【書籍の左中央に若干の題箋の破片らしきものあり。「袋」の字の右側か。】 【資料整理ラベル】 721.8 TAC 《割書:日本近代教育史| 資料》 【右丁 白紙】 【手書き文字有り】森 【左丁】  絵本写宝袋(ゑほんしやほうぶくろ)二之巻目録 三天神之像(さんてんじんのざう)   三 戦神之像(せんじんのざう) 経津主命(ふつぬしのみこと)之像  武甕槌命(たけみかづちのみこと)之像 武将(ぶしやう)来由(らいゆ)之図  将軍(しやうぐん)由来(ゆらい)之図 武具(ぶぐ)冑(かぶと)之図   同 鎧(よろひ)胴(どう)之図 同 具足(ぐそく)之図   同 太刀(たち)再幣(さいはい)策(むち)等(とう)図 同 弓矢(きうし)之図   同 鼓(こ)貝(かい)旗(はた)幕(まく)之図 馬面(ばめん)鞍(くら)鐙(あぶみ)之図 馬櫪神(ばれきじん)之像 【右丁】 乗馬(じようめ)繋馬(つなぎむま)之図《割書:品々(しな〳〵)》腋楯之始(わいだてのはじめ)之図 高良明神玉垂(かうらみやうじんたまだれ)之図 神功皇后(じんごうくわうごう)之像 六孫王(ろくそんわう)経基(つねもと)之図  多田満仲(ただのまんぢう)之図 源頼光(みなもとのよりみつ)瑞夢(ずいむ)の図 頼光(らいくわう)大江山入(おほえやまいり)之図 渡辺綱(わたなべのつな)化生(けしやう)切(き)る図 源 頼信(よりのぶ)海渡(うみわたし)之図 源 頼義(よりよし)水請(みづこひ)之図  頼義(よりよし)《振り仮名:与_二武則_一|たけのりと》対面(たいめん)之図 【左丁】 【隅切囲みの中】士(し) 夫(それ)士農工商(しのうこうしやう)の四(よつ)を集(あつ)め是を図写(づしや)して四巻(よつのまき)となし其事を注(ちう)し采色(さいしき)を 付(ふ)す図(づ)するに士(し)は其 初(はじめ)なれは武門(ぶもん)の神(かみ)より武将(ぶしやう)勇士(ゆうし)軍器(ぐんき)馬事(ばじ)を連写(つらねうつ)す 【罫線あり】ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 【右から横書き】武(ぶ)門(もん)三(さん)天(てん)神(じん)像(ざう) 大 黒(こく)かみひげ白(しろ)      弁天(べんてん)かみくろ ごふんくま 同かき いれ      【三天神の像】 鉾(ほこ)紺(こん) うんけん       毘沙門(びしやもん)かみ朱(しゆ)ずみくま金泥かきいれ 【左丁 下部】 画工(くわこう)に三 天神(てんじん)の像(ざう) をゑかゝしめて武命(ぶめい) の守護(しゆご)に信敬(しんきやう)し給ふ 彩色(さいしき) 三 面(めん)六 臂(ひ)金 泥(でい) 冑(かぶと)金 朱(しゆ)こんうんけん 衣(ころも)六金わりもん袋(ふくろ)白(しろ) 帯(おひ)噛(かみ)金 石帯(いしのおび)金 錀(かぎ)宝 鉾(ほこ)金 槌(つち)金うんけん 宝珠(ほうしゆ)六こん朱(しゆ)うんけん 甲(よろい)のくさずりうんけん 板芥子(いたけし)うんけん 衣(も)すそ芥子(けし)六くさくま ごふんきほひはかま白(しろ) 俵(たわら)常(つね)のごとく 【右帖】 【枠内】三戦神之像(さんせんじんのざう) 【右帖右下】弓矢(ゆみや)打物鉾(うちものほこ)はやわざを守(まも)り給ふ神也            団(うちは)は大将軍配(たいしやうぐんばい)之(の)器物也(うつわものなり) 【右帖左上】 陽炎(やうゑん)に 大/事(じ) あり 【右帖左下】 豪豕(やまぶた) 棘豕(いばらぶた) 玄猪(おいのこ) 色灰黒(いろはいくろ)也 野猪(ゐのしゝ)に非(あら)ず豕(ぶた)也 【左帖】 【上部】 経津主像(ふつぬしのざう) 武甕槌像(たけみかづちのざう) 【同下部】 【枠内】本朝武神(ほんてうぶじん) 神代書(じんだいのしよ)に天御神(あまつおんがみ) 天孫(てんそん)を豊葦原(とよあしはら)の 中津国(なかつくに)に降(くださん)と欲(し給ふ)とき天稚彦(あめわかひこ)に勅(ちょくし) 曰(のたまはく)中津国に横思神(あしきかみ)有/汝(なんぢ)先(まづ)往(ゆき)て残賊(ちはやふる) 強暴不順神(きゃうぼうまつろはぬかみ)を平(たいらげ)よと曰(のたまひ)てすなわち 弓矢(ゆみや)を給ふ天稚彦(あめわかひこ)勅(ちょく)を受(うけ)て降(くだり)ける が不忠(ふちう)にして国神(くにつかみ)の女(むすめ)を娶(めとり)て国を押(おゝ) 領(れう)せんと欲(おもひ)不来報間(かへりことまうさゞること)八年に及(およ)ぶ果(はたし)て 天(あま)の返矢(かへしや)に中(あた)り立(たちどころに)死(し)す。其(中略)後/将(しやう)を撰(ゑらん)で 経津主(ふつぬし)の神(かみ)に将軍(しやうぐん)の勅(みことのり)ある時/武甕槌(たけみかづち)の 神/進(すゝん)て曰(まうさく)唯(たゞ)経津主(ふつぬしの)神/独(ひとり)丈夫(ますらお)にして吾(われ)は 丈夫にあらずや其 辞(ことば)■(いさぎよ)し故(かるがゆへ)に配(そへ)【別本による】て 降(くだ)し給ふ二神/授(さづけ)玉ふ天(あま)の広矛(ひろほこ)を以(も[つ])て 諸(もろ〳〵)の不順神鬼(まつろはぬかんたち)をこと〴〵く平(たいらげ)たまふ 是/本朝(ほんてう)武将(ぶしやう)のはじめなり 【早稲田大学図書館蔵の別本参照 https://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/bunko06/bunko06_01293/bunko06_01293_0002/bunko06_01293_0002.pdf】 【右丁 上段】 武士(ぶし)【左ルビ:、たけきものゝふ】【枠内】 武(ぶ)は勇剛(ゆうかう)にして仁義(じんぎ)有の 器(き)なり計(はかりこと)を帷幄(いあく)の中(うち)に廻(めぐら)し勝(かつ)ことを 千里(せんり)の外(ほか)に決(けつ)す朝下(てうか)の守(まも)り也/朝(てう)に 奉(つかへ)背(そむく)く者(もの)を退治(たいぢ)す古(むかし)道臣命(みちおんのみこと)日本(やまと) 武尊(たけのみこと)を武将(ぶしやう)とす其後/源(みなもと)の義家(よしいゑ) 頼朝(よりとも)これを次(つぐ) 【絵に対する注記、時計回りに】 筒釬(つゝごて) 尻鞘(しりさや) 踏込(ふんこみ)たび 鎧直垂(よろひゝたゝれ) 【同 下段】 将軍(しやうぐん)【枠内】大将(たいしやう)なり漢名(からな)元帥(げんすい) 将は才(さい)を以(もつ)て物(もの)を将(ひきゐ)るに之(これ)に勝(かつ)を将(しやう)と云 智(ち)を以て人を帥(ひきゐ)るに足(たつ)て之(これ)に先(さきだ)つ是を 帥(すい)と云国に在(ある)ときは大夫(たいふ)と称(しやう)じ軍(ぐん) に在(ある)ときは将軍(しやうぐん)と称(しやう)ず漢(から)にては韓信(かんしん) 本朝にては源(けん)九郎/義経(よしつね)也 【絵に対する注記、右から】 佩盾(はいだて) 臑当(すねあて) 牀兀(しやうぎ) 毛沓(けぐつ) 大口(おゝくち) 兵器(ひやうき)立物(たてもの)【枠内】 甲(かぶと)に龍頭(たつかしら)をゑかくは大将(たいしやう)斗也/龍(れう)は天子(てんし)の器物(きぶつ)等(とう)の飾(かさり)に用ゆ 大将は天子の勅命(ちよくめい)を蒙(かうふ)り朝敵(てうてき)を平(たいら)ぐ故に龍形(れうのかたち)を甲に免(ゆる) されて着(ちやく)す鎧(よろひ)の色は紫(むらさき)裳(すそ)紅(こう)角総(あけまき)紫を用ゆ是大将の主(つかさ)どる処(ところ)なり立 物は大/様(やう)猛獣(もうじう)の角(つの)を象(かたど)る凡(およそ)金色(きんしき)を用ゆるは人の眼(め)を迷(まよ)はす利用(りよう)なり 【枠内】龍頭冑図(たつかしらかふとのづ) くわがた金【図注右から】 たつがしら金 くわがた ふきかへし 【下へ】 【枠内】高角(たかつの) 金【右上から時計回り】 はち しころ ひしぬいのいた まびさし 吹返(ふきかへし) 鹿角(しかのつの)也 【下へ】 【枠内】天衝(つき) 金【右上から時計回り】 ふきかへし 牛角也 【左上へ】 淩王冑図(りやうわうのかぶとづ) 面金(めんきん) 髭(ひげ) 白(しろ) 或(あるひ)は甲に龍頭(たつかしら)を立て面彭(めんほう)を掛(かく)る事唐(もろこし) 淩王(れうわう)より始(はじむ)と也/淩(れい)王/賊(ぞく)と戦(たゝかひ)たまふ時/敵(てき)に 面(おもて)を見知られんことを恐れて面を懸(かけ)られしと 云り龍(れう)は天子の器(うつはもの)に用るところなりくわ形 を書(かく)ときは火焔(くわゑん)をかゝずくわがた本(もと)火(くわ)形か 【右丁】 【右上】            【右下】 鎧胴之図(よろひどうのづ)【枠内】     鎧(よろひ)の胴(どう)も具足同前       堯葉(げうやう) 正平革紋(しやうへいかはもん)《割書:三重菊(みゑきく)|三重/襷(たすき)》     なり前を革(かわ)にて包(つゝ)む           文革正(もんかわしやう)               其外色〳〵 綿(わた)         平革(へいかわ)也               品〳〵の紋有 噛(がみ)         是を弦(つる)               三重襷(みゑだすき)           はしり           といふ                                           前(まへ)を高紐(たかひも)と云         三/重(ゑ)の菊(きく)     綊障(けうしやう) 引合左合  後(うしろ)を捜(さぐり)といふ 【左上】            【左下】           真(さね)は     総(あげ)【枠内】    赤色(あかいろ) 真紅(しんく) 鎧(よろひ)         左 重(かさね)也    角(まき)        定色(ぢやうしき)也 紫は 袖(そて)                          禁(きん)色なり 大袖         菱(ひし)                 彩色(さいしき) 之下    櫛形(くしがた)  綴(ぬいの)                  朱塗(しゆぬり) 二三四        板(いた)                 丹(たん)に粉(ふん)を 五之 板(いた)  口伝(くでん)                      少くわへ は略(りやくす)_レ之   有  口伝                  組をかく             有                 小なる物は                      袖之緒      金でい 【左丁】 【右上】 筒(つつ)     鎧(よろひ)武者(むしや)は膚着(はだぎ)の上(うへ)に双釬(もろこて)を指(さし)背(せな)に鞐(こはぜ)あり前紐(まえひも)有 後(うしろ)を掛(かけ) 釬(こて)     前を結(むすふ)其上に錦(にしき)の鎧(よろひ)直垂(ひたゝれ)を着(き)鎖袴(くさりばかま)蹈込(ふんこみ)等(とう)を着(ちやく)し       扨 鎧(よろい)を着(ちやく)す流儀(りうぎ)ある事なれども画人(くわじん)の不用(もちひさる)事は略之(これをりやくす)        ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー       【枠内】鎧(よろひ)直垂(ひたれ)之(の)図(つ) 【枠内】筒腨当(つゝすねあて)図(つ)する所 左(ひだり)の方(はう)《割書:内|外》也                       さび色 双(もろ)【枠内】   地(ぢ)は錦(にしき)          又金 釬(こて) 筒(ツヽ)                          此 糸(いと)色こんもゑきむら 金(キン)    袖(そで)一 幅(はゞ)半(はん)                         さき 間(アイタ)は         色は 鉄(テツ)   纐(きく)        赤地(あかぢ) 鎖(クサリ)   纈(とぢの)        青(あを)地      総(ふさ)   袖括(そでくゝり)  紺(こん)地 比沙(びしや)            白(しろ)地       へぐり糸 門釬(もんこて)   又は菊封房(きくとぢのふさ)   木蘭色(もくらんじき)       色白 【右丁 右上段】 【隅切囲みの中】 龍頭(りうづ)         惣金(そうきん) 馬面(ばめん)           勢(せい)               揃(そろへ)に 頭(かしら)の毛(け)          用(もちゆ)   馬(むま)の                 尾(を)        朱(しゆ)のくま 【同 右下段】 【隅切囲みの中 右から横書き】 折(をり)     面(めん)朱漆(しゆうるし)ふち筋(すぢ)金箔(ばく) 馬(ば) 面(めん)          川越(かはごし)に             用(もち)ゆ        かしらに雞(にはとり)の        白(しろ)き尾(お)をうゆる ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 軍馬(ぐんば)に面(めん)をかくる事は敵(てき)の馬(むま)をおどすためなり折面(おりめん)は向(むか)ふにかけ引(ひく)にははづす ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 【同 左上段】 【隅切囲みの中】鞍(くら)               待(まち) 手掛(てかけ)は 平治(へいぢ)の軍(いくさ)の時(とき) 雪(ゆき)鞍(くら)に積(つ)み鎌田(かまだ) 正清(まさきよ)のりかねたり     手掛(てかけ) 悪源太(あくげんだ)手掛(てかけ)をせよとありしかは 正清 刀(かたな)を以(もつ)て手かけを付しとなり 【同 左下段】 【隅切囲みの中】 総(ふさ)𦃍(だすけ)       【隅切囲みの中】 鎖(くさり)𦃍(だすけ)        鐙(あぶみ) 【隅切囲みの中】 轡(くつわ)  承鞚(みづつき) 立聞          鉸具(かぐ) 【左丁】 【隅切囲みの中】 馬櫪神之像(はれきじんのざう) 【挿絵】 馬(むま)を守(まもり)給(たまふ)神(かみ)也 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 【標題 隅切囲み内】   乗馬(じようめ)繋馬(つなぎむま)之(の)図(づ) 品々(しな〴〵) 【右丁】 軍馬(ぐんば)《割書:いくさ|のむま》【隅切囲みの中】一 切(さい)にゑがく名所(なところ)多(おほ)しと 乗馬(じようめ)《割書:のり|むま》【隅切囲みの中】 いゑども事しげきゆへに              あらましをしるす ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 尾夾(をばさみ)  ろくせう 三頭(さんづ) 馬(ば) せん   【馬の絵】 柿色(かきいろ)         羊鬚(ようしゆ) 柑色(かうじいろ)         夜眼(やがん) 頭(づ) 巾(きん) 髪(かみ)   見張(みはり) 【同 下段】 装束馬(しやうぞくむま)【隅切囲みの中】《割書:総色(ふさいろ)|真紅(しんく)【左ルビ:しゆ】 萌黄(もへき)【左ルビ:ろくせう】紺(ふかはなだ)【左ルビ:こんせう】縹(はなだ)【左ルビ:こんじやう】》 《割書:牛馬(きうば)の飾(かさり)は右方にて|むすふ口取も右方也》 紫(むらさき)総は常(つね)にもちひず ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ■さんじやくなわ金 是は䋣(おもかい)の はづれぬ やうに かけし 物なり          纕はるび【注】白 【注 「「はらおび」の変化した語】 【左丁】 𩢻(しゆ)【左ルビ:あかむま】【隅切囲みの中】環眼(さめ)馬 馬舎(むまや)に養(やしなふ)て衆馬(しゆうば)の     凶災(わさわひ)を避(さくる)と云 吉相(きつさう)の馬(むま)なり 毛色(けいろ)白(しろう)してそこ薄赤(うすあか)し老(らう)馬に成程(なるほど) てる目の中 朱(しゆ)のごとく玉(たま)黒(くろ)く白きふち有 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー              枊(こう)よせばしら     首環(くびだま)     【馬の絵】   眼(め)口(くち)爪(つめ)              陰(ふくり)肉色(にくいろ) 瞳子(くろたま)の めぐりに 輪(わ)のごとく 白(しろ)きふち あるゆへ さめと云 【同 下段】 白馬(はくば)【左ルビ:しろむま】【隅切囲みの中】純白(しゆんはく) 青馬(あをむま) 駯騡(しゆせん)《割書:唇(くちひる)|黒(くろ)し》 彩色(さいしき)《割書:全体(せんたい)胡粉(ごふん)目(め)口(くち)爪(つめ)陰(ふぐり)あいろぐ|薄墨(うすずみ)くま》 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー              爪(つめ)薄黒(うすくろ)   【馬の絵】 【右丁 上段】 駱(らく)【左ルビ:かわらけ】【隅切囲みの中】河原毛(かわらげ)黄白(きしろく)して尾髪(をかみ)黒(くろ)し     沙馬(くろかわらげ) 栗色(くりいろ)と白毛(しろきけ)まぢる爪(つめ)計(ばかり)黒(くろ)し 加毛駱(かもかわらげ) 《割書:毛色(けいろ)常(つね)のごとし尾(を)の通(とを)り骨(ほね)筋(すぢ)に|黒(くろ)き毛(け)有 足(あし)爪(つめ)共に黒し》 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 采色(さいしき) 黄土(わうど)具(ぐ) 陽(ひおもて) ごふん   くま 陰(がけ)【ママ】  【馬の絵】 合黄土曲(あはせわうどくま) 尾(を)髪(かみ) うすゞみ くま こき墨 かきいれ 【同 下段】 驪(り)【左ルビ:くろむま】【隅切囲みの中】純黒(しゆんこく)【左ルビ:かつくろ】《割書:鉄驄(てつそう)は青緑(あをみどり) 鉄馬(てつば)は真黒(まくろ)|目(め)口(くち)爪(つめ)耳(みゝ)の中(うち)まで黒(くろ)し》     黒(くろ)くして耳(みゝ)の中(うち)赤(あか)きはひばりげに     通用(つうよう)す ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 采色(さいしき) 地すみ あいろ少 ごふん 合ぬり こきすみ にてくま とる    【馬の絵】 𩢻(しゆ) 白(はく) 驪(り) 右 三色(みいろ) 神馬(しんめ)に    用ゆ 【左丁 上段】 駩(せん)【左ルビ:つきけ】【隅切囲みの中】鵇毛《割書:つきげ》 彤(あか)【明ヵ】月毛(つきけ) 馼(ふん)《割書:かみあかき|つきげ》     騢(か)《割書:さはつきけ》 虎月毛(とらつきげ) 騡(せん)《割書:しろつきげ》 又 泥(どろつきけ)《割書:薄白(うすしろ)にして髪(かみ)尾(お)共に白(しろ)く|爪(つめ)計(ばかり)くろし右の毛(け)に少 薄(うす)し》 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 【馬の絵のみ】 【同 下段】 駂(はう)【左ルビ:うすげ】【隅切囲みの中】 糟毛(かすげ)白黒(しろくろ)雅?【雉の誤ヵ】毛也 灰色(はいいろ)   下 墨(すみ)具(ぐ)仕立(したて)うすゞみくま毛(け)がき   こきごふんかきいれ ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 【馬の絵】     爪(つめ)口(くち)くろし 【右丁 上段】 驒(たん)【左ルビ:れんせん】【隅切囲みの中】連銭驄(れんせんあしけ)【𩣭は俗字】 星驄(ほしあしげ) 黄驄(きあしげ) 虎驄(とらあしげ)     駰(いん)くろあしげ 牡驒(ほたんあしげ)は《割書:常(つね)の連銭(れんせん)の紋(もん)より大き成(なる)|もんなり》 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 尾鞱(をつゝみ) 馬褐(むまきぬ) 大帯(おほをび)  【馬の絵】 【同 下段】 驄(さう)【左ルビ:あしけ】【隅切囲みの中】葦毛(あしげ)  𩡰(あしげ) 青(あを)白(しろ)雑色(まぜいろ)なり     䮨(さい)《割書:しら|あしげ》白(しろ)く爪(つめ)口(くち)ともに黒(くろ)し 澇驄ごま【みは誤】あしげ白(しろく)して口(くち)足先(あしさき)くろし 胡麻驄《割書:ごま|あしけ》口(くち)爪(つめ)黒(くろ)し毛(け)は《割書:本くろく中|白末あかし》 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 猿木(さるき) 腹懸縄(はらかけなは)            【馬の絵】 平伏(へいふく)を 制(せい)する為(ため) 馬坊(むまや)の 上(うへ)なる 猿木(さるき)に 繋(つなぎ)上る 【左丁 上段】 騟(いよ)【左ルビ:くろくりげ】【隅切囲みの中】栗毛(くりけ) 𩥏(てう)《割書:くろく|りげ》緛(ちゝみ) 尉(ぜう) 姫(ひめ) 柑子(かうじ) 権田(ごんだ)     柴馬(しばくりげ) 驊馬(くわば)は《割書:紅梅(こうばい)くり毛|あるくりけなり》 騵(げん)は《割書:栗毛(くりけ)|はら白を云》 毛色(けいろ)《割書:鹿毛(かげ)より黒(くろ)みあり|真赤(まつかい)栗毛(くりげ)は足(あし)爪(つめ)はかり黒(くろ)し》 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー かやうに長きを    上 尾(お)の色 身(み)と同し 野髪(のがみ)とも 眼(め)かくし共云   髪(かみ)身色(みのいろ)に   同し  【馬の絵】  黒(くろ)し              爪(つめ)黒(くろ)し 仕立(したて)は焼黄土(やきわうど)ぬり 朱(しゆ)墨(すみ)くま目(め)爪(つめ)くろし 柴馬(しば)は生(しやう)ゑんじのくま有 【同 下段】 騮(りう)【左ルビ:かけ】【隅切囲みの中】鹿毛(かげ)赤身(しやくしん)黒鬣(こくりやう)浅黄(うすき)色なり     烏(う)は黒鹿毛(くろかけ) 驃(へう)は白鹿毛(しろかげ) 烏(くろ)馬 足(あし)黒く身(み)は栗(くり)色 觜(くち)少 赤(あか)し身(みの)色なり 鹿毛(かけ)栗毛(くりけ)同 姓(しやう)にして栗毛(くりげ)は黒(くろ)く鹿毛(かげ)は薄黄赤(うすきあか) ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 彩色(さいしき)黄土(わうど)   口(くち)少(すこし)赤(あかし) 朱(しゆ)墨(すみ)くま         墨(すみ) 同じく            くま 毛(け)がき      【馬の絵】                 爪(つめ)黒(くろ)し 【右丁】 【上段】 騝(けん)【左ルビ:ひばりけ】【隅切囲みの見出し】鶬毛(ひばりけ) 水騝(みづひばりげ) 背(せな)の毛(け)黄色(きいろ) 采色(さいしき)《割書:黄土(わうど)具(ぐ)朱(しゆ)墨(すみ)くま尾(お)髪(かみ)薄墨(うすゞみ)|くま こき墨(すみ)かきいれ》 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 脊梁(せきりやう)   【馬の絵】  鏡台骨(きやうだいほね)  鏡(かゝみ)の節(ふし)  爪(つめ)口(くち)黒(くろ)し 【下段】 駁(はく)【左ルビ:ぶち】【隅切囲みの見出し】斑馬(はんば)【左ルビ:まだら】 起雲馬(にげのむま) 髪白(かうはく)【左ルビ:かしらしろ】 馬臀白(ともしろ)    䭹(かう)馬(ば)《割書:腹(はら)白(しろ)なり》 蹄(てい)馬【左ルビ:よつじろ】《割書:爪白(つまじろ)なり》 馵馬(ちよば)は膝より上白也 四骹(しかう)【左ルビ:よつはぎ】は膝より下白なり ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 眼(め)口(くち)爪(つめ) 黒(くろ)し 毛(け)色は 黒(くろ)と白(しろ)と 栗(くり)と白と      【馬の絵】  鬣(たちがみ)  とりかみ  たつなかみ   此間を    小松原(こまつはら)といふ 【左丁】 【上段】 雒(らく)【左ルビ:かみしろ】【隅切囲みの見出し】  黒身白(こくしんはく)鬣(れう)【左ルビ:たてかみ】なり 総【惣】じて馬くろき下ごふんにすみをくわへぬる したてすみぐま馬の毛色一やうならず さま〴〵有しるすにいとまあらず ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 【馬の絵】 【下段】 䮕(せつ)【隅切囲みの見出し】 額(ひたい)白(しろ) 䮤(かく)  𩧏(かく) 馰(てき) 駹(ほう)              戴星(つきひたい) 的盧準(つきひたい)              流顙(りうさう)《割書:ながれびたい》【桑+隹は誤】  毛色(けいろ)は《割書:黒色(くろいろ)|栗色(くりいろ)》 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー               眼(め)藍(あい)具(く)               口(くち)爪(つめ)くろし         【馬の絵】 立髪(たてがみ) ゆふ数(かず) 二十八 又は卅六 とも云 【右丁】 【隅切囲みの中】 《題:武将勇士之図》 【罫線あり】ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 腋盾始(わいだてのはじめ)【隅切囲みの中】神功皇后(じんごうくわうがう)《割書:諱(いみな)は気長足姫尊(いきながたらしひめのみこと)と申奉る開化帝(かいくわてい)の|曽孫(ぞうそん)仲哀天皇(ちうあいてんわう)の后(きさき)なり》 仲哀天皇(ちうあいてんわう)崩御(ほうぎよ)の後(のち)住吉(すみよし)大明神の御つげによりて皇后(くわうがう)みづから 三韓(さんかん)を討(うち)たまふ其時(そのとき)応神天皇(おうじんてんわう)御懐胎(ごくわいたい)にてまし〳〵御 鎧(よろひ)の ひきあわせあきてあやふく見へさせたまふゆへ武内大臣(たけのうちのおとゞ)鎧(よろひ)の くさずりを切(きつ)てあきまをふさがれしよりわいだてといふ事 始(はしまり) しとなり皇后(くわうかう)をば香椎(かしい)大明神とあがめ奉る武内(たけのうち)は高良(かうらの)明神也 【左丁 挿絵中の文字】 武内大臣(たけのうちだいじん) 【右丁】 【隅切囲みの中】高良明神(かうらみやうじん)玉垂命(たまたれのみこと) 神功皇后(じんこうくわうがう)三 韓(かん)にせめ入 たまふ時 龍宮(りうぐう)よりさゝげし 潮満珠(しほみつたま)をなげたまへば うしほわきて敵(てき)の軍兵(ぐんひやう) しほにおほれうせし ゆへ皇后(くわうがう)軍(いくさ)にかち たまふ                朱   六こんくま     朱 これ ひとへに 干満(かんまん)の珠(たま)の  白 徳(とく)なり              白 【左丁】 【隅切囲みの中】神功皇后(じんぐうくわうごう) 三韓(さんかん)の軍(いくさ)に勝(かち) たまふとき 弰(ゆはづ)にて 大石(たいせき)に 文字(もんじ)を 書(かき)たまふ 図(づ) 【挿絵中の文字】 よろひゑんじぐ 生ゑんじくま 金でいけがき こんじの にしき もん金 国王 大口(おゝくち)赤地(あかぢ)の錦(にしき) 【右丁】 源経基王(みなもとのつねもとのおゝきみ)【隅切囲みの中】承平(しやうへい)二年 秋(あき)の比(ころ)鳳闕(ほうけつ)の築山(つきやま)にいづく共なく 大きなる牡鹿(をしか)一 疋(ひき)躍(おどり)出 玉体(ごよくたい)をめがけ飛(とび)かゝらんとす有合(ありあふ)所の 殿上(てんじやう) 人 剣(つるぎ)を以(もつ)て払(はらひ)給(たま)へば御殿(ごてん)の棟(むね)に飛上(とびあが)り皇居(くわうきよ)をにらんで 居(ゐ)たるけしき眼玉(まなこのたま)朱(しゆ)のごとく口(くち)は耳根(みゝのね)までさけ上下の牙(きば)生違(おひちがひ) すさまし共 云(いふ)計(はかり)なし経基(つねもと)鏑矢(かぶらや)打番(うちつがひ)忽(たちまち)彼(かの)鹿(しか)を射落(いおと)し給ふ 【挿絵あり】 【左丁 左下】 鏑(かぶら)は合(あわせ)物 にて中(あたる)とくだ け散(ちる)ゆへ中矢(あたりや) にかぶらを 画(かゝ)す 【挿絵中の文字】 六せう金もん 小袖(こそて)白無地(しろむじ)        ふぢ色 無紋(むもん) 【右丁】 源満仲(みなもとのまんぢう)【隅切囲みの中】抑(そも〳〵)此 満仲(みつなか)ときこへさせ給ふは古今(ここん)の名将(めいしやう)仁(じん) 義(ぎ)の賢君(けんくん)なり其先(そのさき)は忝(かたじけなく)も 清和天皇(せいわてんわう)の皇子(わうじ)貞純(さだずみ)親(しん) 王(わう)の御子 鎮守府(ちんじゆふの)将軍(しやうぐん)六孫王(ろくそんわう)経基(つねもと)の嫡男(ちやくなん)也 朝廷(てうてい)を重(おも)んし 民(たみ)を憐(あわれ)みたまふ事 一子(いつし)のごとし此時 世(よ)初(はしめ)て治(おさま)れり 適々(たま〳〵)悪逆(あくぎやく)の人あれども本意(ほんい)を遂(とぐ)る事 不叶(かなはず)源家(げんけ) 栄(さかへ)天下 泰平(たいへい)なり神社(じんじや)仏閣(ぶつかく)を建立(こんりう)し給ふ事かぞへ がたし或時(あるとき)は夢中(むちう)に龍女(りうによ)来て龍馬(りうめ)を奉り住吉(すみよし)に 参籠(さんろう)ありて神鏑(かんかぶらや)を発(はなち)て大 蛇(じや)を退治(たいぢ)し居地(きよち)を得(ゑ) たまふ鬚切(ひげきり)膝丸(ひざまる)の霊剣(れいけん)は源氏累代(げんじるいたい)の重宝(ちやうほう)なり 曽(かつ)て自身(じしん)の像(ざう)を割(きざん)で末代(まつだい)弓矢(ゆみや)の守護神(しゆごじん)たるべしと 自作(しさく)の御 貌(かたち)を抄(せう)し給ふと也 彼(かの)龍女(りうによ)来て龍馬(りうめ)を 奉りし所を左に図す 【左丁】 満仲(みつなか)朝臣(あそん)領所(りやうしよ)津国(つのくに)のせの辺(ほとり)に 入り猟(かり)し遊(あそ)び給ふ事四五日也 有 夜(よ)女 来(きた)り御 前(まへ)にありいか なる者(もの)ぞと御 尋(たづね)あるにさん候 我(われ)は龍女(りうによ)なるが仇(あた)の候かれを 退治(たいぢ)ありてわれを たすけたまへと申 則(すなはち)満仲(まんぢう)許容(きよよう)あり しかば女よろこび 龍馬(りうめ)一 疋(ひき)引(ひく)と思(おぼし) 召 御 夢(ゆめ)覚(さめ)てあたり を御覧(こらん)ずれ ばまことに 常(つね)ならぬ馬 一 疋(ひき)ありしと也 【挿絵中の文字】 龍女(りうによ) 【右丁】 源頼光(もなもとのらいくわう)【隅切囲みの中】夢中(むちう)に抍花(せうくわ)女(ぢよ)より 弓矢(ゆみや)の大 事(じ)を得(ゑ)たまふ 蛇(じや)頭弓 一 張(はり) 水破(すいは)《割書:黒(くろ)き鷲(わし)の羽(は)にてはぎたる箭(や)也》 兵破(へいは)《割書:山鳥(やまどり)の尾(お)にてはぎたる箭(や)也》 雷上動(らいじやうどう)は鏑(かぶら)の名(な)鳴音(なるおと) 雷(いかづち)の如(ごと)し 故(かるかゆへ)に名(な)あり 葉早黄(はつもみぢ)色の直垂(ひたゝれ) 右 長男(ちやうなん)頼国(よりくに)相伝(さうでん)す 後(のち)五代之 孫(まご)源 頼政(よりまさ) に至(いた)り暗夜(あんや)に化鳥(けてう) を射(い)たりしも此 弓矢(ゆみや)の徳(とく)也 【挿絵中の文字】 頼光(らいくわう) 【左丁】 抍花(せうくわ)女 弓矢(ゆみや)を 伝(つた)へたまふ所 【右丁】 源頼光(みなもとのらいくはう)【隅切囲みの中】永延(ゑいゑん)二年の秋(あき)頼光(よりみつ)朝臣(あそん)しきりに御 睡(ねふ)りさし 出給ふところに空中(くうちう)より蔭(かげ)のごとくなる者(もの)下り立御 覧(らん)ずるに 端正(たんしやう)美麗(びれい)の女 手(て)に弓矢(ゆみや)をたづさへ我(われ)は唐土(たうど)養由基(ようゆうき)が女(むすめ) 抍花(せうくわ)と申 女(おんな)なり我 父(ちゝ)より弓矢(ゆみや)の秘決(ひけつ)を得(ゑ)たり是を末代(まつだい) に伝(つたへ)んことを欲(おも)ふ我 弟子(でし)を尋(たづぬ)る所に足下(そくか)器量(きりやう)ありみづからが 術(じゆつ)を授(さづく)る也と云て去(さ)りぬ夢(ゆめ)さめて見給へは弓矢 直垂(ひたゝれ)有 是より射芸(しやげい)天下に双(ならぶ)人なし其後 丹州(たんしう)千丈嶽(せんぢやうがだけ)に鬼神(きじん)住(すみ) て万民(ばんみん)をなやます頼光(らいくわう)武(ぶ)に長じ給ふゆへ 禁裏(きんり)に召(めし)て 鬼神退治(きじんたいぢ)の宣旨(せんじ)下りしかば先(まづ)住吉(すみよし)八幡(やわた)熊野(くまの)三 所(しよ)に祈誓(きせい) し主従(しう〴〵)六人 山伏(やまぶし)のかたちとなり征罰(せいばつ)ある深山(しんさん)すでに道(みち)絶(たへ) たりいかゞせんとのたまふ所へ其さま異(こと)なる者(もの)三人来りしかば 山路(やまぢ)の案内(あんない)をたづね給ふ彼(かの)者(もの)申やうしろし召ぬこそ理(ことは)りなれ我等(われら) 道(みち)しるべしてまいらせんと人々をともなひ峯(みね)を越(こ)へ谷(たに)を渡(わた)りて其(その)のち 人々に申やう此山 蔭(かげ)に我(われ)らがあばら屋の候御入候てつかれをやすめ 【左丁】 られ候へと人々をしやうじ様々 にもてなしまいらせ一人申様 人々のけしきつねならぬ 人なりされば申べき事有 是よりおく千 丈(ちやう)がだけと 申に鬼神(きしん)有方々 我等が申ごとくに したまはゞ鬼神(きじん)たい ぢ心のまゝなるべし 鬼畜(きちく)は本(もと)より酒を 好(この)むかれは酒をのむ こと法(ほふ)に過(すぎ)たりと いふ其時 甲(かふと)てうし 酒を取出し此酒を 此てうしにてもりたまへ ゑひふしたる時此かぶとの はちをいたゞきたいぢある べし 【右丁】 【隅切囲みの中】山入之図(やまいりのづ) いざこなたへ      と 【左丁】 又うちつれて なを山ふかく 入にけり 【両丁絵画のみ】 【右丁】 渡辺綱(わたなべのつな)【隅切囲みの中】図(づ)するは天延(てんゑん)四年四月十日の夜(よ)頼光(らいくわう)の 御 使(つかひ)に一 条(でう)大宮(おゝみや)へ罷(まか)る夜(よ)更(ふけ)ぬれば道(みち)の程(ほど)用心(ようじん)の ため御 太刀(たち)鬚切(ひげきり)をはかせらるかくて一 条(でう)堀河(ほりかは)の 戻橋(もとりばし)にてあやしき女に行逢(ゆきあふ)おんななれ〳〵しく われは五 条(でう)わたりまで行者(ゆくもの)なりおくりてたび なんやといふ綱(つな)くせ者(もの)と思(おも)ひ馬(むま)より飛下(とびおり)安(やす)き 御事此 馬(むま)に召せとかきのせ行道(ゆくみち)にて彼(かの)おんな 恐(おそろ)しき鬼(おに)となり綱(つな)が髪(もとゞ)りつかんで提(ひつさげ)行(ゆく)綱(つな)は さはがず鬚切(ひげきり)を颯(さつ)と抜(ぬき)空様(そらさま)に鬼(おに)が手(て)をふつと切(きる) 化生(けしやう)は行(ゆき)がた知らずなりにけり 【左丁】 【左側上部】 鬼女(きぢよ) 墨肉色(すみにくいろ) 髪(かみ)ひげ 胡粉(ごふん)打(うち)きせ 朱(しゆ)くま金でいちらしもやう 【左側下部】 すわう白と    こんと のしめ  緑(ろく)と白と 【挿絵中】 鹿毛(かげ) 【右丁】 【上部 右から横書き】 源(みなもとの)頼(より)信(のぶ)海(うみ)渡(わたし)図(づ) 【下部】 浦(うら)人 海(うみ)の 浅瀬(あさせ)を申 上るてい 【左丁】 【上部 右から横書き】 千(ち)葉(ば)之(の)城(しろ) 【左 下部】 此 ̄ノ-国ハ平 ̄ラノ忠-常 ̄カ本国下- 総 ̄ノ之本-城-也要-害無-双 ̄ノ 城 ̄ニテ海-上卅‐里面 ̄テ廿-余- 町渡 ̄ルニ無_レ船頼-信満 ̄チ湖 ̄ノ之 時察 ̄シテ_二敵 ̄ノ-之油断 ̄ヲ_一自(ミヅカラ)先駆 ̄ス 五-万 ̄ノ味-方続 ̄テ-渡 ̄ル忠-常防 ̄ク- 方 ̄タ無 ̄クシテ而終 ̄ニ降 ̄リ病死 ̄ス 【挿絵中の文字】 砂子(スナゴ)   金 【右丁】 源頼信(みなもとのよりのぶ)【隅切囲みの中】 平忠常(たいらのたゞつね)謀叛(むほん)し下総(しもふさ)に城(しろ)をかまへてたて籠(こも)る頼信(よりのぶ) 勅命(ちよくめい)をかうふり向(むか)ひ給ふ此 城(しろ)後(うしろ)は高山(かうさん)前(まへ)は海上(かいしやう)卅 里(り)海(うみ)の面(おもて) 廿 余(よ)町 要害(ようがい)無双(ぶさう)なり其上(そのうへ)忠常(たゞつね)浦々(うら〳〵)の舟(ふね)共を取かくす源氏(けんじ)渡(わたす) べきやうなかりし所に頼信 浅瀬(あさせ)を尋(たつね)知(しつ)て満潮(みちしほ)の最中(さいちう)に馬を進(すゝ)め たまふ諸卒(しよそつ)如何(いかゞ)と申しかは大 将(しやう)の給ふやう干(ひ)かたには敵(てき)も用心(ようじん)す べし今みち潮(しほ)の時よせたらんこそとて先駆(さきがけ)して渡(わた)し給へは御方(みかた) 五万 余騎(よき)つゞいて渡(わた)り終(つい)に忠常(たゞつね)をほろぼしたまふとなり 【罫線あり】ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 源頼義(みなもとのよりよし)【隅切囲みの中】 奥州(おうしう)安倍頼時(あべのよりとき)と戦(たゝかひ)たまふ比(ころ)は水無月(みなづき)七日さらで だに炎天(ゑんてん)しのぎがたきに数日(すじつ)雨(あめ)ふらず水(みづ)つき士卒(しそつ)渇(かつ)にたへ かね既(すで)にあやうかりしかば頼義(よりよし)諸天(しよてん)にちかつて水(みづ)をこひ弓弰(ゆはづ)を 以(もつ)てあたりの岸(きし)をうがち給ひしかば燃(もゆ)るがごときの岩間(いわま)より 浄水(じやうすい)にはかに涌(わき)出たり諸卒(しよそつ)此水を飲(のん)で渇(かわき)をうるほし是天の 助(たすけ)なりと勇(いさみ)進(すゝん)で打て出 終(つい)に敵(てき)を追(おひ)かへしけるとなり 【左丁】 源頼義(みなもとのよりよし)【隅切囲みの中】水請(みづこひ)之図(のづ) あいしらい 軍勢(ぐんぜい)少々(せう〳〵) 馬(むま) 旗(はた) 山(やま) かゝり 松(まつ)など あるべし 【右丁】          宦軍(くわんぐん)三千 余騎(よき) 鎮守府将軍(ちんじゆふのしやうぐん)     源(みなもとの)     頼義(よりよし)      奥州(おうしう)栗原郡(くりはらのこほり)営(たむろ)が岡(をか)      にて両将(りやうしやう)会合(くわいがふ)の所 【左丁】      此 営(たむろ)が岡(をか)は昔時(そのかみ)   清原武則(きよはらのたけのり)      坂上田村麻呂(さかのうへのたむらまろ)蝦夷(かい)を      征(せい)する日(とき)此 所(ところ)にて      軍士(ぐんし)を支(そろへ)整(とゝの)ふ      故(ゆへ)に営 ̄か岡といふ      其 佳例(かれい)に任(まか)せ      此所にて対面(たいめん)し      たまふ     兜鍪(トツハイ)金 泥(デイ)       加勢(かせい)一 万余騎(まんよき) 【右丁】   清原武則(きよはらのたけのり)与【注】 鎮守府(ちんしゆふの)将軍(しやうぐん)源頼義(みなもとのよりよしと)会合(くわいがふ)の事 天喜(てんき)五年の冬(ふゆ)源頼義(みなもとのよりよし)は官軍(くわんぐん)千八百 余騎(よき)にて安倍貞任(あべのさだたふ)が四 千 余騎(よき)と奥州(おうしう)鳥海(とりのうみ)にて戦(たゝかひ)給ふおりふし寒風(かんふう)烈(はげし)く降雪(ふるゆき) 道(みち)を隠(かく)し往来(わうらい)も絶(たへ)て日数(ひかず)を過(すご)しければ御方(みかた)兵粮(ひやうらう)尽(つき)精力(せいりき) 労(つか)れて戦(たゝかひ)利(り)あらず主従(しう〴〵)僅(わづか)に七 騎(き)と成(なつ)て漸々(やう〳〵)鎮守府(ちんじゆふ)に 帰(かへ)り給ふ其後 出羽国(ではのくに)清原真人(きよはらのまつと)武則(たけのり)に加勢(かせい)をこひ給ふ武則(たけのり) 子細(しさい)なく領掌(りやうじやう)して其勢(そのせい)一万 余騎(よき)を引率(いんぞつ)し当国(たうごく)栗原郡(くりはらこほり) 営(たむろ)が岡(をか)にて将軍(しやうぐん)と会合(くわいがふ)あり先(まづ)此(こゝ)にて諸陣(しよぢん)の押領使(おうりやうし)を定(さだ)め らる其時 武則(たけのり)皇城(くわうじやう)を拝(はい)し天地(てんち)に誓(ちか)ひ臣(しん)既(すで)に子弟(してい)を発(はつ)し 将軍(しやうぐん)の命(めい)に応(おう)ず志(こゝろざ)し節(せつ)を立(たつ)るに在(あ)り身(み)を殺(ころ)すことを顧(かへりみ)ず と至信(ししん)を尽(つくし)申けり諸軍勢(しよぐんぜい)是を聞(きゝ)感涙(かんるい)を流(なが)さずといふ者(もの)なし それより頼義(よりよし)と力(ちから)を合(あわ)せ武略(ふりやく)戦功(せんこう)をはげまし終(つい)に貞任(さだゝふ)宗任(むねたふ) をほろぼしたまふ于時(ときに)康平(こうへい)五年八月九日なり  終 【注 「与」は「と」と読み「ともに」の意。】 【早稲田大学図書館蔵の別本参照。https://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/bunko06/bunko06_01293/bunko06_01293_0002/bunko06_01293_0002.pdf】 【左丁 白紙】 【裏表紙】