【表紙タイトル】 《割書:天女|龍女》娜二代鉢木《割書:自一|至五》 【右上ラベル上から】207   1739 【右頁下】25・12・20 【左頁 右上ラベル】207 1739 【タイトル札】 《題:《割書:新|板》《割書:天女(てんによ)|龍女(りうによ)》 娜二代鉢木(まひひめにたいはちのき)《割書:自一|至五》》 【下段に丸に三つ鱗紋有り】 【左頁 タイトル札二枚】 【右上段】《割書:新|板》 【右中段】《割書:天女(てんによ)|龍女(りうによ)》娜二代鉢木(まひひめにたいはちのき)二 【右下段 丸に三つ鱗紋有り】 【左上段】《割書:新|板》 【左中段】《割書:天女(てんによ)|龍女(りうによ)》娜二代鉢木(まひひめにたいはちのき)三 【左下段 丸に三つ鱗紋有り】 【タイトル札四枚 右から】 【一枚目上段】《割書:新|板》 【一枚目中段】《割書:天女(てんによ)|龍女(りうによ)》娜二代鉢木(まひひめにたいはちのき)二 【一枚目下段 丸に三つ鱗紋有り】 【二枚目上段】《割書:新|板》 【二枚目中段】《割書:天女(てんによ)|龍女(りうによ)》娜二代鉢木(まひひめにたいはちのき)三 【二枚目下段 丸に三つ鱗紋有り】 【三枚目上段】《割書:新|板》 【三枚目中段】《割書:天女(てんによ)|龍女(りうによ)》娜二代鉢木(まひひめにたいはちのき)四 【三枚目下段 丸に三つ鱗紋有り】 【四枚目上段】《割書:新|板》 【四枚目中段】《割書:天女(てんによ)|龍女(りうによ)》娜二代鉢木(まひひめにたいはちのき)五 【四枚目下段 丸に三つ鱗紋有り】 【左頁 枠外左】安政三年開刊 全五冊 【左頁 枠外上 丸に三つ鱗紋有り】207-1739 【左頁 本文の重なって天狗と見える朱印、帝国図書館朱印、購買日付朱印有り】 【左頁 本文】 いで其時のはちの木はとは 謡曲(いようきよく)又は 両(りやう)竹の□ だんに見へてみる人の 知(し)る 処(ことろ)なりしかりといへ共□ 渡(わた)りといふ 名所(めいしよ)についていさゝかおもしろき□ ありつれて 同郡(どうくん) 伊香保(いかほ)の 名湯(めいたう)は 婦(ふ)□ 相湯(さうたう)なる事 神(しん)のごとしとて 諸国(しよこく)より女□ 爰(こゝ)に 往来(わうらい)する事 女護嶋(によごのしま)ともいふべ□ ことさら此山上に 野(の)ばたの 富士山(ふじさん)といふ□ 彼是(かれこれ)の 来由(らいゆ)をかいつまみ今やうにあやなし 語(ぎよ)【綺語〔ぎぎよ〕だとすると読み・意味通りますが?】のそらごとをまじゑて 児女(じじよ)のなぐ□  めで度春の月日      なす 【右頁 上文】 かうづけ【上野】の国ぐんま【群馬】こほりにその むかし長の井しなのゝ介といふものゝ ふ【武士】有そのつまあけぼの【曙】ゝかたゆさん のかへるさにとね川のほとりにやす らいしば〳〵【しばし?】てまくらにゆめ見 けるすいかん【水干】ゑぼし【烏帽子】きたる男 きたり手をひいて水中に 入と見てゆめさめたり其 こくげんとね川の水さか まき【逆巻き】すさまし【凄まじ】かりけり 【右頁 下文】 これは〳〵とね川がてんやわや とき たは此 まへさる が また のきれ た時かくの とをり であつ た 【左頁 上文】 それよりくわい人【懐妊】して 月日かさなり玉のやう なる女子をうむなをばかとり ひめとぞつけらる此ひめ三才の時 はゝはむなしくなる 【左頁 中段中央文】 みづからしばし まとろむ内 こはい ゆめをみた わいの 【左頁 中段左文】 やれ〳〵おく様が うなされあそばした そうな御くすりでもあがり【絵を挟んで】ませぬか 【左頁 左端の女の下】 申〳〵〳〵 おく様 【三行目は上からの続き】 【右頁 右上文】 しかるに此ひめ年たち うつくしき事たとへんかたなし され共いか成事にやよな 〳〵くろかみさか立て さう〳〵となる父しなのゝ 介もこれに あぐみ給うそれ ゆへ十七のあき迄 ゑんぐみ なし 【右頁 右下文】 さて〳〵むすめかよな〳〵 のありさまがてんのいか ぬ此しうちは此まへ 市むらがさでせん【市村がさ(座)でせん(先代)】 菊のぜうが【(瀬川)菊之丞が】女 なるかみときたは【女鳴神ときたは】 はていぶかしやなあ 【右頁 左端中】 又おこり なされたかこれは〳〵 【左頁 上中】 同こくみどりごほり【緑郡】きべ【木部】村に木部しん くらんど【新藏人】ゝいふもののふ文武にたつし ことに大りき也しなのゝ介きゝ及び むすめが事をあからさまに はなしてむこにとる 【左頁 右下】 みふしやう【身不肖】なるやつかれ【僕】を人とおぼし めしむこになされんとは かたじけ ないしか らば御 そく女 を申うけ ませふ 【左頁 左中】 これは〳〵われらみに とつてまんぞくいわひに わざとあかを だしませう 【右頁 上段】 ころは北でう【北条】八代めさだ時【貞時】のかまくらをおさ め給ふ御せんぞさいみやうじ【最明寺】時よりしよ こくあんぎやまし〳〵かうづけの国【上野の国】 さのゝわたりにてゆきをしのがせ 給ふ御かんなんのゑぞうをもつ てしよこくのさむらいにしきもくを おゝせわたさるそのゝちさのゝわたりは 木部しんくらんど りやうしければ わけてそのへんの たみの心をとは らる しんくらんど ちく一に申上らる 【右頁 下段】 いかに くらんど そちが りやう ぶんさのゝわたりはさいみやう じ殿のこせきなればその あとのはちの木をまもる ものをつけおきそまつにいた すべからずおつてけんぶんに たれぞつかわさん其ぶん心へ候へ 【左頁 下段】 かしこまりましたそのさの村と申 所はわたり七八丁長さ一里 ばかりの 村 で ござり ます いさゝかぜつけい のながれも ござります 【左頁 上段】 此ゑぞうをはつち ほうず【鉢坊主】 かと思ふた 御ゆる されい〳〵 【右頁 上】 するが【駿河】国うど【有渡】のはま みほの松ばらといふはたぐひまれなる せつけい【絶景】也そのむかし天人こゝにあまくだり し事羽衣のうたひにくわし又その ころ天女此所へまいさがりむかしのあと をしたいおもしろきあまりにはごろもを 松にかけおきこゝかしこほかうする 【右頁 下】 のふおとめ女 まことに此所は みづからやそなた の心をなぐさむ にはよい所はや日も山のは にかたむくてんじやう【=天上へ戻る】 しませふ 【左頁 おとめ女上】 此所のぎよふ【漁夫】よも作松にかゝれる 羽衣を見つけよろこびとりてかへる やれ〳〵よい物がほして有 此羽衣をまぶな【本物の】 金もちに見 せたら いつかど【一角=相当】 に ならふしめた物だ しかし此羽衣なく ては天女も てん じやう はならずにてん上 見る【昇天する?】であらう 【左頁 男右】 かあいのものや とは市川はく ゑん【白猿】が 【左頁 男左】 おさだ まりかい 【右頁 上】 かゝる所のふじ山のかたより除複【徐福】 せん人【仙人】まいさがり此衣を ふたゝび【再び】とりゑん事たや すくはならず一たびげかい【下界】の ましわりしててだてを めぐらしとりかへすべし がてんか〳〵と おしへ給ふぞ ありがたき 【右頁 下】 天女はとりひめさらばてん じやうせんとはごろもを 【女絵挟んで続く】 たづぬるになしつれたるおとめも同じ 羽衣なくしては天にのぼる事かなはず りうていこがれ【流涕焦がれ】ける 【左頁 右側】 木部新くらんど【蔵人】かまくら【鎌倉】のついでにきよ見がせき【清見ケ関】一けんせんとこゝにきたり 所のぎよふ【漁夫】にとうち【当地】のめいしよ【名所】をといはごろもをもとめて上しう【上州】へかへる さて〳〵めづらしい物を かいたる事かなわがいへ【我が家】 のたから【宝】にせん それあの ものに金 をあたへよ さても〳〵あや かりものだ 【左頁 下中央】 御ほうびとして金十両いたゞきこれがほん のありがた山ぶきのせにかげの かゝれるほど ほしい 【右頁 上】 木部のつまかとりひ めようがんひれい【容顔美麗】 なればおつと の心にもかな いむつ まじくかりしがある時 けはい【化粧】するとてかゞみにうつるかほ【顔】を見て おどろきしが心かう なるくらんど【蔵人】なれ ばそのぶんにしてうち すぎぬ 【右頁 下】 みづからがじやしんといふ事はわが つまにはごぞんじあるまいずい ぶん松もとや【松本屋】のいわとかう【岩戸香】でよそ ほひませふ 【左頁 右中】 新くらんどかいな【腕】にいたみあり とて同国いかほ【伊香保】のゆに入給ふ ゆぬし【湯主】金太夫此所の めいしよ物がたり する 【左頁 右下】 いかにこくれ【木暮?】 うぢ【氏】此 所には よもの たきすい【四方の滝水(酒屋四方の銘酒)】 はないか 【左頁 中央下】 イヤ〳〵此所によもの あか【四方の赤=四方の滝水】はござりませぬしなのゝみりん ゑちごのしほなをし 【左男の左上】 だいはか り【大量り?】の御なぐ さみめう日【明日】は きあげどう でてうちを 上ませふ 【左男の左下】 やす めり さると ちとおしやみせんでもあそばしませふ 【右頁 右】 じよふく【徐福】仙人の御しめしにてそこともなしにはとりひめ かうづけの国へまいりくらがの【倉加野】しゆく【宿】にとゞまりやどの ていしゆ【亭主】と身のうへのそうだんする こなさまは女まいのめい人【名人】とあれば よい所がござる川む かいの きべ どのへ さづけましよ さき様はわしが よくくるめて おきました 【右頁 中下】 こちらの女中はさの村【佐野村】 のよの兵衛のほしがる二人 ながらわしがのみこみ山【呑込山】 きづかいさしやんな 【右頁 左端】 とかくよろしうおたのみ申上やんす 【左頁 右下】 かうづけのくに【上野の国】ぐんまごほり【群馬郡】わだの庄 さの村はそのむかし此所に源左え門 つねよ【佐野源左衛門常世】すみて梅さくら松の はちの木【鉢の木】をもちたる此や【家】 にさいみやうじ【最明寺】御とまり ませしゆへかまくら【鎌倉】より おゝせをかうむり今にその あとのこれりていしゆ【亭主】よの兵へむさ い【無妻】に て 子も なけれ ば此ごろ くらがの【倉加野】 よりめし かゝへし女を むすめに してな【名】 をば おさのと いふ 【左頁 中央上】 なにもゑん づくそちは おれが子 にしてむす子 をとらふぞ 【左頁 中央下】 それは うれしう ござんす 【右頁 右上】 しうと【舅】しなのゝ介くらんど【蔵人】のかたへまねかれとう りう【逗留】の内ねこや【根小屋?】の山にあがりさのゝ わたりを見はらし酒もりせし 所にくらくらがの【倉加野】ゝきも入 まいこを め見へ【目見得】に つかわす さいはいなりとて 羽とりひめに一かなで まわする 【右頁 左上】 されば〳〵 あの身で よしはら たんぜんがみたい ぢはわれらがまにあはせ ましよこれ〳〵仁介そちは やつこになれいやはやどうも〳〵 【右頁 右下】 てん【?】とあふぎ【扇?】の てといひきりかへし などそのまゝの ろかう【路考】がふりと きている 【左頁 上】 羽とりひめ 羽衣をとりかへさん ためてだて【手立て】のほうこう【奉公】人に やつし来るのぞみにまかせ まふ【舞ふ】たりそのまひのさままことに 序(しよ)三帖 破(は)六 帖(しやう)あはせてくほん【九品】 のまい手にがつしやうのひじ【美事?】 ありけんぶつもんぼうのがく【見仏聞法の楽(らく)?】を まいければくらんど【蔵人】もとより まいにたんれんほとんどかんに たへて【感に堪えて】そう〳〵羽とりひめを めしかゝへる 【左頁 左男上】 あとでしのぶうりが 見たいどうも〳〵 【左頁 右下】 いよ〳〵〳〵扨【?】やは ないかよいといひますぞだんながほめた 此女中われらもちつくりほめことば 【右頁 上】 羽とりひめ天人なれば そのうつくしき事たと ゆるに物なしくらんど【蔵人】 ちやうあい【寵愛】のあま りひめ が 心を さつして物が たりするほん さいかとりひめ もたゞ人なく ざれば此ごろきたる 女は天人とさとり いよ〳〵事をはからひ ためし見るある時まこと をあかし羽衣をかへし給は れといふくらんど【蔵人】ひめを下かい【下界】 にとゞめ度思ひ羽衣はさる方 にしちに入たり千両の金なふて はとりかへしがたしとそらこと【空言】をいふ これより羽とりひめ金のくめん【工面】をぞ 心がけける 【右頁 下】 みづからおなさけをうけまして御う れしうござれどながく此どには とゞまりがたしどうぞ羽ごろもを かへしてわたくしをてんじやう【天上】なさせ下さり ませふ そのうつ くしい【美しい】そ なたを やつて たまる ものか 羽衣は 金千両 なければとりかへされぬまづじせつ【時節】を まちやれさ 【左頁】 いつも羽とりひめがかんざし【簪】を かざし天にむかつてものいへば雨ふり 五しきのくもうかむ事を見とゞけある 時かとりひめかのかんざしをもつてはとり ひめがすることくせしに雨ふりくも うかむさてはいよ〳〵天女 なる事をさとりしる われも天人にひとしく ひとたびてん上【天上】ののぞみある物を心ば【?】なんぞ 羽とりひめにおとらんやわらこゝちよいあまぐも しやなあ 【右頁 上】 みやこ北しら川【北白川】にさいぢはれつぐといふふゑ【笛】 のめい人あり此人げんそう【(玄宗)】のやうりうてき【楊柳笛?】 のごとくおんりつ【音律】にたつしければはれつぐが ふゑふけばかならづ柳のはおつる事きめう なりはれつぐがふへ【笛】のしはん【師範】ばいり【?】うけん 其ほうしよ国【諸国】しゆ行【修行】してまいれ とてつかはしける 【右頁 右下】 そなたもぶじでやがておかへりやれ 【右頁 左下】 しからばせん せいふゑしゆ 行にあんぎや【行脚】仕ましよ せつかく御けんしやうに御入 おさらば〳〵 【左頁 上】 ふじおかきぬやば左衛門 いつのころ ゟさのを 思ひそめ さま〴〵 くどくさの はとり ひめの金さいかくのため金十両 むしんいひかける わしはちとつまらぬ 事があつて金がたんと 入やんすとうぶん十 両かしてくれな 【左頁 下】 きさま【?】の事なら 金はおろか命 でもあけまき【揚巻】 の介六【助六】と きている 此□□に おれとめう ぎへ□よ ばつ しやい 【右頁 上】 かとりひめはとりひめ にすこしもりんきせず【悋気せず】 なにとぞしてはとりが つうりき【通力】を見ならひ 一度てんじやう【天上】せんと 思ふ 【右頁 中央】 ほんにふしぎなゑんでそなた のおじゆつてこちの人の御きに入 わしもうれしいわいの 【右頁 右下】 おく様のありがたい御ことばにあづ かりほんに御はもじ【御は文字=恥ずかし】うござり ますわたくしがみやづかへさぞ おはらがたちませふ 【右頁 下】 なんの〳〵 ちとあり やすでも ひきや 【左頁 右上】 上しう大ない【?】といふ 所より来るたばこや ひな蔵といふいろ男 やまなにたばこのかり有て さん〴〵たゝかるさのひな蔵に ほれて金十両すまし いたはる 【左頁 中央】 こいつはふとい【太い】あん ほんたんめだどうぼ ねをふみおるぞ 【左頁 右下】 これ〳〵吉どのなぜひな 蔵殿をたゝくのじや 【左頁 左下】 此あんほんたんと いふ事は 上しうがはじ まりそこで こいつをあんほん たんとふみのめす のだ 【右頁 下】 たんな ちと 御酒上り ませ かまくらよりさぎ坂藤内【?】左衛門といふ さふらひつねよ【常世】がこせき見んため 上しうにくだりちゝぶ上しうのさかい おな【?】しのちややにやすみそのほかたび人 あまたやすみめいしよ物がたりをして□きつい でなればとさの村へ立よる これ〳〵ちや屋のかゝさの村へはまたいくらほど有 これから四里といひます そのむかしさのゝ源左衛門といふ人のこせきは こゝらかきゝたい あいそれはこれから四里ばかりひがしで ござりますあすの事となされ 【左頁 下】 やれ〳〵今からはおゆげない けさよりいのはたごやでくつたまゝおなかゞ さみしいこゝらにぶつかけは ないかよものあかはおり ないか 【左頁 上】 よものあかゝ あをかそんな 事はしるむさぬ どうゆきはむかいにござる 【右頁 上】 さの村源左衛門がこせきをまもる よの兵へむかしにかわりしんだいよ ろしくくらす藤内左衛門 此所へ来りとうりうし てさま〴〵ちそうに なるさいみやう し【最明寺】殿のしぶん【時分】 にははちの木 き□くべしあわのめしをまいら せしがそれにひきかへなつの 事なればかやの木をたき 山川のちんぶつにて もてなす さて〳〵つねよが時とはち がいきついちそうで おじやる 【女中のお盆 右】 おかへなされ ませ 【右頁 下】 とてもの事に め□やすでしん □うじやうしが きゝたい おれも かみ すきでも うたおふ 【左頁 上】 こゝははたごやではないがだんなが 心ざしでたゞとめまするおまへは 何御しやうばいだへ はとりひめも折ふし此所へ来るふえふき はれつぐも 行く連れ 此家に とまる 【左頁 中段】 これ〳〵女中 こゝが源左衛門□ やしきか どうそ こよい とめて 下されはた ごは百卅二文 だしませふ 【左頁 左下】 おれは ふえを ふき申そのだいにすみだ川をのまさつしやい 【右頁 右】 みな月のなかばあつさもいやましよるのねのこくばかりに はれつぐ一間を出てふゑをふくにふしぎやさばかりのしよ き【暑気】たちまちれいき【冷気】となり 雹ふりてには【庭】 におけるはち の木につもる其うへ 天におんがくのこへ きとおる 【右頁 左】 此おとにはとりひめさのひめめさまし心おもしろく なりて両人まひをかなでゑてんらくけいしやうういの きよくをあやなす藤内左衛門みな〳〵ふしぎのありさま かなとめけ【?】れずも見る 【左頁 右】 あらおもしろのふゑのね【笛の音】やあれ〳〵天におんがく がきこへますこれにつけてもはやく羽衣を とりゑて天上がしたひ事じや 【左頁 左】 □□□いかぬあいつらは菊の丞がもちづきと いふ身であぢを ゆるのめす【?】いよ〳〵 よいといひます とくとくと見とゞ けてかまくらへちう しん申そふ 【右頁 中心】 さのはひたすら 金くめん せんと かなた こなた あるきけるが あるときとちうにて 五すい【五衰】三ねつ【三熱】の くるしみにてのなか にふしたりかゝる所へ ば左衛門きかゝりすがり しみ〴〵くどかんと するにゑなかぬ かほつして【?】 よりつけ【?】れず かたぬきたる ていを見ればわきのしたにはね三まいある ば左衛門はら立まぎれに此はねをぬいてすてる 【右頁 男図右】 ふさ〳〵しい此はね ひつこぬくべい いま〳〵しい 【右頁 左下】 はねぬきしゆへ さのてん人の つうりき うせけるとぞ 【左頁 上】 さの村にてはれつぐはとりが まいを見てさてはたゞ人なら ぬをさとり□□□□□□ くらんどのかたへ 入こみさま〴〵 くどくはとり□□ 心ざしうれし けれど羽衣 てに入ん事を 【図の下へ続く】 思ひ へん じも せず 【左頁 下右】 御心ざしhはうれ しけれど此 こひは思ひ 切給へ 【左頁 下左】 かづならぬ身の やつかれしばしの おなさけはどうで ござります 御かほ□□あひま せぬどうよくな【?】 御こくあかな【?】 【右頁 右から】 ひな蔵おさの中むつまじくかいらう【偕老】のかたらひ年月を こしてふかくなりけふしも山なの八まんにて出あひ たがいに きせう【起請】とり かあしたわむ れける わしももふ此ことく月ごろに□ ましたかならずみらいまでも めうと【夫婦】じやぞへ そなたより ほかにかあいひもの はないふたりかふした所が ほんの水ももらさぬ中といふ物 じや 【左頁 右から】 その□かい出しに□□□□ ば左衛門金十両たゞとりにあひ て一どもまくらかはさず 心ながにくときけるが おさのがひな 蔵とのあん ばいを見つけがうはら【業腹】 やき もち のね と きて ふく れかえる これはけちいま 〳〵しい事 だ どうりで今までおれをあんほんのおや玉に しおつた二人ながらいむさしにふつちめよふ 【右頁】 さのゝ舟ばしといふはさの川をへだ てし舟のおさかな山のいわをほり ぬき大づなをとをしこれをさの 村のいわにつなきてつのわなを とをしこづなを舟のる人其つな をたぐれば舟うごきてむかふへ ひとりわたる也是を舟ばし といふ又此所にてい【はヵ】かの明夜【神ヵ】 かりうの■【宮ヵ】つねよがやしき あとさま〳〵めい所有ちか松 がさくせしさいめうじの道 行のもんくにさのゝてたち さかなにてといふ■■【古哥ヵ】の あともあり事しけ ければはぶくなり 【左頁 上】 うまい〳〵づばとまい つたいわひにすこと おごつてまんぐあん じとでよふ 此ついでにひな そう【雛蔵】めもしめよふ あいつをしめるはかなつりて たなごをひしやぐより こゝろやすい 【左頁 下】 是より十八丁あなたに山もとの里といふは今の山名 の事也さのゝわたしより山さへ十八丁ありそのころひな藏 山名へきたりとうりうせりおさのまいに〳〵ひなそう がもとへかよふば左衛門にくき■【予ヵ】に思ひ川のなかば にやいばをうゑおきあるよいつものごとくさのがわた る所をふねをくつがへしてくつすおさの川へはなり つらぬかれむなしくなるぞあ 【右頁 上】 はれつぐくらんどのさむらいきね八に金をあたへはとりひめ が事をきくきね八うれしさのあまり大せつの事をかたる 羽衣の事はこれより 八里東の山上の はたのいけの へんに松の 木あり 此下に 羽衣を うづめおくと かたる まことや天人の羽衣を もつ人はくわんげんのめうを ゑるときくよい事をきゝ ましたほうびに又金二両 はづみます此金で中三で もかはつしやい 【右頁 下】 是はだん〳〵と うまい事だ まちつと何ぞ おぼへたらまだ 金にならふもの ざんねんや 〳〵 【左頁 上】 さの村与の平むすめがしがいをみて なげくしかるにさのがしがいこしより 上は人にてこしより下はとり也 藤内左衛門 はとりひめ さのが まいの ていかれ これふしぎ なる 事□□かなと せんぎする たわけめら だまりおろ 【左頁 下】 これはおらが村の 大さわぎしたが 此おさの がしかい はよい見 せ物た はい 〳〵 【右頁 左上】 これによって はとりひめ 此所にいる事 かなわずま又は はれつぐがことば のはしに羽衣の ありかをさとりくらんどゝ打つれ 出て行かとり両人のおち行 事きね八がわざ也とせめといければくるしさのあまりのばたのかたへといふ 【右頁 中央】 かとりひめいかゝ の事にや此ほと にはかにりんき しつとの心つよく はとり姫をおい出す 【右頁 右端中段】 やれ〳〵おそろしい けんまくじや 【右頁 右端下】 のばたのいけへいかれました 御めん〳〵 【左頁 右上】 ひな蔵はとりひめの事きづ かわしく□□所をば左衛門まち うけ両人つかみあふ 【左頁 右下】 ちからはなけれどおのれにまけるものかあゝいた〳〵 かすやらうめ□□あすぞかくごひろげた 【左頁 左上】 かとり□の 此ごろの ていでは みづ からを ころそうと なされ ましよぞへ 【左頁 左中】 それじや によつてつれて 立のく のじや 【右頁 上】 しんくらんど羽衣ひめのばたへ 来りかとりをあざむかんと 両人小そでを柳のゑたにかけ 大小はき物など池のはたにさし おきいかほのぬまへ身をなげし ていに もて なす かとりもうつ くしけれどそなた に は かへ ぬ なんとこれでは 二人いけへ身をなげ たとみへよふがや 【右頁 下】 なる ほど これはよい思ひつきでござんす 【左頁 上坊主横】 あゝ ゑい〳〵ゑ 【左頁 右中段】 かとりひめ あとより おつかけ 来りたび 人に物とふ のふ申三十ばかり の男と廿二三の女 はでななりして此 へんへはまいらぬか おしへてたべ その男はさむらいで 三升といふ身で ござらう女は又 三いふがわりざかり といふべたつた今かるまで見ました 【右頁 上】 かとりいかほのぬまへたづね来りあたりを見れば 木のゑだに両人の小そでかけ大小をそばに すてすてはき物あるを見てさては両人ふう ふのちぎりあさからず此いけへみを なけし物□らんと思ひならく のそこ迄もさまたげ せんとたちまち大じや となりいけへとび 入ければ 【右頁 左下】 天ち しん どう【天地振動】大かせ【大風】大あめ【大雨】 おひたゝしく【夥しく】すさ まし【凄まじ】けりしこと共也 いとじさへ此所は雨 の大といやいかづち のこんけんほか にでだななし 【左頁 上右】 古哥にいわく 雨ぐものたつといふなや 上野にありといふなる なるうみがだけ といふ哥の心も此ぬま の事なりとね川 のへんより此山まで 六里ありその山の上 に此いかほのぬま有 山がり【山狩】木こりおそれて にけ行 【左頁 上左】 やれ〳〵おつ かない 此しう ちは 入あい さくら【入相桜】の □だん めときたさてもすさまじいつらだもさ 【右頁上】 ひなぞうは はとりひめのあとを したい此のばたに来る ば左衛門ちからつよければついに ひなぞうをくゝしあげ松の木に くりつけ切ころさんとする なむさん おれほを ばあ左衛門に しおつた くもにも 入ちつ へん たんない 〳〵 【右頁下】 くちおしいおさのもうはいやおのれにころされたやがて 思ひしらせん うぬめよくさのともつれておれを あん ほん  に ひ ろい あんならぬ つじ切に たこなむ【?】 ねんぶつそ 〳〵 【左頁上】 かゝる 所にさのが一ねん しらさぎと成 とひきたり ひな そうが いましめをくい切 せなにのせはうち【羽打】 してとびさる ば左衛門あんほんと たゝずむ所へ水さわの山 あいよりおゝかみ来たり ほへかゝりついにくひころされし 天運のほどぞこゝち よし 【左頁下】 あゝいたい ほんのいた 事たほねは おのこしあゝ くるしい なむ あみだ〳〵 【右頁上】 じよふく仙人【徐福仙人】にふじ さんに天くたり きんくは女をい ざないとそつ のないゐん へつれ行 給ふ はとりひめ 新てんとかとりひめの死 さまおそろしき事に思ひかたへに しのぶ折からふゑのはれつぐ此所へ 来りき弥八がおしへにまかせかの所 をほりうがち羽衣をとりあくる所をはとり ひめゑたりやとよろこび身にまといたちまち 天女のかたちをけんし【顕し】こくうにまい上る 【右頁下】 はれつぐ ぶがくの一くはん【舞楽の一巻】 をさづかり悦ぶ 【左頁上】 ぜんざい〳〵われはこれとそつのくはん女きんくは女なり あやまつて羽衣をうしなひ下かいのまじはりをせし所に 今はからずもはれつぐがためにはごろもをゑたり そのあたひとしてなんぢがのぞむばんしうらくの一くはんを あたへる 【左頁下】 まつた新てんとは十かいの すまいあいれんのよしみ などはおしけれど羽衣をゑてはへんしも下かいに【片時もカ】 おる事かたしなごり おしやさらば〳〵と とくどゑんまんの たからをふらしくらんど にあたへ五しき の くもまに 入給ふ 【右頁上】 さそ〳〵 おもしろい ほうびをは くはつと とらせい いよ〳〵 かきつの しよさ事 おかがく 【右頁下】 かくてはれつぐふゑはもとよりの めい人まい【舞】はきんくは【錦華】女より一くはんを さづかりじよ三じやう は六じやうてに うつしやう のひじけんぶつもんぼう【秘事見仏聞法】の がくをたんれんしてかまくら にまいり さだ時の御まへに めされ万事うまく のぶぎよいを そうして ぎよかんに入 御ほうびをすこだま【しこたま】 いたゞきし事ひとへに てん女の御かげなり 【左頁上】 此まいが すんたらがし 屋へ入て はん つはの みそづで たきすい なんとよい 思ひつきか こちとはせいざ よりとらやのあり ころがよかんべい 【左頁下  此の部分はどの様に翻刻すべきでしょう?】 大坂天王寺にまい年二 月には  おしやうはいのふぐ ありそれは石のぶたい  これはたく みのうへたとへ ていはゞおとり子    やらひろ  けつが上この                   道成寺のしよ                    さを見る                     ことく いよ〳〵 できます し 【右頁上】 鳥居清満画 【図中央佐野の邸跡前に立札】 佐野源左衛門屋敷 中仙道から直川より壹里半にさの村源左衛門つね 世がやしきのあと今にありめくり六七けんも あらんその中につねよがうぶすな八まんとて 石のほこらあり其うらに□もんじゆ ゐんとあり 雪のたんをたつ候人は此所御通り のせつ立よつて見たまへ         〳〵 【右頁下】 南無 つねよ大明神様 はちの木をたゞ今けい こさい中でこざります おもしろくかたります やうにまもらせ給へ      〳〵 【左頁 左肩に図書館シール】 207 1739 【左頁上に図書館シール】 207 1739 【裏表紙】 国立国会図書館 娜二代鉢木 5巻 207-1739