地震方々人逃状(ぢしんほう〴〵にんにけじやう)之事 一 此(この)ゆり苦労(くらう)と申 者(もの)生得(せうとく)信濃国(しなのゝくに)生須(なまづ)の荘(しやう)  揺初村(ゆりそめむら)【注】出生(しゆつしやう)にて不 慥(たしか)なるふら附者に付荒魔ども  失人(うせにん)に相立(あいたち)異変(いへん)沙汰(さた)へ諸々方々(しよ〳〵ほう〴〵)にゆり出し  申候処めつほう也 火災(くわさい)の義(ぎ)は当卯十月二日夜ゟ  翌(よく)三日午の下刻迄と相定(あいさだめ)困窮(こんきう)人の義(ぎ)は難渋(なんじう)無住(むぢう)と  相きはめ只今御ほどこしとしてさつま芋三俵はしたにてたべ  申候御救之義は七ヶ所へ御 建(たて)じま 御恵(おんめぐみ)に《振り仮名:逢目嶋|あ□めじま》  可被下候事 一鹿島様 御法度(ごはつと)の義(ぎ)は申に不及お家(いへ)の八方(はつぽう)相 傾(かたむか)せ申間鋪候  若(もし)此者お台所(だいどころ)の女中方の寐息(ねいき)を考(かんが)へ内証(ないしやう)の地震(ぢしん)致候歟  又はゆり逃(にげ)壁落(かべおち)致候はゝ急度(きつと)したるかふばりの丸太を  以て早速らちあけ可申候 一 愁患(しうせう)の義は一蓮(いちれん)たく宗(しう)にて寺(てら)は夜中(よなか)ゆりあけ坂  道性寺(どうしやうじ)市中(しちう)まつぱたか騒動院(そうどういん)大火(たいくわ)に紛(まぎ)れ御座  なく候御 発動(はつどう)のゆりしたん宗(しう)にてはこれなく候  若(もし)物音(ものをと)がたつきひめわひより瓦(かはら)をふらし候義は  無之万一ゆりかへし等致候はゝ我等(われら)早速(さつそく)まがり出 要石(かなめいし)を  以(もつ)てぎうと押(をさ)へ付(つけ)野田(のでん)へ宿労(しゆくらう)さしかけ申間敷候 地震(ぢしん)の  たびゆつてむざんの如し                  半性大地割下(はんてうだいちわりげ)水    造作(そうさく)ざん年          家なしまご右衛門店     鹿嶋(かしま)の神無(かみな)月二日       つぶれやお出蔵                  どさくさほんくらないけんのん橋                   みじめや難十郎店         世並直四郎(よなみなほしらう)様          お小屋太助 【注 「揺」は「扌偏」を「土偏」に作る】