【表表紙】  身体【手書き、赤字】  器用【手書き、赤字】 【題簽】 《題:《割書:増補|頭書》訓蒙図彙大成 四》 【見返し】   拾冊之内【手書き】 【左丁】 《題:頭書増補訓蒙図彙(かしらがきぞうほきんもうづゐ)巻(くはん)之五》    身体(しんたい)《割書:此部(このぶ)には耳(みゝ)目(め)鼻(はな)口(くち)毛(け)髪(かみ)頭(かうへ)足(あし)のたぐひ|すへて人(ひと)の身(み)のうへの事あるなり》 【左丁上段】 ○頭(づ)頂(いたゞき)顖(おどりこ)蟀谷(こめかみ)額(ひたい)頬(ほう)輔(つら) 車(がまち)頷(おとがい)頸(くび)結喉(のんど)このほか靨(ゑくぼ) 黒子(ほくろ)黒痣(あざ)皺(しは)など有 首(しゆ)同 ○口(くち)吻(ふん)咡(じ)ともにくちわき とよめり唇(しん)はくちびる人中(にんちう) ははなの下のみぞ齶(かく)はあぎと ○目(め)眼(まなこ)は肝(かん)の臓(ざう)のつかさ どる所なり睛(ひとみ)眸(まな)眶(まかぶら)瞼(まぶた)外(ま) 眥(じり)内眥(まがしら)眵翳(まぐそまけ)涙(なみだ)雀目(とりめ)近(ちか) 視(め)瞟眼(すがめ) ○耳(みゝ)は腎(じん)のつかさとる所也 【左丁下段挿絵】 頭(づ)《割書:かしら》           耳(に)《割書:みゝ》   蟀谷(こめかみ) 頬(ほう) 輔車(つらがまち) 頸(くび)  輪廓(りんくはく)  垂珠(すいしゆ) 顖(あたま) 額(ひたい)     頷(おとがい) 結喉(のんど)   蟀谷(こめかみ) 頬(ほう) 輔車(つらがまち) 頸(くび)  鼻(び)《割書: |はな》        外眥      牙(け)《割書:きば》 口(こう) 目(もく)  上瞼 下瞼 眉(び)   歯(し) 《割書:くち》 《割書:め》   内眥   《割書:まゆ》  《割書:は》《割書:板(いた)|歯(ば)》 【右丁上段】 輪廓(りんくはく)はみゝのわ垂珠(すいしゆ)はみゝの たびら耳門(にもん)はみゝのあな完(くはん) 骨(こつ)はみゝのほね耵聹(ていねい)はみゝ くそ聤耳(ていに)はみゝだり聾(ろう)は みゝしひ ○鼻(はな)は肺(はい)のつかさとる所 なり頞(あつ)ははなばしら鼻梁(びりやう) 同 準(じゆん)はなさき皶鼻(さひ)はざ くろばな洟(てい)すゝばな衂(ちく)は はなぢなり ○眉(まゆ)年(とし)たけたるを眉寿(びじゆ) といふ睫(まつげ) ○歯(は)は骨(ほね)のあまり腎(じん)のつか どる所なり牙(きば)板歯(むかば)齨(うす) 歯(ば)齲歯(むしくひば)齦(はぐき)齗(同)《振り仮名:歯𡏋|はがすみ》【注】 ○舌(した)は釈名(しやくみやう)に舌(ぜつ)は巻(けん)なり 【左丁上段】 食物(しよくもつ)を巻(まき)制(せい)して落(おち)ざら しむ涎(ぜん)はよだれ唾(だ)はつば き心(しん)の臓(さう)これをつかさどる ○髪(ばつ)は頭髪(つばつ)なり胎髪(たいばつ) はうぶかみ髻(けい)はもとゞりなり 鬟(くはん)はみづら ○鬚(しう)は釈名(しやくみやう)に秀(しう)なり 物(もの)成(なつ)て秀(ひいで)人(ひと)成(なつ)て鬚(ひげ)生(しやう) す髯(ぜん)はほうひげ ○髭(し)字彙(じい)に髭(し)は口上(こうじやう) の毛(け)を髭(し)といふ下にある を鬚(しう)といふ頬(ほう)にあるを髯(せん) といふなり ○鬢(びん)は額(ひたいの)旁(かたはら)の髪(かみ)也 鬂(びん)髩(びん) 同 䭮(ふつ)はひたいがみ蝉髩(せんびん)はつと ○筋(すぢ)は絡脈(らくみやく)なり肝(かん)の臓(ざう) 【右丁下段挿絵】 舌(ぜつ)《割書:した》 鬚(しう)    髭(し)  鬢(びん)      《割書:したひげ| 》 《割書:うは| ひげ》 髪(はつ)《割書: |かみ》  筋(きん)《割書:す| ぢ》 毛(もう)《割書: |け》 顱(ろ)《割書:は| ち》 骨(こつ)《割書: |ほね》 【左丁下段挿絵】 腹(ふく)《割書:はら》    肋  《割書:缺|盆》 胸 鳩尾 臍 《割書:小|腹》    肋 背(はい)《割書:せなか》    腢     膁   臀     胛  脢  項    脊    尻     胛  脢    腢     膁   臀 【注 「𡏋」は寛文版は「垽」】 【右丁上段】 のつかさどる所なり色(いろ)あをし 醋(す)をのめば筋ゆるぐ ○毛(け)は血(ち)のあまりなり毫(がう) 同 肺(はい)のつかさどる所なり 旋毛(せんもう)《割書:つし》皮(ひ)《割書:かわ》膚(ふ)《割書:はだへ》 皴(しゆん)《割書:しは》 ○顱(ろ)は頭骨(づこつ)なり顱会(ろくはい)は 頭(かしら)のはち髑髏(どくろ)はしやれかう へ脳(のう)はなづき ○骨(こつ)は肉核(にくかく)なり骸(がい)同 髓(すい) ほねのあぶら節(せつ)ふし ○腹(はら)缺盆(かたほね)胸(むね)肋(あはらぼね)鳩尾(みづをち) 臍(ほそ)小腹(ほがみ)乳(ち)肚(わきばら)前陰(ぜんいん)陰(いん) 茎(きやう)陰嚢(いんのう)脂似(しじ)なり ○背(せなか)項(うなじ)肩(かた)腢(かたさき)胛(かひかね)脢(そじし)腰(こし) 膁(よはごし)髂(こしぼね)尻(しり)臀(いざらひ)膂(せほね)脊(せ) 【左丁上段】 ○手(て)掌(しやう)はたなごゝろ腕(わん)は たゞむきうで臂(ひ)はひぢ肘(ちう)は ひぢしり肱(かう)はかいな ○脚(あし)足(そく)同 胯(こ)また腿(たい)もゝ 膝(しつ)ひざ脛(けい)はぎ臁(れん)むかばき 膕(こく)ひつかゞみ腓(ひ)こむら跗(ふ)あし のかう蹠(せき)あしのうら踵(てう)くびす ○指(ゆび)大指(たいし)おほゆび拇(ぼ)同 食(しよく) 指(し)ひとさしゆび中指(ちうし)たけたかゆ び又 将指(しやうし)ともいふ無名指(むみやうし)べに つけゆび小指(しやうし)こゆび又 季指(きし)共いふ ○拳(けん)は手(て)を屈(かゞむ)るなりにぎ りこぶしなり ○乳(ち)説文(せつもん)に人(ひと)および鳥(とり)子(こ) をうむを乳(にう)といふ獣(けだもの)を産(さん)と いふ嬭(ねい)奶(ない)ならびに同じ 【右丁下段挿絵】 脚(きやく)《割書:あし|》 腿(たい)《割書:もゝ|》 膕(くわく)《割書:ひかゞみ》 腓(ひ)《割書:こむら》 内踝(ないくわ)《割書:うち|くるぶ|  し》 踵(てう)《割書:きび| す》    内臁(ないとん)《割書:むかばき|》 跗(ふ)《割書:あしの| かう》 蹠(せき)《割書:あしの| うら》 手(しゆ)《割書:て|》 肱(かう)《割書:かひ| な》 肘(ちう)《割書:ひぢしり》 臂(ひ)《割書:ひぢ》 腕(わん)《割書:うでくび|》 掌(しやう)《割書:たな| ごゝろ》 【左丁下段挿絵】 拳(けん)《割書:こぶし》 肋(ろく)《割書:あばら| ぼね》 指(し)《割書:ゆび|》 心(しん)《割書:むね|こゝろ》《割書:肺系|脾系|肝系|腎系》 肺(はい)《割書:ふく〳〵|   し》 乳(にう)《割書:ち》 脾(ひ)《割書:よこし》 【右丁上段】 ○肋(あはらほね)は釈名(しやくみやう)に肋(ろく)は勒(ろく)なり 五 臓(ざう)を撿勒するゆゑん也 かたはらぼねたすけのほね あばらぼね液(えき)【注】脇(けう)脋(けう)なり びにわきなり ○心(しん)は五 臓(ざう)のうちにして 一身(いつしん)の主(しゆ)なり胸(むね)のあいだ にあり色(いろ)あかし火(ひ)なり ○肺(はい)は五 臓(ざう)のうちなり胸(むね) のあいたにあり蓮花(れんげ)をうつ むけたるかたちのごとし 六 葉(よう)両耳(りやうに)あり孔(あな)ありて よく声(こゑ)をいだし痰(たん)を生(しやう) ず色白し金(かね)なり ○脾(ひ)は五 臓(ざう)のうちなり土 なり食(しよく)ふくろなり色(いろ)黄(き) 【左丁上段】 なり腹(はら)の中脘(ちうくはん)にあり ○腎(じん)は五 臓(ざう)のうちなり 腰(こし)にあり水(みづ)なり色(いろ)くろ しかたち卵(たまご)のごとし左(ひだり) にあるは腎(じん)なり右(みぎ)に有 は命門(めいもん)なり ○肝(かん)は五 臓(ざう)のうちなり 左(ひだり)のわきにあり木(き)なり 【右丁下段挿絵】 腎(じん)《割書:むらと》 膽(たん)《割書:ゐ》 肝(かん)《割書:きも》 《割書:膀(ぼう)|胱(くはう)》《割書:ゆばり》 包絡(はうらく) 胃(い)《割書:くそ| ぶくろ》 【左丁下段挿絵】 腸(ちやう)《割書:はらわた》    胞胎(はうたい)《割書:はう| ごもり》 《割書:小(せう)|腸(ちやう)》   《割書:大(だい)|腸(ちやう)》   胎衣(たいい)《割書:ゑな》 【おおよそ上から下に右から左の順に】 臓(ざう) 腑(ふ) 脳 髓海 至陰 通骶 喉通気 咽通食 膻中 肺 肺 肺 肺 肺 肺 心包 心 脾系 胃系 肝系 腎系 膈膜 脾 脂■【月+曼】 賁門 胃 幽門 肝 肝 肝 肝 肝 膽 肝 腎 臍 小腸 闌門 大腸 丹田 膀胱 命門 直腸 溺道 精道 穀道 尻 【注 「液」は寛文版は「腋」】 【右丁】 色(いろ)あをし七 葉あり魂(こん)のかくるゝ所なり○膽(たん)は肝(かん)の臓(さう)の腑(ふ)なり肝(かん)の下に有 膽(たん)のぼるときは人いかりを生(しやう)ず○小腸(しやうちやう)は心(しん)の臓(さう)の腑(ふ)なり色(いろ)あかし小便(しやうべん) これよりつたへて膀胱(ばうくはう)にいづるなり○大腸(だいちやう)は肺(はひ)のさうの腑(ふ)なり腰(こし)にあり 十六 廻(くわい)あり色(いろ)しろしはらわたといふはこれなり○胃(ゐ)は脾(ひ)のざうの腑(ふ)なり食(しよく) 物を脾(ひ)よりつたへて大腸(だいちやう)にをくるくそぶくろなり○包絡(はうらく)は心包絡(しんはうらく)なり命門(めいもん) の下 右腎(うじん)の上にあり心包絡(しんはうらく)といふその腑(ふ)を三 焦(せう)といふ○膀胱(はうくはう)は腎(じん)の臓(ざう)の腑(ふ) なり小便(しやうべん)ぶくろなり水分(すいぶん)の穴にて水穀(すいこく)分利(ぶんり)して穀(こく)は大腸(たいちやう)へゆき水(みづ)は膀胱(ばうくはう) へゆくなり ○臓腑(ざうふ)心(しん)肝(かん)腎(じん)肺(はい)脾(ひ)を五 臓(ざう)といふ小腸(しやうちやう)大腸(だいちやう)胃(ゐ)膀胱(ばうくはう)三 焦(せう)膽(たん)を六 腑(ふ)と いふ○胞胎(はうたひ)はらごもりなり五 臓論(ざうろん)に曰一月は珠露(たまつゆ)のごとし二月は桃花(もゝのはな)のごと し三月は男女(なんによ)わかる四月は形象(かたち)そなはる五月は筋(すぢ)骨(ほね)なる六月は毛(け)髪(かみ)生(しやう)ず 七月はその魂(こん)をあそはしむ兒よく左(ひだり)の手(て)をうごかす八月はその魄(はく)をあそばしむ 兒(に)よく右(みぎ)の手(て)をうごかす九月は三たび身(み)を転(てん)す十月は気(き)をうくる事 足(たる) 【左丁】 《題:頭書増補訓蒙図彙(かしらがきぞうほきんもうづゐ)巻之六》    衣服(いふく)《割書:此部(このぶ)には衣裳(いしやう)冠帯(くはんたい)すべて|きる物(もの)のたぐひあり》 【左丁上段】 ○冕(へん)は天子(てんし)の冠(かふり)なり十二 𦀠(りう)有 前(まへ)にたれたるは邪(よこしま)を見まじき ためなり旁(かたはら)に黈纊(とうくはう)といふ物あり 讒言(さんげん)を聞(きゝ)まじき為(ため)なり ○冠(くはん)は貫(くはん)なり髪(かみ)を貫(つらぬき)つゝむ也 と釈名(しやくみやう)にみへたり冠(かんむり)は首(かしら)にある ゆへ元(けん)に从(したが)ふ法制(ほうせい)有ゆへ寸(すん)に从 ○和冠(わくはん)は漆塗(うるしぬり)にして紗(しや)也 髪(かみ)を おほふ物を巾子(こし)と云うしろに立(たち) たる物を羅(ろ)と云 貫(つらぬく)物を串(くし) といふ又 簪(かんざし)ともいふ ○纓(ゑい)は冠(かむり)のうしろにたるゝ物也 今 燕尾(ゑんび)といふ紗(しや)にて作(つく)る 【左丁下段挿絵】 冕(べん) 《割書:たま| の|かむり》 唐冠(たうかふり) 《割書:官|品 ̄ノ|玉-|冠》   冠(くはん)       串         かうぶり    巾子    かむり     簪    緌(い)    纓(えい) 【右丁上段】 ○幞(ぼく)は後周(ごしうの)武帝(ふてい)のつくり はじめ給ふ唐人(とうじん)のかむり也 幅巾(ひとはばのぬの)を戴(たい)して四/脚(あし)を出す ○緌(い)は両方(りやうはう)耳(みゝ)をおほふ物なり 冠(かむり)の紐(ひも)なり領の下に垂(たる)る物也 ○巾(きん)は頭巾(つきん)なりその製(せい)品(しな) おなじ方(けた)なるを巾(きん)といひ円(まとか) なるを帽(ばう)と云ともいへり ○帽(ばう)は頭衣(づい)なり唐(もろこし)には上 官(くはん)より下官(げくはん)にいたるまでも 帽(はう)をきる冠(かむり)の下(した)にきる物なり ○帽子(もうす)は僧(そう)の冠(かむり)なり仏会(ぶつゑ) 法事(はうじ)のとききるなり ○笏(こつ)は手板(しゆはん)なり天子(てんし)は玉(たま) 諸候(しよこう)【侯の誤】は象牙(さうげ)太夫(たいふ)は魚須(うをのひれ)文(ま) 竹(だけ)士(し)は木(きに)籀文(こりんじ)をほりてみな 用(もち)ゆ官人(くはんにん)の手(て)にもつ物なり ○烏帽(うばう)は紙(かみ)にてつくり漆(うるし)に 【左丁上段】 てぬるなり左折(ひたりをり)は侍従(じしう)以上 着(ちやく)す右折(みきをり)は五 位(い)已上(いしやう)これを 着(ちやく)す侍従(じじう)以上(いじやう)は糸(いと)の緒(を)四 位(い)已下(いげ)は紙(かみ)の緒(を)にて結(むす)ぶ ○袞(こん)は天子(てんし)の御衣裳(おんいしやう)なり 一に竜(れう)二に山(さん)三に花虫(くはちう)四に 火(くは)五に虎(とら)以上 衣(ゐ)に有六に 藻(さう)七に粉米(ふんべい)八に黼(ほ)九に黻(ふつ) 以上 裳(しやう)にありこれを九/章(しやう) の御衣(ぎよい)といふ ○裳(しやう)は上(うへ)を衣(い)といひ下(した)を 裳(しやう)といふ裳(しやう)の紋(もん)の事/藻(さう) 粉米(ふんべい)黼(ほ)黻(ふつ)なり九 章(しやう)の内(うち) なり天子(てんし)御衣(きよい)の裳(しやう)なり ○珮(はい)は官人(くはんにん)の腰(こし)におぶるもの なり上(かみ)に双衡(さうかう)あり衡(かう)の長(なが) さ五寸ひろさ一寸 下(した)に双璜(さうくはう) あり璜(くはう)のわたり三寸也/蠙(ひん) 【右丁下段挿絵】 幞(ぼく) 唐巾 巾(きん) 頭巾(づきん) 幞頭 笏(こつ)《割書:しやく》 木笏(もくしやく) 牙笏(げしやく) 帽(ばう) 帽子(もうす) 烏帽(うばう) 《割書:ゑ| ぼ|  し》 【左丁下段挿絵】   袞(こん) 裳(しやう)《割書:も|》 珮(はい)《割書:をもの》  帯(たい)《割書:をび》 【右丁上段】 珠(しゆ)をその間(あいた)におさむ ○帯(たい)は字(じ)のかたち珮玉(はいぎよく)を つなぐかたちなり石帯(いしのおび) あり下帯(さげおび)有 掛帯(かけをび)あり ○袍(はう)はながき繻絆(じゆばん)なり 今(いま)朝廷(てうてい)へ出仕(しゆつし)のとききる 服(ふく)を袍(はう)といふ又ふるわたを いれたる服(ふく)を縕袍(をんはう)といふそ めたるを素袍(すはう)といふ ○衫(さん)は小襦(しやうじゆ)なりはだぎ也 袖端(そではし)なきを衫衣(さんい)といふ又 紗衫(しやさん)布衫(ふさん)偏衫(へんさん)あり 類(るい)おなじ公服(こうふく)の下着(したぎ)なり ○袴(こ)は股衣(こい)なり又 大口(おほくち) 袴(はかま)あり襞襀(ひだ)あり俗(ぞく)に 上下(かみしも)といふ上(かみ)を褶(しう)といひ下(しも) を袴(こ)といふ ○靴(くわ)は革(かは)のくつなり官人(くわんにん) 【左丁上段】 これをはく石公(せきこう)が靴(くつ)李白(りはく) が殿上(てんじやう)の靴(くつ)これなり日本(につほん)に ては鞠(まり)の靴(くつ)これなり官人(くはんにん) 僧(そう)などの韈(くつ)は異(こと)なり ○裾(きよ)は衣裳(いしやう)のあとにさがる ものなり俗(ぞく)にとびの尾(お)と いふなり ○裙(くん)は婦人(ふじん)の下(した)にきる裳(も) なり帬(くん)につくるべし唐(から)に もあかく染(そむ)るゆへに茜(せん)【左ルビ:あかね】裙(くん)と いふなり ○半臂(はんひ)は楽人(がくにん)又 能衣裳(のふいしやう) などにあり袖(そで)のゆきみじ かくして半(なかば)臂(ひぢ)いづるゆへに なづくるなり ○奴袴(ぬこ)はさし貫(ぬき)のはかま也 禁中(きんちう)にて女中(ぢよちう)のきるは かまなり女のきるは色(いろ)赤(あか)く 【右丁下段挿絵】   袍(はう)《割書:うへの| きぬ》  衫(さん)《割書:かた| びら》 袴(こ)《割書:は| かま》  靴(くわ)《割書:く【かの誤ヵ】わのくつ》 【左丁下段挿絵】 裾(きよ)    裙(くん)《割書:も》 半臂(はんひ)   奴袴(ぬこ)《割書:かり| ば|  かま》 【右丁上段】 そむるなり ○缺掖(けつゑき)は大臣(たいしん)のしやうぞく 又は能衣裳(のふいしやう)にあり両掖(りやうわき) 缺(かけ)ほころびたるゆへになづく ○襟(きん)は衣(ころも)の衽(ゑり)にまじはる 所なり内襟(ないきん)はしたがひ外(げ) 襟(きん)はうはがひなり ○袊(れい)はころものくびなり領(れい) とおなじ綱領(かうれい)要領(ようれい)といふ も領(れい)は衣(ころも)のゑりぐひの事 にとる ○布衣(ほい)は狩衣(かりきぬ)に紋(もん)なきを いふ下官(げくはん)の服(ふく)するものなり 紋(もん)あるを狩衣(かりぎぬ)といふこれは 高位(かうい)のめさるゝ服(ふく)なり ○袖(しう)は衣(ころも)の袂(たもと)なり長袖(ちやうしう)はふ りそで袪(きよ)はそでぐち ○袈裟(けさ)は大衣(たいゑ)七/條(でう)五/條(てう)是(これ) 【左丁上段】 を三/衣(ゑ)といふ大衣(たいゑ)は九/條(てう)より 二十五/條(でう)にいたる僧衣(そうい)なり ○直掇(ぢきとつ)は僧服(そうふく)なりいにしへ は偏衫(へんさん)《振り仮名:𢂽子|くんす》を服(ふく)すのちに 上下(じやうげ)をつらねて直掇(ちきとつ)と名(な) つくるなり ○魚袋(ぎよたい)は官人(くはんにん)の腰(こし)に帯(おぶ)る ものなり公卿(くぎやう)は金魚袋(きんぎよたい)四(し) 品(ほん)以下(いげ)は銀魚袋(ぎんぎよたい)なり ○革帯(かくたい)は公家衆(くげしう)装束(しやうそく)の 上(うへ)にする帯(をび)なり金帯(きんたい)玉(ぎよく) 帯(たい)石帯(せきたい)角帯(かくたい)あり ○韈(べつ)はたびなり足袋(たび)と も単皮(たび)とも書(かく)なり又は 韈子(へつす)といふ ○絡子(らくし)は又/掛子(くはし)となづく又 掛絡(くはら)ともいふ俗(ぞく)あやまつて 環(くはん)を掛落(くはら)とよぶ 【右丁下段挿絵】 《割書:缺(けつ)|掖(ゑき)》    袊(れい)《割書:ゑ|り》 襟(きん)《割書:ゑ|り》  布衣(ほい) 袖(しう)《割書:そ|で》 【左丁下段挿絵】 袈裟《割書:けさ》   直掇(ぢきとつ) 魚袋(ぎよたい)      韈(へつ)《割書:したう|  づ》 革帯(かくたい)《割書:いしの| をび》 【右丁上段】 ○幅巾(ふくきん)は白(しろ)ききぬにてつ くる深衣(しんい)をきて緇布冠(しふくはん) してこれをもつて冠上(くはんじやう) をつゝむなり唐人(とうじん)の裳(しやう)ぞく也 ○緇布冠(しふくはん)はくろきぬのにて つくるなり ○帨(せい)は手(て)のごひなり帨巾(せいきん) ともいふ手(て)のごひかげを帨(せい) 架(か)といふ ○帕(はく)は紅絹(もみのきぬ)にて額(ひたい)を抹(つゝむ) をいふとあり帛(はく)はふくさ物 帊衣(はい)包袱(はうふく)並同 ○履(り)は草(くさ)を屝(ひ)といふ麻(あさ)を 屨(ろう)といふ皮(かわ)を履(り)といふされ ども木(き)にてつくる ○被(ひ)は寝衣(しんい)なり俗(そく)に夜(よ) 着(ぎ)といふ又/睡襖(すいをう)ともいふ 又/被(かふむる)_レ襖(ふすまを) 【左丁上段】 ○毛裘(もうきう)は麑(かこ)又/狐(きつね)の皮(かは)にて つくる衣服(いふく)なり寒気(かんき)を よくふせぐ異朝(いてう)にて上人(じやうにん) 冬月(とうけつ)これをきる ○深衣(しんい)は儒者(じゆしや)の着(ちやく)する 衣服(いふく)なり白(しろ)き布(ぬの)にてつ くる帯(をび)も白(しろ)し五采(こさい)の糸(いと) をもつて帯(をび)のむすひめを 固(かた)む又/黒色(くろいろ)にそむるも有 ○涎衣(せんい)は小児のよだれか けなり幃涎(いせん)同 ○裹脚(くわきやく)ははゞきなり脚(きや) 絆(はん)なり裹脚(くわきやく)は裹(つゝむ)_レ脚(あしを)と よめり又/脛巾(けいきん)行纏(かうてん)、行(かう) 縢(とう)ならびにはゞきとよむ ○幄(あく)は上下/四方(しはう)こと〴〵く まとふて宮室(きうしつ)にかたど るを幄(あく)といふ大将(たいしやう)の居(ゐる)所 【右丁下段挿絵】 絡子( らくし)《割書:くは| ら》  履(り)《割書:く|つ》 《振り仮名:■皮履|くりかわのくつ》【注】 浅履(あさぐつ) 幅巾(ふくきん) 《割書:緇(し)|布(ふ)|冠(くはん)》  帨(せい)《割書:ての| こひ》 帕《割書:ころも| つゝみ》 被(ひ)《割書:ふすま》 睡襖(すいをう) 【左丁下段挿絵】 《割書:毛(もう)|裘(きう)》《割書:かはごろも》 涎衣(ぜんい)《割書:よだれかけ》 《割書:深(しん)|衣(い)》   《割書:裹(くわ)|脚(きやく)》《割書:きや| はん》 【注 ■は「烏」の誤記ヵ】 【右丁上段】 なり物見(ものみ)なきを幄(あく)といふ 周(しう)の世(よ)よりはじまれり ○幕(まく)は周(しう)の世(よ)よりはじまれ りよこ幅(はゞ)にして物見(ものみ)あるを 幕(まく)といふ布(ぬの)十二/端(たん)を二/張(はり)と して十二/月(つき)を表(へう)し乳数(ちかず)廿 八を廿八/宿(しゆく)に表(へう)す ○幔(まん)は十二/幅(はゞ)紋(もん)を出(いだ)さず竪(たて) 幅(の)ばかりにして上(うへ)のよこ𬏈(の) なし下(した)のぬひはづし纐(きく) 纈(とぢ)なし乳付(ちつき)又はぬひなく 見にもするなり ○座具(ざぐ)は僧衣(そうい)なり仏(ほとけ)を礼(らい) するとき下(した)にしく物也/三衣(さんゑ)一(いち) 鉢(はつ)座具(ざぐ)漉水嚢(ろくすいのふ)これを僧(そう) の六/物(もつ)といふ ○縁道絹(えんどうのきぬ)は法事(はうじ)のとき客(きやく) 殿(でん)より堂(だう)へ行(ゆく)道(みち)に布(ぬの)をしく 【左丁上段】 を云又/打敷(うちしき)水引(みづひき)を云ともいへり ○夾衣(かうい)は今(いま)云あはせなり裌(かう) 袷(〳〵)同し単衣(たんい)はひとへもの 絮衣(ぢよい)はわたいれ 表(へう)《割書:お|も|て》裏(り)《割書:う|ら》 ○帳(ちやう)は女(をんな)のかたなる所也/几帳(きちやう) 帷帳(いちやう)なり又/蚊帳(かちやう)段(どん)帳/綿(めん) 帳(ちやう)紙帳(しちやう)あり ○褥(じく)はしとねなり臥具(ぐはぐ)なり 蓐茵(しくいん)并(ならびに)同/蓐茵(しくいん)は草(くさ)のし とねなり褥(しく)は絹(きぬ)のしとねなり 俗(ぞく)に蒲団(ふとん)とするは非(ひ)なり 蒲団(ふとん)は円座(えんざ)の類(るい)なり ○降緒(さげを)は刀(かたな)にあり太刀(たち)のは 平緒(ひらを)といふ ○雨衣(うい)はあまがつはなり襏(はつ) 襫(せき)とも云/紙(かみ)にてつくるを油(ゆ) 衣(い)といふ毛織(けをり)の類(るい)にてする を毡衣(せんい)とい云/此図(このづ)は異朝(いてう)の 【右丁下段挿絵】 幄(あく)  《割書:あ|げ|ば|り》 幔(まん)《割書:まだ| ら|まく》  《割書:と|ば|り》 幕(はく)《割書:ま| く》   座具(ざぐ) 【左丁下段挿絵】 《割書:縁(えん)|道(どうの)|絹(きぬ)》 《割書:夾(きやう)|衣(い)》《割書:あ|わ| せ|き| ぬ》 降緒(さげを) 帳《割書:ちやう|かや》             褥(しく)《割書:し|とね》 【右丁上段】 毡衣(せんい)なり ○浴衣(よくい)はゆかたびらなり又/明(めい) 衣とも書(かく)なり又ゆてのごひ を浴巾(よくきん)といふ ○蔽膝(へいしつ)ひざをおほふとよめり まへだれなり韠(ひつ)同 ○鞋(かい)は糸鞋(いとぐつ)麻鞋(まぐつ)あり草鞋(わらんぢ) は屩(わらぐつ)とも屝(わらぐつ)とも書(かく)べし ○屐(げき)は木履(ぼくり)なり俗(ぞく)にあし だといふはなをゝ屐系(げきけい)と云 又/鼻縄(びじやう)といふ又/撣(へしき)【自信なし】といふ物 あり雪中(せつちう)にはく物なり ○嚢(ふくろ)底(そこ)あるを囊(のう)といひ底(そこ) なきを橐(たく)といふともにふく ろなり袋(たい)同 ○道服(だうぶく)は道者(だうしや)の衣服(いふく)なり 胴服(どうぶく)とかくはあしゝ俗(ぞく)これを はおりといふ 【右丁下段挿絵】 雨衣(うい) 《割書:あま| がつは》   浴衣(よくい)《割書:ゆ| かた| びら》 蔽膝(へいしつ)《割書:まえだれ》 嚢(のう)《割書:ふくろ》 鞋(かい) 糸鞋(しかい)《割書:いと| ぐつ》 草鞋(さうかい)《割書:わら|ぐつ》 木履(ぼくり)  屐(げき)《割書:あし|  だ》 【巻之六畢 14コマ目右丁へ】 【13コマ目左丁より】 【左丁上段】 物なり唐(もろこし)崑崙山(こんろんさん)より 玉(たま)をいだす ○礬(はん)は礬石(はんせき)なり和名(わみやう)たう すといふ光明(くはうめい)なるを明礬(みやうばん) といふ黒色(くろいろ)なるを黒礬(こくはん)と いふ緑色(みとりいろ)なるを緑礬(ろはん)と云 やきて赤物(あかきもの)を絳礬(かうはん)と云 ○硃(しゆ)は朱砂(しゆしや)なり辰州(しんしう)より出(いづ) るを辰砂(しんしや)といふ又/水銀(みつかね)を化(くは) して朱(しゆ)とするを銀朱(ぎんしゆ)と云 朱砂(しゆしや)は服(ふく)すれば心(しん)を鎮(しづ)め 神(しん)をやしなふ ○硫(いわう)は石硫黄(せきいわう)土硫黄(といわう)あり付(つけ) 木(ぎ)を発燭(はつしよく)といふ硫黄(いわう)の出(いづ)る 山にはかならず温湯(いでゆ)あり 摂州(せつしう)有馬(ありま)又/加州(かしう)の山中(やまなか) なとのごとし ○硝(せう)は硝石(せうせき)なり木硝(もくせう)につくる 【左丁下段挿絵】 硨磲(しやこ) 瑠璃(るり) 琥珀(こはく) 玻瓈(はり) 琅玕(らうかん)《割書:あをだま》 砥(し)《割書:あはせど》 珊瑚(さんご) 紗(しや)《割書:もじ》 熨斗目(のしめ) 礪(れい)《割書:あらと》 【13コマ目右丁へ】 【乱丁有 正しい並びは、12コマ目右丁→14コマ目右丁(裏返し)→13コマ目左丁(裏返し)→12コマ目左丁→13コマ目右丁→14コマ目左丁】 【12コマ目左丁より】 【右丁上段】 焔硝(えんせう)火焔(くはせう)ともに同しよく 火(ひ)につく鉄鉋(てつほう)にもちゆ又/芒(はう) 硝(せう)牙硝(げせう)は薬石(やくせき)なり痰(たん)をの ぞき燥(かはき)をうるほし小便(せうべん)を 通(つう)ずる能(のふ)あり ○磁(じ)は山(やま)の陽(みなみ)に鉄(てつ)を産(さん)す るものは陰(きた)にかならず磁石(じしやく) あり二/物(ぶつ)同気(どうき)なればなり よく針(はり)を引(ひき)すふものなり ○砒(ひ)は砒石(ひせき)なり大毒(だいどく)あり練(ねり)た る物を砒霜(ひさう)といふ腫物(しゆもつ)の 毒(どく)を消(せう)し瘧(おこり)をきる外科(げくは) の用(もち)ゆる石(いし)なり斑猫(はんめう)と同 しく毒(どく)あり ○瑪瑙(めのう)は玉(たま)なり七/宝(はう)の内(うち) なりこの玉(たま)の色(いろ)馬(むま)の脳(のう)に似(に) たりよつて馬(め)瑙(のう)となづく色(いろ) 黄(き)なり 【右丁下段挿絵】 《割書:に|し|き》 綿(きん) 繍《割書:しう|ぬい| もの》 絨(しう)《割書:びらう| ど》 紅染(もみぞめ) 《割書:加(か)|賀(が)|絹(ぎぬ)》 縠(こく)《割書:ちり| めん》 《割書:あこ| め》 繻子(しゆす) 綾(りやう)《割書:あや|》 綃(せう)《割書:すゞし|》 緞(たん)《割書:どん| す》 【14コマ目左丁へ】 【14コマ目右丁より】 【左丁上段 裏返し】 は越中(えつちう)より出たり ○銅(とう)は赤金(しやくきん)なり黄銅(くはうとう)鍮(ちう) 石(しやく)真鍮(しんちう)あり又 紫銅(しとう)はから かねなり褐銅(かつとう)同し白銅(はくとう) はさはりかね紫金(しきん)はしやく どうともに山より出る ○説文(せつもん)に銭(ぜに)【錢】の字(じ)の旁(つくり)上(うへ)に 一の戈(ほこ)の字(じ)下(しも)に一の戈(ほこ)の字(じ)有 銭(ぜに)は人をころす物にして人 さとらずといへり孔方(こうはう)青銅(せいとう) 鵝眼(ががん)ともに銭(ぜに)の異名(いみやう)なり ○珠(しゆ)は海(うみ)より出るたまを云 珊(さん) 瑚珠(ごじゆ)真珠(しんじゆ)のたぐひなり珍(ちん) 珠(じゆ)《振り仮名:𧓍珠|ひんじゆ》は貝(かい)のたまなり龍(りやう) 魚(ぎよ)虫(ちう)蛇(じや)の類(るい)みな珠(たま)あり ○玉(ぎよく)は山(やま)より出(いづ)るたまなり 石(いし)の美(び)なるものを玉といふ 璞(はく)はあらたまいまだみがゝさる 【左丁下段挿絵 裏返し】 玉(ぎよく)《割書:たま|》  礬(はん)    硃(しゆ)《割書:朱砂   銀朱|》 硫(いわう)《割書:ゆの| あわ》  《割書:発|燭》   硝(せう)  《割書:芒硝|》       《割書:牙|硝》   磁(じ)《割書:はり|すい|い|し》 砒(ひ)《割書:どく| いし》    瑪(め)   玳瑁(たいまい)      《割書:砒霜|》 瑙(のう) 【12コマ目左丁へ】 【乱丁有 正しい並びは、12コマ目右丁→14コマ目右丁(裏返し)→13コマ目左丁(裏返し)→12コマ目左丁→13コマ目右丁→14コマ目左丁】 【12コマ目右丁より】 【右丁 裏返し】 《題:頭書増補訓蒙図彙(かしらがきぞうほきんもうづゐ)巻之七》 宝貨(はうくは)《割書:此部(このぶ)には金銀(きん〴〵)珠玉(しゆぎよく)銅鉄(とうてつ)石甲(せきかう)錦(きん)|鏽(しう)綾羅(れうら)すべて一さいの宝(たから)をあつむ》 【右丁上段 裏返し】 ○金(きん)は紫磨(しま)黄金(わうこん)沙金(しやきん)な どあり日本(につほん)にてはむかし 奥州(おうしう)より出(いで)たり鍍金(ときん)はめつ きなり ○銀(ぎん)は白銀(はくぎん)なり南鐐(なんりやう)銀(ぎん) 鉼(べい)など有 俗(ぞく)にはへぶきと云 又 銀鈑(ぎんはん)といふはいたがねなり ○鉛(えん)は青金(せいきん)なり錫(しやく)はしろ なまり俗(そく)にすゞなまりと云 白鑞(びやくらう)同 鉛(なまり)をやいて丹(たん)となる ○鉄(てつ)【鐡】は黒金(こくきん)なり鉄(てつ)同 鉎鉄(せいてつ) はなまがね鍒(しう)同し鋼鉄(かうてつ)はは がね鏽(しう)はさびなり日本(につほん)むかし 【右丁下段挿絵 裏返し】 金(きん)《割書:こがね|》  銀(ぎん)《割書:しろ|か|ね》  鉛(ゑん)《割書:なまり|》  鉄(てつ)                  《割書:くろ| かね》 銅(とう)《割書:あか|がね》        銭(せん)《割書:ぜ| に》  珠(しゆ)《割書:たま|》 【13コマ目左丁へ】 【13コマ目右丁より】 【左丁上段】 ○硨磲(しやこ)は玉(たま)の名(な)七/宝(ほう)の一つ也 石(いし)の玉(たま)に似(に)たるなり一/名(めい)海(かい) 扇(せん)和名(わみやう)いたやがい ○玳瑁(たいまい)は亀(かめ)の名(な)甲(かう)に文(もん)あり 器(うつはもの)につくるべし櫛(くし)簪(かんざし)香(かう) 合(ばこ)などにつくる ○瑠璃(るり)は玉(たま)の名(な)石(いし)のひかり あるものなり七/宝(ほう)の内(うち)なり 色(いろ)あをし ○琥珀(こはく)は松脂(まつやに)地(ち)におちて 千年(せんねん)にして琥珀(こはく)となる能(よく) 塵(ちり)をすふ玉(たま)なり色(いろ)黄(き)也 ○玻瓈(はり)は玉(たま)の名七/宝(ほうの)一つ也 西国(さいこく)の玉(たま)なり頗黎(はり)とも かくへし ○琅玕(らうかん)は玉(たま)のひかりあるもの なり崑崙山(こんろんざん)に琅玕樹(らうかんじゆ)有 色(いろ)あをし 【左丁下段挿絵】 絹(けん)《割書:き|ぬ》 線(せん)《割書:より| いと》 糸(し)《割書:い|と》 絛(たう)《割書:くみ| ひぼ》 《割書:組》 《割書:紃》 綿(めん)《割書:わた|》 八/丈嶋(じやうじま) 氈(せん)《割書:もう| せん》 《割書:金(きん)|薄(ばく)》 水銀(みづかね) 《割書:高麗(かうらい)|  織(をり)》 【次コマへ】 【乱丁有 正しい並びは、12コマ目右丁→14コマ目右丁(裏返し)→13コマ目左丁(裏返し)→12コマ目左丁→13コマ目右丁→14コマ目左丁】 【右丁上段】 ○珊瑚(さんご)は海中(かいちう)の珠(たま)なりいろ あかし鉄網(てつもう)をもつて是(これ)を取(とる) 七/宝(ほう)の一つなり ○砥(し)は細砺石(さいれいせき)なり硎(まと)とも書(かく)べ し黄砥(わうし)はあはせどなり ○礪(れい)は麁蛎石(それいせき)なりあらとなり 磑(あらと)とも書べし ○紗(しや)は金紗(きんしや)銀紗(ぎんしや)紗紋(もんしや)等(とう) ありうすものなり又/法螺漏(ほらろ) などいふ有/戻子(もじ)といふも有 ○熨斗目(のしめ)は筋(すぢ)ある織物(をりもの)也 祝義(しうき)に侍(さふらひ)のきる服(ふく)なり 又/能役者(のふやくしや)などもきるなり ○錦(きん)は五色(ごしき)の糸(いと)を織(をり)て錦(にしき) とす俗(ぞく)にいふ金襴(きんらん)の類(たぐひ)也 ○繍(しう)は五/采(さい)の刺文(しもん)なり ぬいもの ○絨(じう)は細毛布(さいもうふ)なりその美(び)な 【左丁上段】 る物のを天鵞絨(ひらうと)といふいう褐(かつ) 子(す)氆氇(ふら)兜羅綿(とらめん)みな毛(もう) 布(ふ)なり ○紅染(もみぞめ)は紅なり紅梅(こうばい)緋(ひ) 桃色(もゝいろ)中紅(ちうもみ)茜(あかね)などあり共(とも) にあか色(いろ)なり ○加賀絹(かがきぬ)は加州(かしう)小松(こまつ)よりお りいたす絹(きぬ)なり ○縠(こく)は縐紗(そうしや)なり今(いま)いふちり めんなり俗(ぞく)に縮緬(ちりめん)とかく ○繻子(しゆす)は五/色(しき)有/嶋(しま)【縞】もあり ○繻珍(しゆちん)は五/色(しき)あり繒(かとり)を もつて織(をる)なり ○綾(りやう)はあやなり又/綾子(りんす)也 花綾(くはれう)は紋綾子(もんりんず)なり光(くはう) 綾(れう)はぬめ綾子(りんず)なり ○綃(せう)はすゞしなり生綃(さんせう)と 書べし熟絹(じゆくけん)はねりぎぬ 【右丁下段挿絵】 皮(ひ)《割書:かは》 革(かく)《割書:つくり| かは》 韋 革  鉄線《割書:はりがね》 水精(すいしやう)《割書:みづとり|  だま》 火(くわ)精《割書:ひ|とり|だま》 緑青(ろくしやう) 雲母(うんも)《割書:き|らゝ》 【左丁下段挿絵】 白粉(はくふん)《割書:おしろい》 石膽(せきたん)《割書:たん|はん》 浮石(ふせき)《割書:かろ|いし》 温石(をんじやく) 滑石(くわつせき) 鱉甲(べつかう) 麒麟血(きりんけつ) 幣(へい)《割書:にぎて》 木綿襷(ゆふだすき) 【右丁下段挿絵】 海塩(かいゑん)《割書:しほ》 石灰(せきくわい)《割書:いし|ば|ひ》 【右丁上段】 ○緞(だん)は段子(どんす)なり花段(くはだん)錦(きん) 段(だん)毛段(もうたん)金段(きんだん)あり ○絹(けん)は加州(かしう)より出(いで)丹後(たんこ)より いづる縑(けん)はもろぎぬなりまた かとりなり ○線(せん)は (補)よりいとなりいとすじ とよむ綫(せん)同/漢(かん)の宮女(きうじよ)冬(とう) 至(じ)の日より日ながくなりて 一/線(せん)のなかきをそふると いへり ○糸(し)はいとなり蠶(かいこ)のはく所 なり緒(しよ)はいとぐち纇(るい)いとふし 縷(ろ)いとすぢ経(けい)たて緯(い)ぬき 麻苧(まちよ)紵(ちよ)まを纑(ろ)うみを ○條(たう)はくみひぼなり匾(ひらたき)を組(そ) といふ圓(まろき)を紃(しゆん)といふ ○綿(めん)わた也/蠶(かいこ)をかふてとる 精(くはしき)を綿(めん)といひ麁(あらき)を絮(ちよ)と云 【左丁】 綿(めん)はまわた絮(ちよ)は木(き)わたなり○八/丈嶋(じやうじま)は日本(につほん)八/丈(じやう)か島(しま)よりをりいだす公方様(くばうさま)へ 貢(みつぎ)にそなゆるなり外(ほか)に八/丈嶋(じやうしま)といふはみなにせをりなるよし○氊(せん)はむしろ なり毛氊(もうせん)あり線氊(せんせん)あり花氊(くはせん)あり毛氊(もうせん)のすぐれたるを山/水(すい)といふ○金薄(きんばく)は 金(きん)をうすくのべたる物(もの)なれば薄(はく)といふなり薄(はく)はうすしとよむ銀(ぎん)銅(あかゞね)の薄(はく)同/箔(はく) 同じ○水銀(みづかね)は性(しやう)寒(かん)なり毒(どく)あり馬歯莧(すべりひゆ)にも水銀(みづかね)あり又/汞(みづかね)とも書(かく)丹砂(たんしや)より いづるなり○高麗織(かうらいをり)は京(きやう)西陣(にしぢん)よりをりいだす○皮(ひ)かはけだものゝ皮(かは)に毛(け)あるとき の名(な)なり虎皮(とらのかは)豹皮(へうのかは)熊皮(くまのかは)狐皮(きつねのかは)麑皮(にくのかは)などなり○革(かく)はけだものゝ皮(かは)なり毛(け)をさる を革(かく)といふ生(しやう)なりあらかは熟(じゆく)するを韋(い)といふなめしかはなり○鉄線(てつせん)ははりがね なり銅線(とうせん)はあかゞねのはりがね又/銅糸(とうし)ともいふなり○水精(すいしやう)みつとりだまなり水中(すいちう)の石(いし)の美(び) なる物(もの)をいふ水晶(すいしやう)同し又/硝子(せうし)もみづとりだまなりびいどろなり○緑青(ろくしやう)は石緑(せきろく)とも いふ銅(あかゞね)のさびなり銅緑(とうろく)ともいふ水飛(すいひ)して畫工(ぐはこう)采(いろとり)の具(く)とす○火精(くわしやう)ひとりだまなり火(くは) 齊(せい)同この火(ひ)をとりて灸(きう)をすゆれは虚熱(きよねつ)をさます○雲母(うんも)はきらゝ也/廬山(ろさん)の中(うち)よりいづる 五/色(しき)あり白(しろ)きものよし服(ふく)する事十/年(ねん)すれは雲気(うんき)つねにその上(うへ)におほふ膏薬(かうやく) にねる又/地紙(ぢかみ)にぬる○白粉(はくふん)おしろいは鉛粉(えんふん)なり鉛(なまり)をやきてつくるとうのつちといふ 又/銀粉(ぎんふん)ははらや粉霜(ふんさう)はやきかへし白粉(おしろい)は蕭史(しやうし)といふ人つくりはじめて秦(しんの)穆公(ほくこう)のむ すめ弄玉(ろうぎよく)にぬらしむとなり○石膽(せきたん)たんはんは銅(あかがね)ある所より出(いづ)煎(せん)し煉(いり)てなる石中(せきちう) 【右丁】 の汁(しる)なり膽礬(たんはん)なり○浮石(ふせき)かるいしは水花(すいくは)ともいふ水(みづ)のあわ化(け)して浮石(かるいし)となる 西国(さいこく)よりいづる○温石(をんじやく)は一/名(めい)烏滑石(うくはつせき)といふ和漢(わかん)ともにあり硫黄(いわう)のある山より出(いづ) る正真(しやうじん)まれなり火(ひ)にあたゝめて熨(のす)ときはよく痼疾(こしつ)をいやし瘀血(をけつ)を散(さん)ず ○滑石(くはつせき)はかわきをとめ小べんをつうじ油(あぶら)のものにしみたるに滑石(くはつせき)をふりかくれば 油(あぶら)けとるゝ白色(はくしき)なる物よし○鱉甲(べつかう)たいまい也/鱉(べつ)は海中(かいちう)の大かめなり甲(かう)をはぎて うすくすけば斑文(はんもん)いづるこれを櫛(くし)笄(かんざし)香盒(かうばこ)等(とう)のうつは物につくる玳瑁(たいまい)といふ も同し又/薬(くすり)に用(もち)ゆ○麒麟血(きりんけつ)は麒麟(きりん)の血(ち)なりといへとも麒麟(きりん)といふけだもの つねに有ものにあらず馬血(ばけつ)なり血(ち)とめによし○幣(へい)はにぎて𧸁(へい)とも書(かく)葈(からむし)にて するを白和幣(しらにきて)といふ麻(あさ)にてするを青名幣(あをにぎて)といふ串(くし)をもつてはさむ神(しん) 前(ぜん)秡(はらひ)の具(ぐ)なり手(て)ににぎるといふ義訓(ぎくん)なり○木綿襷(ゆふだすき)は幣(へい)をとる時(とき)にかく るたすきなり木綿(もめん)のくみひぼなりむかしは楮(かうつ)の皮(かわ)にてつくれる幣(へい)を白木(しらゆふ) 綿といふ○海塩(かいゑん)しほ也/食塩(しよくゑん)なり海中(かいちう)の潮(うしほ)をくんで竃(かま)にてにて塩(しほ)とす賢(しん)【腎ヵ】に入(いり) て歯(は)をかたくす鹵(ろ)あらしほ鹵坵(ろきう)はしほしり塩盤(ゑんはん)はしほがま○石灰(せきくはい)は火(ひ)にて石(いし)を やきて灰(はい)となす毒(どく)あり一切(いつさい)の腫物(しゆもつ)を治(ち)す又/白堊(しらつち)にして壁(かべ)をぬる 【左丁】 《題:頭書増補訓蒙図彙(かしらがきぞうほきんもうづゐ)巻之八》   器用(きよう) 《割書:此部は武具(ぶぐ)農具(のうぐ)そのほか|日用(にちよう)のうつはものをしるす》 【左丁上段】 ○紙(かみ)は楮(かち)の木(き)にてつくる 後漢(ごかん)の祭敬仲(さいけいちう)【注】といふ人 始(はじめ)てつくるといへりむかしは 帛(きぬ)に物(もの)をかきしゆへに紙(かみ) といふ字(じ)糸篇(いとへん)をかける ○筆(ふで)は秦(しん)の蒙恬(もうてん)といふ人 つくりはじむとなり蒙恬(もうてん) 此功(このこう)によつて管城(くはんじやう)といふ 所に封(ほう)せらるよつて筆(ふで)の 異名(ゐみやう)を管城子(くはんじやうし)といふ ○硯(すゞり)は黄帝(くはうてい)玉(たま)をもつて 【左丁下段挿絵】 紙(し)《割書:かみ》 帋(し)《割書:同》 牋(せん)《割書:し|き|し》 筆(ひつ)《割書:ふで》 筆管(ひつくはん)《割書:ふでのぢく》 筆帽(ひつほう)《割書:ふでの|さや》 墨(ぼく)《割書:もく》 すみ  硯(けん)《割書:すゞり》 研(けん)《割書:同》 書(しよ)《割書:ふみ》 本《割書:同》 横巻 冊子 裱(へう)《割書:へう|し》 【注 「祭」は「蔡」の誤】 【右丁上段】 はじめてつくり給ふといふ ○墨(すみ)は煤(すゝ)に膠(にかわ)を合(あはせ)てつくる 油煙(ゆえん)松煙(ぜうえん)あり子路(しろ)といふ 人つくりはじむといふ ○書(しよ)はむかしは竹(たけ)をあみ小(こ) 刀(がたな)にて彫付(ほりつけ)てこれを書(しよ)と すよつて巻(くはん)とも冊(さつ)とも云 ○裱(へう)は裱紙(へうし)なり書(しよ)のうは 紙(がみ)なり褾(へう)同/簽(せん)は外題(げだい)也 ○画(ぐは)は絵(ゑ)なり采(いろどり)たるを 絵(ゑ)といふ唐(もろこし)にては舜璵(しゆんきよ)日(につ) 本(ほん)にては雪舟(せつしう)今(いま)は狩野家(かのけ) 其外(そのほか)名人(めいじん)あり ○帙(じつ)は書(しよ)のうは包(つゝみ)なり袠(ぢつ) 同じ又/文巻(ふまき)文匣(ぶんかう)あり又 書(しよ)をすべて帙(じつ)ととなふ 【左丁上段】 ○璽(し)は王者(わうしや)の印(いん)なり玉 をもつてつくる庶人(しよじん)は金石(きんせき) にてつくる ○扇(あふぎ)は舜(しゆん)つくり給ふ共また 武王(ぶわう)つくり給ふともいへり日(につ) 本(ほん)にては神功(じんぐう)皇后(くはうこう)三韓(さんかん) 征伐(せいばつ)のとき蝙蝠(へんふく)の羽(は)を 見てつくりたまふ ○尺(しやく)は粟(あわ)より生(しやう)ず十/粟(ぞく) を分(ぶ)とし十/分(ぶ)を寸(すん)とし十 寸(すん)をを尺(しやく)とす尺(しやく)は人(ひと)の躰(たい)を もつてはかる指(ゆび)を布(しゐ)て尺(しやく) を知(しる)股(ひぢ)をのべて尋(ひろ)をしる 尋(ひろ)は八尺なり ○簿(ぼ)は手板(しゆはん)なり事(こと)を書(かき) しるすものなり簿書(ぼしよ)簿(ほ) 【右丁下段挿絵】 画(ぐは) 掛軸(くはちく)《割書:かけもの》 驚燕(きやうゑん)《割書:ふうたい》 帙(じつ)《割書:ふまき》 簿(ほ) 印(ゐん)《割書:をして》 印色(いんしよく)《割書:いんにく》 扇(せん)《割書:あふぎ》 箑(さう)同 団扇(だんせん)《割書:うちわ》 尺(しやく)《割書:ものさし》摺尺(せうしやく) 暦(れき)《割書:こよみ》 【左丁下段挿絵】 符(ふ)《割書:わりふ》 几(き)《割書:をしまづき》 算(さん) 《割書:そろばん》 《割書:さんぎ》 翳(ゑい)《割書:は|さしは》 蝋燭(らうそく) 如意(によい) 払塵(ふつじん) 《割書:ほつす》 《割書:はいはらい》 籍(せき)と云今いふ帳(ちやう)なり ○暦(こよみ)は黄帝(くはうてい)つくり給ふとも いふ又/容成(ようせい)つくるとも又/義(ぎ) 和(くは)つくるともいへり ○符(ふ)は符契(ふけい)符信(ふしん)といふ わりふなり竹(たけ)長(なが)さ六寸にし て分(わけ)て相合(あいあはせ)て信(しん)とす又/木(き) にてもつくるなり ○几(き)は今いふつくゑなりまた 脇息(けうそく)なり憑几(へうき)なり又/机(き)に つくる ○筭(さん)は長(なが)さ六寸/暦数(れきすう)を もつてはかるものなり黄帝(くはうてい) のとき▢(ゑい)【偏は柰、旁は頁】首(しゆ)算数(さんすう)をつくる 筭(さん)はあやまりなり算(さん)につくるべし ○蝋燭(らうそく)は蝋(らう)に油をいれてね 【左丁上段】 り竹(たけ)の筒(つゝ)に入かため燭(ともしび)とす 銀(ぎん)蝋燭(らうそく)あり朱(しゆ)蝋燭(らうそく)あり ○如意(によゐ)は木竹(きたけ)又/象牙(ざうげ)玳瑁(たいまい) などにてつくる物(もの)をわすれ まじきために書付(かきつけ)手(て)にもつ 物(もの)なり文殊(もんじゆ)の持(もち)給ふ物なり ○翳(ゑい)は天子(てんし)のうしろにかざす 物なり女嬬(によじゆ)の役(やく)なり ○払塵(ふつぢん)ははいはらひなり禅家(ぜんけ) には払子(ほつす)といふ揮指(しき)する具(ぐ) なり麈(しゆ)の尾(を)白熊(はぐま)にて作(つくる) ○案(あん)は今(いま)いふ几(つくゑ)なりふつくゑ 又/卓(しよく)ともいふ几案(きあん)ともいふ ○鐘(しやう)つきかねは十二/調子(てうし)の中(うち) 黄鐘(わうしき)の調子(てうし)をよしとすよ つて鐘(しやう)といふ 【右丁下段挿絵】 案(あん)《割書:つくゑ》 鍾(しやう)《割書:つりがね》 風鈴(ふりやう) 鈴子(れいし)《割書:すゞ》 笛(てき)《割書:ふえ》 尺八(しやくはち) 竪笛(しゆてき) 横笛(くはうてき) 鐸(たく)《割書:すゞ》 鈸(はつ) 土拍子(とびやうし) 【左丁下段挿絵】 籥(やく)《割書:こまぶえ》 柷(しく) 鼓(こ)《割書:たいこ》 太鼓(たいこ)なり 鉦(しやう) 簫(しやう) 笙(しやう) 管(くだ) 匏(ほう)《割書:つぼ》 簧(わう)《割書:した》 ○笛(ふえ)は篴(てき)同/漢(かんの)武帝(ぶてい)の時(とき) 丘仲(きうちう)といふものつくれりと 云日本にては天(あま)の香久(かく) 山(やま)の竹(たけ)にてつくる ○鐸(たく)は金鐸(きんたく)は金鈴(きんれい)金舌(きんせつ)也 軍法(ぐんほう)にこれを用(もち)ゆ木鐸(ぼくたく)は 金鈴(きんれい)木舌(ぼくせつ)なり文教(ぶんかう)に用(もち)ゆ ○鈴(れい)は風鈴(ふれう)なり一/名(みやう)簷鈴(たんれい) といふ○鈴子(れいし)はすゞなり一/名(みやう)を 円鈴(ゑんれい)といふ ○鈸(はつ)は僧具(そうぐ)なり銅鈸子(どうはつし)は土(と) 拍子(びやうし)なり南齊(なんせい)の穆七素(ほくしそ)と いふ人(ひと)つくれり ○籥(やく)は高麗笛(こまぶえ)なりふく所 をのぞいて六の穴(あな)あり又/穴(あな)三 つあるもあり 【左丁上段】 ○鼓(こ)は大鼓(たいこ)なり楽器(かくき)なり ○柷(しく)は木音(もくゐん)なり中(なか)に柄(え)有 これをうごかして左右(さゆう)にうた しめて楽(がく)をおこすものなり ○鉦(しやう)は小鐘(ちいさきかね)なり楽器(がくき)なり 鼓(つゞみ)を節(ほとよく)し鼓(つゞみ)を止(やむる)ときうつ なり鐘鼓(しやうこ)となづく ○簫(しやう)は楽器(がくき)なり小竹管(せうちくくはん)を あみてつくる鳳凰(ほうわう)の翼(つばさ)にか たどる大(おほひ)なるは二十三/管(くはん)長(なが)さ 尺(しやく)四寸/小(せう)なるは十六/管(くはん)長(なが)さ 尺(しやく)二/寸(すん)なり ○笙(しやう)は女媧(ちよくは)これをつくる大(たい) 笙(しやう)は十九/簧(わう)小笙(せうしやう)は十三/簧(わう) ○磬(けい)は冉句(せんこう)氏(し)のつくりはしめ たるものなり石磬(せきけい)あり銅(とう) 【右丁下段挿絵】 磬(けい)  石磬(せきけい) 銅磬(どうけい) 律(りつ)《割書:づだけ》 琴(きん)《割書:こと》 瑟(しつ) 筝(さう)《割書:さうのこと》 塤(けん) 鼗(たう)《割書:ふりつゞみ》 【左丁下段挿絵】 篳篥(ひちりき) 敔(ぎよ)《割書:さゝら》  琵琶(ひわ) 三絃(さんけん)《割書:さみせん》  撥(ばち) 琵琶撥(びわのばち) 三絃撥(さんけんのばち) 柱(ちう)《割書:ことぢ》 阮(けん) 阮咸(けんかん) 月琴(げつきん) 【右丁上段】 磬(けい)あり磬(けい)をかくるものを簨(しゆん) 簴(きよ)といふ ○律(りつ)は楽器(がくき)なり陽律(やうりつ)六/陰(ゐん) 律(りつ)六/合(あはせ)て十二/律(りつ)なり六/律(りつ) 六/呂(りよ)ともいふ黄帝(くはうてい)の臣(しん)作(つく)る ○琴(きん)はむかしは五十/絃(けん)あり 後(のち)に二十五/絃(けん)となる今は十 三/絃(けん)あり日本(につほん)にては天(あま)の 香弓(かゆみ)をならべ弦(つる)をかけて ならしはじむ ○瑟(しつ)は絃(けん)数(かず)多少(たせう)あり大瑟(たいしつ) は五十/絃(けん)なり舜(しゆん)これを作(つくる) ともに楽器(がくき)なり大なるを 瑟(しつ)といふ小なるを琴(きん)と云 ○筝(さう)は秦(しん)の蒙恬(もうてん)つくり出(いだ) せり長(たけ)一/尺(しやく)絃(けん)十三/絃柱(けんちう)の 【左丁上段】 高(たか)さ三寸十一二三の三/絃(けん)を 斗為巾(といきん)といふ ○塤(けん)は土(つち)をやいてこれをつく る六の孔(あな)ありてこれをふく 楽器(がくき)なり ○鼗(たう)は鞉(てう)と同(おな)じ楽器(がくき)也 一名を搖鼓(ようこ)といふふりつゞみ ○篳篥(ひちりき)は一名/笳管(かくはん)と云 楽器(がくき)なり胡人(こひと)ふいて馬(むま)を おどろかす ○敔(ぎよ)は木虎(ぼくこ)なりせなかに くひちがひをきざみ木(き)を以(もつ) てこれをすりて楽(がく)をやむ るものなりさゝらなり竹(たけ)を 破(わり)てもつくるなり ○琵琶(びわ)は長(たけ)三/尺(じやく)五寸四/弦(けん)也 【右丁下段挿絵】 軫(しん) 琴軫(ことのしん) 抱(ふ) 琵琶軫(びわのしん) 繋爪(けつさう)《割書:かけづめ》 大鼓枹(たいこのばち) 羯鼓枹(かつこのばち) 銅鉢(とうはち)《割書:きん》 羯鼓(かつこ) 腰鼓(えうこ) 銅鑼(とうら) 【左丁下段挿絵】 仮面(かめん)《割書:まひのおもて》 雲版(うんはん)《割書:ちやうはん》 喇叭(らは) 喇叭 銅角(とうかく) 嗩吶(さのう) 【右丁上段】 下(しも)より逆鼓(さかさまにひく)を琵(ひ)といふ 上(かみ)より順鼓(しゆんにひく)を琶(わ)といふ一名 胡琴(こきん)漢(かん)の王昭君(わうせうくん)ひけり ○阮咸(けんかん)は四/弦(けん)十/柱(ちう)あるひは 五/弦(けん)十三/柱(ちう)なり月琴(げつきん)同し ○三絃(さんけん)は三味線(さみせん)なり三絃(さんけん) 子(し)といふ琉球国(りうきうごく)より渡(わた)りし 楽器(がくき)といふ ○撥(ばち)は琵琶(ひわ)の撥(ばち)三絃(さんけん)の撥(ばち) 羯鼓(かつこ)の撥(ばち)みなかたちもちが ひ文字(もんじ)もちがひ有/棙(れい)同(おなし) ○柱(ちう)は琵琶(びわ)にては柱(ちう)ととな へ琴(こと)にてはことぢといふかたち すこしちがひあり ○軫(しん)は琴軫(きんしん)転手(てんじゆ)なり琵(び) 琶(わ)三味線(さみせん)ともにあり 【左丁上段】 ○枹(ふ)は太鼓(たいこ)のばちなり桴(ふ) とも書(かく)べし棙撥(れいはつ)は琵琶(びわ)の 撥(ばち)又/三味線(さみせん)の撥(ばち)なり ○繋爪(けいさう)はことのつめなりかけ つめといふ義甲(ぎかう)仮甲(かかう)なら びに同し ○銅鉢(とうばち)は僧家(そうけ)には磬(きん)といふ きんは唐音(とういん)なり ○羯鼓(かつこ)は楽器(がくき)なり唐(とう)の玄(げん) 宗(そう)よくうちて花(はな)を催(もよほ)す ○腰鼓(ようこ)は腰前(ようぜん)にさしはさむ つゞみなりつねの鼓(つゞみ)を指鼓(しこ) といふ ○銅羅(どうら)は今(いま)いふさふらなり 楽器(がくき)なり一/説(せつ)に臍(へそ)ある鉦(しやう)と いへり 【右丁下段挿絵】 風鐸(ふうたく)《割書:はうちやく》 棊(き)《割書:ご》 枰(へい)《割書:ごはん》 六采(りくさい)《割書:すごろく》 簺(さい) 骰子(たうし) 象棊(しやうぎ) 【左丁下段挿絵】 鞠(きく)《割書:まり》 硯屏(けんびやう) 書鎮(しよちん) 圧尺(あつしやく)《割書:けさん》 水滴(すいてき) 水中丞(すいちうぜう) 爪杖(さうぢやう)《割書:まごのて》 筆架(ひつか) 【右丁上段】 ○仮面(かめん)は今(いま)いふ舞(まひ)の面(おもて)なり 代面(たいめん)とも戯面(きめん)ともいふ能(のふ)又は 楽(がく)に着(き)るなり ○雲版(うんはん)はちやうはんなり飯斎(はんさい) の時(とき)大衆(たいしゆ)をあつむるときう つものなり ○嗩吶(さのう)は大平簫(たいへいしやう)といふふえ なり嗩哪(さの)鎖㖠(さの)ならびに同 ○喇叭(らは)∘銅角(とうかく)ともに唐人(とうじん) ぶゑなり又/唐音(とうゐん)にてちやる めろといふ ○風鐸(ふうたく)は宝鐸(ほうちやく)なり又は檐(ゑん) 鐸(たく)ともいふ堂(だう)の檐(のき)にあり ○棊(ご)は帝堯(ていぎやう)つくり始(はじめ)給ひて 子(こ)の丹朱(たんしや)にをしへ給ふ所なり 黒白(こくびやく)の石(いし)は昼夜(ちうや)にかたどり 【左丁上段】 三百六十は日(ひ)の数(かす)を表(ひやう)する なり碁(ご)いしを碁子(きし)といふ 碁笥(ごけ)を碁奩(きれん)といふ ○枰(へい)は碁盤(ごばん)なり又/棊局(ききよく) ともいふ棊盤(ごばん)の目(め)を路(ろ)と云 棊石(こいし)を子(し)といふ棊笥(ごげ)を 奩(れん)といふ ○六/采(さい)は双六(すごろく)なり黒白(こくびやく)の石(いし) は昼夜(ちうや)なり十二の目は十二月 なり盤(ばん)を局(きよく)といふ ○簺(さい)は日月の二つに表(ひやう)す四 角(かく)は四/方(はう)にかたどる骰子(たうし)は 筒(つゝ)なり投子(とうし)同 ○象棊(しやうぎ)は周公旦(しうこうたん)作(つくり)出して成王(せいわう)に 教(をし)へ給ふとなり大中小の将棊(しやうぎ)有 又/摩訶陀(まかだ)象戯(しやうぎ)といふもあり 【右丁下段挿絵】 界方(かいはう)《割書:ひぢやうぎ》 眼鏡(がんきやう)《割書:めがね》 燭台(しよくだい) 燭奴(しよくど) 灯(とう)《割書:ともしび》 燭剪(しよくせん)《割書:しんきり》 灯檠(とうけい) 油瓶(ゆひやう)《割書:あぶらがめ》 【左丁下段挿絵】 灯籠(とうろう) 方灯(はうとう)《割書:あんどう》 桃灯《割書:ちやうちん》 提灯(ていとう)《割書:ちやうちん》 煙火(ゑんくは)《割書:はなび》 拍板(はくはん)《割書:びんさゝら》 【右丁上段】 ○鞠(まり)は蚩尤(しゆう)が頭(かうべ)をかたどり て蹴(ける)なり飛鳥井(あすかゐ)どのこの 家(いゑ)なり地下(ぢげ)には左近(さこん)と云 ものあり ○硯屏(けんべう)は硯(すゞり)のむかふにたつ る屏風(べうぶ)なり硯(すゞり)の墨(すみ)を風(かぜ) にかはかせまじきため又/塵(ちり) ふせぎなり ○書鎮(しよちん)は風(かぜ)ふくときの書 おさへなり文鎮(ぶんちん)とも圧書(あつしよ) ともいふ ○圧尺(あつしやく)は卦算(けさん)なり具足(ぐそく) の草摺(くさずり)を卦算(けさん)といふかた ちににたれは卦算(けさん)といふ ○水滴(すいてき)みづいれは硯(すゞり)のみづいれ なり玉蟾蜍(きよくぜんぢよ)ともいふ蟾蜍(ひきがへる) 【左丁上段】 のかたちにつくる水いれ也 又/硯滴(けんてき)ともいふ ○爪杖(さうじやう)は掻杖(さうじやう)ともいふ麻(ま) 姑(こ)といふ仙女(せんじよ)の手(て)鳥(とり)の爪(つめ) のごとしよつて麻姑(まご)の手 ○筆架(ひつか)は筆(ふで)もたせなり 筆格(ひつかく)筆峯(ひつほう)筆山(ひつさん)とも云 ○界方(かいはう)は今(いま)いふ樋定木(ひでうぎ) なり ○眼鏡(かんくやう)はめがねなり靉靆(あいたい) ともかくなり ○燭台(しよくだい)は蝋燭(らうそく)たてなり又 燭架(しよくか)ともいふかたちさま〴〵 かはりあり ○燭奴(しよくど)はらうそくたてに人(にん) 形(ぎやう)あるをいふなり 【右丁下段挿絵】 香炉(かうろ) 香鼎【目の部分は日】 香猊(かうけい) 香鴨(かうあう) 香毬(かうきう) 香盒(かうがう) 線香(せんかう) 香案(かうあん) 筯瓶(ちよびやう) 【左丁下段挿絵】 薫籠(くんろう)《割書:ふせご》 佩香(はいかう)《割書:にほひのたま》 毬杖(きうちやう)《割書:ぎつちやう》 投壺(とうこ)《割書:つぼなげ》 空鐘(くうしやう)《割書:たうこま》 香餅(かうべい)《割書:たどん》 【右丁上段】 ○燈(とう)は灯(とう)同し燈盞(とうさん)はあぶ らつき燈心(とうしん)は燈炷(とうしゆ)ともいふ 燈花(とうくは)はちやうじかしら ○燈檠(とうけい)は長檠(ちやうけい)あり短檠(たんけい) あり灯台(とうだい)といふもありまた 灯架(とうか)といふ ○燭剪は今いふしんきりなり ○油瓶(ゆへう)は今いふあふらさし なり又/油注(ゆちう)ともいふ ○燈籠(とうろう)は燭篭(しよくろう)とも灯毬(とうきう)と もいふ又/灯篝(とうこう)ともいふ ○挑燈(ちやうちん)は丸(まるき)を俗(ぞく)に酸槳(ほうづき)挑(ちやう) 灯(ちん)といふ紗(しや)にて張(はり)たるを 紗篭(しやらう)といふ ○方燈(はうどう)は今(いま)いふ行燈(あんとう)なり四 方なるゆへ方燈(はうとう)といふ紗(しや)にて 【左丁】 はるを紗篭(しやろう)といふ○提燈(ていとう)は今(いま)いふ挑灯(ちやうちん)なり懸火(けんくは)ともいふ○ 煙火ははなびなり花炮(くはほう) ともいふ地鼠(ちそ)花兒(くはじ)流星(りうせい)走線(そうせん)なとの名あり○柏板(はくはん)は今(いま)いふびんざゝらなり又/柏子(はうし)と もいふ○香炉(かうろ)は薫炉(くんろ)ともいふ又は香(かう)𣇄(てい)香猊(かうけい)香鴨(かうあう)などの名(な)ありかたちによつて名 のかはりあり香毬(かうきう)は俗(ぞく)にまはり香炉(かうろ)○香毬(かうきう)はてまりのごとくなるをいふまはり香炉(かうろ)なり 鴨(かも)のかたちにつくりたるを香鴨(かう〳〵)といふ○ 香盒(かうがう)は香(かう)ばこなり漆盒(しつかう)磁盒(じかう)および金銀(きん〴〵)銅(どう) 錫(しやく)等(とう)にてつくる○香案(かうあん)は今(いま)いふ卓(しよく)なり又は香几(かうき)といふ○線香(せんかう)は線(せん)はいとすじとよむ いとすじのごとくなる香(かう)なり炷香(しゆかう)ともいふなり南京(なんきん)よりきたる○筯瓶(じよへい)はひばし をさすものなり火筯(ひばし)をこぢといふ火筯(こじ)をさしはさむものなりと○薫篭(くんろう)は今(いま) いふふせこなり又/火篭(くはろう)とも衣篝(いかう)ともいふ○佩香(はいかう)は今(いま)いふにほひのたまなり腰(こし) におふるものなり香嚢(かうのう)はにほひぶくろ○毬杖(きちやう)は蚩尤(しゆう)がかうべにかたどりて正月にうつ なり玉毬春(たまきはる)ともいふ○空鐘(くうしやう)はとうこまなり独楽(とくがく)ともいふ小児(せうに)のもてあそびもの なり○香餅(かうへい)は今(いま)いふ炭団(たんどん)なり又は炭餅(たんへい)ともいふ火(ひ)いけなり又/炭墼(たんげき)とも炭麟(たんりん) ともいふ○投壺(たうこ)はもろこしの射法(しやほう)なり壺(つぼ)に矢(や)をなげいるゝ事(こと)なり○爆竹(はくちく) は竹(たけ)の火(ひ)にもゆる声(こゑ)このこゑをきゝて役鬼(えきき)おそるとよつて年(とし)のはしめに 爆竹(さぎちやう)すとなり又/天竺(てんぢく)より中国(ちうごく)人/仏経(ぶつきやう)わたりしとき仏教(ぶつきやう)を左(ひたり)道教(どうきやう)を 右(みぎ)にをき火(ひ)をかければ仏経(ふつきやう)やけずよつて左(さ)の義長(ぎちやう)ずるとて左義長(さぎちやう)ともいへり 【右丁下段挿絵】 爆竹(はくちく)《割書:さぎちやう》 竹馬(ちくば)《割書:たけむま》 紙鳶(しゑん)《割書:いかのぼり》 木偶(もくぐう)《割書:にんぎやう》 風車(ふうしや)《割書:かざぐるま》 陀螺(だら)《割書:ぶしやうごま》 【右丁】 ○竹馬(ちくば)はわらんべのたわむれなりいとけなきときの友(とも)を竹馬(ちくば)の友といふなり ○紙鳶(しゑん)はいかのぼりなり紙鴟(しし)風鳶(ふうゑん)ともいふ声(こゑ)あるを風箏(ふうさう)といふ○木偶(もくくう)は木(き)に てつくりたる人形(にんぎやう)をいふ土(つち)にてつくりたるを土偶人(とくうじん)といふ紙(かみ)にてつくりたるを紙偶人(しくうじん)と云 ○風車(ふうしや)はかざぐるまなり○陀螺(だら)は今いふぶしやうごまなり辺土(へんど)の小児(しやうに)のもてあそぶもの也      拾冊之内 【左丁】 【裏表紙 文字無】 【裏表紙 文字無】