《割書:増補|頭書》訓蒙図彙大成 七 【手書き】 龍魚 虫介 頭書(かしらがき)増補(そうほ)訓蒙(きんもう)図彙(づゐ)巻之十四 龍魚(りようぎよ) 此部(このぶ)には海水(かいすい)川谷(せんこく)にすむ もろ〳〵の龍蛇(りようじや)魚鱗(ぎよりん)をしるす 【上段】 ○蛟(みつち)は龍(たつ)の角(つの)なき ものなり四 足(そく)あり せなか青(あを)まだらに わき錦(にしき)のごとく水(すい) 中(ちう)又 深山(しんざん)幽谷(ゆうこく)にす むなり ○龍(たつ)は鱗虫(りんちう)の長(ちやう)也 せなかに八十一の鱗(うろこ)有 九々の数(すう)をそなへたり よく雲雨(うんう)をおこす 【下段】 蛟(かう) みつち 【手書き】 拾冊之内 【上段】 ○螭(あまれう)は蛟(みつち)に似(に)て角(つの) なし龍(りう)ににていろ 黄(き)なり ○魚虎(しやちほこ)一名 土奴魚(ととぎよ) といふ海中(かいちう)にありて よく潮(しほ)をふくよつて 城門(じやうもん)に此魚(このうを)をつくるは 火災(くはさい)をさへるの心 なりといへり ○鯨(くじら)は海中(かいちう)の大魚(たいぎよ) なり浪(なみ)を鼓(く)して雷(らい) をなし沫(あわ)をはいて 雨(あめ)をなす雄(を)を鯨(げい)と いひ雌(め)を鯢(げい)といふ ○鰐(わに)はかたち大にし て四 足(そく)あり口大に人 をのめば海上(かいしやう)にうく 鱷(かく)同 ○鯪(りよう)はかたち鯉(こい)にゝ て陵(をか)に穴(あな)して居(を)る よつて鯪鯉(りようり)といふ 四 足(そく)あり首(かしら)鼠(ねづみ)の如(こと) く鱗(うろこ)かたきこと鉄(てつ)の ごとし ○鯛(たひ)は棘鬣魚(きよくれうぎよ)と云 水腫(すいしゆ)を消(せう)し小 便(べん)を 利(り)し痔(ぢ)を治(ぢ)し上(じやう) 気(き)虚労(きよらう)を治(ぢ)す但 【下段】 龍(りよう) たつ 螭(ち) あまれう 【上段】 産後(さんご)百 余日(よにち)があいだ かたくいむべし若(もし)あ やまつて食(しよく)すれは必(かならず) 死(し)す ○鯖(さば)は湿痺(しつひ)によし 韮(にら)と同しく煮(に)て 食(しよく)すれは脚気(かつけ)煩(はん) 悶(もん)を治(ぢ)し気力(きりよく)をま すなり ○鯵(あぢ)は水腫(すいしゆ)を治(ぢ)し 痢疾(りしつ)を治(ぢ)すわすれ て尿(いばり)するものはくら ふべからず ○鰷(せいご)は煮(に)て食(しよく)すれば うれひをやめ胃(ゐ)をあ たゝめ冷泻(れいしや)をとむ 鮂魚(しうぎよ)同 ○鮸(くち)は中(うち)をおぎなひ 気(き)をます多(おゝ)く食(しよく) すべからず瘡(かさ)を発(はつ) し脾湿(ひしつ)をうごかし 足膝(あしひざ)に利(り)あらず ○鰩(とびうを)は婦人(ふじん)難産(なんざん) にくろやきにして 酒(さけ)にて壱匁ふくす れば産(さん)しやすし 文鰩(ぶんよう)同 ○鯼(いしもち)は五 臓(ざう)をおぎな 【下段】 魚虎(ぎよこ) しやちほこ 鯨(けい) くじら 鯪(りよう) 穿山甲(せんざんかう) 鰐(がく) わに 【右丁上段】 ひ筋骨(すじほね)をまし脾(ひ) 胃(ゐ)を和(くは)すおゝく食(しよく) してよし ○鮏(さけ)は一名/過臘魚(くはらうぎよ)と いふ鮭(けい)につくるは非(ひ)也 ○鰶(このしろ)は□(い)【田+日、胃の誤ヵ】をあたゝめ 人を益(えき)し痢(り)をやむ 多(おゝ)く食(しよく)すれは風(ふう) 熱(ねつ)をうごかしかさを 発(はつ)す ○尨魚(はうぎよ)は今いふくろ だひなり又はちぬた いともいふ ○黄檣(わうしよく)は今いふはな 【左丁上段】 おれたいなり ○烏頬魚(うけうぎよ)は今いふ すみやきだいなり ○梭魚(かます)は五/臓(ざう)をおぎ なひ肌(はだへ)をうるほし 気力(きりよく)をまし積(しやく)を 治(ぢ)し虫(むし)をころす ○鰈(かれい)は王餘魚(わうよぎよ)とも 比目魚(ひもくぎよ)ともいふ虚(きよ)を おぎなひ気力(きりよく)をま す多(おゝ)く食(しよく)すれば 気(き)をうごかす ○海鰻(はも)は五/疳(かん)湿痺(しつひ) 面目(めんもく)うそばれ脚気(かつけ) 【右丁下段挿絵】 鯖(せい)《割書:さば》 鯵(さん)《割書:あぢ》 鰷(でう)《割書:せいご》 鯛(しう)《割書:たひ》 【左丁下段挿絵】 鮸(ばん)《割書:くち》 鮏(せい)《割書:さけ》 鰩(よう)《割書:とびうを》 鯼(そう)《割書:いしもち》 石首魚(せきしゆきよ)《割書:ともいふ》 【右丁上段】 風気(ふうき)によしはらみ女 の水気(すいき)あるによし ○鯧(まながつほ)は人をして肥(こへ)すこ やかならしめ気食(きしよく)を ます鱂魚(しやうぎよ)同 ○鯔(なよし)は胃(ゐ)をひらき五 臓(ざう)を利(り)し人をして 肥(こへ)すこやかならしむ ○江鮏(あめ)は胃(ゐ)をあたゝめ 中(うち)を補(おぎな)ふ多(おゝ)く食(しよく)す れば瘡(くさ)を発(はつ)す又/鯇(あ) 魚(め)といふ又/水鮏(すいせい)とも 書(かく)なり ○馬鮫(さはら)は一名/章鮌(しやうけん) 【左丁上段】 といふちいさきものを 青前(せいせん)といふさごし なり章鮌(さはう)擺錫(さはう)同 ○鱈(たら)は風(かぜ)をさり酒(さけ)を さまし煮(に)て食(しよく)すれ は水腫(すいしゆ)を治(ぢ)し小便(しやうべん) を利(り)す ○䰵(ゑぶな)はまへの鯔(なよし)の所(ところ) に見みたり かうきち ぼら いな いせごゐ  ゑぶな すばしりい づれも同物(とうぶつ)異名(いみやう)也 ○鱸(すゞき)は五/臓(ざう)をおきな ひ筋骨(すじほね)を益(ます)腸(ちやう)胃(ゐ) 【右丁下段挿絵】 鰶(せい)《割書:このしろ》 鰮(うん)《割書:いわし》 尨魚(はうぎよ)《割書:くろだひ》 黄檣(わうしよく)《割書:はなおれだひ》 烏頬(うけう)《割書:すみやきだひ》 【左丁下段挿絵】 梭魚(さぎよ)《割書:かます》 鰈(てう)《割書:かれひ》 海鰻(かいまん)《割書:はも》狗魚(くぎよ)白鰻(はくまん)鮦鮵(とうだつ)慈鰻(じまん)鱺(れい)並同 【「胃」は「田+日」で書かれている】 【右丁上段】 を和(くは)し水気(すいき)を逐(おふ) おゝく食(しよく)すれば痃(けん) 癖(づき)はれ物(もの)いづる ○鰹(かつほ)は生(なま)は膈(むね)をきよ くし炙(あぶれ)は脾(ひ)胃(ゐ)をとゝ のふ多(おゝ)く食(しよく)すれは血(ち) をうごかす ○䲍(おこじ)は虚労(きよらう)をおぎな ひ脾(ひ)胃(ゐ)をまし腸(ちやう)風(ふう) 瀉血(しやけつ)を治(ぢ)し気力(きりよく)を ます人をして肥(こへ)すこ やかならしむ ○魴鮄(はうぼ)は鯄(かながしら)に似(に)て 色(いろ)あかし一名/藻魚(もうを)と 【左丁上段】 もいふ ○江猪(いるか)は脯(ほぢゝ)となして 食すれば虫(むし)をころし 瘧(おこり)を治(ぢ)す又/海豚(いるか)と も書(かく)なり ○鱪(しいら)は其(その)性(しやう)未(いまだ)_レ考(かんがへ) 秋(あき)の末(すへ)に多(おゝ)く出る ○鱣(ふか)は長(たけ)二/丈(じやう)はかり 灰(はい)いろなりせなかに 三/行(かう)あり鼻(はな)ながく してひげあり玉版(ぎよくはん) 魚(きよ)同 ○鮫(さめ)は首(かしら)鼈(かめ)に似(に)て 脚(あし)なく尾(を)の長(なが)さ尺(しやく) 【右丁下段挿絵】 鯧(しやう)《割書:まながつを》扁魚(へんぎよ)《割書:同》 江鮏(こうせい)《割書:あめ》 鯔(し)《割書:なよしぼら》 馬鮫(ばかう)《割書:さはら》 【左丁下段挿絵】 鱸(ろ)《割書:すゞき》 鱈(せつ)《割書:たら》 䰵(し)《割書:ゑぶな》 鰹(けん)《割書:かつほ》 【右丁上段】 余(よ)あじはひ美(び)なり 皮(かわ)は刀(かたな)の柄(つか)さやに つくるなり ○鯄(かながしら)は魴鮄(はうほ)に似(に)た り小児(せうに)のくひぞめに かならず用ゆ ○鱠残魚(きすご)は一名/王餘(わうよ) 魚(きよ)といふ呉王(ごわう)船中(せんちう) にて鱠(なます)を海(うみ)にすつる に魚(うを)となれり今の 王余魚(わうよぎよ)これなり ○鯽(ふな)は小鯉(こごい)に似(に)て 色(いろ)くろし五/味(み)に合(がつ) して煮(に)て食(しよく)すれば 【左丁上段】 虚羸(きよろい)をつかさどる中(うち) をあたゝめ気(き)をくだ し下痢(げり)腸(ちやう)痔(ぢ)を やむ蓴(ぬなは)に合(かつ)してあ つものとなしては胃(ゐ) よはくして食(しよく)くだ らざるをつかさどり 中をとゝのへ五ざうを ます ○鮧(なまづ)は水腫(すいしゆ)を治(ぢ)し 小便(しやうべん)を利(り)し下血(げけつ)だ つこうのいたみに葱(ひともし) と同しく煮(に)て食(しよく) してよし 【右丁下段挿絵】 䲍(ちん)《割書:おこじ》 魴鮄(はうぼ) 江猪(こうちよ)《割書:いるか》 鱪(しよ)《割書:しいら》 【右丁下段挿絵】 鱣(はん)《割書:ふか》 鮫(かう)《割書:さめ》 鯄(きう)《割書:かながしら》 鱠残魚(くはいざんぎよ)《割書:きすご》 【右丁上段】 ○鯉(こい)は頭(かしら)より尾(を)に いたるまで鱗(うろこ)に大 小なしみな三十六 鱗(りん)あり煮(に)て食(しよく)す れば欬逆(がいきやく)上気(しやうき)黄(わう) 疸(だん)を治(ち)し渇水腫(かつすいしゆ) を治(ぢ)す ○杜父(とふ)はいしもちと もうしぬすびととも 又ふぐりくらひとも いふなり五/臓(ざう)をおぎ なひ脾(ひ)胃(ゐ)を和(くは)す 又/杜文(とぶん)はいかりいを也 土鯆(とほ)土鮒(とふ)土附(とふ)同 【左丁上段】 ○鮞(はす)は虚労(きよらう)をおぎ なふ油(あぶら)をとりてやけ どにぬりて妙(めう)なり ○鱓(やつめうなぎ)は中(うち)をおぎな ひ血(ち)をまし虚(きよ)をお ぎなひさんこのあく 露(ろ)を治(ぢ)す ○鰻(うなぎ)は虫(むし)をころし瘡(かさ) を治(ち)し脚気(かつけ)腰(こし)腎(じん) のあいだの湿痺(しつひ)を治(ぢ) し陽(やう)をたすく ○黄鱨(きゞ)はおゝく食(しよく)す べからず脾(ひ)胃(ゐ)をそんじ 洩痢(せつり)す一名/黄顙(わうさう) 【右丁下段挿絵】 鯽(せき)《割書:ふな》 鮧(い)《割書:なまづ》 鯉(り)《割書:こひ》 【左丁下段挿絵】 杜父(とほ)《割書:うしぬすびと》《割書:ふぐりくらひ》 鮞(し)《割書:はす》 鱓(せん)《割書:やつめうなぎ》 《割書:小なるを》鰌鱓(しうせん)《割書:といふ》 鰻(まん)《割書:うなぎ》鰻鱺魚(まんれいぎよ)《割書:同》 【右丁上段】 魚といふ ○鰌(どぢやう)は中(うち)をあたゝめ 気(き)をまし酒(さけ)をさまし かわきをやめ痔(ぢ)を治(ぢ)す ○金魚(きんぎよ)は藻(も)のうち に生(しやう)ず甘(あまく)平毒(へいどく)なし 久痢(きうり)を治(ぢ)す銀魚(ぎんぎよ) 朱鯉(ひごい)朱鮒(ひぶな)あり ○年魚(あゆ)は煮(に)て食(しよく) すれば憂(うれい)をやめ胃(ゐ) をあたゝめ冷瀉(れいしや)を止(やむ) ○鮅(うぐひ)は眼(まなこ)あかく鱒(そん)と なづく又一名/赤眼魚(せきがんぎよ) ともいふ 【左丁上段】 ○鱭魚(たちを)は火(ひ)をたす け痰(たん)をうごかし疾(やまひ)を 発(はつ)し瘡(かさ)をはつす 多(おゝ)く食(しよく)すべからず ○鯃(こち)は能毒(のうどく)いまだつ まびらかならず鯒(こち) とも書(かく)なり ○河㹠(ふぐ)は虚(きよ)をおぎな ひ湿(しつ)をさり腰(こし)脚(あし) をおさめ痔(ぢ)をさり 虫(むし)をころす此(この)魚(うを)に 大/毒(どく)あり食(くらふ)べからず ○魥(はまち)は効能(こうのう)いまだつ まびらかならず 【右丁下段挿絵】 黄鱨(わうしやう)《割書:きゞ》 鰌(ゆう)《割書:どぢやう》 金魚(きんぎよ)朱魚(しゆぎよ)《割書:同》 年魚(ねんぎよ)《割書:あゆ》銀口魚(ぎんこうぎよ) 【左丁下段挿絵】 鮅(ひつ)《割書:うぐひ》  鯃(ご)《割書:こち》 鱭魚(せいぎよ)《割書:たちを》鮆魚(せつぎよ)鮤魚(れいぎよ)/𩽣(へつ)魚(ぎよ)魛魚(とうぎよ)《割書:同》 河㹠(かとん)《割書:ふぐ》鯸䱌(こうい)《割書:同》 【右丁上段】 ○小鮦(こんぎり)は鱧(はも)の少(ちいさ)き ものなり功能(こうのう)はも に同し ○鱵(さより)【㊟】は甘(あまく)平毒(へいどく)なし これを食(しよく)すれば疫(えき) 病(ひやう)をやまず針魚(しんぎよ)同 ○鱒(ます)は胃(ゐ)をあたゝめ 中を和(くは)す ○鰕(えび)は鼈瘕(へつか)を治(ぢ)し 痘瘡(とうさう)につけてよし 陽(やう)をさかんにし乳(ち) を通(つう)ず小児(せうに)食(しよく)す れは足(あし)よわくなる 蝦(か)同 【左丁上段】 ○鰝(うみえび)は鮓(なます)にして食(しよく) すれは虫(むし)くひばを 治(ぢ)し頭(かしら)のかさを治(ぢ) す紅鰕(こうか)龍鰕(りうか)海(かい) 鰕(か)同 ○河鰕(かか)はかはえび也 俗(ぞく)にてながゑびと云 ○醤蝦(あみ)はゑびのこま かなるものなり苗蝦(べうか) 線蝦(せんか)泥蝦(でいか)ともいふ ○麪條(しろうを)は中(うち)をゆるく し胃(ゐ)をすこやかにし 水(みづ)を利(り)し欬(せき)をやむ ○蝦姑(しやくなげ)はゑびのたぐ 【右丁下段挿絵】 魥(ぎう)《割書:はまち》 小鮦(しやうたう)《割書:ごんぎり》 鱵(しん)【㊟】《割書:さより》 鱒(そん)《割書:ます》 【左丁下段挿絵】 鰕(か)《割書:えび》 鰝(かう)《割書:うみゑび》 河鰕(かか)《割書:てながゑび かはえび》 【㊟「鱵」は「魚+葴」】 【右丁上段】 ひなり海馬(かいば)といふは この事なり産婦(さんふ)に 手にもたすれば平産(へいさん) すといへり ○鰤(ぶり)は肝(かん)を利(り)し血(ち) をおぎなふ脾(ひ)胃(ゐ)実(じつ) するものはくらふ事 なかれ ○鰣(ゑそ)は虚労(きよらう)をおぎな ふ油(あぶら)をとりてやけど にぬりて妙(めう)なり ○鰚魚(はらか)は腹赤(はらか)とも かくなりはらかの魚 を帝(みかど)に献(けん)ぜし事 【左丁上段】 あり ○矢幹魚(やからいを)ははもに 似(に)て色(いろ)あかし膈症(かくしやう) のどに食(しよく)つまるを治(ぢす) ○青前(さごし)魚は諸病(しよびやう)に いまず馬鮫(さはら)のちい さきものなり ○鯡(にしん)は能毒(のうどく)つまび らかならず猫(ねこ)の病(やまひ)を いやす ○鱓(ごまめ)は鼡頭(いわし)魚の ちいさきものなり能(のう) 毒(どく)いまだつまびらか ならず 【右丁下段挿絵】 醤蝦(しやうか)《割書:あみ》 麪條(めんでう)《割書:しろいを》 蝦姑(かこ)《割書:しやくなぎ》 鰤(し)《割書:ぶり》 【左丁下段挿絵】 鰣(じ)《割書:ゑそ》 鰚魚(せんぎよ)《割書:はらか》 矢幹魚(しかんぎよ)《割書:やがらいを》 青前(せいせん)《割書:さごし》 鯡(ひ)《割書:にしん》 【右丁上段】 ○水母(くらげ)は婦人(ふじん)の虚(きよ) 損(そん)積血(しやくけつ)こしけ小児(せうに) の丹毒(たんどく)又やけとに付(つけ) て妙(めう)なり ○烏賊(いか)は気(き)をまし 志(こゝろざし)をつよくし人に 益(えき)あり月経(ぐはつけい)を通(つう)す ○鱝(えい)は男子(なんし)の白濁(ひやくだく) 膏(かう)淋玉茎(りんぎよくけい)のいたみを 治(ぢ)す小/毒(どく)あり人に 益(えき)あらす海鷂魚(かいようぎよ)同 ○土肉(なまこ)は元気(げんき)をおぎ なひ五/臓(ざう)をまし三焦(さんせう) の熱(ねつ)をさる鴨(かも)と同じ 【左丁上段】 く食(しよく)すべからず ○海馬(かいば)は血気(けつき)のいたみ を治(ぢ)し水臓(すいざう)をあたゝ め陽道(やうだう)をさかんにし かたまりを消(せう)し疔(てう) はれいたむによし ○海牛(すゞめいを)は功能(こうのう)いまだ つまびらかならず ○章挙(たこ)は血(ち)をやしな ひ気(き)をます冷(れい)なる ものなれば脾(ひ)胃(い)よは きものは食(しよく)すべからず 章魚(しやうぎよ)同/石鮔(せききよ)はあし ながだこ飯蛌(はんくは)いゐだこ 【右丁下段挿絵】 鱓(せん)《割書:ごまめ》 水母(すいも)《割書:くらげ》海月(かいげつ)石鏡(せききやう)《割書:並同》 烏賊(うぞく)《割書:いか》 鱝(ふん)《割書:えい》邵陽魚(えい)魟魚(えい)鯆魮(えい) 【左丁下段挿絵】 土肉(とにく)《割書:なまこ》 海馬(かいば) 海牛(かいぎう)《割書:すゞめいを》 章挙(しやうきよ)《割書:たこ》 【右丁上段】 ○鮪(しび)はかしらちいさく してとがりかふとに似(に) たり口(くち)おとがいの下(した)に あり大なるは七八尺ばか りあり ○䱱(さんせういを)は疫病(やくびやう)を治(ぢ)し 瘕(かたまり)を治(ぢ)し虫(むし)をころす 又/鯢(げい)とも書(かく) ○魚子(はらゝご)は目(め)のうちかす むによし鱖(さけ)又は鯇(あかめ)にあり ○乾鱖(からざけ)は鱖(さけ)のしらぼし なり能毒(のうどく)鱖(さけ)に同し 目(め)の玉(たね)は煮出(にだ)しによし 【左丁上段】 かつほにまされり ○鯟鯑(かずのこ)は鯡(にしん)の子(こ)なり 正月又はしうげんに用(もちゆ) ○鰑(するめ)は烏賊(いか)のほし たるなり能毒(のうどく)いかに 同し産後(さんご)によろし ○鱲子(からすみ)は鯔(ぼら)の子(こ) のほしたるなり ○鰭(き)は魚(うを)の背(せなか)をいふ 俗(ぞく)にひれといふ又はた ともいふ鬣同/夏(なつ)は 陽気(やうき)上(かみ)にあるゆへ魚(うを) の美味(びみ)鰭(ひれ)にあり冬(ふゆ)は 陽気(やうき)下(しも)に有ゆへに魚(うを)の 【右丁下段挿絵】 鮪(ゆう)《割書:しび》 䱱(てい)《割書:さんせういを》 【左丁下段挿絵】 鱲子(らうし)《割書:からすみ》 鯟鯑(とうき)《割書:かずのこ》 乾鱖(かんけつ)《割書:からざけ》 魚子(ぎよし)《割書:はらゝご》 鰑(しやく)《割書:するめ》 【右丁上段】 美味(びみ)腹(はら)にあり ○鱗(うろこ)は魚龍(ぎよりやう)のうろこ なり鱗(うろこ)あるもの龍(りやう) これが長(ちやう)なり鯉(こい)は大小 ともにせなかに鱗(うろこ)の数(かず) 三十六/鱗(りん)あり ○鰓(さい)は魚(うを)の頬(ほう)の中(なか)の 骨(ほね)なり俗(ぞく)にこれをえ らといふ又おさとも云 ○鰾(へう)は魚(うを)の腹中(ふくちう)に有 ふえといふ魚脬(ぎよはう)なり 膠(にかは)につくりてにべと云 【右丁下段挿絵】 鰭(き)《割書:はた ひれ》 鱗(りん)《割書:うろこ うろくず》 鰓(さい)《割書:えら おさ》 鰾(へう)《割書:ふえ にべ》 【左丁】 頭書(かしらがき)増補(ぞうほ)訓蒙(きんもう)図彙(づゐ)巻之十五   虫介(ちうかい)《割書:此/部(ぶ)には野草(やさう)にすむもろ〳〵の虫(むし)|川谷(せんこく)にすむ甲(かう)介ある虫(むし)の類(るい)をしるす》 【左丁上段】 ○亀(かめ)は四/肢(し)ひき つりなへたるにゝて くらふ瀉血(しやけつ)血痢(けつり) をとめ三十/年来(ねんらい) の寒嗽(かんさう)を治(ぢ)す ○鼈(どうがめ)は瘀血(をけつ)を下し 陰(いん)を補(おぎな)ひ婦人(ふじん)の 難産(なんざん)腰痛(こしいたむ)を治(ぢ)す ○鱟(かぶとかに)は痔漏(ぢろ)を治(ぢ)す 虫(むし)をころす多(おゝ)く食(くら) 【左丁下段挿絵】 亀(き)《割書:かめ》 鼈(べつ)《割書:どうがめ すつほん》 【上段】 へは咳(せき)および瘡(かさ)を はつす ○𧔒(かざめ)は一名を黄甲(わうかう) といふがざめなり ○蟳(しまがに)は一名を蝤蛑(ゆうほう) といふ小児(せうに)のつかへ熱(ねつ) 気(き)によし ○螺(さゞい)は瘰癧(るいれき)結核(けつかく) むねのうち鬱気(うつき) してのひざるを治ス 蠃(ら)蟸(れい)同 ○田螺(たにし)は小便(せうべん)を利(り) し目(め)の痛(いたみ)を治(ぢ)す ○蟹(かに)は血(ち)をさんじ 筋(すじ)をやしなひ気(き) をまし食(しよく)を消(せう)す うるしまけにすり て付てよし螃(はう) 蠏(かい)郭索(くはくさく)同 石蟹(いしかに) 蟛螖(はうくはつ)あしはらかに螯(かにのかう) ○毛亀(みのがめ)は陽道(やうどう)をた すけ陰血(いんけつ)をおぎなひ 精気(せいき)をまし痿弱(なへよはき) を治(ぢ)す ○螄(ばい)は目(め)をあきら かにし水(みづ)を下(くだ)し 渇(かつ)をやめ熱(ねつ)をさり 大小 便(べん)を利(り)し酒毒(しゆどく) 【下段】 𧔒(しん) がざめ 鱟(こう) かぶとがに 蟳(じん) しまがに 田螺(でんら) たにし 蟹(かい) かに 螺(ら) さゞへ 【上段】 を解(げ)す海螄(かいし)尖 螺 螺螄(らし)はにな ○蛤(はまぐり)は五 臓(ざう)をうるほ し酒(さけ)をさまし胃(ゐ) をひらき婦人(ふじん)の血(けwつ) 塊(くはい)によし ○蚶(あかゞひ)は五 臓(ざう)をうる ほし胃(ゐ)をすこやか にし中(うち)を温(あたゝ)め食(しよく) を消(せう)し陽(やう)をおこす ○蜆(しゞみ)は胃(ゐ)をひらき 乳(ち)をつうじ目(め)を あきらかにし小 便(べん) を利(り)し脚気(かつけ)酒毒(しゆどく) を治(ぢ)す ○蚌(からすがひ)は渇(かつ)をやめ熱(ねつ) をのぞき酒毒(しゆどく)を解(げ) し目(め)をあきらかにし 帯下(こしけ)によし蜯𧉻(はう〳〵)同 馬刀(ばたう) ○貝(たからがひ)は汁(しる)をとりあら へば目(め)のいたみを止(やめ)菜(さい) に合(かつ)し煮(に)て食(くらへ)ば心(しん) 痛(つう)を治(ぢ)す海𧵅(かいば)同 ○蟶(まて)は虚(きよ)をおぎな ひ痢(り)を治(ぢ)し胸中(けうちう) の熱(ねつ)いきれをさる ○蛎(かき)は虚損(きよそん)を治(ぢ)し 【下段】 毛亀(もうき) みのがめ 螄(し) ばひ 螺螄(らし) にな 蚶(かん) あかがひ 魁蛤(くわいかう) 瓦壟子(くわらうし) 蛤(がう) はまぐり 蜆(けん) しゞみ 扁螺(へんら) 【上段】 中(うち)をとゝのへ生(しやう)にて くらへは酒後(じゆご)の熱(ねつ)を さます ○鰒(あわび)は精(せい)をまし身(み) を軽(かる)くし五 淋(りん)をつう し目(め)を明(あき)らかにし 風熱(ふうねつ)労極(らうごく)によし ○車渠(ほたてがひ)は神(しん)をやすんじ 諸(もろ〳〵)の薬毒(やくどく)を解(げ)す 能毒(のふどく)あかゞひと同 ○淡菜(みるくひ)は虚労(きよらう)精(せい)す くなく腰痛(こしいたみ)疝気(せんき)帯(こし) 下(け)によし久(ひさし)く食(しよく)すれ は人の髪(かみ)ぬくる ○辛螺(にし)は飛尸(ひし)遊(ゆう) 虫(ちく)に生(しやう)にて食(くら)ふ べし ○梭尾螺(ほらのかい)は未(いまだ)【左ルビ:ず】_レ考(かんがへ) 法螺貝(ほらのかい)ともかく ○玉珧(たいらき)は巧用(こうよう)蚌(からすかい) に同し多(おゝ)く食(しよく) すれば風(かぜ)をうごか す𧍧䗯(たいらぎ)ともかく也 ○帽貝(ゑぼしかひ)はかたち帽(もう) 子(す)に似(に)たり能毒(のふどく)は いまだつまびらかな らず ○海燕(たこのまくら)は雨湿(うしつ)にあ 【下段】 蚌(はう) からすがひ 貝(ばい) たからがひ 蟶(てい) まて 蠣(れい) かき 肉(にく)を 蛎黄(れいわう) といふ 鰒(はく) あわび 石決明(せきけつめい) 九孔螺(きうこうら) 車渠(しやきよ) ほたてがひ 淡菜(たんさい) みるくひ 一名 穀菜(こくさい) 辛螺(しんら) にし 香螺(かうら) ながにし 梭(さ) ほらのかひ 玉珧(ぎよくたう) たいらぎ 海月(かいげつ) 馬頬(ばけう) 江跳(こうてう) 並同 【上段】 てられ身(み)いたむに 汁(しる)に煮(に)てくらふべ し一名 陽遂足(やうすいそく)又 海盤(かいはん)ともいふ ○寄虫(がうな)は顔色(がんしよく)を まし心志(しんし)をうるは しうす ○海胆(うに)は能毒(のふどく)いま だつまびらかならず ○郎君(すがい)は婦人(ふじん)の なんざんに手(て)にもた すれはうまる酢(す)の 中(なか)へ入れはうごくなり ○蛍(ほたる)は腐草(ふさう)又は 爛竹(らんちく)の根(ね)化(くわ)して ほたるとなる夏(なつ)の 大 火気(くはき)を得(え)て化(くは) すよつて光(ひか)り有 ○蛬(きり〳〵す)は蟋蟀(しつそつ)とも 蜻蛚(せいれつ)ともいふ夏の 蝗(いなご)に似(に)て大(おゝい)なり補 夏(なつ) の末(すへ)にいづる ○螻(けら)は土中(どちう)の泥(どろ)に すむ土(つち)をくらふや 一名 土狗(どく)又は石鼠(せきそ) ともいふ ○螳蜋(かまきり)はいほむじ 【下段】 帽貝(はうかい) ゑぼしがひ 海燕(かいゑん) たこのまくら 寄虫(きちう) かうな 郎君(らうくん) すがひ 相思子(さうしし)同 海胆(かいたん) かぶとがひ 蛍(けい) ほたる 丹鳥(たんてう)蠗々(よう〳〵)同 蛆蛍(そけい) みづぼたる 螻(ろう) けら 蛬(きやう) きり〳〵す 【右丁上段】 り仲夏(ちうか)に生ずいか るときは臂(ひぢ)をかゝく ○絡線(こうろぎ)はきり〴〵 すともいふ一名/聒(くはつ) 々(〳〵)児(じ)いとゞといふも 此たくひなり ○螇蚚(けいれき)は一名/蟿(けい) 螽(とう)といふはた〳〵 むし俗(ぞく)にしやう りやうむし ○竈馬(まるいとゞ)は一名/竈(そう) 雞(けい)といふかたち丸(まる)く 脚(あし)長(なが)し竈(かまど)のほ とりにすむ 【左丁上段】 ○蜻蛉(とんぼう)は六/足(そく)四の つばさ夏(なつ)生(しやう)ずと んでむしをとり 喰(くら)ふ (補)大(おゝい)なるをやん まといふ ○赤卒(あかゑんば)はとんぼう の色(いろ)赤(あか)きものなり 俗にあかやんまと云 黒(くろ)やきにして喉痺(こうひ) を治(ぢ)す ○䘀螽(いなご)は稲(いね)に生(しやう) す𧑄(しう)同 ○/𧐍(はた)𧑓(〳〵)は一名/螽(しう) 斯(し)いなごに似たり 【右丁下段挿絵】 螳蜋(たうらう)《割書:かまきり》 絡線(らくせん)《割書:こうろぎ》 螇蚚(けいれき)《割書:しやうりやうむし》 竈馬(そうば)《割書:まるいとゞ》 【左丁下段挿絵】 蜻蛉(せいれい)《割書:とんぼう》 赤卒(せきそつ)《割書:あかゑんば》絳騶(かうすう)《割書:同》 䘀螽(ふしう)《割書:いなご》 /𧐍(しよう)𧑓(しよ)《割書:はた〳〵》 【右丁上段】 蝶(てふ)は蠺(かいこ)化(くわ)して なる又/麦(むぎ)化(くは)して蝶(てふ) となる鳳蝶(ほうてふ)はあげ は胡蝶(こてふ)蛺蝶(けうてふ)野(や) 蛾(が)同 ○蠅(はへ)は前足(まへあし)にて縄(なわ) をなふかたちをなす よつて虫へんに黽(なわ)の 字(じ)をかく爛灰(らんくはい)の内(うち) より生ず ○金亀(たまむし)は大さ刀豆(なたまめ) のごとし夏/蔓草(まんさう) の中(うち)に生す ○灯蛾(ひとりむし)は燈(ともしび)をはら 【左丁上段】 ふを飛蛾(ひが)とも燭蛾(しよくか) ともいふひとりむし ○馬蜂(くまばち)は虻(あふ)の大(おゝい)なる ものなり色くろし ○叩頭(ぬかつきむし)ははたをり むしとも (補)いねつき虫 ともいふ ○/𧉟(まつむし)は (補)七月の末(すへ)よ り生(しやう)す声(こへ)枩風(まつがせ)の 音(をと)のごとし広野(くはうや)に 生ず ○金鐘(すゞむし)は一名/金鏡(きんけい) 児(じ)とも月鈴児(げつれいじ)とも いふなり 【右丁下段挿絵】 蝶(てふ)《割書:あげは》 灯蛾(とうが)《割書:ひとりむし》 蠅(よう)《割書:はへ》 金亀(きんき)《割書:たまむし》 【左丁下段挿絵】 馬蜂(ばほう)《割書:くまばち》 叩頭(こうとう)《割書:ぬかつきむし》 𧉟(たい)《割書:まつむし》 金鐘(きんしやう)《割書:すゞむし》 【右丁上段】 鑾虫(くつはむし)はなく声(こへ)く つはの音(をと)に似(に)たりよつ て名(な)づく ○斑蝥(はんはう)は人に大毒(だいどく) なり斑猫(はんめう)とも書(かく) ○紺蠜(かねつけとんばう)は水上(すいじやう)に飛(とん)で 虫(むし)をとる紺蝶(かんてふ)同 ○齧髪(かみきりむし)は一名/天牛(てんぎう) ともいふよく髪(かみ)をく ひきる目(め)の前(まへ)に二 角(かく)あり ○蓑虫(みのむし)は一名/木螺(もくら) 結草(けつさう)といふ ○蜂(はち)は腐(くさる)菌(くさびら)化(くは)し てなる毒尾(どくを)にあり 【左丁上段】 鋒(ほこ)のごとしよつて蜂(ほう) といふなり ○蠧(のんし)はかいこにゝて木(もく) 中(ちうに)有て木(き)又/葉(は)を くらふ木(き)をくらふを蝎(けつ) といふ葉(は)をくらふを 蠋(しよく)といふ ○蟢(あしたかぐも)はあしながきく もなり蟰蛸(せう〳〵)同 ○蝉(せみ)は地虫(ぢむし)化(くは)して なる口なふして鳴(なき)の んで食(くら)はず ○蝸(かたつふり)は池(ち)沢(たく)草(さう)樹(じゆ)の 間(あいだ)に生(しやう)ずかたち螺(にし) 【右丁下段挿絵】 鑾虫(らんちう)《割書:くつわむし》 斑蝥(はんはう)《割書:はんめう》 齧髪(けつはつ)《割書:かみきりむし》 紺蠜(かんはん)《割書:かねつけとんばう》 蓑虫(さちう)《割書:みのむし》 【左丁下段挿絵】 蠧(と)《割書:のんし》 蜂(ぼう)《割書:はち》 蟢(き)《割書:あしたかぐも》 《割書:ぢよらうぐも》 蝉(せん)《割書:せみ》 蝸(くわ)《割書:かたつふり》蝸羸(くわら)《割書:同》 《割書:でんぐむし》 【右丁上段】 に似(に)て色(いろ)白(しろ)く角(つの)有 ○䖟(あぶ)【㊟】は大(おゝい)なるを木(もく) 䖟(ばう)といふつばさを 以てなく声(こへ)䖟々(ばう〳〵)と いふよつてなづく ○蛾(か)は蚕(かいこ)化(くは)して蛾(が) となる灯蛾(とうが)の類(たぐひ)也 ○/𧕪(えつ)螉(をう)はさそり又 螺羸(くはら)とも細腰蜂(さいようほう)と も蒲芦(ほろ)ともいふ俗(そく) にいふ似我蜂(じがばち)。 ○気礬(へふりむし)は一名/行夜(かうや) つばさ短(みじかく)して遠(とを)く 飛(とば)す 【左丁上段】 ○蚋(ぶと) (補)は田野(でんや)に生(しやう)じ 雨(あめ)の前後(せんご)に飛(とん)で人 の肌(はだへ)をさす其(その)あと 愈(いへ)がたし ○蚊(か)は孑々虫(ぼうふりむし)化(くは)して なる豹脚(へうきやく)はやぶが也 ○孑孑(ぼうふりむし)はたまり水 くさりて生(しやう)ず化(くは)し て蚊(か)となる一名/釘(てい) 倒虫(とうちう) ○蛙(かはづ)は惣名(さうみやう)なりね ずみ色(いろ)にして背(せ)に小 紋(もん)がた有をかはづと云 なく声(こへ)美(び)なり水(すい) 【右丁下段挿絵】 䖟(ばう)《割書:あぶ》 蛾(か)《割書:ひゝり》 気礬(きはん)《割書:へふりむし》 𧕪(えつ)螉(をう)《割書:さゝり》  【左丁下段挿絵】 蚋(せい)《割書:ぶと》 蚊(ぶん)《割書:か》 孑孑(けつ〳〵)《割書:ぼうふりむし》 蛙(あ)《割書:かはづ》田雞(でんけい)水雞(すいけい)《割書:同》《割書:かはづ》 青蛙(せいあ)《割書:あまかへる》  蝌蚪(くわと)《割書:かへるこ》 蛭(しつ)《割書:てつ》【左側振り仮名】《割書:ひる》 【㊟「䖟」は「虻」の異体字】 【右丁上段】 中(ちう)に住(すむ)又/色(いろ)青(あを)きを あまがへるといふ色(いろ)赤(あか) きを赤(あか)がへるといふ 是(これ)を小児(せうに)に食(しよく)せし めてよし ○蝌蚪(かへるこ)は蟇(ひきがへる)の子(こ)也 水中(すいちう)に生(しやう)ず蛞斗(くわと) 活東(くわと)並同 ○蛭(ひる)は大なるを馬(むま) 蛭(ひる)といふよく人の血(ち) をすふ ○蠼螋(はさみむし)はかたちむか でに似(に)て色(いろ)黒(くろ)し 人の影(かげ)にいばりすれ 【左丁上段】 ば人かさを発(はつ)す ○蜈蚣(むかて)はせなか黒(くろ)く みどり色(いろ)足(あし)あかく 腹(はら)黄(き)なりさゝれたる 人は烏鶏(くろきにはとり)の尿(くそ)又は 大蒜(おゝびる)をぬるべし ○蟾蜍(ひきがへる)は腹(はら)白(しろ)く黒(くろ) き紋(もん)ありせなかにが んぎあり油(あふら)を蟾(せん) 酥(そ)といふ薬(くすり)に用(もち)ゆ ○蝦蟇(がま)はせなかに黒(こく) 点(てん)あり身(み)小にして よくおどる化(くは)して 鶉(うづら)となる 【右丁下段挿絵】 蠼螋(くしう)《割書:はさみむし》蛷螋(きうしう)搜夾(しうけう)《割書:同》 蟾蜍(せんじよ)《割書:ひきがへる》 蝦蟆(がま)《割書:かへる》 百足(はくそく)《割書:をさむし》 蜈蚣(ごこう)《割書:むかで》 蚰蜓(いうゑん)《割書:けじ〴〵》螾(いん)𧍢(えん)《割書:同》  【左丁下段挿絵】 蠓(もう:ぼう)《割書:しやう〴〵》 蚘(くわい)《割書:はらのむし》 蛆(そ)《割書:うじ》 糞蛆(ふんそ)《割書:くそむし》 蠐螬(せいさう)《割書:きりうじ》 蚯蚓(きういん)《割書:みゝず》 蛜蝛(いい)《割書:おめむし》 蟫(いん)《割書:しみ》 蚤(さう)《割書:のみ》 蝨(しつ)《割書:しらみ》 蟻(ぎ)《割書:あり》 【右丁上段】 ○蚰蜓(けぢ〴〵)はむかでにゝ て足(あし)長(なが)し毒(とく)あり 人の耳(みゝ)に入(いり)たるに 龍脳(りうのう)をふき入べし ○百足(おさむし)は長(なが)さ七八分 色(いろ)黒(くろ)し足(あし)百にいたる 一名/馬蚿(ばけん) ○蠓(しやう〴〵)は雨(あめ)によつて 生(しやう)じ陽(ひ)をみて死(しす) □(うすひく)【虫+豊】がでかき時は風(かぜ)吹(ふく) 舂(うすつく)がごときときは 雨(あめ)ふる ○蚘(はらのむし)は人の腹中(ふくちう)に有 ながき虫(むし)なり蛔(くはい)同 【左丁上段】 脾(ひ)胃(ゐ)の湿熱(しつねつ)より 生ず ○蛆(うじ)は腐肉(ふにく)のあいだ に生ず魚類(ぎよるい)畜類(ちくるい)の 肉(のく)のうちに生す鮓(すし) の中(なか)にもわく蠁(きやう)同 ○蠐螬(きりうじ)はかたち蚕(かいこ)の ごとし樹根(しゆこん)又は糞(ふん) 土(ど)の中に生(しやう)ず身(み)みし かく色(いろ)白(しろ)し蠀螬(しそう) 同 (補)又/小(ちいさ)く黒(くろ)きあり ○蚯蚓(みゝず)は雨(あめ)ふれば出 はるゝときは夜(よる)なく ○蛜蝛(おめむし)は一名/𧑓(しよ)蝜(ふ) 【右丁下段挿絵】 蜘蛛(ちちう)《割書:くも》 蚕(さん)《割書:かひこ》 蛣蜣(きつきやう)《割書:くそむし》 土蠱(どこ) 木虱(もくしつ)《割書:たにこ》 水(すい)𤼭(さう)《割書:とびむし》 【左丁下段挿絵】 水馬(すいは)《割書:しほうり》 蠑螈(ゑいげん)《割書:いもり》 蝘蜓(ゑんてん)《割書:やもり》 蜥蜴(せきてき)《割書:とかけ》 滑虫(くわつちう)《割書:あぶらむし》 【右丁上段】 虫といふ又は鼠婦 ともいふ ○蟫(しみ)は書中(しよちう)の白魚(しみ) なり一名/蛃(へい)と云/俗(ぞく) に蠧魚(とぎよ)といふ ○/𤼭(のみ)は床下(ゆかのした)土中(どちゅう)ゟ 生ず ○蝨(しらみ)は人 (補)の身(み)にわく 髪(かみ)にもわく又/毛(け)にも 有かたちかはれり ○蟻(あり)は大なるを蚍蜉(ひふ) といふ小(ちいさき)を蟻(き)といふあ りに君臣(くんしん)の義(き)あり 故(ゆへ)に義(ぎ)の字(し)をかく 【左丁上段】 ○蜘蛛(くも)はぢようらうぐも を花蜘蛛(くはちらう)といふ足(あし)たか くもを蟢子(きし)といふむか しの大昊(たいかう)くもをみて あみをむすび出せり ○蚕(かいこ)は糸(いと)を吐(はく)虫(むし)なり 三たび俯(ふ)し三たび 起(をき)二十七日にして老(おふ) 黄帝(くはうてい)の元妃(けんひ)西陵(せいりやう) 氏(し)始(はじめ)て蚕(かいこ)をやし なふて糸(いと)を作(つくる) ○蛣蜣(くそむし)はよく糞土(ふんど) をうつて円(ゑん)をなす 糞虫(ふんちう)同 【右丁下段挿絵】 殻(かく)《割書:から》 蛻(たい)《割書:もぬけ》 蝉蛻(せんたい)《割書:うつせみ》 甲(かう)《割書:こう》 介(かい) 繭(けん)《割書:まゆ》 【左丁下段挿絵】 蛅蟖(せんし)《割書:いらむし》 豉虫(しちう)《割書:まひくむし》  蚇蠖(しやくくわく)《割書:しやくとり》 蛞蝓(くわつゆ)《割書:なめくぢ》 螲蟷(ちつたう)《割書:つちくも》 【右丁上段】 ○土蠱(どこ)は (補)蛭(ひる)に似(に)て色(いろ) 黄(き)なり頭(かしら)耳(みゝ)かきの ごとし俗(ぞく)にみゝかき蛭(びる) といふ此(この)虫(むし)大毒(だいどく)あり ○木虱(こふ)は木(き)竹(たけ)より生 ず蝨(しらみ)に似(に)てまるく 青(あを)く灰色(はいいろ)なり壁(へき) 蝨(しつ)同/俗(そく)にいふたにこ ○水(とび)𤼭(むし)は一名/水蝨(すいしつ)と いふ湿地(しつち)の土中(どちう)に生(しやう) すよくとぶ目肬(めいぼ)に つけてよし ○水馬(しほうり)は一名/水黽(すいよう)と いふ水上(すいじやう)におよぐ水(みづ) 【左丁上段】 かるればとふ長さ一寸ば かり四/足(そく)あり ○蠑螈(いもり)は水中(すいちう)に住(すむ) せなか黒(くろ)く (補)腹(はら)赤(あか)く 四/足(そく)あり ○蝘蜓(やもり)は一名/守宮(しゆきう) といふ此/虫(むし)を殺(ころし)て宮(きう) 女(ぢよ)の臂(ひぢ)にぬるに男(をとこ) を犯(をかす)ことあればはぐる おかさゞればはげずよつ て守宮(しゆきう)といふ壁虎(へきこ) 蝎虎(けつこ)並同 ○蜥蜴(とかけ)は (補)土中(どちう)にすむ 毒(どく)あり石龍子(せきりやうし)山龍(さんりやう) 【右丁下段挿絵】 壁銭(へきせん)《割書:ひらたぐも》 蝿虎(ようこ)《割書:はへとりぐも》 雀甕(じやくよう)《割書:すゞめのたご》 螵蛸(へうせう)《割書:おほぢがふぐり》 【左丁下段挿絵】 蟒(まう)《割書:うはばみ》 《割書:やまかゝち》 【右丁上段】 子(し)ならびに同 ○滑虫(あふらむし)は一名/蜚蠊(ひれん) といふかまどの辺(へん)に多(おほ) し (補)羽(はね)有てとぶ色(いろ)黒(くろ)し ○殻(から)は蚌螺(ほうら)の類(たぐひ)のから の惣名(さうみやう)也/蛤(はまぐり)のからを玄(けん) 明粉(みやうふん)といふ痰(たん)を治(ぢ)すは いのふたを甲香(かうかう)といふ又 厴(えん)とも書(かく)たき物に入 鰒(あわび)の貝(かい)のからを石决明(せきけつめい)と云 目(め)の痛(いたみ)を治(ぢ)しはなぢをとむ 又かき貝(がい)のからを牡蠣(ぼれい)と なづくよく盜汗(ねあせ)をとむる ○蛻(もぬけ)は蛇蛻(じやたい)はへびのきぬ 【左丁上段】 なり蛇皮(じやひ)共/蛇退(しやたい)とも云 黒焼(くろやき)にして酒(さけ)にて用(もち)ゆ れは難産(なんざん)によし 蝉蛻(せんたい)は蝉退(せんたい)とも枯蝉(こせん) 共いふ粉(こ)にして油(あぶら)にて とき耳(みゝ)だれに付れば治(ぢ)す ○甲(かう)は亀(かめ)の甲なりむ かしは亀(かめ)をやいて甲(かう)の 紋(もん)を見て吉凶(きつけう)をうら なふ事有/是(これ)を亀(き) 卜(ぼく)といふ又/薬(くすり)に用(もち)ゆ れは腎(じん)を補(おぎな)ひ瘀血(をけつ) を消(せう)す又/鱉甲(べつかう)は瘀(と) 血(けつ)を散(さん)じ腫(はれ)を消(せう)す 【右丁下段挿絵】 烏蛇(うじや)《割書:からすへみ》 両頭(りやうとう) 蛇(じや)《割書:くちなは》 銀蛇(ぎんしや)《割書:しろへみ》 蝮(ふく)《割書:まむし》 岐首(きしゆ) 【左丁下段挿絵】 蛅蟴(せんし)《割書:けむし》 /𧋪(べい)虫(ちう)《割書:こめむし》 吉丁虫(きつていちう)《割書:かぶとむし》 芋蠋(うしよく)《割書:いもむし》 蠛蠓(べつもう)《割書:かつほむし》 螱(い)《割書:はあり》 【右丁】 介(かひ)は蟹(かに)の甲(かう)なり○繭(まゆ)はかいこをかひて眉(まゆ)をつくらせ綿(わた)をとる蟓(しやう)はくはまゆ○蛅蟖(いらむし)は一名 黒髯虫(こくせんちう)といふ 木上に生(しやう)ず人をさせばはれいたむ○蚇蠖(しやくとりむし)は樹上(じゆじやう)に生ず行(ゆく)こと指(ゆび)にて尺(しやく)をとるがごとし○豉虫(まひ〳〵むし)は一名 豉母虫(しぼちう)と いふ水中に生ず色黒(いろくろ)く小し○蛞蝓(なめくじり)は二 角(かく)あり蝸牛(くわきう)に似(に)たり一名 土蝸(どくわ)といふ○螲蟷(つちぐも)は土窟(とくつ)の中(うち)に すむ一名 蛈蝪(てつたう)といふ古(ふる)きいわやに有○壁銭(ひらたぐも)は壁戸(かべと)などの間(あいだ)に有一名 壁鏡(へききやう)といふ巣(す)を壁繭(へきけん)といふ ○蝿虎(はいとりぐも)は一名 蝿豹(ようへう)といふ蝿蝗(ようくわう)蝿豹(ようへう)並同○雀甕(すずめのたご)は一名 蛅蟖房(せんしばう)といふいらむしの巣なり○螵蛸(おほぢがふぐり)は 木(き)の枝(えだ)にあり一名 螳螂房(とうらうばう)といふかまきりのすなり○蠎(うはばみ)は蛇(へび)の大(おゝい)なるものなり深山(しんざん)広野(くわうや)にすむ人を のむなり○蛇(くちなは)は草中(さうちう)にすみて蛙(かはつ)を食(しよく)す蛇(じや)は惣名(さうみやう)なり○蝮(まむし)は蛇(へび)に似(に)て長(たけ)みじかく黒黄色(くろきいろ)なり おとがひ黄(き)にかしら大に口とがり毒(どく)はなはたしくよく人をさす又ははみとも反鼻蛇(はんひじや)ともいふ○烏蛇(からすへび)は 身黒(みくろ)くひかりあり頭(しら)まるく眼(まなこ)あかし又 烏梢蛇(うせうじや)とも黒花蛇(こくくわじや)ともいふ○銀蛇(しろへび)は長さ一尺ばかり一名は 錫蛇(しやくじや)又 金蛇(こがねへび)といふ○両頭蛇(りやうとうじや)は一 頭(とう)は口目(くちめ)なし是(これ)をみれば不吉(ふきつ)なり一名 越王蛇(えつわうじや)といふ○岐首蛇は首 ふた岐(また)ある蛇(へび)なり枳首蛇(きしゆじや)とも書(かく)ことに毒(どく)あり触(ふる)べからず○螱(はあり)は飛蟻(とぶあり)なり朽木(くちき)より生ず ○吉丁虫(かぶとむし)はせなかみどりにかぶとのごとし此虫(このむし)をとりて身(み)におぶれは人を愛(あい)し媚(こば)しむ○芋蠋(いもむし) 芋(いも)の葉(は)に生(しやう)ず○蛅蟖(けむし)は木(き)の葉(は)より生じて枝(えだ)を食枯(くひから)す○𧋪虫(よねむし)は米(こめ)の中(うち)に生(しやう)ず俗(ぞく)にいふ こくうぞう○蠛蠓(べつもう)はかつほむし順(したがふ)の和名抄(わみやうしやう)に見へたり 【左丁】 頭書(かしらがき)増補(ぞうほ)訓蒙(きんもう)図彙(づゐ)巻之十六 米穀(べいこく) 此部(このぶ)には五 穀(こく)の類(るい)すべて くひ物のたぐひをしるす 【上段】 ○粳(うるしね)は気(き)をまし胃(い)の気(き)を和(くわ)し 中(うち)を補(おぎな)ひ腎精(じんせい)をまし腸胃(ちやうゐ)をます ○糯(もちごめ)は中(うち)をあたゝめ気(き)をまし脾(ひ) 胃(い)をあたゝめ小 便(べん)をしゞめ虚(きよ) 寒(かん)洩痢(せつり)をとむ ○粟(あわ)は腎気(じんき)をやしなひ脾(ひ) 胃(ゐ)の熱(ねつ)をさり小 便(べん)を利(り)し 反胃(ほんい)を治(ぢ)す ○稷(きび)は気(き)をまし不足(ふそく)を補(おぎな)ひ 熱(ねつ)をのぞき中(うち)を安(やす)くし胃(い)を利(り) し血(ち)をすゞしうし暑(しよ)を解(げ)す ○稲(たう)【左下ルビ「ね」】は禾(くわ)同かりいね 【下段】 早稲(わせ) 晩稲(をくて) 粳(かう) うるしね 粝米(くろごめ) 精米(しらげ) 糯(だ) 𥻟米(だべい)同 もちのよね 穧(せい)はいなば苗(べう)はなへ又 苗代(なはしろ)ともいふ ○稗(ひえ)は中をおぎなひ気(き) をまし腸胃(ちやうゐ)をあつくし 飢(うへ)をすくふ ○麦(むぎ)は虚(きよ)をおぎなひ血(けつ) 脈(みやく)をさかんにし五ざうを 実(じつ)し顔色(がんしよく)を益(ます) ○蕎(そば)は腸胃(ちやうゐ)を実(じつ)し気(き) をくだし積滞(しやくたい)を和(くわ)し 熱腫(ねつしゆ)風痛(ふうつう)を消(せう)す ○菉(ぶんどう)は食(しよく)を消(せう)し気(き)を くだし熱(ねつ)をさり毒(どく)を解(げ) し小べんを利(り)し脹満(てうまん) 泄痢(せつり)をつかさどる ○麻(あさ)は女人(によにん)経候(けいこう)通(つう)ぜす けんぼう金瘡(きんさう)内痔(ないぢ)を 治(ぢ)し悪血(あくけつ)をさる ○豇(さゝげ)は気(き)をまし腎(じん)をお ぎなひ胃(ゐ)をすこやかにし 五ざうを和(くわ)し小便(しやうべん)しげ きをとむ ○豌(えんどう)は小 便(べん)を利(り)し脹満(ちやうまん) をつかさどり消渇(せうかつ)を治(ぢ)し 吐逆(ときやく)を治(ぢ)す胡豆(こづ)𧰆豆(ひつづ)な らびに同 ○菽(まめ)は水腫(すいしゆ)を治(ぢ)し悪血(あくけつ)を さんじ脾胃(ひゐ)をすこやかに し酒病(しゆびやう)を解(げ)し胃中(ゐちう)の 熱(ねつ)をさる 【下段】 粟(ぞく) あわ 𥝰米(もちあわ) 梁米(うるあわ) 稷(しよく) きび 丹黍(あかきび) 秬黍(くろきび) 稗(はい) ひえ 稊(てい)䄺(い)同 菉(りよく) やへなり ぶんどう 蕎(きやう) そば 荍麦(けうばく)同 麦(ばく) むぎ 稞麦(くはばく) むぎやす 【上段】 ○荅(あづき)は水気(すいき)を下(くだ)し膿(うみ) 血(ち)をはらい小便(しやうべん)を利(り)し脹(ちやう) 満(まん)消渇(せうかつ)を治(ぢ)す ○藊(あぢまめ)は中(うち)を和(くわ)し気(き)を くだし呕(ゑづき)をやめ五ざうを おぎなひくわくらん酒毒(しゆどく) を解(げ)す扁豆(へんづ)籬豆(りづ)眉豆(びづ) ならびに同 ○胡麻(ごま)は気力(きりよく)をまし肌(き) 肉(にく)を長(ちやう)じ筋骨(すぢほね)をかたく し大小 腸(ちやう)を利(り)し耳目(みゝめ) をあきらかにす ○罌粟(けし)は風毒(ふうどく)をさり邪(じや) 熱(ねつ)をおい痰(たん)を治(ぢ)し反胃(ほんゐ)を 治(ぢ)しかわきをうるほす ○蚕豆(そらまめ)は胃(ゐ)をこゝろよくし 臓腑(ざうふ)を和(くは)す一に胡豆(こづ)と なづく ○玉黍(なんばんきび)は気(き)をまし中(うち)を和(くは) し洩(くだり)をとめくわくらんくだり 腹(はら)をとめ小べんを利(り)す ○蜀黍(たうきび)は中(うち)をあたゝめ腸(ちやう) 胃(ゐ)をしぶらしくわくらんを 治(ぢ)す蘆穄(ろさい)萩穄(しうさい)同 ○刀豆(なたまめ)は中(うち)をあたゝめ気(き)を くだし腸胃(ちやうゐ)を利(り)ししや くりをとめ腎(じん)をまし元(げん) をおぎなふ ○黎豆(はつしやうまめ)は中(うち)をとゝのへ胃(ゐ)を まし小 便(べん)をつうず狸豆(りづ) 【下段】 麻(ま) あさ 豇(かう) さゝげ 白角豆(しろさゝげ) 紫豇豆(あかさゝげ) 豌(ゑん) のらまめ ゑんだう 菽(しゆく) まめ 荅(たう) あづき 藊(へん) あぢまめ いんげんまめ 【上段】 虎豆(こづ)ならびに同 ○燕麦(からすむぎ)はあまく平(へい)どく なし飢(うへ)をすくひ腸(ちやう)をな めらかにす一名 雀麦(じやくばく)といふ ○穂(ほ)はいねのほなり芒(はう)は のぎ秕(ひ)はしひなせ今按(いまあん)ず るにみよさ ○藁(かう)はわらなり禾稈(くははい)禾(くは) 穣(じやう)稲草(たうさう)ならびに同 稈(はい) 心(しん)わらしべ稭(かい)䕸(かつ)秸(かつ)並同 ○穀(こく)もみ禾(あわ)麻(あさ)粟(こめ)麦(むぎ)豆(まめ) これを五 穀(こく)といふ種(しゆ)は たね稃(ふ)はすりぬか ○萁(き)はまめがらなり𧯯(き)同 魏の曹植(そうちよく)詩(し)につくれり ○莢(けう)はまめのさやなり 豆角(づかく)なり藿(くはく)はまめのは なり馬(むま)これをくらふ ○饅頭(まんぢう)はもとは肉餡(にくあん)をも ちひし事なり小豆餡(あづきあん) のものを素饅(そまん)といふ餡(あん) なきものを蒸餅(せうべい)といふ 今(いま)は新製(しんせい)品々(しな〳〵)あり唐(とう) 饅頭(まんぢう)あるひは煎餅(せんべい)饅(まん) 頭(ぢう)などいふものあり ○飯(はん)はいひなり又めし 強飯(こうはん)はこはいひ赤飯(せきはん)はあづ きめし乾飯(かんはん)はほしいひ水(すい) 飯(はん)は湯(ゆ)づけめし補 麦飯(ばくはん)は むぎめし粟飯(ぞくはん)はあわのめし 【下段】 胡麻(ごま) 油麻(ゆま) 脂麻(しま) 芝麻(しま) 罌粟(あうぞく) けし 蚕豆(さんづ) そらまめ 燕麦(えんばく) からすむぎ 玉黍(ぎよくしよ) なんばんきび 蜀黍(しよくしよ) たうきび 刀豆(たうづ) なたまめ 刀鞘豆(たうさうづ) 挟剣豆(けうけんつ)同 【上段】 ○餅(べい)はもち麺餅(めんべい)なり 糕(かう)は粉餅(ふんべい)なり団子(だんご)なり 飯団(はんだん)はほたもち補 粟餅(ぞくへい)は あわもち艾餅(かいへい)はよもぎもち ○糖(たう)はあめなり飴(い)同 湿糖(しつたう) はしるあめ𩛿(せい)はかたあめ也 ともに老人(らうじん)をやしなふ 一種(いつしゆ)地黄煎(ぢわうせん)と名づくる 補 もの有 当時(たうじ)夏月(かげつ)に専(もつはら) 小児(せうに)に用(もち)ゆ ○糉(そう)はちまきなり粽(そう)同一に 角黍(かくしよ)といふ楚(そ)の屈原(くつげん)よ りはじまりし事といふ也 古(いにしへ)は葦(あし)の葉(は)にてつゝみ五 色(しき) の補 糸(いと)にて巻(まき)しとぞ今用(いまもち) ゆる笹(さゝ)の葉(は)は腹中(ふくちう)によ ろしからずといふ能々(よく〳〵)あく けを出しよくゆてゝつかふ べし ○索麺(そくめん)はむぎなわといふ 一名 索餅(さくへい)といふ補 又 温飩(うんどん) 蕎切(そばきり)冷麦(ひやむぎ)などいふ物をす べて麺類(めんるい)といへり ○餢飳(ぶと)は俗(そく)に伏兎(ふと)とかけ りあぶらあげの餅(もち)なり油(ゆ) 堆(たい)となづく ○環餅(くはんべい)はまがりなりあぶ らあげの菓子(くはし)なり糫(くはん) 餅膏(へいかう)とも糫寒具(くはんかんく)とも いふ巧菓(こうくわ)あぶらもち 【下段】 黎豆(れいづ) 八升まめ 萁(き) まめがら 穂(けい) ほ 藁(かう) わら 莢(けう) まめのさや 穀(こく) もみ 饅頭(まんぢう) 飯(はん) いひ 餅(べい) もち 糖(たう) あめ 糉(そう) ちまき 【上段】 ○酢漿(さくしやう)はすはまなりまた 酨(すはま)とも書(かく)べし俗(ぞく)に洲浜(すはま) とかくなり ○焼餅(やきもち)は䭆(やきもち)とも書(かく)べし 串(くし)にさしたるをこがゝといふ 又 鳥(とり)のかたちにつくりて鶉(うつら) やきと名づく ○粔籹(きよぢよ)はをこしごめなり糯(もち) をいりて飴(あめ)にてかためたる なり俗(ぞく)に奥米(をこしごめ)とかけり 丸(まる)き補を飴(あめ)おこしといひかと あるを岩(いわ)おこしといふ ○煎餅(せんへい)は餅(もち)をひらめて 煎(いり)あぶりたるなり又 銭(せん) 餅(へい)とも書(かく)べし 【下段】 酢漿(さくしやう) すはま 索麺(さうめん) 焼餅(やきもち) 餢飳(ぶと) 煎餅(せんべい) 巧果(あぶらもち) 粔籹(きよぢよ) おこしごめ 環餅(くわんへい) まがり 【手書き】 拾冊之内 【裏表紙】