【表紙】    五級 【【見返し】 小学読本 【左丁】   例言 一此編は、小学初等科生徒の為に設けたるもの  なり、課業の都合によりて、一課を二度又は三  度に授くるも妨げなし、こは全く教師の斟酌  によるべし、 一文中の字面は、雅俗を択ばず、日用切近を旨と  して、易きを先にし、難きを後にす、是生徒学力  の浅深をはかりてなり、 一第一巻より、第三巻まで、単語を毎課の始めに  揚げたるものは、生徒をして先づこれを誦記 【右丁】  し、その文の講習にのぞみて、覚り易からしめ  んか為めなり、 一単語は、その初出の処にのみ出たして、余は皆  これを略す、音義の異なるもの、並びに熟字成  語等に至りては、既に掲げたる文字といへど  も、重ねてこれを挙ぐるものあり、 一第四巻より、生徒のさとりやすき喩へごと、ま  たは古人の美談教戒等を掲げて、以て漸く中  等科に入るべき地歩をなす、   明治十六年九月      編者誌 【左丁】 小学読本巻一《割書:初等科》     原 亮策纂述  第一課   処。足。歩。道。 とほき処に ゆくに ひと足づゝ 歩みをは こびて やまざれば いつしか そこにいた るべし をしへの道も  またかくのごとし  第二課   男子女学。 男子も女 子も も のよみ てならひ す かし こに そ ろばんを 学ふもあり  こゝに ゑをかくも あり   第三課    画。字。必用。 このほんには 画あり  かのほんには 字あ り ゑは ものをおぼ ゆるに たよりよく 字は ことをしるに 必用なり  第四課   向。正。問。答。 ほんに向はゞ 正しく よめ をしへあらば つゝしみてきけ 問は ゞ 答ふべし とはず は いふことなかれ  第五課   頭。天。方。地。 頭のかたを 天といひ  あしの方を 地とい ふ 天のおほきさは きはまりなく 地のひ ろさは かぎりあり  第六課   東。西。南。北。 ひのいづる方を 東と いひ ひのいる方を 西といふ あさひに向 ひて みぎの方を 南 といひ ひだりの方を  北といふ  第七課   日。時。朝。夕。 にはとりは とぐらに やどり 日は 西に  いらんとす この時は  朝なりや はた夕な りや  第八課   鳥。寐。人。家。 あさを あしたともい ひ ゆふを ゆふべと もいふ あしたには 鳥 寐ぐらをいで ゆ ふべには 人 家にか へる  第九課   昼。夜。年。月。 日のあるうちを 昼と いひ 日のいりたるの  ちを 夜といふ 一昼 夜は 二十四時にして  いち年は 十二か月 なり  第十課   春。夏。秋。冬。 一年のうち 春は あ たたかに 夏は あつ く 秋は すヾしく 冬は さむし これを 四きといふ  第十一課   晴。空。虹。必。 あめ晴れ 日いつる時  空にう つるもの を 虹と いふ 朝 は かな らず西に みえ 夕は 必ず東に あらはる  第十二課   水。雪。塩。氷。 水とこほりとは いづ れか さむく 雪と塩 とは いづれか しろ き 氷は みづよりも  さむく 雪は しほ よりも しろし  第十三課   差。寒暖計。 きのふは さむく け ふは あたヽかなり きのふとけふと なに ほどの差ひありや 寒 暖計をみよ  第十四課   雲。雨。傘。蓑。 雲いでゝ 雨をふらし  あめこほりて 雪と なる 雨には 傘をさ し ゆきには 蓑をき るをよしとす  第十五課   朽。賢。思。勉。 かしこき人とならんか  おろかなるものにて  朽ちはてんか 賢き 人とならんと思はゞ 勉めてまなべ  第十六課   烈。風。万事。 あめ烈しとも いこふ ことなかれ 風つよしと も やすむことなかれ 雨 かぜをいとひては 万 事なりがたし  第十七課   事。幾。深。何。 むづかしき事に あは ゞ 幾たびも おもふ べし おもふこと 深き ときは 何ごとも と げぬことなし  第十八課   凧。羽根。高。 男子は 凧をあげ 女 子は 羽根をつく た こは 空にのぼりて ひヾき 羽根ハ 高く はづみて とぶ  第十九課   独楽。鞠。手。 独楽は 男子のも てあそび にして まりは 女子のな ぐさみものなり 鞠は  手にてつき こまは  ひもにて まはす  第二十課   犬。雞。獣。劣。 犬は 夜をまもり 雞 は あしたを つかさ どる 人として なす ことなくば とり獣に も 劣るべし  第二十一課   猫。牛。馬。荷 猫と犬とを かひ 牛 と馬とを やしなふ 牛は くるまをひき  おも荷をおひ 馬は 人をのせて よくとほ き処にゆく  第二十二課   山。谷。間。常。 山は 地のたかき処に して 谷は 山と山と の間なり 高き山に は 常に雪あり ふか き谷には おほかた水 あり  第二十三課   海。陸。川。池。 水の ひろくして 大 なるを 海といひ 陸 をなかるゝを 川とい ひ 水の たまりて ながれぬを 池といふ  第二十四課   泉。末。始。積。 泉は 地よりわき な がれて 川となり 末 は 海にいる その始 めは ひとしづくの水 なるも 積りつもれば  かくのごとし  第二十五課     雁。鴨。大。小。鴈 池にあそぶは なにぞ  雁なりや はた鴨な りや めとをと おの 〳〵四つあり をとり は 大きくして めと りは 小さし   第二十六課   遥。沖。帆。舩。 遥なる 沖のあなたに  しろき帆のみゆるあ り なにゆゑに 帆の みみえて 船のみえざ るにや  第二十七課   帆影。形。半。 見よ さきの帆影は やうやく 大きくなり て 船の形も 半は 水のおもに あらはれ たり こはまた何のゆ ゑなりや  第二十八課   貝。蛤。灰。壁 貝のたぐひは しなお ほし あさり 蛤 あ はび あか貝などあり  そのからをやきて 灰とし 壁をぬり ま たくすりに もちふ  第二十九課   生。産。鯉。鯛。 うをには  川に生 ずるもの あり 海 に産するものあり 鯉  ふななどは 川に生 じ 鯛 ひらめなどは  うみに産す  第三十課   樹。猟《振り仮名:。|【ママ】》師。他。 鳥あり 樹にと ゞまり て なけり 猟師これ をうたんとて ちかよ りしに 鳥は はや 他のこすゑに うつり たり  第三十一課   蕾。花。桃。実。 このえだに あかき蕾 あり こは何の花そ 桃の花なり この花を  をるべからず ちり て後 実をむすぶことを おもへ  第三十二課   木綿。製。用。 木綿は はたな【にヵ】う 【ゝヵ】る ものま【にヵ】て 実よりわた をとり つむぎて さ ま〴〵のおりものを製す  その用 きはめてひ ろし  第三十三課   材木。杉。樅。 材木のうち その用お ほきは 松 杉 樅 ひのきのるゐにて 家 をつくるには おほか た このしな〴〵をもち ふ  第三十四課   石。柱。瓦。土。 家をたつるには 石を すゑ 柱をたて やね をふき 瓦をおく は しらは 木をけづり 瓦は 土をやきて つ くるなり  第三十五課   煉瓦。大。小。 煉瓦は もと小さきも のなれと つみかさぬ れば 大きなる家とな る 小より大をなすと いふこと これをみてし るべし  第三十六課   仕事。勉強。 朝は 仕事をはじむる 時なれば 人々 こと に勉強すべし 朝のま に おこたるときは 一日の仕事 なりがた し  第三十七課   成就。本。覚。 何事も つとむるを 本とす つとめざれば  成就することなし 覚 えゝたる事は こゝろ にとゞめて わするな かれ  第三十八課   教師。告。忘。 教師は 人のたづぬる ことをゝしふ しらぬこ とあらば つゝしみて  たつぬべし 告げら れし事は こゝろに忘 るべからず  第三十九課   身。業。先。体。 人は つ ねに身を うごかし  業をは げむを 先とす 身をうごかせば 体す こやかに 業をはげめ ば 家さかゆ  第四十課   或。鞾。■【傷の誤】。後。 はしれば つまづくも 【右丁】 のなり 或は 鞾をそ こね 身を傷めて 人 に後るゝことあり しづ かにあゆむべし      《割書:巻 ■【菱ヵ】潭書|松本楓湖書》 小学読本巻一《割書:終》 【左丁】 明治十五年十二月廿五日版権免許 明治十七年十一月十七日再版御届《割書:定価金八銭|》      纂述人《振り仮名: 原 |東京府士族》亮䇿【策ヵ】           《割書:日本橋区本町三丁目|十七番地》       出版人《振り仮名: 原 |同    》亮三郎【印 金港堂發兌證】           《割書:同本町三丁目十七番地|》      発売所《割書:東京 大阪|兵庫 岐阜》金港堂 【白紙】 【裏表紙】 栃木県下都賀郡    北武井村    田名細元一郎      網