ふくちう)に有
ながき虫(むし)なり蛔(くはい)同
【左丁上段】
脾(ひ)胃(ゐ)の湿熱(しつねつ)より
生ず
○蛆(うじ)は腐肉(ふにく)のあいだ
に生ず魚類(ぎよるい)畜類(ちくるい)の
肉(のく)のうちに生す鮓(すし)
の中(なか)にもわく蠁(きやう)同
○蠐螬(きりうじ)はかたち蚕(かいこ)の
ごとし樹根(しゆこん)又は糞(ふん)
土(ど)の中に生(しやう)ず身(み)みし
かく色(いろ)白(しろ)し蠀螬(しそう)
同 (補)又/小(ちいさ)く黒(くろ)きあり
○蚯蚓(みゝず)は雨(あめ)ふれば出
はるゝときは夜(よる)なく
○蛜蝛(おめむし)は一名/𧑓(しよ)蝜(ふ)
【右丁下段挿絵】
蜘蛛(ちちう)《割書:くも》 蚕(さん)《割書:かひこ》 蛣蜣(きつきやう)《割書:くそむし》
土蠱(どこ) 木虱(もくしつ)《割書:たにこ》 水(すい)𤼭(さう)《割書:とびむし》
【左丁下段挿絵】
水馬(すいは)《割書:しほうり》 蠑螈(ゑいげん)《割書:いもり》 蝘蜓(ゑんてん)《割書:やもり》
蜥蜴(せきてき)《割書:とかけ》 滑虫(くわつちう)《割書:あぶらむし》
【右丁上段】
虫といふ又は鼠婦
ともいふ
○蟫(しみ)は書中(しよちう)の白魚(しみ)
なり一名/蛃(へい)と云/俗(ぞく)
に蠧魚(とぎよ)といふ
○/𤼭(のみ)は床下(ゆかのした)土中(どちゅう)ゟ
生ず
○蝨(しらみ)は人 (補)の身(み)にわく
髪(かみ)にもわく又/毛(け)にも
有かたちかはれり
○蟻(あり)は大なるを蚍蜉(ひふ)
といふ小(ちいさき)を蟻(き)といふあ
りに君臣(くんしん)の義(き)あり
故(ゆへ)に義(ぎ)の字(し)をかく
【左丁上段】
○蜘蛛(くも)はぢようらうぐも
を花蜘蛛(くはちらう)といふ足(あし)たか
くもを蟢子(きし)といふむか
しの大昊(たいかう)くもをみて
あみをむすび出せり
○蚕(かいこ)は糸(いと)を吐(はく)虫(むし)なり
三たび俯(ふ)し三たび
起(をき)二十七日にして老(おふ)
黄帝(くはうてい)の元妃(けんひ)西陵(せいりやう)
氏(し)始(はじめ)て蚕(かいこ)をやし
なふて糸(いと)を作(つくる)
○蛣蜣(くそむし)はよく糞土(ふんど)
をうつて円(ゑん)をなす
糞虫(ふんちう)同
【右丁下段挿絵】
殻(かく)《割書:から》 蛻(たい)《割書:もぬけ》 蝉蛻(せんたい)《割書:うつせみ》
甲(かう)《割書:こう》 介(かい) 繭(けん)《割書:まゆ》
【左丁下段挿絵】
蛅蟖(せんし)《割書:いらむし》 豉虫(しちう)《割書:まひくむし》
蚇蠖(しやくくわく)《割書:しやくとり》 蛞蝓(くわつゆ)《割書:なめくぢ》
螲蟷(ちつたう)《割書:つちくも》
【右丁上段】
○土蠱(どこ)は (補)蛭(ひる)に似(に)て色(いろ)
黄(き)なり頭(かしら)耳(みゝ)かきの
ごとし俗(ぞく)にみゝかき蛭(びる)
といふ此(この)虫(むし)大毒(だいどく)あり
○木虱(こふ)は木(き)竹(たけ)より生
ず蝨(しらみ)に似(に)てまるく
青(あを)く灰色(はいいろ)なり壁(へき)
蝨(しつ)同/俗(そく)にいふたにこ
○水(とび)𤼭(むし)は一名/水蝨(すいしつ)と
いふ湿地(しつち)の土中(どちう)に生(しやう)
すよくとぶ目肬(めいぼ)に
つけてよし
○水馬(しほうり)は一名/水黽(すいよう)と
いふ水上(すいじやう)におよぐ水(みづ)
【左丁上段】
かるればとふ長さ一寸ば
かり四/足(そく)あり
○蠑螈(いもり)は水中(すいちう)に住(すむ)
せなか黒(くろ)く (補)腹(はら)赤(あか)く
四/足(そく)あり
○蝘蜓(やもり)は一名/守宮(しゆきう)
といふ此/虫(むし)を殺(ころし)て宮(きう)
女(ぢよ)の臂(ひぢ)にぬるに男(をとこ)
を犯(をかす)ことあればはぐる
おかさゞればはげずよつ
て守宮(しゆきう)といふ壁虎(へきこ)
蝎虎(けつこ)並同
○蜥蜴(とかけ)は (補)土中(どちう)にすむ
毒(どく)あり石龍子(せきりやうし)山龍(さんりやう)
【右丁下段挿絵】
壁銭(へきせん)《割書:ひらたぐも》 蝿虎(ようこ)《割書:はへとりぐも》
雀甕(じやくよう)《割書:すゞめのたご》 螵蛸(へうせう)《割書:おほぢがふぐり》
【左丁下段挿絵】
蟒(まう)《割書:うはばみ》 《割書:やまかゝち》
【右丁上段】
子(し)ならびに同
○滑虫(あふらむし)は一名/蜚蠊(ひれん)
といふかまどの辺(へん)に多(おほ)
し (補)羽(はね)有てとぶ色(いろ)黒(くろ)し
○殻(から)は蚌螺(ほうら)の類(たぐひ)のから
の惣名(さうみやう)也/蛤(はまぐり)のからを玄(けん)
明粉(みやうふん)といふ痰(たん)を治(ぢ)すは
いのふたを甲香(かうかう)といふ又
厴(えん)とも書(かく)たき物に入
鰒(あわび)の貝(かい)のからを石决明(せきけつめい)と云
目(め)の痛(いたみ)を治(ぢ)しはなぢをとむ
又かき貝(がい)のからを牡蠣(ぼれい)と
なづくよく盜汗(ねあせ)をとむる
○蛻(もぬけ)は蛇蛻(じやたい)はへびのきぬ
【左丁上段】
なり蛇皮(じやひ)共/蛇退(しやたい)とも云
黒焼(くろやき)にして酒(さけ)にて用(もち)ゆ
れは難産(なんざん)によし
蝉蛻(せんたい)は蝉退(せんたい)とも枯蝉(こせん)
共いふ粉(こ)にして油(あぶら)にて
とき耳(みゝ)だれに付れば治(ぢ)す
○甲(かう)は亀(かめ)の甲なりむ
かしは亀(かめ)をやいて甲(かう)の
紋(もん)を見て吉凶(きつけう)をうら
なふ事有/是(これ)を亀(き)
卜(ぼく)といふ又/薬(くすり)に用(もち)ゆ
れは腎(じん)を補(おぎな)ひ瘀血(をけつ)
を消(せう)す又/鱉甲(べつかう)は瘀(と)
血(けつ)を散(さん)じ腫(はれ)を消(せう)す
【右丁下段挿絵】
烏蛇(うじや)《割書:からすへみ》 両頭(りやうとう) 蛇(じや)《割書:くちなは》
銀蛇(ぎんしや)《割書:しろへみ》 蝮(ふく)《割書:まむし》 岐首(きしゆ)
【左丁下段挿絵】
蛅蟴(せんし)《割書:けむし》 /𧋪(べい)虫(ちう)《割書:こめむし》 吉丁虫(きつていちう)《割書:かぶとむし》
芋蠋(うしよく)《割書:いもむし》 蠛蠓(べつもう)《割書:かつほむし》 螱(い)《割書:はあり》
【右丁】
介(かひ)は蟹(かに)の甲(かう)なり○繭(まゆ)はかいこをかひて眉(まゆ)をつくらせ綿(わた)をとる蟓(しやう)はくはまゆ○蛅蟖(いらむし)は一名 黒髯虫(こくせんちう)といふ
木上に生(しやう)ず人をさせばはれいたむ○蚇蠖(しやくとりむし)は樹上(じゆじやう)に生ず行(ゆく)こと指(ゆび)にて尺(しやく)をとるがごとし○豉虫(まひ〳〵むし)は一名 豉母虫(しぼちう)と
いふ水中に生ず色黒(いろくろ)く小し○蛞蝓(なめくじり)は二 角(かく)あり蝸牛(くわきう)に似(に)たり一名 土蝸(どくわ)といふ○螲蟷(つちぐも)は土窟(とくつ)の中(うち)に
すむ一名 蛈蝪(てつたう)といふ古(ふる)きいわやに有○壁銭(ひらたぐも)は壁戸(かべと)などの間(あいだ)に有一名 壁鏡(へききやう)といふ巣(す)を壁繭(へきけん)といふ
○蝿虎(はいとりぐも)は一名 蝿豹(ようへう)といふ蝿蝗(ようくわう)蝿豹(ようへう)並同○雀甕(すずめのたご)は一名 蛅蟖房(せんしばう)といふいらむしの巣なり○螵蛸(おほぢがふぐり)は
木(き)の枝(えだ)にあり一名 螳螂房(とうらうばう)といふかまきりのすなり○蠎(うはばみ)は蛇(へび)の大(おゝい)なるものなり深山(しんざん)広野(くわうや)にすむ人を
のむなり○蛇(くちなは)は草中(さうちう)にすみて蛙(かはつ)を食(しよく)す蛇(じや)は惣名(さうみやう)なり○蝮(まむし)は蛇(へび)に似(に)て長(たけ)みじかく黒黄色(くろきいろ)なり
おとがひ黄(き)にかしら大に口とがり毒(どく)はなはたしくよく人をさす又ははみとも反鼻蛇(はんひじや)ともいふ○烏蛇(からすへび)は
身黒(みくろ)くひかりあり頭(しら)まるく眼(まなこ)あかし又 烏梢蛇(うせうじや)とも黒花蛇(こくくわじや)ともいふ○銀蛇(しろへび)は長さ一尺ばかり一名は
錫蛇(しやくじや)又 金蛇(こがねへび)といふ○両頭蛇(りやうとうじや)は一 頭(とう)は口目(くちめ)なし是(これ)をみれば不吉(ふきつ)なり一名 越王蛇(えつわうじや)といふ○岐首蛇は首
ふた岐(また)ある蛇(へび)なり枳首蛇(きしゆじや)とも書(かく)ことに毒(どく)あり触(ふる)べからず○螱(はあり)は飛蟻(とぶあり)なり朽木(くちき)より生ず
○吉丁虫(かぶとむし)はせなかみどりにかぶとのごとし此虫(このむし)をとりて身(み)におぶれは人を愛(あい)し媚(こば)しむ○芋蠋(いもむし)
芋(いも)の葉(は)に生(しやう)ず○蛅蟖(けむし)は木(き)の葉(は)より生じて枝(えだ)を食枯(くひから)す○𧋪虫(よねむし)は米(こめ)の中(うち)に生(しやう)ず俗(ぞく)にいふ
こくうぞう○蠛蠓(べつもう)はかつほむし順(したがふ)の和名抄(わみやうしやう)に見へたり
【左丁】
頭書(かしらがき)増補(ぞうほ)訓蒙(きんもう)図彙(づゐ)巻之十六
米穀(べいこく)
此部(このぶ)には五 穀(こく)の類(るい)すべて
くひ物のたぐひをしるす
【上段】
○粳(うるしね)は気(き)をまし胃(い)の気(き)を和(くわ)し
中(うち)を補(おぎな)ひ腎精(じんせい)をまし腸胃(ちやうゐ)をます
○糯(もちごめ)は中(うち)をあたゝめ気(き)をまし脾(ひ)
胃(い)をあたゝめ小 便(べん)をしゞめ虚(きよ)
寒(かん)洩痢(せつり)をとむ
○粟(あわ)は腎気(じんき)をやしなひ脾(ひ)
胃(ゐ)の熱(ねつ)をさり小 便(べん)を利(り)し
反胃(ほんい)を治(ぢ)す
○稷(きび)は気(き)をまし不足(ふそく)を補(おぎな)ひ
熱(ねつ)をのぞき中(うち)を安(やす)くし胃(い)を利(り)
し血(ち)をすゞしうし暑(しよ)を解(げ)す
○稲(たう)【左下ルビ「ね」】は禾(くわ)同かりいね
【下段】
早稲(わせ)
晩稲(をくて)
粳(かう)
うるしね
粝米(くろごめ)
精米(しらげ)
糯(だ)
𥻟米(だべい)同
もちのよね
穧(せい)はいなば苗(べう)はなへ又
苗代(なはしろ)ともいふ
○稗(ひえ)は中をおぎなひ気(き)
をまし腸胃(ちやうゐ)をあつくし
飢(うへ)をすくふ
○麦(むぎ)は虚(きよ)をおぎなひ血(けつ)
脈(みやく)をさかんにし五ざうを
実(じつ)し顔色(がんしよく)を益(ます)
○蕎(そば)は腸胃(ちやうゐ)を実(じつ)し気(き)
をくだし積滞(しやくたい)を和(くわ)し
熱腫(ねつしゆ)風痛(ふうつう)を消(せう)す
○菉(ぶんどう)は食(しよく)を消(せう)し気(き)を
くだし熱(ねつ)をさり毒(どく)を解(げ)
し小べんを利(り)し脹満(てうまん)
泄痢(せつり)をつかさどる
○麻(あさ)は女人(によにん)経候(けいこう)通(つう)ぜす
けんぼう金瘡(きんさう)内痔(ないぢ)を
治(ぢ)し悪血(あくけつ)をさる
○豇(さゝげ)は気(き)をまし腎(じん)をお
ぎなひ胃(ゐ)をすこやかにし
五ざうを和(くわ)し小便(しやうべん)しげ
きをとむ
○豌(えんどう)は小 便(べん)を利(り)し脹満(ちやうまん)
をつかさどり消渇(せうかつ)を治(ぢ)し
吐逆(ときやく)を治(ぢ)す胡豆(こづ)𧰆豆(ひつづ)な
らびに同
○菽(まめ)は水腫(すいしゆ)を治(ぢ)し悪血(あくけつ)を
さんじ脾胃(ひゐ)をすこやかに
し酒病(しゆびやう)を解(げ)し胃中(ゐちう)の
熱(ねつ)をさる
【下段】
粟(ぞく)
あわ
𥝰米(もちあわ)
梁米(うるあわ)
稷(しよく)
きび
丹黍(あかきび)
秬黍(くろきび)
稗(はい) ひえ
稊(てい)䄺(い)同
菉(りよく)
やへなり
ぶんどう
蕎(きやう)
そば
荍麦(けうばく)同
麦(ばく) むぎ
稞麦(くはばく)
むぎやす
【上段】
○荅(あづき)は水気(すいき)を下(くだ)し膿(うみ)
血(ち)をはらい小便(しやうべん)を利(り)し脹(ちやう)
満(まん)消渇(せうかつ)を治(ぢ)す
○藊(あぢまめ)は中(うち)を和(くわ)し気(き)を
くだし呕(ゑづき)をやめ五ざうを
おぎなひくわくらん酒毒(しゆどく)
を解(げ)す扁豆(へんづ)籬豆(りづ)眉豆(びづ)
ならびに同
○胡麻(ごま)は気力(きりよく)をまし肌(き)
肉(にく)を長(ちやう)じ筋骨(すぢほね)をかたく
し大小 腸(ちやう)を利(り)し耳目(みゝめ)
をあきらかにす
○罌粟(けし)は風毒(ふうどく)をさり邪(じや)
熱(ねつ)をおい痰(たん)を治(ぢ)し反胃(ほんゐ)を
治(ぢ)しかわきをうるほす
○蚕豆(そらまめ)は胃(ゐ)をこゝろよくし
臓腑(ざうふ)を和(くは)す一に胡豆(こづ)と
なづく
○玉黍(なんばんきび)は気(き)をまし中(うち)を和(くは)
し洩(くだり)をとめくわくらんくだり
腹(はら)をとめ小べんを利(り)す
○蜀黍(たうきび)は中(うち)をあたゝめ腸(ちやう)
胃(ゐ)をしぶらしくわくらんを
治(ぢ)す蘆穄(ろさい)萩穄(しうさい)同
○刀豆(なたまめ)は中(うち)をあたゝめ気(き)を
くだし腸胃(ちやうゐ)を利(り)ししや
くりをとめ腎(じん)をまし元(げん)
をおぎなふ
○黎豆(はつしやうまめ)は中(うち)をとゝのへ胃(ゐ)を
まし小 便(べん)をつうず狸豆(りづ)
【下段】
麻(ま) あさ
豇(かう) さゝげ
白角豆(しろさゝげ)
紫豇豆(あかさゝげ)
豌(ゑん)
のらまめ
ゑんだう
菽(しゆく)
まめ
荅(たう) あづき
藊(へん)
あぢまめ
いんげんまめ
【上段】
虎豆(こづ)ならびに同
○燕麦(からすむぎ)はあまく平(へい)どく
なし飢(うへ)をすくひ腸(ちやう)をな
めらかにす一名 雀麦(じやくばく)といふ
○穂(ほ)はいねのほなり芒(はう)は
のぎ秕(ひ)はしひなせ今按(いまあん)ず
るにみよさ
○藁(かう)はわらなり禾稈(くははい)禾(くは)
穣(じやう)稲草(たうさう)ならびに同 稈(はい)
心(しん)わらしべ稭(かい)䕸(かつ)秸(かつ)並同
○穀(こく)もみ禾(あわ)麻(あさ)粟(こめ)麦(むぎ)豆(まめ)
これを五 穀(こく)といふ種(しゆ)は
たね稃(ふ)はすりぬか
○萁(き)はまめがらなり𧯯(き)同
魏の曹植(そうちよく)詩(し)につくれり
○莢(けう)はまめのさやなり
豆角(づかく)なり藿(くはく)はまめのは
なり馬(むま)これをくらふ
○饅頭(まんぢう)はもとは肉餡(にくあん)をも
ちひし事なり小豆餡(あづきあん)
のものを素饅(そまん)といふ餡(あん)
なきものを蒸餅(せうべい)といふ
今(いま)は新製(しんせい)品々(しな〳〵)あり唐(とう)
饅頭(まんぢう)あるひは煎餅(せんべい)饅(まん)
頭(ぢう)などいふものあり
○飯(はん)はいひなり又めし
強飯(こうはん)はこはいひ赤飯(せきはん)はあづ
きめし乾飯(かんはん)はほしいひ水(すい)
飯(はん)は湯(ゆ)づけめし補 麦飯(ばくはん)は
むぎめし粟飯(ぞくはん)はあわのめし
【下段】
胡麻(ごま)
油麻(ゆま) 脂麻(しま)
芝麻(しま)
罌粟(あうぞく) けし
蚕豆(さんづ) そらまめ
燕麦(えんばく) からすむぎ
玉黍(ぎよくしよ) なんばんきび
蜀黍(しよくしよ) たうきび
刀豆(たうづ)
なたまめ 刀鞘豆(たうさうづ) 挟剣豆(けうけんつ)同
【上段】
○餅(べい)はもち麺餅(めんべい)なり
糕(かう)は粉餅(ふんべい)なり団子(だんご)なり
飯団(はんだん)はほたもち補 粟餅(ぞくへい)は
あわもち艾餅(かいへい)はよもぎもち
○糖(たう)はあめなり飴(い)同 湿糖(しつたう)
はしるあめ𩛿(せい)はかたあめ也
ともに老人(らうじん)をやしなふ
一種(いつしゆ)地黄煎(ぢわうせん)と名づくる
補 もの有 当時(たうじ)夏月(かげつ)に専(もつはら)
小児(せうに)に用(もち)ゆ
○糉(そう)はちまきなり粽(そう)同一に
角黍(かくしよ)といふ楚(そ)の屈原(くつげん)よ
りはじまりし事といふ也
古(いにしへ)は葦(あし)の葉(は)にてつゝみ五 色(しき)
の補 糸(いと)にて巻(まき)しとぞ今用(いまもち)
ゆる笹(さゝ)の葉(は)は腹中(ふくちう)によ
ろしからずといふ能々(よく〳〵)あく
けを出しよくゆてゝつかふ
べし
○索麺(そくめん)はむぎなわといふ
一名 索餅(さくへい)といふ補 又 温飩(うんどん)
蕎切(そばきり)冷麦(ひやむぎ)などいふ物をす
べて麺類(めんるい)といへり
○餢飳(ぶと)は俗(そく)に伏兎(ふと)とかけ
りあぶらあげの餅(もち)なり油(ゆ)
堆(たい)となづく
○環餅(くはんべい)はまがりなりあぶ
らあげの菓子(くはし)なり糫(くはん)
餅膏(へいかう)とも糫寒具(くはんかんく)とも
いふ巧菓(こうくわ)あぶらもち
【下段】
黎豆(れいづ)
八升まめ
萁(き)
まめがら
穂(けい) ほ
藁(かう)
わら
莢(けう)
まめのさや
穀(こく)
もみ
饅頭(まんぢう)
飯(はん) いひ
餅(べい)
もち
糖(たう)
あめ
糉(そう)
ちまき
【上段】
○酢漿(さくしやう)はすはまなりまた
酨(すはま)とも書(かく)べし俗(ぞく)に洲浜(すはま)
とかくなり
○焼餅(やきもち)は䭆(やきもち)とも書(かく)べし
串(くし)にさしたるをこがゝといふ
又 鳥(とり)のかたちにつくりて鶉(うつら)
やきと名づく
○粔籹(きよぢよ)はをこしごめなり糯(もち)
をいりて飴(あめ)にてかためたる
なり俗(ぞく)に奥米(をこしごめ)とかけり
丸(まる)き補を飴(あめ)おこしといひかと
あるを岩(いわ)おこしといふ
○煎餅(せんへい)は餅(もち)をひらめて
煎(いり)あぶりたるなり又 銭(せん)
餅(へい)とも書(かく)べし
【下段】
酢漿(さくしやう)
すはま
索麺(さうめん)
焼餅(やきもち)
餢飳(ぶと)
煎餅(せんべい)
巧果(あぶらもち)
粔籹(きよぢよ)
おこしごめ
環餅(くわんへい)
まがり
【手書き】
拾冊之内
【裏表紙】
【表表紙】
身体【手書き、赤字】
器用【手書き、赤字】
【題簽】
《題:《割書:増補|頭書》訓蒙図彙大成 四》
【見返し】
拾冊之内【手書き】
【左丁】
《題:頭書増補訓蒙図彙(かしらがきぞうほきんもうづゐ)巻(くはん)之五》
身体(しんたい)《割書:此部(このぶ)には耳(みゝ)目(め)鼻(はな)口(くち)毛(け)髪(かみ)頭(かうへ)足(あし)のたぐひ|すへて人(ひと)の身(み)のうへの事あるなり》
【左丁上段】
○頭(づ)頂(いたゞき)顖(おどりこ)蟀谷(こめかみ)額(ひたい)頬(ほう)輔(つら)
車(がまち)頷(おとがい)頸(くび)結喉(のんど)このほか靨(ゑくぼ)
黒子(ほくろ)黒痣(あざ)皺(しは)など有 首(しゆ)同
○口(くち)吻(ふん)咡(じ)ともにくちわき
とよめり唇(しん)はくちびる人中(にんちう)
ははなの下のみぞ齶(かく)はあぎと
○目(め)眼(まなこ)は肝(かん)の臓(ざう)のつかさ
どる所なり睛(ひとみ)眸(まな)眶(まかぶら)瞼(まぶた)外(ま)
眥(じり)内眥(まがしら)眵翳(まぐそまけ)涙(なみだ)雀目(とりめ)近(ちか)
視(め)瞟眼(すがめ)
○耳(みゝ)は腎(じん)のつかさとる所也
【左丁下段挿絵】
頭(づ)《割書:かしら》 耳(に)《割書:みゝ》
蟀谷(こめかみ) 頬(ほう) 輔車(つらがまち) 頸(くび) 輪廓(りんくはく) 垂珠(すいしゆ)
顖(あたま) 額(ひたい) 頷(おとがい) 結喉(のんど)
蟀谷(こめかみ) 頬(ほう) 輔車(つらがまち) 頸(くび) 鼻(び)《割書: |はな》
外眥 牙(け)《割書:きば》
口(こう) 目(もく) 上瞼 下瞼 眉(び) 歯(し)
《割書:くち》 《割書:め》 内眥 《割書:まゆ》 《割書:は》《割書:板(いた)|歯(ば)》
【右丁上段】
輪廓(りんくはく)はみゝのわ垂珠(すいしゆ)はみゝの
たびら耳門(にもん)はみゝのあな完(くはん)
骨(こつ)はみゝのほね耵聹(ていねい)はみゝ
くそ聤耳(ていに)はみゝだり聾(ろう)は
みゝしひ
○鼻(はな)は肺(はい)のつかさとる所
なり頞(あつ)ははなばしら鼻梁(びりやう)
同 準(じゆん)はなさき皶鼻(さひ)はざ
くろばな洟(てい)すゝばな衂(ちく)は
はなぢなり
○眉(まゆ)年(とし)たけたるを眉寿(びじゆ)
といふ睫(まつげ)
○歯(は)は骨(ほね)のあまり腎(じん)のつか
どる所なり牙(きば)板歯(むかば)齨(うす)
歯(ば)齲歯(むしくひば)齦(はぐき)齗(同)《振り仮名:歯𡏋|はがすみ》【注】
○舌(した)は釈名(しやくみやう)に舌(ぜつ)は巻(けん)なり
【左丁上段】
食物(しよくもつ)を巻(まき)制(せい)して落(おち)ざら
しむ涎(ぜん)はよだれ唾(だ)はつば
き心(しん)の臓(さう)これをつかさどる
○髪(ばつ)は頭髪(つばつ)なり胎髪(たいばつ)
はうぶかみ髻(けい)はもとゞりなり
鬟(くはん)はみづら
○鬚(しう)は釈名(しやくみやう)に秀(しう)なり
物(もの)成(なつ)て秀(ひいで)人(ひと)成(なつ)て鬚(ひげ)生(しやう)
す髯(ぜん)はほうひげ
○髭(し)字彙(じい)に髭(し)は口上(こうじやう)
の毛(け)を髭(し)といふ下にある
を鬚(しう)といふ頬(ほう)にあるを髯(せん)
といふなり
○鬢(びん)は額(ひたいの)旁(かたはら)の髪(かみ)也 鬂(びん)髩(びん)
同 䭮(ふつ)はひたいがみ蝉髩(せんびん)はつと
○筋(すぢ)は絡脈(らくみやく)なり肝(かん)の臓(ざう)
【右丁下段挿絵】
舌(ぜつ)《割書:した》 鬚(しう) 髭(し) 鬢(びん)
《割書:したひげ| 》 《割書:うは| ひげ》
髪(はつ)《割書: |かみ》 筋(きん)《割書:す| ぢ》
毛(もう)《割書: |け》 顱(ろ)《割書:は| ち》 骨(こつ)《割書: |ほね》
【左丁下段挿絵】
腹(ふく)《割書:はら》
肋
《割書:缺|盆》 胸 鳩尾 臍 《割書:小|腹》
肋
背(はい)《割書:せなか》
腢 膁 臀
胛 脢
項 脊 尻
胛 脢
腢 膁 臀
【注 「𡏋」は寛文版は「垽」】
【右丁上段】
のつかさどる所なり色(いろ)あをし
醋(す)をのめば筋ゆるぐ
○毛(け)は血(ち)のあまりなり毫(がう)
同 肺(はい)のつかさどる所なり
旋毛(せんもう)《割書:つし》皮(ひ)《割書:かわ》膚(ふ)《割書:はだへ》
皴(しゆん)《割書:しは》
○顱(ろ)は頭骨(づこつ)なり顱会(ろくはい)は
頭(かしら)のはち髑髏(どくろ)はしやれかう
へ脳(のう)はなづき
○骨(こつ)は肉核(にくかく)なり骸(がい)同 髓(すい)
ほねのあぶら節(せつ)ふし
○腹(はら)缺盆(かたほね)胸(むね)肋(あはらぼね)鳩尾(みづをち)
臍(ほそ)小腹(ほがみ)乳(ち)肚(わきばら)前陰(ぜんいん)陰(いん)
茎(きやう)陰嚢(いんのう)脂似(しじ)なり
○背(せなか)項(うなじ)肩(かた)腢(かたさき)胛(かひかね)脢(そじし)腰(こし)
膁(よはごし)髂(こしぼね)尻(しり)臀(いざらひ)膂(せほね)脊(せ)
【左丁上段】
○手(て)掌(しやう)はたなごゝろ腕(わん)は
たゞむきうで臂(ひ)はひぢ肘(ちう)は
ひぢしり肱(かう)はかいな
○脚(あし)足(そく)同 胯(こ)また腿(たい)もゝ
膝(しつ)ひざ脛(けい)はぎ臁(れん)むかばき
膕(こく)ひつかゞみ腓(ひ)こむら跗(ふ)あし
のかう蹠(せき)あしのうら踵(てう)くびす
○指(ゆび)大指(たいし)おほゆび拇(ぼ)同 食(しよく)
指(し)ひとさしゆび中指(ちうし)たけたかゆ
び又 将指(しやうし)ともいふ無名指(むみやうし)べに
つけゆび小指(しやうし)こゆび又 季指(きし)共いふ
○拳(けん)は手(て)を屈(かゞむ)るなりにぎ
りこぶしなり
○乳(ち)説文(せつもん)に人(ひと)および鳥(とり)子(こ)
をうむを乳(にう)といふ獣(けだもの)を産(さん)と
いふ嬭(ねい)奶(ない)ならびに同じ
【右丁下段挿絵】
脚(きやく)《割書:あし|》 腿(たい)《割書:もゝ|》 膕(くわく)《割書:ひかゞみ》 腓(ひ)《割書:こむら》 内踝(ないくわ)《割書:うち|くるぶ| し》 踵(てう)《割書:きび| す》
内臁(ないとん)《割書:むかばき|》 跗(ふ)《割書:あしの| かう》 蹠(せき)《割書:あしの| うら》
手(しゆ)《割書:て|》 肱(かう)《割書:かひ| な》 肘(ちう)《割書:ひぢしり》 臂(ひ)《割書:ひぢ》 腕(わん)《割書:うでくび|》 掌(しやう)《割書:たな| ごゝろ》
【左丁下段挿絵】
拳(けん)《割書:こぶし》 肋(ろく)《割書:あばら| ぼね》
指(し)《割書:ゆび|》 心(しん)《割書:むね|こゝろ》《割書:肺系|脾系|肝系|腎系》 肺(はい)《割書:ふく〳〵| し》
乳(にう)《割書:ち》 脾(ひ)《割書:よこし》
【右丁上段】
○肋(あはらほね)は釈名(しやくみやう)に肋(ろく)は勒(ろく)なり
五 臓(ざう)を撿勒するゆゑん也
かたはらぼねたすけのほね
あばらぼね液(えき)【注】脇(けう)脋(けう)なり
びにわきなり
○心(しん)は五 臓(ざう)のうちにして
一身(いつしん)の主(しゆ)なり胸(むね)のあいだ
にあり色(いろ)あかし火(ひ)なり
○肺(はい)は五 臓(ざう)のうちなり胸(むね)
のあいたにあり蓮花(れんげ)をうつ
むけたるかたちのごとし
六 葉(よう)両耳(りやうに)あり孔(あな)ありて
よく声(こゑ)をいだし痰(たん)を生(しやう)
ず色白し金(かね)なり
○脾(ひ)は五 臓(ざう)のうちなり土
なり食(しよく)ふくろなり色(いろ)黄(き)
【左丁上段】
なり腹(はら)の中脘(ちうくはん)にあり
○腎(じん)は五 臓(ざう)のうちなり
腰(こし)にあり水(みづ)なり色(いろ)くろ
しかたち卵(たまご)のごとし左(ひだり)
にあるは腎(じん)なり右(みぎ)に有
は命門(めいもん)なり
○肝(かん)は五 臓(ざう)のうちなり
左(ひだり)のわきにあり木(き)なり
【右丁下段挿絵】
腎(じん)《割書:むらと》 膽(たん)《割書:ゐ》
肝(かん)《割書:きも》 《割書:膀(ぼう)|胱(くはう)》《割書:ゆばり》
包絡(はうらく) 胃(い)《割書:くそ| ぶくろ》
【左丁下段挿絵】
腸(ちやう)《割書:はらわた》 胞胎(はうたい)《割書:はう| ごもり》
《割書:小(せう)|腸(ちやう)》 《割書:大(だい)|腸(ちやう)》 胎衣(たいい)《割書:ゑな》
【おおよそ上から下に右から左の順に】
臓(ざう)
腑(ふ)
脳 髓海 至陰 通骶 喉通気 咽通食
膻中 肺 肺 肺 肺 肺 肺 心包 心
脾系 胃系 肝系 腎系
膈膜 脾 脂■【月+曼】 賁門 胃 幽門
肝 肝 肝 肝 肝 膽 肝 腎
臍 小腸 闌門 大腸
丹田 膀胱 命門 直腸
溺道 精道 穀道 尻
【注 「液」は寛文版は「腋」】
【右丁】
色(いろ)あをし七 葉あり魂(こん)のかくるゝ所なり○膽(たん)は肝(かん)の臓(さう)の腑(ふ)なり肝(かん)の下に有
膽(たん)のぼるときは人いかりを生(しやう)ず○小腸(しやうちやう)は心(しん)の臓(さう)の腑(ふ)なり色(いろ)あかし小便(しやうべん)
これよりつたへて膀胱(ばうくはう)にいづるなり○大腸(だいちやう)は肺(はひ)のさうの腑(ふ)なり腰(こし)にあり
十六 廻(くわい)あり色(いろ)しろしはらわたといふはこれなり○胃(ゐ)は脾(ひ)のざうの腑(ふ)なり食(しよく)
物を脾(ひ)よりつたへて大腸(だいちやう)にをくるくそぶくろなり○包絡(はうらく)は心包絡(しんはうらく)なり命門(めいもん)
の下 右腎(うじん)の上にあり心包絡(しんはうらく)といふその腑(ふ)を三 焦(せう)といふ○膀胱(はうくはう)は腎(じん)の臓(ざう)の腑(ふ)
なり小便(しやうべん)ぶくろなり水分(すいぶん)の穴にて水穀(すいこく)分利(ぶんり)して穀(こく)は大腸(たいちやう)へゆき水(みづ)は膀胱(ばうくはう)
へゆくなり
○臓腑(ざうふ)心(しん)肝(かん)腎(じん)肺(はい)脾(ひ)を五 臓(ざう)といふ小腸(しやうちやう)大腸(だいちやう)胃(ゐ)膀胱(ばうくはう)三 焦(せう)膽(たん)を六 腑(ふ)と
いふ○胞胎(はうたひ)はらごもりなり五 臓論(ざうろん)に曰一月は珠露(たまつゆ)のごとし二月は桃花(もゝのはな)のごと
し三月は男女(なんによ)わかる四月は形象(かたち)そなはる五月は筋(すぢ)骨(ほね)なる六月は毛(け)髪(かみ)生(しやう)ず
七月はその魂(こん)をあそはしむ兒よく左(ひだり)の手(て)をうごかす八月はその魄(はく)をあそばしむ
兒(に)よく右(みぎ)の手(て)をうごかす九月は三たび身(み)を転(てん)す十月は気(き)をうくる事 足(たる)
【左丁】
《題:頭書増補訓蒙図彙(かしらがきぞうほきんもうづゐ)巻之六》
衣服(いふく)《割書:此部(このぶ)には衣裳(いしやう)冠帯(くはんたい)すべて|きる物(もの)のたぐひあり》
【左丁上段】
○冕(へん)は天子(てんし)の冠(かふり)なり十二 𦀠(りう)有
前(まへ)にたれたるは邪(よこしま)を見まじき
ためなり旁(かたはら)に黈纊(とうくはう)といふ物あり
讒言(さんげん)を聞(きゝ)まじき為(ため)なり
○冠(くはん)は貫(くはん)なり髪(かみ)を貫(つらぬき)つゝむ也
と釈名(しやくみやう)にみへたり冠(かんむり)は首(かしら)にある
ゆへ元(けん)に从(したが)ふ法制(ほうせい)有ゆへ寸(すん)に从
○和冠(わくはん)は漆塗(うるしぬり)にして紗(しや)也 髪(かみ)を
おほふ物を巾子(こし)と云うしろに立(たち)
たる物を羅(ろ)と云 貫(つらぬく)物を串(くし)
といふ又 簪(かんざし)ともいふ
○纓(ゑい)は冠(かむり)のうしろにたるゝ物也
今 燕尾(ゑんび)といふ紗(しや)にて作(つく)る
【左丁下段挿絵】
冕(べん)
《割書:たま| の|かむり》
唐冠(たうかふり)
《割書:官|品 ̄ノ|玉-|冠》
冠(くはん)
串
かうぶり
巾子 かむり
簪
緌(い)
纓(えい)
【右丁上段】
○幞(ぼく)は後周(ごしうの)武帝(ふてい)のつくり
はじめ給ふ唐人(とうじん)のかむり也
幅巾(ひとはばのぬの)を戴(たい)して四/脚(あし)を出す
○緌(い)は両方(りやうはう)耳(みゝ)をおほふ物なり
冠(かむり)の紐(ひも)なり領の下に垂(たる)る物也
○巾(きん)は頭巾(つきん)なりその製(せい)品(しな)
おなじ方(けた)なるを巾(きん)といひ円(まとか)
なるを帽(ばう)と云ともいへり
○帽(ばう)は頭衣(づい)なり唐(もろこし)には上
官(くはん)より下官(げくはん)にいたるまでも
帽(はう)をきる冠(かむり)の下(した)にきる物なり
○帽子(もうす)は僧(そう)の冠(かむり)なり仏会(ぶつゑ)
法事(はうじ)のとききるなり
○笏(こつ)は手板(しゆはん)なり天子(てんし)は玉(たま)
諸候(しよこう)【侯の誤】は象牙(さうげ)太夫(たいふ)は魚須(うをのひれ)文(ま)
竹(だけ)士(し)は木(きに)籀文(こりんじ)をほりてみな
用(もち)ゆ官人(くはんにん)の手(て)にもつ物なり
○烏帽(うばう)は紙(かみ)にてつくり漆(うるし)に
【左丁上段】
てぬるなり左折(ひたりをり)は侍従(じしう)以上
着(ちやく)す右折(みきをり)は五 位(い)已上(いしやう)これを
着(ちやく)す侍従(じじう)以上(いじやう)は糸(いと)の緒(を)四
位(い)已下(いげ)は紙(かみ)の緒(を)にて結(むす)ぶ
○袞(こん)は天子(てんし)の御衣裳(おんいしやう)なり
一に竜(れう)二に山(さん)三に花虫(くはちう)四に
火(くは)五に虎(とら)以上 衣(ゐ)に有六に
藻(さう)七に粉米(ふんべい)八に黼(ほ)九に黻(ふつ)
以上 裳(しやう)にありこれを九/章(しやう)
の御衣(ぎよい)といふ
○裳(しやう)は上(うへ)を衣(い)といひ下(した)を
裳(しやう)といふ裳(しやう)の紋(もん)の事/藻(さう)
粉米(ふんべい)黼(ほ)黻(ふつ)なり九 章(しやう)の内(うち)
なり天子(てんし)御衣(きよい)の裳(しやう)なり
○珮(はい)は官人(くはんにん)の腰(こし)におぶるもの
なり上(かみ)に双衡(さうかう)あり衡(かう)の長(なが)
さ五寸ひろさ一寸 下(した)に双璜(さうくはう)
あり璜(くはう)のわたり三寸也/蠙(ひん)
【右丁下段挿絵】
幞(ぼく) 唐巾 巾(きん) 頭巾(づきん)
幞頭 笏(こつ)《割書:しやく》 木笏(もくしやく) 牙笏(げしやく)
帽(ばう) 帽子(もうす) 烏帽(うばう) 《割書:ゑ| ぼ| し》
【左丁下段挿絵】
袞(こん) 裳(しやう)《割書:も|》
珮(はい)《割書:をもの》 帯(たい)《割書:をび》
【右丁上段】
珠(しゆ)をその間(あいた)におさむ
○帯(たい)は字(じ)のかたち珮玉(はいぎよく)を
つなぐかたちなり石帯(いしのおび)
あり下帯(さげおび)有 掛帯(かけをび)あり
○袍(はう)はながき繻絆(じゆばん)なり
今(いま)朝廷(てうてい)へ出仕(しゆつし)のとききる
服(ふく)を袍(はう)といふ又ふるわたを
いれたる服(ふく)を縕袍(をんはう)といふそ
めたるを素袍(すはう)といふ
○衫(さん)は小襦(しやうじゆ)なりはだぎ也
袖端(そではし)なきを衫衣(さんい)といふ又
紗衫(しやさん)布衫(ふさん)偏衫(へんさん)あり
類(るい)おなじ公服(こうふく)の下着(したぎ)なり
○袴(こ)は股衣(こい)なり又 大口(おほくち)
袴(はかま)あり襞襀(ひだ)あり俗(ぞく)に
上下(かみしも)といふ上(かみ)を褶(しう)といひ下(しも)
を袴(こ)といふ
○靴(くわ)は革(かは)のくつなり官人(くわんにん)
【左丁上段】
これをはく石公(せきこう)が靴(くつ)李白(りはく)
が殿上(てんじやう)の靴(くつ)これなり日本(につほん)に
ては鞠(まり)の靴(くつ)これなり官人(くはんにん)
僧(そう)などの韈(くつ)は異(こと)なり
○裾(きよ)は衣裳(いしやう)のあとにさがる
ものなり俗(ぞく)にとびの尾(お)と
いふなり
○裙(くん)は婦人(ふじん)の下(した)にきる裳(も)
なり帬(くん)につくるべし唐(から)に
もあかく染(そむ)るゆへに茜(せん)【左ルビ:あかね】裙(くん)と
いふなり
○半臂(はんひ)は楽人(がくにん)又 能衣裳(のふいしやう)
などにあり袖(そで)のゆきみじ
かくして半(なかば)臂(ひぢ)いづるゆへに
なづくるなり
○奴袴(ぬこ)はさし貫(ぬき)のはかま也
禁中(きんちう)にて女中(ぢよちう)のきるは
かまなり女のきるは色(いろ)赤(あか)く
【右丁下段挿絵】
袍(はう)《割書:うへの| きぬ》 衫(さん)《割書:かた| びら》
袴(こ)《割書:は| かま》 靴(くわ)《割書:く【かの誤ヵ】わのくつ》
【左丁下段挿絵】
裾(きよ) 裙(くん)《割書:も》
半臂(はんひ) 奴袴(ぬこ)《割書:かり| ば| かま》
【右丁上段】
そむるなり
○缺掖(けつゑき)は大臣(たいしん)のしやうぞく
又は能衣裳(のふいしやう)にあり両掖(りやうわき)
缺(かけ)ほころびたるゆへになづく
○襟(きん)は衣(ころも)の衽(ゑり)にまじはる
所なり内襟(ないきん)はしたがひ外(げ)
襟(きん)はうはがひなり
○袊(れい)はころものくびなり領(れい)
とおなじ綱領(かうれい)要領(ようれい)といふ
も領(れい)は衣(ころも)のゑりぐひの事
にとる
○布衣(ほい)は狩衣(かりきぬ)に紋(もん)なきを
いふ下官(げくはん)の服(ふく)するものなり
紋(もん)あるを狩衣(かりぎぬ)といふこれは
高位(かうい)のめさるゝ服(ふく)なり
○袖(しう)は衣(ころも)の袂(たもと)なり長袖(ちやうしう)はふ
りそで袪(きよ)はそでぐち
○袈裟(けさ)は大衣(たいゑ)七/條(でう)五/條(てう)是(これ)
【左丁上段】
を三/衣(ゑ)といふ大衣(たいゑ)は九/條(てう)より
二十五/條(でう)にいたる僧衣(そうい)なり
○直掇(ぢきとつ)は僧服(そうふく)なりいにしへ
は偏衫(へんさん)《振り仮名:𢂽子|くんす》を服(ふく)すのちに
上下(じやうげ)をつらねて直掇(ちきとつ)と名(な)
つくるなり
○魚袋(ぎよたい)は官人(くはんにん)の腰(こし)に帯(おぶ)る
ものなり公卿(くぎやう)は金魚袋(きんぎよたい)四(し)
品(ほん)以下(いげ)は銀魚袋(ぎんぎよたい)なり
○革帯(かくたい)は公家衆(くげしう)装束(しやうそく)の
上(うへ)にする帯(をび)なり金帯(きんたい)玉(ぎよく)
帯(たい)石帯(せきたい)角帯(かくたい)あり
○韈(べつ)はたびなり足袋(たび)と
も単皮(たび)とも書(かく)なり又は
韈子(へつす)といふ
○絡子(らくし)は又/掛子(くはし)となづく又
掛絡(くはら)ともいふ俗(ぞく)あやまつて
環(くはん)を掛落(くはら)とよぶ
【右丁下段挿絵】
《割書:缺(けつ)|掖(ゑき)》 袊(れい)《割書:ゑ|り》
襟(きん)《割書:ゑ|り》 布衣(ほい)
袖(しう)《割書:そ|で》
【左丁下段挿絵】
袈裟《割書:けさ》 直掇(ぢきとつ)
魚袋(ぎよたい) 韈(へつ)《割書:したう| づ》
革帯(かくたい)《割書:いしの| をび》
【右丁上段】
○幅巾(ふくきん)は白(しろ)ききぬにてつ
くる深衣(しんい)をきて緇布冠(しふくはん)
してこれをもつて冠上(くはんじやう)
をつゝむなり唐人(とうじん)の裳(しやう)ぞく也
○緇布冠(しふくはん)はくろきぬのにて
つくるなり
○帨(せい)は手(て)のごひなり帨巾(せいきん)
ともいふ手(て)のごひかげを帨(せい)
架(か)といふ
○帕(はく)は紅絹(もみのきぬ)にて額(ひたい)を抹(つゝむ)
をいふとあり帛(はく)はふくさ物
帊衣(はい)包袱(はうふく)並同
○履(り)は草(くさ)を屝(ひ)といふ麻(あさ)を
屨(ろう)といふ皮(かわ)を履(り)といふされ
ども木(き)にてつくる
○被(ひ)は寝衣(しんい)なり俗(そく)に夜(よ)
着(ぎ)といふ又/睡襖(すいをう)ともいふ
又/被(かふむる)_レ襖(ふすまを)
【左丁上段】
○毛裘(もうきう)は麑(かこ)又/狐(きつね)の皮(かは)にて
つくる衣服(いふく)なり寒気(かんき)を
よくふせぐ異朝(いてう)にて上人(じやうにん)
冬月(とうけつ)これをきる
○深衣(しんい)は儒者(じゆしや)の着(ちやく)する
衣服(いふく)なり白(しろ)き布(ぬの)にてつ
くる帯(をび)も白(しろ)し五采(こさい)の糸(いと)
をもつて帯(をび)のむすひめを
固(かた)む又/黒色(くろいろ)にそむるも有
○涎衣(せんい)は小児のよだれか
けなり幃涎(いせん)同
○裹脚(くわきやく)ははゞきなり脚(きや)
絆(はん)なり裹脚(くわきやく)は裹(つゝむ)_レ脚(あしを)と
よめり又/脛巾(けいきん)行纏(かうてん)、行(かう)
縢(とう)ならびにはゞきとよむ
○幄(あく)は上下/四方(しはう)こと〴〵く
まとふて宮室(きうしつ)にかたど
るを幄(あく)といふ大将(たいしやう)の居(ゐる)所
【右丁下段挿絵】
絡子( らくし)《割書:くは| ら》 履(り)《割書:く|つ》 《振り仮名:■皮履|くりかわのくつ》【注】 浅履(あさぐつ)
幅巾(ふくきん) 《割書:緇(し)|布(ふ)|冠(くはん)》
帨(せい)《割書:ての| こひ》 帕《割書:ころも| つゝみ》 被(ひ)《割書:ふすま》 睡襖(すいをう)
【左丁下段挿絵】
《割書:毛(もう)|裘(きう)》《割書:かはごろも》 涎衣(ぜんい)《割書:よだれかけ》
《割書:深(しん)|衣(い)》 《割書:裹(くわ)|脚(きやく)》《割書:きや| はん》
【注 ■は「烏」の誤記ヵ】
【右丁上段】
なり物見(ものみ)なきを幄(あく)といふ
周(しう)の世(よ)よりはじまれり
○幕(まく)は周(しう)の世(よ)よりはじまれ
りよこ幅(はゞ)にして物見(ものみ)あるを
幕(まく)といふ布(ぬの)十二/端(たん)を二/張(はり)と
して十二/月(つき)を表(へう)し乳数(ちかず)廿
八を廿八/宿(しゆく)に表(へう)す
○幔(まん)は十二/幅(はゞ)紋(もん)を出(いだ)さず竪(たて)
幅(の)ばかりにして上(うへ)のよこ𬏈(の)
なし下(した)のぬひはづし纐(きく)
纈(とぢ)なし乳付(ちつき)又はぬひなく
見にもするなり
○座具(ざぐ)は僧衣(そうい)なり仏(ほとけ)を礼(らい)
するとき下(した)にしく物也/三衣(さんゑ)一(いち)
鉢(はつ)座具(ざぐ)漉水嚢(ろくすいのふ)これを僧(そう)
の六/物(もつ)といふ
○縁道絹(えんどうのきぬ)は法事(はうじ)のとき客(きやく)
殿(でん)より堂(だう)へ行(ゆく)道(みち)に布(ぬの)をしく
【左丁上段】
を云又/打敷(うちしき)水引(みづひき)を云ともいへり
○夾衣(かうい)は今(いま)云あはせなり裌(かう)
袷(〳〵)同し単衣(たんい)はひとへもの
絮衣(ぢよい)はわたいれ 表(へう)《割書:お|も|て》裏(り)《割書:う|ら》
○帳(ちやう)は女(をんな)のかたなる所也/几帳(きちやう)
帷帳(いちやう)なり又/蚊帳(かちやう)段(どん)帳/綿(めん)
帳(ちやう)紙帳(しちやう)あり
○褥(じく)はしとねなり臥具(ぐはぐ)なり
蓐茵(しくいん)并(ならびに)同/蓐茵(しくいん)は草(くさ)のし
とねなり褥(しく)は絹(きぬ)のしとねなり
俗(ぞく)に蒲団(ふとん)とするは非(ひ)なり
蒲団(ふとん)は円座(えんざ)の類(るい)なり
○降緒(さげを)は刀(かたな)にあり太刀(たち)のは
平緒(ひらを)といふ
○雨衣(うい)はあまがつはなり襏(はつ)
襫(せき)とも云/紙(かみ)にてつくるを油(ゆ)
衣(い)といふ毛織(けをり)の類(るい)にてする
を毡衣(せんい)とい云/此図(このづ)は異朝(いてう)の
【右丁下段挿絵】
幄(あく) 《割書:あ|げ|ば|り》 幔(まん)《割書:まだ| ら|まく》 《割書:と|ば|り》
幕(はく)《割書:ま| く》 座具(ざぐ)
【左丁下段挿絵】
《割書:縁(えん)|道(どうの)|絹(きぬ)》
《割書:夾(きやう)|衣(い)》《割書:あ|わ| せ|き| ぬ》 降緒(さげを) 帳《割書:ちやう|かや》
褥(しく)《割書:し|とね》
【右丁上段】
毡衣(せんい)なり
○浴衣(よくい)はゆかたびらなり又/明(めい)
衣とも書(かく)なり又ゆてのごひ
を浴巾(よくきん)といふ
○蔽膝(へいしつ)ひざをおほふとよめり
まへだれなり韠(ひつ)同
○鞋(かい)は糸鞋(いとぐつ)麻鞋(まぐつ)あり草鞋(わらんぢ)
は屩(わらぐつ)とも屝(わらぐつ)とも書(かく)べし
○屐(げき)は木履(ぼくり)なり俗(ぞく)にあし
だといふはなをゝ屐系(げきけい)と云
又/鼻縄(びじやう)といふ又/撣(へしき)【自信なし】といふ物
あり雪中(せつちう)にはく物なり
○嚢(ふくろ)底(そこ)あるを囊(のう)といひ底(そこ)
なきを橐(たく)といふともにふく
ろなり袋(たい)同
○道服(だうぶく)は道者(だうしや)の衣服(いふく)なり
胴服(どうぶく)とかくはあしゝ俗(ぞく)これを
はおりといふ
【右丁下段挿絵】
雨衣(うい) 《割書:あま| がつは》
浴衣(よくい)《割書:ゆ| かた| びら》 蔽膝(へいしつ)《割書:まえだれ》 嚢(のう)《割書:ふくろ》
鞋(かい) 糸鞋(しかい)《割書:いと| ぐつ》 草鞋(さうかい)《割書:わら|ぐつ》
木履(ぼくり) 屐(げき)《割書:あし| だ》
【巻之六畢 14コマ目右丁へ】
【13コマ目左丁より】
【左丁上段】
物なり唐(もろこし)崑崙山(こんろんさん)より
玉(たま)をいだす
○礬(はん)は礬石(はんせき)なり和名(わみやう)たう
すといふ光明(くはうめい)なるを明礬(みやうばん)
といふ黒色(くろいろ)なるを黒礬(こくはん)と
いふ緑色(みとりいろ)なるを緑礬(ろはん)と云
やきて赤物(あかきもの)を絳礬(かうはん)と云
○硃(しゆ)は朱砂(しゆしや)なり辰州(しんしう)より出(いづ)
るを辰砂(しんしや)といふ又/水銀(みつかね)を化(くは)
して朱(しゆ)とするを銀朱(ぎんしゆ)と云
朱砂(しゆしや)は服(ふく)すれば心(しん)を鎮(しづ)め
神(しん)をやしなふ
○硫(いわう)は石硫黄(せきいわう)土硫黄(といわう)あり付(つけ)
木(ぎ)を発燭(はつしよく)といふ硫黄(いわう)の出(いづ)る
山にはかならず温湯(いでゆ)あり
摂州(せつしう)有馬(ありま)又/加州(かしう)の山中(やまなか)
なとのごとし
○硝(せう)は硝石(せうせき)なり木硝(もくせう)につくる
【左丁下段挿絵】
硨磲(しやこ) 瑠璃(るり) 琥珀(こはく)
玻瓈(はり) 琅玕(らうかん)《割書:あをだま》 砥(し)《割書:あはせど》
珊瑚(さんご) 紗(しや)《割書:もじ》 熨斗目(のしめ) 礪(れい)《割書:あらと》
【13コマ目右丁へ】
【乱丁有 正しい並びは、12コマ目右丁→14コマ目右丁(裏返し)→13コマ目左丁(裏返し)→12コマ目左丁→13コマ目右丁→14コマ目左丁】
【12コマ目左丁より】
【右丁上段】
焔硝(えんせう)火焔(くはせう)ともに同しよく
火(ひ)につく鉄鉋(てつほう)にもちゆ又/芒(はう)
硝(せう)牙硝(げせう)は薬石(やくせき)なり痰(たん)をの
ぞき燥(かはき)をうるほし小便(せうべん)を
通(つう)ずる能(のふ)あり
○磁(じ)は山(やま)の陽(みなみ)に鉄(てつ)を産(さん)す
るものは陰(きた)にかならず磁石(じしやく)
あり二/物(ぶつ)同気(どうき)なればなり
よく針(はり)を引(ひき)すふものなり
○砒(ひ)は砒石(ひせき)なり大毒(だいどく)あり練(ねり)た
る物を砒霜(ひさう)といふ腫物(しゆもつ)の
毒(どく)を消(せう)し瘧(おこり)をきる外科(げくは)
の用(もち)ゆる石(いし)なり斑猫(はんめう)と同
しく毒(どく)あり
○瑪瑙(めのう)は玉(たま)なり七/宝(はう)の内(うち)
なりこの玉(たま)の色(いろ)馬(むま)の脳(のう)に似(に)
たりよつて馬(め)瑙(のう)となづく色(いろ)
黄(き)なり
【右丁下段挿絵】
《割書:に|し|き》 綿(きん) 繍《割書:しう|ぬい| もの》 絨(しう)《割書:びらう| ど》 紅染(もみぞめ)
《割書:加(か)|賀(が)|絹(ぎぬ)》 縠(こく)《割書:ちり| めん》 《割書:あこ| め》 繻子(しゆす)
綾(りやう)《割書:あや|》 綃(せう)《割書:すゞし|》 緞(たん)《割書:どん| す》
【14コマ目左丁へ】
【14コマ目右丁より】
【左丁上段 裏返し】
は越中(えつちう)より出たり
○銅(とう)は赤金(しやくきん)なり黄銅(くはうとう)鍮(ちう)
石(しやく)真鍮(しんちう)あり又 紫銅(しとう)はから
かねなり褐銅(かつとう)同し白銅(はくとう)
はさはりかね紫金(しきん)はしやく
どうともに山より出る
○説文(せつもん)に銭(ぜに)【錢】の字(じ)の旁(つくり)上(うへ)に
一の戈(ほこ)の字(じ)下(しも)に一の戈(ほこ)の字(じ)有
銭(ぜに)は人をころす物にして人
さとらずといへり孔方(こうはう)青銅(せいとう)
鵝眼(ががん)ともに銭(ぜに)の異名(いみやう)なり
○珠(しゆ)は海(うみ)より出るたまを云 珊(さん)
瑚珠(ごじゆ)真珠(しんじゆ)のたぐひなり珍(ちん)
珠(じゆ)《振り仮名:𧓍珠|ひんじゆ》は貝(かい)のたまなり龍(りやう)
魚(ぎよ)虫(ちう)蛇(じや)の類(るい)みな珠(たま)あり
○玉(ぎよく)は山(やま)より出(いづ)るたまなり
石(いし)の美(び)なるものを玉といふ
璞(はく)はあらたまいまだみがゝさる
【左丁下段挿絵 裏返し】
玉(ぎよく)《割書:たま|》 礬(はん) 硃(しゆ)《割書:朱砂 銀朱|》
硫(いわう)《割書:ゆの| あわ》 《割書:発|燭》 硝(せう) 《割書:芒硝|》
《割書:牙|硝》 磁(じ)《割書:はり|すい|い|し》
砒(ひ)《割書:どく| いし》 瑪(め) 玳瑁(たいまい)
《割書:砒霜|》 瑙(のう)
【12コマ目左丁へ】
【乱丁有 正しい並びは、12コマ目右丁→14コマ目右丁(裏返し)→13コマ目左丁(裏返し)→12コマ目左丁→13コマ目右丁→14コマ目左丁】
【12コマ目右丁より】
【右丁 裏返し】
《題:頭書増補訓蒙図彙(かしらがきぞうほきんもうづゐ)巻之七》
宝貨(はうくは)《割書:此部(このぶ)には金銀(きん〴〵)珠玉(しゆぎよく)銅鉄(とうてつ)石甲(せきかう)錦(きん)|鏽(しう)綾羅(れうら)すべて一さいの宝(たから)をあつむ》
【右丁上段 裏返し】
○金(きん)は紫磨(しま)黄金(わうこん)沙金(しやきん)な
どあり日本(につほん)にてはむかし
奥州(おうしう)より出(いで)たり鍍金(ときん)はめつ
きなり
○銀(ぎん)は白銀(はくぎん)なり南鐐(なんりやう)銀(ぎん)
鉼(べい)など有 俗(ぞく)にはへぶきと云
又 銀鈑(ぎんはん)といふはいたがねなり
○鉛(えん)は青金(せいきん)なり錫(しやく)はしろ
なまり俗(そく)にすゞなまりと云
白鑞(びやくらう)同 鉛(なまり)をやいて丹(たん)となる
○鉄(てつ)【鐡】は黒金(こくきん)なり鉄(てつ)同 鉎鉄(せいてつ)
はなまがね鍒(しう)同し鋼鉄(かうてつ)はは
がね鏽(しう)はさびなり日本(につほん)むかし
【右丁下段挿絵 裏返し】
金(きん)《割書:こがね|》 銀(ぎん)《割書:しろ|か|ね》 鉛(ゑん)《割書:なまり|》 鉄(てつ)
《割書:くろ| かね》
銅(とう)《割書:あか|がね》
銭(せん)《割書:ぜ| に》 珠(しゆ)《割書:たま|》
【13コマ目左丁へ】
【13コマ目右丁より】
【左丁上段】
○硨磲(しやこ)は玉(たま)の名(な)七/宝(ほう)の一つ也
石(いし)の玉(たま)に似(に)たるなり一/名(めい)海(かい)
扇(せん)和名(わみやう)いたやがい
○玳瑁(たいまい)は亀(かめ)の名(な)甲(かう)に文(もん)あり
器(うつはもの)につくるべし櫛(くし)簪(かんざし)香(かう)
合(ばこ)などにつくる
○瑠璃(るり)は玉(たま)の名(な)石(いし)のひかり
あるものなり七/宝(ほう)の内(うち)なり
色(いろ)あをし
○琥珀(こはく)は松脂(まつやに)地(ち)におちて
千年(せんねん)にして琥珀(こはく)となる能(よく)
塵(ちり)をすふ玉(たま)なり色(いろ)黄(き)也
○玻瓈(はり)は玉(たま)の名七/宝(ほうの)一つ也
西国(さいこく)の玉(たま)なり頗黎(はり)とも
かくへし
○琅玕(らうかん)は玉(たま)のひかりあるもの
なり崑崙山(こんろんざん)に琅玕樹(らうかんじゆ)有
色(いろ)あをし
【左丁下段挿絵】
絹(けん)《割書:き|ぬ》 線(せん)《割書:より| いと》 糸(し)《割書:い|と》 絛(たう)《割書:くみ| ひぼ》 《割書:組》 《割書:紃》
綿(めん)《割書:わた|》 八/丈嶋(じやうじま) 氈(せん)《割書:もう| せん》
《割書:金(きん)|薄(ばく)》 水銀(みづかね) 《割書:高麗(かうらい)| 織(をり)》
【次コマへ】
【乱丁有 正しい並びは、12コマ目右丁→14コマ目右丁(裏返し)→13コマ目左丁(裏返し)→12コマ目左丁→13コマ目右丁→14コマ目左丁】
【右丁上段】
○珊瑚(さんご)は海中(かいちう)の珠(たま)なりいろ
あかし鉄網(てつもう)をもつて是(これ)を取(とる)
七/宝(ほう)の一つなり
○砥(し)は細砺石(さいれいせき)なり硎(まと)とも書(かく)べ
し黄砥(わうし)はあはせどなり
○礪(れい)は麁蛎石(それいせき)なりあらとなり
磑(あらと)とも書べし
○紗(しや)は金紗(きんしや)銀紗(ぎんしや)紗紋(もんしや)等(とう)
ありうすものなり又/法螺漏(ほらろ)
などいふ有/戻子(もじ)といふも有
○熨斗目(のしめ)は筋(すぢ)ある織物(をりもの)也
祝義(しうき)に侍(さふらひ)のきる服(ふく)なり
又/能役者(のふやくしや)などもきるなり
○錦(きん)は五色(ごしき)の糸(いと)を織(をり)て錦(にしき)
とす俗(ぞく)にいふ金襴(きんらん)の類(たぐひ)也
○繍(しう)は五/采(さい)の刺文(しもん)なり
ぬいもの
○絨(じう)は細毛布(さいもうふ)なりその美(び)な
【左丁上段】
る物のを天鵞絨(ひらうと)といふいう褐(かつ)
子(す)氆氇(ふら)兜羅綿(とらめん)みな毛(もう)
布(ふ)なり
○紅染(もみぞめ)は紅なり紅梅(こうばい)緋(ひ)
桃色(もゝいろ)中紅(ちうもみ)茜(あかね)などあり共(とも)
にあか色(いろ)なり
○加賀絹(かがきぬ)は加州(かしう)小松(こまつ)よりお
りいたす絹(きぬ)なり
○縠(こく)は縐紗(そうしや)なり今(いま)いふちり
めんなり俗(ぞく)に縮緬(ちりめん)とかく
○繻子(しゆす)は五/色(しき)有/嶋(しま)【縞】もあり
○繻珍(しゆちん)は五/色(しき)あり繒(かとり)を
もつて織(をる)なり
○綾(りやう)はあやなり又/綾子(りんす)也
花綾(くはれう)は紋綾子(もんりんず)なり光(くはう)
綾(れう)はぬめ綾子(りんず)なり
○綃(せう)はすゞしなり生綃(さんせう)と
書べし熟絹(じゆくけん)はねりぎぬ
【右丁下段挿絵】
皮(ひ)《割書:かは》 革(かく)《割書:つくり| かは》 韋 革 鉄線《割書:はりがね》
水精(すいしやう)《割書:みづとり| だま》 火(くわ)精《割書:ひ|とり|だま》 緑青(ろくしやう) 雲母(うんも)《割書:き|らゝ》
【左丁下段挿絵】
白粉(はくふん)《割書:おしろい》 石膽(せきたん)《割書:たん|はん》 浮石(ふせき)《割書:かろ|いし》
温石(をんじやく) 滑石(くわつせき) 鱉甲(べつかう)
麒麟血(きりんけつ) 幣(へい)《割書:にぎて》 木綿襷(ゆふだすき)
【右丁下段挿絵】
海塩(かいゑん)《割書:しほ》 石灰(せきくわい)《割書:いし|ば|ひ》
【右丁上段】
○緞(だん)は段子(どんす)なり花段(くはだん)錦(きん)
段(だん)毛段(もうたん)金段(きんだん)あり
○絹(けん)は加州(かしう)より出(いで)丹後(たんこ)より
いづる縑(けん)はもろぎぬなりまた
かとりなり
○線(せん)は (補)よりいとなりいとすじ
とよむ綫(せん)同/漢(かん)の宮女(きうじよ)冬(とう)
至(じ)の日より日ながくなりて
一/線(せん)のなかきをそふると
いへり
○糸(し)はいとなり蠶(かいこ)のはく所
なり緒(しよ)はいとぐち纇(るい)いとふし
縷(ろ)いとすぢ経(けい)たて緯(い)ぬき
麻苧(まちよ)紵(ちよ)まを纑(ろ)うみを
○條(たう)はくみひぼなり匾(ひらたき)を組(そ)
といふ圓(まろき)を紃(しゆん)といふ
○綿(めん)わた也/蠶(かいこ)をかふてとる
精(くはしき)を綿(めん)といひ麁(あらき)を絮(ちよ)と云
【左丁】
綿(めん)はまわた絮(ちよ)は木(き)わたなり○八/丈嶋(じやうじま)は日本(につほん)八/丈(じやう)か島(しま)よりをりいだす公方様(くばうさま)へ
貢(みつぎ)にそなゆるなり外(ほか)に八/丈嶋(じやうしま)といふはみなにせをりなるよし○氊(せん)はむしろ
なり毛氊(もうせん)あり線氊(せんせん)あり花氊(くはせん)あり毛氊(もうせん)のすぐれたるを山/水(すい)といふ○金薄(きんばく)は
金(きん)をうすくのべたる物(もの)なれば薄(はく)といふなり薄(はく)はうすしとよむ銀(ぎん)銅(あかゞね)の薄(はく)同/箔(はく)
同じ○水銀(みづかね)は性(しやう)寒(かん)なり毒(どく)あり馬歯莧(すべりひゆ)にも水銀(みづかね)あり又/汞(みづかね)とも書(かく)丹砂(たんしや)より
いづるなり○高麗織(かうらいをり)は京(きやう)西陣(にしぢん)よりをりいだす○皮(ひ)かはけだものゝ皮(かは)に毛(け)あるとき
の名(な)なり虎皮(とらのかは)豹皮(へうのかは)熊皮(くまのかは)狐皮(きつねのかは)麑皮(にくのかは)などなり○革(かく)はけだものゝ皮(かは)なり毛(け)をさる
を革(かく)といふ生(しやう)なりあらかは熟(じゆく)するを韋(い)といふなめしかはなり○鉄線(てつせん)ははりがね
なり銅線(とうせん)はあかゞねのはりがね又/銅糸(とうし)ともいふなり○水精(すいしやう)みつとりだまなり水中(すいちう)の石(いし)の美(び)
なる物(もの)をいふ水晶(すいしやう)同し又/硝子(せうし)もみづとりだまなりびいどろなり○緑青(ろくしやう)は石緑(せきろく)とも
いふ銅(あかゞね)のさびなり銅緑(とうろく)ともいふ水飛(すいひ)して畫工(ぐはこう)采(いろとり)の具(く)とす○火精(くわしやう)ひとりだまなり火(くは)
齊(せい)同この火(ひ)をとりて灸(きう)をすゆれは虚熱(きよねつ)をさます○雲母(うんも)はきらゝ也/廬山(ろさん)の中(うち)よりいづる
五/色(しき)あり白(しろ)きものよし服(ふく)する事十/年(ねん)すれは雲気(うんき)つねにその上(うへ)におほふ膏薬(かうやく)
にねる又/地紙(ぢかみ)にぬる○白粉(はくふん)おしろいは鉛粉(えんふん)なり鉛(なまり)をやきてつくるとうのつちといふ
又/銀粉(ぎんふん)ははらや粉霜(ふんさう)はやきかへし白粉(おしろい)は蕭史(しやうし)といふ人つくりはじめて秦(しんの)穆公(ほくこう)のむ
すめ弄玉(ろうぎよく)にぬらしむとなり○石膽(せきたん)たんはんは銅(あかがね)ある所より出(いづ)煎(せん)し煉(いり)てなる石中(せきちう)
【右丁】
の汁(しる)なり膽礬(たんはん)なり○浮石(ふせき)かるいしは水花(すいくは)ともいふ水(みづ)のあわ化(け)して浮石(かるいし)となる
西国(さいこく)よりいづる○温石(をんじやく)は一/名(めい)烏滑石(うくはつせき)といふ和漢(わかん)ともにあり硫黄(いわう)のある山より出(いづ)
る正真(しやうじん)まれなり火(ひ)にあたゝめて熨(のす)ときはよく痼疾(こしつ)をいやし瘀血(をけつ)を散(さん)ず
○滑石(くはつせき)はかわきをとめ小べんをつうじ油(あぶら)のものにしみたるに滑石(くはつせき)をふりかくれば
油(あぶら)けとるゝ白色(はくしき)なる物よし○鱉甲(べつかう)たいまい也/鱉(べつ)は海中(かいちう)の大かめなり甲(かう)をはぎて
うすくすけば斑文(はんもん)いづるこれを櫛(くし)笄(かんざし)香盒(かうばこ)等(とう)のうつは物につくる玳瑁(たいまい)といふ
も同し又/薬(くすり)に用(もち)ゆ○麒麟血(きりんけつ)は麒麟(きりん)の血(ち)なりといへとも麒麟(きりん)といふけだもの
つねに有ものにあらず馬血(ばけつ)なり血(ち)とめによし○幣(へい)はにぎて𧸁(へい)とも書(かく)葈(からむし)にて
するを白和幣(しらにきて)といふ麻(あさ)にてするを青名幣(あをにぎて)といふ串(くし)をもつてはさむ神(しん)
前(ぜん)秡(はらひ)の具(ぐ)なり手(て)ににぎるといふ義訓(ぎくん)なり○木綿襷(ゆふだすき)は幣(へい)をとる時(とき)にかく
るたすきなり木綿(もめん)のくみひぼなりむかしは楮(かうつ)の皮(かわ)にてつくれる幣(へい)を白木(しらゆふ)
綿といふ○海塩(かいゑん)しほ也/食塩(しよくゑん)なり海中(かいちう)の潮(うしほ)をくんで竃(かま)にてにて塩(しほ)とす賢(しん)【腎ヵ】に入(いり)
て歯(は)をかたくす鹵(ろ)あらしほ鹵坵(ろきう)はしほしり塩盤(ゑんはん)はしほがま○石灰(せきくはい)は火(ひ)にて石(いし)を
やきて灰(はい)となす毒(どく)あり一切(いつさい)の腫物(しゆもつ)を治(ち)す又/白堊(しらつち)にして壁(かべ)をぬる
【左丁】
《題:頭書増補訓蒙図彙(かしらがきぞうほきんもうづゐ)巻之八》
器用(きよう) 《割書:此部は武具(ぶぐ)農具(のうぐ)そのほか|日用(にちよう)のうつはものをしるす》
【左丁上段】
○紙(かみ)は楮(かち)の木(き)にてつくる
後漢(ごかん)の祭敬仲(さいけいちう)【注】といふ人
始(はじめ)てつくるといへりむかしは
帛(きぬ)に物(もの)をかきしゆへに紙(かみ)
といふ字(じ)糸篇(いとへん)をかける
○筆(ふで)は秦(しん)の蒙恬(もうてん)といふ人
つくりはじむとなり蒙恬(もうてん)
此功(このこう)によつて管城(くはんじやう)といふ
所に封(ほう)せらるよつて筆(ふで)の
異名(ゐみやう)を管城子(くはんじやうし)といふ
○硯(すゞり)は黄帝(くはうてい)玉(たま)をもつて
【左丁下段挿絵】
紙(し)《割書:かみ》 帋(し)《割書:同》 牋(せん)《割書:し|き|し》
筆(ひつ)《割書:ふで》 筆管(ひつくはん)《割書:ふでのぢく》 筆帽(ひつほう)《割書:ふでの|さや》
墨(ぼく)《割書:もく》 すみ 硯(けん)《割書:すゞり》 研(けん)《割書:同》
書(しよ)《割書:ふみ》 本《割書:同》 横巻 冊子 裱(へう)《割書:へう|し》
【注 「祭」は「蔡」の誤】
【右丁上段】
はじめてつくり給ふといふ
○墨(すみ)は煤(すゝ)に膠(にかわ)を合(あはせ)てつくる
油煙(ゆえん)松煙(ぜうえん)あり子路(しろ)といふ
人つくりはじむといふ
○書(しよ)はむかしは竹(たけ)をあみ小(こ)
刀(がたな)にて彫付(ほりつけ)てこれを書(しよ)と
すよつて巻(くはん)とも冊(さつ)とも云
○裱(へう)は裱紙(へうし)なり書(しよ)のうは
紙(がみ)なり褾(へう)同/簽(せん)は外題(げだい)也
○画(ぐは)は絵(ゑ)なり采(いろどり)たるを
絵(ゑ)といふ唐(もろこし)にては舜璵(しゆんきよ)日(につ)
本(ほん)にては雪舟(せつしう)今(いま)は狩野家(かのけ)
其外(そのほか)名人(めいじん)あり
○帙(じつ)は書(しよ)のうは包(つゝみ)なり袠(ぢつ)
同じ又/文巻(ふまき)文匣(ぶんかう)あり又
書(しよ)をすべて帙(じつ)ととなふ
【左丁上段】
○璽(し)は王者(わうしや)の印(いん)なり玉
をもつてつくる庶人(しよじん)は金石(きんせき)
にてつくる
○扇(あふぎ)は舜(しゆん)つくり給ふ共また
武王(ぶわう)つくり給ふともいへり日(につ)
本(ほん)にては神功(じんぐう)皇后(くはうこう)三韓(さんかん)
征伐(せいばつ)のとき蝙蝠(へんふく)の羽(は)を
見てつくりたまふ
○尺(しやく)は粟(あわ)より生(しやう)ず十/粟(ぞく)
を分(ぶ)とし十/分(ぶ)を寸(すん)とし十
寸(すん)をを尺(しやく)とす尺(しやく)は人(ひと)の躰(たい)を
もつてはかる指(ゆび)を布(しゐ)て尺(しやく)
を知(しる)股(ひぢ)をのべて尋(ひろ)をしる
尋(ひろ)は八尺なり
○簿(ぼ)は手板(しゆはん)なり事(こと)を書(かき)
しるすものなり簿書(ぼしよ)簿(ほ)
【右丁下段挿絵】
画(ぐは) 掛軸(くはちく)《割書:かけもの》 驚燕(きやうゑん)《割書:ふうたい》 帙(じつ)《割書:ふまき》 簿(ほ)
印(ゐん)《割書:をして》 印色(いんしよく)《割書:いんにく》
扇(せん)《割書:あふぎ》 箑(さう)同 団扇(だんせん)《割書:うちわ》
尺(しやく)《割書:ものさし》摺尺(せうしやく) 暦(れき)《割書:こよみ》
【左丁下段挿絵】
符(ふ)《割書:わりふ》 几(き)《割書:をしまづき》 算(さん) 《割書:そろばん》 《割書:さんぎ》
翳(ゑい)《割書:は|さしは》 蝋燭(らうそく) 如意(によい) 払塵(ふつじん) 《割書:ほつす》 《割書:はいはらい》
籍(せき)と云今いふ帳(ちやう)なり
○暦(こよみ)は黄帝(くはうてい)つくり給ふとも
いふ又/容成(ようせい)つくるとも又/義(ぎ)
和(くは)つくるともいへり
○符(ふ)は符契(ふけい)符信(ふしん)といふ
わりふなり竹(たけ)長(なが)さ六寸にし
て分(わけ)て相合(あいあはせ)て信(しん)とす又/木(き)
にてもつくるなり
○几(き)は今いふつくゑなりまた
脇息(けうそく)なり憑几(へうき)なり又/机(き)に
つくる
○筭(さん)は長(なが)さ六寸/暦数(れきすう)を
もつてはかるものなり黄帝(くはうてい)
のとき▢(ゑい)【偏は柰、旁は頁】首(しゆ)算数(さんすう)をつくる
筭(さん)はあやまりなり算(さん)につくるべし
○蝋燭(らうそく)は蝋(らう)に油をいれてね
【左丁上段】
り竹(たけ)の筒(つゝ)に入かため燭(ともしび)とす
銀(ぎん)蝋燭(らうそく)あり朱(しゆ)蝋燭(らうそく)あり
○如意(によゐ)は木竹(きたけ)又/象牙(ざうげ)玳瑁(たいまい)
などにてつくる物(もの)をわすれ
まじきために書付(かきつけ)手(て)にもつ
物(もの)なり文殊(もんじゆ)の持(もち)給ふ物なり
○翳(ゑい)は天子(てんし)のうしろにかざす
物なり女嬬(によじゆ)の役(やく)なり
○払塵(ふつぢん)ははいはらひなり禅家(ぜんけ)
には払子(ほつす)といふ揮指(しき)する具(ぐ)
なり麈(しゆ)の尾(を)白熊(はぐま)にて作(つくる)
○案(あん)は今(いま)いふ几(つくゑ)なりふつくゑ
又/卓(しよく)ともいふ几案(きあん)ともいふ
○鐘(しやう)つきかねは十二/調子(てうし)の中(うち)
黄鐘(わうしき)の調子(てうし)をよしとすよ
つて鐘(しやう)といふ
【右丁下段挿絵】
案(あん)《割書:つくゑ》 鍾(しやう)《割書:つりがね》
風鈴(ふりやう) 鈴子(れいし)《割書:すゞ》 笛(てき)《割書:ふえ》 尺八(しやくはち) 竪笛(しゆてき) 横笛(くはうてき)
鐸(たく)《割書:すゞ》 鈸(はつ) 土拍子(とびやうし)
【左丁下段挿絵】
籥(やく)《割書:こまぶえ》 柷(しく) 鼓(こ)《割書:たいこ》 太鼓(たいこ)なり 鉦(しやう)
簫(しやう) 笙(しやう) 管(くだ) 匏(ほう)《割書:つぼ》 簧(わう)《割書:した》
○笛(ふえ)は篴(てき)同/漢(かんの)武帝(ぶてい)の時(とき)
丘仲(きうちう)といふものつくれりと
云日本にては天(あま)の香久(かく)
山(やま)の竹(たけ)にてつくる
○鐸(たく)は金鐸(きんたく)は金鈴(きんれい)金舌(きんせつ)也
軍法(ぐんほう)にこれを用(もち)ゆ木鐸(ぼくたく)は
金鈴(きんれい)木舌(ぼくせつ)なり文教(ぶんかう)に用(もち)ゆ
○鈴(れい)は風鈴(ふれう)なり一/名(みやう)簷鈴(たんれい)
といふ○鈴子(れいし)はすゞなり一/名(みやう)を
円鈴(ゑんれい)といふ
○鈸(はつ)は僧具(そうぐ)なり銅鈸子(どうはつし)は土(と)
拍子(びやうし)なり南齊(なんせい)の穆七素(ほくしそ)と
いふ人(ひと)つくれり
○籥(やく)は高麗笛(こまぶえ)なりふく所
をのぞいて六の穴(あな)あり又/穴(あな)三
つあるもあり
【左丁上段】
○鼓(こ)は大鼓(たいこ)なり楽器(かくき)なり
○柷(しく)は木音(もくゐん)なり中(なか)に柄(え)有
これをうごかして左右(さゆう)にうた
しめて楽(がく)をおこすものなり
○鉦(しやう)は小鐘(ちいさきかね)なり楽器(がくき)なり
鼓(つゞみ)を節(ほとよく)し鼓(つゞみ)を止(やむる)ときうつ
なり鐘鼓(しやうこ)となづく
○簫(しやう)は楽器(がくき)なり小竹管(せうちくくはん)を
あみてつくる鳳凰(ほうわう)の翼(つばさ)にか
たどる大(おほひ)なるは二十三/管(くはん)長(なが)さ
尺(しやく)四寸/小(せう)なるは十六/管(くはん)長(なが)さ
尺(しやく)二/寸(すん)なり
○笙(しやう)は女媧(ちよくは)これをつくる大(たい)
笙(しやう)は十九/簧(わう)小笙(せうしやう)は十三/簧(わう)
○磬(けい)は冉句(せんこう)氏(し)のつくりはしめ
たるものなり石磬(せきけい)あり銅(とう)
【右丁下段挿絵】
磬(けい) 石磬(せきけい) 銅磬(どうけい) 律(りつ)《割書:づだけ》
琴(きん)《割書:こと》 瑟(しつ) 筝(さう)《割書:さうのこと》
塤(けん) 鼗(たう)《割書:ふりつゞみ》
【左丁下段挿絵】
篳篥(ひちりき) 敔(ぎよ)《割書:さゝら》
琵琶(ひわ) 三絃(さんけん)《割書:さみせん》
撥(ばち) 琵琶撥(びわのばち) 三絃撥(さんけんのばち) 柱(ちう)《割書:ことぢ》
阮(けん) 阮咸(けんかん) 月琴(げつきん)
【右丁上段】
磬(けい)あり磬(けい)をかくるものを簨(しゆん)
簴(きよ)といふ
○律(りつ)は楽器(がくき)なり陽律(やうりつ)六/陰(ゐん)
律(りつ)六/合(あはせ)て十二/律(りつ)なり六/律(りつ)
六/呂(りよ)ともいふ黄帝(くはうてい)の臣(しん)作(つく)る
○琴(きん)はむかしは五十/絃(けん)あり
後(のち)に二十五/絃(けん)となる今は十
三/絃(けん)あり日本(につほん)にては天(あま)の
香弓(かゆみ)をならべ弦(つる)をかけて
ならしはじむ
○瑟(しつ)は絃(けん)数(かず)多少(たせう)あり大瑟(たいしつ)
は五十/絃(けん)なり舜(しゆん)これを作(つくる)
ともに楽器(がくき)なり大なるを
瑟(しつ)といふ小なるを琴(きん)と云
○筝(さう)は秦(しん)の蒙恬(もうてん)つくり出(いだ)
せり長(たけ)一/尺(しやく)絃(けん)十三/絃柱(けんちう)の
【左丁上段】
高(たか)さ三寸十一二三の三/絃(けん)を
斗為巾(といきん)といふ
○塤(けん)は土(つち)をやいてこれをつく
る六の孔(あな)ありてこれをふく
楽器(がくき)なり
○鼗(たう)は鞉(てう)と同(おな)じ楽器(がくき)也
一名を搖鼓(ようこ)といふふりつゞみ
○篳篥(ひちりき)は一名/笳管(かくはん)と云
楽器(がくき)なり胡人(こひと)ふいて馬(むま)を
おどろかす
○敔(ぎよ)は木虎(ぼくこ)なりせなかに
くひちがひをきざみ木(き)を以(もつ)
てこれをすりて楽(がく)をやむ
るものなりさゝらなり竹(たけ)を
破(わり)てもつくるなり
○琵琶(びわ)は長(たけ)三/尺(じやく)五寸四/弦(けん)也
【右丁下段挿絵】
軫(しん) 琴軫(ことのしん) 抱(ふ) 琵琶軫(びわのしん) 繋爪(けつさう)《割書:かけづめ》
大鼓枹(たいこのばち) 羯鼓枹(かつこのばち) 銅鉢(とうはち)《割書:きん》
羯鼓(かつこ) 腰鼓(えうこ) 銅鑼(とうら)
【左丁下段挿絵】
仮面(かめん)《割書:まひのおもて》 雲版(うんはん)《割書:ちやうはん》
喇叭(らは) 喇叭 銅角(とうかく) 嗩吶(さのう)
【右丁上段】
下(しも)より逆鼓(さかさまにひく)を琵(ひ)といふ
上(かみ)より順鼓(しゆんにひく)を琶(わ)といふ一名
胡琴(こきん)漢(かん)の王昭君(わうせうくん)ひけり
○阮咸(けんかん)は四/弦(けん)十/柱(ちう)あるひは
五/弦(けん)十三/柱(ちう)なり月琴(げつきん)同し
○三絃(さんけん)は三味線(さみせん)なり三絃(さんけん)
子(し)といふ琉球国(りうきうごく)より渡(わた)りし
楽器(がくき)といふ
○撥(ばち)は琵琶(ひわ)の撥(ばち)三絃(さんけん)の撥(ばち)
羯鼓(かつこ)の撥(ばち)みなかたちもちが
ひ文字(もんじ)もちがひ有/棙(れい)同(おなし)
○柱(ちう)は琵琶(びわ)にては柱(ちう)ととな
へ琴(こと)にてはことぢといふかたち
すこしちがひあり
○軫(しん)は琴軫(きんしん)転手(てんじゆ)なり琵(び)
琶(わ)三味線(さみせん)ともにあり
【左丁上段】
○枹(ふ)は太鼓(たいこ)のばちなり桴(ふ)
とも書(かく)べし棙撥(れいはつ)は琵琶(びわ)の
撥(ばち)又/三味線(さみせん)の撥(ばち)なり
○繋爪(けいさう)はことのつめなりかけ
つめといふ義甲(ぎかう)仮甲(かかう)なら
びに同し
○銅鉢(とうばち)は僧家(そうけ)には磬(きん)といふ
きんは唐音(とういん)なり
○羯鼓(かつこ)は楽器(がくき)なり唐(とう)の玄(げん)
宗(そう)よくうちて花(はな)を催(もよほ)す
○腰鼓(ようこ)は腰前(ようぜん)にさしはさむ
つゞみなりつねの鼓(つゞみ)を指鼓(しこ)
といふ
○銅羅(どうら)は今(いま)いふさふらなり
楽器(がくき)なり一/説(せつ)に臍(へそ)ある鉦(しやう)と
いへり
【右丁下段挿絵】
風鐸(ふうたく)《割書:はうちやく》 棊(き)《割書:ご》
枰(へい)《割書:ごはん》 六采(りくさい)《割書:すごろく》 簺(さい) 骰子(たうし) 象棊(しやうぎ)
【左丁下段挿絵】
鞠(きく)《割書:まり》 硯屏(けんびやう) 書鎮(しよちん)
圧尺(あつしやく)《割書:けさん》 水滴(すいてき) 水中丞(すいちうぜう) 爪杖(さうぢやう)《割書:まごのて》 筆架(ひつか)
【右丁上段】
○仮面(かめん)は今(いま)いふ舞(まひ)の面(おもて)なり
代面(たいめん)とも戯面(きめん)ともいふ能(のふ)又は
楽(がく)に着(き)るなり
○雲版(うんはん)はちやうはんなり飯斎(はんさい)
の時(とき)大衆(たいしゆ)をあつむるときう
つものなり
○嗩吶(さのう)は大平簫(たいへいしやう)といふふえ
なり嗩哪(さの)鎖㖠(さの)ならびに同
○喇叭(らは)∘銅角(とうかく)ともに唐人(とうじん)
ぶゑなり又/唐音(とうゐん)にてちやる
めろといふ
○風鐸(ふうたく)は宝鐸(ほうちやく)なり又は檐(ゑん)
鐸(たく)ともいふ堂(だう)の檐(のき)にあり
○棊(ご)は帝堯(ていぎやう)つくり始(はじめ)給ひて
子(こ)の丹朱(たんしや)にをしへ給ふ所なり
黒白(こくびやく)の石(いし)は昼夜(ちうや)にかたどり
【左丁上段】
三百六十は日(ひ)の数(かす)を表(ひやう)する
なり碁(ご)いしを碁子(きし)といふ
碁笥(ごけ)を碁奩(きれん)といふ
○枰(へい)は碁盤(ごばん)なり又/棊局(ききよく)
ともいふ棊盤(ごばん)の目(め)を路(ろ)と云
棊石(こいし)を子(し)といふ棊笥(ごげ)を
奩(れん)といふ
○六/采(さい)は双六(すごろく)なり黒白(こくびやく)の石(いし)
は昼夜(ちうや)なり十二の目は十二月
なり盤(ばん)を局(きよく)といふ
○簺(さい)は日月の二つに表(ひやう)す四
角(かく)は四/方(はう)にかたどる骰子(たうし)は
筒(つゝ)なり投子(とうし)同
○象棊(しやうぎ)は周公旦(しうこうたん)作(つくり)出して成王(せいわう)に
教(をし)へ給ふとなり大中小の将棊(しやうぎ)有
又/摩訶陀(まかだ)象戯(しやうぎ)といふもあり
【右丁下段挿絵】
界方(かいはう)《割書:ひぢやうぎ》 眼鏡(がんきやう)《割書:めがね》 燭台(しよくだい) 燭奴(しよくど)
灯(とう)《割書:ともしび》 燭剪(しよくせん)《割書:しんきり》 灯檠(とうけい) 油瓶(ゆひやう)《割書:あぶらがめ》
【左丁下段挿絵】
灯籠(とうろう) 方灯(はうとう)《割書:あんどう》 桃灯《割書:ちやうちん》 提灯(ていとう)《割書:ちやうちん》
煙火(ゑんくは)《割書:はなび》 拍板(はくはん)《割書:びんさゝら》
【右丁上段】
○鞠(まり)は蚩尤(しゆう)が頭(かうべ)をかたどり
て蹴(ける)なり飛鳥井(あすかゐ)どのこの
家(いゑ)なり地下(ぢげ)には左近(さこん)と云
ものあり
○硯屏(けんべう)は硯(すゞり)のむかふにたつ
る屏風(べうぶ)なり硯(すゞり)の墨(すみ)を風(かぜ)
にかはかせまじきため又/塵(ちり)
ふせぎなり
○書鎮(しよちん)は風(かぜ)ふくときの書
おさへなり文鎮(ぶんちん)とも圧書(あつしよ)
ともいふ
○圧尺(あつしやく)は卦算(けさん)なり具足(ぐそく)
の草摺(くさずり)を卦算(けさん)といふかた
ちににたれは卦算(けさん)といふ
○水滴(すいてき)みづいれは硯(すゞり)のみづいれ
なり玉蟾蜍(きよくぜんぢよ)ともいふ蟾蜍(ひきがへる)
【左丁上段】
のかたちにつくる水いれ也
又/硯滴(けんてき)ともいふ
○爪杖(さうじやう)は掻杖(さうじやう)ともいふ麻(ま)
姑(こ)といふ仙女(せんじよ)の手(て)鳥(とり)の爪(つめ)
のごとしよつて麻姑(まご)の手
○筆架(ひつか)は筆(ふで)もたせなり
筆格(ひつかく)筆峯(ひつほう)筆山(ひつさん)とも云
○界方(かいはう)は今(いま)いふ樋定木(ひでうぎ)
なり
○眼鏡(かんくやう)はめがねなり靉靆(あいたい)
ともかくなり
○燭台(しよくだい)は蝋燭(らうそく)たてなり又
燭架(しよくか)ともいふかたちさま〴〵
かはりあり
○燭奴(しよくど)はらうそくたてに人(にん)
形(ぎやう)あるをいふなり
【右丁下段挿絵】
香炉(かうろ) 香鼎【目の部分は日】 香猊(かうけい) 香鴨(かうあう) 香毬(かうきう)
香盒(かうがう) 線香(せんかう)
香案(かうあん) 筯瓶(ちよびやう)
【左丁下段挿絵】
薫籠(くんろう)《割書:ふせご》 佩香(はいかう)《割書:にほひのたま》
毬杖(きうちやう)《割書:ぎつちやう》 投壺(とうこ)《割書:つぼなげ》 空鐘(くうしやう)《割書:たうこま》 香餅(かうべい)《割書:たどん》
【右丁上段】
○燈(とう)は灯(とう)同し燈盞(とうさん)はあぶ
らつき燈心(とうしん)は燈炷(とうしゆ)ともいふ
燈花(とうくは)はちやうじかしら
○燈檠(とうけい)は長檠(ちやうけい)あり短檠(たんけい)
あり灯台(とうだい)といふもありまた
灯架(とうか)といふ
○燭剪は今いふしんきりなり
○油瓶(ゆへう)は今いふあふらさし
なり又/油注(ゆちう)ともいふ
○燈籠(とうろう)は燭篭(しよくろう)とも灯毬(とうきう)と
もいふ又/灯篝(とうこう)ともいふ
○挑燈(ちやうちん)は丸(まるき)を俗(ぞく)に酸槳(ほうづき)挑(ちやう)
灯(ちん)といふ紗(しや)にて張(はり)たるを
紗篭(しやらう)といふ
○方燈(はうどう)は今(いま)いふ行燈(あんとう)なり四
方なるゆへ方燈(はうとう)といふ紗(しや)にて
【左丁】
はるを紗篭(しやろう)といふ○提燈(ていとう)は今(いま)いふ挑灯(ちやうちん)なり懸火(けんくは)ともいふ○
煙火ははなびなり花炮(くはほう)
ともいふ地鼠(ちそ)花兒(くはじ)流星(りうせい)走線(そうせん)なとの名あり○柏板(はくはん)は今(いま)いふびんざゝらなり又/柏子(はうし)と
もいふ○香炉(かうろ)は薫炉(くんろ)ともいふ又は香(かう)𣇄(てい)香猊(かうけい)香鴨(かうあう)などの名(な)ありかたちによつて名
のかはりあり香毬(かうきう)は俗(ぞく)にまはり香炉(かうろ)○香毬(かうきう)はてまりのごとくなるをいふまはり香炉(かうろ)なり
鴨(かも)のかたちにつくりたるを香鴨(かう〳〵)といふ○
香盒(かうがう)は香(かう)ばこなり漆盒(しつかう)磁盒(じかう)および金銀(きん〴〵)銅(どう)
錫(しやく)等(とう)にてつくる○香案(かうあん)は今(いま)いふ卓(しよく)なり又は香几(かうき)といふ○線香(せんかう)は線(せん)はいとすじとよむ
いとすじのごとくなる香(かう)なり炷香(しゆかう)ともいふなり南京(なんきん)よりきたる○筯瓶(じよへい)はひばし
をさすものなり火筯(ひばし)をこぢといふ火筯(こじ)をさしはさむものなりと○薫篭(くんろう)は今(いま)
いふふせこなり又/火篭(くはろう)とも衣篝(いかう)ともいふ○佩香(はいかう)は今(いま)いふにほひのたまなり腰(こし)
におふるものなり香嚢(かうのう)はにほひぶくろ○毬杖(きちやう)は蚩尤(しゆう)がかうべにかたどりて正月にうつ
なり玉毬春(たまきはる)ともいふ○空鐘(くうしやう)はとうこまなり独楽(とくがく)ともいふ小児(せうに)のもてあそびもの
なり○香餅(かうへい)は今(いま)いふ炭団(たんどん)なり又は炭餅(たんへい)ともいふ火(ひ)いけなり又/炭墼(たんげき)とも炭麟(たんりん)
ともいふ○投壺(たうこ)はもろこしの射法(しやほう)なり壺(つぼ)に矢(や)をなげいるゝ事(こと)なり○爆竹(はくちく)
は竹(たけ)の火(ひ)にもゆる声(こゑ)このこゑをきゝて役鬼(えきき)おそるとよつて年(とし)のはしめに
爆竹(さぎちやう)すとなり又/天竺(てんぢく)より中国(ちうごく)人/仏経(ぶつきやう)わたりしとき仏教(ぶつきやう)を左(ひたり)道教(どうきやう)を
右(みぎ)にをき火(ひ)をかければ仏経(ふつきやう)やけずよつて左(さ)の義長(ぎちやう)ずるとて左義長(さぎちやう)ともいへり
【右丁下段挿絵】
爆竹(はくちく)《割書:さぎちやう》 竹馬(ちくば)《割書:たけむま》 紙鳶(しゑん)《割書:いかのぼり》 木偶(もくぐう)《割書:にんぎやう》
風車(ふうしや)《割書:かざぐるま》 陀螺(だら)《割書:ぶしやうごま》
【右丁】
○竹馬(ちくば)はわらんべのたわむれなりいとけなきときの友(とも)を竹馬(ちくば)の友といふなり
○紙鳶(しゑん)はいかのぼりなり紙鴟(しし)風鳶(ふうゑん)ともいふ声(こゑ)あるを風箏(ふうさう)といふ○木偶(もくくう)は木(き)に
てつくりたる人形(にんぎやう)をいふ土(つち)にてつくりたるを土偶人(とくうじん)といふ紙(かみ)にてつくりたるを紙偶人(しくうじん)と云
○風車(ふうしや)はかざぐるまなり○陀螺(だら)は今いふぶしやうごまなり辺土(へんど)の小児(しやうに)のもてあそぶもの也
拾冊之内
【左丁】
【裏表紙 文字無】
【裏表紙 文字無】
【表紙 題箋】
《割書:増補|頭書》訓蒙図彙大成 十
【朱の手書きにて】
雑類
【資料整理ラベル】
TIAB
11
164
日本近代教育史
資料
【右丁 白紙】
【手書きのメモ】拾冊之内
【左丁】
頭書(かしらがき)増補(ぞうほ)訓蒙(きんもう)図彙(づい)巻之廿一
雑類(ざうるい) 《割書:此部(このぶ)には/諸天神仙聖賢佛菩薩(しよてんしんせんけんぶつぼさつ)諸祖師(しよそし)|其外(そのほか)人物(じんぶつ)の部(ぶ)に/洩(もれ)たるを/補(おぎな)ひしるす》
【同 上段】
二王金剛(にわうこんがう)
○ 右(みき)を右弼金剛(うひつこんがう)と云
人の生善(せうぜん)をよろこび
たまふ那羅延金剛(ならえんこんがう)
ともいふ
○ 左(ひだり)を左輔金剛(さほこんがう)と
いふ人の断悪(だんあく)をよろ
こびたまふ密迹金(みつしやくこん)
剛(がう)ともいふ佛法(ふつほう)の守(しゆ)
護神(ごじん)なれば/三門(さんもん)に
安 置(ち)す
【同 下段 挿絵中の文字】
右弼金剛(うひつこんがう)【右から横書き】
左輔金剛(さほこんがう) 【右から横書き】
【右丁 上段】
○持国(ぢこく)天王/乾達婆(けんだつば)
毘舎闍(びしやじや)を足下(そくか)に踏従(ふみしたが)へ
て東方(とうばう)を守護(しゆご)したま
ふ四天王の第一(だいいち)なり
○増長(ぞうちやう)天王/鳩槃荼(くはんだ)
薜茘多(びやくれいた)を足下(そくか)に踏(ふみ)
従(したが)へ南方(なんばう)を守護(しゆご)した
まふ四天王の第(だい)二なり
○広目(くわうもく)天王/龍(りやう)及(およ)び富(ふ)
単那(たんな)を足下(そくか)にふみした
がへ法界(ほうかい)を安立(あんりう)し西方(さいほう)
を守護(しゆご)したまふ
○毘沙門(びしやもん)天王/夜叉(やしゃ)羅(ら)
刹(せつ)を足下(そくか)にふみしたがへ
北方(ほつはう)を守護(しゆご)したまふ大
悲多聞(ひたもん)天王ともいふ
【同 下段 挿絵中の文字】
持国(ぢこく)
天王
毘沙門(びしやもん)
天王
【左丁 上段】
○韋駄天(いだてん)は佛法(ぶつほう)の守(しゆ)
護神(ごじん)なり魔王(まわう)佛舎(ぶつしや)
利(り)を奪(うばひ)とり逃(にげる)を追欠(おつかけ)
取返(とりかへ)し給ふなり禅家(ぜんけ)は
厨(くり)に安置(あんち)す
○鍾馗(しようき)は唐(たう)の明皇(めいくはう)夢(ゆめ)
に臣(しん)は終南(しうなん)の進士(しんじ)鍾馗(しようき)
なり天下(てんか)の虚耗(きょがう)妖孽(ようげつ)
を厭(▢▢)はんと見給ふ故(ゆへ)に
□道士(だうし)に命(めい)して其形(そのかたち)を
□せしめ天下(てんか)に伝(つた)ふと云
【同 下段 挿絵中の文字】
《割書: |新》
韋(ゐ)
駄天(だてん)
《割書: |新》
鍾馗(しやうき)
【右丁 上段】
弁才天女(べんざいてんによ)
○衆生(しゆじやう)に知(ち)恵(ゑ)福(ふく)
をあたへたまふなり
琵琶(びわ)を弾(たん)じたまふ相(そう)
をもつて又は妙音(めうをん)
天女ともいふ
福禄寿(ふくろくじゆ)
○福神(ふくじん)なり天南星(てんなんせい)
といふ星(ほし)の化現(けげん)なり
頭(かしら)ながくして拄杖(しゆじやう)に
経(きやう)を結(ゆひ)そへてもてり
鶴(つる)を愛(あひ)す又/鹿(しか)を
愛(あひ)すともいふ
【同 下段】
弁財(べんざい)
天女(てんによ)
福禄寿(ふくろくじゆ)
【左丁 上段】
大黒天(だいこくでん)
○八万四千の眷属(けんぞく)
あり貧困(ひんこん)を転(てん)じて
福者(ふくしや)となさんと誓(ちかひ)
たまふ摩伽羅神(まからじん)と
もいふなり
蛭子(えびす)
○伊弉諾尊(いざなぎのみこと)の第三
の御/子(こ)日(ひ)の神(かみ)の御
弟/西宮蛭子(にしのみやえびす)三郎/殿(どの)
といふなり市(いち)の売(ばい)
買(〳〵)を守(まも)り給ふ御 神(かみ)
なり
【同 下段】
大国天(だいこくでん)【右から横書き】
蛭子(ゑびす)
【右丁 上段】
布袋(ほてい)
○志那(しな)の散聖(さんせい)にし
て弥勒菩薩(みろくぼさつ)の化身(けしん)
なりといへり常(つね)に布(ぬの)
の袋(ふくろ)を負(おひ)てあそべ
りゆへに布袋和尚(ほていおしやう)
と名(な)ずけたり
寿老人(じゆらうじん)
○福神(ふくじん)なり老人星(らうじんせい)と
いふ星(ほし)の化現(けげん)なり白(はく)
髪(はつ)にして帽子(ほうし)をかぶ
り拄杖(しゆぢやう)をもてり鹿(しか)を
愛(あい)す
【同 下段】
布袋(ほてい)
寿老(じゆらう)
【左丁 上段】
○伏羲氏(ふつぎし)唐土(もろこし)の帝王(ていわう)
大 聖人(せいじん)なり此(これ)人生(じんせい)の始(はじめ)に
て網罟(まうこ)を作(つくり)て猟漁(かりすなどり)を
民(たみ)に教(をしへ)給ふ又/畫(ぐわし)_二 八 卦(けいを)_一
瑟琴(しつきん)を造(つくり)たまふ
○神農氏(しんのうし)は同/帝王(ていわう)にて
聖人(せいじん)なり民(たみ)に五穀(ごこく)を作(つくる)
事を教(をし)へ又/市(いち)をなし
交易(かうえき)の利(り)を施(ほどこ)し給ふ
帝(みかど)草木(さうもく)を味(あちは)ひ寒温(かんうん)
平熱(へいねつ)の性(しやう)を察(さつ)し人身(じんしん)
の病(やまひ)を療(りやう)ずる事を教(をし)へ
給ふ此(これ)より医道(いどう)おこる
【同 下段】
新
神農(しんのう)
新
伏羲(ふつき)
【右丁 上段】
○倉頡(さうけつ)は黄帝(くわうてい)の代(よ)
の人なり眼(まなこ)四つあり鳥(とり)
の足跡(あしあと)を見(み)て始(はじめ)て
文字(もんじ)を作(つく)る是(これ)文字(もんじ)の
祖(そ)なり
○黄帝(くわうてい)は軒轅(けんゑん)氏(し)といふ
蚩尤(しゆう)といふ逆臣(ぎやくしん)を亡(ほろぼ)し
帝位(ていゐ)に即(つき)給ふ聖人(せいじん)也
此時(このとき)より暦算(れきさん)律呂(りつりよ)
宮室(きうしつ)書契(しよけい)冠服(くわんふく)等(とう)こ
と〴〵く具(そなは)る又 始(はしめ)て舟(ふね)
を作(つく)り給ふ元妃(げんひ)に命(めい)
じて蚕業(こがひのわざ)を教(をしへ)給ふ
【左丁 上段】
○孔子(こうし)は唐土(もろこし)周(しう)の代(よ)の人
尭舜(ぎやうしゆん)の道(みち)を弘め五 常(じやう)
を教(をしへ)給ふ文宣王(ぶんせんわう)ともいふ
儒宗(しゆそう)の大 聖人(せいじん)なり
○老子(らうし)は周(しう)の代(よ)蔵室(ぞうしつ)
の史(し)たり生れながら白(はく)
髪(はつ)なり道経(とうきやう)五千 言(げん)を
顕(あら)はし無為(むい)自然(しぜん)の道(みち)を
教(をしへ)給ふ道士(どうし)の大祖(たいそ)神人(しんじん)
なり其終(そのおはり)をしらず
○許由(きよゆう)は尭帝(ぎやうてい)位(くらい)を譲(ゆづ)
らんとの給ふを聞(きゝ)て其耳(そのみゝ)
汚(けが)れたりとて潁川(えいせん)の滝(たき)に
いたり耳(みゝ)を洗(あらひ)し賢人なり
【右丁 下段挿絵】
倉頡(さうけつ)
黄帝(くわうてい)
【左丁 下段挿絵】
老子(らうし)
孔子(こうし)
許由(きよゆう)
【右丁 上段】
○維摩(ゆいま)居士(こじ)ともいへり
手(て)に払子(ほつす)を持(もち)方丈(ほうじやう)
の門に八方の獅子(しし)の座(ざ)
をかざり三千の大衆(たいしゆ)を
入て法門(ほうもん)をゝし給へり
○山越(やまごし)の弥陀(みだ)は比叡山(ひえいざん)
横川(よかは)の峯(みね)に阿弥陀仏(あみだぶつ)
の尊容(そんよう)を現(げん)じ給ふを
恵心僧都(ゑしんそうづ)拝(おが)み給ひて
写(うつ)し給ひけるとかや
○聖徳太子(しやうとくたいし)は人王丗二代
用明天皇(ようめいてんわう)の皇子(わうじ)なり
丗四代 推古天皇(すいこてんわう)の御宇(ぎよう)
摂政(せつしやう)たり日本(につほん)仏法(ふつほう)の
祖(そ)なり守屋(もりや)を亡(ほろぼ)し摂州(せつしう)
天王寺(てんわうじ)を建立(こんりう)し給ふ
【左丁 上段】
○出山(しゆつさん)の釈迦(しやか)は如来(によらい)
十七 歳(さい)にして出家(しゆつけ)し
三十歳の御 時(とき)十二月八
日 明星(みやうぜう)の出(いづ)るとき廓(くはく)
然大悟(ねんだいご)をしめし正 覚(がく)
を成(なし)たまへり
○誕生仏(たんじやうぶつ)は釈迦如来(しやかによらい)
卯(う)月八日 寅(とら)の剋(こく)【尅は俗字】に誕(たん)
生(じやう)し給ひ七 歩(ぶ)あゆみ
御 手(て)の左右(さゆう)をもつて
上下をゆびざして天
上天 下(げ)唯我独尊(ゆいがどくそん)と
のたまへりとかや入滅(にうめつ)は
二月十五日なり
【右丁 下段挿絵】
維摩(ゆいま)
山越(やまごしの)弥陀(みだ)
聖徳太子(しやうとくたいし)
【左丁 下段挿絵】
出山(しゆつさんの)釈(しや)迦
誕生仏(たんじやうぶつ)
【右丁 上段】
○初祖(しよそ)達磨(たるま)は梁(りやう)の
武帝(ぶてい)にまみへ江をわた
りて魏(ぎ)の少林寺(せうりんじ)に入
たまふ世(よ)に芦葉(ろよう)の達(だる)
磨(ま)とも又は一 葦(ゐ)の達(だる)
磨(ま)ともいふ
○不動明王(ふどうみやうわう)右の手(て)に
利剣(りけん)を持(もち)左に搏(ばく)の縄(なわ)
を持(もち)給ふは衆生(しゆじやう)の邪悪(じやあく)
をいましめ給ふすがたなる
べし後(うしろ)の炎(ほのふ)は動(どう)ぜぬ
かたち又 凡人(ぼんにん)の怒(いかり)のていを
あらはし示(しめ)し給ふなるべし
【左丁 上段】
○龍猛菩薩(りうみやうほさつ)は南天竺(なんてんぢく)
に出生(しゆつしやう)釈尊(しやくそん)より八百年
後(のち)なり真言宗(しんごんしう)第一の
祖(そ)なり大日 経(きやう)金剛頂(こんがうてう)経
蘇悉地経(そしつちきやう)を弘(ひろ)め給ふ
○善導大師(ぜんどうだいし)は唐土(もろこし)長(ちやう)
安(あん)の滝(たき)より出現(しゆつけん)し給ふ
三十 余年(よねん)少(すこし)も睡眠(すいみん)せ
ず唐(とうの)永隆(えいりう)二年三月十四
日 遷化(せんげ)
○天台(てんだい)大 師(し)は陳隋(ちんずい)二代
の国師(こくし)唐土(もろこし)天台宗(てんだいしう)の開(かい)
祖(そ)十一月廿四日六十歳にて
入滅(にうめつ)智者(ちしや)大師(だいし)ともいふ
【右丁 下段挿絵】
達磨(たるま)
尊者(そんじや)
不動明王(ふどうみやうわう)
【左丁 下段挿絵】
龍猛(りうみやう)
善導(ぜんどう)
大師(たいし)
天台大師(てんだいだいし)
【右丁 上段】
○六 祖(そ)大師(だいし)は唐土(もろこし)にて
達磨(たるま)より第六 祖(そ)諱(いみな)は
恵能(ゑのう)此下(このした)より禅宗(ぜんしう)五
家(か)にわかる大 鑑(かん)禅師(ぜんじ)は
おくり号(がう)なり
○伝教(でんぎやう)大師は最澄(さいてう)とも
いふ日本(につほん)天台(てんだい)の開祖(かいそ)なり
延暦(ゑんりやく)廿一年に入唐(にうとう)五十六
歳六月四日 入滅(にうめつ)
○役行者(ゑんのきやうじや)は役小角(ゑんのせうかく)とも
いふ和州(わしう)の人 葛城山(かづらきやま)に入
て孔雀(くじやく)明王(みやうわう)の法(ほう)を行(おこな)ひ
後(のち)に母(はゝ)を鉢(はち)入て入唐(にうとう)し
たまふ
【左丁 上段】
○寒山子(かんざんし)は初唐(しよたう)の人
天台山(てんだいさん)に隠(かく)れて常(つね)
に拾得(しつとく)と法友(ほうゆう)たり後(のち)に
去所(さるどころ)をしらず文殊(もんじゆ)の
化身(けしん)なりといふ
○拾得(じつとく)は豊干(ぶかん)禅師(ぜんじ)の
道(みち)のかたはらに拾(ひろ)ひ得(ゑ)
たるゆへ拾得(じつとく)といふ常(つね)に
寒山(かんざん)とまじはるその終(おはり)
をしる人なし
○巨霊人(これいしん)は大 力(りき)神通(じんづう)
を得(え)たる仙人(せんにん)なり山を
劈(つんざく)の力(ちから)あり常(つね)に白虎(びやくこ)
を愛(あい)す
【右丁 下段挿絵】
伝教(でんぎやう)
大師(だいし)
六 祖(そ)大師(だいし)
役行者(ゑんきやうじや)
【左丁 下段挿絵】
寒山(かんさん)
拾得(じつとく)
巨霊人(これいじん)
【右丁 上段】
○費長房(ひちやうぼう)は後漢(ごかん)の代(よ)
の人(ひと)なり仙術(せんじゆつ)をまな
び得て白鶴(はくくわく)にのりて
空中(くうちう)を飛行(ひぎやう)しあそび
たる仙人(せんにん)なり
○琴高(きんかう)は神仙(しんせん)の術(じゆつを)
学(まな)びて其(その)功(こう)なり大い
なる鯉(こい)に乗(じやう)して水上(すいじやう)
を飛行(ひぎやう)し書(しよ)をよみ
遊(あそ)びたる仙人(せんにん)なりと
いへり
【左丁 上段】
○大公望(たいこうぼう)は尚父(せうほ)ともいへ
り渭浜(いひん)に釣(つり)して楽(たの)し
みたる隠士(いんし)なり後(のち)に
八十 余歳(よさい)に及(およん)で周(しう)の
文王(ぶんわう)その賢(けん)をしり給ひ
師とし給ひ同 武王(ぶわう)に兵(へい)
を教(おし)ゆついに紂王(ちうわう)を
亡し給ふ
○上利剣(じやうりけん)は剣(つるき)を乗(のりもの)と
して大海(だいかい)の波上(なみのうへ)を飛(ひ)
行(ぎやう)する術(じゆつ)を得(え)たりと
なん
【右丁 下段挿絵】
琴高(きんかう)
費長房(ひちやうぼう)
【左丁 下段挿絵】
大公望(たいこうぼう)
上利剣(じやうりけん)
【右丁 上段】
○張九哥(ちやうくか)は宋(そう)の代(よ)に都(みやこ)に
居(きよ)し冬(とう)月にたゞ単(ひとへ)の衣(ころも)
きるばかり帝(みかど)あやしみて
召(めし)て酒(さけ)を飲(のま)しむある日
王(わう)にまみへいとまをこひ薄(うす) ̄キ
紙(かみ)を蝶(てふ)のかたちに剪(きり)て
是を放(はな)せば悉(こと〴〵く)飛(とび)さりける
又 招(まねけ)ばかへりて元(もと)の紙(かみ)と成
しとなり
○鉄拐仙人(てつかいせんにん)は虚空(こくう)に
むかつて己(おのれ)がかたちを
ふきいだす術(じゆつ)を得(え)た
りし仙人なり
○蝦蟇仙人(がませんにん)はつねに
蝦蟇(ひきがえる)を愛(あい)せるゆへに
其名(そのな)を得(え)たりとなん
【左丁 上段】
○西王母(せいわうぼ)は仙女(せんぢよ)なり
前漢(ぜんかん)の武帝(ぶてい)に桃(もゝ)を
奉る味(あぢはひ)甚(はなはた)美(ひ)なり帝(みかど)
核(さね)を植(うへ)んと有しかば王(わう)
母(ぼ)の曰(いはく)此桃(このもゝ)三千年 ̄ニ一度(ひとたび)
花咲(はなさき)実(み)のる一ツ食(しよく)す
れば三千年の寿(ことぶき)をたも
つと東方朔(とうぼうさく)此桃を三つ
ぬすみ食(しよく)せりとぞ
○通玄(つうげん)は張果呂(ちやうくはろ)とも
いふひさごの中(なか)より駒(こま)
を出す術(じゆつ)を得(え)たりし
仙人なり
【右丁 下段挿絵】
張九哥(ちやうくか)
鉄拐仙人(てつかいせんにん)
蝦蟇仙人(がませんにん)
【左丁 下段挿絵】
西王母(せいわうぼ)
通玄(つうけん)
【右丁 上段】
○天人(てんにん)は首(かしら)の花曼(けまん)
しぼむことなく羽衣(はごろも)常(つね)
に垢(あか)づかずつねにま
たゝきせずとかや然(しかれ)
ども命(いのち)終(おは)るときは
楽(たのし)みつきて五 衰(すい)の
かなしみあり
○迦陵頻(かれうびん)は天上の
鳥(とり)なり天人(てんにん)の面(おもて)の
ごとく声(こゑ)すぐれて
美(うつ)くしよつて妙(めう)
声鳥(せうてう)又 好音鳥(かうおんてう)と
もいへり是(これ)仏教(ぶつきやう)の
説(せつ)なり
【左丁 上段】
○和哥(わか)は此国(このくに)の風俗(ふうぞく)と
して三十一 字(じ)のかなをつら
ね心を種(たね)として情(じやう)を
述(の)ぶる事 実(まこと)をもとゝ
す故(ゆへ)に仏神(ぶつしん)も感応(かんおう)
有ほどの徳(とく)あるは哥(うた)也
それ和哥(わか)は神代(かみよ)より
始(はじま)るといへども住吉(すみよし)大 明(みやう)
神(じん)を以(もつて)哥(うた)の御 神(かみ)と崇(あが)め
奉り衣通姫(そとをりひめ)人麿(ひとまろ)赤(あか)
人を哥(うた)の祖神(そじん)とすと
かや後(のち)に俊成(しゆんぜい)定家(ていか)家(か)
隆(りう)のごとき哥人(かじん)数多(あまた)在(あり)
て秀哥(しうか)多(おゝ)し
【右丁 下段挿絵】
迦陵頻(かれうびん)
天人(てんにん)
和歌(わか)
三 神(じん)
衣通姫(そとをりひめ)
人麿(ひとまろ)
赤人(あかひと)
【右丁 上段】
○詩(し)は唐土(もろこし)よりおこれ
り故(かるがゆへ)に唐哥(からうた)といふ夫(それ)
詩(し)は和哥(わか)に同じく六(りく)
義(ぎ)あり五 言(ごん)七 言(ごん)とて
五 字(じ)七字に作(つく)り絶句(ぜつく)
と律(りつ)とありよく其(その)情(じやう)
を述(のべ)て人心(じんしん)を感(かん)ぜし
め実(じつ)をあらはす事 詩(しい)
哥(か)の二ツにとゞめたり
白居易(はくきよい)のあざ名(な)は楽(らく)
天(てん)晩唐(ばんだう)の詩人(ししん)なり
蘇軾(そしよく)字(あざな)は子瞻(しせん)東坡(とうば)
と号(がう)す宋(そう)の代(よ)の人
なり
【左丁 上段】
○筆道(ひつどう)は唐土(もろこし)の文字(もんじ)
なり漢字(かんじ)といふ晋(しん)の
王義之(わうぎし)筆法(ひつほう)の祖(そ)とす
石面(せきめん)に書(しよ)すれば墨石(すみいし)
一寸ばかりしみ入しとなり
日本(ひのもと)にては嵯峨天皇(さがてんわう)
弘法大師(こうぼうたいし)橘逸成(たちばなのはやなり)是を
三 筆(ひつ)といふ道風(とうふう)佐理(さり)
行成(かうぜい)を三 蹟(せき)といふ何れ
も筆道(ひつどう)の名誉(めいよ)後世(こうせい)
に残(のこ)りて其(その)筆跡(ひつせき)を
尊(たつと)べり尊円(そんえん)親王(しんわう)の御 筆(ひつ)
跡(せき)を御家(おいゑ)一 流(りう)と称(しやう)じ
て今世(いまよ)に習(なら)ひもちゆ
【右丁 下段挿絵】
詩人(しじん)
白楽天(はくらくてん)
東坡(とうば)
【左丁 下段挿絵】
筆道(ひつどう)
晋(しんの)
王義之(わうぎし)
小野道風(おのゝとうふう)
【右丁 上段】
○琴(こと)は伏羲(ふつき)の作(つく)り始(はじ) ̄メ
給ふ五十 弦(けん)又廿五 弦(けん)あり
瑟(しつ)といふ楽器(がくき)に用(もちゆる)を
和琴(わごん)といふ又 世(よ)に翫(もてあそ)べる
十三 弦(けん)の琴(こと)をつくし
琴といふ音曲(おんぎよく)しらべ上手(じやうず)
多(おゝ)くあり
○香(かう)は清浄(せうじやう)潔白(けつはく)の徳(とく)
ある物(もの)にて穢(けがれ)をさくる
故(ゆへ)に神前(しんぜん)仏前(ぶつせん)にて焼(たく)
なりその香(か)遠(とをき)きにいたる
伽羅(きやら)は水(みづ)に入てしづむ也
よつて沈香(ぢんかう)といふ唐土(もろこし)
よりきたる
【左丁 上段】
○鞠(まり)は唐土(もろこし)女媧(ぢよくは)氏(し)の
代(よ)に逆臣(ぎやくしん)蚩尤(しゆう)といふ
者(もの)謀叛(むほん)を企(くわだて)軍(いくさ)に及(および)
しが女媧子(ぢよくはし)は女帝(によてい)なが
ら聖徳(せいとく)あれば万民(ばんみん)な
びき従(したが)ひ終(つい)に蚩尤(しゆう)を
討(うち)亡(ほろぼ)し給ひ其(その)頭(かうべ)をは
ねたり諸人(しよにん)蚩尤(しゆう)を悪(にく)
みて頭(かしら)を蹴(け)たり是(これ)鞠(まり)
の始(はじめ)とかや鞠のかゝりは
松(まつ)楓(かへで)柳(やなぎ)桜(さくら)の四本を植(うゆ)
るなり飛鳥井(あすかゐ)家(け)難波(なんば)
家(け)鞠(まり)の御 家(いゑ)なり上が
茂(も)社家(しやけ)松下(まつした)一 流(りう)あり
【右丁 下段挿絵】
琴(こと)
香(かう)
【左丁 下段挿絵】
【「新」の記載あるか】
蹴鞠(しうきく)
【右丁 上段】
○目利(めきゝ)は墨跡(ぼくせき)古画(こぐは)又
万(よろづ)の器(うつはもの)の真贋(しんがん)をよく
見分(みわく)る人をいふ古筆見(こひつみ)
とも名付(なづく)剣(つるぎ)の目利(めきゝ)は
本阿弥(ほんあみ)とて其家(そのいゑ)あり
○算術(さんじゆつ)は万法(まんほう)にわたり
貴賤(きせん)ともになくてかなは
さる事なり天地(てんち)五 運(うん)
の形道(ぎやうどう)も算数(さんすう)を以て
考(かんが)ふ高山(かうざん)万里(ばんり)の数(すう)を知(し)
る事も皆([み]な)算勘(さんかん)の術(じゆつ)
をもつてす人間(にんげん)日用(にちよう)
算勘(さんかん)の高徳(かうとく)あげてか
ぞへがたし
【左丁 上段】
○諸礼(しよれい)は人倫(じんりん)の交(まじは)り
において礼なくてかなは
ざる事なり聖人(せいじん)の
教(をしへ)給ふ六芸(りくげい)といふは礼(れい)
楽(がく)射(しや)御(ぎよ)書(しよ)数(すう)なり中(なか)
にも礼を重(おもん)じ給ふこの
国(くに)の礼儀(れいぎ)の作法(さほう)は将(しやう)
軍(ぐん)義満(よしみつ)公の御代(みよ)より始(はじま)
れりとぞ小笠原家(おがさはらけ)の
諸礼(しよれい)といふ又 躾方(しつけがた)とも
いふ仕官(しくわん)の人は勿論(もちろん)の
事 貴人(きにん)にまじはる人
はしらでかなはぬ芸(げい)な
れば心がけ有(ある)べき事也
【右丁 下段挿絵】
目利(めきゝ)【注】
算術(さんじゆつ)【右から横書き】
【左丁 下段挿絵】
諸礼(しよれい)【注】
【注 「新」が書かれていたとしても消されていると思われます。】
【右丁 上段】
○弓(ゆみ)は射芸(しやげい)といふ武(ぶ)
士(し)の家(いゑ)に生(うま)るゝ人は射(しや)
芸(げい)を学(まな)はずんばあるべか
らず武士(ぶし)を弓執(ゆみとり)とは
いふなり唐土(もろこし)に楊由(やうゆう)
基(き)と云し弓(ゆみ)の達人(たつじん)は百
歩(ほ)下(さが)りて柳(やなぎ)の葉(は)を
射(ゐる)に一 葉(は)も射(ゐ)そんずる
事なしとぞ我朝(わがてう)に
おゐては鎮西(ちんぜい)為朝(ためとも)能(の)
登守(とのかみ)教経(のりつね)那須与市(なすのよいち)
等(とう)弓(ゆみ)の達人(たつじん)なり其
外(ほか)数多(あまた)精兵(せいへい)の射(ゐ)て
ありしなり
【左丁 上段】
○馬(むま)は乗馬(じやうば)の法(ほう)なり
是(これ) 武士(ぶし)の要道(ようどう)なれば
師伝(しでん)を受(うけ)て習(なら)ふべきこ
と肝要(かんよう)なり巧者(こうしや)無功(ぶこう)
者(しや)によりて駿馬(じゆんめ)にても
あしく曲(くせ)出(いづ)るなり其 品(しな)
百曲(もゝくせ)ありとかや駒(こま)のし
いれ曲(くせ)の直(なを)しやう法式(ほうしき)
ありてむかしより八 乗(じやう)【条とあるところ】
流(りう)あり今世(こんせい)大坪(おほつぼ)の一 流(りう)
を専(もつはら)にもちひて武士(ぶし)の
要道(ようどう)とす高山(かうざん)の険阻(けんそ)も
たやすく上り大河(たいが)を渡(わたす)
も是(これ)みな駿馬(じゆんめ)の徳(とく)也
【右丁 下段挿絵】
《割書: |新》
弓(ゆみ)
【左丁 下段挿絵】
《割書: |新》
馬(むま)
【右丁 上段】
○剣術(けんじゆつ)は太刀打(たちうち)の
法(はう)なり兵法者(へいほうじや)とも
いふ武士(ぶし)第一の道(みち)也
流儀(りうぎ)あまたあり神(しん)
道流(とうりう)柳生流(やぎふりう)神影(しんかげ)
流 一刀(いつたう)流などさま〳〵
有 併(しかし)未熟(みしゆく)の芸(げい)を
頼(たの)み身(み)の危(あやうき)をしら
ざる人まゝ多(おゝ)しいた
ましき事にあらすや
今(いま)静謐(せいひつ)の御代(みよ)に
おゐては商家(しやうか)職人(しよくにん)
農人(のうにん)等(とう)はしらぬこ
そよかるべし
【左丁 上段】
○囲碁(ゐご)は周公(しうこう)旦(たん)作(つく)り
給ふと云 吉備(きび)大臣(たいしん)入(につ)
唐(とう)の時 伝来(でんらい)といふ三百
六十 目(もく)は年月(ねんげつ)日 数(かず)也九
目星(もくほし)は九 曜(よう)の星(ほし)石(いし)の
黒白(こくびやく)は昼夜(ちうや)を表(ひやう)する
なりとぞ
○将棋(しやうき)は周(しう)の武帝(ぶてい)臣(しん)
下(か)王褒(わうほう)に命(めい)じて作(つく)ら
しむ軍法(ぐんほう)の備(そなへ)をかたど
りしものなり大将棋(だいしやうぎ)中
将棋あり今もてあそ
ぶを小将棋(しやう〳〵き)といふもと
よりならひあるなり
【右丁 下段挿絵】
《割書: |新》
剣術(けんじゆつ)
【左丁 下段挿絵】
《割書: |新》
囲碁(ゐこ)
将棋(しやうぎ)
【右丁 上段】
○茶湯(ちやのゆ)はむかしより
ある事なれども茶(ちや)
亭(てい)を数寄(すき)屋と号(がう)し
草木(さうもく)の植(うへ)やう料理(りやうり)等《割書:ニ》
いたるまで法式(ほうしき)を立(たて)て
くわしくなりしは千(せんの)
利休(りきう)よりはじまれり
古田(ふるた)織部(をりべ)小堀(こぼり)遠州(ゑんしう)な
ど茶道(さどう)の達人(たつじん)其 流(りう)
品々(しな〳〵)あり人倫(じんりん)の交(ましは)り
行儀(ぎやうぎ)をしるの一助(いちぢよ)なり
元来(もとより)茶道(さどう)は奢(おごり)をは
ぶき敬恭(けいきやう)をもとゝす
るを本意(ほんい)とすといふ
○立花(りつくは)は京 六角堂(ろくかくたう)
の別当(べつたう)池坊(いけのぼう)立花の宗(そう)
匠(しやう)なり毎年(まいねん)七月七日
に門弟(もんてい)参集(さんしう)して立(たつ)
る貴賤(きせん)是を見物(けんぶつ)
又 拋入(なげいれ)【抛は俗字】の伝(でん)所々(しよ〳〵)に師(し)
あり今世(きんせい)なげ入 専(もつはら)に
おこなはれて花の会(くわい)
多(おゝ)し宜(むべ)なるかな花
は人の心をなくさめ
鬱気(うつき)をさんずるもの
なればよきわざにて
貴賤(きせん)のもてあそびと
なるもことはりぞかし
【右丁 下段挿絵】
《割書: |新》
茶湯(ちやのゆ)
【左丁 下段挿絵】
立花(りつくは)
【右丁 上段】
○山伏(やまぶし)を修験道(しゆげんどう)とも
いふ真言(しんごん)の法(ほう)なり行(ぎやう)を
修(しゆ)し身(み)をこらし又 高(かう)
山(ざん)大山へのぼりて行(ぎやう)を
なすなり常(つね)に天文(てんもん)易(えき)
学(がく)をまなびて諸人(しよにん)の
五 運(うん)八 卦(け)を占(うらな)ひ手(て)の筋(すじ)
吉凶(きつけう)病(やまひ)の軽重(きやうぢう)失物(うせもの)の
方(はう)がく等(とう)を考(かんが)ふまた
一 派(は)役行者(えんのきやうじや)の法(ほう)を修(しゆ)
するものあり是を行者(ぎやうじや)
の先達(せんだち)といふ人の病(やまひ)を
祈祷(きとう)す垢離場(こりば)あり是を
行者(ぎやうじや)ぼりといふ
【左丁 上段】
○鷹(たか)は唐土(もろこし)五 帝(てい)の時
より賞(しやう)ぜりとかや我(わが)
朝(てう)にわたりしは神功(しんこう)
皇后(くわうごう)の御代(みよ)に百済(ひゃくさい)
国(こく)より始(はじめ)て鷹(たか)を奉
る其後(そのゝち)仁徳天皇(にんとくてんわう)の
御代(みよ)に唐(とう)より鷹を
献(けん)ぜしかば御猟(みかり)を催(もよほ)さ
れ諸鳥(しよてう)をとらしめた
まふ是(これ)鷹狩(たかがり)のはじ
めなり鷹は勇気(ゆうき)さ
かんにして武備(ぶひ)の鳥(とり)
なれば武門(ぶもん)に賞(しやう)せら
るゝ事 宜(むべ)なり
【右丁 下段挿絵】
山伏(やまぶし)
【左丁 下段挿絵】
鷹(たか)
匠(じやう)
【右丁 上段】
○能(のふ)はむかしよりある
事なれども其 伝(でん)たし
かならず後小松院(ごこまつのいん)の
御宇(ぎよう)に観世(くわんぜ)世 阿弥(あみ)と
いふ者(もの)公方家(くばうけ)の能(のふ)太(た)
夫(いふ)にてさかんに翫(もてあそび)ぬ後(のち)
に金春(こんはる)保生(ほうしやう)金剛(こんがう)と別(わかれ)
て四 座(ざ)といへり又 猿楽(さるがく)
といふ事は猿田彦(さるたひこ)の余(よ)
流(りう)のいひなりとかや謡(うたひ)は
日本(ひのもと)遊興(ゆうけう)の随一(すいいち)にして
神祇(じんぎ)釈教(しやくきやう)恋(こひ)無常(むじやう)故(こ)
事(じ)世(よ)の諺(ことわざ)まて悉(こと〴〵く)集(あつ)
むるものなり
【左丁 上段】
○笛(ふえ)小鼓(こつゞみ)大鼓(おゝつゞみ)太鼓(たいこ)
是を四 拍子(ひやうし)といふなり
笛(ふえ)は漢(かんの)武帝(ぶてい)の時(とき)丘仲(きうちう)作(つく)る
とかや鼓(つゞみ)は秦(しん)の穆王(ぼくわう)の
作(さく)なり大鼓(おゝつゞみ)は陽(やう)にして
呂(りよ)なり小鼓(こつゞみ)は陰(いん)にして
律(りつ)なりこれ陰陽(いんやう)和(わ)
合(がう)の器(き)なり又 太鼓(たいこ)は
黄帝(くはうてい)の時(とき)䕫(き)を煞(ころ)し
其皮(そのかは)をもつて作(つく)れり
とかや或(あるひ)は云 黄帝(くはうてい)蚩(し)
尤(ゆう)とたゝかふ玄女(げんじよ)帝(みかど)
のために䕫牛(きぎう)の鼓(こ)
を作(つく)れりと云々
【右丁 下段挿絵】
脇(わき)
地謡(ぢうたひ)
《割書:同音(どうおん)ともいふ》
能(のふ)
太夫(たいふ)《割書:してともいふ》
【左丁 下段挿絵】
笛(ふえ)
小鼓(こつゞみ)
大鼓(おほつゞみ)
太鼓(たいこ)
【右丁 上段】
○狂言(きやうげん)はそのはじまり
つまびらかならずのふ
の間へ入る事は気(き)を
転(てん)じて笑(わらひ)をもよふす
べきためなるべし能(のふ)と
同じく流義(りうぎ)のわかち
ありて少しのかわり有
又 狂言(きやうげん)のうちに伝授(でんじゆ)
とするものありそれ
狂言の本意(ほんい)は狂戯(きやうけ)を
専(せん)として人の心をなぐ
さめわらひをおこす事
を要としたるものなり
とかや
【左丁 上段】
○浄留理(じやうるり)は小野(をのゝ)お通(づう)
に始(はじま)るお通(づう)は信長公(のぶながこう)の
侍女(しじよ)なり参州(さんしう)矢作(やはぎ)
浄留理(じやうるり)女(むすめ)が事(こと)を作(つく)る
岩船(いわふね)検校(けんげう)ふしを付(つけ)て
是(これ)を浄留理(じやうるり)といへり
其後(そのゝち)瀧野(たきの)沢角(さはつの)の両(りやう)
検校(けんげう)三線(さみせん)に合(あは)せて曲(きよく)
節(せつ)をかたる又(また)慶長(けいちやう)の頃(ころ)
より浄留理(じやうるり)太夫(たいふ)の受領(じゅれう)
をいたゞく事(こと)になり
京大阪江戸に浄留理
太夫 多(おほ)くなりて色々(いろ〳〵)の
流義(りうぎ)出来(しゆつたい)せり
【右丁 下段挿絵】
狂言(きやうげん)
【左丁 下段挿絵】
浄留理(じやうるり)
太夫
【右丁 上段】
○三絃(さみせん)は元来(ぐわんらい)琉球(りうきう)
国(ごく)の楽器(がくき)なるよし
三味線(さみせん)とも書(かく)なり
近世(きんせい)諸国(しよこく)ともに此(この)三
絃をもてあそぶ事 専(もつはら)
なり尤 婬声(いんせい)の物なれ
ども調子(てうし)におゐて自(じ)
由(ゆう)なる器(き)なり故(ゆへ)に雪(せつ)
月花(げつくは)の楽(たのし)みその余(よ)の
遊興(ゆふけう)いづれ三絃をもて
一曲専要(いつきよくのせんよう)とす又 小弓(こきう)と
いふものは三絃より作(つく)り
出せるものなるべし
【左丁 上段】
○芝居(しばゐ)は其(その)おこりは
河原(かはら)の芝(しは)にこさなんど
を敷物(しきもの)として狂言(きやうけん)を
なしたるものにて今の
放下(ほうか)しなとゝ同し類(たぐひ)
の物なりしが次第(したい)に高(かう)
上(じやう)になりて衣服(いふく)器物(きぶつ)
まても花美(くはび)を尽(つく)して
立役(たちやく)女形(をんながた)敵役(てきやく)などゝ
それ〳〵に役(やく)をわけて
三ケの津(つ)には常芝居(じやうしばゐ)
をゆるされ諸人(しよにん)の慰(なぐさ[む])所
とはなりぬよつて芝居(しばゐ)
と名(な)づけ侍りぬ
【右丁 下段挿絵】
三絃(さみせん) 小弓(こきう)
【左丁 下段挿絵】
芝居役者(しばゐやくしや)
敵役(てきやく)
女形(をんながた)
立役(たちやく)
【右丁 上段】
○人形芝居(にんきやうしばゐ)はあやつり
ともいふ名(な)ありはじめは
人形を糸(いと)にてつり
つかひし事なりしが
巧者(こうしや)出(で)きて今(いま)は自由(じゆう)に
はたらきをなす事 生(しやう)
あるがごとし難波(なにば)竹本(たけもと)
豊竹(とよたけ)の両(りやう)芝居(しばゐ)をもとと
す上手(じやうず)あまたあり又
難波(なには)に竹田(たけだ)といふからく
り人形(にんぎやう)の芝居あり珍(めづ)ら
しき細工(さいく)をなして人の
目(め)をおどろかすほどの上(じやう)
手(ず)なり
【左丁 上段】
○軽業(かるわざ)はむかしより其
伝(でん)ある事にや始(はしめ)をしら
ず誠(まこと)に危(あやう)き所作(しよさ)なれ
どもかね合(あひ)手練(しゆれん)のこと
にて上手([じ]やうす)あまた出て
人の目(め)をよろこばしむる
といへどもやゝもすれば
怪我(けが)過(あやまち)をなすもの有
きりん太夫といひしもの
一ツつなをわたり始し
より軽(かる)わざしをすべて
世俗(せぞく)にきりんとよぶ幼(よう)
稚(ち)の時より仕(し)なれざれは
なりがたかるべし
【右丁 下段挿絵】
人(にん)
形(きやう)
芝(しば)
居(ゐ)
【左丁 下段挿絵】
軽業(かるわざ)
【右丁 上段】
○鉢扣(はちたゝき)は元祖(くわんそ)空也(くうや)上
人なり下京(しもきやう)空也堂(くうやどう)の
内(うち)に住居(すまゐ)して茶筌(ちやせん)を
けづり作業(さきやう)とす十二
月十三日より京町中を
売(うり)ありく正月大ぶくの
茶筌(ちやせん)めてたき例(ためし)とし
て求(もとむ)る事なり
○鹿島(かしま)の事触(ことふれ)といふ
は毎年(まいねん)春(はる)鹿島(かしま)大 明(みやう)
神(じん)其年(そのとし)の吉凶(きつけう)人間(にんげん)の
身(み)の上(うへ)五穀(ごこく)の善悪(よしあし)等(とう)
神託(しんたく)あるを諸国(しよこく)へ触(ふれ)
しらするものなり
【左丁 上段】
○猿舞(さるまはし)はふるきこと
なるよし今(いま)京都(きやうと)へ
来るは伏見(ふしみ)の辺(へん)より
出るよし年(とし)の始(はじめ)に
御所方(こしよがた)へ嘉例(かれい)とし
て上りめでたき事
を舞(まは)しむ又 田舎(ゐなか)にて
牛馬(うしむま)を飼(かふ)所は秋入(あきいれ)の
時分(じぶん)きとうのためにと
て舞(まは)しむとかや其故(そのゆへ)は
猿(さる)は山の父(ちゝ)と称(しやう)じ馬(むま)は
山の子(こ)といふゆへなりと
あいのふ抄(せう)といふ書(しよ)に
見へたり
【右丁 下段挿絵】
鉢敲(はちたゝき)
鹿島事触(かしまのことふれ)
【左丁 下段挿絵】
猿(さる)
舞(まはし)
【右丁 上段】
○万歳楽(まんざいらく)は年(とし)の始(はじめ)に
めでたき例(ためし)をとり揃(そろ)へ
て祝(いは)ひまふなりむかし
よりも有事なるよし
聖徳太子(しやうとくたいし)の御 時(とき)に烏(ゑ)
帽子(ぼし)装束(しやうぞく)を下し給はり
し例(れい)によりて今に烏(ゑ)
帽子(ぼし)素襖(すはう)を着(ちやく)すると
いへり都(みやこ)へ来るは大和(やまと)より
出る農人(のうにん)なりよつてや
まと万歳(まんざい)といふ又 中国(ちうごく)
へは美濃(みの)より出 東国(とうごく)へは
三河(みかは)の国よりもいづると
いふ
【同 下段挿絵】
万歳楽(まんざいらく)
【左丁】
夫 ̄レ宮-室衣-冠動-植飛-沈。凡-百器-用。以_二
文-字_一。写_二-貌其 ̄ノ状 ̄ヲ_一。則苦-捜力-索。劣 ̄カニ得_二其
彷-彿 ̄ヲ_一。求_二之図-絵 ̄ニ_一。則一-目瞭-然。思已 ̄ニ過
_レ半矣。故古-人之講_レ学。必也右-書左-図。
図-書並-称。取_二従-来_一尚 ̄シ矣。惕-齋先-生所
_レ著図-彙。其意 ̄ノ所_レ属。蓋亦在_二乎此 ̄ニ_一。其 ̄ノ書
奚翅。訓_二-導童-蒙_一云-爾。雖_二宿-儒老-学_一。亦
有_三資 ̄テ以広_二致-格之識 ̄ヲ_一。家-珍人-蔵。良 ̄ニ有
_レ以哉。従_二寛-文_一逮_レ今 ̄ニ。殆 ̄ト百幾十年。版已 ̄ニ
就_二刓-欠 ̄ニ_一。今-茲寛-政己-酉。額-田-氏主-人。
嘱_二 下-河-辺氏 ̄ニ_一。移_二-写 ̄シ旧-様 ̄ヲ_一。再-刻剞-劂。而
精-工縝密。視_レ旧 ̄ニ有_レ倍 ̄コト焉。刻-成。請_レ余以_二
一-語_一。余-謂 ̄フ。近。有_二春-朝-齋山-城名-所図-
会_一。亦以_二図-絵 ̄ノ之故。盛 ̄ニ行_二乎世 ̄ニ_一。朝-摺暮-
印。洛-陽紙-貴。彼 ̄ハ実 ̄ニ不_レ過_二 一-臥-遊 ̄ノ之具 ̄ニ_一
而已。猶-且見_レ賞如_レ斯。况 ̄ヤ之大 ̄ニ有_レ益之
書。非_三徒 ̄ニ供_二於目-翫 ̄ニ_一也。則必與_レ彼並駆。
而超-乗過此。如_レ指_二諸掌 ̄ニ_一。余預 ̄シメ為_二額田
翁 ̄ノ_一作_レ賀。翁其-記 ̄シテ而験 ̄セヨ_レ之。
己酉四月 春荘端隆
[印]端隆之印 [印]文中氏
【右丁】
寛政元年己酉三月吉辰 出来
皇都書林 九皐堂 寿梓
【同 上段】
訓蒙図彙 《割書:大本》 全八冊
同本小本 全四冊
同増補頭書 全八冊
同増補頭書大成 全十冊
《割書: |寛永元年出来》
下河邉拾水子画図
同増補頭書大成拾遺 《割書:全五冊|嗣出》
三才千字文《割書:訓蒙図彙の目録を幼童の素|読になして文字を覚ゆるに便あらしむ》
【同 下段】
村上勘兵衛
出雲寺文治郎
今井七良兵衛
額田正三郎
勝村治右衛門
泉 太兵衛
小川太左衛門
小川源兵衛
谷口勘三郎
【左丁 手書きメモ】
拾冊之内
【裏表紙】
《割書:増補|頭書》訓蒙図彙大生 六
【手書き】
畜獣
禽鳥
頭書(かしらがき)増補(そうほ)訓蒙(きんもう)図彙(づゐ)巻之十二
畜獣(ちくじう)
此 部(ぶ)には山野(さんや)人間(にんけん)にすむ
もろ〳〵のけだ物(もの)をしるす
【上段】
○麒麟(きりん)は
仁獣(じんじう)なり
■【鹿+具】身(くしかのみ)牛尾(うしのを)
一角(いつかく)あり牡(ほ)を
麒(き)といひ牝(ひん)を
麟(りん)といふ生虫(せいちう)
をふまず
生草(せいさう)をふまず
聖人(せいしん)の世(よ)に
いつる獣(けだもの)
なり
【下段】
麒麟(きりん)
【手書き】
拾冊之内
【上段】
○獅子(しし)は百 獣(じう)
の長(ちやう)なり
一 日(にち)に
五百里(り)を走る
虎豹(こへう)をとり
食(くら)う故(ゆへ)に
補 虎豹(こへう)といへども
獅子(しし)を大に
恐(おそ)るとや
天竺(てんぢく)の猛獣(まうじう)
にて通力(つうりき)し
ざいを得(ゑ)し
ものなりといへり
一 名(めい)狻猊(しゆんげふ)と
いふ
○獬豸(かいち)は
異国(ゐこく)の獣(けだもの)
なり其形(そのかた)
獅(し)子に似て
一角(いつかく)あり一名(いちめい)
神羊(しんよう)と云
能(よく)曲直(きよくちよく)を
わかつ皐陶(かうよう)
獄(ごく)を治(おさむ)る時
その罪(つみ)うたがは
しきものは獬(かい)
豸(ち)にあたふ
補 罪(つみ)あるものは是(これ)
を喰(くらふ)罪(つみ)なき
はくらはずと
【下段】
獅子(しゝ)
獬豸(かいち)
【上段】
○虎(とら)はかたち
猫(ねこ)のごとく
大(おほい)さ牛(うし)の
如(ごと)し色(いろ)黄(き)に
して前足(まへあし)ふと
く一身(いつしん)の力(ちから)
前足(まへあし)にあり夜
行(ゆく)に一目(いちもく)は光(ひかり)を
放(はな)ち一目(いちもく)は物(もの)
を見る声(こゑ)雷(らい)の
ごとくよく風(かぜ)
をおこす補 山(さん)
上(じやう)にて虎(とら)一声(いつせい)
吼(ほゆ)れは百 獣(じう)恐(おそれ)
すくむといふ
○騶虞(すうぐ)は白虎(びやくこ)
なりその
尾 身(み)より
ながし仁獣(ぢんじう)
なり
○豹(へう)はかたち
虎(とら)によく似(に)て
ちいさし頭(かしら)円(まる)く
面(おもて)白(しろ)し毛色(けいろ) 補
薄黄(うすき)にて白(しろ)
きほしあり
甚(はなはだ)美(び)なり故(ゆへ)に
みづから毛采(もうさい)
をおしむと
いふ
【下段】
虎(こ) とら
騶虞(すうぐ)
豹(へう) なかづかみ
【上段】
○貘(ばく)は熊(くま)に
似(に)たり象(ざう)の
鼻(はな)犀(さい)の
目(め)尾(お)は牛(うし)の
ごとく虎(とら)の
足(あし)銅鉄(とうてつ)及(およひ)
竹(たけ)を食(くら)ふ
よくねむる
けだものなり
補 すべてあしき
夢(ゆめ)をくらふと
いふよつて
枕(まくら)にゑがいて
貘(ばく)まくらと
名(な)づく
○象(ざう)は異国(ゐこく)の
大獣(たいじう)なり
鼻(はな)牙(きば)ながく
補 食(しよく)は口(くち)より
くらひ
水(みつ)は鼻(はな)より
吸(すう)といふ三年
に一たび
乳(にう)す大山(たいさん)高(かう)
山(ざん)にすむなり
牙(きば)をとり
て万(よろづ)のうつは
ものにつくる
象牙(ざうげ)といふ
なり
【下段】
貘(ばく)
象(ざう)
【上段】
○犀(さい)は毛(け)豕(ぶた)の
ごとく蹄(ひづめ)に
三 甲(かう)あり
頭(かしら)は馬(むま)のごとく
三 角(かく)あり鼻(ひ)
上(じやう)額上(かくじやう)頭上(づじやう)
にあり
○熊(くま)は毛色(けいろ)黒(くろ)く
形(かたち)豕(ぶた)に似(に)たり胸(むね)
に白脂(はくし)あり俗(ぞく)に
熊白(つきのわ)といふ洞穴(ほらあな)に
すむを穴熊(あなぐま)といひ
木(き)にすむを木熊(きくま)と
いふ熊蹯(ゆうはん)はくまの
たなごゝろ熊胆(ゆうたん)はくま
のゐ
○狼(おほかみ)は狗(いぬ)に似(に)て大(おほい)也
頭(かしら)するどき頬白(ほうしろ)く
前足(まへあし)高(たか)く後(うしろ)ひろし
口とがり大(おほ)き也
力(ちから)つよく諸獣(しよじう)
をとり食(くら)ふ
よく後(うしろ)をかへり
見る
○豺(さい)は狼(おほかみ)の類(たぐひ)
なり色黄(いろき)にして
頬白(ほうしろ)く尾(を)ながし
狼(おほかみ)よりは少(すこ)し
小(ちいさ)く力(ちから)つよく
諸獣(しよじう)を喰(くら)ふ
悪獣(あくしう)なり
【下段】
熊(いう) くま
犀(さい)
豺(さい)
やまいぬ
狼(らう)
おほかみ
【上段】
○鹿(しか)は馬(むま)のごと
くにして小(しやう)なり
頭長(かしらなが)く脚細(あしほそ)く
高(たか)し牡(を)は角(つの)有
夏至(げし)におつ牝(め)は
角(つの)なし六月に
して子(こ)をうむ
好(このん)で亀(かめ)をくら
ふ秋(あき)のすへにいた
りて声(こへ)を発(はつ)す
虚労(きよらう)をおきなひ
腰(こし)をあたゝめ一切(いつさい)
の病(やまひ)に益(ゑき)あり
○麑(かのこ)は鹿(しか)の
子(こ)なり
○麞(くじか)は秋冬(あきふゆ)は山に
すみ春夏(はるなつ)は沢(さわ)に住(すむ)
鹿(しか)に似(に)て小(ちいさく)して
角(つの)なし黄黒色(きくろいろ)也
雄(お)は牙(きば)あり
○麋(おほしか)は鹿(しか)にゝて色(いろ)
青黒(あをくろ)なり大(おほ)さ小(こ)
牛(うし)のごとし目(め)の下(した)に
二の穴(あな)あり夜(よる)の目(め)
といふ
○麢(かもじゝ)は羊(ひつじ)に似(に)て
青色(あをいろ)にして大(おほい)なり
角(つの)は細(ほそ)くて文(もん)あり
人(ひと)の指(ゆび)のごとし長(なが)さ
四五 寸(すん)皮(かわ)をとつて
褥(しとね)とす
【下段】
鹿(ろく) しか
かのしゝともいふ
麑(げい)
かのこ
麞(しやう)
くじか
麋(び)
おほじか
麢(れい) にく
かもじゝ
【上段】
○麝(じや)は麞(くじか)に似(に)
て小さく色黒(いろくろ)し
臍(ほそ)に香気(かうき)あり
補 じやかうといふは
是(これ)なり故(ゆへ)におのれ
が臍(ほそ)をおしむと云
○羊(ひつじ)は柔毛(じうもう)の畜(ちく)
なりよく群(ぐん)を
なすよつて群(ぐん)
の字は羊(ひつじ)に
したがふ
○綿羊(めんよう)は羊(ひつじ)の
毛(け)の長(なが)きもの
をいふ夏羊(かよう)
胡羊(こよう)と同
○豕(ちよ)は豬彘(ちよてい)の惣名(さうみやう)
なり野豬(いのしゝ)豪豬(やまぶた)な
とあり不絜(ふけつ)を喰(くら)ふ
よつて豕(ぶた)といふなり
腎虚(じんきよ)を補(おぎな)ふ
○豚(ゐのこ)は豕(ぶた)の子(こ)也 唐人(とうじん)は
ころして常(つね)に食(しよく)す
○野豬(ゐのしゝ)は腹小(はらちいさ)く脚(あし)
ながし毛(け)褐色(かういろ)牙(きば)に
てかけ投(なげ)る力(ちから)つよし
味甘毒(あぢはひあまくどく)なし癲癇(てんかん)を
治(ち)し肌膚(きふ)を補(おぎな)ふ
○山豬(やまぶた)は項背(うなしせ)に棘(いばらの)
鬣(たてがみ)あり長(なが)さ一 尺(しやく)ば
かり筋(すし)のごとし触(ふるゝ)
ときは矢(や)を射(ゐ)るが如(ごと)し
【下段】
麝(じや)
じやかう
綿羊(めんよう)
むくひつじ
羊(よう)
ひつじ
野猪(やちよ)
ゐのしゝ
山豬(さんちよ)
やまぶた
豚(とん)
ゐのこ
豕(し)
ぶた
【上段】
○馬(むま)は火気(くはき)を受(うけ)
て生(うま)る火は木を
生(しやう)ずる事あたは
ず故(さるかゆへ)に肝(かん)あつて
胆(たん)なし胆(たん)は木(き)の
精気(せいき)なり木臓(もくざう)不(ふ)
足(そく)す故にその肝(がん)を
くらふものは死(し)す
○駒(く)は馬(むま)二 歳(さい)なる
を駒(く)といふ又五尺
以上(いじやう)を駒(く)といふ
○驪(り)は馬(むま)の純(もつはら)に
黒(くろ)きものなりく
ろこまなり
○騮(りう)はあかき馬(むま)の
黒(くろ)きたてがみ
なるをいふなり
駵(りう)同かげのむま
なり
○驄(そう)は馬(むま)の青(あを)
しろき色(いろ)
なり
あしげ馬(むま)なり
連銭葦毛(れんぜんあしげ)
○駁(はく)は馬(むま)の
色(いろ)の純(もつはら)なら
ずしてまだら
なるなり駮(はく)同
ぶちむま也
【下段】
駒(く)
こま
馬(ば)
むま
驪(り)
くろこま
騮(りう)
かけのむま
驄(そう)
あしけ
駁(はく)
ぶち
【上段】
○牛(うし)は田(た)を耕(たがへ)す
畜(ちく)なり唐(もろこし)
には牛(うし)を
殺(ころ)して祭(まつり)に備(そなふ)
野牛(やぎう)有 水(すい)
牛(ぎう)あり牲(いけにへ)
にそなゆるを
大 牢(らう)といふ
○犢(とく)は牛(うし)の子(こ)
なり犢(とく)の鼻(はな)
男根(なんこん)に似(に)
たるゆへ男根(なんこん)を
犢鼻(とくび)といふ
なり
○驢(ろ)はうさき馬(むま)と
いふ耳(みゝ)ながき
馬(むま)なり唐(もろこし)
には是(これ)をつかふ
倭国(わこく)にはなき
馬(むま)なり
○駝(だ)は背(せなか)に肉鞍(にくあん)
ありて峯(みね)の
ごとし頸(くび)ながく
して脚高(あしたか)し
其毛(そのけ)温厚(うんかう)
にして狐(きつね)の毛(け)
よりもあたゝか
なり夏(なつ)は
涼(すゞ)し
【下段】
犢(とく) こうし
牛(ぎう)
うし
特牛 ことひうし
牝牛 めうし
黄牛 あめうし
犂牛 ほしまだらうし
驢(ろ)
うさぎむま
駝(だ)
らくだのむま
【上段】
○狐(きつね)は狗(いぬ)に似(に)て
鼻(はな)とかり尾(お)大(おほい)
なり昼(ひる)はかくれ
夜出(よるいづ)る馬骨(ばこつ)を
くはへて吹(ふけ)ば光(ひかり)を出(いだ)
し食(しよく)を求(もと)む是(これ)
を狐火(きつねび)といふ又 玉(たま)を
くはへて光(ひかり)をなすと
もいふ百 歳(さい)を経(へ)て
北斗(ほくと)を礼(らい)して化(ばけ)る
といへり
○猫(ねこ)は眼晴(まなこのひとみ)子(ね)午(むま)卯(う)
酉(とり)には糸(いと)のごとし
寅(とら)申(さる)巳(み)亥(い)には満月(まんげつ)
の如(ごと)く丑(うし)未(ひつじ)辰(たつ)戌(いぬ)に
は棗核(なつめのさね)のごとし鼻(はな)
常(つね)に冷(ひやゝか)なり夏至(げし)
一日あたゝかなり
○狸(り)は虎狸(こり)あり猫(めう)
狸(り)あり猫狸(めうり)はくさし
食(しよく)すべからず頭(かしら)とがり
口方(くちかた)なるを虎狸(こり)と云
○貉(かく)は狐狸(こり)に似た
り毛黄(けき)にして褐色(かういろ)
なりよくねむる昼(ひる)
はふして夜出(よるいづ)る
○貒(たん)は犬(いぬ)に似(に)て吻(くち)
とがり足黒(あしくろ)く毛褐(けかう)
色(いろ)なり尾足(おあし)みぢかく
ゆくことおそし耳(みゝ)
聾(しい)て人(ひと)を恐(おそ)る
【下段】
狐(こ) きつね
猫(めう) ねこ
狸(り) たぬき
貒(たん) みだぬき
貉(かく) むじな
【上段】
○獒犬(かうけん)は大犬(おほいぬ)なり
高(たか)さ四尺なるを
獒(かう)といふ俗(そく)にこれ
を唐犬(とうけん)といふ
○犬(いぬ)は味鹹温毒(あぢはひしほはゆくうんどく)な
し五 臓(ざう)を安(やすん)し気(き)
をまし腎(じん)に宜(よろ)し
○㺜犬(のうけん)は毛長(けなが)し
尨(ほう)狵(ほう)獅犬(しゝけん)同し
むくいぬなり
○蝟鼠(ゐそ)は貒(みたぬき)のごとし
脚短(あしみぢか)く尾長(をなが)し
色青白(いろあをしろ)し足毛(あしのけ)
人をさす山谷(さんこく)田野(でんや)
に生(しやう)ず猬(ゐ)同
○霊猫(れいめう)は南海(なんかい)の山(さん)
谷(こく)に生(しやう)すかたちた
ぬきのごとし陰(いん)は
麝(じやかう)のごとし
○兎(うさぎ)は前足(まへあし)みじ
かく尻(しり)に九の孔(あな)有
辛平毒(からくへいどく)なし中(うち)
を補(おぎな)ひ気(き)をます
○猿(ゑん)は禺(さる)のたぐひ
猴(こう)に似(に)て臂(ひぢ)ながし
よく樹(き)の枝(えだ)を攀(よづ)
○猴(こう)はかたち人(ひと)に似(に)
たり腹(はら)に脾(ひ)なふ
して行をかつて食(しよく)
を消(しやう)すよく立(たつ)て
ゆく性(せい)さはがしく
して物(もの)を害(かい)す
【下段】
獒犬(かうけん)
たうけん
犬(けん) いぬ
㺜犬(のうけん)
むくいぬ
蝟鼠(ゐそ)
くさぶ
霊猫(れいめう) じやかうねこ
兎(と) うさぎ
【上段】
○獺(をそ)は水中(すいちう)にすむ
四 足(そく)ともに短(みじか)し色(いろ)
青黒(あをぐろ)し魚(うを)をとり
くらふ水気(すいき)脹満(ちやうまん)
を治(ぢ)す多食(おゝくくらふ)べからす
○貂(でう)は鼠(ねずみ)のたぐひ
大(おほひ)にして黄黒色(きこくしき)
なり毛(け)ふかくして
あたゝかなり帽子(ばうし)
領(えり)にして寒気(かんき)をふ
せぐ俗(ぞく)ニ栗鼠(りそ)と書(かく)
○鼯(むさゝび)は小狐(しやうこ)のごとく
肉翅(にくし)蝙蝠(かふもり)に似(に)たり
脚(あし)みじかく尾長(をなが)
さ三尺ばかり声人(こゑひと)の
よぶがごとく火煙(くはゑん)を
喰(くら)ふ高(たか)きより下(ひきゝ)
におもむく下(ひきゝ)より
高(たか)きにのぼる事
あたはず
○鼲(てん)は鼠(ねづみ)のたぐひ
なり皮裘(かわかわころも)につくる
べし一名(いちめい)礼鼠(れいそ)
○海狗(かいく)は膃肭臍(をんとつせい)
なり形狐(かたちきつね)ににて
尾(を)は魚(うを)なり身(み)に
青白(あをしろ)き毛(け)あり又
青黒(あをくろ)き点(てん)あり
臍(ほぞ)は脾腎(ひじん)の労極(らうごく)
を治(ぢ)す
○海獺(かいだつ)は獺(をそ)に似(に)
て大(おゝき)さ犬(いぬ)のごとし
【下段】
猴(こう)
ましら
猿(ゑん) さる
獺(だつ)
かわをそ
貂(でう)
りす
鼲(こん)
てん
鼯(ご)
むさゝび
【上段】
脚(あし)の下(した)に皮(かわ)あり毛水(けみず)につい
て濡(うるほ)わずあじかといふ
○水牛(すいぎう)は色(いろ)あをく腹大(はらおほい)に頭(かしら)
とがりかたち豬(いのこ)に似(に)たり
これを食(しよく)すれば消渇(せうかつ)を
やめ脾胃(ひゐ)をやしなひ虚(きよ)を
おぎなひ水腫(すいしゆ)を治(ぢ)す
○猩猩(しやう〴〵)は海中(かいちう)にすむ獣(けだもの)也
毛色黄(けいろき)にしてさるのごとし
耳白(みゝしろ)く面(おもて)と足(あし)は人(ひと)のごとくに
て酒(さけ)をこのむ血(ち)をとりて染(そむ)
○狒々(ひひ)は猴年(さるとし)を積(つみ)て狒々(ひひ)
となるといふ形人(かたちひと)のごとくにし
て大(おほい)なり脣長(くちひるなが)く反踵髪(はんしやうばつ)を
被(かふ)ふり迅走(とくはしり)て人を食(くら)ふ人を
見れは大(おほい)に笑(わらふ)
○鼠(ねすみ)は四 歯(し)ありて牙(きば)なし前(まへ)の
爪(つめ)四ツ後(うしろ)の爪(つめ)五ツあり小児(せうに)の
驚風(きやうふう)てんかんを治(ぢ)す
○鼷(けい)はつかねずみなり鼠(ねずみ)のちい
さきものなり人をくらふて痛(いた)
まず瘡(かさ)となる
○鼹(ゑん)うぐろもちは伯労(もず)の化(くは)
するものなり鼠(ねずみ)に似(に)て頭(かしら)は
ゐのしゝのごとく尾(お)なし毛色(けいろ)
黄黒(きくろ)し池中(ちちう)をうがつてみゝ
すを食(くら)ふ日月(じつげつ)の光(ひかり)をおそる
○鼬(いたち)は鼠(ねずみ)より大(おほき)に身(み)ながく
四足みじかく尾大(おおほい)なりいろ
黄(き)にしてあかしよく鼠(ねずみ)をとる
○角(かく)はあらそふとよめりけだ物(もの)
角(つの)をもつてあらそふなり
【下段】
海狗(かいく)
おつとせ
海獺(かいだつ)
うみをそ
あじか
水牛(すいぎう)
狒々(ひひ)
猩猩(しやう〴〵)
【右丁】
【上段】
鹿(しか)は夏至(げし)に角(つの)おちて
秋分(しうぶん)に生(しやう)ず鹿角(しかのつの)水(すい)
牛(ぎう)の角(つの)器(うつはもの)につくる
○牙(きば)は歯(は)のながく大(おゝい)なる
ものなり象(ざう)の牙(きば)は
大(おゝい)にしてうつは物(もの)につ
くり猪(ゐ)の牙(きは)は物(もの)をす
りてなめらかにす
○騣(そう)は馬(むま)の頸(くひ)にあるた
てがみなりうながみとも
いふなり鬃(そう)鬐(さ)鬛(れう)
ならびに同
○蹄(てい)はけだものゝ足(あし)の
さきなり麒麟(きりん)は蹄(ひづめ)
の下に肉(にく)ありて物(もの)をふ
んでやぶらずといふ
【下段】
鼠(そ)
ねずみ
鼷(けい)
はつかねずみ
鼹(ゑん) うごろもち
鼬(いう) いたち
角(かく)
つの
牙(げ)
きば
騣(そう)
たてがみ
蹄(てい) ひづめ
【左丁】
頭書(かしらがき)増補(ぞうほ)訓蒙(きんもう)図彙(づゐ)巻之十三
禽鳥(きんてう)
此 部(ぶ)には山林(さんりん)にすむもろ
〳〵の鳥(とり)をのこらすしるす
【上段】
○鳳凰(ほうわう)は神霊(しんれい)の鳥(とり)
なり雄(お)を鳳(ほう)と云 雌(め)
を凰(わう)といふ其かたち
鶏(にはとり)に似(に)たり羽(はね)は五
采(さい)をそなへ高(たか)さ四五
尺(しやく)声(こゑ)は簫(しやう)のごとし
生虫(せいちう)を啄(ついばま)ず生草(せいさう)
をふまず桐(きり)をこのむ
竹実(ちくじつ)をくらふ
鳳皇(ほうわう)瑞鶠(ずいえん)並同
【下段】
鳳凰(ほうわう)
【上段】
○孔雀(くじやく)は大さ雁(かん)よ
り大なり高(たか)さ四尺
かしらに三 毛(もう)をいたゞ
く長さ一寸余 惣身(さうしん)
緑色(みどりいろ)にて光(ひか)り有
尾(を)の玉(たま)は青(あを)くひかる
人 手(て)をうつて歌(うた)へは
尾(お)をひらきて舞(まふ)
○錦鶏(きんけい)は山どりに
似(に)て小(ちいさ)く羽色(はいろ)は五
色(しき)なり孔雀(くじやく)のは
ねのことし鷩雉(べつち)
采鶏(さいけい)並同
○白鷴(はくかん)は山鶏(やまとり)に似(に)
て色白(いろしろ)し黒(くろ)き文(もん)
あり尾(を)の長(なが)さ三四
尺ばかりあり食(しよく)す
れば中(うち)を補(おぎな)ひ毒(どく)を
解(げ)す
【下段】
孔雀(くじやく)
錦鶏(きんけい)
白鷴(はくかん)
【上段】
○鶴(つる)は長(なが)さ三尺 高(たか)さ
三尺余 喙(はし)の長(なが)さ四
五寸 項目頬(いたゞきめほう)あかく
脚(あし)あをく頸(くび)ながく指(ゆび)
ほそく羽白(はねしろ)くつばさ
黒(くろ)し夜半(やはん)になく
声(こゑ)ましはりて孕(はら)むと
糞石(ふんいし)に化(くわ)す
○鸛(こうづる)は鶴(つる)に似(に)ていたゞ
き丹(あか)からすくび長(なが)く
喙(はし)あかく色灰白(いろはいしろく)つば
さ黒(くろ)し高木(かうぼく)に巣(すくふ)
○鶬鴰(さうくはつ)は鶬鶏(さうけい)なり
まなづるなり
○鴈(がん)は大なるを鴻(こう)と
いひ小(すこし)なるを鴈(がん)と云
久(ひさ)しく食(しよく)すれは
気(き)をうごかし骨(ほね)を
さかんにす
○鴻(ひしくひ)は鴈(かん)の大なるもの
なり江渚(こうしよ)に多(おゝ)くあ
つまるゆへに江(こう)と書(かく)也
五 臓(ざう)を利(り)し丹石(たんせき)の
毒(どく)を解(げ)す
○鵠(はくてう)は鴈(がん)より大なり
羽(はね)白く高(たか)く飛(とぶ)味(あぢは)ひ
あまく平毒(へいどく)なし人の
気力(きりよく)をまし臓腑(ざうふ)を
【下段】
鸛(くわん) こうづる
鶴(くわく)
つる
たんてう
鶬鴰(さうくはつ)
まなづる
鴈(がん) かり
鴻(こう)
ひしくひ
鵠(かう)
くゞひ
はくてう
【上段】
○鵞(とうがん)は蒼白(あをしろ)の二 色(いろ)
ありまなこ緑(みどりに)喙黄(はしき)
に脚(あし)紅(くれない)なりよく闘(たゝか)ふ
食(しよく)すれは五 臓(さう)の熱(ねつ)
を解(け)す
○鶩(あひる)はかたち鳧(かも)に似(に)
たり飛(とぶ)ことあたはず
羽色(はいろ)は白きあり頭黒(かしらくろ)
きはかもの羽色のごとし
大寒(だいかん)毒(どく)なし風虚(ふうきよ)
寒熱(かんねつ)水腫(すいしゆ)を治(ぢ)す
○鸊鷉(かいつふり)は鳩(はと)の大さほ
どあり陸(くが)をあゆむこ
とあたはず水(みづ)に入て
魚をとる
○鳬(かも)は品類(ひんるい)多(おゝ)く大
小あり羽色(はいろ)さま〴〵かは
れり図(づ)するところは俗(ぞく)
にいふ真鴨(まがも)なり中(うち)を
補(おぎな)ひ気(き)をまし胃(ゐ)を平(たいらかに)す
○鴎(かもめ)は白(しろ)き鴿(はと)のごとし
喙(はし)ながくむらがり飛(とん)
で日にかゝやく海辺(かいへん)に
住(すむ)三月に卵(かいこ)をうむ
○鴛鴦(をしどり)は大さ鴨(かも)の如(ごと)
し色黄黒(いろきくろ)羽青(はあを)くひ
かる小毒(しやうどく)あり夫婦(ふうふ)和(くは)
せざるものにはひそかに
【下段】
鵞(が)
たうがん
鶩(ふ)
あひる
かいつぶり
鸊鷉(へきてい) かいつぶり
鳬(ふ) かも
鴎(をう) かもめ
をしとり
鴛鴦(ゑんわう
【上段】
喰(くら)はしむ
○鷺(さぎ)は頸(くび)ほそく長(なか)く
喙脚(はしあし)ともに長(なが)し大小有
小なるは頂(いたゝき)に長(なが)き毛(け)
有 脾(ひ)をまし気(き)を補(おぎな)ふ
○鵁鶄(ごいさぎ)は水鳥(みづとり)なり
大さ鷺(さぎ)のごとし灰白(はいしろ)
色(いろ)背黒(せくろき)をせぐろごいと
いひほしあるを星(ほし)ごい
といふ諸魚(しよぎよ)の毒(どく)を解(げす)
○紅鶴(とき)は一名 朱鷺(しゆろ)
といふ鷺(さき)より大なり
色白(いろしろ)く少(すこ)しあかし
俗(そく)にたうがらすと云
○鷸(しぎ)は大さ鳩(はと)より少(すこ)
し小(ちいさ)し喙脚長(はしあしなが)く
羽茶色(はねちやいろ)に黒(くろ)きふ有
田沢(てんたく)にすむ大小あり
大なるをぼとしきと
いふ虚補(きよをおぎな)ひ人を暖(あたゝむ)
○鸕鷀(う)は鴉(からす)に似(に)て
頸長(くびなが)く喙少(はしすこ)し長
し水(みづ)に入てよく魚(うを)
をとる林木(りんぼく)に巣(す)く
ふ漁人(ぎよじん)かふて魚(うを)を
とらしむ
【下段】
ごいさぎ
鵁鶄(かうしやく)
鷺(ろ) さぎ
紅鶴(こうくはく)
たう
とき
鷸(いつ)
しき
鸕鷀(ろじ)
う
【上段】
○鷲(わし)は鷹(たか)
の大なるもの
なり至(いたつ)て大
なるは七八尺に
およぶ其色(そのいろ)は
黄(き)にしてはら
黒(くろ)くふあり
觜黄(はしき)なり
深山(しんざん)にすみて
空中(くうちう)をかけり
よく獣(けだもの)をつかみ
喰(くら)ふ
○皂鵰(くまたか)は鷹(たか)の大(おゝい)
なるものなり翅(つばさ)つ
よく空中高(くうちうたか)く飛(とび)
めぐり諸鳥(しよてう)はいふに
及(およ)ばす獣(けだもの)をとり食(くら)
ふ其 長(たけ)三四尺あり唐(もろ)
土(こし)にて大鷹といふ
は鷲(わし)皂鵰(くまたか)をいふと
なり日本にては大
鷹と称(せう)ずるものは
隼(はやふさ)などをいふ
【下段】
鷲(しう)
わし
皂鵰(さうしう) くまたか
【上段】
○鷹(たか)は惣名(さうみやう)にて大
小その品多(しなおほ)く勇猛(ゆうもう)
の鳥(とり)なり田猟(でんりやう)にも
ちひて諸鳥(しよてう)をとら
しむる事はそのかみ
神功(じんぐう)皇后(くわうこう)の御(み)代に
百済国(はくさいこく)よりはじめて
鷹を献(けん)ぜしとかや
それより代々(よゝ)鷹(たか)を
もてあそび給ふ鷹は
朝鮮国(てうせんごく)の産(さん)を第一
とす
○隼(はやふさ)は鷹(たか)の中(なか)にて
するどきものなり形(かたち)も
大にして鳶(とひ)ほどあれ
ば雉(きじ)鴈(かん)鴨(かも)などの大
鳥(とり)をとる鶴(つる)などに
は隼を二 羽(は)かくると
かや鶽(じゆん)同
○鷂(はしたか)は鷹(たか)の小(ちいさ)きもの
なり鷂の小(ちいさ)きを兄(こ)
鷂(のり)といふさらに小きを
雀鷂(つみたか)といふいづれも
かたち小(ちい)さければ小鳥(ことり)
【下段】
鷹(よう)
たか
隼(しゆん) はやふさ
白鷹(はくよう)
【上段】
をとるなり
○雀𪀚(ゑつさい) 雀鸇(さしば)
何れも鷹(たか)の名(な)小
鳥をとる鷹の種品(しゆほん)
四十八あり鳶(とび)鵙(もず)梟(ふくろう)
をくはへて四十八 種(しゆ)と
せりしかりといへども
狩猟(しゆれう)にもちゆる鷹
は其飼(そのかふ)人の名付(なづく)る
あり又むかしより名(めい)
誉(よ)の鷹には悉(こと〴〵)く異(い)
名(みやう)あり亦(また)異国(いこく)より
わたりし鷹には異(ゐ)
類(るい)ことさらにあるべし
唐鷹(とうよう)高麗(かうらい)南蛮(なんばん)
琉球(りうきう)日本にも東国(とうごく)
西国(さいこく)北(ほつ)国四国中国
つくしその国々(くに〴〵)のか
わりありとかや鷹の
羽(はね)はかた羽(は)に廿四枚両
羽合て四十八 枚(ま)尾(を)は
十二枚ありいづれも名
あり鷲(わし)の尾(を)は十四枚
あり
【下段】
鷂(よう) はしたか
兄鷂(けうよう) このり
雀𪀚(じやくとう) ゑつさい
雀鸇(さしば)
【上段】
○鸎(うぐひす)は毛(け)うす青(あを)し
立春(りつしゆん)のゝちはじめて
さへつる声(こへ)春陽(しゆんやう)に応(おう)
ず
○鷦鷯(みそさゞい)は雀(すゝめ)よりちい
さく赤黒(あかくろ)く黒きふ
あり寒中(かんちう)雪(せつ)中に
きたる夏(なつ)は居(お)らず
○鶲(ひたき)は冬(ふゆ)きたる雪(ゆき)
びたきといふは青(あを)くひ
かる羽色(はいろ)なりじやう
ひたきはかばいろに黒(くろ)
き羽(は)まじる
○山鶏(やまどり)は雉(きじ)に似(に)
てすこし小(ちいさ)くし
て尾長(をなが)く羽色(はいろ)黄(き)
赤(あか)し山にすむ也
鸐雉(てきち)といふあぶり
食(しよく)すれば中(うち)を補(おぎな)ひ
気(き)をます
○啄木(てらつゝき)は小(ちいさ)きは雀(すゝめ)の
ごとく大(おゝい)なるはひよどり
ほど有 下腹赤(したはらあか)く觜(くちばし)
錐(きり)のごとく木(き)をつゝき
うかつて虫(むし)を食(くら)ふ
【下段】
鸎(あう)
うぐひす
鷦鷯(せうれう) みそさゞひ
鶲(ひたき)
山鶏(さんけい) やまどり
啄木(たくぼく)
てらつゝき
【上段】
○雲雀(ひばり)は一名 蒿雀(かうじやく)
といふ雀(すゞめ)より少(すこ)し大(おゝい)
に茶色(ちやいろ)にしてふあり
三月の始(はじめ)より夏至(けし)の
頃(ころ)まで空(そら)に登(のぼ)りて
囀(さへづ)る陽(よう)をおこし精(せい)
髄(すい)をおぎなふ
○雉(きじ)は雄(を)は羽色(はいろ)美(び)也
尾長(をなが)し雌(め)は茶色(ちやいろ)に
してふあり春陽(しゆんよう)に
至(いた)りてなく九月より
十一月まで食(しよく)すべし
○練雀(れんじやく)は尾(お)の長(なが)き
と短(みじかき)との二 種(しゆ)あり大
さひよどりより小(ちいさ)く
黒(くろ)く褐色(かういろ)尾(を)に白き
毛(け)ありて練(ねり)たる帯(おび)
のごとし
○鵐(しとゝ)は雀(すゞめ)の大(おゝい)さほど
ありて薄青(うすあを)く少(すこ)し
ふあり冬月(とうげつ)来る俗(ぞく)ニ
あをじといふ此鳥(このとり)を
黒(くろ)やきにして腫物(しゆもつ)
に付(つけ)て妙薬(めうやく)なり
【下段】
雲雀(うんじやく)
ひばり
雉(ち) きじ
鵐(ふ) しとゝ
練鵲(れんじやく)
【上段】
○鶉(うづら)はひよどりの大(おゝい)
さほどありて丸(まる)き形(かたち)
なり惣身(さうしん)こまかなる
ふあり赤(あか)ふ黒(くろ)ふの二
品(ひん)あり秋(あき)のすへに至(いた)
りてなく人 此声(このこゑ)をは
賞(しやう)じて多(おゝ)く籠(こ)に入(いれ)
てかふ粟(あわ)をこのんで食(くら)
ふあぶり食(しよく)すれば五
臓(ざう)をおぎなひ中(うち)をま
すなり
○吐綬鶏(とじゆけい)は大(おゝい)さ鶏(にはとり)
のごとし頭雉(かしらきじ)に似(に)
たり羽(はね)の色(いろ)黒黄(くろき)に
してほしあり項(うなじ)に
嚢(ふくろ)ありて肉綬(にくじゆ)を納(おさむ)
日和(ひより)よく快(こゝろよ)き時(とき)はこの
嚢(ふくろ)をのばしあそぶ
○山鵲(さんじやく)は鵲(かさゝぎ)のごとく
にして色黒(いろくろ)く文采(もんさい)
あり觜(はし)あかく尾長(をなが)く
してとをく飛(とぶ)ことあ
たはず
【下段】
鶉(しゆん)
うつら
吐綬鶏(としゆけい)
山鵲(さんじやく)
○鶤鶏(たうまる)は鶏(にはとり)の大なる
ものなり一 名(めい)傖鶏(さうけい)
といふもろこし蜀(しよく)
中(ちう)に多し羽色(はいろ)黒(くろ)
白(しろ)の二 品(ひん)あり其性(そのせい)
勇(ゆう)にしてよく闘(たゝか)ふ
又しやむ国(こく)より渡(わた)
りし鶏(にはとり)ありよつて
しやむといふ鶤鶏(たうまる)
よりは少(すこ)し小(ちい)く脚(あし)
ふとく高(たか)くして勇(ゆう)也
闘(たゝかひ)をこのむ
○鶏(にはとり)は朝鮮国(てうせんこく)を
良(よし)とす羽色(はいろ)は品々(しな〴〵)
あり俗(そく)にしやうこく
といふ炙(あぶり)食(しよく)すれば
虚(きよ)を補(おぎな)ひ中(うち)をあた
ため血(ち)をとめ婦人(ふじん)
の崩(ぼう)によし
○雛(ひな)は諸鳥(しよてう)の巣(す)
だちなり初(はじめ)て生(うま)
れてみづから啄(ついばむ)を
雛(ひな)といふ母(はゝ)くゝめ食(くらは)
しむるを鷇(こく)といふ
【下段】
鶤鶏(こんけい)
たうまる
鶏(けい) にはとり
しやうこく
雛(すう) ひな
ひよこ
【上段】
○矮鶏(ちやぼ)はもろこし
江南(こうなん)に多(おゝ)しかたち
小(ちいさ)くして脚(あし)わづかに
二寸ばかり
○鷽(うそ)は雀(すゞめ)より小く
羽色(はいろ)文采(もんさい)あり腹(はら)の
下白(したしろ)くしてうつく
しき鳥(とり)なり
○燕(つばくら)は雀(すゞめ)の大(おゝき)さほど
あり泥(どろ)を含(ふくみ)て屋宇(いへののき)
に巣(す)をつくる戊巳(つちのへみ)の
日をさくるといへり
○鳩(はと)は惣名(さうみやう)にて類(たぐひ)お
ほし図(づ)する処(ところ)は俗(そく)に
いふじゆずかけ又 八幡(はちまん)
鳩(ばと)ともいふ頸(くび)のまはり
黒(くろ)くじゆずをかけたるか
ごとし羽色(はいろ)灰白(はいしろ)くふなし
人 此鳩(このはと)をとらず
○青鳩(やまばと)は山に住(すみ)て里(さと)
に出(いで)ず羽色(はいろ)緑(みどり)褐色(かういろ)
なり食(しよく)すれば虚(きよ)を
補(おぎな)ひ血(ち)を活(いか)す
天子(てんし)御衣(ぎよゐ)の色(いろ)是(これ)なり
【下段】
鷽(よ)
うそ
矮鶏(わいけい)
ちやぼ
燕(ゑん)
つばくら
鳩(きう) はと
青鳩(せいきう) やまばと
【上段】
○鳲鳩(かつこ)は色褐(いろかう)にして
三月 穀雨(こくう)の後(のち)はじめ
てなく食(しよく)すれは神(しん)を
安(やすん)ず又つゝ鳥(とり)といふ有
是(これ)も鳩(はと)の類(たぐひ)にて三月
の頃(ころ)なく声(こゑ)を聞(きゝ)て豆(まめ)を
まくといへり
○鴿(いへばと)は堂塔(たうたう)に多(おゝ)く
あつまり住(すむ)はとなり
精(せい)をとゝのへ気(き)を益(ます)悪(あく)
瘡(さう)を治(ぢす)薬毒(やくどく)を解(げ)す
多く食(しよく)すべからず
○鶇(つくみ)は鵯(ひよどり)の大(おゝき)さ有
羽色(はいろ)茶(ちや)にしてふ有
歳(とし)の暮(くれ)に是(これ)を食(しよく)
す味(あぢは)ひよし
○鵙(もず)は鵯(ひよどり)より少(すこ)し小(ちいさ)
く茶色(ちやいろ)にて頭(かしら)鷹(たか)の
如(ごと)く小鳥(ことり)を追(おひ)肉食(にくじき)す
小児(しやうに)言(ものいふ)ことおそきに鵙(もず)
の踏枝(ふむえだ)にてうつなり
○鶸(ひわ)はかたち雀(すゞめ)ほど
あり羽色(はいろ)黒(くろ)く黄(き)なる
羽(はね)まじる春(はる)きたる
【下段】
鳲鳩(しきう)
かつこ
鴿(がう)
いへばと
鶇(とう) つぐみ
鵙(けき) もず
鶸(じやく)
ひわ
【上段】
○画眉(ほゝじろ)は■【畫+鳥】鶥鳥(くはびてう)
なりかたち雀(すゞめ)ほど有
羽色(はいろ)も似(に)たり頬白(ほうしろ)く
黒(くろ)き毛(け)あり
○鶖(かしとり)は鵯(ひよどり)より大(おゝい)に
翅(つばさ)に青(あを)くるりに黒(くろ)き
ほし有 羽(は)あり秋(あき)の末(すへ)
より冬月(とうげつ)に来(きた)り鳴(なく)
○杜鵑(ほとゝぎす)は鵯(ひよとり)より大に
して黄黒(きくろ)く口赤(くちあか)し
四五月の頃(ころ)夜陰(やいん)に
なく杜宇(とう)子規(しき)同
○鵯(ひよとり)は鸜鵒(くよく)なり
又 哵哵鳥(ははてう)ともいふ
身首(みかしら)ともに薄(うす)ね
ずみ色(いろ)に黒(くろ)きふあり
諸木(しよぼく)の実(み)を食(くら)ふ
秋冬(あきふゆ)多(おゝ)く来(きた)る
○鶺鴒(せきれい)は觜(はし)ほそく
尾長(をなが)し飛(とぶ)ときは鳴(なく)
居(おる)とき尾をうごかす
羽(はね)白 背黒(せくろ)きをせぐろ
といひ青(あを)く黄(き)なるを
きぜきれいといふ
【下段】
画眉(ぐはび) ほゝじろ
鶖 かしどり
杜鵑(とけん) ほとゝぎす
鶺鴒(せきれい) いしたゝき
鵯(ひ) ひよどり
【上段】
○翠雀(るり)は一名 翠(すい)
鳥(てう)といふかたち雀(すゞめ)の
大(おゝい)さほどあり頭背(かしらせなか)
ともにるり色(いろ)に光(ひか)
りて美(うつ)くしき鳥(とり)也
ちやるりといふもの有
○蝋嘴(まめどり)は一名 窃脂(せつし)
といふかたちひよどり
の大(おゝい)さほとにて喙(はし)は
ふとく黄(き)なり又しめ
といふ鳥(とり)かたち蝋嘴(まめどり)
と同 喙(はし)薄赤(うすあか)し
○烏鳳(おなかどり)惣身(さうみ)黒(くろ)く
尾長(をなか)し一 名(めい)王母(わうぼ)
鳥(てう)といふ
○雀(すゞめ)は頭(かしら)は蒜(にら)の顆(つぶ)
のごとく目(め)は椒(さんせう)の目の
ごとし其性(そのせい)尤(もっとも)淫乱(いんらん)
なり食(しよく)すれば陽(よう)を
さかんにし気(き)をまし
腰(こし)ひざをあたゝめ小便(しやうべん)
をしゞめ血崩(けつほう)帯下(たいけ)を
治(ぢ)す頭(かしら)を食(しよく)すべから
ず瘡(かさ)を発(はつ)す
【下段】
翠雀(すいじやく)
るり
蝋嘴(らうし) まめどり
烏鳳(うほう)
おながどり
雀(じやく) すゞめ
【上段】
○鸚鵡(あふむ)はよく言鳥(ものいふとり)
なり白青(しろあを)く又五
色(しき)あり青き羽(はね)赤(あかき)
喙(はし)あり唐鳥(からとり)なり
○竹鶏(やましぎ)は鷓鴣(しやこ)に似(に)
てちいさく褐色(かういろ)にし
てまだらに赤(あか)し
尾(を)なし蟻(あり)をくらふ
水辺(すいへん)にすむ
○鸜鵒(はゝてう)はかたち烏(からす)
に似(に)て小くよく人(ひとの)
言(ものいひ)をなす尤(もつとも)唐鳥(からとり)
なり
○蝙蝠(かふもり)はかたち鼠(ねずみ)に
似(に)てつばさは紙(かみ)をはる
がごとしものなり
夏(なつ)より秋(あき)の末(すへ)まで
夜(よ)ことに飛(とび)めぐりて
蚊(か)を食(くら)ふ昼(ひる)は洞穴(ほらあな)
にかくれ居(をる)つばさの
さきにかぎ有てかゝりゐる
【下段】
鸚鵡(あふむ)
竹鶏(ちくけい) やましぎ
蝙蝠(へんふく) かふもり
鸜鵒(くよく)
哵哵鳥(ははてう)也
【上段】
○鴉(からす)は觜(はし)大(おゝい)にしてむ
さぼる事を好(このむ)黒焼(くろやき)
にしてやせ病(やまひ)欬嗽(がいそう)
労疾(らうしつ)を治(ぢ)す
○烏(からす)は觜(はし)ほそく鴉(あ)
より小なり生れて
母(はゝ)哺(くゝむる)こと六十日巣(す)だ
ちして母(はゝ)を哺(くゝむる)こと
六十日よつて慈烏(じう)と云
○鳶(とび)は鷹(たか)に似(に)たり
鴟(てい)同 黒焼(くろやき)にして
頭風(づふう)を治(ぢ)す
○怪鴟(よたか)はふくろうの
たぐひにて夜出(よるいて)て
昼(ひる)はかくれ居(お)るかた
ちは鷹(たか)に似(に)て小(ちいさ)し
不徉(ふしやう)の鳥(とり)なり
○角鴟(みゝづく)はかたちふく
ろうにてちいさし頭(かしら)
目ねこのごとく毛角(もうかく)
両耳(りやうに)あり昼(ひる)ふして
夜(よる)いづる声(こゑ)老人(らうじん)の
ものをよぶがごとし
【下段】
烏(う)
からす
鳶(えん)
とび
鴉(あ)
からす
怪鴟(くはいし) よたか
角鴟(かくし)
みゝづく
【上段】
○梟(ふくろう)はかたち鳶(とひ)に
似(に)て小(ちいさ)く頭大(かしらおゝい)にして
丸(まる)く眼大(まなこおゝい)なり夜出(よるいで)て
昼(ひる)はかくれ居(お)る雌(め)は
声(こゑ)さけぶがごとし母鳥(はゝとり)
を食(くら)ふといふ不孝(ふかう)の
鳥(とり)といへり
○鵲(かさゝぎ)は大(おゝい)さ鴉(からす)のごと
し尾(を)とがりて長(なが)し
觜黒(はしくろ)し食(しよく)すれは
痳病(りんびやう)消渇(せうかつ)を治(ぢ)する
婦人(ふじん)は食(しよく)すべからす
○秧鶏(くひな)は鶏(にはとり)に似(に)
て小(ちいさ)し頬白(ほうしろ)く觜(はし)
長(なか)く尾(を)みじかく背(せなか)
に白まだらあり田(てん)
沢(たく)のほとりにすむ
○鴗(かはせみ)は大(おゝい)さ燕(つばめ)のごとし
喙(はし)かたちより大に尖(とが)りて
長(なが)し足(あし)のうら紅にし
て短(みぢか)し水辺(すいへん)に有
て魚(うを)をとる土(つち)にあな
ほりて巣(す)つくる惣身(さうみ)
黒(くろ)く青(あを)くひかる
【下段】
梟(けう)
ふくろふ
鵲(しやく)
かさゝぎ
秧鶏(あうけい)
くひな
鴗(りう) かはせみ
【上段】
○火鶏(くはけい)はかたち鶏(にはとり)に
類して高(たか)さ七尺くび
長(なが)く日に飛行(とびゆく)こと三
百里 異国(ゐこく)の鳥(とり)なり
駱駝馬(らくだむま)に似(に)たるゆへ一名
駱駝鶴(らくだくはく)ともいふ
○鶚(みさご)は鷹(たか)の類(るい)なり
鷹(たか)に似(に)て羽色(はいろ)黄(き)白
なり海辺(かいへん)水上(すいじやう)を
飛(とび)めぐりてよく魚(うを)
をとり食(くら)ふ
○羽斑鷸(はまだらしぎ)はしぎの
たぐひなり羽(はね)まだら
にふありてうつくし
田沢(てんたく)にすむ鷸(しぎ)と
同くむらがり飛(とふ)
○鴋(はん)は水鳥(みつとり)なり大
小ありかたち鴈鳧(がんかも)に
類(るい)して脚(あし)は長(なが)し
【下段】
火鶏(くわけい)
一名
駱駝鶴(らくたくはく)
羽斑鷸(はまだらしぎ)
鶚(かく)
みさご
鴋
ばん
【上段】
○鶁(むくとり)は小(こ)むくといふ大(おゝい)
さひよどりより小(ちいさ)く
頭(かしら)白く背(せなか)黒白(くろしろ)の毛(け)
あり秋(あき)の央(なかは)多(おゝ)くむ
れわたる味(あぢは)ひ美(ひ)なり
○椋鳥(むくとり)大(おゝ)むくといふ
小むくより大(おゝい)なり羽(は)
色(いろ)もかはれり夏秋(なつあき)の
頃(ころ)来(きた)るむれにならず
○菊戴(きくいたゞき)は至(いたつ)て小(ちいさ)き鳥(とり)
なり惣身(さうみ)薄青(うすあを)し
頂(いたゞき)に黄(き)なる毛(け)あり天
気(き)よくあたゝかなれは
頂(いたゞき)の毛(け)をひらけば中(なか)よ
り紅(くれない)の毛(け)いづる冬月(とうけつ)
来(きた)る鳥(とり)なり
○文鳥(ぶんてう)は雀(すゞめ)ほどあり
羽色(はいろ)黒(くろ)く頬(ほう)に丸(まる)く
白(しろ)き毛(け)あり腹(はら)白し
○四十雀(しじうから)は雀(すゞめ)より
小(ちいさ)く頭黒(かしらくろ)く頬丸(ほうまる)く
白し背(せなか)はうす青(あを)く
腹(はら)白く黒(くろ)き毛(け)あり
秋冬(あきふゆ)きたる
【下段】
椋鳥(むくどり)
小むく
菊戴(きくいたゝき)
椋鳥(むくどり) 大むく
文鳥(ふんてう)
四十雀(ししうから)
【上段】
○山雀(やまがら)は雀(すゞめ)の大さほ
どあり頭(かしら)くろく背(せなか)
黒(くろ)くはらかき色(いろ)なり
羽(は)づかひかるくしてよ
くかへるゆへに籠(かご)に入
て飼(かひ)をくなり
○鴰(ひがら)は四十 雀(から)に似(に)て
小(ちいさ)し是(これ)も飼置(かひをく)によし
毛色(けいろ)うるはし
○小雀(こから)は鴰(ひがら)に似(に)てい
たつて小(ちいさ)しいづれも
秋(あき)のすゑにわたる
○繍眼児(めじろ)は雀(すゞめ)より
小(ちいさ)し羽色(はいろ)もへぎ色(いろ)
腹(はら)うす黄なり目(め)の
まはり白(しろ)し多(おゝ)く集(あつま)
り枝(ゑた)におし合(あひ)とまる
鳥(とり)なり
○ゑながは至(いたり)て小(ちいさ)き
鳥(とり)なり頂(いたゞき)灰白(はいしろ)色 羽(は)
色(いろ)うす黒灰白(くろはいしろ)の毛(け)
交(まじ)りうすあかき毛(け)有
尾長(をなが)し秋(あき)より冬(ふゆ)
にいたりてむれ来(きた)る
【下段】
鴰
ひがら
山雀(さんじやく)
やまがら
小雀(しやうじやく)
こがら
尾長(ゑなが)
繍眼児(めじろ)
【上段】
○駒鳥(こまとり)鵯(ひよどり)より小(ちいさ)く
頭背(かしらせなか)ともに赤茶(あかちや)
色(いろ)腹(はら)に黒(くろ)き毛(け)有
山に住(すみ)て里(さと)へいでず
鳴声(なくこへ)を人 賞(しやう)じて
飼(かひ)をくなり
○九官(きうくわん)は一 名(めい)秦吉(さる)
了(か)といふ鳩(はと)より小(ちいさ)く
惣身(さうみ)黒(くろ)く翅(つばさ)に白
き羽(は)ありよく人の
言(ことば)をなす尤(もつとも)唐鳥(からとり)
なり
○風鳥(ふうてう)はかたち雀(すゞめ)
より大(おゝい)につばさ尾(を)
ともに長(なが)き毛(け)あり
てみのをきたるが如(ごと)
し色(いろ)は緑(みどり)にてひか
りありまれなる鳥(とり)
なり
○𪈿(ひよくのとり)は比翼鳥(ひよくのとり)とも
書(かく)なり雌雄(しゆう)つばさ
をならべて飛(とふ)といふ
此鳥(このとり)実(じつ)に見(み)たる人
をきかず
【下段】
駒鳥(こまどり)
九官(きうくわん)
一名 秦吉了(さるか)
喉紅鳥(のごどり)
風鳥(ふうてう)
𪈿(ひよくのとり)
【上段】
○喉紅鳥(のごとり)はかたち
雀(すゞめ)の大さありのど
より胸(むね)にいたりて紅(へに)
にして美(うつ)くしき鳥(とり)也
まれにあり
○深山頬白(みやまほじろ)は小鳥(ことり)
にて羽色(はいろ)美(び)なる
鳥(とり)なり
○黄雀(きすゞめ)はすゞめに似(に)
て黄なり又 紅雀(へにすゞめ)と
いふは紅(へに)の毛(け)あり又
入内雀(にうないすゞめ)といふも有
○鸞(らん)は神鳥(しんてう)なり
かたち鶏(にはとり)に似(に)て尾(を)
長(なが)く声(こゑ)五音(ごゐん)にあた
る鏡(かゞみ)を見れは舞(まふ)
○蒼鷺(あをさぎ)はさぎより
大(おゝい)にして青(あを)く腹(はら)白し
雨夜(あまよ)には羽青(はねあを)く光(ひか)
りて人 怪(あやし)みおそる
○葦雀(よしはらすゞめ)は雀(すゞめ)より
大(おゝい)にかしましく鳴(なく)葦(よし)
芦(あし)の中(なか)に居(お)る河辺(かへん)
沢(さわ)のほとりに多(おゝ)し
【下段】
深山頬白(みやまほじろ)
黄雀(きすゞめ)
鸞(らん)
蒼鷺(さうろ)
あをさぎ
みとさぎ
葦雀(おげら)
よしはらすゞめ
よしとり
きやう〳〵し
ともいふ
【上段】
○鴆(ちん)は鷹(たか)に似(に)たり
紫黒(むらさきくろ)く喙赤黒(はしあかくろ)し
頸(くび)の長(なが)さ七八寸 蛇(へび)を
食(くら)ふ大毒鳥(だいどくてう)なり鳳(ほう)
凰(わう)をおそる
○雉鳩(きじばと)は鴿(いへばと)に似(に)て
羽薄黒赤(はねうすくろあか)く茶色(ちやいろ)の
ふあり竹林(ちくりん)に住(すむ)としより
こいとなく
○犳鴫(しやくなぎ)は惣身(さうみ)茶色(ちやいろ)
にて頸長(くびなが)く脚(あし)ながし
海辺(かいへん)に住(す)む
○都鳥(みやこどり)はかしらより
背(せなか)は黒(くろ)く腹白(はらしろ)し
觜脚(はしあし)あかし水鳥(みづとり)也
○音呼(いんこ)は大小あり
大(おゝい)なるは鳩(はと)の大(おゝい)さあり
小なるは小鳥(ことり)ほど有
色(いろ)は紅(べに)有 五色(ごしき)あり
唐鳥(からとり)なり
○羽(は)は翎(れい)翰(かん)並に同
翮(かく)はね羽根(はね)羽茎(はぐき)也
翈(かう)はかざきり翮上(かくじやう)の
短羽(たんう)なり
【下段】
鴆(ちん)
雉鳩(きじばと)
犳鴫(しやくなぎ)
都鳥(みやこどり)
音呼(ゐんこ)
【上段】
○翼(つばさ)は鳥(とり)のつばさ
なり翅(し)同 大鳥(おゝとり)を
翼(よく)といふ小鳥(ことり)を羽(う)
といふ
○尾(を)は鳥(とり)の尾(を)なり
臎(すい)同
○嘴(くちばし)は鳥(とり)のくちば
しなり喙(けい)同又 吻(ふん)は
くちわき觜(し)はくちばし
○卵雛(らんすう)は諸鳥(しよてう)の
たまご鶏卵(けいらん)は五臓(ござう)
を安(やすん)じ水臓(すいざう)を温(あたゝ)む
【下段】
羽(う) は
翼(よく)
つばさ
嘴(し) くちばし
尾(び)
を
卵雛(らんすう)
たまご
【手書き】
拾冊之内
【裏表紙】
【表紙】
天文【赤字 手書き】
居処【赤字 手書き】
【題簽】
《題:《割書:増補|頭書》訓蒙図彙大成 二》
【右丁】
十冊之内
【左丁】
《題:頭書増補訓蒙図彙(かしらがきぞうほきんもうづゐ)巻之(くはんの)一》
天文(てんぶん)《割書:此部(このぶ)には日月(じつげつ)星辰(せいしん)雨露(うろ)霜雪(さうせつ)のたぐひあり|日月(じつげつ)星辰(せいしん)は天(てん)の文章(ふんしやう)なれば也 易(ゑきに)曰 仰(あふひで)見(みる)_二於 天文(てんぶんを)_一》
【上段】
両儀(りやうぎ)
天地(てんち)開辟(かいひやく)のときかるくして
清(すめ)るはのぼりて天(てん)となりおもく
してにごるはくだりて地(ち)となる
天(てん)を陽(やう)とし地(ち)を陰(ゐん)とす陰(ゐん)
陽(やう)を両儀(りやうぎ)といふなり
○七政(しちせい)とは日月(じつげつ)と五 星(せい)を合(あは)せ
ていふ又は七 曜(よう)ともいふなり
日月五 星(せい)天(てん)の政(まつりこと)をなすなり
木星(もくせい)を歳星(さいせい)といひ火星(くはせい)を熒(けい)
惑(こく)といひ土星(どせい)を鎮星(ちんせい)と云 金(きん)
星(せい)を太白(たいはく)といひ水星(すいせい)を辰星(しんせい)
【下段図】
両儀(りやうぎ)
【左に】
日(じつ)
月(がつ)
木星(もくせい)
火星(くはせい)
土星(とせい)
金星(きんせい)
水星(すいせい)
【右丁上段】
といふ木火土金水(もくくはどごんすい)の五 行(きやう)の
星(ほし)めぐりて陰陽(いんやう)をなし歳(とし)
をわす此(この)五 星(せい)を五 緯(い)ともいふ
○太極(たいきよく)は天地(てんち)いまたわかれず
陰陽(いんやう)わかれざるとき渾沌(まろがれ)たる
事 鶏子(とりのこ)のごとし溟涬(くゞもり)て牙(きざし)
をふくめりこれを鴻毛(こうもう)の未判(びはん)
といふ其(その)清陽(すみあきらか)なるものは薄(たな)
靡(びき)て天(あめ)となり重濁(おもくにごる)ものは淹(とゞ)
滞(こほり)て地(つち)となるこゝにおゐて天(てん)
地開闢(ちかいひやく)して其間(そのあいだ)に万物(ばんぶつ)生(しやう)ず
開闢(かいひやく)以前(いぜん)を太極(たいきよく)といひ天地(てんち)
陰陽(いんやう)わかれたるを両儀(りやうぎ)といふ
○国常立尊(くにとこだちのみこと)は天地(てんち)既(すで)にわかれ
て其中(そのなか)に物(もの)ありかたち葦牙(あしがい)
【左丁上段】
のごとし則(すなはち)化(くは)して神(かみ)となる
これを国常立尊(くにとこたちのみこと)といふ人の
始(はじめ)なり日本(につほん)を芦原国(あしはらごく)といふも
此義(このぎ)なり是(これ)より天神(てんじん)七 代(だい)地(ぢ)
神(じん)五 代(だい)あひつゝきて人の代(よ)と
なれり唐(もろこし)にては天地開闢(てんちかいひやく)し
て盤古氏(ばんこし)はじめて出(いづ)是(これ)人の
始(はじめ)なりこれより三 皇(くはう)五 帝(てい)三 王(わう)
とつゞきて人の代(よ)となる
○倭(やまと)は日本(につほん)を倭(やまと)と号(なづく)る事 天(てん)
地開闢(ちかいひやく)の後(のち)は地(ち)は皆(みな)山(やま)にして平(たいら)
なし人の代(よ)となりて山(やま)をひら
き平地(へいち)となして住(すめ)りよつて
日本(につほん)を山跡(やまあと)といふ義(ぎ)をもつて
倭国(やまとごく)とはいふなり
【右丁下段挿絵】
大極(たいきよく)
国常立(くにとこだち)
倭国(わこく)
【左丁下段挿絵】
唐土(たうど)《割書:もろこし|》
盤古氏(はんこし)
【右丁上段】
○秋津洲(あきつす)というは
人皇(にんわう)のはじまりを
神武皇帝(しんむくはうてい)と申
奉(たてまつ)る即位(そくゐ)三十一年
四月 帝(みかど)諸国(しよこく)に幸(みゆき)
ましまし日本(につほん)の地(ち)
形(きやう)蜻蛉(あきつむし)に似(に)たるを
もつて秋津州(あきつす)と
名(な)づけたまふ
○それ日本国(につほんごく)は唐(もろこし)
中華(ちうくは)の地(ち)より東(ひがし)に
あたるゆへに日東(につとう)と
も扶桑国(ふさうごく)ともいふ
又 須弥山(しゆみせん)の南(みなみ)にあ
たるゆへに南瞻部(なんせんぶ)
【左丁上段】
州(しう)ともいふ用明天皇(ようめいてんわう)
のとき五 畿(き)七 道(とう)を
さだめ給ふ文武天皇(もんむてんわう)
の御代(みよ)に六十六ヶ国(こく)
にわかちて諸国(しよこく)に守(しゆ)
護(ご)をすへ東武(とうぶ)に将(しやう)
軍(ぐん)ありて諸国(しよこく)を守(しゆ)
護(ご)せしめ西京(せいきやう)中国(ちうごく)に
天子(てんし)の都(みやこ)をかまへた
まひぬ田地(てんち)の数(かず)凡(すべて)
九十四万七千八百一町
米高(こめだか)弐千弐百八
万五千四百八十弐
石なりとそ
【下段挿絵】
【四辺に】
東西南北
【上辺】
小人島
秋津洲(あきつす)
よし島
日本国(につほんごく)
又
倭国(わこく)
朝鮮国(てうせんごく)
【右丁下段挿絵右から左へ】
日本(につほん)六十四 州(しう)
外に二 州(しう)
ゑぞがしま 女護島(によごのしま)
松前(まつまへ) 松島
陸奥(むつ) 常陸(ひたち) 下総(しもふさ) 上総(かづさ) 安房(あわ)
出羽(では) 下野(しもつけ) 武蔵(むさし) 相摸(さがみ) 伊豆(いづ) いをしま 大島 みやけじま 八丈島
あをしま 上野(かうづけ) 甲斐(かひ) 駿河(するが)
佐渡(さど) 越後(ゑちご) 信濃(しなの) 遠江(とを〳〵み) 三河(みかは) 尾張(をばり)
越中(ゑつちう) 飛弾(ひだ) 美濃(みの) 伊勢(いせ) 志摩(しま)
能登(のと) 加賀(かゞ) 越前(ゑちぜん) 近江(あふみ) 伊賀(いが)
若狭(わかさ) 山城(やましろ) 大和(やまと) 河内(かはち) 紀伊(きい)
【左丁下段挿絵右から左へ】
丹後(たんご) 丹波(たんば) 摂津(せつつ) 和泉(いづみ)
但馬(たじま) 播磨(はりま) 淡路(あはぢ)
因幡(いなば) 美作(みまさか) 備前(びぜん)
伯耆(はうき) 備中(びつちう) 讃岐(さぬき) 阿波(あは)
出雲(いづも) 備後(びんご) 八島 伊予(いよ) 土佐(とさ)
隠岐(をき) 石見(いはみ) 安芸(あき)
いわき 長門(ながと) 周防(すはう) 上関
豊前(ぶぜん) 豊後(ぶんご) 日向(ひうが) 大隅(おほすみ)
対馬(つしま) 壱岐(いき) 大島 筑前(ちくぜん) 筑後(ちくご) 肥後(ひご) 薩摩(さつま) 五島(ごとう)
肥前(ひぜん) 平戸 琉球国(りうきうごく)
【右丁上段】
○日(ひ)は陽(やう)の精(せい)なり空虚(くうきよ)にして
かたどりがたしよつて烏(からす)をもつて日
の形(かたち)とす陽鳥(やうてう)なればなり三 足(そく)と
するは陽数(やうすう)のこゝろなり
○月(つき)は陰(いん)の精(せい)なり空虚(くうきよ)にして
かたどりがたしよつて兔(うさぎ)をもつて月
の形(かたち)とす兔(うさぎ)は陰(いん)の獣(けだもの)なればなり
白兔(はくと)陰(いん)の色(いろ)なり
○北辰(ほくしん)は北極(ほくきよく)ともいふ天(てん)の枢(くろゝ)【注①】なり
一周(いつしう)天のめぐる事 此(この)北辰(ほくしん)を枢(くろゝ)か
なめとしてめぐるなり北(きた)に位(くらい)して
諸(もろ〳〵)の星(ほし)これにむかふ也 北辰(ほくしん)の座(ざ)に
七 星(せい)あり四 星(せい)あり
○列宿(れつしゆく)此星(このほし)天(てん)の東西南北(とうざいなんぼく)に位(くらい)
して四 方(はう)各(おの〳〵)七 星(せい)づゝなり合(あわせ)て二十
八 宿(しゆく)なり是(これ)を三十日にくばりて
毎日(まいにち)をつかさとるなり
【左丁上段】
○晦(くわい)毎月(まいけつ)大なれば三十日小な
れば二十九日を晦(くわい)といふ月 地下(ちか)に
かくれて光(ひかり)なしよつて晦(くわい)の字(じ)
をくらしとよむなり昏晦(こんくわい)暗晦(あんくわい)
のこゝろなり
○朔(さく)は蘇(そ)なりよみがへるとよむ月
は十五日より晦日(つもごり)【注②】までにかけつきて
又 朔日(ついたち)よりよみがへりてはじめて
明(めい)を生(しやう)ずるといふ義(ぎ)にて朔(さく)といふ
○弦(けん)は上十五日を上弦(しやうげん)といひ下十
五日を下弦(げげん)といふ上 弦(げん)は西(にし)の方
下弦(げげん)は東(ひがし)の方(はう)なり上 弦(げん)は七日
八日九日下 弦(げん)は廿二日廿三日廿四日
にあり月の光(ひかり)よこにあり
○望(ばう)は十五日の事なり十五日は
日月 東西(とうさい)にあひ望(のぞ)むゆへに望(ばう)
といふ又もち月ともいふなり日
【注① 「くろろ」は「くるる」の変化した語。】
【注② 「つもごり」は「つごもり」の変化した語。】
【右丁下段挿絵上部】
日(じつ)【左ルビ:にち】《割書:ひ|》
景(けい)《割書:ひ| かげ》
晷(き)《割書:同|》
北辰(ほくしん)
紉星(ちうせい)
四輔(しほ)
月(げつ)【左ルビ:くわつ】《割書:つき|》
月は日の
ひかりを
うく
てらさ
ざる
所を
魄(はく)といふ
【右丁下段挿絵下部】
列宿(れつしゆく)【横並び】
列(れつ)はつらなるとよむ二十八 星(せい)列座(れつざ)しつらなる也
宿(しゆく)は左伝(さでん)に音秀(おんしう)とよめり座(ざ)なり。
角(かく)《割書:東方|》 亢(かう) 氐(てい) 房(ばう)
心(しん) 尾(び) 箕(き) 斗(と)《割書:南方|》
牛(ぎう) 女(ぢよ) 虚(きよ) 危(き)
室(しつ) 壁(へき) 奎(けい)《割書:西方|》 婁(ろう)
胃(い) 昴(ばう) 畢(ひつ) 觜(し)
参(しん) 井(せい)《割書:北方|》 鬼(き) 柳(りう)
星(せい) 張(ちやう) 翼(よく) 軫(しん)
【左丁下段挿絵、日「太陽」と月が書かれていて月の満ち欠けの原理を示している】
晦(くわい)《割書:つごもり》 朔(さく)《割書:ついたち》
日 日
弦(けん)《割書:ゆみはり》 望(ばう)《割書:もちづき》
上弦 日入
下弦 日出 日
【右丁上段】
月 相対(あひたい)して月の光(ひかり)地(ち)の方(はう)に有
て天(てん)になし故(ゆへ)に満月(まんげつ)なり
○日蝕(につしよく)は日月 天(てん)に有て日(ひ)は上(かみ)
なり月は下(しも)なり朔日(ついたち)は日月の
会(くわい)なり日月 上下(しやうか)にありて道(みち)を
同(おなしう)して会(くわい)すれば地(ち)より見(み)るとき
は日は月のためにおほはる是(これ)を日蝕(につしよく)
といふなり
○月蝕(くはつしよく)は月はもと光(ひかり)なし日の
光(ひかり)を受(うけ)て明(あきらか)なるものなり日月
道(みち)を同(おなじう)して相(あひ)むかふ地(ち)は月にあた
るゆへに日の光(ひかり)地(ち)に遮(さへきつて)る【而ヵ】月蝕(ぐはつしよく)す
○星(ほし)は陽精(やうせい)なり陽精(やうせい)日(ひ)となる
日わかれて星(ほし)となる故(ゆへ)に日(ひ)生(しやうず)
とかきて星(ほし)とよむ
○斗(と)は北斗(ほくと)なり七 星(せい)有一二三四
を魁(くわい)とし五六七を杓(ひやう)とす揺光(ようくわう)は
【左丁上段】
破軍星(はぐんせい)なり輔星(ほせい)はそへぼし也
○参星(しんせい)は西方(さいはう)七 宿(しゆく)の一なり俗(ぞく)
に是(これ)をからすきぼしといふ也
星(ほし)の列座(れつざ)からすきに似(に)たり
○昴星(ばうせい)は西方(さいはう)の一 宿(しゆく)なり旄(はう)
頭星(とうせい)ともいふ俗(ぞく)にすばる星(ぼし)と
いふ是(これ)なり星(ほし)の列座(れつざ)間(あひ)せまく
してすばりたり
○牽牛(けんぎう)は星(ほし)の名(な)おたなばたなり
ひこぼしともいふ又 河鼓星(かこせい)とも
いふ七月七日 織女(しよくぢよ)牽牛(けんぎう)に嫁(か)す
と桂陽(けいやう)の武丁(ぶてい)といふ仙人(せんにん)がいひし
より七夕(たなはた)といふ事 始(はじま)れり
○織女(しよくぢよ)は星(ほし)の名(な)めたなばたなり
七月七夕 瓜菓(くは〳〵)を庭上(ていしやう)にそなへ五
色(しき)の糸(いと)を竿(さほ)に掛(かけ)て願(ねか)ふことをいのる
に三 年(ねん)の内(うち)に必(かならず)かなふと也 是(これ)を乞(きつ)
【右丁下段挿絵】
日蝕(につしよく)《割書:むしばむ|》 月蝕(ぐわつしよく)《割書:むしばむ|》
月 地影 地 日
星(せい)《割書:ほし|》
日月 星(せい)を三 光(くわう)
といふ
ほしのひかりを芒(ほう)と
いふ流星《割書:りうせい|》
よばいぼし
斗(と)【北斗七星】
枢(すう) 璇(せん) 璣(き) 権(けん) 玉衝(ぎよくかう) 開陽(かいよう) 揺光(ようくわう) 輔星(ほせい)【「輔星」は開陽ミザールの伴星アルコル】
参(しん)《割書:からすき| ぼし》【オリオン座の三ツ星】
【左丁下段挿絵】
織女(しよくぢよ)《割書:たな| ばた| づめ》
天漢(てんかん)
《割書:あまの| がは》
牽牛(けんぎう)
《割書:ひこ| ぼし》
昴(はう)《割書:すばる| ぼし》
孛(はい)
《割書:ぼつせい|》
彗(せい)【左ルビ:ずい】
《割書:はゝき| ぼし》
【右丁上段】
巧奠(こうでん)とも七夕祭(たなはたまつり)ともいふ
○天漢(あまのかわ)は天河(てんか)とも銀河(きんか)ともいふ七夕
に烏鵲(うじやく)翼(つはさ)をのべて橋(はし)とし此河(このかは)を渡(わた)し
牽牛(けんぎう)織女(しよくぢよ)の二 星(せい)あひ合(あふ)といへり
○孛星(ほつせい)は妖星(ようせい)なり此星(このほし)出(いづ)るとき
は旧(ふるき)をのぞきて新(あたらしき)に改(あらため)又は火災(くはさい)に
たゝるの瑞(ずい)有 俗(ぞく)に是(これ)を御光星(ごくはうぼし)と云
○彗星(はゝきぼし)は妖星(ようせい)なり色(いろ)青(あをき)は王候(わうこう)【侯の誤】死(しす)
赤(あかき)は強国(きやうこく)おこる白(しろき)は兵乱(へうらん)おこる天(てん)下
に災(わざはひ)あるときあらはるゝ星(ほし)なり
○太白星(たいはくせい)は金星(きんせい)なりあかぼしとな
づく俗(ぞく)にあかつきの明星(みやうじやう)といふ日にさ
きだちて出(いづ)るなり啓明(けいめい)ともいふ
○虚空(こくう)はそらともおほぞらとも
よむ太虚(たいきよ)太空(たいくう)ともいふ天(てん)なり天は
円(まとか)にして空々(くう〳〵)として物(もの)なくかたち
なしよつて虚空(こくう)となつく
【左丁上段】
○霧(きり)は陰陽(いんやう)のみだれより生ず
地気(ちき)のぼつて天気(てんき)応(おふ)ぜざるを
霧(む)といふ天気(てんき)くだつて地気(ちき)応(おふ)せ
さるを雺(ぼう)といふ風(かぜ)吹(ふい)て土(つち)をふら
すを霾(つちふる)といふ
○煙(けふり)は火(ひ)の昇(のほ)る気なり烟(けふり)同し
又 水(みづ)より煙(けふり)いづる
○長庚(ゆふづく)は金星(きんせい)なり日(ひ)におくれ
て入 是(これ)を長庚星(ちやうかうせい)といふ俗(ぞく)に是(これ)
をよひの明星(みやうぜう)といふなり
○風(かぜ)は大塊(だいくわい)の噫気(あいき)なり陽(よう)の体(たい)
にして散(さん)じて陰(いん)の用(よう)となる故(ゆへ)に
風(かぜ)吹(ふく)ときは土(つち)必(かならず)かはく又 旋風(せんふう)飊(へう)
風(ふう)はつじかぜ
○露(つゆ)は夜気(やき)露(つゆ)となる陰(いん)の液(ゑき)也
白虎通(びやくこつう)に露(つゆ)は霜(しも)の始(はじめ)なりと
いへり露(つゆ)をばをくといふ降(ふる)とはいわず
【右丁下段挿絵】
太白(たいはく)
《割書:あか| ぼし》
霧(む)
《割書:きり|》
日出
煙(ゑん)
《割書:け| ふ| り》
虚空(こくう)
《割書:そら|》
【左丁下段挿絵】
長庚(ちやうかう)
《割書:ゆふづく|》
入日
風(ふう)
《割書:かぜ|》
《割書:のわき|》
露(ろ)《割書:つゆ|》
【右丁上段】
○雲(くも)は山川(さんせん)の気(き)なり地気(ちき)のぼ
りて雲(くも)となり天気くだつて雨(あめ)と
なるなり雲(くも)は陰(いん)の体(たい)なり昇(のぼり)て
陽(やう)の用(よう)となるみな雨湿(うしつ)の気(き)なり
○雨(あめ)は水(みづ)烝(むし)【蒸の誤】て雲(くも)となりくだつて
雨となるむらさめを暴雨(ばうう)といひ
ながあめを霖雨(りんう)といひ夕(ゆふ)だちを
驟雨(しうう)といひ時雨(しくれ)を澍(しう)といふ
○雷(らい)は陰陽(いんよう)あひ激(げき)する声なり
王充(わうしう)論衡(ろんかう)といふ書(しよ)に雷(らい)の形は一人
の力士(りきし)ありて累々(るひ〳〵)たる連鼓(れんこ)を左(ひだり)に
持(もち)右(みぎ)の手(て)に鞭(むち)をもつてうちて声(こへ)
をなすといへり
○電(いなびかり)は二月に有(あり)この月 陽気(ようき)漸(やうやく)
さかんにして陰気(いんき)をうつその激(けき)す
るひかりを電(でん)といふ俗(ぞく)にいなびかり
いな妻といふ雷神(らいじん)を電母(でんぼ)といふ
【左丁上段】
○暈(うん)は日月のかたはらの気(き)
なりかさといふ日 暈(かさ)あるとき
はひでりし月 暈(かさ)あるときは
三日のうちに雨(あめ)ふるといへり
○雪(ゆき)は雨(あめ)こりて雪となる天地(てんち)
の積陰(せきいん)あたゝかなるときは雨と
なりさむきときは雪(ゆき)となる
花をなすを雪(ゆき)といひ円(まとか)なる
を雹(あられ)といふ又 銀花(ぎんくは)とも六出(りくすい)
花(くは)とも銀屑(ぎんせつ)ともいふ
○氷(こほり)は陰気(いんき)のあつまるところ
もれざるときはむすぼふれて
冰(こほり)となる氷(へう)と書(かく)はあやまり也
冰(へう)と書べし冰(こほり)つもれるを凌(れう)と
いふ冰(こほり)さかんなるを凍(とう)といふ冰
ながるゝを凘(し)といふ冰(こほり)とくるを泮(はん)
といふ氷室(へうしつ)はひむろなり
【右丁下段挿絵】
雲(うん)《割書:くも|》
雨(う)《割書:あめ|》
雷(らい)《割書:いか| づち》 電(でん)《割書:いなつま|いなびかり》
《割書:なる| かみ》
《割書:かみ| なり》
【左丁下段挿絵】
雪(せつ)
暈(うん) 《割書:ゆき|》
《割書:かさ|》
氷(へう)
《割書:こほり|》
【右丁上段】
○虹(にじ)は日(ひ)雨(あめ)と交(まじはり)て質(かたち)をなす也
日のひかり雨にうつるによつて虹(にじ)
あらはる朝(あした)には西(にし)にあり暮(くれ)には
東(ひがし)にあり色(いろ)鮮(あさやか)なるを雄(おにじ)とし
闇(くらき)を雌(めにじ)とす俗(ぞく)に蛇(じや)のいきといふ
螮蝀(ていとう)霓(けい)同ともににじなり
○雹(あられ)は雪(ゆき)こほりて円(まとか)なるを
雹(あられ)といふ寒気(かんき)つよきときは雪(ゆき)と
なりて軽(かろ)し寒気(かんき)うすきときは
雪(ゆき)おもくしてとけやすし又 雹(あられ)となる
瑗瑶(ゑんよう)玉粒(ぎよくりう)砕玉(さいぎよく)銀米(ぎんべい)明珠(めいしゆ)
同し雪(ゆき)雨(あめ)にまじはりふるを霰(みぞれ)
といふ
○雪(ゆき)水(みつ)寒(かん)にむすぼふれて軒(のき)
のしたゞりこほりて氷柱(つらゝ)となる
氷筋(へうきん)氷条(へうでう)とも書(かく)べし又 氷笋(へうじゆん)
ともいふなり
【右丁下段挿絵】
虹(かう)【こうヵ】
《割書:にし|》
雹(はく)《割書:あられ|》
氷柱(へうちう)
《割書:つらゝ|》
【左丁】
《題:頭書増補訓蒙図彙(かしらがきぞうほきんもうづゐ)巻之(くはんの)二》
地理(ちり)《割書:此部(このぶ)には山川(さんせん)田園(でんゑん)林丘(りんきう)村市(そんし)のたぐひあり|地(ち)の条理(でうり)なり易(ゑきに)云(いはく)俯(ふして)察(さつす)_二於 地理(ちりを)_一》
【左丁上段】
○山(やま)は高大(かうたい)にして石(いし)あるを
いふ広雅(くはうかに)云(いはく)山(さん)は産(さん)なりよく
万物(ばんぶつ)を産(さん)するなり説文(せつもん)に山(せん)
は宣(せん)なり
○峯(みね)は山の端(はし)なり山大にし
て高(たかき)を峯(はう)といふ山小にして
たかきを岑(しん)といふともにみね
なり唐(もろこし)にては香爐峯(かうろはう)日(に)
本(ほん)にては冨士峰(ふじはう)なと也 嶺(みね)同
○巓(いたゞき)は高山(かうざん)のいたゝきなり絶(ぜつ)
頂(てう)なり詩経(しきやう)に采(とり)_レ苓(れいを)采(とる)_レ苓(れいを)
首陽(しゆやう)之(の)巓(いたゞき)といへり山巓(さんてん)とも又
【左丁下段挿絵】
山(さん)
《割書:やま|》 坂(はん)《割書:さか|》
巓(てん)
《割書:いたゞ| き》
峯(ほう)
《割書:みね|》
【右丁上段】
高巓(かうてん)ともいふ
○坂(さか)は坡(は)坂(はん)なり山中(さんちう)の高(たか)
くけはしき所なり小坂(こさか)を嶝(とう)
といふ磴(とう)同し
○嶽(だけ)はけはしき高山(かうざん)をいふ
山城(やましろ)如意嶽(によゐがたけ)近江(あふみ)の比良(ひら)の
が嶽なとなり
○谷(たに)は両山(りやうさん)の中(なか)の流水(りうすい)なり
渓(けい)谿(けい)同し水(みつ)谿(けい)にそゝくを谷(たに)
といふ山(やま)の間(あいた)に水あるを澗(かん)と
いふたにがはとよめり
○丘(おか)は土(つち)の高(たか)き所(ところ)をいふ又 四方(しはう)
たかくして中央ひろきを丘(きう)といふ
ともあり阜(ふ)同 狐(きつね)死(し)するとき
は丘(をか)を枕(まくら)とす
○盤(ばん)は大石(たいせき)なり盤石(ばんじやく)ともいふ
俗(ぞく)に大磐石(たいばんじやく)といふは重言(ぢうごん)
【左丁上段】
なるべし
○巌(かん)はいはほなりさゞれ石(いし)
のいはほとなりてとよめるなり
石窟(せきく[つ])を巌(がん)といふ石(いし)のするど
にしてたかくそびへたるをいふ
詩経(しきやう)に維石(これいし)巌々(がん〳〵たり)といへり
岩(がん)同
○崖(かけきし)は山辺(さんへん)なり山(やま)の一 片(へん)に
そはだちのそみたるをいふ厓(かい)
同し又 懸崖(けんかい)ともいふかけぎし
補 俗(ぞく)にがけといふなり
○瀑(はく)は滝(ろう)とも書(かく)なりながれ
おつる色(いろ)白(しろ)くして布(ぬの)を瀑(さらす)が如(ごと)
くなるによつて瀑布(はくふ)とも云
日本にも布引(ぬのびき)のたきといふ
ありもろこしには盧山(ろさん)【廬の誤】に名(な)
高(だか)き滝(たき)あり又 滝(たき)を飛泉(ひせん)
【右丁下段挿絵】
丘(きう)
《割書:をか|》
谷(こく)
《割書:たに|》
嶽(かく)
《割書:だけ|》
【左丁下段挿絵】
巌(がん)
《割書:いはほ|》
瀑(はく)
《割書:たき|》
【右丁上段】
ともいふ
○桟(さん)は棚(はう)なり閣(かく)なり木(き)を閣(かく)
して道(みち)をなすを桟道(さんどう)とも閣(かく)
道(どう)ともいふ (補)けんその山坂(やまさか)補【▢囲み】道(みち)
きれて通(かよ)はれざるに橋(はし)をかけて
道(みち)としかよひとするをいふ
○洞(ほら)は深(ふかく)通(つう)ずるを洞(とう)といふいは
あなありて道(みち)を通(つう)ずる所(ところ)也
仙洞(せんとう)は仙人(せんにん)のすむ洞(ほら)なり峒同じ
山に岩穴(がんけつ)ありて袖(そで)に似(に)たるを
岫(しう)といふくきなり
○麓(ふもと)は山足(やまのふもと)なり林(はやし)山(やま)につゞく
を麓(ろく)といふ麓(ろく)は鹿(しか)のあるところ
かるがゆへに字(じ)鹿(しか)に従(したがふ)なり鹿(しか)は
このんで林(はやし)にすめばなり
○林(りん)は平地(へいち)にして叢木(むらがるき)ある所を林(りん)
といふ又 野外(やぐはい)を林(りん)と云 樹林(じゆりん)松林(せうりん)竹(ちく)
【左丁上段】
林(りん)などいへり木(き)のあつまり生ず
るを林(りん)といひ草(くさ)あつまり生ず
るを薄(はく)といふ薄(はく)はくさむら叢(さう)同し。
○岬(みさき)は山(やま)のかたはらなり海(うみ)
などへつき出(いて)たる所をいふ也
越前(ゑちぜん)に金岬(かねがみさき)などいふ所有
○村(むら)は人のあつまりゐる所也
村落(そんらく)といふ本(もと)は邨(そん)につくる字(し)
通(つう)に経史(けいし)に村(そん)の字(じ)なし邨(そん)は
邑(ゆう)に従(したが)ひ屯(あつまる)に従(したがふ)別に村(そん)につく
るは非(ひ)なり今(いま)通(つう)じもちゆ
邑(ゆう)同し
○川(せん)は穿(せん)なり地(ぢ)を穿(うがつ)てなが
るゝの心をもつて川(せん)となづく又
河(かは)とも書(かく)なり補【▢囲み】大なるを大
河といひ小なるを小川といふ
なり補【▢囲み】江はゑなり
【右丁下段挿絵】
麓(ろく)《割書:ふ| もと》
桟(さん)《割書:かけ| はし》
洞(とう)
《割書:ほら|》
【左丁下段挿絵】
林(りん)《割書:はや| し》
川(せん)
《割書:かわ|》
岬(かう)
《割書: みさき|》
村(そん)
《割書:むら|》
【5行目右側の「補」は、「補[▢囲み]」の正しい挿入先を示す】
【右丁上段】
○洲(す)は水中(すいちう)の居べき所なり
人(ひと)鳥(とり)などのあつまる息(いこふ)所也
小洲(しやうしう)を渚(しよ)といふなぎさなり水
渚(しよ)石(いし)あるを磧(せき)といふいそなり
水(みづ)沙上(しやじやう)にながるゝを瀬(せ)といふ湍(たん)
同 磯(き)はいそなり
○波(なみ)は風(かぜ)水(みづ)をうつて紋(もん)をなすを
波(なみ)といふ水波(すいは)は水紋(すいもん)なり浪瀾(らうらん)
ともに同し大波(たいは)を濤(とう)といふ又
漣(れん)はさゞ波(なみ)なり又 濤(なみ)を潮頭(てうとう)と
いふなり
○渦(うづ)は水(みづ)めぐるなり水めぐつて
巴(は)【左ルビ:ともへ】の字(じ)をなすといへり又 泡(はう)漚(をう)
沫(まつ)はあはなり
○島(しま)は海中(かいちう)に山ありてよるべき
を島(とう)といふ隝(とう)嶋(とう)嶼(よ)ならびに
同し蓬莱(はうらい)方丈(はうじやう)瀛洲(えいしう)を海(かい)
【左丁上段】
中(ちう)の三島といふ
○海(かい)は晦(くわい)なり荒遠(くはうゑん)にして冥(めい)
昧(まい)なる意(こゝろ)なり又 海(かい)は穢(けがれ)をうけ
て其水(そのみづ)黒(くろく)して晦のごとしとも
いへり湖(こ)はみづうみなり潮(てう)はうし
ほなり
○岸(がん)は水 涯(ぎは)の高(たか)き所をいふ
住(すみ)の江(え)のきしによる浪(なみ)よるさへや
とよみ又 岸(きし)の姫松(ひめまつ)と哥(うた)によめり
○浜(はま)は水際(すいさい)なり涯(かい)はほとり浦(ほ)は
うらならひに同し水際(すいさい)の平(へい)
沙(さ)を汀(てい)といふみぎはとよむなり
海浜(かいひん)ひろきを瀉(しや)といふかたなり
河浜(かひん)水浜(すいひん)海浜(かいひん)ともにはま也
○田(た)は土(つち)を耕(たがやす)の名(な)囗は田(た)の四方
のかまへなり中に十の字(じ)は田(た)の
阡陌(せんはく)とてみぞのこゝろなり畎(けん)【左ルビ:たみぞ】
【右丁下段挿絵】
波(は)
《割書:なみ|》
渦(くは)
《割書:うづ|》
洲(しう)
《割書:す|》
【左丁下段挿絵】
島(とう)《割書:しま|》
海(かい)
《割書:うみ|》
岸(がん)
《割書:き| し》
浜(ひん)
《割書:はま|》
【右丁上段】
畝(ほ)【左ルビ:うね】町(てう)【左ルビ:まち】畔(はん)【左ルビ:くろ】
○畔(はん)は田(た)の界(さかひ)なりぐろとも又は
あぜともよむなり又 塍(せう)【左ルビ:ぐろ】堘(せう)【左ルビ:あせ】同じ
周(しう)の国(くに)には耕(たがやす)ものは畔(くろ)を譲(ゆづる)と
いふなり
○溝(みぞ)は田間(でんかん)の水(みづ)なり溝(かう)は構(かう)なり
たてよこにまじへかまへたるなり
渠(きよ)同
○独梁(ひとつばし)は独木梁(どくぼくりやう)ともいふなり
又 狐橋(こきやう)【孤の誤ヵ】ともいふ丸木(まるき)ばし一本(いつほん)
橋(ばし)などいふ
○塚(つか)は平(たいらか)なるを墓(ぼ)といひ土(つち)を
封(はう)ずるを塚(ちよ[う])といふ又すぐれて
高(たか)きを墳(ふん)といふともにつかなり
塚(つか)のうへにしるしの木(き)をうゆる
事なり
○場(ちやう)は五穀(ごこく)をお□【さヵ】むる圃(はたけ)なり
【左丁上段】
土(つち)を築(きつく)を壇(だん)といふ地(ち)を除(はらふ)を
場(ちやう)といふ神(かみ)をまつる所なりと
あり農人(のうにん)の米穀(へいこく)をこなす所
を場(ぢやう)といふ又ほしばなどゝいふ
市場(いちば)売場(うりば)などいふ又 場(ば)とも
かくなり
○井(せい)は伯益(はくゑき)といふ人つくりはじ
め給ふなり鴆(ちん)は毒鳥(どくてう)なり羽(はね)井(ゐ)
の内(うち)におちて人その水(みづ)をのめば
死すよつて井(ゐ)のもとに桐(きり)を
うゆ鴆(ちん)は鳳凰(はうわう)を懼(をそる)鳳凰(はうわう)は梧(き)
桐(り)にすむものなれば鳳(はう)のゐ
んことを鴆(ちん)に懼(おそれ)しめん為(ため)也
○幹(かん)は井垣(せいゑん)なりとあり俗(ぞく)に
いけたゐづゝといふ井筒(ゐづゝ)と書(かく)
はあしく韓(いづゝ)のかたはらに竹(たけ)を
うゆべし鳳凰(はうわう)は竹(たけ)の実(み)をくら
【右丁下段挿絵】
畔(はん)
《割書:ぐろ|あぜ》 塚(ちよう)
《割書:つか|》
溝(かう)
《割書:みぞ|》
田(でん)
《割書:た|》
独梁(どくりやう)
《割書:ひとつ| ばし》
【左丁下段挿絵】
場(ちやう)
《割書:ば|》
幹(かん)
《割書:い| づゝ》
井(せい)
《割書:ゐ|》
【右丁上段】
ふものなれば鴆(ちん)をおそるゝがた
めなり
○沢(さは)は水(みづ)のあつまり聚(あつまる)ところ
なり沢(さは)には杜若(かきつばた)河骨(かうほね)蓴(しゆん)さ
いなどはへ蛍(ほたる)とびかふ夏(なつ)の夕暮(ゆふぐれ)
の景気(けしき)もおもしろし
○石(いし)は山骨(さんこつ)なり塊(つちくれ)久(ひさ)しうして
石となる石(いし)変(へん)じて金(きん)銀(〴〵)銅(どう)鉄(てつ)
を生(しやう)ず星(ほし)おちて石(いし)となる木(ぼく)
石(せき)に怪(くわい)あり石より火(ひ)を生(しやう)ず
○礫(れき)は小石(しやうせき)なりさゞれいしとも
又つぶてともよむなりその石(せき)
礫(れき)にならつて璃竜(りれう)の蟠(わだかまる)とこ
ろをしらすといへり
○沙(いさご)は細散(さいさん)の石(いし)なり別(べつ)に沙(しや)とかく
はあやまりなり説文(せつもん)に水(すい)少(しやう)に
したがふ水(みづ)少(すくなき)ときは沙(すな)あらわる
【左丁上段】
の義(き)なり繊沙(せんしや)はまなごなり
まさごいさこすなご同訓(とうくん)なり
○池(いけ)は地(ち)をうがつて水を溜(たむ)る
をいふ沼(せう)も同じ四 角(かく)なる
池(いけ)を方池(はうち)といふ
○泉(いづみ)は源水(けんすい)なり下(した)より涌(わき)
出(いづ)るを濫泉(らんせん)といふ垂(たれ)いづるを
沃泉(ようせん)といふ穴(あな)より出るを汎(はん)
泉(せん)といふ病(やまひ)を治(ぢ)するを温泉(をんせん)
といふいでゆなり地下(ちか)を黄泉(くわうせん)
といふ
○塘(つゝみ)は池塘(ちとう)なり池(いけ)のほとり
のつゝみなり俗(そく)にためいけと
いふ柳(やなぎ)をうへたるを柳塘(りうとう)
といふ柳塘(りうとう)莫々(ばく〳〵)暗(くらし)_二啼鴉(ていあ)_一と
詩(し)にもつくれり
○園(ゑん)は果(くだもの)をうゆる所なり又 鳥(とり)
【右丁下段挿絵】
礫(れき)
《割書:さゞれ| いし》
沢(たく)
《割書:さは|》
石(せき)
《割書:いし|》
沙(しや)
《割書:すな|いさご》
【左丁下段挿絵】
池(ち)
《割書:いけ|》
泉(せん)《割書:いづみ|》
塘(とう)
《割書:つゝ| み》
【右丁上段】
けだものをやしなふ所を苑
といひ垣(かき)あるを園(ゑん)といふいづ
れもそのと訓(くん)ず補【▢囲み】園(その)は今 俗(そく)
にうらせどなとゝいふ
○圃(ほ)は菜(さい)をうゆる所をいふ也
又 果(このみ)瓜(うり)をうゆるを圃(ほ)といふと
もいへり又はたけなり我(われ)不(ず)
_レ如(しか)_二老圃(らうほに)_一と孔子(こうし)ものたまへる事
論語(ろんご)に見(み)へたり
○閭(りよ)は里門(りもん)なり今(いま)いふ在所(ざいしよ)
の惣門(さうもん)なり又 家(いゑ)二十五 軒(けん)
ほどある在所(さいしよ)を閭(りよ)といふ又 閭(りよ)
巷(こう)といふ
○郊外(かうぐはい)を野(の)といふなり野(の)は
ひろくして平(たいらか)なるをいふ
高(たか)くして平(たいらか)なるを原(げん)と云
これをあはせて野原(のはら)といふ
【左丁上段】
埜(や)同し墅と書はあやまり也
○道(とう)は道路(どうろ)なり途(と)同し
径(けい)はこみちなり
用明天皇(ようめいてんわう)のとき五 畿(き)七 道(どう)に
わかつ文武天皇(もんむてんわう)のとき六十六
箇国(かこく)をわかつ
○畷(てつ)は田(た)の間(あいた)のみちなりなは
てなり俗(ぞく)に縄手(なはて)と書(かく)は縄(なは)を
引(ひき)たるがごとく直(なを)けれはなり
○衢(ちまた)は四 達(たつ)の道(みち)なりよつて
十 字街(じかい)といふちまたなり俗(ぞく)
に辻(しう)の字(じ)を書(かき)てつじと読(よむ)
街衢洞達(かいくのとうたつ)とあり
○城(しろ)は黄帝(くはうてい)つくりはじめ
たまふとも又 鯀(こん)といふ人つくり
はじめ給ふともいふ内(うち)を城(せい)と
いひ外(ほか)を郭(くはく)といふ天守(てんしゆ)狭間(さま)
【右丁下段挿絵】
閭(りよ)
《割書:さと|》
園(ゑん)
《割書:その|》
圃(ほ)
《割書:はたけ| その》
【左丁下段挿絵】
道(とう)
《割書:み| ち》
野(や)
《割書:の|》
衢(く)
《割書:ちまた|》
畷(てつ)
《割書:なは| て》
【右丁上段】
多門(たもん)武者屯(むしやだまり)櫓(やぐら)犬走(いぬはしり)
虎魚(しやちほこ)
○塹(ほり)は城(しろ)をめくる水なり又
坑塹(あなほり)なり坑(かう)壕(かう)ならびに同
城郭(しやうくはく)のほりなり
○封疆(はうきやう)は土(つち)を封(はう)じて疆(さかひ)をか
ぎるをいふ俗(ぞく)にこれをどてと
いふ洛陽(らくやう)にむかし大閤(たいかう)秀吉公(ひでよしこう)
のとき東西南北(とうざいなんぼく)に封疆(どて)をつき
て竹をうへ給ふ今にあり
○橋(はし)はもろこし禹王(うわう)といふ聖(せい)
人(じん)つくりはじめたまへり梁(はし)とも
書(かく)なり矼(こう)はいしばしなり圯(い)
はつちはしなり板橋(はんきやうは)いたばし
石橋(せききやう)はいしばし土橋(どきやう)はつちばし
歩橋(ほきやう)はふみこへばし
○市(いち)は神農(しんのう)はじめたまふ
【左丁上段】
又 祝融(しゆくゆう)はじめ給ふともいふ
売買(ばい〳〵)の所(ところ)を市(いち)といふ補【▢囲み】今
俗(ぞく)に是を店(たな)といふ魚(うを)のたな
呉服(こふく)だななどゝいふなり
○津(つ)は水(みづ)の会(あつまる)ところなり舟
つき又わたしばなり難波津(なにはつ)
大津(おほつ)今津(いまづ)甲斐津(かいづ)など
いふたぐひなり伯(はく)【注】はとまり也
○浮橋(ふきやう)はうきはし又 浮梁(ふれう)と
も書(かく)べし又ふなばしは舟(ふね)をつ
なぎならべてはしとする也
水(みづ)ふかくして橋(はし)ぐい立かたき所
などふなばしをかくるなり
○堤(つゝみ)はふさぐともとゞこほる共
よむ土(つち)をもつて水(みづ)をふさぎと
どこほらしむるをもつて堤(つゝみ)と
いふ隄(てい)かくはあしゝ塘堤(とうてい)同
【注 「泊」の誤か。】
【右丁下段挿絵】
城(じやう)
《割書:しろ|》
橋(きやう)
《割書:は| し》
塹(せん)
《割書:ほり|》
封疆(はうきやう)《割書: |どて》
【左丁下段挿絵】
市(し)
《割書:いち|》
浮橋(ふきやう)
《割書:うきは| し》
津(しん)
《割書:つ|》
【右丁上段】
柳堤(りうでい)は補【▢囲み】堤(つゝみ)に柳(やなぎ)を植(うへ)たるを云
○閘(かう)は水門(すいもん)なり俗(ぞく)にこれを
樋(ひ)の口(くち)といふ田(た)に水(みず)を入るとき
は引(ひき)あげ入ざるときはおろす
○堰(いせき)は蛇篭(じやかご)に石(いし)をいれて水(みづ)を
ふさくものなり又 埭(たい)とも書也
水辺(すいへん)に田地(でんち)又は屋敷(やしき)あれば堰(いせき)
をするなり補【▢囲み】俵(たわら)に土砂(どしや)を入て水(みつ)
ふせぎともするなり
○水柵(すいさく)は竹木(ちくほく)をあんでこれをつ
くる水よけなりうたにも
山川に風のかけたるしがらみは
なかれもあへぬもみち成けり
とよめるなりしからみといふは
水柵(すいさく)なり
○関(せき)はゆきゝのうたかわし
き人をとゞめたゞす所(ところ)なり
【左丁上段】
風破(ふは)の関(せき)鈴鹿関(すゞかのせき)逢坂関(あふさかのせき)
これを天下(てんか)の三 関(せき)といふ今は
たへてなし箱根(はこね)の関(せき)といふ
あり其外(そのほか)関所(せきしよ)あり
補【▢囲み】峠(とうげ)は山坂(やまさか)をのぼりおはりて
いたゞきの所をいふあるひは山中(やまなか)
の峠(とうげ)鈴鹿(すゞか)の峠(とうけ)なといふ山道(やまみち)の
往来(わうらい)には峠(とうげ)をいくつもこゆる事
なり
補【▢囲み】森(もり)は木(き)の多(おほ)く生(はへ)しげりた
る所をいふ狐(きつね)の森(もり)蛍(ほたる)のもり
又 鷺(さぎ)の森(もり)などいふ所あり
○牧(まき)は六 畜(ちく)をやしなふ所を
いふ又《振り仮名:郊外|□□ぐはい》を牧といふ言(いふこゝろ)は六
畜(ちく)をはなち牧(まき)すべき所なり
国(くに)の守護(しゆご)を牧(ぼく)といふも民(たみ)
をやしなふの義(き)にとる
【□□は「かう」。別本参照】
【右丁下段挿絵】
水柵(すいさく)
《割書:しがら| み》
閘(かう)
《割書:ひのく| ち》
堤(てい)
《割書:つゝ| み》 椻(ゑん)【堰】
《割書:ゐせき|》
【左丁下段挿絵】
《割書:補》
森(しん)
《割書:もり|》
関(くはん)
《割書:せき|》
《割書:補》
峠
《割書:とう| げ》
【右丁上段】
○墓(ぼ)は慕(ぼ)の字(じ)の意(こゝろ)にて
したふといふ事なり子孫(しそん)か
先祖(せんぞ)を思慕(しぼ)するなり塚(ちよ)も
同し天子(てんし)のはかを陵(みさゞき)といふ
塋(ゑい)同し壙(くはう)つかあななり
補【▢囲み】沼(ぬま)は池(いけ)の大(おほい)なるものをいふ
又 水(みづ)少(すくな)く泥土(でいど)なるものなり池(いけ)
沢(さは)沼(ぬま)は同じたぐひなり山(やま)
城国(しろのくに)伏見(ふしみ)に大沼(おほぬま)あり葦(よし)芦(あし)
など多(おゝ)くはへ水鳥(みづとり)の住所(すみどころ)也
補【▢囲み】籔(やぶ)は竹林(ちくりん)なり若竹(まだけ)淡竹(はちく)の
二 種(しゆ)を用(もち)ひて其性(そのじやう)かたくよつて
籔となして造作(さうさく)又は器財(きざい)に用(もち)
ゆる事かぞへがたし
【右丁下段挿絵】
沼(せう)《割書:ぬま|》
墓(ぼ)《割書:は| か》
牧(ぼく)
《割書:まき|》
薮(すう)《割書:やぶ|》
【左丁】
《題:頭書増補訓蒙図彙(かしらかきぞうほきんもうづい)巻之三》
居処(きよしよ)《割書:此部(このぶ)には宮殿(きうでん)門戸(もんこ)壁(かべ)檣(かき)庭(には)窓(まど)のたぐひ|すべて家居(いゑゐ)宅所(たくしよ)につきての文字(もじ)あり》
○殿(てん)は堂(だう)の高(たか)くして大(おゝい)なる
ものなり天子(てんし)の居(ゐ)給ふ所を殿(てん)
といふ殿(てん)の天井(てんじやう)に藻(も)をゑがくは
藻(も)は木草(すいさう)なれは火災(くはさい)□【を】さく
るのこゝろなり
○棟(むね)は屋極(をくきよく)なり屋脊(をくせき)を甍(ほう)
といふいらかなり鴟尾(しび)はくつかた
蚩吻(しふん)おにがはら
○檐(えん)は簷宇(ゑんう)同し遶(めぐる)_レ■(のきを)【注】点(てん)
滴(てき)如(ごとし)_二琴筑(きんちくの)_一と詩(し)にもつくれり
又 檐(のき)のあやめ檐(のき)の玉水(たまみづ)などゝ
歌によめるなり
【■は「木+簷」・「檐」の誤ヵ】
【左丁下段挿絵】
榑風(はふ)【搏ヵ】
棟(とう)
《割書:むね|》 蔀(ほう)
《割書:しと| み》
殿(てん)
《割書:との|》
階(かい)
《割書:きざは| し》
檐(えん)
《割書:のき|》 欄杆(らんかん)
《割書:おばしま|》
楹(ゑい)
《割書:はしら|》 礎(そ)
《割書:いしずへ》
【右丁上段】
○楹(はしら)は殿門(てんもん)の両方(りやうはう)にありよつ
て両楹(りやうゑい)といふ柱(はしら)同じ短柱(たんちう)は
つかばしらなり
○欄杆(らんかん)は階除(きざはし)の木(き)句欄(こうらん)なり
闌干(らんかん)とも書(かく)なり干(かん)又 檻(かん)に作(つく)
るおばしまなり直欄(ちよくらん)横杆(わうかん)
○階(きざはし)は砌(みぎり)なり堂(だう)に昇(のぼ)る道(みち)也
階級(かいきう)階除(かいじよ)《振り仮名:階𬄏|かいてい》ともいふ俗(ぞく)
にきざはしといふ堦(かい)につくるは
あやまりなり
○搏風(はふ)は風(かぜ)を搏(うつ)とよむ火災
をさくる為(ため)の名(な)なり▢【注①】是(これ)を
懸魚(げんぎよ)といふ魚(うを)は水に住(すむ)もの
なれば火災(くはさい)をさくるの名也
○蔀(しとみ)は屋(いへ)の檐(のき)につりあげ
て光明(あかり)をさゝへおほふものなり
俗(ぞく)にうはしとみといふつれ〴〵
【左丁上段】
草(ぐさ)にもやり戸(ど)は蔀(しとみ)の間よ
りもあかしといへり蔀はうは
あかりなり
○礎(いしずへ)は柱(はしら)の下の石(いし)なり詩(し)を
作(つく)るに韻字(ゐんじ)をふむを礎(そ)と云
磉(さう)礩(しつ)并(ならび)に同し
○庭(には)は門屏(もんへい)の内(うち)を庭(には)と云
又 砌(みぎり)といふも庭(には)なり
○門(もん)は両戸(りやうと)あはするを門(もん)と云
楣(まくさ)閾(しきみ)棖(ほうたて)みな門(もん)にあり
○廊(ほそどの)は殿下(てんか)の外屋(ぐはいをく)なりと
ありわたりどの共云 廊下(らうか)廻(くわい)
廊(らう)などなり本殿(ほんでん)へかよふ
ひさしなり
○牆(かき)は墻(しやう)垣(ゑん)墉(よう)並(ならひ)に同又門
屏(へい)を蕭墻(しやう〳〵)といふ蕭(しやう)”々【注②】言(こと)は
肅(しゆく)なり君臣はあひまみゆる
【注① ▢は○を逆向きの⌂で囲まれている】
【注② 々+濁点】
【右丁下段挿絵】
庭(てい)《割書:には|》
牆(しやう)《割書:つい| ぢ》
《割書:かき|》
廊(らう)
《割書:ほそ| どの》
門(もん)
《割書:かど|》
扉(ひ)《割書:とび| ら》
磚(せん)
《割書:しき|がはら》
砌《割書:せい| みぎり》
【左丁下段挿絵】
華表(くはへう)
《割書:とりゐ|》
瑞(ずい)
籬(り)
《割書:みつ|がき》
宮(きう)《割書: |みや》
【右丁上段】
の礼(れい)は門屏(もんへい)にいたりて肅(しゆく)
敬(けい)をくはふるなり
○扉(とびら)は木(き)にて作(つく)るを扉(ひ)といふ
竹(たけ)にてつくるを扇(せん)といふ門扉(もんひ)
戸扉(こひ)柴扉(さいひ)竹扉(ちくひ)などいふ
○磚(せん)はしきがはらなり又 㼾(ろく)
甎(せん)ともいふ又 壁磚(へきせん)ともいふ
塼(せん)甎(せん)並同 禅堂(せんたう)などに有
○砌(みぎり)は階甃(かいしう)なりいしだゝみ俗(ぞく)
にいふいしかき通(つう)して庭(には)の
事なり
○宮(みや)は唐(もろこし)にては至尊(しそん)の居所(ゐどころ)
を宮(きう)といふ和朝(わてう)にては神(かみ)の
居(ゐ)たまふ所(ところ)を宮(きう)といふ又 社(しや)
とも祠(し)ともいふなり
○華表(とりゐ)は神前(しんせん)にたつる鳥(とり)
井なりとりゐといふ事は神(しん)
【左丁上段】
門なりともいふ又 天(てん)の字(じ)のかた
ちなりともいふ鳥井(とりゐ)と名づくる
事 火災(くはさい)をさくるのこゝろの
名なり
○瑞籬(みづがき)は神前(しんぜん)社前(しやせん)のかき也
玉垣(たまがき)ともいふ不浄(ふじやう)の人これ
より内(うち)へ入(いる)べからず
○楼(たかどの)は重屋(ちやうをく)なり高(たか)くかさね
上(あげ)て物見(ものみ)をするなり今(いま)俗(ぞく)
にちんといふ
○櫺(れい)は隔子(かうし)なり櫺子(れんじ)なり俗(ぞく)
にむしこといふ木(き)のまどを櫺子(れんじ)
といふ土のまどを土窓(つちまど)といふ
○雪打(ゆた)は仏殿(ぶつでん)楼閣(ろうかく)又は二 階(かい)
などに有物なり雨(あめ)雪(ゆき)などの
打(うち)かゝるをうくるものなり俗(ぞく)
にあま戸(ど)といふなり
【右丁下段挿絵】
楼(ろう)
《割書:たか| との》
雪(ゆ)
打(た)
宅(たく)
《割書:いゑ》
櫺(れい)
《割書:まど》
【左丁下段挿絵】
厨(ちう)
《割書:くり| や》
窖(かう) 《割書:あな| ぐ| ら》
【右丁上段】
○宅(たく)は択(たく)なりよき所(ところ)を択(えらん)
でいとなみたつるゆへなり又
人の詫(たく)【「託」の誤ヵ】する所といふ義も有
舎(しや)家(か)屋(をく)ともに同又は第宅(だいたく)
○厨(くりや)は烹飪(かうじん)【「はうじん」の誤】する所なり今云
料理所(れうりどころ)なり又 庖厨(はうちう)といふ略(りやく)
してくりともいふ補【▢囲み】俗(ぞく) ̄ニ名付て
台所(たいどころ)といふなり
○窖(あなぐら)は地蔵(ぢざう)なり丸(まるき)を竇(とう)と云
方(けた)なるを窖(かう)といふともにあな
ぐらなり地(ぢ)をほりて穴をこし
らへ家財(かざい)を入 置(をく)所(ところ)なり
○寺(てら)はもと官人(くはんにん)の居(ゐ)る所(ところ)の
名なり天竺(てんぢく)より仏経(ぶつきやう)を白(はく)
馬(ば)におほせて鴻臚寺(こうろし)といふ
官人(くはんにん)の居(ゐる)所へ来りしより仏氏(ぶつし)
の居所(ゐどころ)の名(な)とす
【左丁上段】
○塔(とう)はもろこしの長安(ちやうあん)に慈(じ)
恩寺(をんじ)といふ寺あり塔(とう)あり鴈(がん)
塔(とう)といふ進士(しんじ)名(な)をその下に
題(たい)す塔婆(とうば)浮図(ふと)同じ
○亭(あばらや)は道路(だうろ)の舎(やどる)所(ところ)なり亦(また)
行旅(かうりよ)宿会(しゆくくはい)の館(やどる)ところなり
ともいへり俗(そく)にひとやどりまた
はたごやなり高(たか)く立(たて)たる楼(ろう)
をも亭(ちん)といふ
○屋(をく)は舎(しや)なり大屋(たいをく)を廈屋(かをく)と
いふ又まやともいふ家(いゑ)の真中(まんなか)を
母屋(もや)といふ四方面(しはうめん)の家(いへ)を四阿(あづま)
屋(や)といふ俗(ぞく)に屋(や)をやねといふ
○廬(いほり)は田(た)の中の屋(いゑ)なり稲(いね)など
かり入る所なり草(くさ)にてやね
をふきたる屋(いゑ)をいふ菴(いほ)同
かりほの廬(いほ)のといふに廬(いほ)の字(じ)
【右丁下段挿絵】
塔(たう)《割書:あら| らぎ》
寺(じ)
《割書:てら|》
亭(てい)《割書:あば| らや》
【左丁下段挿絵】
盧(ろ)
《割書:いほ| り》
屋(をく)《割書:や|》
厠(し)
《割書:かはや|》
【右丁上段】
を書(かき)たり
○廁(し)は圊(せい)なり溷(こん)なり俗これ
を雪隠(せつちん)といふ古は清(せい)といふ不(ふ)
潔(けつ)を清(きよめ)除(のぞく)をもつての名なり
釈名(しやくめう)に雑(ざう)なり人そのうへに
雑厠(ざうし)するなり
○坊(まち)は邑里(ゆうり)の名ちまたなり
町(まち)なり京(きやう)二 条通(でうとをり)を銅駝坊(どうたばう)と
いふがことし又は別屋(べつをく)を坊(はう)と
いふ憎坊(そうはう)寺坊(じばう)などなり
○店(いちくら)は物(もの)をひさく所なりたな
なり茶店(さてん)酒店(しゆてん)などいふなり
店屋物(てんやもの)などゝもいふ肆(し)廛(てん)
舗(ほ)同し心(こゝろ)なり
○槅子(かうし)は格子(かうし)とも書(かく)なり組(くみ)
入(いれ)槅子(かうし)狐槅子(きつねかうし)釣槅子(つりかうし)台槅(だいかう)
子なとあり禁裏(きんり)又は寺社(ししや)など
【左丁上段】
にあるは狐槅子(きつねかうし)なり
○倉(くら)は五 穀(こく)を入(いる)るを倉(さう)といふ
米を入るを廩(りん)といふ財宝(ざいほう)を
いるゝを蔵(さう)といふ書物(しよもつ)を入るを
庫(こ)といふ上庫(とこ)【注①】はぬりごめなり
府(ぶ)もくらなり
○斎(さい)は潔(けつ)なり心(こゝろ)を洗(あらふ)を斎(さい)と
いふ学文所(がくもんじよ)をいふ又 燕居(ゑんきよ)の室(しつ)
なり学文(がくもん)をする人 斎号(さいがう)を
付(つく)ことは我(わが)学文所(がくもんじよ)の号(な)をつく
なり
○廡(ひさし)は堂下(たうか)の周廊(しうらう)なり大屋(たいをく)
の四 辺(へん)の重檐(かさなるのき)なり
○窓(まど)は釈名(しやくめう)に窓(さう)は聡(さう)なり
内(うち)より外(ほか)をうかゞひてもつて
聡(きゝとき)【注②】をなすの義なり牕牖(さうよう)【注③】並
に同し紙窓(しさう)紗窓(しやさう)
【注① 「上庫(とこ)」は「土庫」の誤ヵ】
【注② 「聡(きゝとき)」は「聞解き」の意ヵ】
【注③ 牕は窻に同じ。かつ窻は窗の俗字。窗は窓の本字。牗は牖の俗字】
【右丁下段挿絵】
坊(ばう)
《割書:まち|》
槅子(かうし)
店(てん)
《割書:いち| ぐら》
倉(さう)《割書:く| ら》
【左丁下段挿絵】
瓦(ぐは)《割書: |かは| ら》
廡(ふ)
《割書:ひさし|》
窓(さう)《割書: |まど》 蟆股《割書:かへる|また》
斎(さい)
戸(こ)
《割書:と|》
【右丁上段】
○戸(と)は一 枚(まい)とびらの門(もん)を戸(と)
といふ又 内(うち)を戸(と)といひ外(ほか)を門
といふともいへり民家(みんか)ならび
つらなるを編戸(へんこ)といふ
○瓦(かわら)は唐(もろこし)夏(か)の昆吾(こんご)といふ人つ
くり始(はしめ)しなりめかわらを瓪(はん)といふ
おかわらを𤭆(とう)といふ又 魏(ぎ)の文帝(ぶんてい)
瓦(かわら)をちて鴛鴦(をしとり)となると夢(ゆめ)
見給ふといふ故事(こじ)ありよつて
鴛鴦瓦(ゑんあうぐは)といふ
○蟆股(かへるまた)は摶風(はふ)の下にあり蟆(かへる)
の股(また)に似(に)たればなり蟆(かへる)は水中(すいちう)に
住(すむ)ものなれば火災(くはさい)をさくる為(ため)
なり鴨居(かもゐ)といふも同(おなじ)意(こゝろ)也
○臥房(ぐはぼう)は寝室(しんしつ)ともいふ又 閨(けい)
房(ぼう)ともいふ天子(てんし)の御寝所(きよしんじよ)を
夜殿(よんのおとゞ)といふ
【左丁上段】
○揵(くはんのき)は限門木(かきるもんをき)なり今いふくは
んの木(き)なり𢩠(せん)閂(せん)並に同
○扄(とざし)は外(ほか)より閉(とづ)る関(くはん)なり又
門扉(もんのとびら)のうへの鐶(くはん)鈕なり又 関(くはん)
戸(こ)の木(き)なりくはんの木(き)又は鎖(じやう)也
○鋪首(ほしゆ)は今 按(あん)ずるに門(もん)又は
襖(ふすま)障子(しやうじ)などのひきて鐶(くはん)なり
鈕(ちう)はつほなり
○壁(かべ)は城(しろ)のかべを壘(るい)といふしらかへ
を粉壁(ふんへき)といふ又 画壁(ぐはへき)板壁(はんへき)など
あり室(しつ)の屏蔽(へいへい)なり
○廰(まんところ)は政(まつりこと)をきく所なり撿非(けび)
違使(ゐし)のゐる所なり公事(くじ)訴訟(そしやう)
をとりさばきする所をいふなり
庁(ちやう)同
○厩(むまや)は馬舎(ばしや)なり猿(さる)の異名(ゐみやう)を
馬(ば)父といふによつて厩(むまや)に猿(さる)
【右丁下段挿絵】
揵(けん)《割書:くわんのき》
扄(けい)《割書:とざし》
臥(ぐは)
房(ばう)
《割書:ねや》 鋪首(ほしゆ)
壁(へき)《割書:かべ》
【左丁下段挿絵】
《割書:ひと| や》牢(らう)
獄(ごく)
廰(ちやう)
《割書:まん| どころ》
厩(きう)《割書: |むまや》
柵(さく)
《割書:し|がら| み》
【右丁上段】
をもつて祈祷(きとう)とするとぞまた
厩(むまや)の上に馬をつなく木を猿(さる)
木(き)といふ
○牢獄(らうごく)は罪人(つみびと)を囚ところなり
皐陶(かうよう)といふ人つくりはじめ給ふ
なり周(しう)の代(よ)には囹圄(れいぎよ)といふ今
籠(ろう)と書(かく)はあやまりなり
○柵(しからみ)は木(き)をあみて是(これ)をつくる軍(ぐん)
陣(ぢん)にて人馬(じんば)をふせぐものなり
笧(さく)同し俗(ぞく)に駒(こま)よせとも馬(むま)ふ
せぎともいふ
○閨(ねや)は婦人(ふじん)のねやなり東坡(とうば)
が月(つき)の夜(よ)故郷(こきやう)の妻(め)をおもふの
詩(し)にも閨中(けいちう)唯(たゝ)独(ひとり)看(みるらん)と作(つく)れり
○浴室(ゆどの)は沐浴(ぼくよく)して身(み)をきよむ
る所なり俗(ぞく)に湯殿(ゆどの)といふ禅(ぜん)
寺(でら)には風呂屋(ふろや)を浴室(よくしつ)と額(がく)す
【左丁上段】
○籬(まがき)はませともいふ竹(たけ)にてあ
みたるかきなり藩(はん)笆(は)ともに同
陶淵明(とうえんめい)が詩(し)に採 ̄テ_二菊 ̄ヲ東の
籬 ̄ノ下 ̄ニ_一悠-然 ̄トシテ対 ̄ス_二南-山 ̄ニ_一【注】
○枢(すう)はくるゝなり言行(げんかう)は君子(くんし)
の枢機(すうき)なりといへり又 北極(ほくきよく)は
天(てん)の枢(すう)なりともいへり門枢(もんすう)戸(こ)
枢(すう)扉枢(ひすう)などいふ
○駅(むまやど)は道中(どうちう)のはたごや馬(むま)つ
ぎをいふ駅館(えきくはん)とも又 駅舎(ゑきしや)
とも駅伝(ゑきでん)ともいふ
○護摩堂(ごまたう)は護摩(ごま)は梵語(ぼんご)
なり焚焼(くんしやう)と翻訳(ほんやく)すしか
れば護摩(ごま)たくといふは重言(ぢうごん)
なり護摩(ごま)を修(しゆ)する護摩(ごま)
するなとゝいふべしとぞ
○台(うてな)は四 方(はう)にしてたかきものを
【注 「東の籬」は「東-籬」ヵ。「「対」の下の二点脱】
【右丁下段挿絵】
籬(り)《割書:ませ| がき》
閨(げい)
《割書:ねや》
枢《割書:く|ろゝ》
浴室(よくしつ)
《割書:ゆどの》
【左丁下段挿絵】
駅(ゑき)
《割書:むま| やど》
護(ご)
摩(ま)
堂(だう)
【右丁上段】
台(たい)といふ台上(たいしやう)に屋(をく)を架(か)する
を台門(たいもん)といふ又 楼台(らうたい)舞(ぶ)
台(たい)歌台(かたい)うてな
○櫓(やぐら)はやぐらなり城上(じやうじやう)の望(ばう)
楼(ろう)なり狭間(さま)をあけて敵(てき)の
多少(たしやう)をうかゞひのぞみ弓(ゆみ)鉄(てつ)
炮(はう)をいだす所なり又 戦棚(せんはう)と
もいふなり
○桟敷(さんじき)は見物(けんぶつ)の棚(たな)なり桟(さん)
敷(じき)はうつ又はかけるなどゝいふ
べからず桟敷(さんじき)かまゆるといふ
べしとぞ
○蹴鞠坪(しうきくのつぼ)といふは鞠蹴場(まりけば)也
四 本(ほん)がゝりとて四 隅(すみ)に松竹
桜(さくら)楓(かへで)をうゆるなり鞠(まり)はもろ
こし蚩尤(しゆう)がかうべをかたどり
てける事なり
【左丁下段】
○輪蔵(りんざう)は一切経(いつさいきやう)を入 置(をく)蔵(くら)也
転(まわる)やうにこしらへたるによつて
輪蔵(りんざう)とも転蔵(てんざう)とも経蔵(きやうざう)と
もいふ一 度(と)転蔵(てんざう)をまわせば一
切経(さいきやう)を転読(てんどく)したる道理(だうり)なり
前(まへ)に居(ゐ)るは傅大士(ふだいし)【注】といふ人なり
仏在世(ぶつざいせ)一 切経(さいきやう)を守護(しゆご)せし人也
○護朽(こきう)は今いふ擬宝珠(ぎぼうし)なり
橋(はし)又は高欄(かうらん)にあり
○枅(ひぢき)は臂木(ひぢき)と俗(そく)に書(かく)雲(くも)がた
をほり付(つく)るゆへに雲臂木(くもひぢき)と云
曲枅(まかれるひぢき)を栱(けう)とも欒(らん)ともいふ枓(ますがた)
をのする木なり
○枓(ますがた)は柱(はしら)の上の四 角(かく)なる栱(ます)
斗なり方枓(はうと)栱枓(けうと)枡枓(せうと)
ともいふ又は欂櫨(はくろ)ともいふ
○桁(けた)は屋(いゑ)の横木(よこぎ)なり又足がせ
【注 「傅大士」は「愽大士」と誤記ヵ】
【右丁下段挿絵】
桟(さん)
敷(じき)
台(たい )
《割書:うてな》
櫓(ろ)《割書:やぐ| ら》
蹴(しう)
鞠(きくの)
坪(つぼ)
【左丁下段挿絵】
護(ご)
朽(きう)
輪(りん)
蔵(ざう)
【右丁上段】
頸(くび)かせを桁(かう)といふ事もあり
又 衣類(いるい)をかくるを衣桁(いかう)といふ
翡翠(ひすい)鳴(なく)_二衣桁(いかうに)_一と杜子美(としみ)が詩(し)に
つくれり
○榱(たるき)は椽(たるき)なりもろこし秦(しん)の
世(よ)には椽(えん)といふ周(しう)の世には榱(さい)と
いふ斉(せい)の世(よ)にはこれを桷(かく)といふ
○藻井(さうせい)は天井(てんじやう)なり藻(も)をゑかく
によつて藻井(さうせい)といふ藻(さう)といひ
井(せい)といふみな火災(くはさい)をさくるこゝろ
なり天井(てんじやう)と書(かく)も此(この)意(こゝろ)なり
みな水(みづ)の縁(ゑん)をとる
○窯(かはらかま)は瓦竃(ぐはそう)なりかはらやくかま
なり窰(よう)同このかまのうちにかは
らを入 柴(しば)にてふすべやくなり
炭(すみ)やくかまも此たぐひなり
【右丁下段挿絵】
榱(すい)《割書:はへ| き》
《割書:たるき》
枅(けい)《割書: |ひぢき》
桁(かう)《割書:けた| 》
枓(と)《割書:ます| かた》
藻井(さうせい)
窯(よう)
《割書:かはら| がま》
【左丁 裏表紙見返し】
拾冊之内【手書き】
【裏表紙】
【文字無】
《割書:増補|頭書》訓蒙図彙大成 八
【手書き】
菜蔬
■竹【樹竹か】
頭書(かしらがき)増補(ぞうほ)訓蒙(きんもう)図彙(づゐ)巻之十七
菜蔬(さいそ)
此 部(ぶ)にはもろ〳〵の野菜(やさい)
苑蔬(ゑんそ)のたぐひをしるす
【上段】
○蕪菁(あをな)は食(しよく)を消(せう)し気(き)を
くだし嗽(せき)をやむつねにくらへば
中(うち)を通(つう)じ人をこへすこやか
ならしむ
○萊菔(だいこん)は気(き)をくだし食(しよく)を消(せう)
し痰咳(たんがい)を治(ぢ)し中をあたゝ
め大小 便(べん)を利(り)す
○芹(せり)は頭中(づちう)の風熱(ふうねつ)をさり
酒後(しゆご)の熱(ねつ)をさまし大小
腸(ちやう)を利(り)し血(ち)をとめ気を益(ます)
○葱(ひともじ)は汗(あせ)を発(はつ)し風を去(さり)
【挿絵】
蕪菁(ふせい)な
萊菔(らいふく)たいこん
蘿蔔 同
芹(きん)せり 水斬(すいさん)同
【手書き】
拾冊之内
【印】
駿州
山中屋
大宮
【上段】
小べんをつうじ魚肉(ぎよにく)の毒(どく)
をころし中をあたゝめは
なぢをとむ
○韮(にら)は胃熱(ゐねつ)をのぞき中を
あたゝめ虚(きよ)をおぎなひはら
のいたみによし
○蒜(にんにく)は脾胃(ひゐ)に帰(き)し中を
あたゝめくはくらん腹中(ふくちう)やす
からざるを治(ぢ)す
○薤(らつきよ)は水気(すいき)をさり中をあ
たゝめ不足(ふそく)をおぎなひ久(ひさ)し
きくだり腹(はら)によし気(き)を
くだす
○菠薐(はうれんさう)は酒毒(しゆどく)を解(げ)し
胸(むね)をひらき気(き)をくだしか
わきをうるほす
○胡葱(あさつき)は中をあたゝめ気(き)
をくだし食(しよく)を消(せう)し虫(むし)
をころしはれを治(ぢ)す
○芋(いも)は腸胃(ちやうゐ)をゆるかし肌(はだへ)を
みち熱(ねつ)をさり渇(かつ)をやめ胃(ゐ)
をひらき宿血(しゆくけつ)をやぶる
○著蕷(やまのいも)は虚(きよ)をおぎなひ
気力(きりよく)をまし陰(ゐん)をつよくし
腰(こし)のいたみをとめ腎をます
○牛房(ごぼう)は中風(ちうふう)はのいたみ脚(かつ)
気(け)風(ふう)どくせんきによし面目(めんもく)
はれいたむにもよし
○胡蔔(にんじん)は気をくだし中を
おぎなひ腸胃(ちやうゐ)を利(り)し五
臓(ざう)をやすんずこれをくらふ
に益(えき)ありて損(そん)なし
【挿絵】
葱(そう) ひともじ ねぎ
葱針(かりぎ) 凍葱(わけぎ)
蒜(さん)
にんにく
ひる
葫蒜(おほひる) 山蒜(のびる)
韮(きう)
にら
豊本(はうほん)同
薤(がい) おほにら 䪥(かい)同
からな
菠薐(はれう)
ほうれんさう
胡葱(こそう)
あさつき
芋(う)
いも
芋魁(いもがしら)
蹲鴟(いもがしら)
牛房(ごぼう)
薯蕷(しよよ)
やまのいも
胡蔔(こふく)
にんじん
【上段】
○苣(ちさ)は胸腷(むね)をひらき筋(すぢ)
骨(ほね)をかたくし目(め)をあきら
かにし乳汁(にうじう)をつうじむしを
ころす
○芥(からし)は腎経(じんけい)の邪気(じやき)をのぞ
き上気(じやうき)せきを治(ぢ)し胃(ゐ)を
ひらき胸(むね)を利(り)し九 竅(けう)を
利(り)す
○薺(なづな)は肝(かん)を利(り)し中をや
はらげ胃(ゐ)をまし五ざうを
利(り)す
○莙薘(たうぢさ)はすぢほねをおぎ
なひ胸(むね)のふさがりをひら
き熱(ねつ)を解(げ)す
○天蓼(またゝび)は中風(ちうぶう)口ゆがみけんべ
きかたまり女子(によし)の虚労(きよらう)を治(ぢす)
○蕗(ふき)は葉(は)あふひにゝてひろ
じ茎(くき)は煮(に)てくらふべし
款冬(ふき)と和訓(わくん)同(おなじ)きがゆへに
あやまる事 多(おほ)し
○蘘荷(めうが)は蠱(こ)にあたり沙虫(しやちう)
蛇毒(じやどく)を解(げ)す多(おほ)くくらへば
脚(あし)に利(り)あらず
○莧(ひゆ)は気(き)をおきなひ熱(ねつ)を
のぞき九 竅(けう)をつうじ大小 腸(ちやう)
を利(り)し癜(なまず)を治(ぢ)す
○独活(うど)は痛風(つうふう)を治(ぢ)し中風(ちうぶう)
湿冷(しつれい)逆気(ぎやくき)皮膚(ひふ)かゆく手(て)
足(あし)ひきつるを治(ぢ)す
○瓢(なりひさご)は脹(はれ)を消(せう)し虫(むし)をころ
し痔(ぢ)下血(げけつ)を治(ぢ)し血崩(けつばう)
赤白(しやくびやく)の帯下(こしけ)を治(ぢ)す
【挿絵】
苣(きよ) ちさ
苦苣(せんば)
萵苣(きじのを)
薺(せい) なづな
芥(かい) からし
莙薘(くんたつ)
たうちさ
天蓼(てんれう)
またゝび
蕗(ろ) ふき
ふきのとう
蘘荷(めうが)
めうがのこ
莧(けん) ひゆ
野莧(やけん) くさひゆ
独活(どくくわつ) うど
【上段】
○瓠(いふがほ)は口中のただれいたむ
を治(ぢ)し水道(すいだう)を利(り)し心(しん)
熱(ねつ)をさり心肺(しんはい)をうるほす
○瓜(うり)はすべて小 便(べん)をつうじ
渇(かつ)をとめ熱(ねつ)をのぞき大
腸(ちやう)をゆるくす羊角瓜(あさうり)
○冬瓜(かもうり)は小 便(べん)を利(り)し渇(かつ)
をやめ気(き)をましむねのつかへ
をのぞき熱(ねつ)をさる
○蕈(たけ)は気(き)をまし風(かぜ)を治(ぢ)
し血(ち)をやぶる地(ち)に生(しやう)ずる
を菌(きん)といふ木(き)に生(しやう)ずるを
蕈(たん)といふ
○胡瓜(きうり)は熱(ねつ)をすゞしうし
渇(かつ)を解(げ)し水道(すいだう)を利(り)す
小児(せうに)はいむ
○醤瓜(あをうり)は水道(すいだう)を利(り)し中
をおぎなひはれを消(せう)す
○絲瓜(へちま)は皮(かは)をほしてたゝみ
をふき踵(くびす)のあかをとるに
よし熱(ねつ)をのぞき腸(ちやう)を利(り)す
○山葵(わさび)はひへばらのいたみ
を治(ぢ)し食(しよく)をすゝめむね
を利(り)し痰(たん)をひらく
○茄(なすび)は血(ち)をさんじいたみを
とめ腫(はれ)を消(せう)し腸(ちやう)をゆる
くし痰(たん)をおふ銀茄(ぎんか)しろ
なすびなり
○鶏腸(よめがはぎ)は毒腫(どくしゆ)を治(ぢ)し忘(わす)
れていばりするによし
人(ひと)に益(ゑき)あり
○薊(あざみ)は宿血(しゅくけつ)をやぶり胃(ゐ)を
【挿絵】
瓠(こ) ゆふがほ
瓜(くは) うり
瓢(へう) なりひさご 蒲盧(ひやくなう)
冬瓜(とうくは) かもうり
蕈(きん) たけ 松蕈(まつたけ)
香蕈(かうたけ)
醤瓜(しやうくは) あをうり
胡瓜(こくは) きうり
山葵(さんぎ) わさび
山姜(さんきやう)同
絲瓜(しくは) へちま
【上段】
ひらき食(しよく)をくだし吐血(とけつ)
衂血(ぢくけつ)をとめ熱(ねつ)をしりぞく
○藜(あかざ)は虫(むし)をころしむし
くひばを治(ぢ)す脾胃(ひゐ)虚(きよ)
寒(かん)の人には用(もちゐ)べからず
○馬莧(すべりひゆ)はりんびやうを治(ぢ)
し血(ち)をさんじはれを消(せう)
し腸(ちやう)を利(り)すはらみ女は
くらふべからず
○薑(はじかみ)は胃(ゐ)をひらき血(ち)をや
ぶり風邪(ふうじや)をさる菌(くさびら)の毒(どく)
を解(げ)し神明(しんめい)に通(つう)ず
○蔏陸(やまごぼう)は五さうをすか
し水気(すいき)をさんず色(いろ)
あかきものは人を害(かい)す
食(しよく)すべからず
○蒟蒻(こんにやく)は消渇(せうかつ)をとめ血(ち)を
くだしはれを消(せう)し癰(よう)
を治(ぢ)し労(らう)を治(ぢ)す疱瘡(はうさう)
せざる小児(せうに)にはいむべし
○繁蔞(はこべ)は年(とし)のひさしき悪(あく)
瘡痔(さうぢ)愈(いゑ)ざるに血(ち)をやぶり
乳汁(にうじう)をつうずさんの女くら
ふべからず
○蒲英(たんほゝ)は乳癰(にうよう)水腫(すいしゆ)に汁(しる)
にしてくふべし食毒(しよくとく)を消(せう)
し滞気(たいき)をざんず
○蕨(わらび)は熱(ねつ)をさり水道(すいだう)を
利(り)し五ざうの不足(ふそく)をおぎ
なふなり
○狗脊(くせき)はぜんまいなり俗(ぞく)に
いぬわらびといふ疝気(せんき)を
【挿絵】
藜(れい) あかざ
茄(か) なすび 水茄(みづなすび)
馬莧(ばけん) すべりひゆ
鶏腸(けいちょう) よめがはぎ
薺蒿(せいかう)同
薊(けい) あざみ
薑(きやう) はじかみ
姜(きやう)同
はこべ 蔞蒿(ろうかう)同
繁蔞(はんろ)
蔏陸(しやうりく) やまごぼう
蒟蒻(こんにやく)
蒲英(ほゑい) たんぼゝ
【上段】
治(ぢ)し帯下(こしけ)をによし
○蓴(ぬなは)は腸胃(ちやうゐ)をあつくし気(き)を
くだし嘔(ゑづき)をやめ下焦(げしやう)を安(やすん)ず
○瓣(べん)はうりのへたなり薬(くすり)
に用(もちひ)て膈噎(かくいつ)嘔逆(さくり)を治(ぢ)す
○瓤(じやう)はうりのなかごなり㼓(れん)
犀(せい)同 橘油(きつゆ)の肉(にく)をも瓤(じやう)と云
○芝(し)は渇(かつ)をやめ人の顔色(かんしよく)
をまし神(しん)につうし智をまし
気(き)をすこやかにしるいれきに
○鹿角(ひぢき)は風気(ふうき)をくだし小(せう)
児(に)の骨蒸(こつしやう)労熱(らうねつ)を治(ぢ)し
麺(めん)の熱(ねつ)を解(げ)す
○石花(ところてん)は上焦(しやうせう)の浮熱(ふねつ)を去(さり)
下部(げぶ)の虚寒(きよかん)をはつす
○昆布(こんぶ)は水道(すいだう)を治(ぢ)し面(おもて)
はれ悪瘡(あくさう)を治(ぢ)しこぶ結(けつ)
核(かく)陰(いん)はれいたみによし
○海帯(あらめ)は風(かぜ)をさり水(みづ)をくだ
し女のやまひを治(ぢ)しさん
のはやめによし
○紫菜(あまのり)は煩熱(はんねつ)をさりこぶ
脚気(かつけ)をうれふる人はこれを
くらふべし多(おほ)くくらへばはら
いたむなり
○水松(みる)は水腫(すいしゆ)のやまひを治(ぢ)
しさんのはやめに用(もちひ)てよし
○燕窩(ゑんす)は虚(きよ)をおぎなひ
労痢(ろうり)をやむ
○石耳(いわたけ)は目(め)をあきらかに
し精(せい)をまし人をして
うゑず大小べんすくな
【挿絵】
鹿角(ろくかく) ひぢき
鹿尾菜(ろくびさい)
海鹿草(かいろくさう)並同
芝(し) れいし
蕨(けつ) わらび
瓣(へん) うりのへた
瓤(じやう) うりのなかご
狗脊(くせき) ぜんまい
石花(せきくは) こゝろぶと ところてん
蓴(じゆん) ぬなは じゆんさい 蒓同
水松(すいせう) みる
昆布(こんぶ) ひろめ
海帯(かいたい) あらめ
【右丁】
【上段】
からしむ
○苔菜(あをのり)は乾苔(かんたい)
ともいふむしをこ
ろし痔(ぢ)くわくらんゑ
づきを治(ぢ)す
○木耳(きくらげ)は気(き)をま
し身(み)をかるくし
こゝろざしをつよく
し痔(ぢ)を治(ぢ)す
○萆薢(ひかい)はところ
なり黄薢(おうかい)とも
いふ又 野老(やらう)といふ
味(あぢ)にがしよく疝(せん)
気(き)のむしをころ
すなり
【挿絵】
燕窩(えんす)
紫菜(しさい) あまのり
苔菜(たいさい) あをのり
萆薢(ひかい) ところ
木耳(もくに) きくらげ
石耳(せきじ) いわたけ
【左丁】
頭書(かしらがき)増補(ぞうほ)訓蒙(きんもう)図彙(づゐ)巻之十八
果蓏(かくは)
此 部(ぶ)にはくだものゝ
たぐひをしるす
【上段】
○杏(あんず)はほしさらしてくらへ
は渇(かつ)をとめ冷熱(れいねつ)の毒(どく)をさる
仁(にん)はせきをとむ
○梅(むめ)は生(なま)は多(おゝく)くらへば歯(は)を損(そん)
ず仁(にん)は目(め)をあきらかにし白
梅(ばい)は痰(たん)をのぞく
○桃(もゝ)は生(なま)は顔色(がんしよく)をまし仁(にん)は瘀(を)
血(けつ)をさんじ大 便(べん)をつうず
○李(すもゝ)は労熱(らうねつ)をさり肝病(かんびやう)に
食(しよく)すべし麦(むぎ)じゆくして
実(み)なるを麦李(ばくり)といふ
【挿絵】
杏(きやう)
からもゝ あんず
梅(はい) むめ
桃(たう) もゝ
李(り) すもゝ
【上段】
○梨(なし)は熱嗽(ねつさう)をやめ渇(かつ)をと
め痰(たん)を消(せう)し火(ひ)をくだし
肺(はい)をうるほす
○柰(からなし)は中焦(ちうせう)もろ〳〵の不(ふ)
足(そく)の気(き)を補(おぎな)ひ脾(ひ)を和(くは)し
気(き)ふさがるを治(ぢ)す
○棗(なつめ)は脾胃(ひゐ)をやしなひ津(しん)
液(えき)を生(しやう)し心腹(しんふく)の邪気(しやき)を
さり心肺(しんはい)をうるほす
○栗(くり)は気(き)をまし腸胃(ちやうゐ)を
あつくし腎(しん)を補(おぎな)ひ腰脚(こしあし)かな
はざるを治(ぢ)す茅栗(しばぐり)杭子(さゝぐり)
○柚(ゆう)は食(しよく)を消(せう)し酒毒(しゆどく)を解(げ)
し腸胃(ちやうゐ)の悪気(あくき)をさり婦(ふ)
人(じん)孕(はらみ)て食(しよく)をおもはず口(くち)淡(あはき)を
治(ぢ)す
○柑(くねんほ)は腸胃(ちやうゐ)のうちの熱 毒(どく)を
利(り)し俄(にはか)に渇(かつ)をやめ小便を利(りす)
○枳(からたち)は大 便(べん)をつうしむねのつかへ
をさり痰(たん)を消(せう)す脾胃(ひゐ)よ
はきものは用ゆべからず
○橘(たちばな)は消渇(せうかつ)をやめ胃(ゐ)をひらき
膈中(むねのうち)のふさがりをのぞく
○榧(かや)は寸白虫(すんばくちう)を治(ぢ)し食(しよく)を消(せう)
し目(め)を明(あき)らかにし咳嗽(がいさう)白濁(びやくだく)
をやめ痔(ぢ)を治(ぢ)す
○柿(かき)は水(みづ)を利(り)し酒毒(しゆどく)を解(げ)し
胃中(ゐちう)の熱(ねつ)をさる
○椎(しい)は腸胃(ちやうゐ)をあつくし人をし
て肥(こへ)すこやかならしむこれを
くらへばうへず
○榛(はしばみ)は気力(きりよく)をまし腸胃(ちやうゐ)を実(しつ)
【挿絵】
梨(り) なし
柰(たい) からなし
棗(さう) なつめ
栗(りつ) くり
柚(いう) ゆ
柑(かん) くねんほ
からたち
枳《割書:き|し》 きこく
橘(きつ)
たちばな
みかん
椎(すい) しい
榧(ひ) かや
柿(し) かき
榛(しん) はしばみ
し人をしてすこやかにし胃(い)を
ひらく
○楉榴(ざくろ)は喉(のど)のかわくを治(ぢ)し三 尸(し)
虫(ちう)を制(せい)す味(あぢは)ひ酸甘(すくあまき)の二 品(ひん)有(あり)
○来禽(りんご)は気(き)をくだし痰(たん)を消(せう)
し霍乱(くわくらん)腹(はら)の痛(いたみ)消渇(せうかつ)を治(ぢ)す
○葡萄(ぶたう)は痳病(りんびやう)しひれを治(ぢ)し
腸間(ちやうかん)の水をのぞき久(ひさ)しく
くらへは身(み)をかろくす
○金柑(きんかん)は気(き)を下(くだ)し胸(むね)をこゝろよ
くし渇(かつ)をやめ二日酔(ふつかえい)を治(ぢ)す
○銀杏(ぎんあん)は生(なま)にては酒(さけ)を解(げ)し
痰をくたし虫(むし)をころす熟(じゆく)し
くらへは小 便(べん)をしゞむ
○枇杷(びは)は吐逆(ときゃく)をとめ上 焦(せう)の熱(ねつ)
をつかさどり気(き)を下(くだ)し肺気(はいき)を利(り)ス
○枳椇(けんほのなし)は五 臓(さう)をうるほし大小
便(べん)を利(り)し酒毒(しゆどく)を解(げ)す
○楊梅(やまもゝ)は気(き)をくだし腸胃(ちやうい)をそゝ
ぎ渇(かつ)をやめ痰(たん)をさりゑづき
をとめ食(しよく)を消(せう)す
○茘支(れいし)は渇(かつ)をやめ顔色(がんしよく)をまし
煩(いきれ)を除(のぞ)き頭(かはち)おもきを治(ぢ)す
○苺(いちご)は気(き)をまし身(み)を強(つよ)くし虚(きよ)を
補(おぎな)ひ男(おとこ)は陰(いん)なへ女(をんな)は子(こ)なきによし
○仏手柑(ぶしゆかん)は気(き)をくだし痰(たん)
水(すい)をのぞき酒(さけ)に煮(に)てのめば
痰咳嗽(たんがいさう)を治す
○胡桃(くるみ)は肌(はだへ)をうるほし髪(かみ)を黒(くろく)
し多(おゝく)食(くら)へば小 便(べん)を利(り)す
○榲桲(まるめろ)は中をあたゝめ気(き)を下(くだ)
し食(しよく)を消(せう)し胸(むね)の間(あいだ)の酸水(さんすい)
【挿絵】
楉榴(じやくりう) ざくろ
金柑(きんかん) ひめたちばな
盧橘(ろきつ)同
来禽(らいきん) りんご
葡萄(ほどう) ぶとう
えび
鴨脚樹(いてう)
銀杏(ぎんきやう) ぎんあん
枳椇(しく) けんほのなし
苺(ほ) いちご
樹苺(きいちご) 覆盆子(つるいちご) 蛇苺(へびいちご)
枇杷(びは)
一名 炎果(えんくは)
楊梅(やうばい) やまもゝ
茘支(れいし) 離支(りし)同
香櫞(かうゑん) ぶしゅかん
仏手柑(ぶしゆかん)同
【上段】
をのぞき水瀉(すいしや)を治(ち)し酒
気(き)を散(さん)ず
○木瓜(ぼけ)は脚気(かつけ)筋(すぢ)ひきつり
くわくらんを治(ぢ)す
○菱(ひし)は中を安(やすん)じ五 臓(ざう)を補(おぎな)ひ
酒毒(しゆとく)を解(げ)し渇(かつ)をやめ丹石(たんせき)の
どくを解(げ)す
○茶(ちや)は小 便(べん)を利(り)し痰熱(たんねつ)を
さり渇(かつ)をやめねむりすくな
く食(しよく)を消(せう)し目(め)を明(あき)らかにす
○椒(さんせう)は風邪(ふうじや)の気(き)を除(のぞ)き中
をあたゝめ女人の経水(けいすい)を通(つう)ず
○胡頽(ぐみ)は水痢(すいり)を治(ぢ)す寒(かん)
熱(ねつ)の病(やまひ)には用(もちゆ)ゆべからず
○葧臍(くわい)は風毒(ふうどく)を消(せう)し耳目(みゝめ)を
明(あきらか)にし胃(ゐ)をひらき腸胃(ちやうゐ)をあ
つくし血 痢(り)をつかさどる
○慈姑(しろくわい)は産後(さんご)にむねをせめ
死せんとし難産(なんざん)ゑな下(くだら)さるを治(ぢす)
○梬棗(さるがき)は心(たん)をしづめ熱(ねつ)をとめ
消乾(せうかつ)をとめ久(ひさ)しく服(ふく)すれば
顔色(かんしよく)をよろこばしむ
○松子(まつのみ)は諸風骨(しよふうほね)ふし痛頭(いたみかしら)
ふらめきがいさうによし
○龍眼(りうがん)は胃(ゐ)をひらき脾(ひ)をまし
虚(きよ)を補(おぎな)ひ智(ち)をます久(ひさ)しく
服(ふく)すれは志(こころさし)をつよくし身(み)をかる
くして老ず
○甘蔗(かんしや)はさたうの木(き)なり
よく脾胃(ひゐ)をおぎなふ
○胡椒(こせう)は中をあたゝめ痰を去(さり)
腹痛(はらのいたみ)をやめ胃口虚冷(ゐこうきよれい)を治(ぢ)す
【挿絵】
核桃(かくたう) 核果(かくくは)同
胡桃(こたう) くるみ
菱(れう) ひし
榲桲(うんぼつ) まるめろ
茶《割書:た|さ》 ちや
椒(せう) さんせう
木瓜(もくくは) ぼけ
胡頽(こたい) ぐみ
梬棗(ゑいさう) さるがき
葧臍(ほつせい) くわい
慈姑(じこ) しろぐわい おもだか
茨菰(じこ)同
松子(せうし) からまつのみ
【上段】
○鴉瓜(からすうり)は火をくだし咳(せき)を治(ぢ)し
痰(たん)をそゝぎのどを利(り)す
○燕覆(あけひ)は膀胱(ばうくわう)を治(ぢ)し癰(よう)を
消(せう)し腫(はれ)をさんじ能(よく)乳汁(にうじう)を通(つう)ス
○甜瓜(からうり)は熱(ねつ)をのぞき小 便(べん)
を利(り)し煩渇(はんかつ)をとむ暑(しよ)
月(げつ)にくらへば暑(しよ)にあてられず
○苦瓜(つるれいし)は邪熱(じやねつ)をのぞき労(らう)
乏(ぼく)をおぎなひ心(しん)をきよく
し目(め)をあきらかにす
錦茘支(きんれいし) 癩葡萄(らいぶだう)
○烏柿(うし)はあまほしなり
火柿(くはし)同 醂柿(りんし)はさはしがき
烘柿(そうし)つつみがき白柿はつり
がきなり
○蔕(てい)は瓜(うり)の蔕(へた)柿(かき)の蔕(へた)
なり又 蒂(てい)につくる㚄(てい)同
柿(かき)茄(なすび)などのへたなり
○莍(きう)は櫧(かし)櫟(いちゐ)などの実(み)を
もる房(はう)なり俗(ぞく)にかさと云
○仁(にん)はくだものゝ核(さね)のうち
にあるものなり
梅仁(ばいにん)桃仁(とうにん)杏仁(きやうにん)なり
薬(くすり)にもちゆ
○核(かく)は梅桃(むめもゝ)補その身すべて
くだもの又は瓜茄(うりなすび)のさね也
核(さね)の中(うち)薬(くすり)にもちゆるもの
あまたあるなり
○紫糖(くろざたう)はおほく食(くら)へば心(しん)
痛(つう)し長虫(ちやうちう)を生(しやう)す
【挿絵】
龍眼(りうがん)
円眼(えんかん)
茘奴(れいぬ) 同
胡椒(こせう)
まるはじかみ
一名 木奴(もくぬ)
鴉瓜(あくわ) からすうり
甘蔗(かんしや)
さたうだけ
燕覆(ゑんふく)
一名 桴棪
又 あけび
まくはうり
甜瓜(てんくは) からうり
にがうり
苦瓜(くくは) つるれいし
白柿(はくし) つりがき
烏柿(うし) あまぼし
蔕(てい) ほぞつた
【右丁】
【上段】
○沙糖(さたう)は
心肺(しんはい)をうる
ほし
大小 腸(ちやう)の
熱をさり
酒毒を解(げ)す
○氷糖(こほりさたう)は
心脹(しんてう)の熱(ねつ)を
さまし
目(め)をあきら
かにす
【挿絵】
氷糖(へうたう) こほりざたう
沙糖(さたう) しろざたう
紫糖(したう) くろざたう
核(かく) さね
莍(きう) かさ
仁(にん)
【左丁】
頭書(かしらかき)増補(ぞうほ)訓蒙(きんもう)図彙(づゐ)巻之十九
樹竹(じゆちく)
此 部(ふ)にはうへ木(き)竹(たけ)のるいをしるす
【上段】
○松(まつ)は久(ひさ)しく服(ふく)す
れば身(み)を軽(かる)くし
て老(おい)ず年(とし)をのぶる
といへり 補 五 葉(よう)を俗(ぞく)
に唐松(からまつ)といふ
○楓(ふう)はかいでなり又
鶏冠木(かいで)とも書(かく)也
もみぢの事なり
補 紅葉(こうよう)は諸木(しよぼく)に多(おゝ)ク
あり楓(かいで)は中(なか)にも勝(すぐれ)たり
【挿絵】
○松(しやう) まつ
○楓(ふう) かいで
【上段】
○檜(ひのき)は深山(しんざん)あり
て補 大木(たいぼく)となる白木(しらき)
の木具(きぐ)曲物(まげもの)など
みな此木を用(もち)ひて
最上(さいじやう)とす又 楫(かぢ)に
つくるなり
○補 圓柏(いぶき)は葉(は)栢(かや)にゝ
て実(み)は松に似(に)たり
尖(とが)りかたし但(たゞ)し
葉(は)檜(ひのき)に類(るい)して
色黒(いろくろ)く皮(かわ)あらし
檼柏(いんはく)同
○檉(むろ)は補 檉柳(ていりう)なり
一名 雨師(うし)といふ
皮(かわ)あらし
○杉(すぎ)は補 深山(しんさん)に生(しやう)
ずるもの大木と
なる木立(こだち)直(すぐ)に
て枝葉(ゑたは)しげる也
煎(せん)して毒瘡(どくさう)を
洗(あら)ひ水に浸(ひた)し
て脚気(かつけ)腫満(しゆまん)を
治(ぢ)す
○仙栢(いぬまき)は補 槙(まき)のは
に似(に)たり実(み)の形(かたち)
手(て)を合(あは)せたるか如(こと)し
一名 羅漢松(らかんしやう)
【挿絵】
檜(くわい) ひのき
圓柏(ゑんはく) いぶき
檉(てい) むろ
仙栢(せんはく) いぬまき
杉(さん) すぎ
【上段】
○南燭(なんてん)は 補 五月に
少(ちいさ)き白き花さき
実(み)のり霜後(さうご)に
紅(くれない)になるその色
美(び)なり 補 此木(このき)悪(あし)
き夢(ゆめ)を見たる時
此木(このき)をみればその
夢(ゆめ)きゆるといふ事
ゆへ多(おほ)く手水所(てうづどころ)
のむかふに植(うへ)をく
なり
○山茶(さんさ)は 補 品類(ひんるい)多(おほ)
し俗(ぞく)にさゞんくは
といふ冬(ふゆ)花 咲(さく)うす
紅(べに)白花(はくくは)なりつばき
は春さく花葉(はなは)共
に大にして色品(いろしな〴〵)有
○桜(さくら)は一名 朱桃(しゆとう)又は
麦英(ばくゑい)ともいふ 補 むかしは
梅(むめ)にかきりて花(はな)と称(しやう)
じき今は花(はな)といへは桜
にかぎる実(み)を桜桃(おふとう)と
いふ桜(さくら)は一重(ひとへ)なるもの成
しが後(のち)に八重桜(やゑさくら)の種(しゆ)
類(るい)多(おほ)くなり今は
百 種(しゆ)に及(およ)べり
○海棠(かいだう)は 補 花白く
紅色(へにいろ)の所(ところ)ありて
尤(もつとも)美(ひ)なり葉(は)はな
しのことく三月に
花さく一名 海紅(かいこう)
花(くは)といふ
【挿絵】
南燭(なんしよく) なんてん
山茶(さんさ) つばき
桜(ゑい) さくら
海棠(かいだう)
【上段】
○躑躅(つゝじ)は類(たぐひ)多し
紫花(しくは)は 補 二月に花
さく赤(あか)つゝじは三月
花さくれんげつゝじは
少し遅(おそ)く花大に
して見事なり霧(きり)
島(しま)は花 濃紅(こいへに)にして
美(び)なりもちつゝじは
薄紫(うすむらさき)四月花さく
りうきうつゝじは白花
と紫(むらさき)の花大にし
ておそし杜鵑花(さつき)は
五月花さく紅紫(へにむらさき)
又は白紅交(はくこうまじ)り種々(しゅ〴〵)有
○辛荑(こふし)は葉 細(ほそ)
長(なが)し花白くして
少し赤(あか)みあり花
を木筆花(もくひつくは)といふ也
春花さく
○木蘭(もくらん)は香蘭(からん)に
似(に)て花は蓮(はす)のごと
くうち白く外かわ
むらさきなる 補 花を
木蓮花(もくれんげ)といふ
○厚朴(こうぼく)は春葉(はるは)を
生し四季しほま
ず花くれないに実(み)
あをし一名 榛(しん)
【挿絵】
羊躑躅(やうてきちよく) れんげつゝじ
映躑躅(えいてきちよく) あかつゝじ
杜鵑花(とけんくは) さつき
辛荑(しんい) しでこぶし
木蘭(もくらん) もくれんげ
厚朴(こうぼく) ほうのき
【上段】
○補 槿(むくげ)は芙蓉(ふよう)のは
なに似(に)て小(ちい)さし
薄紅白(うすべにしろ)あり八重(やゑ)
ひとへあり七月花
さく一名 日及(じつきう)
○芙蓉(ふよう)は水に生
するを水芙蓉(すいふよう)
といふ荷花(かくは)なり木
を木芙蓉(もくふよう)といふ
補 きばちすともいふ
七八月花ひらく
○蜀漆(くさき)は秋 紫(むらさき)の
花さく花中(くはちう)に黒(くろ)
き実(み)有 根(ね)を常(じやう)
山(ざん)といふ六月 頃(ころ)葉(は)
とり食(しよく)すれども
毒(どく)ありともいふ
○女貞(ねづもち)は冬(ふゆ)をしのぎ
てしぼまずよつて女
の貞節(ていせつ)に比(ひ)して名
づく一名 蝋樹(らうしゆ)
○冬青(もちのき)は冬月 青(あを)
くみどりなりよつて
冬青(とうせい)といふ葉少(すこ)
しまるし
【挿絵】
槿(きん) むくげ
芙蓉(ふよう) きはちす
一名 拒霜(きよさう)
蜀漆(しよくしつ) くさぎ
冬青(とうせい) もちのき
女貞(ぢよてい) ねづもち
【上段】
○粉団(てまり)は葉(は)まるく
花白くして手毬(てまり)
のごとし四月花さ
く玉繍花(ぎよくしうくは)とも繍(しう)
毬花(きうくは)ともいふ 補 かん木(ぼく)
といふ木も粉団(てまり)に似(に)
たる花なり大てま
り小でまり二 種(しゆ)有
○紫陽(あぢさい)は 補 五月花
さく粉団(てまり)似たり色(いろ)
はるり又うす紅白
あり葉てまりに
似(に)て葉(は)さき尖(とか)る
木の長(たけ)三四尺
○薜荔(まさきのかつら)は一名を
木饅頭(もくまんちう)といふ又
鬼饅頭(きまんぢう)といふ 補 秋
のすゑに青(あを)き実(み)
のる中あかし
○梔(くちなし)は 補 花白く五
月にさく実(み)は黄(き)
なる染色(そめいろ)に用ゆ
上 焦(しやう)の熱(ねつ)をくだし
痰(たん)を治(ぢ)す花を
薝匐(せんふく)【簷は誤 注】といふ
【注 くちなしの漢名は薝匐(たんふく或はせんふく)で「せん」の字は竹かんむりではなく艸冠なので筆者の誤と思われる。】
【挿絵】
粉団(ふんたん) てまり
紫陽(しやう) あぢさい
薜荔(へきれい) まさきのかづら
梔(し) くちなし
【上段】
○錦帯花(やまうづき)は四月に
花さく楊櫨(うつぎ)に似(に)
て花 葉(は)ともに大
なり花 開初(ひらきはしめ)には
白く後(のち)に赤(あか)く成
○楊櫨(うつぎ)は葉(は)こま
かく花も小(ちいさ)く木(き)は
黄色(きいろ)をそむるによ
し実(み)は莢(さや)をなす
空疏(くうしよ)同
○棘(いばら)は 補 山野(さんや)に多し
はり多(おゝ)く群(むらが)り生(しやう)
ず五月白き花 咲(さく)
棘刺(きよくし)棘鍼(きよくしん)並同
○角楸(あづさ)はかはらひさ
ぎといふ 補 実(み)はさゝげ
のごとく細長(ほそなが)くふさ
をなす冬(ふゆ)葉(は)落(おち)
て角(つの)なお有
○木槵(つぶのき)は五六月に
白き花さく実生(みしやう)
は青(あを)く熟(じゆく)すれば
黄(き)なり
【挿絵】
錦帯花(きんたいくは) やまうつぎ
楊櫨(やうろ) うつぎ
棘(きよく) いばら
角楸(かくしう) あづさ かはらひさき
木槵(もくりん) つぶのき
【上段】
○棕櫚(しゆろ)は六七月に
黄白(きしろき)花さき八九
月に実(み)をむすぶ
かたち魚(うを)の子(こ)の如
し此木(このき)の毛葉(けは)
を帚につくる
○黄楊(つげ)は葉こま
かくかたし花さか
ず実(み)ならず四 季(き)
しぼまず 補 木(もく)め細(こまか)
くかたし色(いろ)黄(き)也
○衛矛(くそまゆみ)は三月に
茎(くき)を生す高(たか)さ
三四尺ばかり 補 秋の
すへ紅葉(こうよう)す茎(くき)に
箭(や)の羽(は)の如(ごと)き物
あり今いふにしきゞ
一名 鬼箭(きせん)
○鉄蕉(てつしやう)は蘇鉄(そてつ)
なり一名 鳳尾焦(ほうびせう)
となつく琉球(りうきう)より
出るを番焦(ばんせう)と云
【挿絵】
棕櫚(しゆろ)
黄楊(わうやう) つげ
衛矛(ゑいほう) くそまゆみ にしきゞ
鉄蕉(てつせう) そてつ
【上段】
○備木(ぬるで)は実を塩(えん)
麩子(ふし)といふ虫(むし)あり
て房(ばう)をむすぶを
五倍子(ごばいし)といふ是
ふしなり
○楮(かぢ)は皮(かわ)を製(せい)し
て紙(かみ)につくるなり
かうそといふ穀(こく)
構(こう)ならびに同
補 七月七日 児童(じどう)
此 葉(は)に詩歌(しいか)を
書(かき)二星(じせい)にそなふ
○漆(うるし)は 補 葉(は)ぬるで
に似たり秋(あき)こま
かき実をむすふ
此 木(き)より器物(きぶつ)を
ぬるうるしをとる
みだりにゐらへはま
けるなり
○木樨(もくせい)は一名 岩(がん)
桂花(けいくは)といふ花白(はなしろき)
を銀桂(ぎんけい)といひ黄(き)
なるを金桂(きんけい)と云
補 香(か)つよき花なり
【挿絵】
備木(びぼく) ぬるで
楮(ちよ) かぢ
漆(しつ) うるし
木樨(もくせい)
かつらのはな
【上段】
○桐(きり)は琴(こと)につくる
四月花さく白く
薄紫(うすむらさき)なり大木(たいぼく)
あり箱(はこ)などつくる
に此木を用ゆ
○梧桐(ごとう)は皮(かわ)青(あを)く
ふしなし実(み)は
胡椒(こせう)のごとくかわ
にしわあり花は
小にして黄(き)なり
櫬(しん)同
○櫟(くぬぎ)は 補 葉はかしわ
に似(に)てうすし
又 栗(くり)に類(るい)す実
を橡実(しやうじつ)といふ俗(ぞく)
にどんくりといふ也
木かたく薪(たきゞ)とし
て最上(さいじやう)なり
○槲(かしわ)は一名 樸樕(ぼくそく)
といふ実を櫟橿(れききやう)
子(し)といふ 補 俗(ぞく)にかし
といふ品類(ひんるい)多し
木かたくして棒(ばう)
につくるなり
【挿絵】
桐(とう) きり
梧桐(ごとう) きり
櫟(れき) くぬぎ
槲(こく) かしわ
【上段】
○檗(きわだ)は葉(は)呉茱萸(こしゆゆ)
に似(に)たり冬(ふゆ)しぼま
ず皮(かわ)そと向くうら
黄(き)なり黄檗(わうばく)と
いふきわだなり
○紫荊(しけい)は葉(は)こま
かにして花(はな)むらさ
きなり春(はる)花ひら
き秋(あき)実(み)のる実を
紫珠(しじゆ)といふ
○石南(しやくなんげ)は石(いし)の間 陽(ひ)
に向(むか)ふ所に生(しやう)ずる
よつて石南(しやくなん)と云
葉(は)枇杷(びわ)のごとし
○狗骨(ひいらぎ)は木のはだ
へ白くして狗(いぬ)の骨(ほね)
の如(こと)し依(よつ)て狗(く)こ
つといふ又 柊木(とうほく)とも
書(かく)なり
○瑞香(ぢんてうけ)は葉(は)厚(あつ)く
春(はる)花(はな)さくかたち丁(てう)
香(かう)のごとく色(いろ)黄(き)白(しろ)
紫(むらさき)なり
○接骨(にわとこ)は小便(せうべん)を
通(つう)じ水腫(すいしゆ)を治(ぢ)ス
一名 木蒴藋(もくさくてき)と
いふ手足(てあし)の痛(いたみ)つり
煎(せん)じ洗(あら)ふてよし
【挿絵】
檗(はく) きわだ
紫荊(しけい)
石南(せきなん) しやくなんげ
瑞香(ずいかう) ぢんてうけ
狗骨(くこつ) ひいらぎ
猫児刺(めうにし)
杠谷(こうこく)並同じ
接骨(せつこつ) にわとこ
【上段】
○桑(くわ)は一切(いつさい)の風気(ふうき)
を治(ぢ)し中(うち)を調(とゝの)へ
気(き)をくだし痰(たん)を
消(せう)し胃(ゐ)をひら
き食(しよく)を下す
補 楝(あふち)は葉(は)槐(えんじゆ)のごと
く三四月に花さく
薄紫色(うすむらさきいろ)なり俗(そく)に
せんだんと云 実(み)を
金棟子(きんれんし)といふ
○五加(うこぎ)は蔬(そ)につく
りてくらへは皮膚(ひふ)
の風湿(ふうしつ)をさる五
佳(か)五 花(くわ)同
○枸杞(くこ)は皮膚(ひふ)骨(こつ)
節(せつ)の風(かぜ)をさり熱(ねつ)
毒(どく)をさりかさの腫(はれ)
をさんず
○紫薇(しひ)は花 紅色(へにいろ)
なり七月さく百日(ひやくじつ)
紅(こう)といふ 補 俗(ぞく)にさるす
へりといふ
○樟(くす)は楠(くすのき)に似(に)たり
四 季(き)しぼまず夏
細(ほそ)き花さく 補 楠木(なんぼく)も
此類(このたぐひ)なり大木と
なる数年(すねん)をへて
其木(そのき)石(いし)となる
【挿絵】
桑(さう) くわ
楝(れん) あふち
せんだん
五加(ごか) うこぎ
枸杞(くうき) くこ
樟(しやう) くす
紫薇(しひ)
【上段】
○石檀(とねりこ)は葉(は)槐(えんじゆ)に似(に)
たり樳木(じんぼく)苦櫪(くれき)並
同 皮(かわ)を秦皮(しんひ)といふ
○合歓(ねむのき)は五月に
花さく色(いろ)紅白(こうはく)也
実にさやあり 補 葉(は)
昼(ひる)ひらきて夜(よる)しぼ
むよつて一名 夜合(やがう)
樹(じゆ)といふ
○楡(にれ)は赤白(しやくびやく)二 種(しゆ)有
三月に莢(さや)を生(しやう)すか
たち銭(ぜに)の如し色(いろ)白
し実を楡莢(ゆけう)楡銭(ゆせん)
といふ
○葉(よう)は木のはなり
嫰葉(どんよう)わかば紅葉(こうよう)も
みぢば落葉(らくよう)おちば
病葉(ひやうよう)わくらは
○株(しゆ)はくるぜなり俗(ぞく)
にいふかふなり土(つち)に
入を根(ね)といひ土を出
るを株(しゆ)といふ
○蘖(かつ)は木のわかば
への事なり枿(かつ)丕(かつ)
ならびに同
○芽(げ)は草(くさ)のめざし
いつるをいふ萌芽(ばうか)と
もいふ又さしめを云
【挿絵】
石檀(せきたん) とねりこ
合歓(がうくわん) ねむのき
楡木(ゆぼく) にれ
葉(えう) は
株(しゆ) かぶ
蘖(かつ) ひこばへ
寄生(きせい) やどりき
芽(け) ぬきざし
【上段】
○楊(やう)は黄(くわう)白(はく)青(せい)
赤(しやく)の四 種(しゆ)あり白(はく)
楊(やう)は葉(は)まるく青(せい)
楊は葉(は)ながし赤(しやく)
楊(やう)は霜(しも)くだりて
葉(ば)赤(あか)くそむ水(すい)
楊(やう)は川(かわ)やなぎなり
水辺(すいへん)に生(しやう)ず
○寄生(やどりき)は諸木(しよぼく)に
あり枝(えだ)の間(あいだ)木(き)のま
たに生(はゆ)る木をいふ
木によりて名(な)かはれ
り又 寓木(ぐうほく)ともいふ
○柳(あをやき)は垂條(すいでう)の小
楊(やう)なり花白し柳(りう)
絮(ぢよ)は柳(やなぎ)のまゆなり
○槐(えんじゆ)は葉(は)ほそく花
は黄(き)にして色(いろ)をそ
むるに用ゆ又 宮槐(きうくわい)
さやを槐角(くわいかく)といふ
○椋棶(むくのきらい)同一名 郎(らう)
来(らい)といふ葉(は)はほし
て物をみがきてつや
をいだす
○栴檀(せんだん)は葉(は)槐(えんじゆ)のご
とく皮(かわ)青(あを)し黄檀(わうたん)
【挿絵】
白楊(はくやう) はこやなき
水楊(すいやう) かわやなぎ
柳(りう) したりやなぎ
あをやぎ
【上段】
白檀(びやくだん)紫(し)檀 赤檀(しやくたん)
黒檀(こくたん)のわかちあり
伽羅(きやら)沈香(ぢんかう)はこの木(き)
朽(くち)てなるなり
○皂莢(さいかし)は葉(は)槐(えんじゆ)に
似(に)たり枝(えだ)にはり有
夏(なつ)ほそく黄(き)なる
花 咲(さく)皂角子(さいかし)共 書(かく)
○柴(しば)は小木(しやうぼく)散財(さんざい)
なり俗(ぞく)にしば
○薪(たき)は粗(あらき)を薪(しん)と云
こまかなるを蒸(せう)と
といふ又つまぎ
○竹(たけ)は六十一 種(しゆ)あり
六十年にして一 度(たび)
花さき実(み)のり枯(かる)る
補 是をじねんこ入(いる)と
いふ花をさゝめぐり
といふ枯(か)れ尽(つく)れは又
生ず
○筍(たかんな)は笋(たかんな)同
食(しよく)すれは膈(むね)を利(り)し
痰(たん)を消(せう)し胃(ゐ)をさは
やかにし水道(すいどう)を通(つう)
【挿絵】
皂莢(さいけう) さいかし
椋(りやう) むく
槐(くわい) えんじゆ
栴檀(せんだん)
伽羅(きやら)
柴(さい) しば
薪(しん) たきぎ
【上段】
し気をます
○篠(しのざゝ)は小竹(こだけ)なり竹
の根(ね)より生(はゆ)る小さゝ
をいふなり
○箬(じやく)は山に生ずる
さゝなり葉(は)大にして長(たけ)
二尺ばかり有此 葉(は)にて
粽(ちまき)をつゝむ篛(じやく)同
○篁(たかむら)は竹の苗(なへ)なり
たかむらともいふ
○蘆竹(なよたけ)は葉(は)大にし
て芦(あし)に似(に)たるまた
秋芦竹(しうろちく)ともいふ
○棕竹(しゆろちく)は一名 実(じつ)竹
葉(は)棕櫚(しゆろ)に似(に)たり
杖(つえ)又 拄杖(しゆちやう)につくる也
○扶竹(ふちく)はふたまた竹
なり双竹(さうちく)とも天親(てんしん)
竹(ちく)とも又 相思(さうし)竹とも
いふなり
○紫竹(しちく)は斑(はん)竹とも
いふ舜(しゆん)のきさき娥(か)
皇(おう)女英(ぢよゑい)のなみだが
かゝりてまだらにそ
【挿絵】
篠(でう) しのざゝ
筍(しゆん)
たかんな
たけのこ
竹(ちく) たけ
淡竹(はちく)
苦竹(まだけ)
箬(じやく) さゝ
篁(くわう) たかむらだけ
蘆竹(ろちく)
なよたけ
しのびだけ
【上段】
みたるとなり
○無節(むせつ)竹はきせる
のらうにもちゆる
竹なり
○/ 𥳇(ふく)はさゝめぐりと
いふ竹の実(み)なり一名
竹米(ちくべい)といふ (補) 俗(ぞく)にいふ
じねんことて竹の病(やまひ)
なりと実(み)の中(なか)に米(こめ)
のごとき物あり
○籜(たく)は竹のかわなり
又 竹皮(ちくひ)とも筍皮(じゆんひ)と
もいふ
○筒(とう)はたけのつゝ
筩(よう)同 竹節(ちくせつ)たけ
のふしなり
○蔑(べつ)【篾の誤ヵ】はたけのあを
かわ俗(ぞく)にいふかづらう
□(へつ)【竹+蜜】筠(きん)同
○幹(かん)は木(き)の心(しん)なり
俗(ぞく)にいふみきなり
○根(こん)は木(き)の根(ね)なり
柢(てい)同 本(ほん)とも
○枝(し)は木(き)のゑだなり
【挿絵】
棕竹(そうちく) しゆろちく
扶竹(ふちく) ふたまただけ
紫竹(しちく) むらさきだけ
𥳇(ふく) さゝめぐり
無 節竹(せつちく) らうだけ
筒(とう) たけのつゝ
籜(たく) たけのかは
篾(べつ)
たけのあをかは
たけのかづら
【上段】
柯(か)同ほそきゑだを
條(でう)といふすはえ樹(き)の
またを椏(あ)といふ
○梢(せう)は木(き)のこずへなり
杪(しやう)同
○炭(たん)はあらずみなり
烏銀(うぎん)ともいふ桴炭(ふたん)
はけしずみ
○杮(し)はこけら榾柮(こつとつ)は
きのはし鋸末(きよまつ)は
おがくずなり
【挿絵】
枝(し)
えだ
幹(かん)
から
みき
根(こん) ね
炭(たん)
すみ
杮(し) こけら
梢(せう)
こずへ
【手書き】
拾冊之内
【裏表紙】
【表紙 題箋】
《割書:増補|頭書》訓蒙(花草)図彙大生 九 【注 「花草」は朱書き】
【朱の手書き】
花草
【右下部の資料整理ラベル】
TIAB
11
164
日本近代教育史
資料
【右丁】
【手書きのメモ】拾冊之内
【蔵書印】東京学芸大学蔵書
【左丁】
頭書(かしらがき)増補(ぞうほ)訓蒙(きんもう)図彙(づゐ)巻之二十
花草(くはさう)《割書:此部(このぶ)にはもろ〳〵の草(くさ)|花(ばな)をしるす》
【上段】
○牡丹(ぼたん)はふかみ
ぐさともはつかく
さともいふ花(はな)の
王(わう)とす紫花(しくは)多(おゝ)
し紅白(こうはく)あり紅(べに)を
上 品(ひん)とす尤(もつとも)花の
富貴(ふうき)なるものな
りと古人(こじん)も賞(しやう)ぜ
り一名 花王(くはおう)又 木(もく)
芍薬(しやくやく)といふ牡丹(ほたん)
皮(ひ)とて薬に用(もち)ゆ
【挿絵】
はつか
ぐさ
牡丹(ぼたん)
《割書:ふかみ| ぐさ》
【頭部の整理番号】
TIAB
11
164
【上下部に黒の丸印】
駿州
山【▢で囲む】中屋
大宮
【右丁 上段】
○芍薬(しやくやく)は三 枝(し)五
葉(よう)なり花 牡丹(ぼたん)に
似(に)てすこし小(ちい)さ
し夏(なつ)の初(はじめ)に花
さく紅白(こうはく)紫(むらさき)あり
花相(くはしやう)将離(〳〵り)といふ也
根(ね)を薬(くすり)に用ゆ
○桜草(さくらさう)は葉(は)蕪(ぶ)
菁(せい)の如(ごと)くにしてこ
はし花 紫(むらさき)白(しろ)なり
三月花さく
【左丁 上段ここに注記を書きます】
○葵(あふひ)は惣名(さうみやう)なり
葉(は)大にして花は
紅(べに)又 紫(むらさき)あり五月
花さく実(み)は大さ
指(ゆび)のごとくかわう
すくして扁(へん)なり
○蜀葵(しよくき)はからあふ
ひなり花 千重(せんえ)に
して濃紅(こきへに)別(べつ)して
うるはし菺葵(けんき)同又
戎葵(しうき)ともいふ
○錦葵(きんき)はこあふひ
なり又 銭葵(ぜにあふひ)とも云
荊葵(けいき)同
【右丁 下段挿絵】
芍(しやく)
薬(やく)
《割書:かほ| よ| ぐさ》
桜草(さくらさう)
【左丁 下段挿絵】
錦葵(きんき)《割書:こあふひ》
葵(き)《割書: あふひ》
蜀葵(しよくき)
《割書:からあふひ》
【上段】
○芙蓉(ふよう)は葉(は)葵(あふひ)
のごとく花 紅白(こうはく)有
一重(ひとへ)千重(せんゑ)ありひと
ゑは木槿(もくげ)似(に)て大
なり清(きよ)く美(び)なり
七月花さく
○龍肝(りうたん)は花 桔梗(きやう)
の花の色(いろ)のごとく
葉(は)は笹(さゝ)のごとし
九月のすへ花さく
俗(そく)にりんだうといふ
○秋葵(しうき)は一名 黄蜀(くわうしよく)
葵(き)といふ又 側金盞(そくきんさん)
葉(は)とがりせばくきざ
あり秋うす黄(き)なる
花さく俗(ぞく)にとろゝ
○莠(はくさ)は稷(ひへ)に似(に)て
実(み)なし一名 狗尾(くび)
草(さう)と禾粟(あわ)の中(なか)に
生ず俗(ぞく)にゑのころ
草(ぐさ)といふ
○金銭花(きんせんくは)は午時(ごじ)
花(くは)ともいふ秋花さく
こい紅(べに)にてうるはし
一名 子午花(しごくは)
【挿絵】
芙蓉(ふよう)
龍肝(りうたん)
ゑやみぐさ
秋葵(しうき) かうそ
莠(いう) はくさ
金銭花(きんせんくは)
ごしくは
【右丁 上段】
○蘭(らん)は茎(くき)むら
さきに葉(は)みどり
なり水沢(すいたく)のほと
りに生ず花 黄(わう)
白(はく)にしてかうばし
蘭(らん)は品類(ひんるい)多(おほ)し
○風蘭(ふうらん)は一名を
桂蘭(けいらん)とも吊蘭(てうらん)
ともいふ此 類(るい)に
岩蘭(いはらん)岩石蘭(がんぜきらん)
なといふあり
【左丁 上段】
○鶏冠(けいくわん)は葉(は)莧(ひゆ)
に似(に)て少(すこ)し長(なが)
く茎(くき)赤(あか)し花は
赤(あか)黄(き)又は交(まじ)り有
六七月花さき霜(さう)
後(ご)まであり鶏頭(けいとう)
花(げ)とも書(かく)なり
○秋海棠(しうかいどう)は秋
花さくうす紅色(べにいろ)也
茎(くき)葉(は)ともに少(すこ)し
あかみあり
【右丁 下段挿絵】
蘭(らん)《割書:ふじ| ばかま》
風蘭(ふうらん)
【左丁 下段挿絵】
秋海棠(しうかいだう)【右から横書き】
鶏冠(けいくわん)《割書: |けいとうげ》
【右丁 上段】
○剪秋羅(せんをうけ)は花(はな)
石竹(せきちく)のごとく朱(しゆ)
色(いろ)にて美(び)なり
六月花 咲(さく)ふし
黒(ぐろ)といふも此 類(たぐひ)也
○剪春羅(がんひ)は花
の色(いろ)せんをうより
薄(うす)く黄みあり
○薏苡(ずゞた[ま])は子 白(しろ)と
黒(くろ)有 薏苡子(よくいし)と
いふ五膈(ごかく)を治(ぢ)す
【左丁 上段】
○百合(ゆり)は品類(ひんるい)多(おほ)し
此花三月 末(まつ)より咲(さく)
紅うす紅あり
○巻丹(おにゆり)は六七月に
花さく大にして黄(き)
赤(あか)し五六尺もたち
のびて花多くさく
葉の間にくろき実(み)
を生す一名 番山丹(ばんさんたん)
○山丹(ひめゆり)は四月 初(はじめ)に
花さく小(ちいさ)くして赤(あか)
白有赤は極(こく)朱(しゆ)也
うるはし渥丹(をくたん)同
此外(このほか)類(るい)多くあり
【右丁 下段挿絵】
剪秋羅(せんしうら) せんをうげ
剪(せん)
春(しゆん)
羅(ら)《割書: |がんひ》
薏苡(よくい)《割書:ずゞ| だま》
【左丁 下段挿絵】
百合(ひやくかう)《割書:ゆり》
巻丹(けんたん)
《割書:おに| ゆり》
山丹(さんたん)
《割書:ひめ| ゆり》
【上段】
○他偷(えびね)は四月の
末(すへ)より花さく其(その)
品(しな)多し花 黄(き)なる
あり紫(むらさき)有花色に
種々(しゅ〴〵)かはり有又秋
さく花もあり
○麗春(びしんさう)は三月に
花さく一重(ひとへ)は本紅(ほんへに)也
千重(せんゑ)は紅にしてつま
白し一名 仙女蕎(せんぢよけう)
又 御仙花(ぎよせんくは)といふ
○金盞花(きんさんくは)は花
のかたち盞(さかづき)の如(ごと)
し色(いろ)赤(あか)し三月
花さく今(いま)誤(あやま)りて
金銭花(きんせんくは)といふ金
銭花は別種(べつしゆ)なり
○春菊(かうらいぎく)は花 白(しろ)く
にほひ黄(き)なり三
月花さく蒿菜(かうさい)
花(くは)といふはだへの
時(とき)食(しよく)す
【挿絵】
他偷(たゆ) ゑびね
麗春(れいしゆん) びじんさう
金盞花(きんさんくは)
きんせんくは
春菊(しゆんきく)
かうらいぎく
【上段】
○蒲公英(たんほゝ)は花
白き大(おゝい)なり黄(き)成(なる)
は小(しやう)なり二三月に
花さく葉(は)をとり
て食(しよく)す
○菫菜(すみれ)は一名 箭(せん)
頭草(とうさう)と云すも
とりぐさなり花紫
白花(はくくは)又うす紫(むらさき)の
もの葉(は)丸(まる)く小(しやう)也
○虎杖(いたどり)は月水(くわつすい)を
通利(つうり)し瘀血(おけつ)を破(やぶ)る
渇(かつ)をやめ小便(しやうべん)を利(り)し
腹はり満(みつ)るを治(ち)す
○萱草(わすれぐさ)は花
巻丹(おにゆり)のごとく黄(き)
赤(あか)く初夏(しよか)に咲(さく)
春(はる)若葉(わかば)を取(とり)て
食(しよく)す水気(すいき)乳(にゆう)よ
うはれ痛(いたみ)を治(ぢ)す
食(しよく)を消(せう)すこのん
でくらば悦(よろこび)てうれ
ひなし花 千重(せんゑ)
のものは毒(どく)ありあや
まりて喰(くら)ふべからず
○酢漿(かたばみ)は一名 酸(さん)
草(さう)といふ俗(ぞく)に云
すいものぐさ
【挿絵】
蒲公英(ほこうゑい)
たんほゝ
菫菜(きんさい)
すみれ
虎杖(こぢやう)
いたどり
かたばみ
酢漿(さしやう)
わすれぐさ
萱草(くわんざう)
【上段】
○射干(からすあふぎ)はひあふぎ
ともいふ葉(は)のかたち
檜扇(ひあふぎ)に似(に)たり花は
黄赤(きあか)し五六月花
さく烏扇(うせん)烏翣(うさう)
ならびに同
○蝴蝶花(こちうくは)は射干(からすあふぎ)
の類(るい)なり三月白き
花 咲(さく)黄(き)み中(なか)にあり
俗(ぞく)にやぶらんといふ
しやがは射干(しやかん)の音(おん)
を誤(あやまり)しものなりと
○夏枯草(かこさう)は野(の)に
多(おほ)し薄紫(うすむらさきの)花 咲(さく)
○鴟尾(いちはつ)は葉(は)は射(からす)
干(あふぎ)ににたり花は
むらさきなり花
を紫羅傘(しらさん)と
いふ四月花さく
○馬藺(ばりん)は沢辺(たくへん)
に生(しやう)ず気(き)くさし
花はあやめににて
細(ほそ)し色もうすし
馬棟(ばれん)ともいふ夏(なつ)
の初(はじめ)に花さく
【挿絵】
射干(しやかん) からすあふぎ
蝴蝶花(こてうくは) しやが
夏枯草(かこさう) うつほくさ
鴟尾(しひ) いちはつ
鴨脚花(わうきやくくは)
馬藺(ばりん)
【上段】
○杜若(かきつばた)は水中(すいちう)に
生(しやう)ず花大にして
色(いろ)桔梗(ききやう)の花の色
にてうるはし夏(なつ)
のはじめに花さく
○菖蒲(あやめ)は花 杜(かき)
若(つばた)に似(に)て小(ちい)さく
葉(は)も細(ほそ)し又 菖(しやう)
蒲(ふ)と云は別種(べつしゆ)也
花なし又花菖
蒲と云物 一種(いつしゆ)有
○様錦(もみぢぐさ)は六七月
葉(は)紅(くれなゐ)なり黄緑(きみどり)
色(いろ)をかぬるを十様(しうやう)
錦(きん)といふ又 雁(かん)来(きたつ)て
紅(くれない)なるを雁来紅(けんらいこう)
といふ俗(ぞく)に葉鶏頭(はげいとう)
といふなり
○桔梗(ききやう)は花 紫(むらさき)有
白あり一重(ひとへ)有かさ
ね有六月にひらく
又 梗草(かうさう)となづく
【挿絵】
杜若
かきつばた
菖蒲(しやうぶ)
あやめ
様錦(やうきん)
もみぢぐさ
桔梗(けつかう)
ききやう
【上段】
○烏頭(とりかぶと)は花きゝ
やうの花の色(いろ)なり
かたち烏(からす)の頭(かしら)の如(ごと)
し亦とりかぶと
のかたちに似(に)たり
九月花さく
○鳳仙花(ほうせんくは)は花 紅(こう)
白(はく)あり七月はな
さく又 金鳳花(きんほうくは)と
いふ花に 黄(くわう)紫(し)碧(へき)
ありと
○番椒(たうがらし)はせんき
を治(ぢ)し虫(むし)をこ
ろす人にどく也
○丈菊(てんがいばな)は一名は迎(けい)
陽花(やうくは)といふ日輪(にちりん)
にむかふ花なりよ
つて日車(ひぐるま)とも云
花 菊(きく)に似(に)て大(おゝい)也
色(いろ)黄(き)又 白(しろ)きも
あり
○杜蘅(とかう)は葉(は)は馬(ば)
蹄(てい)に似(に)たり紫(むらさき)
の花 咲(さく)馬蹄(ばてい)香(かう)
土(ど)細辛(さいしん)といふ
【挿絵】
烏頭(うづ)
とりかぶと
鳳仙花(ほうせんくは)
番椒(ばんせう) たうがらし
丈菊(じやうきく) てんがいばな
杜蘅(とかう) つぶねぐさ
【上段】
○薔薇(しやうび)は花 紅白(こうはく)
黄(き)薄紅(うすべに)有 千重(せんゑ)の
ものを牡丹(ぼたん)いばら
といひ一重(ひとへ)なるを蕀(いばら)
薔薇(しやうび)と云一名 月々(げつ〳〵)
紅(こう)又 長春(ちやうしゆん)ともいふ
○慎火(いはれんげ)は一名 景天(けいてん)
又は戒火(かいくは)ともいふ小(しやう)
なるを仏甲草(ぶつかうさう)と
いふなり
○苔蘚(こけせん)同 水(みづ)に有
を陟釐(ちよくり)と云 石(いし)に生(はゆ)
るを石濡(せきしゆ)瓦(かはら)に有
を屋游(をくいう)墻(かき)を垣衣(ゑんい)と云
○酸漿(さんしやう)は五月に
白き花 咲(さき)実(み)赤(あか)
くとうろうのごとし
よつて金灯篭(きんとうろう)と云
○旋覆(をぐるま)は葉(は)長(なが)み
有花は黄(き)にして
菊(きく)ににたり六月に
花さく又九月にむ
らさきの花さくを
紫苑(しをん)といふ是(これ)は
見事(みごと)成(なる)花なり
【挿絵】
薔薇(しやうび)
いばらしやうび
慎火(しんくは) いはれんげ
仏甲草(ぶつかうさう)
苔(たい) こけ
酸漿(さんしやう) ほうつき
旋覆(せんふく)
をぐるま
【上段】
○藤(ふぢ)は三月の末(すへ)
に花さく色(いろ)紫(むらさき)は
おそく花の長(たけ)三
四尺に及(およ)ぶ白花(はくくは)は
早(はや)くさきて短(みじか)し
一名 招豆藤(せうづとう)
○石斛(せきこく)は石上(せきじやう)に
生ず胃(ゐ)の気(き)を
平(たいらか)にし皮膚(ひふ)
の邪熱(じやねつ)をさる一
名 石蓫(せきちく)
○棣棠(やまぶき)は花黄にし
て一重(ひとへ)有 八重(やゑ)有
三月花さくあるひ
は地棠花(ぢたうくは)となつく
○巻栢(いはひば)は一名を地(ち)
栢(はく)と云 石間(せきかん)に生(しやう)す
生(しやう)にて用(もちゆ)れば血(ち)
を破(やぶり)炙(あぶ)れは血(ち)を止(とむ)
○玉栢(まんねんぐさ)は一名 万年(まんねん)
松(せう)とも云 長(なが)きを石(せき)
松(せう)又 玉遂(ぎよくすい)ともいふ
【挿絵】
藤(とう) ふじ
石斛(せきこく) いはくすり
棣棠(ていたう) やまぶき
巻栢(けんはく) いはひば
玉栢(ぎよくはく)
まんねんぐさ
【上段】
○葦(あし)は水辺(すいへん)に
生(しやう)ずいまた秀(ひいで)ざ
るを芦(ろ)といひ長(ちやう)
生(せい)するを葦(い)と云
葉(は)は竹(たけ)に似(に)て花
は荻(おぎ)のごとし
○蓮(はちす)は花 紅白(こうはく)有
葉(は)を荷(か)といひ根(ね)
を藕(くう)といひ花を
芙蓉(ふよう)といひ実(み)を
蓮菂(れんてき)といふ
○菖(しやう)は一寸九 節(せつ)
なるものを菖(しやう)
蒲(ぶ)と名付(なつく)冬至(とうじ)
の後(のち)五十七日にし
てはじめて生(しやう)ず
○菰(まこも)は水辺(すいへん)に生(しやう)
ず菖(あやめ)にゝたり一名
茭草(かうさう)又 蒋草(しやうさう)ト云
○蒲(がま)は水辺(すいへん)に生
す筵(むしろ)に織(をる)べし蒲(ほ)
槌(つい)がまほこ花上(くはじやう)の
黄粉(くわうふん)を蒲黄(ほくわう)と云
○萍(うきくさ)は水上(すいじやう)にあり
て根(ね)なし血色(けつしよく)の如(ごと)
【挿絵】
葦(い) あし
蓮(れん) はちす
菖蒲(しやうぶ)
萍(へい) うきくさ
菰(こ) まこも
蒲(ほ) がま
【上段】
くなるを紫萍(しへい)ト云
○薛(すげ)は水辺(すいへん)に生ず
香附子(かうぶし)の苗(なへ)ににたり
一名 莎白薹(さはくたい)
○藺(ゐ)は沢地(たくち)に生ず
茎(くき)円(まとか)に細(ほそ)く長(なが)し
痳病(りんびやう)に煎(せん)じ用(もち)ゆ
○芡(みづぶき)は中(うち)を補(おぎな)ひ気(きを)
ます多(おほ)く喰(くらへ)は風(ふう)
気(き)をうごかす実(み)
を芡実(けんじつ)といふ
○藎(かりやす)は九月十月に
とる緑色(みとりいろ)也 絹(きぬ)を染(そむ)
一名 黄草(わうさう)菉竹(りよくちく)王芻(わうすう)
○莕(あさゝ)は水底(すいてい)に生す
茎(くき)は釵(かんざし)のごとし上 青(あをく)
く下白し花(はな)黄(き)に
葉(は)紫(むらさき)にまるし荇(かう)
おなじ
○葒(けたで)は茎(くき)ふとく毛(け)
あり葉(は)に赤(あか)みあり
実(み)□大きなり
○蘇(しそ)はくき方(かた)にし
て葉(は)まるく歯(は)有
色(いろ)紫(むらさき)なり桂荏(けいしん)同
実(み)も葉(は)も薬種(やくしゆ)
にもちゆ
○蓼(たで)はくわくらんを
やめ水気(すいき)面(おもて)うそばれ
たるを治(ぢ)し目(め)を明(あきらか)にす
○萹蓄(うしぐさ)は三月に
ちいさき赤(あか)き花を
生(しやう)ず和名(わみやう)にわやな
き扁竹(へんちく)同
【挿絵】
薛(せつ) すげ
莕(きやう) あさゝ
藺(りん) ゐ
芡(けん) みづぶき
藎(じん) かりやす
萹蓄(へんちく) うしぐさ
葒(こう)
けたで
蘇(そ)
のらえ
しそ
蓼(れう) たで
水蓼(すいれう) いぬたで
【上段】
○菊(きく)は百種あり
花も数品(すひん)あり頭(づ)
痛(つう)目(め)を明(あき)らかに
し年(とし)をのぶると
いへり薬(くすり)には黄色(きいろ)
なる菊(きく)に一 種(くせ)あり
○莣(おばな)は茅(ちがや)にゝたり
皮(かわ)は縄(なわ)又は履(くつ)につ
くるなり大を石芒(せきばう)
小を芭芒(はばう)といふ
○荏(え)は白蘇(はくそ)とも
いふ山野(さんや)に多(おほ)く
生(しやう)ず油(あぶら)おほし
えのあぶらといふ
○牽牛(あさがほ)は葉(は)三
尖(とがり)あり花はむらさ
き白はむかしより
有 近頃(ちかごろ)新花(しんくは)出
て紅(べに)絞(しほり)飛入(とびいり)花(くは)形(きやう)
も品々(しな〳〵)あり
○鼓子(ひるがほ)は花のかた
ち軍中(ぐんちう)に吹(ふく)鼓子(くし)
のごとし故(ゆへ)に鼓子(くし)
花といふ又 旋葍(せんふく)
花(くは)ともいふ
○蒴藋(そくづ)は枝(えだ)ことに
五 葉(よう)花白く実(み)
青(あを)く緑豆(ふんどう)のことし
痛(いたみ)所(しょ)に葉(は)を付
煎(せん)じ洗(あら)ふてよし
一名 接骨草(せつこつさう)
【挿絵】
女節(ちよせつ)花
菊(きく)
かわらよもぎ
莣(はう)
おばな
すゝき
荏(じん)
え
はくそ
鼓子(くし)
ひるがほ
牽牛(けんご)
あさがほ
蒴藋(さくてき)
そくつ
【上段】
○水仙花(すいせんくは)は冬(ふゆ)の
初(はじめ)より花ひらき
初春(しよしゆん)まで花有
かたち酒盃(しゆはい)の如く
黄(き)なる物有花び
らは白しよつて金(きん)
盞(さん)銀台(きんだい)といふ
葉(は)は石蒜(せきさん)にゝたり
○麦門冬(せうがひけ)は四月
にうすむらさきの
花ひらく実(み)緑(みとり)に
して珠(たま)のごとく丸(まる)
し秋(あき)の頃(ころ)みのる此
根(ね)を薬(くすり)に用(もち)ゆ
○瞿麦(なでしこ)は花の色(いろ)
薄紫(うすむらさき)六月にさく
河原(かはら)に多(おほ)し近(ちか)
頃(ごろ)は新花(しんくは)あり色
も品々(しな〳〵)あり
○石竹(せきちく)は撫子(なでしこ)によく
似(に)て花 紅白(こうはく)又は絞(しほり)
など種々(しゆ〳〵)あり又六
月に花さく一重(ひとへ)千(せん)
重(ゑ)あり
○玉簪(ぎぼうし)は葉(は)大なり
秋花さく色うす紫(むらさき)
数品(すひん)ありて色もかは
れり一名 白鶴仙(はくくわくせん)
【挿絵】
水仙花(すいせんくは)
麦門冬(ばくもんう)
せうがひけ
瞿麦(くばく) なでしこ
石竹(せきちく)
玉簪(ぎよくさん)
ぎぼうし
【上段】
○蒼朮(さうじゆつ)は花うす
赤(あか)し脾(ひ)をすこやか
にし湿(しつ)をかわかし中(うち)
をゆるくす山薊(さんけい)と
もいふ花白きは白朮(ひやくしゆつ)也
○木賊(もくぞく)は目(め)のかすみ
を退(しりぞけ)積塊(しやくくわい)を消(せう)す
和名(わみやう)とくさ板(いた)など
おろし磨(みがく)に用(もち)ゆ
○山葱(さんさう)は一名を隔(かく)
葱(さう)とも又 鹿耳(ろくに)
葱(さう)ともいふ俗(ぞく)に
いふぎやうしやにん
にくなり
○石荷(ゆきのした)は一名 虎耳(こし)
草(さう)といふ水湿(すいしつ)の地(ち)
に生す五月花 咲(さく)
○馬勃(ばぼつ)は湿地(しつち)くち
木のうへなとに生
ずのどのいたみを
治(ぢ)す灰菰(くわいこ)牛尿(ぎうし)
菰(こ)となつく
○石韋(ひとつば)は湿地(しつち)に
生ず葉(は)大にして
かたく皮(かわ)のごとし枝(えた)
なく一 葉(よう)づゝ生ず
労熱(らうねつ)邪気(じやき)をつかさ
とり痳病(りんびやう)を治(ぢ)す
○螺厴(まめづる)は一名 鏡面(きやうめん)
草(さう)といふ石上に生す
かゞみぐさ又 豆(まめ)ごけ
【挿絵】
蒼朮(さうじゆつ)
おけら
木賊(もくぞく)
とくさ
山葱(さんさう)
きやうじやにんにく
馬勃(ばほつ) おにふすべ
石荷(せきか) ゆきのした
石韋(せきい) ひとつば
螺厴(らゑん) まめづる
【上段】
○芭蕉(ばせを)は葉(は)落(おち)
ず一 葉(よう)のふる時は
一 葉(よう)焦(こがる)よつてこ
れを芭蕉(ばせを)といふ
○苧皮(まをかわ)をはぎて
布(ぬの)を織(をる)さらし布(ぬの)は
これなり紵(ちよ)同から
うしともいふ
○艾(よもぎ)は春(はる)苗(なへ)を生し
秋 小(ちいさ)き花さく艾(かい)
蒿(かう)なり又 蓬蒿(はうかう)
といふ
○薢(かい)は腰(こし)背(せなか)いた
みこはりたるを治(ぢ)し
腎(じん)をおぎなひ筋(すぢ)
をかたくし精(せい)を
まし目(め)を明(あきらか)にす
○華鬘草(けまんそう)はは
なのかたちけまんの
かざりによく似(に)たり
薄紅色(うすべにいろ)なり三月
花さく
○鼠麹(はゝこくさ)は小(ちいさ)く黄(き)な
る花さく鼠(ねずみ)の耳(みみ)
の毛(け)のことくなる実(み)を
生す又 鼠耳草(そじさう)と
もいふ
○羊蹄(きし〳〵)は一名 禿(とつ)
菜(さい)とも又 牛舌菜(ぎうぜつさい)
ともいふ実(み)を金蕎(きんけう)
麦(ばく)といふ
【挿絵】
芭蕉(はせを)
薢(かい)
ところ
苧(ちよ) まを
艾(がい) よもぎ
華鬘(けまん)
鼠麹(そきく)
はゝこぐさ
羊蹄(ようてい) ぎし〳〵
【上段】
○陵苕(のうせんかつら)は木(き)にま
とふ夏(なつ)より秋まて
花 咲(さく)色(いろ)赤(あか)し又
陵霄花(れうせうくは)といふ
○藍(あひ)は葉(は)蓼(たで)に
似(に)て大(おほい)なりいぬた
での如(ごと)く葉(は)の中(なか)に
黒(くろ)きてん有五六月に
紅(くれない)の花さく葉を
染色(そめいろ)にもちゆ
○茜(あかね)はあかき色(いろ)を
そむる草(くさ)なり一
名 地血(ぢけつ)といふ又 染(せん)
緋草(ひさう)ともいふ
○山薑(いぬはじかみ)は葉(は)姜(はじかみ)に
似(に)て花あかし子(こ)は
草豆蔲(さうづく)にゝてね
は杜若(かきつばた)にゝたり一名
美草(びさう)
○沢漆(たうだいくさ)は葉(は)馬歯(すべり)
莧(ひゆ)に似(に)たり円(まとか)にし
てみどり青(あを)き花
さく毒草(どくさう)なり
○蓖麻(たうごま)は葉(は)瓢(ひさご)の
葉(は)のごとく中(うち)空(むなしう)
して五また有 秋(あき)
花さき実(み)をむす
ぶ実(み)に刺(はり)あり
【挿絵】
藍(らん)
あひ
陵苕(れうてう)
のうぜんかづら
茜(せん) あかね
山薑(さんきやう)
いぬはじかみ
沢漆(たくしつ)
たうだいぐさ
蓖麻(ひま)
たうごま
【上段】
○蒼耳(をなもみ)は葉(は)茄子(なすび)
のごとし風湿(ふうしつ)づつう
気(き)をまし目(め)を明(あきらか)
にししびれを治(ぢ)す
○車前(おほばこ)はながきほ
を出す七八月の比(ころ)
実(み)をとる芣苡(ふい)牛(ぎう)
舌(せつ)同
○龍芮(うしのひたい)は四五月に
黄(き)なる花さき実(み)
をむすぶ大さ豆(まめ)の
ごとし一名 地椹(ぢしん)
○防風(ばうふう)は正月に
葉(は)を生(しやう)じ五月
に黄(き)なる花さき
六月にくろき実(み)を
むすぶ
○紅花(こうくは)は血(ち)をやぶ
り瘀血(をけつ)のいたみを
とめ大べんを通(つう)ず
花をとりて紅(へに)とす
○積雪(かきどをし)は本名(ほんみやう)つぼ
くさといふ葉(は)まるく
して銭(ぜに)のごとくつる
なり連銭草(れんぜんさう)胡(こ)
薄荷(はつか)並同
○苦参(くらゝ)は葉(は)槐(えんじゆ)に似(に)
たり花 黄色(きいろ)にして
実(み)はさや有 根(ね)甚(はなは)だ
にがし水槐(すいくはい)地槐(ぢくはい)同
○蛇牀(じやしやう)は気(き)をくだし
中(うち)をあたゝめ瘀(を)を
おい風をさる虺牀(きしやう)
蛇栗(じやりつ)同
【挿絵】
車前(しやぜん) おほばこ
蒼耳(さうふ) をなもみ
龍芮(りうぜい) うしのひたい
防風(ばうふう) はまにがな
苗(なへ)を珊瑚菜(さんごさい)といふ
紅花(こうくは) べにのはな
積雪(しやくせつ)
かきどをし
苦参(くじん)
くらゝ
蛇牀(じやしやう)
ひるむしろ
【上段】
○鼠莽(しきみ)は実(み)は天(また)
蓼(たび)の実(み)のごとし
毒(どく)あり
○葛(くず)は粉(こ)は渇(かつ)を止(やめ)
ゑづきをとめ胃(ゐ)を
ひらき酒(しゆ)どくを解(げ)
し大小 便(べん)を利(り)し
熱(ねつ)をさる
○紫草(しさう)は九竅(きうけう)を
つうじ水(みづ)を利(り)しは
れを消(せう)すほうさ
うによし一名 芘(し)
䓞(れい)といふ
○鴨跖(かうせき)は野外(やぐはい)に生
ず花あをし
碧蝉花(へきせんくは)笪竹花
並同
○南星(なんせう)は風疾(ふうしつ)を治(ぢ)
し身(み)をやぶりこわ
ばりたるによし又 虎(こ)
掌(しやう)鬼蒟蒻(きくにやく)といふ
○防已(ばうい)は風湿(ふうしつ)脚気(かつけ)
の痛(いたみ)を治(ぢ)し癰(よう)はれ
痛(いたむ)を治(ぢ)す解離(かいり)共云
○牛膝(ごしつ)湿(しつ)にてしびれ
なへ腰(こし)脚(あし)いたむを治(ぢ)す
山 莧菜(けんさい)対節菜(たいせつさい)
となづく
○水莨(たからし)はおこりに此
葉(は)を寸口(すんこう)に付れはお
つるなり大毒(だいどく)あり
○絡石(ていかかづら)は葉(は)橘(たちばな)の如(ごと)
く花白く実(み)くろし
石をまとふ
【挿絵】
しきみ
鼠莽(そまう)
葛(かつ) くず
紫草(しさう)
むらさき
鴨跖(かうせき) ついくさ
天南星(てんなんせう)
おほそみ
絡石(らくせき)
ていかかづら
防已(ばうい) つゞらふぢ
牛膝(ごしつ) ゐのこづち
水莨(すいらう) たからし
【上段】
○茴香(ういきやう)は疝気(せんき)を
のぞき腰(こし)はらのい
たみをやめ胃(ゐ)を
あたゝむ蘹香(くわいかう)同
○𦻎薟(めなもみ)は花 黄(き)
白なり一さいの毒(どく)
虫(むし)のさしたるに此
葉(は)をもみて汁(しる)を
付てよし
○天茄(こなすび)は一名 龍葵(りうき)
といふ葉(は)茄(なすび)ににて
小なり五月のすへ
小(ちいさ)き白花をひら
き小(ちいさ)き青(あを)き実(み)のる
○蒿(かう)は青蒿(せいかう)又 蓬(ほう)
蒿(かう)といふ藾蕭萩
同邪気を払う
○𦯇蔚(じゆうい)は益母草(やくもさう)
といふ湿地(しつち)に生ず
○茵蔯(ゐんちん)は葉(は)のう
ら白くまた有九
月にほそき黄(き)な
る花さく
○玄及(げんきう)は実(み)を五
味子(みし)といふ枝(えだ)を切(きり)
水につけ置(をけ)はね
ばり出る油(あぶら)のかはり
に髪(かみ)に付る
○地膚(ちふ)は若葉(わかば)をく
らふ落帚(らくしう)独帚(とくしう)同じ
此木(このき)を帚(はうき)とす
【挿絵】
茴香(ういきやう)
くれのおも
𦻎薟(きけん)
めなもみ
天茄(てんか) こなすび
青蒿(せいかう) かはらよもぎ
𦯇蔚(じやうい) めはしき
玄及(げんきう)
さねかつら
茵蔯(ゐんちん) かはらよもぎ
地膚(ちふ) はゝきゞ
【上段】
○忍冬(にんとう)は木にま
とふ葉(は)青(あを)く毛(け)有
三四月花さく初(はじめ)は白(しろ)
く後(のち)に黄(き)なり以為(よって)
金銀花(きん〴〵くは)といふ
○茅(ばう)は水をくたし血(ち)
を破(やぶ)り小 腸(ちう)をつうじ
消渇(せうかつ)鼻血(はなぢ)下血(げけつ)を
治(ぢ)す又 荑(てい)といふ
○萍蓬(かうほね)は水沢(すいたく)に
生す葉(は)慈姑(おもだか)に
にたり水栗(すいりつ)骨(こつ)
蓬(はう)同
○藻(も)は水に有 葉(は)
大なるは馬藻(ばさう)葉(は)の
ほそきは水蕰(すいうん)とす
馬尾藻(ばびさう)ほだはら
○菝葜(えびついばら)は山野(さんや)に
多(おほ)し茎(くき)かたくし
て刺(はり)あり葉(は)丸(まる)く
大(おゝい)にして馬(むま)の蹄(ひつめ)
のごとし秋あかき
実(み)のる
○萩(はぎ)は郊野(かうや)に生
ずるを野萩(のはぎ)と云
葉(は)さきとがり花 小(ちいさ)
き也 宮城野(みやぎの)といふは
花 紅白(こうはく)有て大(おゝい)なり
【挿絵】
忍冬(にんどう) すいかづら
茅(ばう) 菅茅(くわんはう) かや
白茅(はくばう)
つばな
藻(さう) も
萍蓬(ついはう) かうほね
萩(しう) はぎ
菝葜(はつかつ)
えびついばら
【上段】
○建蘭(けんらん)は今いふ
白蘭(はくらん)なり一に
蕙花(けいくは)ともいふ又
鉄脚蘭(てつきやくらん)ともいふ
○金燈(きつねのかみそり)は石蒜(せきさん)
といふしびとばな也
一名 鬼燈檠(きとうけい)又
蔓殊沙花(まんじゆしやけ)とも
いふ秋の末(すへ)赤(あか)き
花さく茎(くき)は矢(や)から
の如しよつて一枝箭(いつしせん)
○石帆(うみまつ)は石上(せきじやう)に生(しやう)ず
○茎(くき)はくきなり
𦼮(かん)【草冠+幹】同 茎(き)の衣(ころも)を
苞(はう)といふはかま也
草根(くさのね)を荄(かい)といふく
さのねなり
○薹(たい)はふき萵(ちさ)な
どのたうなり葶(てい)
同
○葩(は)ははなびらなり
花片(くはへん)花弁(くはべん)並同
【挿絵】
建蘭(けんらん)
しうくき
金燈(きんとう)
きつねのかみそり
茎(きやう)
くき
石帆(せきはん)
うみまつ
葩(は)
はなびら
薹(たい) たう
【上段】
○蔓(まん)はつるなり
木(き)の本(もと)を藤(ふぢ)といふ
草(くさ)の本(もと)を蔓(つる)と云
○苞(はう)はつぼみなり
蓓蕾(ばいらい)同
○蕋(ずい)は花のしべ
なり蕊(ずい)蘃(ずい)な
らひに同又 花心(くはしん)
ともいふ
○萼(がく)ははなぶさ
なり花蔕(くはたい)花(くは)
柎(ふ)ならびに同
【挿絵】
蔓(まん)
つる
苞(はう) つぼみ
萼(かく) はなぶさ
蕋(ずい) しべ
【手書き】
拾冊之内
【裏表紙】
【表紙】
人物【赤字 手書き】
【題簽】
《題:《割書:増補|頭書》訓蒙図彙大成 三》
【右丁】
【表紙見返し】
拾冊之内【手書き】
【左丁】
《題:頭書増訓蒙補図彙(かしらがきぞうほきんもうづゐ)巻(くはん)之四》
人物(じんぶつ)《割書:此部(このぶ)には士農工商(しのうこうしやう)そのほか異朝(ゐてう)の国(こく)|俗(ぞく)すべて一さいの人類(じんるい)をあつむるなり》
【右丁上段】
○公(こう)は三公(さんこう)なり
太政大臣(だいじやうだいじん)左大臣(さだいじん)
右大臣(うだいじん)を三公(さんこう)といふ
内大臣(ないだいじん)ともに公(こう)なり
唐名(からな)は大師(だいし)大傅(だいふ)大(たい)
保(ほ)といふ補【▢囲み】図(づ)する処(ところ)は
束帯(そくたい)の図(づ)なり束(そく)
帯(たい)には帯剣(たいけん)なり是(これ)
公卿(くぎやう)ともに式礼(しきれい)の
服(ふく)なりくつも靴(くわのくつ)を
めさるゝなり
【左丁下段 挿絵】
公(こう)《割書:きみ》
【右丁上段】
○卿(けい)は公卿(くぎやう)なり
大納言(だいなごん)中納言(ちうなごん)三(さん)
位(み)以上(いじやう)を公卿(くきやう)と云
又 月卿(げつけい)ともいふ
天子(てんし)に付(つき)そひ給ふ
故(ゆへ)の名也補【囗囲み】三位 以(い)
下(げ)を殿上人(てんしやうびと)といふ
図(つ)する処(ところ)は衣冠(いくわん)
のていなり是(これ)常(つね)
の服(ふく)にて裾(きよ)なく
下はさし貫(ぬき)なり
束帯(そくたい)はさしこなり
装束(しやうぞく)の色(いろ)は四 位(ゐ)以
上は黒(くろ)五 位(ゐ)は赤(あか)六
位は青色(あをいろ)なり
【左丁上段】
○士(し)は (補)さふらひ也
学文(がくもん)して
位(くらゐ)にあるを
学士(がくし)といふ (補)又
文官(ぶんぐはん)とも
いふなり剣(けん)を
帯(たい)し甲冑(かつちう)を
着(ちやく)するを
武士(ぶし)といひ (補)これ
を武官(ぶくはん)と称(しやう)ず
四民(しみん)といふは
士(さふらひ)農人(のうにん)工(しよくにん)【「人」脱ヵ】
商人(あきひと)なり
すべては万民(ばんみん)とは
いふなり
【右丁下段挿絵】
卿(けい)
《割書:きみ》
【左丁下段挿絵】
士(し)
《割書:さふ| らい》
【右丁上段】
○女(をんな)はいまだ
嫁(よめいり)せさるを
女(ぢよ)といひ
すでに嫁(よめいり)
したるを婦(ふ)
といふ嫁(よめいり)しても
父母(ふぼ)よんで
女(むすめ)といふ
○婆(ば)は嫗(をう)媼(おう)
ならひに同じ
とりあけうばは
穏婆(をんば)
とも
早婆(さうは)とも
いふなり
【左丁上段】
○嬰(ゑい)は人(ひと)始(はじめ)てむまる
るを嬰児(ゑいじ)といふ胸(むね)の
前(まへ)を嬰といふこれを
嬰前(ゑいぜん)にかゝへて乳養(にうよう)
す故(ゆへ)に嬰といふ又女を
嬰(ゑい)と云 男(おとこ)を兒(じ)と云
○童(どう)は男(おとこ)十五 以下(いか)を
童子(どうじ)といふ童(とう)は独(どく)
なり言(いふこゝろ)はいまだ室家(しつか)
あらざるなり鬣子(うないこ)
総角(あげまき)みな童子(どうじ)の
事なり
○翁(おう)は長老(ちやうらう)の称(しやう)也
又人の父(ちゝ)を称(しやう)じて
翁(おう)といふ叟(そう)【「おきな」左ルビ】同
【右丁下段挿絵】
婆(ば)
《割書:うば》
女(ぢよ)《割書:をんな|むすめ》
【左丁下段挿絵】
童(どう)《割書:わら| はべ》
嬰(ゑい)《割書:みどり| こ》
翁(おう)《割書: |おきな》
【右丁上段】
○兵(へい)は武具(ぶぐ)の
惣名(さうみやう)なり
今(いま)甲冑(かつちう)を
帯(たい)する武士(ぶし)
を兵(へい)といひ
ならはせり
戎(つはもの)同し
(補)頭(かしら)たる者(もの)を
将(しやう)といひ従者(じうしや)
を士卒(しそつ)と
いふ又 軍士(ぐんし)
軍兵(ぐんべう)など
いふなり
軍勢(ぐんぜい)は士卒(しそつ)の
惣名(さうみやう)なり
【左丁上段】
○農(のう)は厲山氏(れいさんし)子(こ)
あり農(のう)と
名(な)づく
百穀(ひやくこく)をうゆる
事(こと)を能(よく)す
よつて物(もの)を
作るものを農人(のうにん)
といふ又 神農(しんのう)
五穀(ごこく)を植(うゆ)
る事をおしへ
たまふよつて
農(のう)と名(な)
づくるとも
いふなり
【右丁下段挿絵】
兵(へい)
《割書:つはも| の》
【左丁下段挿絵】
農(のう)
《割書:もの| つくり》
【右丁上段】
○工(こう)は百工(ひやくこう)とて
もろ〳〵の
細工人(さいくにん)
の惣名(さうみやう)なり
工匠(こうしやう)ともいふ
木工(もくこう)は大工(だいく)なり
漆工(しつこう)は
塗師(ぬし)也
(補)其外(そのほか)指物(さしもの)
桧物(ひもの)ざいく
絹布(けんふ)織物(をりもの)るい
金物(かなもの)ざいく
すべて工(こう)といふ
是(これ)を職人(しよくにん)と
もいふ也
【左丁上段】
○商(しやう)はひさき人(びと)
又あきびと也
居(ゐ)ながら売(うる)を
賈(こ)といひもち
ゆきて
うるを商(しやう)といふ
商(しやう)と書(かく)べし
啇(しやう)とかくは
あやまりなり
商(しやう)賈(こ)通用(つうよう)す
/ (補)ともにあき
人の事なり
販(ひさく)といふは
売(うる)事
なり
【右丁下段挿絵】
工(こう)《割書:たくみ| だいく》
【左丁下段挿絵】
現銀かけねなし
賈(こ)
《割書:あき| びと》
商(しやう)
《割書:あき| びと》
呉服物太物類
【右丁上段】
○医(い)【醫】は病(やまひ)を治(ぢ)
するには酒(さけ)を
もつて薬(くすり)を製(せい)
すよつて酉(ゆふ)の字(じ)
に書(かく)と有 和朝(わてう)
いにしへは和気(わけ)
丹気(たんけ)といふ医家(いけ)
あり俗人(ぞくじん)なり
○卜(ぼく)は卜筮(ほくせい)なり
卜(ぼく)は赴(ふ)なり来(らい)
者(しや)の心(こゝろ)を赴(むかふる)なり
亀(かめ)を灼(やい)てうら
なふを卜灼(ぼくしやく)といふ
又 蓍(めど)をとりて
うらなふ
【左丁上段】
○膳夫(ぜんぶ)は腹部(かしはて)
ともいふなり
今いふ
料理人(れうりにん)なり
庖丁(はうてう)といふ人
能(よく)牛(うし)を
解(とく)事(こと)を得(え)たり
今その名(な)を
かつて
刃物(はもの)の名(な)とす
又 膳夫(ぜんぶ)の名(な)
として
庖丁人(はうてうにん)とは
いふ
なり
【右丁下段挿絵】
医(い)
《割書:くすし》
卜(ぼく)
《割書:うら| なひ》
【左丁下段挿絵】
膳夫(せんふ)《割書:かしはで|》
【右丁上段】
○画工(ぐわこう)は絵師(ゑし)
なり (補)唐(もろこし)には名(めい)
画(ぐわ)あまたありて
かぞふるにいとま
あらず日本(ひのもと)にて
は巨勢(こせ)の金岡(かなおか)
古法眼元信(こほうけんもとのぶ)又
雪舟(せつしう)などむかし
の名画(めいぐわ)なり中(ちう)
古(こ)は永徳(えいとく)探幽(たんゆう)
等(とう)その外(ほか)あまた
あれどもこれを
略(りやく)す土佐家(とさけ)は
禁裏(きんり)の御 絵所(ゑどころ)
なり
【左丁上段】
○祝(しく)は祭(まつる)に賛(さん)
詞(し)をつかさどる
者(もの)なりとあり
神前(しんぜん)にてのつ
とをあぐる神主(かんぬし)
なり (補)又 神職(しんしよく)
ともいふあるひは
祢宜(ねぎ)ともいふ
○巫(ふ)は女(をんな)の神(かみ)に
つかゆるもの也
巫(ふ)は神(かん)をよろこば
しむるものなり
ともあり (補)按(あん)する
に神楽(かぐら)みこ
なるへ
し
【右丁下段挿絵】
画(ぐわ)
工(こう)
《割書:ゑし》
【左丁下段挿絵】
《割書:かんぬ| し》
祝(しく)
《割書:はふ| り》
巫(ふ)《割書:かん| なぎ》
《割書:み| こ》
【右丁上段】
○僧(そう)は浮図(ふと)の
教(をしへ)にしたがふ者(もの)
なり沙弥(しやみ)沙(しや)
門(もん)桑門(さうもん)比丘(びく)苾(ひつ)
芻(すう)ともいふなり
又 僧正(そうじやう)僧都(そうづ)上(しやう)
人(にん)和尚(おしやう)長老(ちやうらう)など
(補)は僧官(そうぐわん)【注】なり国師(こくし)
大師号(だいしがう)あり
○尼(じ)は女僧(ぢよそう)なり
比丘尼(びくに)なり仏(ほとけ)の
四 部(ぶ)の弟子(でし)なり
尼姑(じこ)ともいふ (補)
尤(もつとも)宗門(しうもん)によりて
僧官(そうぐわん)異(こと)なり
【左丁上段】
○鍛(たん)は磨(ま)なり
推錬(すいれん)なり
金(かね)を治(ぢ)する
にて鉄(てつ)を
鍛ものなり
鍛冶(たんや)といふいうべし
鍜治(かぢ)と字(じ)
似(に)たるかゆへ
にむかしより
あやまり
きたりて
鍜治(かぢ)とはとな
ふるなり
といへり
【注 「官」の振り仮名の二番目「わ」の変体仮名「𛄊」と判断:https://cid.ninjal.ac.jp/kana/list/kana/308f/】
【右丁下段挿絵】
尼(に)《割書:あま|》
僧(そう)《割書:よすて| ひと》
【左丁下段挿絵】
鍛(たん)
《割書:かぢ| や》
【右丁上段】
○陶家(たうか)は土(つち)にて
茶碗(ちやわん)鉢(はち)皿(さら)などを
つくるものをいふ陶(たう)
冶(や)ともいふ (補)瓦工(ぐはこう)は瓦(かわら)
さいくしなり舜(しゆん)
河浜(かひん)にすへものつ
くりすといへりしか
れば此さいくは舜(しゆん)を
はじめとするか
○冶(や)は鋳匠(たうしやう)とも
炉匠(ろしやう)ともいふ (補)鍋釜(なべかま)
火鉢(ひばち)其外(そのほか)金(かな)どう
具(く)をゐるものなり
唐(もろこし)の蚩尤(しゆう)といひし
ものつくりはしめし
とかや
【左丁上段】
○鬼(き)は人(ひと)死(し)して
肉骨(にくこつ)は土(つち)に皈(き)し
血(ち)は水(みづ)に皈(き)し魂(こん)
気(き)は天(てん)に皈(き)すそ
の陰気(いんき)せまり
存(そん)して依(よる)ところ
なしかるがゆへに
鬼(き)となる
○仙(せん)は遷(せん)なり飛(ひ)
行(ぎやう)してこの山(やま)より
かしこの山へうつ
るゆへに仙人(せんにん)と名(な)
づく (補)唐(もろこし)にはあまた
有 和朝(わてう)にも久米(くめ)
の仙人(せんにん)とて有
【右丁下段挿絵】
陶家(たうか)
《割書:すへもの| つくり》
冶(や)《割書:ゐもの| し》
【左丁下段挿絵】
鬼(き)《割書:おに|》
仙(せん)《割書:やま| びと》
【右丁上段】
○仏(ぶつ) (補)は西方(さいはう)の
聖人(せいじん)なり
如来(によらい)ともいふ
仏(ほとけ)【佛】は人に弗(あらず)
とよむ凡人(ほんにん)に
あらざれば
なり
○薩(さつ)は菩薩(ぼさつ)
なり菩(ぼ)はあま
ねく薩(さつ)はすくふ
とよむあまね
く衆生(しゆじやう)を
すくふといふ
こゝろなり
【左丁上段】
○楽(がく)は八 音(をん)を
ならして
奏(そう)するなり
(補)楽人(がくにん)といふ
黄帝(くはうてい)のとき
伶倫(れいりん)といふ者(もの)
楽(がく)をよくす
よつて楽人(がくにん)
を伶人(れいじん)といふ
(補)楽(がく)を管絃(くはんげん)
ともいふ日本(ひのもと)の
楽(がく)を神楽(かぐら)
といふかぐら男(お)
などいふもの
あり
【右丁下段挿絵】
薩(さつ)《割書:ぼさつ|》
仏(ぶつ)《割書:ほとけ|》
【左丁下段挿絵】
楽官(がくくはん)
《割書:がく| にん》
伶(れい)
人(じん)
《割書:まひ| びと》
【右丁上段】
俳優(はいゆう)《割書:わさ| をき》
○俳優(はいゆう)は雑戯(ざうけ)
なりとあり
しかれば今(いま)いふ
狂言師(きやうげんし)の
たぐひ
なるべし
猿楽(さるがく)の類(るい)
とはすこし
違(ちが)ひある
べし
素盞烏(そさのを)の
みことより
はしまると
いへり
【左丁上段】
○染匠(せんしやう)はべにや
紺屋(こんや)茶染屋(ちやそめや)な
どのるいなり
○蚕婦(さんふ)は蚕(かいこ)をか
ひてわたを
とる女(をんな)なりむかし
親(おや)に孝行(かう〳〵)なる
女(をんな)死(し)して
蚕(かいこ)といふ
むしとなり
庭(には)の桑(くわ)の木(き)に
きたり綿(わた)を
はきて親(おや)を
やしなひけるより
はじまれり
【右丁下段挿絵】
俳優(はいゆう)《割書:わざおき|》
【左丁下段挿絵】
染匠(せんしやう)
《割書:そめどの》
蚕婦(さんふ)《割書:こがひ|》
【右丁上段】
機女(きぢよ)《割書:はた| をり》
○機女(きぢよ)はもろこし
より呉服(くれは)
綾織(あやは)と
いへる二人の
女きたりて
をりはじめ
(補)これよりくは
しくなり
しとかや上機(かみはた)は
万(よろづ)の織物(をりもの)を
をる下機(しもはた)は
布(ぬの)木綿(もめん)
などをる
なり
【左丁上段】
○矢人(しじん)は矢作(やはぎ)なり
矢(や)は唐(もろこし)にては牟夷(ばうゐ)と
いふ人 作(つく)り始(はじ)む又 浮(ふ)
游(ゆう)と云人 始(はじむ)ともいへり
和朝(わてう)は神代(かみよ)に始(はじま)る
○弓人(きうじん)は弓削師(ゆげし)也
弓(ゆみ)は庖犠氏(はうぎし)より始(はじまる)
又 黄帝(くはうてい)堯(げう)舜(しゆん)より
始(はじまる)とも又 黄帝(くはうてい)の臣(しん)
揮(き)と云人 始(はじむ)ともいふ
日本にては神代(かみよ)に始(はじまる)
○函人(かんじん)は鎧(よろひ)ざいく也
鎧(よろひ)は蚩尤(しゆう)始(はじめ)て作(つく)る
又 黄帝(くはうてい)の時 玄女(げんじよ)
始(はしめ)て作(つく)るともいふ
日本は神代(かみよ)に始(はしま)る
【右丁下段挿絵】
機女(きぢよ)《割書:はたをり|》
【左丁下段挿絵】
矢人(しじん)《割書:やはぎ|》
弓人(きうじん)《割書:ゆげし|》
函人(かんじん)《割書:よろひ| ざいく》
【右丁上段】
○硯(すゞり)は黄帝(くはうてい)玉(たま)を
以(もつ)て始(はじめ)て造(つくり)給ふ
と有 硯(すゞり)を墨池(ぼくち)と云
○銀匠(ぎんしやう)は白(しろ)かねざいく
をいふ刀(かたな)のかざり目(め)
貫(ぬき)又 鍼(はり)等(とう)のさいく
人なり
○玉人(きうじん)は玉(たま)を琢磨(たくま)
するものなり山よ
り出(いづ)るたまを玉(ぎよく)と云
海(うみ)より出(いづ)るを珠(じゆ)と云
○櫛(くし)は伊弉諾尊(いざなぎのみこと)
の御ときつくりは
じめたり是(これ)を楊(ゆ)【湯の誤ヵ】
津(づ)の爪櫛(つまぐし)と
いへり
【左丁上段】
○烏帽子折(ゑぼうしをり)は京(きやう)
都(と)室町(むろまち)三 条(でう)に
あり烏帽子(ゑぼうし)は立(たて)
烏帽子(ゑほうし)是は高位(かうゐ)
の着(ちやく)し給ふ物なり
風折(かざをり)梨打(なしうち)左折(ひたりをり)
右折(みきをり)小結(こゆひ)荒目(あらめ)
等(とう)なり
○褙匠(はいしやう)は今いふ
表具師(へうくし)の
事なり
表補(へうほ)とも表褙(へうはい)
ともいふ表(へう)
紙(し)も同
じ
【右丁下段挿絵】
櫛引(くしひき) 硯工(けんこう)
《割書:すゞり| きり》
玉(きう)
人(じん)
《割書:たま| ざい| く》
銀匠(ぎんしやう)
《割書:しろかね| さいく》
【左丁下段挿絵】
烏帽子折(ゑぼうしをり) 褙匠(はいしやう)
《割書:ひやうぐ| し》
【右丁上段】
○傘工(さんこう)は雨傘(あまがさ)日(ひ)
傘(がさ)桃灯(ちやうちん)をはる
さいく人(にん)なり
○皮匠(ひしやう)は今いふ足(た)
袋屋(びや)などなり
又 切付(きつつけ)屋とて
皮(かは)ざいくする人
をもいふ
○針磨(はりすり)は京(きやう)姉(あねが)
小路(こうじ)の名物(めいぶつ)なり
今は三 条寺(でうてら)町の
辺(へん)に多(おほ)く有見
すやといふ者(もの)長崎(ながさき)
より針(はり)を取よせ
売弘(うりひろ)めたるより名(な)
付(づく)
【左丁上段】
○牙婆(かば)は今いふ
□【す】あひなり衣(い)
類(るい)をきもいりて
うりかいするもの
なり
○筆工(ひつこう)は筆結(ふでゆひ)也
筆(ふで)はもろこしに
て蒙怗(もうてん)といふ人
つくりはじめ給ふ
○薦僧(こもぞう)は梵論(ぼろ)と
もいふ梵論字(ほんろんじ)漢(かん)
字(し)ともいふ又 暮(ぼ)
露(ろ)とも書(かく)なり尺(しやく)
八(はち)をふき諸国(しよこく)を修(しゆ)
行するなり
【右丁下段挿絵】
皮匠(ひしやう)
《割書:かはざいく》 傘(さん)
工(こう)
《割書:かさ| ばり》
針磨(はりす[り])
【左丁下段挿絵】
牙婆(かは)
《割書:す| あひ》
薦僧(こもぞう)
白雲軒【看板内】
筆(ひつ)
工(こう)
《割書:ふで| ゆひ》
【右丁上段】
○石工(せきこう)は石(いし)を切(きり)て
石 垣(かき)石 灯籠(とうろう)いし
橋(ばし)石塔(せきたう)などする
ものなり石にて
器(うつはもの)をつくるさいく
人をもいふ石を芋(いも)
茎(じ)をもつて煮(に)れ
はやわらかになるとぞ
○圬者(うしや)は今いふ
左官(さくはん)なり圬人(うじん)
とも泥工(でいこう)とも泥(でい)
匠(しやう)ともいふなり
圬(う)は杇(う)につくるべし
竃(へつい)その外(ほか)土(つち)ざいく
するものも同じ
【左丁上段】
相撲使(ことりづかひ)
○相撲は乃見(のみの)
宿祢(すくね)と
橛速(くゑはや)と
いふもの二人
取(とり)はじめ
たり
角抵(かくてい)と云
膂力(りよりよく)を
争ふ
わざ
なり
【右丁下段挿絵】
石工(せきこう)
《割書:いし| きり》
圬者(うしや)
《割書:かべぬり》
【左丁下段挿絵】
相撲使(ことりづかひ)
《割書:すもふ| とり》
【右丁上段】
○扇(あふぎ)はもろこし
にては舜(しゆん)と
いふみかどつくり
はじめ給ふ
日本(につほん)にては
神功皇后(しんごうくはうかう)の
とき蝙蝠(かふもり)の羽(はね)
を見てつくり
はじめしとなり
京(きやう)にてはみゑい
堂(どう)を賞(しやう)ず
○漆匠(しつしやう)はうるし
ざいくするもの
をいふ今は
塗師(ぬし)といふ
【左丁上段】
○侏儒(しゆじゆ)はかたち短(もじか)
き人をいふ今いふ
一寸(いつすん)ぼうしなり短(たん)
人(しん)ともいふ
○駝背(たはい)はせむし也
医書(いしよ)にては亀背(きはい)
といふ背(せ)の高(たか)き馬(むま)
を槖駝(たくた)といふ駝馬(だば)
に似(に)たるゆへせむしの
人を駝背(たはい)といふ也
○兎唇(としん)は缺唇(けつしん)とも
兎缺(とけつ)ともいふ兎缺(いぐち)
は赤子(あかご)のとき上手(じやうず)
の外科(げくわ)に切てぬ
はすれば成人(せいじん)して
みへぬものなり
【右丁下段挿絵】
扇工(せんこう)
《割書:あふ| ぎ| や》
漆(しつ)
匠(しやう)
《割書:ぬ| し》
【左丁下段挿絵】
駝背(だはい)
《割書:せむし》
侏儒(しゆじゆ)
《割書:一寸| ぼうし》
兎唇(としん)
《割書:いくち》
【右丁上段】
○蜑人(あま)は海中(かいちう)
に入て蚫貝(あはびかい)
昆 布(ぶ)あらめの
たぐひを
とる
ものなり
海人(あま)とも書(かく)
女(をんな)の業(わざ)なり
又 塩(しほ)くむ女
もあまと
いふいづれ海(かい)
辺(へん)のわざ
なればともに
同じ類(たぐひ)
なるべき
か
【左丁上段】
○釣叟(てうさう)はつり
するおきな
をいふ太公望(たいこうばう)
厳子陵(けんしれう)が
たぐひなり
(補)日本(ひのもと)にも神代(かみよ)
よりありし
よしなり
○樵夫(せうふ)は薪(たきゞ)を
とるものなり
又は山賤(やまがつ)とも
いふ (補)木(き)つくり
杣人(そまひと)なども
此たぐひのもの
なるべし
【右丁下段挿絵】
蜑(ゑん)
人(しん)
《割書:あま》
【左丁下段挿絵】
釣叟(てうさう)
樵夫(せうふ)
《割書:きこり》
【右丁上段】
○猟師(れうし)は弓(ゆみ)
鉄炮(てつはう)を以(もつ)て
鳥(とり)獣(けたもの)をとる
ものなり
虙羲氏(ふつきし)の世(よ)に
天下(てんか)に獣(けたもの)多(おほ)く
田畠(でんはた)をそこ
なふ故(ゆへ)に人に
猟(かり)をおしへ給ふ
より始(はじま)りし
とそ
(補)冬(ふゆ)の猟(かり)に利(り)
ありとす又
海河(うみかは)にて魚(うを)を
とるを魚猟(きよれう)と云
【左丁上段】
○瞽者(こしや)は目(め)なき
ものなり盲(もう)
目(もく)盲人(もうじん)とも
いふ論語(ろんご)に冕(へん)
者(しや)と瞽者(こしや)とを
見(み)てはと有
(補)又 琵琶法師(びわほうし)とも
いひてむかしは
びわを弾(たん)じ平家(へいけ)
をかたりし今は琴(こと)
三絃(さんけん)をわさとす
座頭(ざとう)ともいふ尤(もつとも)
撿挍(けんげう)勾当(こうとう)四分(しぶん)
などゝて位階(ゐかい)
あり
【右丁下段挿絵】
猟師(れうし)
《割書:かり| うど》
【左丁下段挿絵】
瞽者(こしや)
《割書:もう | もく》
【右丁上段】
○販婦(はんふ)はあき
なひをする
女(をんな)をいふ買婆(ばいば)
ともいふなり
(補)都(みやこ)にはすくなし
鄙(いなか)におほく
あるもの也
○乞児(きつじ)は乞丐人(こつがいにん)
なり又 乞(こつ)
食(じき)とも
いふ
ものもらひ
なり又 非人(ひにん)
ともいふ
人 非(ひ)人 外(ぐわい)の義
なり
【左丁上段】
○漁父(ぎよほ)はすな
どりするもの
なり燧人氏(すいじんし)の
世(よ)に天下(てんか)に水(みづ)
おほし故(ゆへ)に人(ひと)
におしゆるに
漁(すなどり)をもつてす
(補)今 猟師(れうし)と
いふなり
○舟子(しうし)は今いふ
船頭(せんどう)なり海(うみ)
を渡(わた)す舟(ふね)に有
又 篙工(かうこう)とも棹(とう)
子(し)ともいふ但(たゝ)し
川舟(かはふね)にも船頭(せんどう)と
云
【右丁下段挿絵】
乞児(きつじ)
《割書:ものもらひ》
販婦(はんふ)
《割書:ひさき| め》
【左丁下段挿絵】
漁父(きよほ)
《割書:すなどり》
舟(しう)
子(し)
《割書:ふなこ》
【右丁上段】
○牧童(ぼくどう)は広野(くはうや)
にて牛馬(きうは)
に牧(まき)する
童(はらわ)【注】なり牧童(ほくとり)
遥(はるかに)指(さす)杏花(きやうくはの)
村(そん)と詩(し)に
も作(つく)れり牛飼(うしかひ)
はらわ【注】なり必(かならず)
笛(ふへ)を吹(ふく)
よつて牧笛(ぼくてき)と
いふ詩(し)に牧童(ぼくどう)寒(かん)
笛(てき)倚(よつて)牛(うしに)吹(ふく)と
いへるも太平(たいへい)
の姿(すかた)
なり
【左丁上段】
○鏡造(かゞみつくり)鏡(かゞみ)と
いふは神代(かみよ)に
天(あま)の糠戸(ぬかど)といふ
神(かみ)天照太神(てんしやうだいしん)
の御影(みかげ)を
うつして始(はしめ)て
つくり給ふと也
(補)鏡(かゞみ)は姿(すかたの)善悪(よしあし)
を見(み)るも心(こゝろ)の
曲直(きよくちよく)を
正(たゞ)し改(あらた)めんが為(ため)
なりとかや
神前(しんぜん)に鏡(かゞみ)を
掛(かく)るもこの
いわれなるべし
【右丁下段挿絵】
牧童(ぼくどう)
《割書:うし| かいはら| わ》【注】
【左丁下段挿絵】
鏡造(かゞみつくり)
【注「童」は「わらは」であるはずだが「はらわ」となっている。「は」は者と八より。「わ」は王より】
【右丁上段】
○娼婦(しやうふ)は倡優(しやうゆう)と
て女の楽(かく)を奏(そう)する
ものなり娼(しやう)は誤(あやま)り
なり倡(しやう)と書(かく)べし
又 倡妓(しやうき)ともいふと有
(補)是むかしの事にて
今は絶(たへ)てなき也 敢(あへ)
て聞及(きゝおよ)ばす中比白(なかごろじら)
拍子(びやうし)といふものあり
今いふ遊女(ゆふぢよ)舞子(まいこ)
などの類(たぐひ)ならんか
傾城(けいせい)又 傾国(けいこく)など
いふものは別(べつ)なるもの
ならんむかしより
ありしやうに聞(きゝ)
及しなり
【左丁上段】
又 髹工(きうこう)ともいふ
蒔絵師(まきゑし)と
いふも此類(このるい)の
ものなり
○渉人(せうじん)は渡(わたし)
守(もり)なり
大河(おほかは)小川(こがは)を
舟(ふね)にてむか
ふのきしへわた
すものなり
大河(おほかは)には
所々(しよ〳〵)に舟(ふね)
わたしありて
往来(わうらい)の人の
たすけと
なるなり
【右丁下段挿絵】
娼婦(しやうふ)
《割書:うかれめ》
遊女(ゆうぢよ)《割書:う| かれめ》
【左丁下段挿絵】
渉(せう)
人(じん)
《割書:わた| し| もり》
【右丁上段】
○駕輿丁(かよてう)は
駕輿(かご)かきの
事なり
酒(さけ)を漉酌(こしかい)
藤二を漉酌(ろくしやく)
といふすぐれ
て大なる男(おとこ)とも
なり駕(かご)かく男(おとこ)
も漉酌(ろくしやく)といふ
○浪人(らうにん)とは所領(しよれう)に
はなれて流(る)
浪(らう)する
人をいふ牢人(らうにん)と
書(かく)はあやまり
なり
【左丁上段】
○傀儡師(くわいらいし)は
人形(にんぎやう)まはし
の事なり
でくゞつと
いふ淡路島(あはぢしま)
といふ所より
毎年(まいねん)正月に
きたりしよし
近年(きんねん)絶(たへ)てこの
ものなし又
田楽法師(でんがくほうし)と
いふものありし
よし今(いま)はその
名(な)ばかり残(のこ)
れり
【右丁下段挿絵】
駕輿(かよ)
丁(てう)
《割書:かごかき| ろく| しやく》
浪人(らうにん)
【左丁下段挿絵】
傀儡師(くわいらいし)《割書:てくゞつ》
【右丁上段】
○車借(くるまかし)は車(くるま)つかひ
の事なり鳥羽(とば)白(しら)
川(かは)にあるよし庭訓(ていきん)
にみへたり今はさが
其外(そのほか)所々(しよ〳〵)にある也
天子(てんし)の車(くるま)つかひを
御者(ぎよしや)とも徒御(くるまぞへ)と
も舎人(とねり)ともいふ
○問丸(とひまる)は今(いま)いふ問(とひ)
屋の事なり売買(ばい〳〵)
の相場(さうば)を毎日(まいにち)問(とひ)
あはする宿(やど)なり
よつて問(とひ)屋と云
又 道中(どうちう)にて問(とひ)屋
といふは馬(むま)駕輿(かご)を
出す所(ところ)なり
【左丁上段】
○馬借(ばしやく)は《振り仮名:馬奴|ま□》【まどヵ】
又は馬口労(ばくらう)とも
いふ大津(おほつ)坂本(さかもと)の
馬借(ばしやく)と庭訓(ていきん)に
あり今(いま)は馬(むま)さし
を馬借(はしやく)といふ又
馬口労(ばくらう)といふもの
別(べつ)にありて牛馬(きうば)
の売買(うりかい)のせわを
する者(もの)なり
○伯楽(はくらく)は馬(むま)の病(やまひ)
をりやうぢする人
を伯楽(はくらく)といふむか
しは京(きやう)室町(むろまち)にゐ
けるにや室町の
伯楽(はくらく)と庭訓(ていきん)に有
【右丁下段挿絵】
車(くるま)
借(かし)
《割書:くるま| つかひ》
問(とひ)
丸(まる)
《割書:とひや》
【左丁下段挿絵】
馬借(ばしやく)
《割書:むまさし》
《割書:むま| くすし》 伯楽(はくらく)
【右丁上段】
○土器(かはらけ)は京(きやう)
西山(にしやま)嵯峨(さが)
又 北山(きたやま)畑枝(はたゑだ)
下(しも)は深草(ふかくさ)辺(へん)
よりつくり出(いだ)
せり庭訓(ていきん)
にも嵯峨(さが)
がはらけとあり
○大原(おはら)の黒木女(くろぎめ)は
京 北山(きたやま)大原(おはら)
の女(をんな)黒木(くろぎ)をいたゞ
きて京(きやう)に出(いで)て
あきなふ事は
むかし平(たいら)の惟盛(これもり)
の妻(つま)阿波(あわ)の内侍(ないし)
平家(へいけ)亡(ほろ)びて後(のち)
【左丁上段】
おはらに住(すみ)
て世(よ)わたり
のため売(うり)給ひし
より始(はじま)れり
そのほか八瀬(やせ)
又は雲(くも)が畑(はた)高(たか)
雄(を)の梅(むめ)が畑(はた)など
同く女(をんな)木柴(きしば)
をあきなふなり
○屠者(としや)は牛(うし)馬(むま)の
肉(にく)を屠割(ほふりさく)もの
なり今いふ
穢多(ゑた)なり
又 屠児(とじ)とも
いふなり
【右丁下段挿絵】
土器(かはらけ)
師(し)
大原(おはらの)
黒木女(くろぎめ)
【左丁下段挿絵】
《割書:ゑた》
屠(と)
者(しや)
【右丁上段】
○中国(ちうごく)は中華(ちうくは)とも漢(かん)
とも唐(とう)どもいふ近(ちか)き比(ころ)
まで明(みん)といひしが韃(たつ)
靼(たん)にしたがひ今(いま)は大(たい)
清(しん)といふみやこなり
○朝鮮国(てうせんごく)はむかしは三(さん)
韓(かん)とて三 国(ごく)なり新羅(しんら)
百済(はくさい)高麗(かうらい)といひしが
今(いま)は一 国(こく)となる日本(につほん)に
したがふなり
○琉球国(りうきうごく)は中山国(ちうざんごく)と名(な)
つく日本(につほん)にしたがへり男(おとこ)
は羽毛(うもう)をもつて冠(かんふり)とし
珠玉(しゆぎよく)をかざる女(をんな)は白羅(うすもの)
をもつて帽(はう)として雑(ざつ)
毛(もう)を衣(ころも)とす
【左丁上段】
○天 竺(ぢく)は仏(ほとけ)出(いで)し所(ところ)也
また大国(たいこく)の大熱国(だいねつこく)
なり国内(こくない)に聖水(せいすい)あ
りてよく風濤(ふうたう)をや
む商人(あきひと)瑠璃(るり)の壺(つぼ)を
もつて水(みづ)をもりたくはふ
○蒙古(もうこ)は韃靼(たつたん)の一種(いつしゆ)
なりむかし日本(につほん)へ攻来(せめきた)り
神風(じんふう)に吹破(ふきやぶ)られしと
なり是(これ)を蒙古国(むくりこく)
裏(り)といふなり【注】
○粛慎(しくしん)は女直(ぢよちよく)とも女(ぢよ)
真(しん)ともいふ国人(くにひと)足(あし)かる
くして道(みち)をゆく事
鳥(とり)のとぶかごとしよつ
てあしはせと名(な)づく
【右丁下段挿絵】
中国(ちうごく)
琉球(りうきう)
朝鮮(てうせん)
【左丁下段挿絵】
天竺(てんぢく)
蒙古(もうこ)
粛慎(しくしん)
【注:蒙古国裏(むくりこくり)は蒙古高句麗からという説あり】
【右丁上部】
○占城(せんせい)はちやんはん
といふ安南(あんなん)に近(ちか)
き国(くに)なり大象(だいざう)
多(おほ)し国に鰐(わに)有
公事詔訴(くじそせう)【注】の者(もの)
ありて (補)理非分明(りひふんみやう)
なれば鰐(わに)にあたふ
科(とが)あるものは鰐(わに)こ
れを食(くらふ)といへり
○安南国(あんなんこく)は交趾(かうち)
とも東京(とんきん)とも云
男子(をとこ)は盗(ぬすみ)をこのみ
女(をんな)は淫(いん)をこのむ女(をんな)
をめとるに媒(なかだち)なし
みつからあひ合(あふ)国(くに)
に肉桂(につけい)おほし (補)他国(たこく)
【左丁上部】
にいだす此 国(くに)の肉(につ)
桂(けい)を上品(じやうひん)とす
○暹羅(せんら)は国(くに)に海(かい)
濱(ひん)おほし男子(なんし)はい
とけなきより陽(やう)を
さく甘波邪(かぼちや)とも
いふ此国(このくに)の染色(そめいろ)を
にせて日本(につほん)にしや
むろといふなり
○東番(とうばん)はたかさご
(補)とも又たいわん国
ともいふ安南(あんなん)にちか
きゑひす国(くに)なり
(補)むかし国性耶(こくせいや)この
国(くに)をきりとり住(じう)せ
しなり今(いま)唐(とう)に従(したが)ふ
【注 「詔訴」は「訴詔」の誤】
【右丁下段挿絵】
占城(せんせい)
《割書:ちやん| はん》
【左丁下段挿絵】
安南(あんなん)《割書:かうち》
暹羅(せんら)
《割書:しやむろ》
東番(とうばん)
《割書:たかさご》
【右丁上段】
○南蛮(なんばん)は阿媽港(あまかう)
人(じん)なり阿蘭陀(おらんだ)も
此 類(るい)なり (補)すへて
南(みなみ)の嶋国(しまぐに)をなん
ばんといふ其(その)品類(ひんるい)
多(おほ)くありて人物(じんぶつ)
種々(しゆ〴〵)にわかれり
西(にし)のゑびすを西(せい)
戎(じう)といふ是(これ)もその
数(かす)多(おほ)くあり
○東夷(とうゐ)は蝦夷人(ゑぞびと)
なり人物(じんぶつ)勇猛(ゆうまう)に
して常(つね)に山野(さんや)に
出(いで)て獣(けだもの)を射(ゐ)とり
(補)又は海中(かいちう)の魚類(きよるい)
をとりて食(しよく)とす
【左丁上段】
惣(さう)じて中国(ちうこく)より
東(ひがし)にある島国(しまぐに)を
東夷(とうゐ)といひ西(にし)に有
嶋国(しまぐに)を西戎(せいしう)といひ
南(みなみ)にあるを南蛮(なんばん)
といひ北(きた)にあるを
北狄(ほくてき)といふ
○呂宋(りよそう)はるすんと
て中国(ちうごく)にちかき
国(くに)なりよく器(うつはもの)を
製(せい)し絹(きぬ)をおり
いだす
○長脚(ちやうきやく)は足(あし)ながき
国(くに)なりよくはし
る事 獣(けだもの)のごとし
【右丁下段挿絵】
南蛮(なんばん)《割書:みなみの| ゑびす》
東夷(とうい)《割書:ひがしの| ゑびす》
《割書:ゑぞ》
呂宋(りよそう)《割書: |るすん》
【左丁下段挿絵】
長脚(ちやうきやく)
《割書:あし| なが》
【右丁上段】
長臂国(ちやうひごく)は
東海(とうかい)の
しまぐになり
国人(くにびと)手(て)ながく
して地(ぢ)にたる
布衣(ふい)をきる
長(たけ)一 丈(じやう)三尺八寸
又 臂(ひぢ)なき
くにもあり
無臂国(むひごく)といふ
又 臂(ひぢ)ひとつ
ある国(くに)も
あり一臂国(いちひこく)
といふ
なり
【左丁上段】
○崑崙(こんろん)は西南(せいなん)
の海中(かいちう)の嶋国(しまくに)也
その人物(しんぶつ)色(いろ)くろ
きこと黒漆(こくしつ)のご
とし海底(かいてい)に入(いり)て
自由(じゆう)をなすまた
よく高(たか)きにのぼる
ことを得(え)たりと
よつて異国(ゐこく)の渡(と)
海(かい)の舩(ふね)にはかならず
此(この)崑崙(くろんぼう)をした
がへりといふ世(よ)に色(いろ)
黒(くろ)きものを崑崙(くろん)
坊(ぼう)といふなり
【右丁下段挿絵】
長(ちやう)
臂(ひ)
国(ごく)
《割書:てなが| じま》
【左丁下段挿絵】
崑(こん)
崙(ろん)
《割書:くろ| ぼ| う》
【右丁上段】
○小人国(しやうじんごく)此国(このくに)東(とう)
方(ばう)にあり身(み)の長(たけ)
九 寸(すん)又は一 尺(しやく)五 寸(すん)と
もいふ此国(このくに)に鶴(つる)に
似(に)たる鳥(とり)ありて小(しやう)
人(じん)をとりくらふこれを
おそれてひとり行(ゆく)
ことなしあまたつれ
たちゆくといへり
○長人国(ちやうしんごく)はむかし明(みん)
州(じう)の人(ひと)難風(なんふう)に舩(ふね)を
吹(ふき)ながされてある
島(しま)にいたる人(ひと)の長(たけ)
一 丈(じやう)余(よ)なりよく水(みづ)
をおよぐとなり
【右丁下段挿絵】
長人(ちやうじん)
国(ごく)
《割書:せたかじまと| いふ》
小人国(しやうじんごく)
《割書:こびとじまと| いふ》
【見返し】
拾冊之内【手書き】
【裏表紙】
【表紙】
器用【手書き 赤字】
【題簽】
《題:《割書:増補|頭書》訓蒙図彙大成 五》
【右丁】
十冊之内
【左丁】
《題:頭書増補訓蒙図彙(かしらがきぞうほきんもうづゐ)巻之九》
器用(きよう) 《割書:注前(ちうまえ)に見(み)へたり》
【上段】
○幢(とう)は翳(ゑい)なり旗(き)?(き)のた
ぐひなり楚(そ)には幬(とう)といふ
関(くはん)の東西(とうせい)には幢(とう)といふ
○銅雀幢(とうしやくとう)は幢(はた)のかしら
に雀(すゞめ)を銅(あかゞね)にてつくりたる
なり此(この)幢(はた)にてまねくとき
ははやくきたること雀(すゞめ)のごと
くなりとかや
○幡(はた)は兵家(けいか)に立(たつ)るはたなり
源家(けんけ)は白(しろ)平家(けいけ)は紅(もみ)藤氏(ふぢうち)
は水色(もづいろ)橘家(たちばなけ)は黄色(きいろ)なり
其外(そのほか)は家々(いゑ〳〵)のこのみによるなり
【下段挿絵】
幢(とう)《割書:はた》 羽葆幢(うはうとう) 銅雀幢(とうじやくとう) 纛(たう)《割書:はた》
幡(ばん)《割書:はた》 兵幡(へいはん) 仏幡(ぶつはん)
【右丁上段】
○纛(とう)は皂糸(しろいと)にてつくる
蚩尤(はうゆう)が首(くび)ににたり黄帝(くはうてい)
のとき玄女(けんぢよ)これをつくる
○旗(き)ははたの惣名(さうしやう)なりと
黄帝(くはうてい)よりはじまる軍将(くんしやう)
のたつる所なり幟(し)ははた
じるし旒(りう)ははたあしなり
○冑(かぶと)は兜鍪(とうほう)といふ黄帝(くはうてい)
これをつくり給ふ𩊱(しころ)の板(いた)
の数(かず)にて何(なん)𩊱(まい)冑(かぶと)といふ
○鎧(よろひ)は金物(かなもの)は十三所/上座(しやうざ)上(あげ)
巻(まき)矢返(やがへし)志加(しか)の鐶(くはん)水呑(みづのみ)の
鐶(くはん)再幣付(さいはいづけ)等(とう)こと〴〵
くそなはれり故(ゆへ)に具足(ぐそく)
といふ
○鉾(はう)は長(なが)さ二/丈(じやう)兵車(へいしや)に
【左丁上段】
たつるものなり矛(はう)同
○鎗(やり)は応仁(おうにん)文明(ぶんめい)の比(ころ)より
つくり始(はじめ)たり唐(もろこし)にては黄(くはう)
帝(てい)蚩尤(しゆう)たゝかひの時(とき)始(はじま)る
○鉞(ゑつ)は斧(をの)の大(をほい)なるものなり
重(おも)さ八/斤(きん)あり柯(え)大なり
○刀(かたな)は黄帝(くはうてい)首山(しゆさん)の銅(あかがね)を
とつて始(はじめて)て鋳(い)て刀(かたな)とす
○短刀(たんたう)は能太知(のだち)今(いま)いふわき
ざしなり
○楯(たて)は榎木(ゑのき)樟木(くすのき)等(とう)を
もつて作(つく)るあつさ三四五
寸はゞ一二尺の内(うち)外(そと)長(ながさ)三
五尺/盾干(しゆんかん)樐牌(かつえい)並同
○柄(へい)は剣頭(けんとう)なりつかといふ
鎗(やり)長刀(なぎなた)にてはゑといふなり
【右丁下段挿絵】
旗(き)《割書:はた》 幟(し)《割書:はたじるし》
冑(ちう)《割書:かぶと》 鎧(き)《割書:よろひ》 鉾(ほう)《割書:ほこ》
鎗(さう)《割書:やり》 鈇(ふ)《割書:をの》 鉞(ゑつ)《割書:まさかり》
【左丁下段挿絵】
刀(たう)《割書:かたな》 長刀《割書:ながたち》 短刀《割書:のだち》
楯(しゆん)《割書:たて》 柄(へい)《割書:ゑがら》 《割書:つか から え かひ》
䂎(さん)《割書:いしづき》 鐏《割書:そん》 鐓(けう) 戈(くわ)《割書:ほこ》 戟(げき)《割書:ほこ》
【右丁上段】
桿(かん)同
○鐏(そん)は柄(え)の底(なみ)の鋭(するど)なるを云
○鐓(たい)は柄(え)の底(なみ)の平(たいら)なるを
いふともにいしつき
○戈(くは)は双(ならび)たる枝(ゑだ)あるを戟(げき)と
し単枝(ひとつゑだ)を戈(くは)といふ
○戟(けき)は両辺(りやうへん)へよこに出(いで)たる刃(やいば)
長(なが)さ六/寸(すん)中(なか)の刃(やいば)長(なが)さ七寸
半(はん)よこの刃(やいば)柄(え)にまじはる
所/長(ながさ)四/寸(すん)半(はん)ひろさ寸(すん)半(はん)
○剣(けん)は葛天盧(かつてんろ)の山(やま)をあばひ
て金(きん)を出(いだ)す蚩尤(しゆう)うけて
剣(けん)をつくるこれ剣(けん)のはじ
めなり
○鞘(さや)は鞩(さや)とも遰(さや)とも書(かく)べし
刀室(とうしつ)なり𩍜(たく)䪝(ご)はをひとり
【左丁上段】
鏢(へう)はこじり
○鐔(たん)は剣鼻(けんび)人(ひと)のにきる所
の下にあるよこに出るもの也
鍔(がく)同
○欛(は)は杷(つか)柄(つか)同/琫(こいぐち)鐺栗(こじりくり)
形(かた)切羽(こつは)反角(かへりつの)裏瓦(うらのかはら)
○矢(や)は牟夷(はうゐ)といふ人/初(はじめ)てつくる
箭(せん)同/矢(や)はたけ三/尺(しやく)羽(は)六/寸(すん)
箆(の)簳(から)筈(はづ)
○鏃(やじり)は鏑根(やしりね)等(とう)の名(な)あり
そのほか鴈(かり)また蟇目(ひきめ)猪(ゐの)
目(め)等(とう)あり
○靫(うつぼ)は箭(や)をもる室(いへ)なり又
箭(や)を入(いる)る所を空(うつ)といふ上(うへ)に
穂(ほ)を付(つけ)たるゆへ空穂(うつぼ)と云
○平箙(ひらやなぐひ)はかたち平(たいら)なるゆへ
【右丁下段挿絵】
剣《割書:けん|つるぎ》 鞘(せう)《割書:さや》 鐔(たん)《割書:つば》 欛(は)《割書:つか》
矢(し)《割書:や》 鏃(ぞく)《割書:やじり》 靫(た)《割書:うつぼ》
【右丁下段挿絵】
箙(ふく)《割書:やなぐひ》 《割書:ひらやなぐひ》 《割書:つぼやなぐい》 《割書:ゑびら》
垛(た)《割書:あづち》 的(てき)《割書:まと》 韘(てう)《割書:ゆがけ》 韝(こう)《割書:ゆごて》
弓(きう)《割書:ゆみ》 彇(ゆはづ) 弣(ゆづか) 弦(ゆづる) 幹(ゆがら) 弓袋(ゆぶくろ) 銃(しう)《割書:てつはう》
【右丁上段】
の名(な)なり弓矢(ゆみや)を入(いる)る
ものなり
○壺箙(つぼやなぐゐ)は弓矢(ゆみや)をもる物
なりかたち壺(つぼ)のごとくな
るゆへつぼやなぐゐと名(な)
づくゑひらともいふ
○箙(ゑびら)は弓矢(ゆみや)をもるうつは
物(もの)なり獣皮(けだものゝかわ)をもつてつく
る胡籙(やなぐゐ)も同(おな)じ箙(ゑびら)に矢(や)
をさす事(こと)廿四すじ又五
筋(すぢ)もさすなり
○弓(ゆみ)は黄帝(くはうてい)つくり始(はじめ)給ふ
日本(につほん)にては神代(かみよ)より始(はじま)る
○的(まと)は堯(ぎやう)舜(しゆん)のときより
はじまる大的(おほまと)小的(こまと)あり
𢁿(せい)臬(けつ)同し
【左丁上段】
○韘(ゆがけ)は的(まと)韘(ゆがけ)は右(みぎ)の手(て)ばかりに
かくるなり三/指(し)にさすは略(りやく)
用(よう)なり弽(せう)同
○韝(ゆごて)は射(ゐる)とき左(ひだり)の臂(ひぢ)を
つゝむ弦(つる)を利(り)するものなり
捍(かん)同
○垛(た)は的(まと)をたつるあづち
なり又/垜(だ)とも書べし
寸法(すんほう)射家(しやけ)に定(さだまり)あり
○銃(じう)は鉄炮(てつはう)なり鳥銃(てうじう)と
いふ波羅多国(はらだごく)の仏来釈(ぶつらいしやく)
古(こ)といふものはじめて作(つく)る
○砲(はう)は機(き)をもつて石(いし)を発(はつ)
して城(しろ)をせむるの具(ぐ)なり
○長剣(ちやうけん)今(いま)いふ長刀(なぎなた)なり
薙刀(なぎなた)とも偃月刀(なぎなた)眉尖刀(なぎなた)
【右丁下段挿絵】
砲(はう)《割書:いしはじき》 長剣(ちやうけん)《割書:なぎなた》 鋼叉(かうさ)《割書:十もんじ》 鉄把(てつは)《割書:つくぼう》
弩(と)《割書:おほゆみ》 鉄鞭(てつへん)《割書:かなむち》 火箭(くわせん)《割書:ひや》
【左丁下段挿絵】
鞍(あん)《割書:くら》 鐙(とう)《割書:あぶみ》 銜(かん)《割書:くつわ》 鑣(へう)《割書:くつわのかゞみ》
鞦(しう)《割書:しりがい》 䪊(りう)《割書:おもがい》 鞭(べん)《割書:むち》
【右丁上段】
とも書なり
○鋼叉(かうさ)今(いま)いふ十/文字(もんじ)の鎗(やり)
なり又/鐺釵(とうさ)といふ
○鉄把(てつは)は釩棒(つくばう)鉄鈀(てつは)同
○弩(と)は黄帝(くはうてい)つくり給ふ又
楚琴(そきん)氏(し)始(はじめ)てつくるともいへ
り弓(ゆみ)をよこたへ臂(ひぢ)につけ機(き)
をほどこし郭(くはく)をもふけ是(これ)
に加(くはふ)る小/力(ちから)をもつてす
○火箭(ひや)は敵(てき)の陣屋(ぢんや)へ射(ゐ)
てやぐらをやくものなり炮(はう)
樚(ろく)火矢(ひや)大国(たいこく)火矢(ひや)などゝて
あるなり
○鉄鞭(てつべん)は雑色(ざうしき)のもつかな
ぼうなりかなぶちといふ
○鞍(くら)は鞌(あん)【原文は安の代わりに穴冠】同/鞍橋(あんきやう)くらぼね
【左丁上段】
鞍(くら)は三/代(たい)のとき制(せい)す鞍(くら)に
名(な)所(ところ)多(おほ)し今(いま)略(りやくす)_レ之(これを)鞍褥(あんにく)
くらしき鞍被(あんひ)は鞍(くら)おほひ
綏(すい)はしほてなり。
○鐙(あふみ)は鐙(あぶみ)の頸(くび)逆靻(ちかしかわ)をかく
る所を鉸具(かく)といふ頸(くび)の
輪(わ)を鉸具頭(かぐがしら)といふ
○銜(かん)はくゝみ又くつばみとも
いふ馬銜(ばかん)なり又は馬勒(ばろく)啣(かん)
鉄(てつ)ならびに同し馬口(ばこう)の
うちにあり俗(ぞく)にくゝみと云
○鑣(せう)は馬口(ばこう)のほかにあり俗(ぞく)
にくつわのかゞみといふ又/響(きやう)
鉄(てつ)ともいふ轡(ひ)同
○鞦(しりがい)は馬(むま)の尾(を)の間(あいだ)をはさ
むものなり䋺(しう)同/当胷(むなかい)
【右丁下段挿絵】
韁(きやう)《割書:たづな》 屧脊(せうせき)《割書:はだつけ》 障泥(しやうでい)《割書:あをり》
鉗(けん)《割書:くびがね》 枷(か)《割書:くびかし》 発頁(はつこう)《割書:いしびや》
【左丁下段挿絵】
笞(ち)《割書:しもと》 杖(ぢやう)《割書:つえ》 棒(はう)《割書:ぼう》 棒 棍(こん) 吾杖(ごじやう)
飄石(へうせき)《割書:づんばい》 鹿砦(ろくさい)《割書:さかもぎ》 碇(てい)《割書:いかり》
【右丁上段】
腹帯(はらおび)
○䪊(おもがい)は馬(むま)の頭(かしら)をまとふ飾(かざり)
なり又/絡頭(らくとう)とも書(かく)べし
○鞭(むち)は策(むち)筴(むち)同又/檛(むち)と
も書(かく)べし馬(むま)のむちなり
○韁(きやう)は手綱(たづな)なり口(くち)にある
を鞿(き)といふ八/尺(しやく)又は九/尺(しやく)二
三/寸(すん)のものなり
○屧脊(せうせき)は鎧(よろひ)のしたにきる
はだつけなり鉄(てつ)にてつくる
○障泥(しやうでい)は鞍(くら)のかざりなり韂(せん)
𩍲(し)同/熊(くま)鹿(しか)の皮(かわ)にて作(つく)る
○鉗(けん)枷(か)ともに罪人(つみひと)を禁(きん)
獄(ごく)する具(ぐ)梏(くびかせ)桎(てがせ)をくはへて
三 ̄ツ道具(どうぐ)といふ
○枷(か)はくびかしなり足械(そくかい)とも
【左丁上段】
いふ梏(こう)は手(て)がしなり、手械(しゆかい)と
もいふ
○発頁(いしびや)は西漢(せいかん)といふ州(くに)より
つくりはじむ南蛮(なんばん)より房(はう)
西(いう)といふもの日本(につほん)に献(けん)ず
○笞(ち)はしもとなり杖(じやう)はつえ
なり
○棒(はう)棍(こん)も棒(ぼう)なり
吾杖(ごじやう)は今(いま)いふ切木棒(きりこのぼう)也
○飄石(へうせき)は今(いま)いふづんばいなり
又/礫碆(がんばい)とも書(かく)べし
○鹿砦(ろくさい)は▢(いばらの)【木偏に棘】木(き)なり地(ち)に
うへて人馬(にんば)のあゆみをさま
たげて軍(いくさ)の要害(ようがい)とす
○碇(いかり)は舟(ふね)を鎮(しづ)むる石(いし)なり
といへり𦩘(てい)同(おなじ)いかりなり
【右丁下段挿絵】
輿(よ)《割書:こじ》 兜(とう)《割書:たごし》
車(しや)《割書:くるま》 輦(れん)《割書:てぐるま》
《割書:きよ》
【左丁下段挿絵】
輞(まう)《割書:おほわ》 輪(りん)《割書:わ》
轂(こく)《割書:こしき》 軸(ちく)《割書:よこかみ》 轅(ゑん)《割書:ながえ》
桊(けん)《割書:はなぎ》 輻(ふく)《割書:や》
【右丁上段】
纜(ともづな)𥾣(ひさづな)
○車(くるま)は少昊(しやうかう)のとき牛(うし)を駕(か)
し禹(う)のとき馬(むま)を駕(か)す今(いま)
図(づ)する所は日本(につほん)の五緒(ごしよ)
車(くるま)なり天子(てんし)女御(にようご)など乗(のり)
たまふくるまなり
○輦(れん)は天子(てんし)ののり給ふ御(み)
輿(こし)なり御輦(ぎよれん)とも玉輦(ぎよくれん)と
もいふ又/鳳輦(ほうれん)ともいふ
○輿(こし)は手輿(たこし)なり肩(かた)にのせ
かくを肩輿(けんよ)といふ竹(たけ)にて
あみたるを竹輿(ちくよ)といふ今(いま)
いふかごなり
○兜(とう)は手(た)かしなり兜橋(とうきやう)
とも腰輿(ようよ)ともいふ和尚(おしやう)上人(しやうにん)
国師(こくし)禅師(せんじ)などのる輿(こし)也
【左丁上段】
○輞(まう)は車(くるま)の輪外(わのそと)のかこみ
なり大輪(おほわ)なり輮牙(しうか)と云
○輪(わ)車輪(しやりん)は古(いにしへ)の聖人(せいじん)転(てん)
蓬(ほう)を見て車(くるま)をつくる
○轂(こしき)は輻(や)の湊(あつまる)所/轂口(こくこう)の錧(てつ)
をは釭(こう)といふ
○軸(ぢく)は車(くるま)の輪(わ)をもつもの
なり轄(かつ)はくさひなり
○轅(ながへ)は車(くるま)の前(まへ)の曲(まがり)たる木(き)を
いふ輈(しう)同
○桊(けん)は牛(うし)の鼻(はな)をつらぬく
ものなり牶(けん)▢(けん)【牶の牛の部分が石+廾】並同
○輻(や)は轂(こしき)につく三十の木(き)也
○軛(やく)は牛(うし)の頸(くび)にかゝる所なり
軛衡(やくかう)ならびに同
○桟車(さんしや)今(いま)いふにぐるまなり
【右丁下段挿絵】
軛(やく)《割書:くびき》 桟車(さんしや)《割書:にくるま》 籃輿(かんよ)《割書:あんざ》 㯭(ろ) 棹(たう)《割書:かい》 柁(た)《割書:かぢ》
【左丁下段挿絵】
艇(てい)《割書:をぶね》 《割書:はやふね》 舟(しう)《割書:ふね》 舶(はく)《割書:ふね》
檣(しやう)《割書:ほばしら》 帆(はん)《割書:ほ》 艜(たい)《割書:ひらた》
【右丁上段】
役車(えきしや)を車なり
○籃輿(かんよ)は今(いま)いふあんだ
あをだなり箯輿(べんよ)竹輿(ちくよ)
同し
○柁(だ)は舟(ふね)のかぢなり柂舵(だだ)
同又/櫂(かぢ)とも書(かく)べし
○㯭(ろ)は櫓(ろ)並同/縦(たて)に用(もちゆる)を
櫓(ろ)といふ横(よこ)に用(もちゆる)を槳(かぢ)と云
ともに舟具(ふねのぐ)なり
○棹(かい)【左振り仮名:さほ】は舟(ふね)をやる物なり篙(さほ)
おなじ
○舟(ふね)は黄帝(くはうてい)の二/臣(しん)共鼓(くはうく)
貨狄(くはてき)舟(ふね)をつくる又/虞姁(ぐこう)舟(ふね)
をつくる又/伯益(はくえき)つくる工倕(こうすい)
つくるとまち〳〵説(せつ)おほし
○艇(てい)は船(ふね)のちいさくして
【左丁上段】
長(ながさ)をいふ又二百/斛(こく)以上を
艇(てい)といふ舸同
○舶(はく)は海中(かいちう)の大舩(たいせん)なり
市舶(しはく)商人(あきんど)ぶね米(こめ)ぶね也
○艜(たい)も小舩(しやうせん)なりひらたふ
ね舩(ふね)ちいさくしてふかき物
舼(きよう)ともいふ俗にたかせといふ
○帆(ほ)は舟上(しうしやう)の幔(まん)なり風(かせ)に
したがひて舩(ふね)をうかむるもの
なり帆維(はんい)はほなはなり
○檣(しやう)は桅(き)帆(はん)竿(かん)ともに同
ほばしらなり○篷(とま)は𥴣(とま)同/竹(たけ)をとりて箬(たけ)をあみて船(ふね)をおほふものなり
○野航(やかう)は小舩(しやうせん)なりわたしぶね舴艋(そもう)同○筏(いかだ)は竹(たけ)を編(あむ)をいふ水(みづ)をわたるものなり木を
▢(ひ)【木偏に単の上部が竹冠】といふ竹(たけ)を筏(ばつ)といふう桴(ふ)同○番舶(はんはく)は南蛮(なんばん)ふねなり○䡄(き)はくるまのよこ木なり
○轄(くさび)は車(くるま)の輪(わ)にあるものなり
○車蓋(しやかい)は車(くるま)のやかたなり𨎐(こう)同一に黄屋(くはうをく)ともいふ蓋(かい)はきぬがさなり
【右丁下段挿絵】
筏(はつ)《割書:いかだ》 野航(やかう)《割書:わたしぶね》 番舶(ばんはく)《割書:ゑびすぶね》 篷(ほう)《割書:とま》
【左丁下段挿絵】
車蓋(しやかい)《割書:くるまのやかた》 轄《割書:くさび》
【右丁】
【文字無】
【左丁】
《題:頭書増補訓蒙図彙(かしらがきぞうほきんもうづゐ)巻之十》
器用(きよう) 《割書:注前(ちうまえ)に見(み)へたり》
【左丁上段】
○犂(り)からすき
o轅(えん)はとりくひ俗(ぞく)に是(これ)を
ねりといふo底(てい)はのきり
俗(ぞく)にこれをとこといふ
o梢(せう)はをひたてo箭(せん)はたゝ
りがたo槃(はん)はしりがせ
○鑱(さん)は犂(からすきの)鉄(かね)なり
○鐴(つき)は犂(すきの)耳(みゝ)なり
○耙(は)むまぐは▢(は)【耒偏に罷】同
耖耙(さうは)なり馬杷(はい)同
【左丁下段挿絵】
犂(り)《割書:からすき》 梢《割書:おひたて》 耙(は)《割書:むまくは》 ▢(は)【耒偏に罷】《割書:同》
鐴(つき)《割書:からすきのへら》 箭(たゝりかた) 底(とこ) 轅(ねり)
鑱(さん)《割書:からすきのさき》 槃(はん)《割書:しりがせ》 鎌(れん)《割書:かま》
【右丁上段】
○鎌(れん)はかま鍥(かま)なり
新月(しんけつ)似(にたり)_レ磨(みがくに)_レ鎌(かまを)と杜甫(とほ)
が詩(し)にもつくれるなり
○鍤(さう)は鍫(くは)なり
臿(さう)?(さう)鍫(せう)鍬(せう)ならび
に同じ
○钁(くわく)は大鉏(おほすき)なり
農具(のうぐ)は黄帝(くはうてい)これを
つくり初(はじめ)て民(たみ)におしへ
て田地(でんぢ)をうへしめ給ふ
鐯(ちやく)钃(そく)ならひに同
○鏄(はく)はこぐはなり
【左丁上段】
これはせまき田地(でんぢ)の草(くさ)
をさる具(ぐ)なり
○鏟(さん)はやすりなり
杴(けん)をこずきとよむ杴(けん)は
鏟(さん)のたぐひなり
○櫌(いう)はつちわりなり
耰(いう)堛(ふく)槌(つい)ならびに同じ
o櫌(いう)は塊(つちくれ)をうつ槌(つち)なり又
田(た)を摩(する)器(き)なり
○杷(は)は田具(でんぐ)なり麦(むぎ)を
おさむる器(き)なりこまざら
ひなり木(き)にてつくる
【右丁下段挿絵】
鍤(さう)《割書:くは》 钁(くわく)《割書:すき》 鏄(はく)《割書:こぐは》
鏟(さん)《割書:こずき》 櫌(いう)《割書:つちわり》 朳(はつ)《割書:えぶり》
【左丁下段挿絵】
杷(は)《割書:さらひ》 竹杷(ちくは)《割書:こまさらひ》 鉄搭(てつたう)《割書:くまで》 木杷(もくは)
杈(さ)《割書:またぶり》 火又 擔(たん)《割書:あふご》 輭擔(せんたん) 揔擔
【右丁上段】
○鉄搭(てつたう)は塔(たう)はつくともかゝると
もよむ俗(ぞく)にくまでといふ
○竹把(ちくは)はこまさらひといふ木(この)
葉(は)をかくものなり竹(たけ)にて作(つく)る
○朳(はつ)は㭭(はつ)同えぶりなり朳(はつ)は
杷(さらひ)に歯(は)なきものなり土(つち)を
かきよするものなり
○檐(たん)はになふなり背(せなか)を負(おふ)と
いふ荷(になふ)を檐(たん)といふ檐杖(たんしやう)輭(せん)
檐(たん)はやまあふご匾檐(へんたん)はたび
あふごなり
【檐は前ページでは擔】
○杈(さ)は岐枝木(またゑごのき)なりまたぶり
○蓑(さ)は雨衣(うい)なり田夫(でんふ)の服(ふく)也
みのなり
○笠(かさ)は箬(たけのこ)笠(がさ)なり天(てん)のかた
ちは笠(かさ)のごとしよつて敗(やぶれ)笠
【左丁】
を破天公(はてんこう)といふ
○籠(かご)は土(つち)をあぐる器(うつはもの)なり竹(たけ)
にてつくる
○畚(ふご)は土(つち)をもる器(うちはもの)なり藁(わら)
にて作(つく)るふごといふ
○蓧(あじか)は草(くさ)を去(すつる)うつはものなり
わらにてつくる
○簣(あじか)は土(つち)をもるかごなり
竹(たけ)にてつくる
○連耞(からさほ)は麦(むぎ)粟(あわ)などをうち
て穂(ほ)をくだく具(ぐ)なり
○礱(ろう)はもみすりうすなり土(つち)
あるひは木(き)にてつくる?(らい)【竹冠+畾】
礧(らい)ならびに同し
○磨(うす)はみがくともするとも
よむよくすりみがきて精(くはしく)す
【右丁下段挿絵】
蓑(さ)《割書:みの》 笠(りつ)《割書:かさ》 籠(ろう)《割書:かご》 畚(ほん)《割書:ふご》
蓧(でう)《割書:あじか》 簣(き)《割書:あじか》 連耞(れんか)《割書:からさほ》
【左丁下段挿絵】
礱(ろう)《割書:すりうす》 磨(ま)《割書:いしうす》 榨(さ)《割書:うちひ》
石鏨(せきせん)《割書:いしきりのみ》 碓(たい)《割書:からうす》
【右丁上段】
るなりすりうすなり?(ま)磑(ぎ)
いしうす幹(かん)はひきゞなり
○銀剪(ぎんせん)ははさみなり俗(ぞく)に
こみばさみといふ夾剪(けうせん)同
○榨(うちひ)は醡(さ)と同(おな)し酒(さけ)又は油(あぶら)
をしぼる具(ぐ)なりしめ木(ぎ)なり
○石鏨(せきせん)は石(いし)をきるのみなり
石匠(せきしやう)これをもつ
○碓(からうす)は宓犠(ふつき)杵臼(きねうす)を制(せい)す後(のちの)
世(よ)に巧(たくみ)をくはへ身(み)を借(かり)て碓(からうす)
をふむ利(り)十/倍(ばい)す
○機(き)ははたなり織(をる)なり経(たて)
をもつものを榺(ちきり)といふ緯(ぬき)
をもつものを杼(をさ)といふ椱(いしあし)
臥機(くつひき)機躡(まねき)【躡の偏は止】
○綜(そう)は機(はた)をおるへなりまた
【左丁上段】
紉綜(しんそう)とも書(かく)べし
○杼(ちよ)はひなり梭(さ)同/機(はた)を織(をる)
とき緯(ぬき)をもつものなり
○筬(せい)はをさなり紉(しん)梳(じよ)同し
簆框(こうきやう)は今いふおさかまち
○筟(ふ)は筳(てい)と同/繀(さい)はくだいと
○篗(わく)は籰(わく)𧤽(わく)榬(わく)同し
わくの柄(え)を柅(ち)といふ又/檷(ぢ)
鑈(ぢ)ならひに同
○績纏(せきでん)は苧(お)をうみためて
丸(まる)くまきたるが臍(へそ)のごと
くなるより名(な)づく
○紡錘(はうすい)はつむなり又は楇(くは)
とも瓦(くは)とも書(かく)へし
○撥柎(はつふ)はわくのめくり舞(まふ)
ものなり蟠車(はんしや)とも撥車(はつしや)
【右丁下段挿絵】
機(き)《割書:はた》 綜(そう)《割書:へ》 杼(ちよ)《割書:ひ》 筬(せい)《割書:をさ》
筟(ふ)《割書:くだ》 篗(わく) 績纏(せきでん)《割書:へそ》 紡錘(はうすい)《割書:つむ》
【左丁下段挿絵】
撥柎(はつふ)《割書:まひば》 絡柅(らくち)《割書:たゝり》
布機(ふき)《割書:しもはた》 績桶(せきとう)《割書:おごけ》
【右丁上段】
ともいふ
○絡柅(たゝり)は糸(いと)をくる台(だい)なり
絡垜(たゝり)とも書(かく)なり
○布機(ふき)は布(ぬの)をおるはたなり
機(はた)に上(うえ)はた下(しも)はたあり
これは下はたなり
○績桶(せきとう)はをおけなりあやま
りておごけといふ茶釜(ちやがま)を
ちやまがといふたくひなり
○繰車(さうしや)は蚕(かいこ)をにて糸(いと)をとる
具(ぐ)なり繅車(さうしや)同又/縿車(さうしや)と
も書なり
○蠶連(さんれん)は蚕種紙(さんしゆし)なりかい
こたねをいふ
○蠶薄(さんはく)は蚕(かいこ)をうくる具(ぐ)
なり筁(きよく)同じえびら
【左丁上段】
○繀車(さいしや)は糸(いと)を筟(わく)につくる
具(ぐ)なり緯車(いしや)同
○紡車(はうしや)は糸(いと)よりくるま也
綿筒(めんとう)を俗(ぞく)にあめといふ
○撹車(かうしや)は木綿(きわた)をくりて
核(さね)を撹(かき)とる車(くるま)なり
○搗砧(とうちん)はきぬ巻(まき)をうつを
いふ臥杵(くはしよ)はよこづちなり
○火熨(くはい)は火(ひ)をもつてしは
を熨(のす)なり鈷(こ)▢(まう)【金偏に共の上部+介】鈷鉧(こもう)な
らびに同し
○針(はり)物(もの)ぬふと病(やまひ)を治(ぢ)する
と同(おなし)く通(つう)じ用(もち)ゆ医者(いしや)鍼(はり)
をもつて病(やまひ)を治(ぢ)すよつて人(ひと)
をいましむるを箴(しん)といふ視(しの)
箴(しん)聴(ていの)箴(しん)のごとし
【右丁下段挿絵】
繰車(さうしや)《割書:おほが》 蠶簿(さんはく)《割書:えびら》
蠶連(さんれん)《割書:かひこだね》 繀車(さいしや)《割書:ぬきかぶり》
【左丁下段挿絵】
紡車(はうしや)《割書:いとよりくるま》 撹車(かうしや)《割書:きわたくり》
搗砧(たうちん)《割書:きぬた》 火熨(くわい)《割書:ひのし》 《割書:ひのし》 針(しん)《割書:はり》
【右丁上段】
○矩(く)は方(けた)なるをつくるもの也
匠人(しやうじん)の具(ぐ)なり曲尺(きよくしやく)なりま
がりがねといふ
○規(き)は円(まとか)なるをつくるもの也
俗(ぞく)にいふぶんまはし
○凖(じゆん)【上段では凖、下段では準】は水をもつて高下(かうげ)をは
かるものなり水(みつ)もりさげず
み垂凖(すいじゆん)同じ
○縄(じやう)はなわを引(ひい)て物(もの)の高下(かうけ)を
はかるものなり番匠(ばんしやう)のもつ
すみつほなり墨斗(ぼくと)といふ
○/𣖯(しん)は竹筆(ちくひつ)なり▢(しん)【竹冠+侵】同じ
番匠(ばんしやう)のすみさしなり
○釿(きん)は手斧(てをの)なり
○鐁(し)は木(き)を平(たいらか)にするものなり
つき鐁(かんな)やり鐁(かんな)あり
【左丁上段】
○鋸(つきかんな)【「のこぎり」の誤ヵ】は刀鋸(とうきよ)なり大(をほい)なるを前(まへ)
引(びき)といふのこぎりなり
○鉋(つきかんな)は木(き)を平(たいらか)にする具(ぐ)なり
推刀(すいたう)敲刀(かうたう)同
○鑿(さく)は鏨(のみ)なり三/分(ぶ)鑿(のみ)五/分(ぶ)
のみとてあり刻刀(こくたう)はくはのみ捲(けん)
鑿(さく)はまるのみ
○錐(すい)は円錐(ゑんすい)はつきとをし方(はう)
錐(すい)は四方(しはう)ぎり
○鑽(さん)は物(もの)をうがつ錐(きり)なりとを
しぎり三ツめぎりといふ
○槌(つい)はうつとよむ又かけやといふ
もあり柊楑(さいづち)椓撃(あいつち)
○鑢(りよ)は摩錯(まさく)の器(き)なりやすり
なり錯(さく)鏟(さん)ともに同
○鏨(せん)は金石(きんせき)をきるたがねなり
【右丁下段挿絵】
矩(く)《割書:まがりがね》 規(き)《割書:ふんまはし》 準(じゆん)《割書:さげずみ》
縄(じやう)《割書:すみつぼ》 𣖯(しん)《割書:すみさし》
鐁(し)《割書:かな》 《割書:やりがんな》 釿(きん)《割書:てをの》
鋸(きよ)《割書:のこぎり》 鉋(はう)《割書:つきかんな》
【右丁下段挿絵】
鑿(さく)《割書:のみ》 鑽(さん)《割書:きり》 錐(すい)《割書:きり》 《割書:四方きり》
槌(つい)《割書:つち》 椓鑿(たくげき)【撃ヵ】《割書:あいづち》 柊楑(しうき)《割書:さいづち》 木(もく)槌《割書:こづち》
鑢(りよ)《割書:やすり》 鏨(せん)《割書:たがね》 鏝(まん)《割書:こて》 鎚(つい)《割書:かなづち》
【右丁上段】
○鏝(まん)は壁(かべ)をぬる具(ぐ)なり釫(う)
𣏓(う)圬(う)同じこてなり
○鎚(つい)は鉄槌(かなづち)なり
○鋏(けう)はかなばさみ火鉗(くはけん)火鈐(くはげん)同
○鑕(しつ)は鉄砧(てつちん)なり鉄鍖(てつちん)鉄鉆(てつちん)
同かなしきなり
○削刀(さくたう)は小刀(こがたな)なり
○裁刀(さいたう)図(づ)のごとしものたちこが
たななり
○鐇(はん)は刀斧(とうふ)なり斧(よき)の刃(は)ひ
ろきなり
○斧(をの)は神農(しんのう)始(はじめ)てつくり給ふ
木(き)をきる具(ぐ)なり柯(か)はをのゝ柄(え)
○釘(てい)はくぎなり物(もの)にうつて
はなるゝを閉(とづ)るものなり【「釘」は本文では「金偏に亍」と彫っている。挿絵中は「釘」】
○楔(せつ)は木釘(きくぎ)なり又/栓(せん)といふ字(じ)
【左丁上段】
の音(こゑ)をもつてよぶ
○索(さく)は大(おほひ)なるを索(さく)といひ小(すくしき)
なるを縄(じやう)といふ
○浮漚釘(ふをうてい)はのがたのくぎなり
俗にいふくわんかう鐶甲(くわんかう)なり
砲頭丁(はうとうてい)は俗(ぞく) ̄ニいふべう
○堝(くわ)はるつぼなり甘堝(かんくわ)とも云
壦(けん)同/型(けい)摸塑(ほさく)は並(ならび)にいかた
○鞴(ふいかう)は槖籥(たくやく)とも書(かく)べし蹈(たう)
鞴(はい)はたゝら
○橛(けつ)は木段(もくたん)なり杙(くゐ)なり橜(けつ)
樁(さう)ならびに同くゐなり
○鉸具(かうぐ)は蝶(てう)つがひ鍱(えう)▢(えう)【金偏+棄】同
○釣鉤(てうこう)はつりばりなり釣(てう)
竿(かん)はつりざほ釣線(てうせん)はつりいと
餌(じ)はゑ泛子(はんし)はうけなり
【右丁下段挿絵】
鋏(けう)《割書:かなばし》 鑕(しつ)《割書:かなしき》 削刀(さくたう)《割書:こがたな》
裁刀(さいたう)《割書:ものたちがたな》 鐇(ばん)《割書:まさかり》 斧(ふ)《割書:をの》
釘(てい)《割書:くぎ》 浮漚釘(ふをうてい) 砲頭丁(はうとうてい) 楔(せつ)《割書:くさび》
【左丁下段挿絵】
索(さく)《割書:なは》 堝(くわ)《割書:るつぼ》 鞴(はい)《割書:ふいがう》
橛(けつ)《割書:くひ》 鉸具(かうぐ)《割書:てふつがひ》 釣鉤(てうこう)《割書:つりばり》
鉄束(てつそく)《割書:かなわ》 篾箍(べつこ)《割書:たけわ》 箍束(こそく)つ
【右丁上段】
○鉄束(てつそく)かなわなり鉄篐(てつこ)【注①】同
○箍(こ)束(そく)は桶(をけ)の輪(わ)なり竹に
てつくる篾箍(べつこ)ともいふ
○砧(ちん)はあてなり枮(ちん)碪(ちん)同共
に衣(きぬ)をうつ具(ぐ)なりきぬたと
もいふ
○桔槹(けつかう)ははねつるべなり𣚃(けつ)【注②】
槹(かう)同し
○轆轤(ろくろ)は水(みづ)をくむ (補)つるべにかゝ
る具(ぐ)なりくるまきといふ独楽(かま)【注③】
ざいくに轆轤(ろくろ)といふ物(もの)あり
○瓦竇(ぐはたう)かはらにてつくれる樋(ひ)
なり陰溝(いんかう)むめみぞ又/暗溝(あんかう)
とも書(かく)なり
○綿弓(めんきう)は木(き)わたをうつゆみ
なり弓(ゆみ)に唐(たう)ゆみ小弓あり
【左丁上段】
○牽鑚(けんさん)はろくろかな錫(すゞ)又/角(つの)
などをひく物(もの)なり車鑚(しやさん)同
○旋盤(せんはん)は茶碗(ちやわん)天目(てんもく)をつくる
くるまなり釣(きん)■(〳〵)【注④】ならびに同
すへものつくりのくるま
○木梃(もくてい)はてこなり鉄梃(てつてい)はかな
てこなり。
○攩網(たうまう)は俗(ぞく)にすくひだまと
いふなりながれ川(かわ)の小魚(こうを)を
すくふあみなり (補)たまさでと
もいふ
○弰(さく)は鯨(くじら)鱉(すつほん)などをつく物(もの)
なりもろこしにては馬上(ばしやう)に
もつほこを弰(さく)といふ𥯜(く)同
一名(いちめい)魚叉(ぎよさ)という
○絞車(かうしや)はまきろくろ大石(たいせき)又は
【右丁下段挿絵】
砧 桔槹(けつかう)《割書:はねつるべ》
轆轤(ろくろ)《割書:くるまき》 瓦竇(くわたう)《割書:かわらび》 綿弓(めんきう)《割書:きわたゆみ》
【左丁下段挿絵】
牽鑚(けんさん)《割書:ろくろかな》 木梃(もくてい)《割書:てこ》 鉄梃(てつてい)《割書:かなてこ》
旋盤(せんはん)《割書:すへものゝぐ》 攩網(とうまう)《割書:すくひだま》 矟(さく)《割書:やす》 絞車(かうしや)《割書:まきろくろ》
【注① 「篐」は「箍」の誤】
【注② 「𣚃槹」は「㮮槹」の誤】
【注③ 「かま」は「こま」の誤ヵ】
【注④ ■は「冫+匀」・「均」の誤ヵ】
【右丁上段】
家(いゑ)蔵(くら)堂(たう)などをひくろく
ろなり
○趕網(かんまう)攩網(たうまう)ともに魚(うを)を
とる具(ぐ)なり俗(ぞく)に左手(さで)と云
○罾(そう)はうをとるあみなり又
方張(はうちやう)といふ此たぐひのあみ
数品(すひん)あり此図(このず)は四つでといふ
あみなり
○網(もう)はあみなり庖犠氏(ふつきし)の
つくりはじめ給ふ罟(こ)同し
俗(ぞく)にとうあみ又かちあみと
いふなり
○羅はとりあみなり芒氏(ばうし)
はじめて羅(あみ)をつくる鳥罟(とうこ)也
絹糸(きぬいと)又/麻糸(あさいと)にてつくる也
かすみといふ有又たちこし
【左丁上段】
○囮(おとり)はなれたる鳥(とり)をつな
いで外(ほか)の鳥(とり)をいざなひ来(きた)
らしむるを囮(おとり)といふなり
㘥(くわ)媒鳥(はいてう)同
○雀竿(じやくかん)は黐竿(ちかん)同ゑさ
しさほなり黐(ち)はとりもち
なり
○笯(ど)はとりかごなり庭篭(にはこ)
丸篭(まるこ)などあり
○炉工台(ろくだい)は釜(かま)をかけて火(ひ)
をたく台(だい)なり俗(ぞく)にをき
へついといふ
○鷹架(たかほこ)は鷹(たか)のとまる
木なり
○弶(りやう)は罟(あみ)をみちにもふけて
狐(きつね)兎(うさぎ)などをとるものなり
【右丁下段挿絵】
趕網(かんまう)《割書:さで》 罾(そう)《割書:よつで又はうちやう》 網(まう)《割書:あみ》
羅(ら)《割書:とりあみ》 囮(くわ)《割書:おとり》
【左丁下段挿絵】
雀竿(じやくかん)《割書:とりざほ》 笯(ど)《割書:とりこ》
炉工台(ろくだい) 弶(りやう)《割書:わな》 鷹架(ようか)《割書:たかのほこ》
【右丁上段】
陷阱(かんせい)おとしあななり
○石籠(せきろう)は水(みづ)ふせきなり
竹(たけ)を (補)あみかことし中(なか)へ石(いし)を
入て堤(つゝみ)の水(みづ)をよけるもの也
臥牛(くはぎう)ともいふ俗(そく)にいふじや
かごなり
○撒網(さんもう)は魚(うを)をとるあみなり
罨(あう)罩(さう)同俗にうちあみと云
又とうあみともよぶ
○魚簄(ぎよこ)は海中(かいちう)にて魚(うを)を
とる竹(たけ)なり俗(ぞく)にえりといふ
魚箔(ぎよはく)なり槮(しん)ふしづけ
○籞(いけす)は池(いけ)のうち (補)又/川(かは)などに
竹(たけ)がきをあみて魚(うを)をやし
なふものなり簖(たん)同
【左丁上段】
○翻車(はんしや)は龍骨車(りうこしや)なり
日(ひ)でりのとき田地(てんぢ)に水(みづ)を
とる具(ぐ)なり (補)ひきく所(ところ)の水(みつ)
を高(たか)き田(た)へ入(いる)るに用(もち)ゆ
○筒車(とうしや)はみづぐるまなり
淀河(よどかは) (補)そのほか所々(しよ〳〵)にあり
これもひきく所(ところ)の水(みづ)を高(たか)
き田(た)へとるものなり又/水(みづ)の力(ちから)
をかりて米穀(べいこく)をしらげは
たくの具(ぐ)なり
○水筧(すいけん)はかけひ山より水(みづ)を
とるものなり連(れん)筒(とう)同/梘(けん)
はとゐなり又/槽(さう)につくる
○案山子(かがし)は鳥(とり)おどしなり
人(ひと)かたをつくりて田(た)の中(なか)に
立(たて)て鳥(とり)けだものをおどす物也
【右丁下段挿絵】
石籠(せきろう)《割書:じやかご》 魚簄(ぎよこ)《割書:えり》
撒網(さつまう)《割書:うちあみ》 籞(ぎよ)《割書:いけす》
【左丁下段挿絵】
翻車(はんしや)《割書:りうこつしや》 水筧(すいけん)《割書:かけひ》 筒車(とうしや)《割書:みづぐるま》
案山子(かがし)《割書:とりおどし》
【右丁上段】
○戽斗(こと)は桶(をけ)になわをつけ
て田(た)へ水(みづ)を入るものなり是(これ)
もひでりのときもちゆる具(ぐ)
なり戽(こ)桶(よう)同
○魚梁(ぎよりやう)は海中(かいちう)に竹(たけ)の簀(す)
を入(いれ)て魚(うを)をとるものなり
罶(りう)同/俗(ぞく)にやなといふこれ
なり筍(じゆん)同
○塘網(たうあみ)は引(ひき)あみといふ (補)大海(だいかい)に
て魚(うを)をとるあみなり方一里(はういちり)
にうけの桶(おけ)をつけて大(おほ)ぜい
の人/引(ひき)よするなり
○榰柱(しちう)は家(いゑ)のゆがみたるを
なをすつかへなり牮(たい)は今(いま)
いふうしなり
○楨幹(ていかん)は両題(りやうたひ)を楨(てい)といふ
【左丁上段】
両傍(りやうはう)を幹(かん)といふついぢいた
なり
○水平(すいへい)はみつはかりなり
水(みつ)なわを引(ひき)て高下(かうけ)を
はかるものなり (補)番匠(ばんしやう)に
もちゆる具(ぐ)なり度竿(とかん)
同じ
○土圭(とけい)は図景(とけい)とも時計(とけい)とも
書(かく)なり昼夜(ちうや)十二/時(とき)を
はかるうつはものなり
(補)しやくどけいといふあり時(と)
計(けい)に大小(だいしやう)あり
○障子(しやうじ)は障(しやう)の字(し)へだつ
るとよむ風(かせ)をへたてふせく
のこゝろなり子(じ)は付字(つけし)也
あかり障子(しやうし)腰障子(こししやうじ)あり
【右丁下段挿絵】
戽斗(ことう)《割書:なげつるべ》 塘網(たうまう)《割書:ひきあみ》
魚梁(ぎよりやう)《割書:やな》
【左丁下段挿絵】
榰柱(しちう)《割書:つかへ》 楨幹(ていかん)《割書:ついぢいた》 水平(すいへい)《割書:みづばり》
【右丁上段】
○戸(と)はひらき戸(ど)たて戸引(とひき)
戸妻戸(どつまど)あり杉戸(すぎど)まいら
戸(ど)などその品(しな)多(おほ)くありいら
戸(と)といふあり
○縄車(じやうしや)はろくろ縄(なわ)幕(まく)の
縄(なわ)なとをよる車(くるま)なり
【右丁下段挿絵】
土圭(とけい) 障子(しやうじ)
戸(と) 縄車(じやうしや)《割書:なはなひ》
【左丁】
《題:頭書増補訓蒙図彙(かしらがきぞうほきんもうづゐ)巻之十一》
器用(きよう) 《割書:注前(ちうまへ)に見(み)へたり》
【左丁上段】
○屏(へい)は屏風(べうぶ)なり畫屏(ぐはべう)
繍屏(しうべう)金屏(きんべう)石屏(せきへう)硯屏(たんへう)
格子屏(かうしへう)あり又/圍屏(ゐべう)と云
○簾(れん)はすだれ箔(はく)同/翠(すい)
簾(れん)みすなり簾/鈎(かう)はつり
ばりなり
○枕(しん)は珊瑚(さんご)の枕(まくら)瑪瑙(めのふ)の
枕など有/貉枕(かくしん)などゝいふ
もあり
○杌子(ごし)はこしかけなり
○椅子(ゐす)は方椅(はうゐ)あり円椅(ゑんゐ)
あり交椅(かうゐ)あり椅踏(ゐたう)は今(いま)
【左丁下段挿絵】
屏(へい)《割書:びやうぶ》 簾(れん)《割書:すだれ》 圍屏(いびやう)《割書:をりびやうぶ》
枕(しん)《割書:まくら》 杌(ごつ)《割書:こしかけ》
【右丁上段】
いう承足(ぜうそく)なり
○席(せき)はむしろなり筵(ゑん)同
蒲席(ほせき)莞席(くはんせき)竹席(ちくせき)あり
○牀(しやう)は榻(しち)なりゆかともとこ
ともいふ八尺を牀(しやう)といふ身(み)
を安(やすん)ずる物(もの)なり牀几(しやうざ)
○匜(い)ははんざうなり柄(え)のな
かに水(もづ)のいづる道(みち)あり柄(え)の
半(なか)ばその内(うち)に挿(さしはさ)むよつて
半挿(はんざう)といふか
○盥(くわん)はたらひなり盥盤(くわんはん)
盥盆(くわんぼん)同又/頮(くはん)につくる匝盤(いはん)
はみゝたらひ角盤(かくはん)はつのだらひ
○墩(とん)は腰(こし)かけなり坐墩(ざどん)とも
いふ又は草墩(さうどん)といふもあり
○鏡(かがみ)は天照太神(てんせうだいじん)のかげをう
【左丁上段】
つしてゐ給ふより初(はじま)る今の内(ない)
侍所(しどころ)といふは神鏡(しんきやう)なり手鏡(しゆきやう)
は柄付(えつき)のかゞみ円鏡(えんきやう)はまるかゞみ
鏡匲(きやうれん)はかゞみの▢【虫食い】なり
○鏡台(きやうたい)は鏡架(きやうか)ともいふ又
粧台(さうたい)ともいふなり今/按(あん)ずる
にかゞみかけ
○粉匣(ふんかう)はおしろいばこなり
○剪(せん)ははさみ剪刀(せんとう)なり
剪子(せんし)剤刀(せいたう)ならびに同今
按(あん)ずるに夾剪(けうせん)摺剪(らうせん)有
○鑷(でう)はけぬきなり鼻鑷(びてう)は
はなげぬきなり
○笄(かんざし)は女(をんな)の髪(かみ)にさす具(ぐ)
なり楴(てい)同/抿(みん)子かうがい
○櫛(せつ)はくし総名(さうみやう)なり梳(しよ)は
【右丁下段挿絵】
椅子(いす) 椅踏(ゐたう) 席(せき)《割書:むしろ》 牀(しやう)《割書:ゆかとこ》
匜(い)《割書:はんざう》 匜盤(みゝたらひ)
盥(くわん)《割書:たらひ》 角盤(つのだらい) 墩(とん)《割書:こしかけ》
【左丁下段挿絵】
鏡(きやう)《割書:かがみ》 鏡架(きやうか) 鏡台(きやうだい)《割書:かがみかけ》
剪(せん)《割書:はさみ》 夾/剪(せん) 摺(らう)剪 鑷(てふ)《割書:けぬき》
粉匣(ふんかう)《割書:おしろいばこ》 笄(けい)《割書:かんざし》《割書:かうがい》
櫛(せつ)《割書:くし》 梳《割書:すきぐし》 枇(ひ)《割書:ほそぐし》 挿《割書:はさしぐし》
【右丁上段】
すきぐし枇(ひ)はほそぐし挿(さう)
梳(しよ)はさしぐしなり
○髲(ひ)は髢(てい)と同かづらなり
𩫹(しゆ)鬙(くわい)もとゆひ
○壺(つぼ)は酒(さけ)をいるゝうつは物也
又/陶(とくり)ともいふ
○樽(たる)は酒(さけ)をいるゝうつはもの
なり木樽(もくそん)あり漆樽(しつそん)あり
瓦樽(くはそん)あり陶樽(たうそん)あり榼(かつ)同
○瓶(へい)はかめなり水瓶(すいひん)酒瓶(しゆひん)
尿瓶(しひん)あり鉼(へい)同
○注子(ちうし)は水(みづ)さし湯盥(たうくはん)湯(たう)
釜(ふ)に湯(ゆ)のあつきとき水を
うめる具(ぐ)なり
○櫑(らい)は酒(さけ)をいるゝたるなり
雲雷(うんらい)のかたちをゑがくよつ
【左丁上段】
て櫑といふ
○盃(はい)は盞(さん)ともにさかづき也
𨢩(しやう)とも書(かく)べし又/鸚鵡盃(あふむはい)
椰子盃(やしはい)瑪瑙盃(めなふはい)など有
○琖(さん)は猪口(ちよく)とも書(かく)なり
○巵(し)はさかづきなり玉巵(ぎよくし)と
いへり𨢩(しやう)同
○爵(しやく)はさかづきなり爵(すゞめ)は
淫乱(いんらん)なるものなり酒(さけ)を
のめば淫乱(いんらん)になるゆへに
さかづきに爵(すゞめ)をほり付
ていましめとすその盃(さかづき)
を爵(しやく)といふ又/爵炉(しやくろ)は香(かう)
炉(ろ)のかたち爵(すゞめ)に似(に)たれは
なり
○鼎炉(ていろ)は香(かう)をたくもの
【右丁下段挿絵】
髲(ひ)《割書:かつら》 壺(こ)《割書:つぼ》 樽(そん)《割書:たる》
瓶(へい)《割書:かめ》 注子(ちうし)《割書:みづさし》
櫑(らい)《割書:もたひ》 盃(はい)《割書:さかづき》 琖(さん)《割書:ちよく》
【左丁下段挿絵】
巵(し)《割書:さかづき》 爵(しやく)《割書:すゝめかうろ|さかづき》
鼎炉(ていろ)《割書:かうろ》 鼎(てい)《割書:あしかなへ》 甑(そう)《割書:こしき》
鍋(くわ)《割書:なべ》 鑊(くわく) 鏊(かう) 砂鍋(さくは) 釜(ふ)《割書:かま》
筯(ちよ)《割書:はし》 火筯(くはちよ)《割書:ひばし》
【右丁上段】
なり
○鼎(てい)はあしかなへなり五
味(み)を煮(に)和(くわ)するうつはもの
なり方鼎(はうてい)あり円鼎(ゑんてい)あり
○甑(そう)は物(もの)をむすこしき也
鬵(しん)同/箄(へい)はこしきのすだれ
炊巾(すいきん)はこしきぬのなり
○鍋(くわ)大なるなべを鑊(くわく)といふ
あさきなべを鏊(かう)といふ又/砂(さ)
鍋(くわ)はいりかはら
○釜(ふ)はかまなり鬴(ほ)▢(てん)【金+奠】鍑(ふ)な
らびに同じ瓦釜(ぐわふ)はつち
がまなり
○筯(ちよ)箸(ちよ)櫡(ちよ)ならびに食(しよく)
筯(ちよ)なりはしなり
火筯(くはちよ)は火ばし
【左丁上段】
○碗(わん)は食碗(しよくわん)茶碗(ちやわん)あり木(もく)
椀(わん)磁椀(じわん)あり大なるを盂(う)と
いふ深(ふかき)を甌(おう)といふ今(いま)いふ天(てん)
目(もく)建盞(けんさん)な▢【虫食い:り】
○碟(せう)は土(つち)の皿(さう)を磁碟(じせう)といふ木(き)
の皿(さら)を漆楪(しつせう)といふ碟(さう)は皿(さら)也
又/木(き)ざら楪子(ちやつ)
○香匙(きやうじ)は香(かう)すくひ
○飯匙(はんじ)は律僧(りつそう)禅家(ぜんけ)に
用(もちゆ)るものなり飯(はん)をすく
ひくふ物なり
○茶匙(さじ)は茶(ちや)𣏐(しやく)なり
○薬匙(やくし)は医家(いか)に用(もち)ゆる
茶匙(さじ)なり
○飯(はん)𢆍(さう)は今(いま)いふいゐがひ也
𣠺(さう)同し
【右丁下段挿絵】
碗(わん) 盂(う) 茶碗(ちやわん) 木椀(もくわん) 碟(せう)《割書:さら》
匙(し) 飯匙(はんし) 茶匙(さじ) 薬匙(やくじ) 香匙(きやうし) 飯(はん)𢆍(さう)《割書:いひかゐ》
盤(ばん) 托(たく)《割書:ちやだい》 盞盤(さんはん)《割書:さかづきだい》 台盤(だいばん) 鉢(はち)
【左丁下段挿絵】
盒(がう)《割書:じきろう》 盆(ぼん)《割書:ほとぎ》
磁盆(じほん)《割書:さはち》 甕(おう)《割書:もたひ》 瓿(ほう)
汲桶(きうとう)《割書:つるべ》 缶(ふ)《割書:つるべ》 桶(とう)《割書:をけ》
浴桶(よくとう)《割書:ゆぶね》 提桶(ていとう)《割書:てをけ》 酒桶(さけをけ)
【右丁上段】
○盤(ばん)はすべて物(もの)の台なり
円(まとか)なるを盤(ばん)といふしかれ
ども方(けた)なるをも通(つう)じて
盤(ばん)といふ事もあり
○台盤(だいばん)は今いふ三方(さんばう)なり
○托(たく)は茶碗天目(ちやわんてんもく)の台(たい)也/托子(たくし)
托盤(たくばん)並同又/槖(たく)につくる
○鉢(はち)は仏氏(ぶつし)の盂(ほとぎ)なり鉄(てつ)
鉢(はち)あり銅鉢(どうはち)あり木鉢(もくはち)有
仏(ほとけ)のもち給ふは鉄鉢(てつはち)なり
○盞盤(さんばん) さかづきの台(だい)なり
○盒(がう)は合子(がうし)なり今いふ食篭(じきろう)
なり本(もと)円(まろ)き器(うつはもの)なり今は方(けた)に
もするなり
○盆(ぼん)はまるきうつはものゝ名(な)
盎(あう)同/磁盆(じぼん)はさはちなり
【左丁上段】
○甕(おう)もたい▢(をう)【雍+ム+巫】瓮(をう)▢(たん)【金+曇】鐔(たん)
共(とも)に同大なるを甕(をう)といひ小(すくしき)なるを
瓿(ほう)と云ともに酒(さけ)を入るつぼなり
○桶(とう)はおけなり提桶(ていとう)は手(て)をけ
浴桶(よくとう)はゆぶね杆同
○酒桶(さかをけ)は五/石入(こくいれ)十/石(こく)入ありよく
口(くち)をふうじてたくはう
○缶(ふ)はつるべなり瓦(かはら)にてつくり
水をくむものなり綆(きやう)つるべなわ
繘(きつ)汲(きう)索(さく)ならびに同し
○汲桶(きうとう)は木(き)にて作(つく)りたるつるべ也
○酒槽(しゆさう)はさかぶねなりこの槽(ふね)に
酒袋(さけぶくろ)を入しぼりて桶(おけ)に入たくはふ
○馬槽(ばさう)はむまふねなり馬(むま)の
四/足(そく)するふねなり槽櫪(さうれき)は
むまだらいなり
【右丁下段挿絵】
槽(そう)《割書:ふね》 酒槽(しゆそう)《割書:さかぶね》 馬槽(ばそう)《割書:むまぶね》
杓(しやく)《割書:ひしやく》 筅(せん)《割書:ちやせん》 筅帚(せんさう)《割書:さくら》
竃(さう)《割書:かまど》 篩(し)《割書:ふるひ》 燧(すい)《割書:ひうち》 火(くわ)《割書:ひ》 炉(ろ)《割書:ひたき》
【左丁下段挿絵】
升(せう)《割書:ます》 合(がう) 筲(さう)《割書:いかき》
籃(らん)《割書:かご》 箕(き)《割書:み》 臼(きう)《割書:うす》 杵(しよ)《割書:きね》
【右丁上段】
○杓(しやく)は水をくむもの勺(しやく)瓢(へう)なら
びに同/俗(そく)にひしやくといふ
○筅(せん)は茶(ちや)を泡(あは)だつるものなり
悪茶(あくちや)を茶筅(ちやせん)にてふりたつる
を蟹眼(かいかん)【左振り仮名:かにのめ】といふ
○竃(そう)はかまどなり灶(さう)同/行(ぎやう)
竃(さう)はくどなり烓(けい)同
○篩(し)は簁と同又/籭(さい)とも書(かく)
へしふるひなり
○燧(すい)は木(き)をもみ石(いし)をすりて
火(ひ)をもとむるなり火鑽(くわさん)同
○爐(ろ)はひたきなり火函(くはかん)火牀(くはしやう)
ならびに同/地炉(ちろ)はすびつ俗
にいろり地炕(ちかう)同/焙炉(ほいろ)火橽(こたつ)
○火(ひ)は煨(わい)煻(たう)ならひにおき也
燼(じん)もへくひ焔(えん)炎(えん)ならびに
【左丁上段】
ほのほ灰(くわい)はい煙(えん)けふり煤(はい)すゝ
○升(せう)は一/升(しやう)ます斗(と)はとます
十/龠(やく)を合(がう)とし十/合(がう)を升(しやう)
とし十/升(しやう)を斗(と)とし十/斗(と)を斛(こく)
とす槩(がい)はとかきともますか
きとも又/斗格(とかく)と書(かく)べし
○筲(さう)は竹器(ちくき)なり俗にいふ
いかき䈰(さう)▢(をく)【竹+奥】淘(たう)籮(ら)並(ならびに)同
○籃(らん)は竹器(ちくき)なり篭(かご)なり
筐(きやう)同かたみともいふ
○箕(み)は物を簸(ひる)ものなり
○臼(きう)はつきうすなり
○杵(しよ)はきねなり味噌(みそ)又は
餅(もち)をつく杵(きね)なり細腰杵(さいえうきよ)
は手(て)ぎねなり
○唾壺(だこ)は痰(たん)はきなり今按
【右丁下段挿絵】
唾壺(だこ)《割書:ぢんこ》 温壺(うんこ) 觶(たん)《割書:さかつき》 觚(こ)《割書:さかづき》
櫑(らい)《割書:もたひ》 鐺(たう)《割書:さしなべ》 湯婆(たうは)《割書:たんほ》 漏斗(ろと)《割書:じやうご》
【左丁下段挿絵】
尊(そん)《割書:たる》 彛(い)《割書:たる》 笥(し)《割書:はこ》
湯鑵(たうくはん)《割書:やくはん》 洗(せん)《割書:はんだう》 簠(ほ)
【右丁上段】
するに塵壺(ぢんこ)の事か
○温壺(うんこ)はいにしへ湯(ゆ)を入て手(て)
足(あし)をあたゝむるものなり今
は花瓶(くはひん)にもちゆ
○觶(たん)はいにしへのさかづきなり
今は花瓶(くはひん)にもちゆよつて花(くは)
觶(たん)といふなり
○觚(こ)はいにしへのさかづきなり
唐音(たうゐん)にこれをこつふと云
今(いま)花瓶(くはひん)にもちゆ
○罍(らい)はもたいなり酒(さけ)を入る
ものなり雲雷(うんらい)のかたちを
ゑがくゆへ罍(らい)といふ
○鐺(たう)はなへのたくひ耳足(みゝあし)有
酒鐺(しゆたう)薬鐺(やたう)などあり
○湯婆(とうば)はたんほなり桐(きり)銅(あかゞね)
【左丁上段】
陶(つち)などにて作(つく)り湯(ゆ)を入て足(あし)
をあたゝむるもの也/脚婆(きやくは)湯媼(たうあう)
ともいふ今は酒器(しゆき)に用(もち)ゆ
○漏斗(ろと)は今いふ上戸(じやうご)なり酒(さけ)を
うつすものなり
○尊(そん)はいにしへの酒(さけ)を入るたる
なり今は花瓶(くはひん)にもちゆ
○彛(い)は古(いにしへ)の酒尊(しゆそん)なり今(いま)香(かう)
炉(ろ)とす彛炉(いろ)といふ
○笥(し)はげなり箱(はこ)の通称(つうせう)なり
食物(しよくもつ)又は衣類(いるい)を入るはこなり
○洗(せん)は古(いにしへ)の盥洗(くわんせん)のすて水(みづ)をうくる
の器(き)也/俗(ぞく)にこれを飯銅(はんとう)といふ
○簠(ほ)は古(いにしへ)の祭(まつり)のうつはもの
なり黍(あわ)稷(きび)をもるものなり
○湯鑵(たうくはん)は湯(ゆ)をわかすなべなり
【右丁下段挿絵】
耳壺(じこ) 鍑(ふ)《割書:さかり》 簋(き) 樏(るい)《割書:わりご》
風炉(ふうろ) 水罐(すいくはん)《割書:みづかめ》
【左丁下段挿絵】
銅銚(とうてい)《割書:てうし》 銅提(とうてい)《割書:ひさげ》 提炉(ていろ)《割書:ちやべんたう》
提盒(ていがう)《割書:さげじう》 雪洞(せつたう) 嚢(なう)《割書:ふくろ》
吹筒(すいとう)《割書:ひふき》 鎖(さ)《割書:じやう》
【右丁上段】
銅(あかゝね)にてつくるを銅鑵(とうくはん)といふ今
は薬鑵(やくはん)といふ
○耳壺(じこ)はいにしへの酒(さけ)を入る
つぼなり今は花瓶(くわひん)とす
○鍑(ふ)ははがまなり又くはんす
なり茶(ちや)を煮(にる)かまなり
○簋(き)は簠(ほ)と同し祭器(さいき)也
食物(しよくもつ)を入て先祖(せんぞ)にそなへ
まつるものなり
○樏(るい)は食物(しよくもつ)を入る物なり
今いふわりごなり
○風炉(ふろ)は茶炉(ちやろ)薬炉(やくろ)とも
に同又は釜櫓(ふろ)とも書(かく)べし塗(ぬ)
師(し)のふろは蔭室(ふろ)
○水罐(すいくはん)はみづを入るかめなり
罐(くはん)は鑵(くはん)と同
【左丁上段】
○銅銚(とうてう)は今いふ銚子(てうし)なり
酒(さけ)をいるゝものなり
○銅提(とうてい)は今いふ提子(ひさげ)也
酒(さけ)をくはゆるものなり
○提炉(ていろ)は今いふ茶弁当(ちやべんたう)
なり又/携炉(けいろ)ともいふ
○提盒(ていがう)は今いふ提重(さげぢう)なり
又/行厨(あんちう)ともいふ
○雪洞(せつとう)は一に育(いく)とも云/茶(ちや)
炉(ろ)をおほふものなり竹に
紙(かみ)をはりてつくる
○嚢(のう)は袋(たい)帒(たい)ならひに同
○吹筒(すいとう)は火(ひ)ふきなり篍(しう)火(くは)
管(くはん)ともいふ今すつほんと
いふ火(ひ)ふきあり
○鎖(じやう)は音(こゑ)未(いまだ)【左送り仮名:す】_レ詳(つまびらかなら)ひつを鎖(さ)
【右丁下段挿絵】
絹篩(けんさい)《割書:きぬぶるひ》 擂盆(らいぼん)《割書:すりばち》
豆(とう) 薑擦(きやうさつ)《割書:わさびおろし》 砧板(ちんはん)《割書:まないた》
割刀(かつたう)《割書:はうてう》 麺杖(めんぢやう)《割書:むぎをし》
【左丁下段挿絵】
天平(てんへい)《割書:てんびん》 法馬(はうば)《割書:ふんどう》
秤(せう)《割書:はかり》 錘(つい)《割書:はかりのおもし》
糊刷(こせつ)《割書:のりはけ》 槖(たく)《割書:おびぶくろ》
【右丁上段】
管(くはん)といふはねを鎖須(さじゆ)と云
○絹篩(けんし)はきぬふるいなり
今(いま)按(あん)するに薬(くすり)をふるふを
羅合(らがう)といふ麺粉(めんこ)をふるふを
羅斗(らと)といふ
○擂盆(らいぼん)はすりばちなりおと
雷(らい)のごとしよつて擂盆(らいぼん)と云
擂木(らいき)擂槌(らいつい)はともにすりぎ也
○豆(とう)は祭(まつり)に肉(にく)をのするもの
なり仏氏(ぶつし)には菓子(くはし)をのす
○薑擦(きやうさつ)はわさびおろし也
○砧板(ちんはん)は今(いま)いふまないた也
又/▢(けい)【木+刑】几(き)とも書(かく)べし肉机(にくき)
魚盤(きよはん)ならびに同
○割刀(かつたう)は今(いま)いふ庖丁(はうてう)なり魚(うを)
をきる刀(かたな)なり菜刀(さいたう)はながたな
【左丁上段】
○麺杖(めんじやう)は今いふ麺棒(めんばう)なり
一に衦麺杖(かんめんじやう)ともいふ
○天平(てんびん)は今(いま)いふはり口(ぐち)なり
平は秤(ひん)の字(じ)の略(りやく)なりそら
につりたる秤(はかり)なり
○法馬(はうば)は今(いま)いふ分銅(ふんどう)なり
法子(はうし)鋾馬(とうば)ともいふ
○秤(せう)は𨤲等(れてぐ)なりさうを
盤(はん)といふさほを衡(かう)といふおも
りを権(けん)とも錘(つい)ともいふなり
杠秤(こうせう)はちぎなり
○錘(つい)ははかりのおもしなり鎚(つい)
権(けん)ならびに同/衡(かう)ははかりの
さほ梁(りやう)同
○糊刷はのりばけなり
○槖(たく)は底(そこ)なきふくろなり
【右丁下段挿絵】
𨰉(さつ)《割書:くすりきざみ》 碾(てん)《割書:やげん》 櫃(き)《割書:ひつ》
橱(ちう)《割書:づし》 鑰(やく)《割書:かぎ》 帚(しう)《割書:ははき》
【左丁下段挿絵】
檯(だい) 箱(さう)《割書:はこ》 傘(さん)《割書:からかさ》
杖(じやう)《割書:つえ》 柱杖 枴(かい)《割書:かせづえ》
【右丁上段】
俗(そく)にうちがへといふ
○/𨰉(さつ)は薬刀(やくたう)なりもとは草(くさ)を
きる具(ぐ)なり今(いま)はくすりきざ
みにもちゆ
○碾(てん)はもと農具(のうぐ)なり今は薬(くすり)
を粉(こ)にする具(ぐ)とすよつて薬(やく)
碾(てん)とも薬研(やげん)ともいふ
○櫃(き)はひつなり書物(しよもつ)衣服(いふく)を
入るものなり唐櫃(からひつ)半櫃(はんびつ)長(なが)
櫃(びつ)あり
○橱(ちう)は厨子(づし)なり書厨(しよちう)なり
又/衣厨(いちう)といふもあり
○鑰(やく)は鍵(けん)鎰(えき)ならびに通(つう)じ
もちゆかぎなり
○帚(しう)は箒(しう)同/條帚(てうしう)はわら
はゝき掃帚(さうしう)はたけばゝき独(どく)
【左丁上段】
帚(しう)ははゝき木(き)はゝき棕帚(そうしう)は
すろはゝきなり
○檯(たい)は几案(きわん)のたぐひなり
食物(しよくもつ)の檯(たい)を飯檯(はんだい)といふ
○箱(はこ)は篋(けう)匣(かう)ともに同じ筥(はこ)
とも書(かく)なり屧(ちう)はかけご抽匣(ちうかう)は
引(ひき)だしなり蓋(かい)はふたなり
○傘(さん)はからかさなり雨傘(うさん)は
あまがさ凉傘(りやうさん)はひがさ
○杖(じやう)鳩杖(はとのつえ)は鳩(はと)は物(もの)にむせぬ
鳥(とり)なりよつて老人(らうじん)の物に
むせぬためとて杖(つえ)のかしら
に鳩(はと)のかたちをきさみたるを
鳩杖(はとのつえ)といふなり
○蓋(かい)はもろこしには車上に
たつるかさなり
【右丁下段挿絵】
蓋(かい)《割書:きぬがさ》 梯(てい)《割書:はしご》 凳(とう)《割書:くらかけ》
炬火(こくは)《割書:たいまつ》 燎火(れうくは)《割書:にはび》 唧筒(そくとう)《割書:みづはじき》
【左丁下段挿絵】
爼(そ)《割書:つくえ》 胡床(こしやう)《割書:あぐら》 竿(かん)《割書:さほ》
標榜(へうはう)《割書:ふだ》 署扁(しよへん)《割書:がく》
【右丁上段】
○梯(てい)は俗(そく)にいふのぼりはし
なり又はしご
○凳(とう)はくらかけなり踏凳(たつとう)
ともいふ
○炬火(こくは)はたいまつなりたち
あかしともいふ松明(せうめい)同
○燎火(りやうくは)はにはびなり庭燎(ていりやう)
とも門燎(もんりやう)ともいふ神代(じんだい)より
はじまる禁中(きんちゆ)節会(せちゑ)に有
○唧筒(そくとう)は今いふ水はじき
なり火事(くはじ)のときもちゆ
又は庭(には)の樹木(じゆもく)に水をうつに
もちゆるなり
○爼(そ)は祭(まつり)にいけにへをのす
るものなりまないたと訓(くん)
ずつくえなり
【左丁上段】
○胡床(こしやう)は俗(そく)にこれを床(しやう)
机(ぎ)といふ又あぐらといふ
○竿(かん)はさほなり笐(かう)は物
ほしさほ𥮕(かう)同
○標榜(へうはう)はふだなりまた
簡版(かんはん)
○署扁(しよへん)は今いふ額(がく)なり
扁額(へんがく)扁牌(へんはい)ならひに同
○渾儀(こんぎ)は渾天儀(こんてんぎ)又は璇(せん)
璣玉衡(きぎよくかう)ともいふ日月の運(うん)
行(かう)をはかる物なり
○磁針(じしん)は磁石(ししやく)に針(はり)をさし
て東南(とうなん)をしるものなり広(くはう)
野(や)海上(かいしやう)にたづさゆる物也
○仏龕(ぶつがん)は今いふ仏像(ぶつざう)を
いるゝ厨子(づし)なり
【右丁下段挿絵】
渾儀(こんぎ)《割書:こんてんぎ》 磁針(じしん)
仏龕(ぶつがん)《割書:づし》 仏座(ぶつざ) 華鬘(けまん) 錫杖(しやくじやう)
【左丁下段挿絵】
椸(い)《割書:みそかけ いかう》 木魚(もくぎよ)
鈴杵(れいしよ) 鈴(れい) 《割書:独鈷(とくこ) 三鈷(さんこ) 五鈷(ごこ)》
手炉(しゆろ)《割書:えがうろ》 数珠(すうじう)《割書:じゆず》
宝(はう)▢(ら)【片+票】《割書:ほらのかい》 筁(きよく)《割書:を》
【右丁上段】
○仏座(ぶつざ)は蓮座(れんざ)なり獅子(しし)
座(ざ)須弥座(しゆみざ)荷葉座(かようざ)岩(いわ)
座(ざ)唐座(からさ)等(とう)なり
○華鬘(けまん)は西城(さいいき)の女(をんな)の首(かしら)
のかざりなり瓔珞(やうらく)なり頸(くび)
のかさりなり
○錫杖(しやくじやう)は梵(ぼん)には隙棄(げきき)
羅(ら)といふなり
○椸(い)は衣服(いふく)をかくるものなり
又/衣桁(いかう)とも衣架(いか)ともいふ
○木魚(もくぎよ)は木(き)にて鯨魚(くじら)のかたち
をつくりその声(こゑ)の大(おほい)なるにとれ
りよつて鐘(つりがね)を鯨(げい)といふ禅家(ぜんけ)
にもちゆ
○鈴(れい)は口金舌(こうきんぜつ)なり真言(しんごん)修(しゆ)
法(はう)の具(く)なり
【左丁上段】
○杵(しよ)は独鈷(とくこ)三/鈷(こ)五/鈷(こ)の三色
ありともに真言家(しんごんけ)の具(ぐ)なり
○手炉(しゆろ)はえがうろ和尚(おしやう)上人(しやうにん)
是(これ)を持(ぢ)して仏前(ぶつぜん)にむかふ
○数珠(じゆず)は念珠(ねんじゆ)なり諸宗(しよしう)かは
りあり
○宝(はう)▢(ら)【片+票】はほらのかいなり海中(かいちう)
の梭尾螺(さひら)をふくなり法螺(はうら)と
も梵貝(ほんはい)ともいふ修験(しゆげん)の家(いゑ)又
は軍陣(ぐんぢん)にふく
○筁(きよく)はおいなり山伏(やまぶし)のおふ
ものなり笈(おい)とも書(かく)べし
○押桶(をしおけ)は産(さん)のとき胎衣(ゑゐ)を
入る桶(おけ)なりまげ物にじて鶴(つる)
亀(かめ)をゑがく
○石灯(せきとう)は仏神(ぶつじん)の前(まへ)にあり
【右丁下段挿絵】
押桶(をしおけ) 石灯(せきとう)《割書:いしどうろ》 魚箸(ぎよちよ)《割書:まなばし》
交椅(かうゐ)《割書:きよくろく》 摺畳椅(しうでうい)
神主(しんしゆ) 霊牌(れいはい)《割書:いはゐ》
【左丁下段挿絵】
羽子板《割書:はごいた》 酒帘(しゆきん)《割書:さかばやし》
鎹(そう)《割書:かすがい》 石碑(せきひ)《割書:いしぶみ》
鎖(さ)《割書:くさり》 𣞙(さう)《割書:つゞみのだう》 和卓(くはしよく)《割書:おしき》
草薦(さうせん)《割書:こも》 竹席(ちくせき)《割書:あじろ》
【右丁上段】
又/在家(さいけ)手水鉢(てうづばち)の前(まへ)にも立る
いしどうろ
○魚箸(ぎよちよ)はまなばし也/魚鱠箸(まなばし)
又は肉箸(すなばし)とも書(かく)べし
○交椅(かうい)は今(いま)いふ曲彔(きよくろく)のこ
となり字(し)未詳(いまだつまびらかなら)【「未」の送り仮名「ず」が欠けているか?】
○摺畳椅(しうでうい)はたゝみ曲彔(きよくろく)なり
○神主(しんしゆ)は廟主(べうしゆ)なり儒者(じゆしや)
のいはゐなり神主(しんしゆ)をおほ
ふさやを櫝(とく)といふ
○霊牌(れいはい)は仏者(ぶつしや)のいはゐ也
かたちさま〴〵かはりあり
○石碑(せきひ)は墓所(むしよ)にたつる石(せき)
塔(たう)なりいしぶみといふ碑(ひ)に
銘(めい)を書(かく)なり
○羽子板(はごいた)は正月に羽(はね)をつく
【左丁上段】
ものなり胡鬼板(こきいた)ともいふ
○酒帘(しゆうん)はさかばやしなり
一に望子(ばうし)ともいふ酒望子(さかばうし)
といふをあやまりてさかばや
しといふ
○鎹(そう)はかすがいなり鉄(てつ)にて
これをつくる鈌(けう)同
○鎖はくさりなり鉄鎖(てつさ)銅(とう)
鎖(さ)ならびに同又/鋃鐺(らうたう)とも
書(かさ)【「かく」とは読めない】べし
○/𣞙(さう)はつゞみのたうなり又
𣐎(くは)とも書なり
○和卓(くはしよく)はこゑをあやまりて
をしきといふよつて折敷(をしき)
とも書なり
○草薦(さうせん)はこもなりわら
【右丁下段挿絵】
㡠褙(とうほい) 紙手(かうで) 短冊(たんさく) 要(かなめ) 啄木(たくぼく)
柳筥(やないばこ) 抽匣(ちうかう)《割書:ひきだし》 土瓶(どびん) 滴器(てきき)《割書:げすい》
煙盃(ゑんはい)《割書:きせる》 皺皮(すうひ)《割書:ひきはだ》
【左丁下段挿絵】
宝蓋(ほうかい)《割書:てんがい》 棺(くわん)《割書:ひつき》
輀(し)《割書:ひつきぐるま》 龕(がん)
【右丁】
にておりたるむしろなり○竹席(ちくせき)は今(いま)いふあじろなり簟(たん)同し篾席(べつせき)も同し
たかむしろ○㡠褙(とうほい)はかけ物に小べりなき表具(ひやうぐ)をいふ道背(たうほ)㡠補(とうほ)絵(ゑ)とも書(かく)なり
へりほそきを輪補(りんほ)といふ○紙手(りうで)は物を入る紙(かみ)のふくろなりかうでんといふはあやまり也
紙(し)▢(らう)【糸+娄】はかうより○短冊(たんざく)は一に短籍(たんしやく)とも探索(たんさく)とも書(かく)べし色紙(しきし)○要(かなめ)はあふきのかな
めなり一に鹿目(かなめ)とかく○啄木(たくほく)は表具(ひやうぐ)の紐(ひも)なり組糸(くみいと)のかたち鳥(とり)の木(き)を啄(つゝき)たるあとに
にたれは啄木(たくぼく)といふ○柳筥(やないばこ)はをくり経歌(きやううた)の題(だい)又は硯(すゞり)鞠(まり)冠(かふり)などのする台(たい)なり木(き)の数(かす)
丁半(てうはん)のわかちあり○抽匣(ちうかう)は箱(はこ)のひきだしなり又は抽斗(ちうと)とも書(かく)なり○土瓶(どひん)は陶(つち)に
てつくり茶(ちや)を煮(にる)器(き)なり○滴器(てきき)はげすいなり下水(けすい)とも書(かく)べし水(みづ)こぼしなり
○煙盃(えんはい)はたばこをのむきせるなり但(たゝ)し和字(わじ)なるべし○皺皮(ひきはた)はしぼみかわなり
刀(かたな)わきざしのすふくろなり蟇皮(ひきはだ)同○宝蓋(はうかい)は天蓋(てんがい)なり仏(ほとけ)のうへにおほふものなり
○棺(くはん)はひつきなり死人(しにん)をいるゝはこなり柩(すう)【「すう」は○囲み】同/棺(くはん)をいるゝ外(そと)を槨(くわく)といふ寸法(すんほう)さだな【㊟】り
あり○輀(じ)は喪車(そうしや)なり今(いま)は大轝竹格(たいよちくかく)をもちゆ僧家(そうけ)にこれを龕(がん)といふ
拾冊之内
【左丁】
【裏表紙裏:文字無】
【㊟「ま」の誤ヵ】
【34と全く同じ 翻刻は略す】
《割書:増補|頭書》訓蒙図彙大成 一
【手書き、赤字】
目録
【資料整理ラベル】
TIAQ
《割書:11|164》
《割書:日本近代教育史|資料》
【見返し】
拾冊之内
【左丁】
増補訓蒙図彙序【印 自樂■■】
蓋聞 ̄ク陋-巷無-術之徒育 ̄スル_レ子 ̄ヲ乳-哺含飴
之余 ̄リ動 ̄モスレバ輒 ̄チ喋々 ̄タル乎無-稽之説以 ̄テ引_二-伸 ̄シ怪乱之
事 ̄ヲ_一不 ̄ト_レ已 ̄マ惟 ̄レ襁-褓 ̄ノ所_レ熟 ̄スル為 ̄リ_レ性 ̄ト附 ̄クノ_レ朱 ̄ニ之物為 ̄ルトキハ丹 ̄ト則 ̄チ
我 ̄レ恐 ̄ルト_三竊-癖姦-疾之子弟出 ̄コトヲ_二其 ̄ノ間 ̄ニ_一云 ̄フ昔 ̄シ者婦人
身(ハラム)_レ子 ̄ヲ身-持有 ̄レドモ_レ厳 ̄ナル猶且 ̄ツ堤_二-防 ̄ス親-聴 ̄ノ或(モシクバ)不 ̄ンカト_一レ正 ̄シ及_二其
【右丁】
已 ̄ニ生 ̄ルヽニ_一雖_二不_レ知不 ̄ト_一_レ識択 ̄ンデ_レ 人 ̄ヲ使 ̄ム_レ為 ̄サ_二之 ̄レガ則 ̄リヲ_一故 ̄ニ邪-色
不_レ染焉深-声無_レ触 ̄ルヽ焉唯《割書:〲》善是 ̄レ傚 ̄フ所_レ謂
嬉-戯之設 ̄ル_二礼-容 ̄ヲ_一有 ̄ンカ_レ本 ̄ヅクコト焉乎本立 ̄テ而道
生 ̄シ根固 ̄シテ而材成 ̄ル自_レ古記_レ之今夫 ̄レ道-徳之広
皆本 ̄ヒテ_二于文-字 ̄ニ_一而向 ̄フトキハ_二其津 ̄ニ_一則 ̄チ学-者以_レ識 ̄ルヲ_レ字 ̄ヲ為
_レ本 ̄ト無_二異-論_一而 ̄レドモ筆-研之於 ̄ル_二孩-提 ̄ニ_一其始 ̄メ若 ̄ク_レ苦 ̄キガ
【左丁】
若 ̄シ_レ辛 ̄キガ自 ̄リハ_レ非 ̄ル_レ有 ̄ルニ_二善-誘 ̄ノ在 ̄ル_一殆 ̄ド不_レ可_レ得於_レ是有 ̄リ_二
若(カクノゴトキ)中-村-氏訓-蒙図-彙之術_一可 ̄シ_レ謂 ̄フ善-誨
不 ̄ル_レ倦者 ̄ノト頃 ̄ロ又其増-補刻成 ̄ル其人使_三余 ̄ヲシテ讃_二
一-辞 ̄ヲ_一余一 ̄タビ披 ̄キ_レ巻 ̄ヲ閲 ̄ス_レ之 ̄ヲ類 ̄ト与方-名 ̄トハ不_レ容 ̄レ_レ言 ̄ヲ
啓-蒙之要-訣記-字之捷-径上 ̄ミ自_二雲-行雨-
施之略_一 下 ̄モ至_二鳥-飛魚-躍之状 ̄ニ_一品-物畢 ̄ク陳 ̄ネ
【右丁】
図-象可_レ愛 ̄ス設(モシ)令 ̄ムモ_レ有 ̄ラ_二陋-巷無-術之徒_一当 ̄テ_下諸 ̄レヲ
無-稽之説引_二伸 ̄スル怪-乱 ̄ヲ_一者 ̄ノニ_上為 ̄ストキハ_二顧-後之資 ̄ト_一則 ̄チ
襁-褓 ̄ノ所_レ熟為_レ性附 ̄クノ_レ朱之物 ̄ハ為_レ丹乃古之道之不
_レ遠 ̄カラ文 ̄ノ之習 ̄ノ之所_レ導 ̄ビク自-然向 ̄ンモ_二立-身之階-梯 ̄ニ_一亦何 ̄ゾ
疑 ̄ン盛 ̄ナルカナ哉時 ̄カ乎時也此 ̄レヲ為_レ序 ̄ト戊-申 ̄ノ冬十一月望
越前力丸光撰【印 東山】【印 力光之印】
【左丁】
訓蒙図彙叙
夫 ̄レ学 ̄ハ須 ̄ク_レ愛 ̄ム_レ日 ̄ヲ也無用 ̄ノ之弁
不急 ̄ノ之察 ̄ハ君-子棄 ̄テ而不_レ治 ̄メ
然 ̄トモ力-行 ̄ノ之余 ̄マリ游-芸 ̄ノ之際 ̄タ
凡 ̄ソ典-籍 ̄ニ所 ̄ノ_レ載 ̄スル之品-物欲_レ
 ̄スルトキハ窮 ̄ント_二其 ̄ノ微-意 ̄ノ之所 ̄ヲ_一レ寓(-) ̄スル則必
【右丁】
因 ̄テ_二其名 ̄ニ_一以審 ̄ニシ_二其象 ̄ヲ_一以察 ̄ニス_二
其-情 ̄ヲ【一点脱】矣夫-子以_三多 ̄ク識 ̄ヲ_二鳥
獣草-木 ̄ノ之名 ̄ヲ_一為 ̄ルコト_二学 ̄ノ_レ詩 ̄ヲ之
一-益 ̄ルト_一蓋為 ̄メナラン_レ之 ̄カ也名-義情-状 ̄ハ
皆可_下以_二訓-釈 ̄ヲ_一認 ̄ム_上レ之 ̄ヲ若 ̄キハ_二夫形-
象儀-文 ̄ノ_一則不_レ如 ̄カ_下験 ̄ムルカ_二于図 ̄ニ【一点脱】
【左丁】
之亮 ̄ナルニ_上於_レ是 ̄ニ乎後-世有 ̄リ_二百
-薬 ̄ノ之図_一有 ̄テ_二 六経 ̄ノ之図_一而至 ̄ル
_レ有 ̄テ_二【注】三才 ̄ノ之図【一点脱】焉近 ̄コロ又得 ̄タリ_下 一
巻 ̄ノ雑-字書画対-照 ̄シテ以便 ̄スル_二
于啓-蒙 ̄ニ_一者 ̄ヲ_上矣吾-家 ̄ニ有_二児
-女_一皆方 ̄ニ垂-髫焉内 ̄ニ無 ̄ク_二姆 ̄ノ可 ̄キ_一
【注 「有 ̄テ」は、寛文版は「有 ̄ニ」】
【右丁】
_レ従 ̄フ外無_二傅(フ) ̄ノ可 ̄キ_一レ就 ̄ク乃倣 ̄テ_二対-照 ̄ノ
之制 ̄ニ_一連_二-綴 ̄シ四-言 ̄ノ千-字 ̄ヲ_一副 ̄ルニ
以 ̄シ_二国字 ̄ヲ_一傍 ̄ルニ以 ̄シテ_二画象 ̄ヲ_一而授_レ之 ̄ヲ
矣児-女尽-日 ̄ス翫-覧 ̄シテ不_レ釈 ̄テ焉
自 ̄ヨリ-後稍《割書:〱》覩 ̄テ_レ物 ̄ヲ呼 ̄ヒ_レ名 ̄ヲ聞 ̄テ_レ名 ̄ヲ
弁 ̄シテ_レ物 ̄ヲ以 ̄テ至 ̄ル_三略識 ̄ルニ_二字-様 ̄ヲ_一噫(アヽ)
【左丁】
芸文 ̄ノ之学 ̄タモ猶及 ̄テ_二于実-践 ̄ノ
之暇 ̄ニ_一而多識之資 ̄ケハ又得_二于文
学 ̄ノ之余 ̄ニ_一況此閑雑 ̄ノ之事 ̄ヲヤ乎
但用 ̄ルコト_レ之 ̄ヲ当 ̄ルトキハ_二其可 ̄ニ_一則亦 ̄タ不_レ為
_レ無 ̄ト_レ所_レ補焉微-物 ̄ノ之難 ̄コト_レ棄 ̄テ
也如 ̄キカ_レ斯 ̄ノ夫比-隣 ̄ニ有 ̄リ_二書-肆_一 一-閲 ̄シテ
【右丁】
欲 ̄ス_レ梓 ̄ニセント_レ之 ̄ヲ初以_レ非 ̄ルヲ_レ所 ̄ニ_二嘗 ̄テ期 ̄スル_一辞
_レ之 ̄ヲ然 ̄トモ以_二屢-請 ̄テ不 ̄ルヲ_一レ已 ̄マ故 ̄ニ不_レ得_二
固 ̄ク拒 ̄コトヲ_一レ之 ̄ヲ於_レ是 ̄ニ重-修有 ̄テ_レ日而
成 ̄ル焉列 ̄ヌルコト_レ図 ̄ヲ凡 ̄テ一千其-間有 ̄テ_二
複-名 ̄ノ者_一而該 ̄ルコト_レ字 ̄ヲ一-千一百有六-
十 ̄ニシテ而相_二-避 ̄ク同-文 ̄ヲ_一矣附 ̄スル者又四-百
【左丁】
余-図通-編分 ̄テ為_二 十-七類二十
巻 ̄ト_一簽 ̄シテ曰_二訓-蒙図-彙 ̄ト【一点脱】奈-何 ̄カセン其
所 ̄ノ_レ纂 ̄ル名-物出 ̄ル_二於億-度 ̄ニ_一者雖【二点脱】
別 ̄テ_レ之 ̄ヲ不 ̄ト_一レ混 ̄セ而猶不_レ免 ̄シ_二間(マ)有 ̄コトヲ_一レ強 ̄ルコト
_レ所_レ不 ̄ル_レ知 ̄ラ且印 ̄シテ而行 ̄トキハ_レ之 ̄ヲ則遺【注】 ̄ルノ_二惑 ̄ヲ
千人 ̄ニ_一之罪実 ̄ニ莫 ̄シ_二得 ̄テ辞(-) ̄スルコト_一焉
【注 「遺」と「遣」の判別不可。寛文版「遺」に倣う】
【右丁】
深 ̄ク恨謀 ̄コトノ_レ始 ̄ヲ之不 ̄シテ_レ謹 ̄マ而今剞-
劂 ̄ノ之事已 ̄ニ就 ̄トキハ_レ緒 ̄ニ則無 ̄コトヲ_二以 ̄テ及 ̄フ_一矣
斯 ̄レ不 ̄ル_レ得_レ已 ̄コトヲ耳何 ̄ソ敢 ̄テ逃 ̄ン【二点脱】識 ̄ル-者 ̄ノ之
譏 ̄ヲ_一唯恐 ̄クハ不 ̄ル_レ識 ̄ラ者採 ̄テ_レ之 ̄ヲ不 ̄ンコトヲ_レ択 ̄ハ
也乃叙 ̄シ_二纂-輯 ̄ノ之所 ̄ヲ_一レ由 ̄ル并 ̄ニ条 ̄シテ_二其 ̄ノ
凡-例 ̄ヲ_一以属 ̄クト_二于肆 ̄ニ_一云寛-文丙-午
【左丁】
秋七月惕-斎識 ̄ス
【右丁】
三才千字文序(さんさいせんじもんのじよ)
先(それ)人(ひと)の智(ち)あるは自然(しぜん)也(なり)見聞(けんもん)する所(ところ)を心(こゝろ)に記(しる)して事物(じぶつ)の理(ことはり)
を弁(わきま)ふるに賢愚(けんぐ)の別(べつ)ありといへども馴(なる)るに随(したが)ひて其端(そのはし)を覚(さと)
らざる者(もの)なし学問(がくもん)の優劣(ゆうれつ)他(た)なし只(たゞ)識(しき)と不識(ふしき)とにあり近世(きんせい)
惕斎先生(てきさいせんせい)訓蒙図彙(きんもうづい)を著(あらはし)て童蒙(どうもう)に便(たより)す則(すなはち)人をして品物(ひんぶつ)の名象(めいしやう)
を識(しら)しめんとする而已(のみ)吾家(わがいへ)の児女輩(じじよはい)此書(このしよ)を玩(もてあそん)で先生(せんせい)の余沢(よたく)を蒙(かうむ)る
事(こと)少(すくな)からす故(ゆへ)に能(のう)書生(しよせい)某(それがし)に属(ぞく)し書中(しよちう)の四言(しごん)千文(せんもん)を筆(ひつ)せしめ剞劂(きけつ)
に附(ふ)して世(よ)に伝(つた)へ童子(どうじ)をして是(これ)を玩(もてあそば)しめ傍(かたはら)書学(しよがく)に便(たより)せんとす就中(なかんづく)
本書(ほんしよ)に考(かんが)へて図画(づぐわ)訳文(やくもん)を見時(みるとき)は童稚(どうち)の識(しること)を博(ひろ)くするの一助(いちじよ)ならずや
天明元辛丑之夏謙斎序
【左丁】
増補訓蒙図彙(ぞうほきんもうづい)凡例(はんれい)
一 凡(およそ)《振り仮名:此-編|このへん》《振り仮名:事-物|じぶつ》之(の)《振り仮名:名-称|めしやうい》雖(いへとも)_下皆(みな)以(もつて)_二漢字(かんじを)_一題(だいすと)_上レ之(これに)而(しかも)実(じつは)以(もつて)_二和(わ)-
名(みやうを)_一為(す)_レ主(しゆとす)【「す」衍】蓋(けだし)《振り仮名:本-邦|ほんほう》《振り仮名:中-華|ちうくは》《振り仮名:風-土|ふうど》之(の)殊(ことなる)如(ごときだに)_二《振り仮名:乾-象|けんしやう》《振り仮名:坤-儀|こんぎ》之(の)名(めい)-
状(じやう)《振り仮名:飛-潜|ひせん》《振り仮名:動-植|どうしよく》之(の)《振り仮名:形-色|けいしよく》【一点脱】猶(なほ)不(す)_二《振り仮名:必-同|かならずしもおなじから》_一矣 况(いはんや)《振り仮名:人-俗|にんぞく》《振り仮名:工-技|こうき》之
所(ところ)_レ習(ならふ)《振り仮名:堂-宇|だうう》《振り仮名:器-服|きふく》之(の)所(ところ)_レ制(せいする)豈(あに)得(ゑんや)_二《振り仮名:牽-強|けんきやう》而(して)合(あわすることを)_一_レ之(これに)故(ゆへに)随(したがつて)_二国(こく)-
俗(ぞくの)《振り仮名:称-呼|しやうこに》_一各(おの〳〵)取(とりて)_二《振り仮名:漢-字|かんじ》之(の)《振り仮名:事-義|じき》《振り仮名:形-状|けいじやう》《振り仮名:近-似|ちかくにたる》者(ものを)_一以(もつて)名(なづく)_レ之(これに)観(みる)-
者(もの)須(すべからく)【左ルビ:べし】_二先(まづ)知(しる)_一_レ之(これを)其(その)未(いまだ)【左ルビ:ざる】_レ得(ゑ)_二以(もつて)名(なづくること)_一_レ之(これに)之(の)字(じ)者(をば)欲(ほつす)_下題(だいするに)以(もつて)_二《振り仮名:和-名|わみやうを》_一
続(つがんと)_上_レ之(これに)然(しかれども)未(いまだ)【左ルビ:ず】_レ暇(いとまあら)_レ及(およぶに)_レ此(これに)
一 凡(およそ)《振り仮名:一-事|いちじにして》而《振り仮名:数-名|すうめいなる》者(ものは)以(もつて)_二《振り仮名:正-名|せいめいを》_一為(して)_レ標(へうと)而 注(ちうす)_二《振り仮名:異-名|いみやうを》于《振り仮名:其-下|そのしたに》_一
或(あるひは)為(ため)_レ拘(かゝはるが)_二于《振り仮名:属-対|ぞくたいに》_一或(あるひは)為(ために)_レ避(さるが)_二于《振り仮名:重-字|ぢうじを》_一題(だいするに)以(もつてする)_二《振り仮名:異-名|いみやうを》_一則(ときは)注(ちうするに)以(もつてして)_二
【国立公文書館デジタルアーカイブより別本を参照 https://www.digital.archives.go.jp/DAS/meta/listPhoto?LANG=default&BID=F1000000000000037253&ID=&NO=1&TYPE=JPEG&DL_TYPE=pdf】
【右丁】
《振り仮名:正-名|せいめいを》_一曰(いはく)某(それがし)-也 曰(いはく)某(それが)-之《振り仮名:一-名|いちみやう》曰(いはく)某(それ)謂(いふと)_二之(これを)某(それと)_一若(もし)《振り仮名:一-類|いちるいにし》而(て)
《振り仮名:殊-品|しゆひん》《振り仮名:一-体|いつたいにし》而(て)《振り仮名:分-支|ふんしするもの》者(は)則 注中(ちう〳〵)隔(へだてゝ)_レ圏(けんを)而 附(つく)_レ之(これを)《振り仮名:標-題|へうだいを》為(して)
_レ綱(かうと)而 余(よを)皆(みな)為(するなり)_レ目(もくと)也 其(その)所(ところ)_レ図(づする)倶(ともに)主(しゆとす)_二《振り仮名:正者|せいなるものを》_一若(もし)併(ならびに)画(ゑがく)_二《振り仮名:附者|ふするものを》【一点脱】
則(ときは)就(つひて)_二《振り仮名:図-中|づちうに》_一《振り仮名:識_二-別|しるしわかつ》之(これを)_一
一《振り仮名:諸-品|しよひんの》《振り仮名:名-称|めいしやう》《振り仮名:大-抵|おほむね》《振り仮名:漢字|かんじは》以(もつて)_二《振り仮名:方-俗|はうぞく》《振り仮名:従-来|じうらい》《振り仮名:熟-知|じゆくち》《振り仮名:慣-用|くわんようする》者(ものを)_一為(す)
_レ標(へうと)《振り仮名:異-称|いしやうは》以(もつて)【二点脱】近(ちかく)_レ俗(ぞくに)宜(よろしき)_レ今(いまに)者(ものを)【一点脱】属(つく)_レ之(これに)其(その)《振り仮名:和-名|わみやうも》亦(また)有(ある)_二《振り仮名:俗-呼|ぞくこ》【一点脱】則(ときは)
必(かならず)採(とつて)_レ之(これを)不(ず)_レ避(さけ)_二《振り仮名:鄙-俚|ひり》《振り仮名:猥-雑|わいざつを》_一皆(みな)欲(ほつして也)_二稚童(ちどう)蒙士(もうしをして)易(やすからんことを)【一点脱】_レ暁(さとり)
一《振り仮名:諸-品|しよひんの》《振り仮名:形-状|けいじやう》並(ならびに)象(かたどる)_二《振り仮名:茲邦|このくに》之(の)《振り仮名:風-俗|ふうぞく》《振り仮名:土-産|とさんに》_一矣 凡(およそ)所(ところの)_二《振り仮名:目-撃|もくげきする》_一者(ものは)
便(すなはち)《振り仮名:筆-而|ひつして》摹(もす)_レ之(これを)或(あるひは)拠(より)_二画家(ぐはか)之(の)所(ところに)_一_レ写(うつす)或(あるひは)審(つまびらかに)問(とひ)_二《振り仮名:識-者|しるひとに》【一点脱】《振り仮名:然-後|しかしてのち》
侖(ろんじて)_レ工(こうに)《振り仮名:描-成_二|べうせいす》之(これを)_一其間(そのあひだ)有(ある)_二《振り仮名:本-土|ほんとの》所(ところ)_レ無(なき)及(および)《振り仮名:有-無|うむ》未(いまだ)【左ルビ:ざると】_一_レ審(つまびらかなら)則(ときは)並(ならびに)
【左丁】
以(もつて)_二《振り仮名:異-邦|いはうの》《振り仮名:風-物|ふうぶつを》_一補(おぎなふ)_レ之(これを)然(しかれども)《振り仮名:豊-偉|ほうい》之(の)体(てい)非(あらず)_三《振り仮名:小-図|せうづの》所(ところに)_二《振り仮名:能容|よくいるゝ》_一繊(せん)
密(みつ)之(の)-文(ぶん)非(あらず)_三《振り仮名:曲-鑿|きよくさくの》所(ところに)_二《振り仮名:能-鐫|よくゑる》_一况(いはんや)只(たゞ)《振り仮名:墨-印|ぼくいんし》而(て)無(なきをや)_レ施(ほとこすこと)_二《振り仮名:暈-彩|うんさいを》_一乎
所(ところ)_レ得(うる)止(たゞ)【注】《振り仮名:依-稀|いちたる》《振り仮名:疎-影|そゑいを》乎(や)
一《振り仮名:引-証|いんしよう》之(の)《振り仮名:図-書|としよ》漢字(かんじは)以(もつて)_二《振り仮名:三-才|さんさい》《振り仮名:図-会|づゑ》《振り仮名:農-政|のうせい》《振り仮名:全-書|ぜんしよ》及(および)《振り仮名:諸-家|しよかの》
《振り仮名:本-草|ほんざう》之(の)《振り仮名:図-説|づせつを》_一為(す)_レ主(しゆと)凡(およそ)《振り仮名:訓-詁|くんこ》《振り仮名:注-疏|ちうそ》《振り仮名:稗-史|はいし》《振り仮名:雑-編-中|ざつへんのうち》有(ある)_二明(めい)
徴(てう)_一則(ときは)《振り仮名:採-摭|さいしやして》以(もつて)《振り仮名:裨-益|ひゑきす》矣《振り仮名:国-書|こくしよは》以(もつて)_二源氏(げんじが)《振り仮名:和-名-集|わみやうしうを》_一為(し)_レ本(もとゝ)以(もつて)_二
《振り仮名:林-氏|りんしが》《振り仮名:多-識-編|たしよくへんを》_一継(つぐ)_レ之(これに)凡(およそ)《振り仮名:類-編|るいへん》《振り仮名:雑-抄|ざつせう》如(ごとき)_二《振り仮名:字-鏡|じきよう》《振り仮名:壒-囊|あいのう》《振り仮名:下-学|かがく》
《振り仮名:節-用|せつよう》之(の)等(たぐひの)_一並(ならびに)参(まじへ)_レ之(これに)補(おぎなふ)_レ之(これを)若(もし)質(たゞし)_二諸(これを)《振り仮名:華-人|くはじんの》《振り仮名:帰-化|きくわする》者(ものに)_一問(とひ)_二諸(これを)
《振り仮名:交-游|かうゆうの》博(ひろき)_レ物(ものに)者(ひとに)_一咨(とひ)_二諸(これを)《振り仮名:技-術|きじゆつ》親(しんする)_レ事(ことに)者(ものに)_一詢(とひ)【二点脱】諸(これを)《振り仮名:樵-魚|せうぎよ》処(しよする)_レ野(やに)者(ものに)_一
《振り仮名:合-巧|がつこうし》而(て)《振り仮名:独_二-断|どくだんする》之(これを)_一則(ときは)必(かならず)称(しようして)_二《振り仮名:今-按|こんあんと》_一以(もつて)別(わかつ)_レ之(これを)其(その)未(いまだ)【左ルビ:さる】審(つまひらかにせ)者(ものは)称(しやうして)_二
【注 不鮮明部は国文学研究資料館蔵本を参照】
【右丁】
《振り仮名:或-曰|あるひはいはくと》_一以(もつて)備(そなふ)_二《振り仮名:参-閲|さんゑつに》_一矣 敢(あへて)正(たゞすとなれや)_二《振り仮名:其-名|そのなを》_一也哉 即(すなはち)以(もつて)_レ疑(うたがひを)伝(つたふる)_レ之(これを)耳(のみ)
《振り仮名:弁_二-明|べんめい》《振り仮名:揀_三-繹|れんゑきすることは》【注①】之(これを)_一在(あり)_レ 人(ひとに)也
一 今(いま)以(もつて)_二《振り仮名:目-次|もくし》之(の)数(すうを)_一別(べつに)為(なし)_二《振り仮名:大-字|たいじの》《振り仮名:冊-子|さくしと》_一呼(よんで)曰(いふ)_二《振り仮名:三-才|さんさい》《振り仮名:千-字-文|せんじもんと》_一
無(なし)_レ他(た)便(たよりすと也)_二于《振り仮名:戯-筆|きひつに》_一也【注②】
一《振り仮名:原-本|げんほんの》《振り仮名:図-彙|づいに》所(ところ)_二《振り仮名:遺-漏|ゐろうする》【一点脱】随(したがゐて)_レ得(うるに)補(おぎなふ)【レ点脱】之(これを)然(しかれども)《振り仮名:事-物|じぶつ》之(の)無(なき)_レ限(かきり)可(べき)_レ玩(もてあそふ)
者(ものも)亦(また)《振り仮名:多-端|たたん》近(ちかごろ)尋(たづね)_レ彼(かれに)問(とひ)_レ此(これに)撰(ゑらび)_下益(えきある)_二于《振り仮名:愛-玩|あいぐはんに》_一者(もの)《振り仮名:数-百|すひやくを》【上点脱】為(なす)_二続(ぞく)-
編(へんと)_一其(それ)行(ゆく〳〵)将(まさに)【左ルビ:すと】_レ嗣(つがんと)_レ刻(こくを)云(いふ)
【注① 「揀繹」は「連繹」(つらねるの意)ヵ。寛文版及び元禄版には「揀擇」(えらびわけるの意)とあり】
【注② 「無_レ他_レ便_二」ヵ】
【左丁】
頭書増補訓蒙図彙(かしらがきぞうほきんもうづゐ)目録(もくろく)
巻之(くはんの)一 天文之部(てんぶんのぶ)
─────────────────────────────────────
両儀(りやうぎ) 七政(しちせい) 太極(たいきよく) 陰陽(いんやう) 倭国(わこく)
国常立尊(くにとこたちのみこと) 秋津洲(あきつす) 日本国(につほんごく) 大唐(たいたう) 盤古氏(はんこし)
北辰(ほくしん) 列宿(れつしゆく) 日(じつ)《割書:ひ》 月(げつ)《割書:つき》 星(せい)《割書:ほし》
斗(と)《割書:北斗(ほくと)》 晦(くはい)《割書:つごもり》 朔(さく)《割書:ついたち》 弦(けん)《割書:ゆみはり》 望(ばう)《割書:もちづき》
参(しん)《割書:からすきぼし》 昴(ばう)《割書:すばるぼし》 彗(せい)《割書:はゝきぼし》 孛(はい)《割書:ぼつせい》 日蝕(につしよく)《割書:むしくひ》
月蝕(ぐわつしよく)《割書:むしばむ》 天漢(てんかん)《割書:あまの| がは》 牽牛(けんぎう)《割書:ひこぼし》 織女(しよくじよ)《割書:たなばた| つめ》 長庚(ちやうかう)《割書:ゆふづゝ》
太白(たいはく)《割書:あかぼし》 虚空(こくう)《割書:そら》 雲(うん)《割書:くも》 煙(ゑん)《割書:けふり》 風(ふう)《割書:かぜ》
露(ろ)《割書:つゆ》 霧(む)《割書:きり》 雨(う)《割書:あめ》 氷(へう)《割書:こほり》 雪(せつ)《割書:ゆき》
【右丁】\t\t\t\t
虹(こう)《割書:にじ|》 暈(うん)《割書:かさ|》 雷(らい)《割書:いかづち|》 電(でん)《割書:いなづま|》 雹(はく)《割書:あられ|》
氷柱(へうちう)《割書:つらゝ|》\t
\t\t\t────────────────────────────────────
巻之(くわんの)二 地理之部(ちりのぶ)
────────────────────────────────────
山(さん)《割書:やま|》 巓(てん)《割書:いたゞき|》 峰(ほう)《割書:みね|》 坂(はん)《割書:さか|》 岳(がく)《割書:だけ|》
巌(がん)《割書:いはほ|》 谷(こく)《割書:たに|》 瀑(はく)《割書:たき|》 丘(きう)《割書:をか|》 盤(はん)《割書:いは|》
崖(がい)《割書:かけぎし|》 麓(ろく)《割書:ふもと|》 桟(さん)《割書:かけはし|》 洞(とう)《割書:ほら|》 岬(かう)《割書:みさき|》
村(そん)《割書:むら|》 林(りん)《割書:はやし|》 川(せん)《割書:かわ|》 洲(しう)《割書:す|》 岸(がん)《割書:きし|》
海(かい)《割書:うみ|》 島(とう)《割書:しま|》 波(は)《割書:なみ|》 渦(くは)《割書:うづ|》 浜(ひん)《割書:はま|》
畔(はん)《割書:くろ|》 田(でん)《割書:た|》 塚(ちよう)《割書:つか|》 井(せい)《割書:ゐ|》 韓(かん)《割書:いづゝ|》
独梁(どくりやう)《割書:ひとつ| ばし》 溝(かう)《割書:みぞ|》 場(ぢやう)《割書:ば|》 沢(たく)《割書:さは|》 池(ち)《割書:いけ|》
【左丁】\t\t\t\t
礫(れき)《割書:さゞれいし|》 石(せき)《割書:いし|》 沙(しや)《割書:すな|》 泉(せん)《割書:いづみ|》 塘(たう)《割書:つゝみ|》
道(どう)《割書:みち|》 野(や)《割書:の|》 畷(せつ)《割書:なはて|》 園(ゑん)《割書:その|》 圃(ほ)《割書:はたけ|》
閭(りよ) 衢(く)《割書:ちまた|》 城(じやう)《割書:しろ|》 塹(ぜん)《割書:ほり|》 封疆(はうきやう)《割書:どて|》
橋(きやう)《割書:はし|》 市(し)《割書:いち|》 津(しん)《割書:つ|》 堤(てい)《割書:つゝみ|》 浮橋(ふきやう)《割書:うき| はし》
水柵(すいさく)《割書:しがら| み》 閘(かう)《割書:ひのくち|》 椻(ゑん)《割書:ゐせき|》 森(しん)《割書:もり|》
関(くわん)《割書:せき|》
峠《割書:とうげ|》 沼(せう)《割書:ぬま|》 薮(そう)《割書:やぶ|》 牧(ぼく)《割書:まき|》 墓(ぼ)《割書:はか|》
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巻之三 居処之部(きよしよのぶ)
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殿(てん)《割書:との|》 棟(とう)《割書:むね|》 檐(ゑん)《割書:のき|》 楹(ゑい)《割書:はしら|》 榑風(はふ)
蔀(ほう)《割書:しとみ|》 階(かい)《割書:きざはし|》 礎(そ)《割書:いしずへ|》 欄杆(らんかん) 扉(ひ)《割書:とびら|》
廊(らう)《割書:ほそどの|》 庭(てい)《割書:には|》 門(もん)《割書:かど|》 牆(しやう)《割書:かき|》 磚(せん)《割書:しきがはら|》
【右丁】
砌(せい)《割書:みぎり|》 華表(くはへう)《割書:とりゐ|》 宮(きう)《割書:みや|》 瑞籬(ずいり)《割書:みづがき|》 楼(ろう)《割書:たかどの|》
雪打(ゆた) 宅(たく)《割書:いゑ|》 櫺(れい)《割書:まど|》 厨(ちう)《割書:くりや|》 窖(かう)《割書:あなぐら|》
寺(じ)《割書:てら|》 塔(たう)《割書:あらゝぎ|》 亭(てい)《割書:あばらや|》 廬(ろ)《割書:いほり|》 屋(をく)《割書:や|》
厠(し)《割書:かはや|》 坊(ばう)《割書:まち|》 店(てん)《割書:いちぐら|》 槅子(かうし) 倉(さう)《割書:くら|》
廡(ぶ)《割書:ひさし|》 斎(さい) 窓(そう)《割書:まど|》 戸(こ)《割書:と|》 瓦(ぐは)《割書:かはら|》
蟆股《割書:かへる| また》 揵(けん)《割書:くわんのき|》 扃(けい)《割書:とざし|》 臥房(ぐはばう)《割書:ねや|》 鋪首(ほしゆ)
壁(へき)《割書:かべ|》 庁(ちやう)《割書:まんどころ|》 厩(きう)《割書:むまや|》 牢獄(らうごく)《割書:ひとや|》 柵(さく)《割書:しがらみ|》
閨(けい)《割書:ねや|》 籬(り)《割書:ませがき|》 浴室(よくしつ)《割書:ゆどの|》 枢(すう)《割書:くろゝ|》 駅(ゑき)《割書:むまやど|》
護摩堂(ごまだう) 台(たい)《割書:うてな|》 櫓(ろ)《割書:やぐら|》 桟敷(さんじき) 蹴鞠坪(しうきくのつぼ)
輪蔵(りんざう) 護朽(ごきう) 榱(さい)《割書:たるき|》 枅(けい)《割書:ひぢき|》 桁(かう)《割書:けた|》
【左丁】
藻井(さうせい) 枓(と)《割書:ますがた|》 窯(よう)《割書:かはらがま|》
──────────────────────────────────\t\t\t
巻之(くはんの)四 人物(じんぶつ)之部
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\t\t\t
公(こう)《割書:きみ|》 卿(けい)《割書:きみ|》 士(し)《割書:さふらい|》 女(じよ)《割書:をんな|》 嬰(ゑい)《割書:みどりこ|》
童(どう)《割書:わらはべ|》 翁(おう)《割書:おきな|》 婆(ば)《割書:うば|》 兵(へい)《割書:つはもの|》 農(のう)《割書:ものつくり|》
工(こう)《割書:だいく|》 商(しやう)《割書:あきびと|》 賈(こ)《割書:あきびと|》 医(い)《割書:くすし|》 卜(ぼく)《割書:うらなひ|》
膳夫(ぜんふ)《割書:かしはで|》 画工(ぐはこう)《割書:ゑし|》 巫(ぶ)《割書:みこ|》 祝(しく)《割書:かんぬし|》 僧(そう)《割書:よすてびと|》
尼(に)《割書:あま|》 鍛(たん)《割書:かぢや|》 冶(や)《割書:ゐものし|》 陶家(たうか)《割書:すへもの| つくり》 鬼(き)《割書:おに|》
仙(せん)《割書:やまびと|》 仏(ぶつ)《割書:ほとけ|》 薩(さつ)《割書:ぼさつ|》 楽官(がくくはん)《割書:がく| にん》 伶人(れいじん)《割書:まひ| びと》
俳優(はいゆう)《割書:わざ| おき》 染匠(せんしやう)《割書:そめ| どの》 蚕婦(さんふ)《割書:こがひ|》 機女(きぢよ)《割書:はた| をり》 弓人(きうじん)《割書:ゆげし|》
矢人(しじん)《割書:やはぎ|》 函人(かんじん)《割書:よろひ| し》 玉人(ぎよくじん)《割書:たま| ざいく》 硯工(けんこう)《割書:すゞり| きり》 櫛引(くしひき)
【右丁】\t\t\t\t
銀匠(ぎんしやう)《割書:しろかね| ざいく》 褙匠(はいしやう)《割書:ひやうぐ| し》 烏帽子折(ゑぼうしをり) 皮匠(ひしやう)《割書:かはざいく|》 傘工(さんこう)《割書:かさ| はり》
針磨(はりすり) 牙婆(がは)《割書:す| あひ》 薦僧(こもぞう) 筆工(ひつこう)《割書:ふで| ゆひ》 石工(せきこう)《割書:いし| きり》
圬者(うしや)《割書:かべ| ぬり》 相僕使(ことりづかひ)《割書:すもふ| とり》 扇工(せんこう)《割書:あふぎ| や》 漆匠(しつしやう)《割書:ぬし|》 侏儒(しゆじゆ)《割書:一寸| ぼうし》
兎唇(としん)《割書:いくち|》 駝背(だはい)《割書:せむし|》 蜑人(ゑんじん)《割書:あま|》 釣叟(てうさう) 樵夫(せうふ)《割書:きこり|》
猟師(れうし)《割書:かりう| ど》 瞽者(こしや)《割書:もう| もく》 乞児(きつじ)《割書:もの| もらひ》 販婦(はんふ)《割書:ひさき| め》 漁夫(ぎよふ)《割書:すなどり|》
舟子(しうし)《割書:ふなこ|》 牧童(ぼくどう)《割書:うしかひ| わらは》 鏡造(かゞみつくり) 娼婦(しやうふ)《割書:うかれめ|》 遊女(ゆうぢよ)《割書:うかれめ|》
渉人(せうじん)《割書:わたし| もり》 駕輿丁(かよてう)《割書:かご| かき》 浪人(らうにん) 傀儡子(くわいらいし)《割書:てくゞつ|》 馬借(ばしやく)《割書:むまさ| し》
伯楽(はくらく)《割書:むま| くすし》 車借(くるまがし) 問丸(とひまる) 土器師(かはらけし) 《割書:大(お)|原(はらの)》黒木女(くろきめ)
屠者(としや)《割書:ゑた|》 中国(ちうごく) 朝鮮(てうせん) 粛慎(しくしん) 蒙古(もうこ)
天竺(てんちく) 琉球(りうきう) 安南(あんなん) 東番(とうばん)《割書:たか| さご》 暹羅(せんら)《割書:しや| むろ》
【左丁】
占城(せんせい)《割書:ちやん| はん》 東夷(とうい)《割書:ゑぞ|》 南蛮(なんばん)《割書:みなみの| ゑびす》 呂宋(りよそう)《割書:るすん|》 長脚(ちやうきやく)《割書:あしなが|》
長臂(ちやうひ)《割書:てなが| じま》 崑崙(こんろん)《割書:くろ| ぼう》 長人国(ちやうじんこく) 小人国(しやうじんこく)
\t────────────────────────────────────\t
巻(くわん)之五 身体(しんたい)之部
────────────────────────────────────\t
頭(づ)《割書:かしら|》 口(こう)《割書:くち|》 眉(び)《割書:まゆ|》 目(もく)《割書:め|》 耳(に)《割書:みゝ|》
鼻(び)《割書:はな|》 歯(し)《割書:は|》 舌(ぜつ)《割書:した|》 鬚《割書:したひげ|》 髭(し)《割書:うはひげ|》
鬢(びん) 髪(はつ)《割書:かみ|》 筋(きん)《割書:すぢ|》 毛(もう)《割書:け|》 顱(ろ)《割書:はち|》
骨(こつ)《割書:ほね|》 腹(ふく)《割書:はら|》 背(はい)《割書:せなか|》 手(しゆ)《割書:て|》 脚(きやく)《割書:あし|》
拳(けん)《割書:こぶし|》 指(し)《割書:ゆび|》 肋(ろく)《割書:あばらぼね|》 乳(にう)《割書:ち|》 心(しん)《割書:こゝろ|》
肺(はい)《割書:ふく〳〵し|》 脾(ひ)《割書:よこし|》 腎(じん)《割書:むらと|》 肝(かん)《割書:きも|》 胆(たん)《割書:ゐ|》
腸(ちやう)《割書:はらわた|》 大腸(だいちやう) 小腸(せうちやう) 胃(い)《割書:くそぶくろ|》 膀胱(ぼうくわう)《割書:ゆばり|【注】》
【注 「ゆばりぶくろ」】
【右丁】
包絡(はうらく) 臓腑(ぞうふ) 胞胎(はうたい)《割書:はら| ごもり》 胎衣(たいい)《割書:ゑな》
────────────────────────────────
巻(くはん)之六 衣服(いふく)之部
────────────────────────────────
冕(べん)《割書:たまのかむり》 纓(えい) 冠(くわん)《割書:かむり|官品玉冠(くわんひんのぎよくくわん)》 幞(ぼく) 巾(きん)《割書:頭巾(づきん)|唐巾》
帽(ばう) 帽子(もうす) 笏(こつ)《割書:木笏(もくしやく)|牙笏(げしやく)》 烏帽子(ゑぼし) 緌(い)
袞(こん) 裳(しやう)《割書:も》 袍(はう)《割書:うへのきぬ》 衫(さん)《割書:かたびら》 袴(こ)《割書:はかま》
裙(くん)《割書:も》 珮(はい)《割書:をもの》 帯(たい)《割書:をび》 靴(くわ)《割書:くわのくつ》 半臂(はんひ)
欠掖(けつゑき) 布衣(ほい) 奴袴(ぬこ) 襟(きん)《割書:ゑり》 裾(きよ)
袊(れい)《割書:ゑり》 袖(しう)《割書:そで》 袈裟(けさ) 直掇(ぢきとつ) 魚袋(ぎよたい)
革帯(かくたい)《割書:いしの| をび》 韈(べつ)《割書:したうづ》 深衣(しんい) 幅巾(ふくきん) 絡子(らくし)《割書:くはら》
履(くつ)《割書:浅履(あさぐつ)|《振り仮名:烏皮履|くりかはのくつ》》 被(ひ)《割書:ふすま|睡襖(すいをう)》 帨(ぜい)《割書:てのごい》 帕(はく) 緇布冠(しふくはん)
【左丁】
毛裘(もうきう)《割書:かは| ごろも》 涎衣(ぜんい)《割書:よだれ| かけ》 裹脚(くわきやく)《割書:きや| はん》 幄(あく) 帳(ちやう)《割書:かや》
幔(まん)《割書:とばり》 幕(ばく)《割書:まく》 座具(ざく) 縁道絹(えんどうのきぬ) 夾衣(きやうい)《割書:あわせ》
褥(しく)《割書:しとね》 降緒(かうしよ)《割書:さげを|》 雨衣(うい)《割書:かつは》 浴衣(よくい)《割書:ゆかた| びら》 蔽膝(へいしつ)《割書:まへだれ》
鞋(かい)《割書:糸鞋(しかい)いとぐつ|草鞋(さうかい)わらぐつ》 屐(げき)《割書:あしだ|木履(ぼくり)》
────────────────────────────────
巻(くはん)之七 宝貨(はうくは)之部
────────────────────────────────
金(きん)《割書:こがね》 銀(ぎん)《割書:しろかね》 鉛(ゑん)《割書:なまり》 鉄(てつ)《割書:くろがね》 銅(とう)《割書:あかゞね》
銭(せん)《割書:ぜに》 珠(しゆ)《割書:たま》 玉(ぎよく)《割書:たま》 礬(はん) 硃(しゆ)《割書:朱砂(しゆしや)|銀朱(ぎんしゆ)》
硫(いわう)《割書:ゆのあわ|発燭(はつしよく)》 硝(せう)《割書:芒硝(ばうせう)|牙硝(げせう)》 磁(じ)《割書:はりすい| いし》 砒(ひ)《割書:どくいし|砒霜(ひさう)》 砥(し)《割書:あはせど|》
礪(れい)《割書:あらと》 玻瓈(はり) 瑪瑙(めのう) 硨磲(しやこ) 瑠璃(るり)
珊瑚(さんご) 琥珀(こはく) 琅玕(らうかん) 玳瑁(たいまい) 紗(しや)《割書:もじ|》
【右丁】
熨斗目(のしめ) 錦(きん)《割書:にしき|》 繍(しう)《割書:ぬひもの|》 縠(こく)《割書:ちりめん|》 綾(りやう)《割書:あや|》
綃(せう)《割書:すゞし|》 緞(たん)《割書:どんす|》 絹(けん)《割書:きぬ|》 繻珍(しゆちん) 繻子(しゆす)
紅染(もみぞめ) 加賀絹(かがぎぬ) 線(せん)《割書:よりいと|》 絛(たう)《割書:くみひぼ|《割書:又|》組(そ)《割書:又|》紃(しゆん)《割書:同|》》 糸(し)《割書:いと|》
綿(めん)《割書:わた|》 八 丈島(じやうじま) 絨(しう)《割書:びらうど|》 氊(せん)《割書:もうせん|》 金薄(きんばく)
水銀(みづかね) 高麗織(かうらいをり) 皮(ひ)《割書:かは|》 革(かく)《割書: |韋(い)》 鉄線(てつせん)《割書:はり| がね》
水精(すいしやう)《割書:みづとり| たま》 火精(くわしやう)《割書:ひとり| だま》 緑青(ろくしやう) 白粉(はくふん)《割書:おしろい|》 雲母(うんも)《割書:きらゝ|》
石胆(せきたん)《割書:たんはん|》 浮石(ふせき)《割書:かろいし|》 温石(をんじやく) 滑石(くわつせき) 鱉甲(べつかう)
麒麟血(きりんけつ) 幣(へい)《割書:にぎて|》 木綿襷(ゆふだすき) 石灰(せきくわい)《割書:いし| ばひ》 海塩(かいゑん)
──────────────────────────────
巻(くはん)之八 器用(きよう)之部
──────────────────────────────
紙(し)《割書:かみ|》 筆(ひつ)《割書:ふで|》 墨(ぼく)《割書:すみ|》 硯(けん)《割書:すゞり|》 書(しよ)《割書:本 横巻|冊子》
【左丁】
画(ぐは)《割書:ゑ|》 裱(へう)《割書:へうし|》 帙(じつ)《割書:ふまき|》 牋(せん)《割書:しきし|》 印(ゐん)《割書:をして|》
印色(いんしよく)《割書:いんにく|》 符(ふ)《割書:わりふ|》 簿(ほ) 暦(れき)《割書:こよみ|》 扇(せん)《割書:あふぎ|》
団扇(だんせん)《割書:うちは|》 翳(ゑい)《割書:は|》 筭(さん)《割書:そろばん|》 尺(しやく)《割書:ものさし|摺尺(せくるしやく)》 払塵(ふつぢん)《割書:ほつす|》
如意(によい) 几(き)《割書:をしまづき|》 案(あん)《割書:つくゑ|》 蝋蠋(らうそく)【燭】 鐘(しやう)《割書:つりがね|》
笛(てき)《割書:ふゑ|》 尺八(しやくはち)《割書: |竪笛(しゆてき)》 横笛(わうてき)《割書:よこ| ぶゑ》 鐸(たく)《割書:すゞ|》 風鈴(ふりやう)
鈴子(れいし)《割書:すゞ|》 鈸(はつ) 鉦(しやう) 土拍子(とびやうし) 籥(やく)《割書:こまぶえ|》
鼓(こ)《割書: |大鼓也(たいこなり)》 笙(しやう) 簫(しやう) 柷(しく) 磬(けい)《割書: |銅磬(どうけい)》
律(りつ)《割書:づだけ|》 琴(きん)《割書:こと|》 瑟(しつ) 箏(さう)《割書:さうのこと|》 阮(げん)《割書:阮咸(げんかん)|月琴(げつきん)|》
琵琶(びは) 篳篥(ひちりき) 軫(しん)《割書:琴軫(ことのしん)|比巴軫(びはのしん)》 柱(ちう) 敔(ぎよ)《割書:さゝら|》
抱(ふ)《割書:大鼓抱(たいこのばち)|羯鼓抱(かつこのばち)》 撥(ばち)《割書:比巴撥(びはのばち)|三絃撥(さんけんのばち)》 塤(けん) 鼗(たう)《割書:ふりつゞみ|》 三絃(さんけん)《割書:さみ| せん》
【右丁】
繫爪(けつさう) 仮面(かめん)《割書:まひの| おもて》 銅羅(とうら) 銅鉢(とうはち)《割書:きん|》 羯鼓(かつこ)
腰鼓(ようこ) 風鐸(ふうたく)《割書:はう| ちやく》 雲版(うんはん)《割書:ちやう| はん》 嗩吶(さのう) 喇叭(らは)《割書: 同 |銅角(とうかく)》
六采(りくさい)《割書:すご| ろく》 棊(き)《割書:ご|》 枰(へい)《割書:ごばん|》 簺(さい)《割書: |骰子(たうし)》 象棋(しやうぎ)
硯屏(けんひやう) 水滴(すいてき)《割書: |水中丞(すいちうぜう)》 書鎮(しよちん) 筆架(ひつか) 界方(かいはう)《割書:ひぢやう| ぎ》
圧尺(あつしやく)《割書:けさん|》 眼鏡(がんきやう)《割書:めがね|》 爪杖(さうぢやう)《割書:まごの| て》 鞠(きく)《割書:まり|》 燭台(しよくだい)
燭奴(しよくど) 灯籠(とうろう) 灯檠(とうけい) 油瓶(ゆびやう) 《振り仮名:燭𤋎|しよくせん》《割書:しん| きり》【剪】
灯(とう)《割書:ともしび|》 挑灯(てうちん)《割書: 同|提灯》 方灯(はうとう)《割書:あん| どう》 烟火(ゑんくわ)《割書:はなび|》 拍板(はくはん)《割書:びん| ざゝら》
香炉(かうろ) 筯瓶(ぢよびやう) 佩香(はいかう)《割書:にほひ| のたま》 線香(せんかう) 薫籠(くんろう)《割書:ふせご|》
香餅(かうべい)《割書:たどん|》 空鐘(くうしやう)《割書:たう| ごま》 毬杖(きうじやう)《割書:ぎつ| ちやう》 投壺(とうこ)《割書:つほ| なげ》 爆竹(はくちく)《割書:さぎ| ちやう》
紙鳶(しゑん)《割書:いかの| ぼり》 竹馬(ちくば)《割書:たけ| むま》 風車(ふうしや)《割書:かざ| ぐるま》 木偶(もくぐう)《割書:にん|ぎやう》 陀螺(だら)《割書:ぶしやう| ごま》
【左丁】
────────────────────────────────
巻(くわん)之九 器用(きよう)之部
────────────────────────────────
幢(とう)《割書:はた|》 幡(ばん)《割書:はた|》 旗(き)《割書:はた|》 纛(たう)《割書:はた|》 羽葆幢(うはうとう)
銅雀幢(とうじやくとう) 兵幡(へいはん) 仏幡(ぶつはん) 鉾(ぼう)《割書:ほこ|》 楯(しゆん)《割書:たて|》
鎧(かい)《割書:よろひ|》 冑(ちう)《割書:かぶと|》 刀(たう)《割書:かたな|短刀(のだち) 長刀(ながだち)》 鎗(さう)《割書:やり|》 鈇(ふ)《割書:をの|》
銊(ゑつ)《割書:まさかり|》【鉞】 戈(くわ)《割書:ほこ|》 戟(げき)《割書:ほこ|》 柄(へい)《割書:え|》 䂎(さん)《割書:いしづき|鐏(そん)《割書:同|》䥞(げき)《割書:同|》》
幟(し)《割書:はたしるし|》 剣(けん)《割書:つるぎ|》 鐔(たん)《割書:つば|》 鞘(せう)《割書:さや|》 欛(は)《割書:つか|》
矢(し)《割書:や|》 鏃(ぞく)《割書:やじり|》 靫(さ)《割書:うつぼ|》 箙(ふく)《割書:やなぐい|》 弓(きう)《割書:ゆみ|》
弩(ど)《割書:おほゆみ|》 砲(はう)《割書:いしはじき|》 銃(しう)《割書:てつはう|》 韘(てう)《割書:ゆがけ|》 韝(こう)《割書:ゆごて|》
的(てき)《割書:まと|》 垛(た)《割書:あづち|》 鞍(あん)《割書:くら|》 鐙(とう)《割書:あぶみ|》 鞦(しう)《割書:しりがひ|》
䪊(りう)《割書:おもがひ|》 銜(かん)《割書:くつわ|》 鑣(せう)《割書:くつわの| かゞみ》 韁(きやう)《割書:たづな|》 鞭(べん)《割書:むち|》
【右丁】
長剣(ちやうけん)《割書:なぎ| なた》 鋼叉(かうさ)《割書:十もん| じ》 鉄把(てつは)《割書:つく| ぼう》 鉄鞭(てつべん)《割書:かな| むち》 火箭(くわせん)《割書:ひや|》
飄石(へうせき)《割書:づん| ばい》 発貢(はつこう)《割書:いし| びや》【熕】 鹿砦(ろくさい)《割書:さか| もぎ》 障泥(しやうでい)《割書:あをり|》 屧脊(せうせき)
鉗(けん)《割書:くびがね|》 枷(か)《割書:くびかし|》 笞(ち)《割書:しもと|杖(ぢやう)つえ》 棒(ばう)《割書: |棍(こん)《割書:同|》》 吾杖(ごぢやう)《割書:きりこ|》
碇(てい)《割書:いかり|》 車(しや)《割書:くるま|》 輦(れん)《割書:てぐるま|》 兠(とう)《割書:かぶと|》 輿(よ)《割書:こし|》
輪(りん)《割書:わ|》 輞(まう)《割書:おほわ|》 轂(こく)《割書:こしき|》 輻(ふく)《割書:や|》 軸(ぢく)《割書:よこき|》
轅(ゑん)《割書:ながえ|》 軛(やく)《割書:くびき|》 桊(けん)《割書:はなぎ|》 桟車(さんしや)《割書:にぐるま|》 籃輿(かんよ)《割書:あんだ|》
帆(はん)《割書:ほ|》 檣(しやう)《割書:ほばしら|》 柁(た)《割書:かぢ|》 舟(しう)《割書:ふね|》 舶(はく)《割書:ふね|》
艜(たい)《割書:ひらた|》 艇(てい)《割書:をぶね|》 㯭(ろ)【艣】 棹(たう)《割書:かい|》 筏(はつ)《割書:いかだ|》
篷(ほう)《割書:とま|》 野航(やかう)《割書:わたし| ぶね》 番舶(ばんはく)《割書:ゑびす| ぶね》 車蓋(しやかい)《割書:くるまの| やかた》 轄(かつ)《割書:くさび|》
䡄(き)《割書:くるまの| よこぎ》
【左丁】
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巻(くはん)之十 器用(きよう)之部
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犂(り)《割書:からすき|》 耙(は)《割書:むまくは|》 鑱(さん)《割書:からすきの| さき》 鐴(へき)《割書:からすきの| へら》 鐮(れん)《割書:かま|》
担(たん)《割書:あふご|》 輭担(せんたん)《割書:やま| あふご》 匾担(へんたん)《割書:たび| あふご》 钁(くわく)《割書:すき|》 鍤(さう)《割書:くは|》
鎛(はく)《割書:こぐは|》 鏟(さん)こずき 櫌(いう)《割書:つちわり|》 杈(さ)《割書:またぶり|》 把(は)《割書:さらひ|》
竹把(ちくは)《割書:こま| ざらひ》 木把(もくは) 朳(はつ)《割書:えぶり|》 鉄搭(てつたう)《割書:くまで|》 火叉(くはさ)
蓑(さ)《割書:みの|》 笠(りつ)《割書:かさ|》 畚(ほん)《割書:ふご|》 籠(ろう)《割書:かご|》 蓧(でう)《割書:あじか|》
簣(き)《割書:あじか|》 礱(ろう)《割書:すりうす|》 磨(ま)《割書:いしうす|》 碓(たい)《割書:からうす|》 榨(さ)《割書:うちひ|》
銀剪(きんせん)《割書:かな| ばさみ》 石鏨(せきせん)《割書:いしきり| のみ》 連耞(れんか)《割書:から| さほ》 機(き)《割書:はた|》 杼(ぢよ)《割書:ひ|》
筬(せい)《割書:をさ|》 綜(そう)《割書:へ|》 筟(ふ)《割書:くだ|》 篗(わく) 績纒(せきてん)《割書:へそ|》
絡柅(らくち)《割書:たゝり|》 績桶(せきとう)《割書:おごけ|》 紡錘(はうすい)《割書:つむ|》 布機(ふき)《割書:しも| はた》 撥柎(はつふ)《割書:まひ| ば》
【右丁】
搗砧(たうちん)《割書:きぬた|》 繰車(さうしや)《割書:おほが|》 繀車(さいしや)《割書:ぬき| かぶり|》 攪車(かうしや)《割書:きわた| くり》 紡車(はうしや)《割書:いとより| くるま》
蚕連(さんれん) 蚕簿(さんはく)《割書:えびら|》 針(しん)《割書:はり|》 熨(い)《割書:のし|》 規(き)《割書:ぶんまはし|》
矩(く)《割書:まがりがね|》 準(じゆん)《割書:さげすみ|》 縄(じやう)《割書:すみつぼ|》 釿(きん)《割書:てをの|》 鐁(し)かな
鉋(はう)《割書:つきかんな|》 鋸(きよ)《割書:のこぎり|》 槌(つい)《割書:つち|》 木槌(もくつい)《割書:こづち|》 《振り仮名:椓■|たくげき》《割書:あいづち|》【注】
柊揆(しうき)《割書:さい| づち》 鑿(さく)《割書:のみ|》 鑚(さん)《割書:きり|》 錐(すい)《割書:きり|》 《振り仮名:𣖯|しん》《割書:すみさし|》
鏝(まん)《割書:こて|》 鑢(りよ)《割書:やすり|》 鏨(せん)《割書:たがね|》 鑕(しつ)《割書:かなしき|》 鋏(けう)《割書:かなはし|》
鎚(つい)《割書:かなづち|》 鐇(ばん)《割書:まさかり|》 斧(ふ)《割書:をの|》 鞴(はい)《割書:ふいがう|》 堝(くわ)《割書:るつぼ|》
削刀(さくたう)《割書:こがた| な》 裁刀(さいたう)《割書:ものたち| がたな》 楔(せつ)《割書:くさび|》 釘(てい)《割書:くぎ|》 索(さく)《割書:なは|》
橛(けつ)《割書:くひ|》 鉸具(かうぐ)《割書:てふつ| がひ》 箍束(こそく)《割書:わ|》 篾箍(べつこ)《割書:たけわ|》 鉄束(てつそく)《割書:かなは|》
釣鉤(てうこう)《割書:つり| ばり》 砧(ちん)《割書:あて|》 轆轤(ろくろ)《割書:くる| まき|》 桔槹(けつかう)《割書:はね| つるべ》 瓦竇(ぐわたう)《割書:かわら| び》
【左丁】
綿弓(めんきう)《割書:きわた| ゆみ》 旋盤(せんはん)《割書:すへ| ものゝ| ぐ》 牽鑚(けんさん)《割書:ろくろ| かな》 木挺(もくてい)《割書:てこ|》 鉄挺(てつてい)《割書:かな| てこ》
絞車(かうしや)《割書:まき| ろくろ》 趕網(かんまう)《割書:さで|》 欓網(とうまう)《割書:すくひ| だま》 罾(そう)《割書:よつで|》 羅(ら)《割書:とりあみ|》
笯(ど)《割書:とりこ|》 囮(くわ)《割書:おとり|》 弶(りやう)《割書:わな|》 矟(さく)《割書:やす|》 雀竿(じやくかん)《割書:とり| ざほ》
鷹架(ようか)《割書:たかの| ほこ》 炉工台(ろくだい) 籞(きよ)《割書:いけす|》 石籠(せきろう)《割書:しや| かご》 筒車(とうしや)《割書:みづ| ぐるま》
水筧(すいけん)《割書:うけ| ひ》 飜車(はんしや)《割書:りう| こつしや》 戽斗(ことう)《割書:なげ| つるべ》 塘網(たうまう)《割書:ひき| あみ》 撒網(さんまう)《割書:うち| あみ》
案山子(かゞし) 魚梁(ぎよりやう)《割書:やな|》 魚簄(ぎよこ)《割書:えり|》 楨榦(ていかん)《割書:ついぢ| いた》 榰柱(しちう)《割書:つかへ|》
水平(すいへい)《割書:みづ| ばかり》 縄車(じやうしや)《割書:なはなひ|》 障子(しやうじ) 土圭(とけい)
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巻(くはん)之十一 器用(きよう)之部
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簾(れん)《割書:すだれ|》 屛(へい)《割書:びやうぶ|》 囲屛(いびやう)《割書:をり| びやう| ぶ》 枕(しん)《割書:まくら|》 席(せき)《割書:むしろ|》
椅子(いす) 牀(しやう)《割書:ゆか とこ|》 杌(ごつ)《割書:こしかけ|》 墩(とん)《割書:こしかけ|》 匜(い)《割書:はんざう|》
【注 ■は「擊(撃)」の「手」を「金」に作る。「撃」の誤記ヵ】
【右丁】
盥(くわん)《割書:たらひ|》 鏡(きよう)《割書:かゞみ|》 剪(せん)《割書:はさみ|摺剪夾剪(しうせん。けうせん)》 鑷(てふ)《割書:けぬき|》 笄(けい)《割書:かんざし|》
髲(ひ)《割書:かづら|》 櫛(しつ)《割書:くし|》 梳(しよ)《割書:すきぐし|》 㮑(さう)《割書:さしぐし|》【挿】 枇(ひ)《割書:ほそぐし|》
鏡台(きやうだい)《割書:かがみ| かけ|鏡架(きやうか)》 粉匣(ふんかう)《割書:おしろい| ばこ》 壺(こ)《割書:つぼ|》 瓶(へい)《割書:かめ|》 樽(そん)《割書:たる|》
櫑(らい)《割書:もたひ|》 盃(はい)《割書:さかづき|》 盞(さん)《割書:ちよく|》 巵(し)《割書:さかづき|》 爵(しやく)《割書:すゝめかうろ|》
鼎(てい)《割書:あしかなへ|》 鍋(くは)《割書:なべ|》 釜(ふ)《割書:かま|》 甑(そう)《割書:こしき|》 鼎炉(ていろ)《割書:かうろ|》
匙(し)《割書:かひ|》 飯匙(はんし) 茶匙(さじ) 薬匙(やくじ) 香匙(きやうじ)
飯臿(はんさう)《割書:いひ| かゐ》 筯(ぢよ)《割書:はし|》 火筯(くはぢよ)《割書:ひばし|》 碗(わん)《割書: |盂(う)》 茶碗(ちやわん)
木椀(もくわん) 碟(せう)《割書:さら|》 托(たく)《割書:ちやだい|》 盤(ばん)《割書: |台盤(だいばん)》 盞盤(さんはん)《割書:さかづき| だい》
盒(がう)《割書:じきろう|》 鉢(はち) 盆(ぼん)《割書:さはち|》 甕(おう)《割書:もたひ|》 缶(ふ)《割書:つるべ| 汲桶》
桶(とう)《割書:をけ|》 槽(そう)《割書:ふね|》 杓(しやく)《割書:ひしやく|》 筅(せん)《割書:ちやせん|》 筅帚(せんさう)《割書:さゝら|》
【左丁】
箕(き)《割書:み|》 篩(さい)《割書:ふるひ|》 筲(さう)《割書:いかき|》 籃(かん)《割書:かご|》 竈(さう)《割書:かまど|》
炉(ろ)《割書:ひたき|》 燧(すい)《割書:ひうち|》 火(くは)《割書:ひ|》 升(せう)《割書:ます|》 合(がふ)
杵(しよ)《割書:きね|》 臼(きう)《割書:うす|》 唾壺(だこ)《割書:ぢんこ|》 湯婆(たうば)《割書:たんほ|》 温壺(うんこ)
觶(たん)《割書:さかづき|》 觚(こ)《割書:さかづき|》 彛(い)《割書:たる|》 洗(せん)《割書:はんだう|》 尊(そん)《割書:たる|》
罍(らい)《割書:もたひ|》 簠(ほ) 簋(き) 鍑(ふ)《割書:さかり|》 鐺(たう)《割書:さしなべ|》
樏(るい)《割書:わりご|》 笥(し)《割書:はこ|》 漏斗(ろと)《割書:じやうご|》 湯鑵(たうくはん)《割書:やくわん|》 水罐(すいくはん)《割書:みづ| がめ》
風炉(ふうろ) 雪洞(せつとう) 銅銚(とうてう)《割書:てうし|》 銅提(とうてい)《割書:ひさげ|》 提炉(ていろ)《割書:ちや| べん| たう》
提盒(ていがう)《割書:さげ| ぢう》 耳壺(じこ) 嚢(のう)《割書:ふくろ|》 鎖(さ)《割書:じやう|》 吹筒(すいとう)《割書:ひふき|》
絹篩(けんさい)《割書:きぬ| ぶるひ》 糊刷(こせつ)《割書:のり| ばけ》 砧板(ちんはん)《割書:まな| いた》 割刀(かつたう)《割書:はう| てう》 麪杖(めんぢやう)《割書:むぎ| をし》
薑擦(きやうさつ)《割書:わさび| おろ| し》 豆(とう) 擂盆(らいぼん)《割書:すり| ばち》 天平(てんへい)《割書:てん| びん》 㳒馬(はうば)《割書:ふん| どう》【法】
【右丁】
秤(せう)《割書:はかり|》 錘(つい)《割書:はかりの| おもし》 橐(たく)《割書:おびぶくろ|》 𨰉(さつ)《割書:くすり| きざみ》 碾(てん)《割書:やげん|》
鑰(やく)《割書:かぎ|》 帚(しう)《割書:はゝき|》 檯(だい) 櫉(ちう)《割書:づし|》 箱(さう)《割書:はこ|》
櫃(き)《割書:ひつ|》 傘(さん)《割書:からかさ|》 葢(かい)《割書:きぬがさ|》 拐(かい)《割書:かせづえ|》【注①】 杖(ぢやう)《割書:つえ|拄杖》
炬火(こくは)《割書:たいまつ|》 燎火(れうくは)《割書:にはび|》 喞筒(そくとう)《割書:みづ| はじ| き》 俎(そ)《割書:つくえ|》 竿(かん)《割書:さほ|》
梯(てい)《割書:はしご|》 凳(とう)《割書:くらかけ|》 標榜(へうはう)《割書:ふだ|》 署扁(しよへん)《割書:がく|》 胡床(こしやう)《割書:あぐら|》
渾儀(こんぎ) 磁針(じしん) 仏龕(ぶつがん)《割書:づし|》 仏座(ぶつざ) 花鬘(けまん)
木魚(もくぎよ) 鈴杵(れいしよ) 五鈷(ごこ) 三鈷(さんこ) 独鈷(とくこ)
《振り仮名:宝■|はうら》【注②】《割書:ほらの| かひ》 錫杖(しやくじやう) 手炉(しゆろ)《割書:えがう| ろ》 数珠(すうじゆ)《割書:じゆす|》 椸(い)《割書:いかう|》
筁(きよく)をい 石灯(せきとう)《割書:いし| どう| ろ》 石碑(せきひ)《割書:いし| ぶみ》 神主(しんしゆ) 霊牌(れいはい)《割書:いはゐ|》
押桶(おしおけ) 魚箸(ぎよちよ)《割書:まな| ばし》 摺疉椅(しうてうい) 交椅(かうゐ)《割書:きよく| ろく》 羽子板(うしはん)《割書:はご|いた》
【左丁】
酒帘(しゆきん)【注③】《割書:さか| ばやし》 鎹(そう)《割書:かすがい|》 草薦(さうせん)《割書:こも|》 竹席(ちくせき)《割書:あじ| ろ》 鎖(さ)《割書:くさり|》
■(さう)【注④】《割書:つゞみのどう|》 和卓(くはしよく)《割書:おしき|》 宝葢(ほうかい)《割書:てん| がい》 棺(くわん)《割書:ひつき|》 輀(じ)《割書:ひつき| ぐるま》
龕(がん) 㡠褙(とうほい) 短冊(たんざく) 啄木(たくぼく) 要(かなめ)
紙手(かうで) 紙縷(しろう)《割書:かう| より》 土瓶(どひん) 滴器(できき)《割書:げすい|》 柳筥(やないばこ)
皺皮(すうひ)《割書:ひき| はだ》 煙盃(ゑんはい)《割書:きせる|》 抽匣(ちうかう)《割書:ひき| だし》
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巻(くはん)之十二 畜獣(ちくしう)之部
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麒麟(きりん) 獬豸(かいち) 獅子(しし) 騶虞(すうぐ) 虎(こ)《割書:とら|》
豹(へう)《割書:なかづかみ|》 犀(さい) 象(ぞう) 熊(いう)《割書:くま|》 貘(ばく)
豺(さい)《割書:やまいぬ|》 狼(らう)《割書:おほかみ|》 鹿(ろく)《割書:しか|》 麑(げい)《割書:かのこ|》 麞(しやう)《割書:くじか|》
麋(び)《割書:おほしか|》 麢(れい)《割書:にく|》 麝(じや)《割書:しやかう|》 綿羊(めんよう)《割書:むく| ひつじ》 羊(よう)《割書:ひつじ|》
【注① 「拐」は「枴」の誤】
【注② ■は「片+票」。「螺」の誤ヵ】
【注③ 「しゆきん」は「しゆれん」ヵ。「れ(連)」を「き(幾)」に誤ヵ。「酒林(さかばやし)」は「杉玉」】
【注④ ■は「壴+桑」。「𡕏」ヵ】
【右丁】
野猪(やちよ)《割書:ゐの| しゝ》 山豬(さんちよ)《割書:やま| ぶた》 豕(し)《割書:ぶた|》 豚(とん)《割書:ゐのこ|》 馬(ば)むま
駒(く)《割書:こま|》 驪(り)《割書:くろごま|》 騮(りう)《割書:かげのむま|》 驄(そう)《割書:あしげ|》 駁(はく)《割書:ぶち|》
牛(ぎう)《割書:うし|》 《割書:特牛(こというし) 牝牛(めうし)|黄牛(あめうし) 犂牛(ほしまだらうし)》 犢(どく)《割書:こうし|》 驢(ろ)《割書:うさぎむま|》 駝(だ)《割書:らくだのむま|》
狐(こ)《割書:きつね|》 狸(り)《割書:たぬき|》 貉(かく)《割書:むじな|》 貒(たん)《割書:みだぬき|》 猫(めう)《割書:ねこ|》
犬(けん)《割書:いぬ|》 㺜犬(のうけん)《割書:むくいぬ|》 獒犬(がうけん)《割書:たう| けん》 霊猫(れいめう)《割書:じやかう| ねこ》 蝟鼠(ゐそ)【注①】《割書:くさぶ|》
兎(と)《割書:うさぎ|》 獺(だつ)《割書:かわをそ|》 貂(でう)《割書:りす|》 猿(ゑん)さる 猴(こう)《割書:ましら|》
鼯(ご)《割書:むさゝび|》 鼲(こん)《割書:てん|》 海狗(かいく)《割書:おつと| せい》 海獺(かいだつ)《割書:うみ| をそ》 猩猩(しやう〳〵)
狒々(ひひ) 水牛(すいぎう) 鼠(そ)《割書:ねずみ|》 鼹(ゑん)《割書:うごろもち|》 鼷(けい)《割書:はつか| ねずみ》
蹄(てい)《割書:ひづめ|》 騣(そう)《割書:たてがみ|》 牙(げ)《割書:きば|》 角(かく)《割書:つの|》 鼬(いう)《割書:いたち|》
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巻(くはん )之十三 禽鳥(きんてう) 之部
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【左丁】
鳳凰(ほうわう) 孔雀(くじやく) 錦鶏(きんけい) 白鷼(はくかん) 鶴(くはく)《割書:つる|》
鸛(くわん)《割書:こうづる|》 鶬鴰(さうくはつ)《割書:まな| づる》 鴻(こう)《割書:ひしくひ|》 鵠(こう)《割書:はくてう|》 鵞(が)《割書:とうがん|》
鴈(がつ)《割書:かり|》 鷗(をう)《割書:かもめ|》 鳬(ふ)《割書:かも|》 鶩(ぼく)《割書:あひる|》 鴛鴦(ゑんわう)《割書:をし| どり》
鸊鷉(へきてい)《割書:かいつ| ぶり》 鷺(ろ)《割書:さぎ|》 鵁鶄(かうせい)《割書:ごい| さぎ》 紅鶴(こうくはく)《割書:とき|》 鷸(いつ)《割書:しぎ|》
鸕鷀(ろじ)《割書:う|》 鷲(しう)《割書:わし|》 皂鵰(さうしう)《割書:くま| だか》【注③】 鷹(よう)《割書:た[か]|》 隼(じゆん)《割書:はやぶさ|》
白鷹(はくよう) 鹞(よう)《割書:はしたか|》 兄鹞(けうよう)《割書:このり|》 《振り仮名:雀𪀚|じやくしう》《割書:ゑつさい|》 雀鸇(さしば)
鶲(ひたき) 鸎(あう)《割書:うぐひす|》 鷦鷯(せうれう)《割書:みそ| さゞひ》 山雞(さんけい)《割書:やま| どり》 啄木(たくぼく)《割書:てら| つゝき》
雲雀(うんじやく)《割書:ひばり|》 雉(ち)《割書:きじ|》 鵐(ぶ)《割書:しとゝ|》 練鵲(れんじやく) 鶉(じゆん)《割書:うづら|》
吐綬雞(とじゆけい) 山鵲(さんじやく) 鶤雞(こんけい)《割書:たう| まる》 雞(けい)《割書:にはとり|》 燕(ゑん)《割書:つばくら|》
雛(すう)《割書:ひよこ|》 鸒(よ)《割書:うそ|》【注④】 矮雞(わいけい)《割書:ちやぼ|》 鳩(きう)《割書:はと|》 青鳩(せいきう)
【注①「蝟」は「虫+田+日」】
【注②「鷼」は国立国会図書館所蔵の寛文六年版では「鷴」】
【注③ 「鵰」の音は「ちょう」。「しう」は「周」又は「鷲」との混同ヵ】
【注④ 「うそ」は「鷽(かく)」。「鸒(よ)」は烏の一種。】
【右丁】
鳲鳩(しきう)《割書:かつこ|》 鴿(がう)《割書:いへばと|》 鶫(とう)《割書:つぐみ|》 鵙(げき)《割書:もず|》 鶸(じやく)《割書:ひわ|》
画眉(ぐはび)《割書:ほゝ| じろ》 鶖(しう)《割書:かしどり|》 鶺鴒(せきれい)《割書:いし| たゝ| き》 杜䳌(とけん)《割書:ほとゝ| ぎす》 鵯(ひ)《割書:ひよ| どり》
翠雀(すいしやく)《割書:るり|》 蠟嘴(らうし)《割書:まめ| どり》 烏鳳(うはう)《割書:おなが| どり》 雀(じやく)《割書:すゞめ|》 鸚鵡(あふむ)
竹鶏(ちくけい)《割書:やま| しぎ》 蝙蝠(へんふく)《割書:かふもり|》 鸜鵒(くよく)《割書:はく| てう》 鴉(あ)《割書:からす|》 烏(う)《割書:からす|》
鳶(えん)《割書:とび|》 角鴟(かくし)《割書:みゝづく|》 怪鴟(くはいし)《割書:よたか|》 梟(けう)《割書:ふくろう|》 鵲(しやく)《割書:かさゝぎ|》
秧雞(あうけい)《割書:くひな|》 鴗(りう)《割書:かはせみ|》 火雞(くはけい) 《振り仮名:羽斑■|はまだらしぎ》【注①】 鶚(かく)《割書:みさご|》
鴋(はん) 椋鳥(むくどり)《割書:大むく|小むく》 菊戴(きくいたゞき) 文鳥(ぶんてう) 四十雀(しじうから)
鴰(ひがら) 山雀(さんじやく) 小雀(しやうじやく)《割書:こがら|》 尾長(ゑなが) 繍眼児(めじろ)
駒鳥(こまどり) 九官(きうくはん) 喉紅鳥(のごどり) 風鳥(ふうてう) 《振り仮名:𪈿|ひよくのとり》
深山頬白(みやまほ[ゝ]じろ) 黄雀(きすゞめ) 鸞(らん) 蒼鷺(さうろ)《割書:あを| さぎ》 葦雀(おげら)
【左丁】
鴆(ちん) 雉鳩(きじばと) 犳鴫(しやくなぎ)【注②】 都鳥(みやこどり) 音呼(ゐんこ)
羽(う)《割書:は|》 翼(よく)《割書:つはさ|》 嘴(し)《割書:くちばし|》 尾(び)《割書:を|》 卵雛(らんすう)《割書:たまご|》
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巻(くはん )之十四 竜魚(りようぎよ) 之部
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蛟(かう)《割書:みづち|》 竜(りよう)《割書:たつ|》 螭(ち)《割書:あまれう|》 鯪(りよう)《割書:せんざんかう|》 鯨(げい)《割書:くじら|》
魚虎(ぎよこ) 鰐(がく)《割書:わに|》 鯖(せい)《割書:さば|》 鯵(さん)《割書:あぢ|》 鯼(そう)《割書:いしもち|》
鮸(ばん)《割書:くち|》 鯛(てう)《割書:たひ|》 鮏(せい)《割書:さけ|》 鰩(よう)《割書:とびうを|》【注③】 鰷(でう)《割書:せいご|》
鰶(せい)《割書:このしろ|》 黄檣(わうしやう)《割書:はなをれ| だい》 烏頬(うけう)《割書:すみ| やき| だい》 尨魚(ばうぎよ) 馬鮫(ばかう)《割書:さはら|》
江鮏(こうせい)《割書:あめ|》 海鰻(かいまん)《割書:はも|》 鰮(うん)《割書:いわし|》 梭魚(さぎよ) 鰈(てう)《割書:かれい|》
鯧(しやう)《割書:まながつほ|》 鯔(し)《割書:ぼら|》 鱸(ろ)《割書:すゞき|》 鱈(せつ)《割書:たら|》 䰵(し)《割書:ゑぶな|》
鰹(けん)《割書:かつほ|》 䲍(ちん)《割書:おこじ|》 鱪(しよ)《割書:しいら|》 魴鮄(はうぼ) 江豬(こうちよ)《割書:いるか|》
【注① ■は「矛+鳥」。「鷸」の誤。】
【注② 「犳鴫(しやくなぎ)」は「杓鴫(しゃくしぎ)」ヵ】
【注② 「鰩」の旁は「鳐」】
【右丁】
鱣(てん)《割書:ふか|》 鱠残魚(くはいざんぎよ)《割書:きす| ご》 鯄(きう)《割書:かながしら|》 鮫(かう)《割書:さめ|》 鯉(り)《割書:こひ|》
鯽(せき)《割書:ふな|》 鮧(い)《割書:なまづ|》 杜父(とほ)《割書:うし| ぬす| びと》 鮞(し)《割書:はす|》 鰻(まん)《割書:うなぎ|》
鱓(せん)《割書:やつめ| うなぎ》 年魚(ねんぎよ)《割書:あゆ|》 黄鱨(わうしやう)《割書:ぎゞ|》 金魚(きんぎよ) 鰌(ゆう)《割書:どぢやう|》
河㹠(かとん)《割書:ふぐ|》 鮅(ひつ)《割書:うぐひ|》 鱭魚(せいぎよ)《割書:たちを|》 鯃(ご)《割書:こち|》 鱵(しん)《割書:さより|》
魥(きう)《割書:はまち|》 小鮦(しやうとう)《割書:こん| ぎり》 鱒(そん)《割書:ます|》 河鰕(かか)《割書:かは| えび》 鰕(か)《割書:えび|》
鰝(かう)《割書:うみえび|》 醤蝦(しやうか)《割書:あみ|》 麪条(めんでう) 蝦蛄(かこ)《割書:しやく| なぎ》 鰤(し)《割書:ぶり|》
鰚魚(せんきよ)《割書:はらか》 鰣(し)《割書:ゑそ|》 青前(せいせん)《割書:さごし|》 矢幹魚(しかんぎよ) 鯡(ひ)《割書:にしん|》
鱓(せん)《割書:ごまめ|》 水母(すいも)《割書:くらげ|》 土肉(とにく)《割書:なまこ|》 海牛(かいぎう) 海馬(かいば)
章挙(しやうきよ) 烏賊(うぞく)《割書:いか|》 鱝(ふん)《割書:えい|》 海月(かいげつ) 鮪(い)《割書:しひ|》
䱱(てい)《割書:さんせう| いを》 鱲子(らうし)《割書:からすみ|》 鯟鯑(とうき)《割書:かずの| こ》 乾鱖(かんけつ)《割書:から| ざけ》 魚子(きよし)《割書:はら| らご》
【左丁】
鯣(しやく)《割書:するめ|》 鰭(き)《割書:ひれ|》 鱗(りん)《割書:うろこ|》 鰓(さい)《割書:えら|》 鰾(へう)《割書:ふえ|》
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巻(くはん )之十五 虫介(ちうかい)之部
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亀(き)《割書:かめ|》 鼈(べつ)《割書:すつほん|》 蟹(かい)《割書:かに|》 《振り仮名:𩼹|こう》《割書:かぶとがに|》【注①】 蟳(じん)《割書:しま| がに》
𧔒(しん)《割書:がざめ|》 螺(ら)《割書:さゞへ|》 田螺(でんら)《割書:たにし|》 螄(し)《割書:ばひ|》 螺螄(らし)《割書:みな|》
蛤(がう)《割書:はまぐり》 蚶(かん)《割書:あかゞひ|》 蚌(ぼう)《割書:からすがひ|》 蜆(けん)《割書:しゞみ|》 毛亀(もうき)《割書:みの| がめ》
貝(ばい)《割書:たからがひ|》 蟶(てい)《割書:まて|》 鰒(はく)《割書:あわび|》 蠣(れい)《割書:かき|》 車渠(しやきよ)《割書:ほたて| がひ》
辛螺(しんら)《割書:にし|》 淡菜(たんさい)《割書:みる| くひ》 梭(さ)《割書:ほらの| かひ》 香螺(かうら)《割書:なが| にし》 玉珧(ぎよくたう)《割書:たいら| ぎ》
帽貝(ばうばい)《割書:ゑぼし| がひ》 海燕(かいゑん)《割書:たこの| まくら》 海胆(かいたん)《割書:かぶと| がひ》 寄虫(きちう)《割書:かうな|》 郎君(らうくん)《割書:すがひ|》
蛬(きやう)《割書:きり〴〵す|》 螻(ろう)《割書:けら》 絡線(らくせん)《割書:こう| ろぎ》 螇蚸(けいせき)《割書:しやう| れう》 蟷蝍(たうらう)《割書:かま| きり》【注】
竈馬(そうば)《割書:まか| いとゞ》 蜻蛉(せいれい)《割書:とん| ぼう》 赤卒(せきそつ)《割書:あか| ゑんば》 䘀螽(ふしう)《割書:いなご|》 《振り仮名:𧐍𧑓|しようしよ》《割書:はた〳〵|》
【注① 「𩼹」は「鱟」の誤】
【注② 「蟷蝍」は「蟷螂」の誤】
【右丁】
蝶(てふ)《割書:あげは|》 燈蛾(とうが)《割書:ひとり| むし》 蠅(よう)《割書:はへ|》 金亀(きんき)《割書:たま| むし》 馬蜂(ばほう)《割書:くま| ばち》
叩頭(こうとう)《割書:ぬかづき| むし》 金鐘(きんしやう)《割書:すゞむし|》 《振り仮名:𧉟|たい》《割書:まつむし|》 《振り仮名:𪘂髪|けつはつ》《割書:かみ| きり》 鑾虫(らんちう)《割書:くつわ| むし》
斑蝥(はんばう)《割書:はん| めう》 紺蠜(かんはん)《割書:かねつけ| とん| ぼう》 蓑虫(さちう)《割書:みの| むし》 蠧(こ)《割書:のんし|》【注①】 蝉(せん)《割書:せみ|》
蜂(ほう)《割書:はち|》 蟢(き)《割書:あしたかぐも|》 蝸(くわ)《割書:かたつぶり|》 䖟(ばう)《割書:あぶ|》 蛾(が)《割書:ひゝり|》
気蠜(きはん)《割書:へふり| むし》 蠮螉(ゑつをう)《割書:さゝり|》 蚊(ぶん)《割書:か|》 蚋(ぜい)《割書:ぶと|》 蝌蚪(くわと)《割書:かへるこ|》
蛙(あ)《割書:かはづ|》 青蛙(せいあ)《割書:あま| がへる》 孑孑(けつ〳〵)《割書:ぼう| ふり| むし》 蛭(しつ)《割書:ひる|》 蠼螋(くしう)《割書:はさみ| むし》
蜈蚣(ごこう)《割書:むかで|》 百足(はくそく)《割書:をさ| むし》 蟾蜍(せんじよ)《割書:ひき| がへる》 蝦蟇(がま)《割書:かへる|》 蚰蜒(いうゑん)《割書:げじ| 〳〵》
蟫(いん)《割書:しみ|》 蠓(もう)《割書:しやう〴〵|》 蚯蚓(きういん)《割書:みゝ| ず》 蠐螬(せいさう)《割書:きり| うじ》 蛜蝛(いい)《割書:おめ| むし》
蚤(さう)《割書:のみ|》 《振り仮名:𧈲|しつ》《割書:しらみ|》 蟻(ぎ)《割書:あり|》 糞蛆(ふんそ)《割書:くそ| むし》 蛆(そ)《割書:うじ|》
蚘(くわい)《割書:はらのむし|》 蚕(さん)《割書:かいこ|》 蛣蜣(きつきやう)《割書:くそ| むし》 蜘蛛(ちちう)《割書:くも|》 蠑螈(ゑいげん)《割書:いもり|》
【左丁】
《振り仮名:𧋍蜴|せきてき》【注②】《割書:とかけ|》 蝘蜓(ゑんてん)《割書:やもり|》 水馬(すいば)《割書:しほ| うり》 土蠱(どこ) 水蚤(すいさう)《割書:とび| むし》
木虱(もくしつ)《割書:たにこ|》 滑虫(くはつちう)《割書:あぶら| むし》 殻(かく)《割書:から|》 甲(かう) 蛻(たい)《割書:もぬけ|》
繭(けん)《割書:まゆ|》 蝉蛻(せんたい)《割書:うつ| せみ》 蛅蟖(せんし)《割書:いら| むし》 蚇蠖(しやくくわく)《割書:しやく| とり》 豉虫(しちう)《割書:まひ〳〵| むし》
蛞蝓(くはつゆ)《割書:なめ| くぢ》 螲蟷(ちつたう)《割書:つち| ぐも》 壁銭(へきせん)《割書:ひらた| ぐも》 蠅虎(ようこ)《割書:はへとり| ぐも》 螵蛸(へうせう)《割書:おほぢ| が| ふぐり》
雀甕(じやくよう)《割書:すゞめの| たまご》 蟒(まう)《割書:うばばみ|》 蛇(じや) 蝮(ふく)《割書:まむし|》 両頭(りやうとう)
岐首(きしゆ) 烏蛇(うじや)《割書:からす| へみ》 銀蛇(ぎんじや)《割書:しろ| へみ》 《振り仮名:𧋪虫|へいちう》《割書:こめ| むし》 吉丁虫(きつていちう)《割書:かぶと| むし》
蛅蟴(せんし)《割書:けむし|》 蠛蠓(べつもう)《割書:かつほ| むし》 螱(い)《割書:はあり|》 芋蠋(うしよく)《割書:いも| むし》
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巻(くはん)之十六 米穀(べいこく)之部
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粳(かう)《割書:うるしね|》 糯(だ)《割書:もちのよね|》 稷(しよく)《割書:きび|》 粟(ぞく)《割書:あわ|》 稗(はい)《割書:ひえ|》
麻(ま)《割書:あさ|》 蕎(きやう)《割書:そば|》 麦(ばく)《割書:むぎ|》 菉(りよく)《割書:ぶんどう|》 豇(かう)《割書:さゝげ|》
【注① 「蠧」の音は「ト」。「のんじ」は「きくいむし」の異名。】
【注②「𧋍」は「蜥」の誤。「蜴」の音は「エキ」】
【注③ 「蜓」の音は「テイ」】
【右丁】
豌(ゑん)《割書:ゑんだう|》 藊(へん)《割書:いんげんまめ|》 菽(しく)《割書:まめ|》 荅(たう)《割書:あつき|》 胡麻(ごま)
蜀黍(しよくしよ)《割書:たう| きび》 罌粟(あうぞく)《割書:けし|》 玉黍(ぎよくしよ)《割書:なんばん| きび》 蚕豆(さんづ)《割書:そら| まめ》 燕麦(ゑんばく)《割書:からす| むぎ》
刀豆(たうづ)《割書:なた| まめ》 黎豆(れいづ)《割書:八升| まめ》 藁(かう)《割書:わら|》 穂(すい)《割書:ほ|》 穀(こく)《割書:もみ|》
箕(き)《割書:まめがら|》 莢(けう)《割書:まめの| さや》 飯(はん)《割書:いひ|》 餅(へい)《割書:もち|》 糖(たう)《割書:あめ|》
糉(そう)《割書:ちまき|》 饅頭(まんぢう) 索麪(さうめん) 餢飳(ぶと) 環餅(くはんへい)《割書:まがり|》
巧果(あぶらもち) 煎餅(せんべい) 焼餅(やきもち) 酢漿(さくしやう)《割書:すはま|》 粔籹(きよぢよ)《割書:おこし| ごめ》
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巻(くはん) 之十七 菜蔬(さいそ)之部
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蕪菁(ぶせい)《割書:な|》 萊菔(らいふく)《割書:だい| こん》 芹(きん)《割書:せり|》 葱(そう)《割書:ひともじ|》 蒜(さん)《割書:にんにく|》
韮(きう)《割書:にら|》 薤(がい)《割書:おほにら|》 菠薐(はれう)《割書:からな|》 胡葱(こそう)《割書:あさ| つき》 芋(う)《割書:いも|》
芋魁(いもがしら)《割書:蹲鴟(そんし)とも|》 牛蒡(ごばう) 薯蕷(しよよ)《割書:やまの| いも》 胡蔔(こふく)《割書:にん| じん》 苣(きよ)《割書:ちさ|》
【左丁】
薺(せい)《割書:なづな|》 芥(かい)《割書:からし|》 莙薘(くんたつ)《割書:たう| ぢさ》 天蓼(てんれう)《割書:またゝ| び》 蕗(ろ)《割書:ふき|》
莧(けん)《割書:ひゆ|》 野莧(やけん)《割書:くさひゆ|》 蘘荷(めうが) 独活(どくくはつ)《割書:うど|》 瓜(くは)《割書:うり|》
冬瓜(とうぐは)《割書:かも| うり》 醤瓜(しやうくは)《割書:あを| うり》 胡瓜(こくは)《割書:き| うり》 糸瓜(しくは)《割書:へちま|》 山葵(さんき)《割書:わさび|》
蕈(たん)《割書:たけ|》 松蕈(まつだけ) 香蕈(かうたけ) 瓢(へう)《割書:なりひさご|》 蒲慮(ひやくなり)
瓠(こ)《割書:ゆふがほ|》 藜(れい)《割書:あかざ|》 茄(か)《割書:なすび|》 水茄(ながなすび) 馬莧(ばけん)《割書:すべり| ひゆ》
薊(けき)《割書:あざみ|》 薑(きやう)《割書:はじかみ|》 蘩蔞(はんる)《割書:はこべ|》 蔏陸(しやうりく)《割書:やま| ごぼう》 蒟蒻(こんにやく)
蒲英(ほゑい)《割書:たん| ほゝ》 雞腸(けいちやう)《割書:よめが| はき》【注】 鹿角(ろくかく)《割書:ひぢき|》 芝(し)《割書:れいし|》 蕨(けつ)《割書:わらび|》
瓣(べん)《割書:うりの| へた》 瓤(じやう)《割書:うりの| なかご》 狗脊(くせき)《割書:ぜん| まい》 蒪(しゆん)《割書:じゆんさい|》 石花(せきくは)《割書:ところ| てん》
海帯(かいたい)《割書:あらめ|》 紫菜(しさい)《割書:あま| のり》 昆布(こんぶ) 水松(すいせう)《割書:みる|》 苔菜(たいさい)《割書:あを| のり》
燕窩(えんくは) 萆薢(ひかい)《割書:とこ| ろ》 木耳(もくに)《割書:きくら| げ》 石耳(せきじ)《割書:いわ| たけ》
【注 「雞児腸」ヵ】
【右丁】
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巻(くはん)之十八 果蓏(くはくは)之部
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杏(きやう)《割書:あんず|》 梅(ばい)《割書:むめ|》 桃(たう)《割書:もゝ|》 李(り)《割書:すもゝ|》 梨(り)《割書:なし|》
柰(たい)《割書:からなし|》 棗(さう)《割書:なつめ|》 栗(りつ)《割書:くり|》 柚(ゆ) 柑(かん)《割書:くねんほ|》
枳(し)《割書:きこく|》 橘(きつ)《割書:みかん|》 榧(ひ)《割書:かや|》 榛(しん)《割書:はしばみ|》【注】 椎(すい)《割書:しい|》
柹(し)《割書:かき|》 楉榴(じやくりう)《割書:ざくろ|》 来禽(らいきん)《割書:りんご|》 金柑(きんかん) 銀杏(ぎんきやう)《割書:ぎん| あん》
鴨脚樹(いてう) 苺(ぼ)《割書:いちご|》 樹苺(きいちご) 覆盆子(つるいちご) 蛇苺(へびいちご)
香椽(かうゑん)《割書:ぶしゆ| かん》 茘支(れいし) 枇杷(びは) 枳椇(しぐ)《割書:けんほ| の| なし》 胡頽(こたい)《割書:ぐみ|》
楊梅(やうばい)《割書:やま| もゝ》 梬棗(ていさう)《割書:さる| がき》 菱(れう)《割書:ひし|》 椒(せう)《割書:さんせう|》 茶(ちや)
胡桃(こたう)《割書:くるみ|》 榲桲(うんほつ)《割書:まる| める》 木瓜(もくくは)《割書:ぼけ|》 葧臍(ぼつせい)《割書:くわい|》 慈姑(じこ)《割書:しろ| ぐわい》
松子(せうし)《割書:からまつ| のみ》 胡椒(こせう) 龍眼(りうがん) 鴉瓜(あくは)《割書:からす| うり》 燕覆(ゑんふく)
【左丁】
甘蔗(かんしや)《割書:さたう| だけ》 甜瓜(てんくは)《割書:から| うり》 苦瓜(くくは)《割書:つる| れいし》 白柹(はくし)《割書:つり| がき》 烏柹(うし)《割書:あま| ぼし》
蔕(てい)《割書:へた|》 莍(きう)《割書:かさ|》 核(かく)《割書:さね|》 仁(にん) 沙糖(さたう)《割書:しろ| ざたう》
紫糖(したう)《割書:くろ| さたう》 氷糖(へうたう)《割書:こほり| ざたう》
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巻(くはん)之十九 樹竹(じゆちく)之部
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松(しやう)《割書:まつ|》 楓(ふう)《割書:かいで|》 檜(くわい)《割書:ひのき|》 檉(てい)《割書:むろ|》 円栢(ゑんはく)
仙栢(せんはく)《割書:いぬ| まき》 杉(さん)《割書:すぎ|》 南燭(なんてん) 桜(ゑい)《割書:さくら|》 山茶(さんさ)《割書:つばき|》
海棠(かいだう) 羊躑躅(れんげつゝじ) 映躑躅(あかつゝじ) 杜鵑花(さつき) 木蘭(もくらん)《割書:もく| れん| げ》
厚朴(かうぼく)《割書:ほうの| き》 辛夷(しんい)《割書:しで| こぶし》 槿(きん)《割書:むくげ|》 芙蓉(ふよう)《割書:き| はちす》 蜀漆(しよくしつ)《割書:くさぎ|》
冬青(とうせい)《割書:もち| のき》 女貞(ぢよてい)《割書:ねづ| もち》 粉団(ふんだん)《割書:てまり|》 紫陽(しやう)《割書:あぢ| さひ》 薜茘(へきれい)《割書:まさき| の| かづら》
梔(し)《割書:くちなし|》 錦帯花(やまうつぎ) 楊櫨(やうろ)《割書:うつ| ぎ》 棘(きよく)《割書:いばら|》 角楸(かくしう)《割書:あづさ|》
【注 「榛」は「木+䅈」】
【右丁】
木槵(もくげん)《割書:つぶの| き》 椶櫚(しゆろ) 黄楊(わうやう)《割書:つげ|》 衛矛(ゑいぼう)《割書:にし| きゞ》 鉄蕉(てつせう)《割書:そてつ|》
《振り仮名:𣖾木|はいぼく》《割書:ぬるで|》 楮(しよ)《割書:かぢ|》 ■(しつ)《割書:うるし|》【注①】 木樨(もくせい) 桐(とう)《割書:きり|》
梧桐(ごとう) 櫟(れき)《割書:くぬぎ|》 槲(こく)《割書:かしわ|》 檗(はく)《割書:きわだ|》 紫荊(しけい)
石南(しやくなんげ) 瑞香(ずいかう)《割書:ちんてう| け》 狗骨(くこつ)《割書:ひいら| ぎ》 接骨(せつこつ)《割書:には| とこ》 桑(さう)《割書:くわ|》
楝(れん)《割書:せんだん|》 五加(ごか)《割書:うこぎ|》 枸杞(くこ) 樟(しやう)《割書:くすのき|》 紫薇(しび)
石檀(せきたん)《割書:とねり| こ》 合歓(かうくわん)《割書:ねむの| き》 楡木(ゆぼく)《割書:にれ|》 葉(えう)《割書:は|》 株(ちゆ)《割書:かぶ|》
蘖(かつ)《割書:ひこばえ|》【注②】 芽(げ)《割書:ぬきざし|》 寄生(きせい)《割書:やどり| き》 白楊(はくやう)《割書:はこ|やなぎ》 水楊(すいやう)《割書:かわ| やなぎ》
柳(りう)《割書:したり| やなぎ》 皂莢(さうけう)《割書:さいかし|》 槐(くわい)《割書:ゑんじゆ|》 椋(りやう)《割書:むく|》 栴檀(せんだん)
伽羅(きやら) 柴(さい)《割書:しば|》 薪(しん)《割書:たきゞ|》 竹(ちく)《割書:たけ|》 篁(くわう)《割書:たかむら|》
篠(でう)《割書:しのざゝ|》 筍(しゆん)《割書:たけのこ|》 箬(じやく)《割書:さゝ|》 蘆竹(ろちく)《割書:なよ| たけ》 椶竹(そうちく)《割書:しゆろ| ちく》
【左丁】
扶竹(ふちく)《割書:ふた| また| だけ》 紫竹(しちく) 《振り仮名:𥳇|ふく》《割書:さゝめ| ぐり》 籜(たく)《割書:たけの| かは》 筒(とう)《割書:つゝ|》
篾(べつ)《割書:たけの| かつら》 無節竹(むせつちく)《割書:らう| だけ》 幹(かん)《割書:から|》 枝(し)《割書:えだ|》 梢(せう)《割書:こずへ|》
根(こん)《割書:ね|》 炭(たん)《割書:すみ|》 杮(し)《割書:こけら|》
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巻(くはん)之二十 花草(くはさう)之部
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牡丹(ぼたん) 芍薬(しやくやく) 桜草(さくらさう) 錦葵(きんき)《割書:こあふ| ひ》 葵(き)《割書:あふひ|》
蜀葵(しよくき)《割書:から| あふひ》 芙蓉(ふよう) 竜胆(りうたん) 秋葵(しうき)《割書:かうそ|》 莠(いう)《割書:はくさ|》
金銭花(きんせんくは) 蘭(らん)《割書:ふじばかま|》 秋海棠(しうかいたう) 雞冠(けいくわん)《割書:けいとう| げ》 剪秋羅(せんしうら)
剪春羅(せんしゆんら)《割書:がん| ひ》 薏苡(よくい)《割書:ずゞ| だま》 山丹(さんたん)《割書:ひめ| ゆり》 巻丹(けんたん)《割書:おに| ゆり》 百合(ひやくがう)《割書:ゆり|》
他偸(たゆ)《割書:ゑびね|》 麗春(れいしゆん)《割書:びじん| さう》 金盞花(きんせんくは) 春菊(しゆんきく)《割書:かうらい| ぎく》 蒲公英(ほこうゑい)《割書:たん| ほゝ》
菫菜(きんさい)《割書:すみれ|》 虎杖(こじやう)《割書:いた| どり》 酢醤(さしやう)《割書:かた| ばみ》 萱草(くはんざう)《割書:わすれ| ぐさ》 射干(やかん)
【注① ■は「㯃」ヵ】
【注② 「蘖」の音は「ゲツ」】
【右丁】
蝴蝶花(こてうくは) 夏枯草(かこさう) 馬蘭(ばりん) 鴟尾(しび)《割書:いち| はつ》 杜若(とじやく)《割書:かきつ| ばた》
菖蒲(しやうぶ)《割書:あやめ|》 様錦(やうきん)《割書:もみじ| ぐさ》 桔梗(けつかう)《割書:きゝ| やう》 烏頭(うづ)《割書:とり| かぶと》 鳳仙花(ほうせんくは)
番椒(ばんせう)《割書:たう| がらし》 丈菊(じやうきく)《割書:てんがい| ばな》 杜蘅(とかう) 薔薇(しやうび) 慎火(しんくは)《割書:いは| れん| げ》
苔(たい)《割書:こけ|》 旋覆(せんふく)《割書:をぐる| ま》 酸醤(さんしやう)《割書:ほう| づき》 藤(とう)《割書:ふじ|》 石斛(せきこく)
棣棠(ていたう)《割書:やまぶ| き》 巻栢(けんばく)《割書:いはひば|》 玉栢(ぎよくはく)《割書:まんねん| ぐさ》 葦(い)《割書:あし|》 蓮(れん)《割書:はちす|》
菖蒲(しやうぶ) 菰(こ)《割書:まこも|》 萍(へい)《割書:うきくさ|》 蒲(ほ)《割書:がま|》 薛(せつ)《割書:すげ|》
莕(きやう)《割書:あさゞ|》 藺(りん)《割書:ゐ|》 芡(げん)《割書:みづぶき|》 藎(じん)《割書:かりやす|》 萹蓄(へんちく)
葒(こう)《割書:けたで|》 蘇(そ)《割書:しそ|》 蓼(れう)《割書:たで|》 水蓼(すいれう)《割書:いぬたで|》 菊(きく)
莣(ばう)《割書:すゝき|》 荏(じん)《割書:え|》 牽牛(けんこ)《割書:あさ| かほ》 鼓子(くし)《割書:ひる| がほ》 蒴藋(さくてき)《割書:そく| づ》
水仙花(すいせんくは) 麦門冬(ばくもんどう)《割書:ぜうが| ひげ》 瞿麦(くばく)《割書:なでし| こ》 玉簪(ぎよくさん)《割書:きぼう| し》 石竹(せきちく)
【左丁】
蒼朮(さうじゆつ)《割書:おけら|》 木賊(もくぞく)《割書:とく| さ》 山蔥(さんそう) 馬勃(ばぼつ) 石荷(せきか)《割書:ゆきの| した》
石葦(せきい)《割書:ひとつ| ば》 螺厴(らゑん)《割書:まめづる|》 芭蕉(ばせを) 薢(かい)《割書:ところ|》 苧(ちよ)《割書:まを|》
艾(がい)《割書:よもぎ|》 華蔓(けまん) 鼠麴(そきく) 羊蹄(ようてい)《割書:ぎし〳〵|》 藍(らん)《割書:あゐ|》
陵苕(れうてう) 茜(せん)《割書:あかね|》 山薑(さんきやう)《割書:いぬ| はじ | かみ》 蓖麻(ひま)《割書:たう| ごま》 沢漆(たくしつ)
車前(しやぜん)《割書:おほ| ばこ》 蒼耳(さうに) 竜芮(りうぜい) 防風(ばうふう) 紅花(こうくは)《割書:べにの| はな》
積雪(しやくせつ)《割書:かきど| をし》 苦参(くじん) 蛇床(じやしやう) 鼠莽(そまう)《割書:しきみ|》 紫草(しさう)《割書:むら| さき》
葛(かつ)《割書:くず|》 鴨跖(かうせき) 天南星(てんなんせう) 防已(ばうい) 絡石(らくせき)《割書:ていか| づら》
水莨(すいらう) 牛膝(ごしつ) 茴香(ういきやう) 《振り仮名:𦻎薟|ちれん》《割書:めなも| み》 天茄(てんか)
青蒿(せいかう)《割書:かはら| よも| ぎ》 《振り仮名:𦯇蔚|じうい》《割書:めはじき|》 玄及(げんきう)《割書:さね| かづら》 茵蔯(ゐんちん) 地膚(ぢふ)《割書:はゝ| きゞ》
忍冬(にんどう) 茅(ばう)《割書:かや|》 藻(さう)《割書:も|》 萍蓬(へいほう)《割書:かう| ほね》 萩(しう)《割書:はぎ|》
【右丁】
菝葜(はつかつ) 建蘭(けんらん) 金灯(きんとう) 石帆(せきはん)《割書:うみ| まつ》 薹(たい)《割書:たう|》
茎(きやう)《割書:くき|》 蔓(まん)《割書:つる|》 苞(はう)《割書:つぼみ|》 葩(は)《割書:はなびら|》 蕋(ずい)《割書:しべ|》
蕚(がく)《割書:はなぶさ|》
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巻(くはん)之廿一 雑類(さうるい)
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右弼金剛(うひつこんがう) 左輔金剛(さほこんがう) 持国天王(ぢこくてんわう) 毘沙門天王(びしやもんてんわう) 韋駄天(ゐだてん)
鐘馗(しやうき) 弁才天女(べんざいてんによ) 福禄寿(ふくろくじゆ) 大黒天(だいこくてん) 蛭子(ゑびす)
布袋(ほてい) 寿老(じゆらう) 神農(しんのう) 伏羲(ふつき) 倉頡(さうけつ)
黄帝(くはうてい) 老子(らうし) 孔子(こうし) 許由(きよゆう) 山越弥陀(やまごしのみだ)
維摩(ゆいま) 聖徳太子(しやうとくたいし) 出山釈迦(しゆつさんのしやか) 誕生仏(たんじやうぶつ) 達磨尊者(だるまそんじや)
不動明王(ふどうみやうわう) 竜猛(りうみやう) 善導大師(ぜんとうだいし) 天台大師(てんだいたいし) 伝教大師(でんげうだいし)
【左丁】
六祖大師(ろくそだいし) 役行者(ゑんのぎやうじや) 寒山(かんざん) 拾得(じつとく) 巨霊人(これいじん)
琴高(きんかう) 費長房(ひちやうばう) 大公望(たいこうばう) 上利剣(じやうりけん) 張九哥(ちやうくか)
鉄枴仙人(てつかいせんにん)【注】 蝦蟇仙人(がませんにん) 西王母(せいわうぼ) 通玄(つうげん) 迦陵頻(かれうひん)
天人(てんにん) 衣通姫(そとをりひめ) 人麿(ひとまろ) 赤人(あかひと)《割書:以上 和歌(わかの)|三 神(じん)》 白楽天(はくらくてん)
東坡(とうは)《割書:以上| 詩人(しじん)》 晋王羲之(しんのわうぎし) 小野道風(をのゝとうふう) 《割書:以上| 筆道(ひつどう)》 琴(きん)《割書:こと|》
香(かう) 蹴鞠(しうきく)《割書:まり|》 目利(めきゝ) 筭術(さんじゆつ) 諸礼(しよれい)
弓(きう)《割書:ゆみ|》 馬(ば)《割書:むま|》 剣術(けんじゆつ) 囲碁(ゐご) 将棊(しやうぎ)
茶湯(ちやのゆ) 立花(りつくは) 山伏(やまぶし) 鷹匠(たかじやう) 能(のう)
狂言(きやうげん) 浄留理大夫(じやうるりだいふ) 三絃(さみせん) 小弓(こきう) 芝居役者(しばゐやくしや)
人形芝居(にんきやうしばゐ) 軽業(かるわざ) 鉢敲(はちたゝき) 鹿島事触(かしまのことふれ) 猿舞(さるまはし)
【注 「枴」は「拐」の誤】
【右丁】
万歳楽(まんざいらく)
拾冊之内
頭書訓蒙図彙目録終
【左丁 見返し】
【文字無】
【裏表紙】