《題:霞 の 引初》 【松、鈴、玉手箱、扇子の絵】 /霞(かすミ)の/引初(ひきぞめ)序 /大路(おゝぢ)ゆたかに/立渡(たちわた)したる/松竹(まつたけ)に/颯々(さつ〳〵)の/聲(こへ) /春(はる)/深(ふか)く/四方(よも)に/霞(かすミ)のひきぞめは/千代(ちよ)の/子寶(こだから) /一番鶏(いちばんどり)つゞいて/二(に)ばん/三番叟(さんばそう)よろこびありや /有明(ありあけ)にぐつと/抱(だか)れてしめかざりうら白根枩(じろねまつ) やぶかうじだい/大好(だいすき)の/御事(おんこと)ハはづむ/手鞠(てまり)の ひようしよく/数(かず)もつきせずひゐふうミい/夜(よる) /昼(ひる)なしに/鳥追(とりおい)や/来(く)る/門礼(かどれい)もうるさしと /床(とこ)はかざりのすハり/交開(どりもの)/喰積(くひつミ)やよろこん/布(ぶ) ちう〳〵口(くち)を/吸物(すいもの)の/鱈(たら)り〳〵と/淫水(いんすい)のたれはゞ からず/喜悦聲(よがりごへ)たがひに/精(せい)のつゞくだけさつさ おせ〳〵/腰(こし)もふな〳〵/見(ミ)ゆるハ〳〵/舩玉(ふなだま)につミこむ /寶(たから)ハ/何(なに)〳〵ぞ/玉(たま)に/袋(ふくろ)に/笠蓑(かさミの)の毛(け)もつや〳〵と /帆柱(ほばしら)おし/立(たて)/追風(おいて)につれてとりかぢやあれ/又(また) いつそ/幾千代(いくちよ)かけて/交(す)れバするほど/長生殿(ちやうせいでん)と いつも/老(おい)せぬ/若(わか)ミどり/賑(にぎ)ハふ/家(いへ)の/門(かど)かぐら しゝの/出(で)る/頃(ころ)/起出(おきいで)て/祝(いわ)ふ/雑煮(ざうに)のいもとせは/実(げ)にも /目出(めでた)たきためしなりと/吉例(きちれい)の/通(とほ)り/淫水亭(いんすいてい)が /筆始(ふではじめ)の/新作新板(しんさくしんはん)/春(はる)の/始(はじめ)の/初(はつ)くばりとハなしぬ             立川笑山 【右上】 さほ/姫(ひめ)の/霞(かすミ)のど かに/明(あけ)そめてけさ しろ〳〵と/冨士(ふじ)の かほうつるかゞミの かげそへて松と竹 とのふた/柱(ばしら) 【その下】 〽アレかんざしへさわつちやア いやざますよかミが わるくなるとおいらんに しから れいす 【その左】 〽/瀬川(せがハ)さんの ところへいつての /花(はな)むらさき申んす ア〳〵〳〵 【左頁】 【左上】 〽いちや明たら又かく べつうつくしくなつた 〽あれさマアそふして おいでなんし 【右上】 〽エヽどうもうらやましい ねへわたしもあとでして もらいたい もんだ いつそ まへが【右下へ】 ぬら〳〵 して きた 【その下】 /賑(にぎ)ハふ/春(はる)のおさな ごと/門(かと)にやりはごす【?】める /代(よ)に風ふくななをふく なきんのうちハで追(おい) ばねせうとおしやる つくや/手(て)まりの かぞへうた 【左下】 〽/明(あけ)の春ミないヽ男いヽ女と いふ句のとおりこのこなんざァ ぢたいがいヽうへヽかううつくしく おつくりができてハどうもたまら ねへさほひめでも弁天さまでも かなふことじやァねへけふのやうないヽ まハないからマアじつと していなよ【右下へ戻る】 くれの内もどう ぞ〳〵と 思つて いたが いヽ まが なかつた /春(はる)ハ あらう ものだおいら のねがひが かなつてこん なうれしいいヽ 事ハない アヽいヽ〳〵〳〵 【左頁】 【下】 〽だれかきハ しないかねへ わたしやどん なだらう とおもつて こハかつたが いつそうれ しいよこんな 事なら いつまでも かうしていて おくれ アヽもう なんだか いつそ【左上へ】 おかしな こヽろもちに なつて きた 【右上】 ひとつといひてききよ ぎの/種(たね)まく/小田(をだ)の /神(かミ)まつりふりわけがミ のいたいけに/緋(ひ)むくハ つばき白むくハ梅の つぼミの/風(かざ)ぐるま くんるくる〳〵めぐる /日(ひ)の 【その左】 〽おまへ いつかわたしを むりな事をして おいてそれつきり しらんかほをしていてにくらしい わたしやァあの時はじめてだから いたくつてくやしかつたがどうした 事かかんがへてミるとかんがへる ほどおまへがかハいくなつて 【左頁へ】 まゐ【?】ばんよるねるとおまへの ことばつかりおもつているな【?】 おまへハ わたしを なんとも おもハない から くや しいよ 【右頁下】 〽なにさそうじやァ ねへが人めがあるからわざと しらねへかほでいるのだ わな どうしておめへ よりおれのほうで【下へ】 おもつて いる事ハ どんなだか しれねへ まァなんに しろひさし ぶりだから こゝでもいヽ からちよいと よこに なんな 〽それだつて こんな とこで 【左頁左下】 〽はれ ものと /地色(ぢいろ)の ちよん のまハ /所(ところ) きら わず よ /早鶏合(はやとりあわ)せ 雛(ひな)あそび いもせ かハらぬ もろしらが 【右下】 〽いや たかき ひなに あやかるめうと ごと見てした をだす /供御(ぐご)の/蛤(はまぐり) ひなの ごち そふに ハ /白(しろ)ざけ を 出す のが き まり さ 【左頁下】 〽わた しや しろ ざけに よつて せつ ないよ 〽その せいで 前 から こん なに /白酒(しろさけ) を もどす のだから むかひ ざけに おれの白酒を /下(した)の/口(くち)から はらの/中(なか)へ おもいれつぎ こんでやらう 【左頁左上】 いたヾく/軒(のき)にあやめ ふく/幟兜(のぼりかぶと)のいさましく せうぶうちあふなり ふりのたけきハなを もいさぎよくひまゆへ /駒(こま)のたけの/尾(を)に むちをくれなハ/手(た) /綱(づな)かいくりりん〳〵〳〵 【中段右】 アヽ もう そう すいつかれ てハこらへ られぬ中の どうぐかへのこへ 吸付てぬき さしのたんびに 口もとまで でるようだ アヽもうたまらぬ もういきそうだスウ〳〵〳〵〳〵 〽おまへのものが木のやうに かたくなつて【左下へ】 そして すじ ばつて 一めん に ぞくり 〳〵 と アヽ もう アヽ又 いく〳〵〳〵〳〵 /涼(すヾミ)に いその /蛍(ほたる)がり /栁(やなぎ)の/水(みづ)の /影(かげ)いそぐ 【中段右】 〽ヲヽかわいゝぼうだのう いまにそれ〳〵いくからの いゝ子だのう ハア〳〵〳〵それそこだよ アヽいゝヲヽいゝほたるを とつてやらうのう ヲ〻〻〻 ハア〳〵〳〵〳〵 【右下】 おつかちやん ほたるをとつて こゝにねんね するのか ちゝのミ たい〳〵 【左頁】 【下】 〽いまに ほたるを とつてやらう のうまづ おつかァから とつて しまつて それから たんととつて やりませう ハア〳〵〳〵 フ〻〻〻 アヽいヽ子 だぞ /手(て)に手をとりて かさヽぎのあふせを /渡(わた)す/天(あま)の/川(がハ) /笹(さヽ)にひと/夜(よ)の /散(ちら)し がき 【右下】 〽おかミさん/御亭主(たいしやう) がるすだといふに ごうぎにはやく おきなすつたね 〽なァにの夕べ 朝皃がたい そうつぼミを もつたから どんなに ひらひたかと 思つて ミにきた のだハ な 〽ほんにねへ がうてきに よくひらきやし たしかし/朝皃(あさかほ) より朝まらの 【左頁へ】 ひらいた所を ちよつとごらんな さいまい朝〳〵 これにハこまり やんす 〽これさ ふざけな さんな〽もし /後生(ごしやう)になり やすたつた一丁 〽ヱヽも此人ァ わるい事を ほんにおそ ろしくひら いた のう【左頁右上へ】 こんなになつた 時ハこまるだらうよ のうかわいそうにちよ つと入物をかすから はやくやわらかにして □□【おし】まいな つぶて■ またうち /里(さと)の/子(こ)の /踊(おどり)をくづす /宵(よひ)の /稲妻(いなづま) 【右下】 〽宵にハ どうかひと ふり来そう だつたが すつパり はれて いヽ月夜 に なつた 踊くた びれて ねれた ところを ちよつと お見まい やしたい 〽アレ およしよ だれか 見ると わるい からさ 【左頁】 〽なんの 夜 ふけ さ ふけ に だれ が 見る ものが あるものか 〽それでも お月 さまが 見て ござる よ 〽かうまいばん〳〵日がくれると /夜(よ)の/明(あけ)るまでいろ〳〵にして たのしむがいつでもあき ないものハ/米(こめ)の/飯(めし)と/女房(にようほ) の/開(ぼヾ)だなめへも又ついぞ あきた事がねへで身にひつ かけてせいだすが/似(に)たもの ふうふとハよくいつたもんだ サア〳〵又いきそうになつて たまらねへアヽいヽ〳〵〳〵フン〳〵〳〵〳〵 【左頁】 〽ア〻〻おまへもいヽかへわたしも いヽよアヽウ〻〻フン〳〵〳〵〳〵ア〻〻 よくつて〳〵さつきからいきづめ だよアヽどうせう〳〵よくつて〳〵 からだのしよふがないよハア〳〵〳〵〳〵 そのきせわたの /菊重(きくがさ)ね かほる/袖(そで)がき /中(なか)も よく 〽内でゆつくりとできるものをこんなきわどいところでこんな 事をするがたのミとハほんにこまりものだよのう 【左頁】 〽ハテ/内(うち)でするのハめづらしく ねへいゝつけた/大平(おヽひら)のできぬ うちにこちらの口を/吸(すい) ものあんばいなまがいと松 /茸(だけ)ののつぺい平ハどふも よつぽど いヽあんばいだ /此(この)うまミにやァ /口(くち)とりも大平も およバねへ【右下へ】 おらァ /酒(さけ)の /肴(さかな)にも /飯(めし)のさい にも 手めへの /開(ぼヽ)せへ ありやァ なんにも いら ねへ 【中段左】 ほたけ/祭(まつり)の とり〴〵に /花(はな)をかざりしうち かけ/匂(にほ)ふ うぶ/神(がミ)まふで /黒(くろ)かミに 〽たれも きハ しま すまい か ねへ 【右下】 〽どうも うちでハ ふすまひとへの 所におやぢも おふくろも ねているから いつも/思(おも)ふ よふに できぬ からの おもひ いきでふゆ【?】 きぎして きた 此雪の /夜道(よミち)を ふたりで かへるこそ さいわい こゝで ゑんりよ なく おもいれ よがら せて やる【左頁へ】 つもり さ 【左上】 をく/白雪(しらゆき)の ふれやつもれや つもれやふれや まねくや /年(とし)の ミつぎもの 〽アヽ もう此 よ さハ 【左頁】 ほかに るいなし アヽいく〳〵〳〵 それ いく〳〵〳〵 【左上】 たへず かわらぬ わらんべの ちゝま/遊(あそ)びの /千代(ちよ) かけて 【その下】 〽わ たし も こんな に うれしい きミの よい事ハ ないアヽ〳〵 又いく〳〵〳〵 〽此ようなこゝちよいめでたいことハ【左下へ】 ない のう 〽わた くしも此 よふにうれ しいよいきミな おめでたい 事ハほかにハ あります まいとぞんじ ますハ 【左上もどる】 /千代(ちよ)に/八千代(やちよ)に さざれ/石(いし)の うごかぬ みよこそ めでた けれ /霞(かすミ)の/引初(ひ?きぞめ)    /廓(くるわ)の/春霞(はるかすミ) ひと/夜明(よあけ)れバ/気(き)ものどやかにお/寶(たから)〳〵の/聲(こへ)ゆたかに/聞(きこ)ゆるころは どこともなふ/春(はる)めきわたりそよ〳〵とさそふ/初東風(はつこち)も/心(こゝろ)うれしきに ましてや/廓(さと)の/初春(はつはる)の/景色(けいき)/家〃(いへ〳〵)の/門錺(かどかざり)わけて/見事(みごと)にたてわたし たる/仲(なか)の/丁(てう)の/茶屋(ちやや)がもとに/初買(はつがひ)の/初酒(はつさか)もり/相方(あいかた)のおいらんを /向(むか)ふに/先(まづ)/才六(さいろく)/呑(のミ)そめて/御盃(おさかづき)を/大尽(だいじん)に/奉(たてまつ)れバ大尽ひとつうけ相方へ □【わ】たす〽ちと/上(あげ)んせうと/呑(のむ)ふりして/半分(はんぶん)/廣蓋(ひろぶた)へこぼしゑびやへさかづき まわるといなやおさへのあいのあいに/相生(あいおひ)の/松(まつ)のながしの/䑓(だい)の/物(もの)もんさく にさゞめきわたるざゞんざの/聲(こへ)やヽありて/一丁目(いつてうめ)の/楼上(らうしやう)へうつ /爰(こゝ)にも又〻/酒(しゆ) /宴(ゑん)ありて/禿(かむろ)が /酌(しやく)も/太平(たいへい)の/御代(ミよ)に /出(で)るてふ/鳳凰(ほうわう)の/雛(ひな)の /心地(こゝち)せられたり/扨(さて) /御膳(ごぜん)/差出(さしいだ)せバ/大(だい) /尽(じん)/少(すこ)し/召(めし)あがられ /皆(ミな)うハ/調子(でうし)になりし /頃(ころ)きてんの/才六(さいろく)お/床(とこ) 仕らんと/三(ミ)ッ重(がさね)の/天鵞(びらう) /絨(ど)に/緋(ひ)ぢりめんの/鏡(かヾミ) ぶとん/金襴(きんらん)の/夜着(よぎ)を ひろげちとお/休(やすミ)と申上れバ /大尽(だいじん)/上着(うハぎ)の/小袖(こそで)をぬぎ 玉へバ/新造(しんざう)たヽミてたん すへ/入(いれ)る/大尽(だいしん)ハ/中形(ちうがた)の/下(した) /着(ぎ)に/前帯(まへおび)の/横寝(よこね)ゆる させさんしよのこヾへに/鼻(はな)うた まじりほろ/酔(よひ)の/心地(こゝち)よく/枕(まくら) をとりてうつら〳〵とする/所(ところ)へ /白無垢(しろむく)のうへに/紫(むらさき)ちりめんのしごきうつくしく〽もう お/休(やすミ)なんしたかへとひとつ/夜着(よぎ)のうちへ そつと/入(い)り/足(あし)を/此方(こなた)の/足(あし)の /上(うえ)へのせかけられた/所(ところ)ハ/実(げ)にや /喜見城(きけんしやう)の/楽(たのしミ)とやいはん〽/是(これ)は またきびしい/御用(ごようじん)心かなと /紫(むらさき)のしごきをときかく れバこなたの/一物(いちもつ)はねあがり はやつッぱりかへり/入(いれ)ぬ さきより/気(き)のとおく なるほどおゆるにぞそのまヽ わりこミそろ〳〵/腰(こし)をひねり かけ/陰茎(へのこ)のあたまにて /空割(そらわれ)のあたりをぬたくり まハせバ〽あれさといゝつヽ やさしきゆびにて/一物(いちもつ)を /穴(あな)の/所(ところ)へのぞませ すこしあたまを はめかけざすれバ よきほどのぬらつき かげんにちときしむやうにおぼへ しがぬら〳〵ト/半分(はんぶん)ほどはいりし /心地(こゝち)よさま/事(こと)に何(なに)にたと へんものもなしこなたハそろ〳〵 と/腰(こし)をつかへバスウ〳〵/鼻息(はないき) しながら/下(した)より/持上(もちあげ)〳〵 /玉茎(へのこ)を/吸込(すいこむ)あんばい だん〳〵ふかく/入(いり)/毛際(けぎわ) までしつくりとおさ まりし/気見合(きミあい)どうも 【左頁】 いへず/開中(かいちう)あたゝかく /誠(まこと)に/持前(もちまへ)の上開(しやうかい)なかに やわらかき/肉(にく)はりいで/抜(ぬき) さしのたびへのこをもてなす こゝろよさ/気(き)も/遠(とほ)くなる/思(おも)ひ なり/下(した)よりハ/猶(なほ)はけしく /持上(もちあげ)られこらへかねて/大(おヽ) ごしにすかり〳〵と/腰(こし)を つかへバいよ〳〵/鼻息(はないき)せハしく スウ〳〵スウ〳〵ト/美(うつく)しき /喜悦顔(よがりがほ)にこなたももうたまらず へのこしこりきりてどこもかしこも かづきたつほどよく なつて/気(き)がいきかゝりし /一物(いちもつ)が/開(ぼヽ)の/中(なか)にて はびこれバ〽アヽどうも フウ〳〵ト/両手(りやうて)でしつ かりしがミつき/鼻(はな) /息(いき)スウ〳〵/大(おヽ)よがり〽ヱヽ じれつてへのうと/抱〆(たきしめ)る 【左頁】 はづミにどく〳〵どく〳〵〳〵こなたも すつぱり/気(き)をやりしまいしバ らくあつて〽ヱヽなんだか/毛(け)もなにも びつしよりになつた やうだとぬかうとするを〽アレナもう ちつとかうしてとかぢりついて/口(くち)を /吸(す)ひ〽いつまでもこうしていたう おざりいすとぐつとしめられ ぼんのうのまたも/気(き)ざして/一物(いちもつ)は いれていながらしやつきりと/木(き)の/如(ごと)くに おへかへりほか〳〵ずき/蒸(むし)かへしの/気味(きミ)よさ うつヽのやうにて/惣身(そうしん)もうづきたつほど こゝろよく/腰(こし)をはやめてつきこミ〳〵/一身(いつしん) へのこに/入(い)れあげて/猶(なほ)おくふかく/毛際(けぎハ)を つくし/根(ね)もとまでぐつと/入(い)れて/気(き)をやれハ おなじくスウ〳〵はないきばかり/腰(こし)をもぢりて/持上(もちあげ)〳〵 ついに/二度(にど)めがまたどく〳〵どく〳〵〳〵トつとめの/身(ミ)も すいた客にハ/誠(まこと)の喜悦(よ?がり)/大尽(だいじん)もふたつつゞけて 〽アヽ/大(おヽ)ぼねをおつた〽ヲホ〻〻/是(これ)におこり なんせんで/又(また)きつときておくんなんし    /沢邊(さわべ)の/蛍狩(ほたるがり) からごろもきつゝなれにしつましあれどはる〴〵/遠(とほ)きみかハのくにゝ さりがたき/用(よう)ありて/亭主(ていしゆ)が/旅行(りよこう)の/留守(るす)の間(ま)ハ/妻(つま)とおさなき/子(こ) ともひとりなにする/事(こと)もなきものからたゞ/留守(るす)をたいせつに/明暮(あけくれ) /子(こ)の/愛(あい)すのミかゝつらひさびしき/月日(つきひ)をおくりけるおりから/夏(なつ)も なかば/過(すぎ)ことしはとりわけいつもより/暑(あつ)き/日影(ひかげ)も/夕暮(ゆふぐれ)ごろ /常(つね)にしたしき/近(ちか)どなりの/獨身(ひとりもの)/世(よ)を/遊楽(ゆうらく)に/住(すミ)なせる/通人風(つうにんふう)の/色男(いろおとこ) 〽/時(とき)にお/暑(あつ)い/事(こと)ねぼうハよく/此(この)あつさにもめげないねへコレぼうや/今夜(こんや) /田甫(たんぼ)へいつて/蛍(ほたる)をとつてやるからおぢさんと/一所(いつしよ)に/行(いき)な〽アイ/蛍(ほたる)をたんととつて おくれと/早(はや)蛍かごを/持出(もちいだ)す〽ヲヽ/中(なか)に/二(ふた)ついるのもつとたんととつてやらうぞ〽お ぢちやんはやくいかうよう〽どうしてぼうハいくのでハない おぢさんがこくどとつて/来(き)ておくれだとよ ぼうがいつしよだとおぢさんが おこまりだから/内(うち)に/待(まつ)ておいで 〽いや〳〵いつしよにいくよ〳〵〽/此子(このこ)ハ こまつた/子(こ)だぞまたおぢさんに だつこしやうのおんぶせうのと /道(ミち)でどんなにおこまりだか しれないよ〽なにいゝわな だましてあるかせるから〽なァに あすこまであるけるこつちやァないわね ま事にこまるよそん ならわたしがそこまでいつしよにつれて まいりますと子どもがせかむをよう〳〵たまし /日暮(ひくれ)さう〳〵/戸(と)じまり して/三人(さんにん)つれだち /田甫(たんぼ)へ/行(ゆく)に/宵(よい) /闇(やミ)の/小笹道(おざヽミち)/裾(すそ)さへ しまるつゆけさにそこよ /爰(こゝ)よとふたつ三つ/蛍(ほたる)を とりてかごに/入(い)れる/子(こ)ども のよろこび/大(おゝ)かたならず 〽おぢちやんもつととつて おくれよ〽おい〳〵もつとたく さんとつてやらうのとだん〳〵 /行(ゆく)ほどに/其子(そのこ)の/母(はヽ)も/子(こ)に ひれてともに/跡(あと)よりついて /行(ゆく)〽いつも/今頃(いまころ)ハ/蛍(ほたる)がりに いくらも/出(で)るがよひ/闇(やミ)でくらいせいか /人子(ひとこ)にひとりあわぬ〽ほんに そうだねへしかし/人(ひと)のでないほうが ぞつちらが■ないでこつちではがり とるからかへつてよいかもしれない〽わたしも /其気(そのき)さ/人(ひと)にとらせないでこつちでばかり/取(とり)たいと おもふがとうもとらせそうもないからつまら ねへのさと女の/手(て)をちよいとにぎる /女房(にようぼ)ハ/思(おも)ひがけぬ/事(こと)ゆへはつとハ /思(おも)ひしか/常(つね)から/我子(わがこ)をかわゆ がりて/手(て)あそびそのほかいろ〳〵 の/物買(ものか)ふてくれる/心(こゝろ)ざしのにくからに