《割書:阿部|清明》見通占 天明二寅 見通占 すんしうあべ川の 川かみに清右衛門と いふものありとし〴〵 江戸へちやあきないに 来るしやうぶなしんたいなりて ふそくもなけれどもしにせたる 江戸あきないなればむすこの 清兵へにわたしとんやむきは いふにおよばすすこしのとくい さきもしんちやひとふくろづゝ すねんのかうしやくなれば ぬけめなくいゝつけしたく させてくだしけり ぢよさいは ござり ませぬ ずいぶん はやくかへら しやれ 清兵へは おやぢの とうちう した しぶんとは ちがい さんど がさが かま ぼこ なり かわの ひき はごが【?】 きんの どう がね づくり されとも しやう とく【生得】 じよ さいの なき もの にて なん でも かでも やりて みれども けいこした 事もなし とりゑには【?】 よいむさし【?】 でもありはでも【?】 とぶ風とのでも【?】 ついにした事も なしこればつ かりはちゝも あんしねども【こればっかりは父も案じねども】 江戸のにぎやかな とこかへかねをとりに よこせばくちの すくなるほど いゝつけられつがも ないそこに ちよさいのある【?】 ものか江戸へも もふ二三ども でたからやるもん しやあござり ませぬさりとわ どらなどうつ ものゝとふした ものじや□つかふ【?】 わからぬと【?】 かふまんにてくだる【?】 あしたか山や ふじのたかね ヤア ト ハア おやぢの だいから じやうやどの さのやと いふにとまり にわにむめ さくらまつの はち うへか あればこのていしゆも おふちやくものよい ぢふさまがとまつたなら たいてあたらせ□に むめだゑつちうに【?】 さくらんと する つもりて あらふとなしくおもひ【?】 すこしなふるつもりにて ごていしゆさんよいはち うへでござりますと いへばいつしゆなさり ませといわれこまり はてけれともしらぬと いふ事がきらいにて むめはとぶとくちの うちにていへば めでたいうたが うけたまはりたいと のぞまれすこし こくひをかたげ むめはとはず さくらもかれぬ よのなかになにとて まつはうれしかるらんと よみければていしゆも ぬからぬかほにて これは お□きなさつた 女ぼうよろこべ めでたいうたじやと いふ おどろき いりました わたくし などはは やり □ も できませぬ 清兵へ 江戸の とんや に とふ りうし て とく いば を ま わり ずいふんかたく事□ さけはひとくちも のます しはいを 一日 見るひまもなく せめて□ふむさを【?】 しまい くにへ の はなしのたね らかんさまへは まいりたく おもひ みせにて わかい 【二、三行かすれ】 はなし けれは おまへの よふに ぜに ばかり ほし かり 江戸へ ゆさんも せずにかへる ものが あるもの かと いへども すこしの ひまもおしみ【?】 こんどは どふした ものか □□□□ □□もあいといふ やまへいつていつはい のみやせふ□ □ 太夫が ゑらい もんで ござり ます おちやつけを あけませふ □□□ ふたに【?】 たのみ【?】 ます【?】 やふ〳〵ととんやのてたいに すゝめられふかかわのあさめし【すゝめられ深川の朝飯】 じぶん八まんへまいりすさきの【時分、八幡へ参り洲崎の】 へんてんかららかんじへゆき【弁天から羅漢寺へ行き】 かめいとのてんじん梅やしきは【亀戸の天神梅屋敷は】 梅のなつているところ むめほしにしたらばいくたる【梅干しにしたら幾樽】 あろふとそんな事ばかり いふてあきはみめくりへ来り【言ふて秋葉三囲へ来り】 こゝはきかくがあまごいの【こゝは其角が雨乞いの】 くをしたる所と聞きつたへて【句をしたる所と聞き伝へて】 やたてをいだしみめくりの【矢立を出し三囲の】 とてにてほとゝきすをきゝ【土手にてホトトギスを聞き】 はべりて「みめぐりや どてのうへにて ほとゝきすと まいがきも ほつくも おなし事にて むだばかりいゝ むかふかしへ【向こう河岸へ】 わたり しやうしき【正直】 そばをくつて かへる まつに わかれが かへらりよか きた〳〵〳〵 おれる【おりる?】 人か 【深川の八幡様は富岡八幡宮。東に700mくらいに洲崎弁天がある。洲崎から北東へ3kmくらいに羅漢寺があり、羅漢寺からへ1.6kmくらいに亀戸天神。そこから北西に1.8kmくらいに其角の雨乞い伝説がある三囲神社。清兵衛は三囲の土手、隅田川の向島側でホトトギスの声を聴き一句よんでから対岸へ渡る。当時ここには竹屋の渡しがあった。対岸は浅草で、待つ乳山・聖天さんがあるところ。】 【追記:「あきば」は三囲神社から800mほど離れたところにある秋葉神社のことらしい。】 【追記:正直蕎麦は十割蕎麦で有名だった浅草の蕎麦屋とのこと。】 【追記:「すきき」ではなく「すさき」で洲崎弁天・現洲崎神社のこと】 こゝに かねもちの いんきよ に いつとくと いふ人あり しやうとくけこにてちやをすきされども こいちやうすちやのふうりうもなく せんしちやをすきおひたゝしく のめともついにちやにうかされたる 事もなくあさはよつすぎまで ねて 人の ちやに うかさるゝといふ事を きゝてうらやましく おもひとくいの事ゆへ 清兵へ来りしおり きさまはちやに うかされし事あるかと たづぬればしやうばいには いたせどもついにうかされた事なし ためしのために 二人にてむしやうに にばなをのんてみる 【右ページ下かすれている】 のま がき の□ まば 【左ページ】 いつとく 清兵へ 二人にて さへつ おさへつ にば なを のみ たがいに はなうたを うたひたし あんまりはらが はりました はらこなしに ちつとおとりましやふと さわぎだし とんと さけに よふた よふ なれとも いざこざ いわず こまもの見せを たさずまじ〳〵 しやお〳〵とさわぎ かないのものもちやにうか されたといふ事はじめて 見るゆへきもをつぶす 【左ページ下】 しのだの もりの きつねを いゝつな【?】 ちん〳〵 ちゝん ち ちん つゝつん ふたり なから ちやに うか され こゝろ やすく なり うちで ばかり のんでは おも しろく ないと よし わらで いつ ふく おんまもふと くつと ぶんのきに なり二人 つれにて 中野町へ【仲之町へ?】 しかけける よの中に いふちや のみとも だちとは いんきよに そふ おふな ぢいさまを いへどもこのちや のみともだちは おふちがいにて へいぜいの こゝろとはおふちがい したじの あるうゑへはのみうへゑは のむゆへうかされどふしに うかれている 【右ページ下】 せいこ□ なち 給へ はやく きた給へ 〳〵 いつとくはきせんといふ 女郎【?】をかひ清兵へは ひともりをあげ にばなをさせてむしやうに のみあいゝたもばからしいと【飲み合い居たも馬鹿らしいと?】 おもへともきやくじんは しごくきけんよく あそびおてうしかかわる【お調子がかわる?】 よ と いふ とこ ろて しん ちうの やかんを とりかへ ひきかへ いつはいも あまれば やりて わかい ものに のま せて いつ ふん【?】 て やり あまり ぢやに ふくあり とか このとき より いゝはじめし 事なり すこし こゆくに みへるが ちやど【で?】 ござり ます わたくしどもは ごしゆより おちやがよふ ござり□す【ござりもうす?】 おく〳〵〳〵 二人ともに たん〴〵 うかされ きやう けんをはじめ よしわらの せんせいを たのみすけ六を かたらせ いんきよが いきうの やくせいこうが すけ六を こじつけ じやの めのかさと 大もんの げた ば かりが ほんの□の ちやに うかされて あつかましく きやう けんをするゆへ これより しろふとの きやうけんを ちや ばん きやう けんと いふ なり しんそう あげまきに なり はづかし がる イヨ 市川さま 〳〵 これ □く が まへ わ□か ふぜい なり ける しだい なり 五日も 六日も いつゞけ にて ちやに よつた よふな かほ【?】たと いふ ものは あれと ま事に よつ たわ この ふたり よふ 〳〵と かへる おふに なり なんぼでも 清こふは わかい ゆへ とり まわし も よし いんきよは しんぞうかぶかつ【ぶっつ?】 まずになおられ【?】 まずにな……【かすれている】 いんきよ□ みへ【?】 を してもとふしても かまわぬゆへちやに するといふこじらいれき いまのよまで つうのせりふとは なりけり いんきょ さん いつ おいで なんす おはやう こさり ます いつとくはひに増しかねづかいあらくいまは 五十両百両とほんだなへとりにやれば ばんとうもあきれはていけんに来り おまへさまもさりかは【?】つまりませぬ わかだんなのおとなしいにせけんでは どふらくなむすこをいんきよさせます おまへはかんどうもならずいんきよを やめてまたうち□れ申□□とんた のうてんきをなさろふし【?】これからは あら ため て ま た いん きよ と いふに いたし ますと あてがいも げんしやうして 八十のよ□て おふかぶり【?】 なり 【右ページ右下、かすれて読めず】 【右ページ左下】 これから ちや ひとくち も の□□【まぬ?】 【左ページ】 清兵へはいつも あきないを しまうとさつ そくかへるものが まてどくら せどかへらぬゆへあんじて 清右衛門江戸へいでとんやへ きたりければあんのごく【あんのごとく?】 大とらにて てうあい 見れは □うへなしおふきにしらを【?】 たちこのうへせけんにかりの てきぬうちひとり むすこなれども かんどうするといへは みなきのとくがりて いろ〳〵とわひをすれと □□たこのおの きれた よふに くにへ かへり けり 【左ページ右下、かすれている】 とんと おか□ □□□ ま□ たが 【左ページ左下】 おふき な ことを いたした 清兵へかんとうの 身となり いちもんなし にてしやう ばいは できす とかく もの 事を かんかへる 事が すきにて さんぎ【算木】 めど ぎの【蓍の】 とりやふも しらね とも うら ない と おもひ つく うせものは てませうかと いへはでま すといふ てます まいかといへば てませぬといふてさきの 事ばをつぢうらにして うらなへどもみとふしの やふにあたりあたるもふしき あたらぬもふしぎといへとも あたらぬは ふしきな 事もなん にもなし もふ なん とき だの 【左ページ】 ゆふ□ひくれに とられたものがぼさり ますごろふじて くたさり まし かんざしでごさろふ しかも銀と みへます 清兵へがうらない ひにまし はんじやう するにつけ おびたゝしく たのみに来り 十三になり ますせがれ ほうこうに つかわして おきますが きのふから みへませぬ ごろうじて くたさり ませといへば これはたひへ まいつたと 見へます あんしる 事は ござらぬ 百三十り ほどより さきへは いき ませぬ おしつけ かへりませうと うらないわたくしか むすこもさくじつ【?】 そうれいにて□□しましたか いまもつてかへりませぬ これは□□□□□の ほうにいますがすい ふんそくさいていられます いのちに□□ぢやうは【べつぢやうは?】 こざりませぬよめを もらいま□□□かく こちと□□□□ きりま□せんに ひとりだしました か□□んとは たいじて ござります これはあいしやうには よりませぬ すいふん こゞとをいわず あさねはめのさめ しだいにさせしばいを とき〴〵みせさへ いたせばねこの としでもくまのとしでも よろしうござりますと しんのことくに うらない けり あのおから【?】 ない□はいせ まいりと みへるもしや かつは□□ □□ あんじ ました おふきなてらちやし うらよりいでけれは あしたは なにかかねが はいると おもふ 清兵へおもひのほか うらなひが とせいとなり くらしける所へいつとこ ひさしふりにて たつねて来り ちやにうか されしより このかた やくししたと【?】 ちやの□の いなりへちやを たちものにして □□□□く なりおやの【?】 □□□れ□ □□□な□り まいあとふりの あでかい 清兵衛が おやぢの ほうが かんとうゆへ 気の どくに おもひ 五十めや 百めは しりを もつて わびを して やりたく わしも なじみ じやから じやうでも【?】 やりたいが めんも かふらず はづかしい まづこづかいにと 十両もらひゆふべの てうじかしら【?】 おんやうじ 見のうへ しらずと いふ事も なし このぢうやつが【?】 ふみがでまして大わらいさ いつとくに かねをかりて くにのこゝろ やすきものに たのまんと ぢやうを したゝめ ねるそのまゝ てまへの さいしよの山 はれわたり たかけしきにて たかのまい あそぶ事 うなきやの まいのとひの ごとく なすびは しきやきに するやうな やつが いつそくで 十八文の所を ごそくほと ゆめに 見ている所へ おもてにおこすおと するゆへめをさましけれは くにの おじのせわにて かんとうゆるされしと しらせて来りけり さて〳〵〳〵よいゆめて あつたとよろこひけり まだげしなつてや【?】 けしく【?】 清兵へさまは これでこさり ますか かんとうゆるされ こきやうへかへるよし いんきよのしんせつの こゝろゆへしらせながら いとまこいに来り 二人ともに よろこひ さけにてしくじる ものもおふけれども たのしみの うわもり【?】 二人ちやにて しくじれとも けこの事なれは そのうへはたのしみに なるほどのむ つもりにていんきよも としよつてせにをつかいしも てまいのなの いつとくと わらひ清兵衛 目出度 くにへ かへりけり はゝがまち かねて おりませう 清長画 通笑作 【落書きで】 うちだ 【墨で】 もと