《題:麻疹後柳樽》 【絵と印のみ】 【左帖】    はしかよみ込 ほれなさは同しはしかも路の下 世はなさけ旅ではしかのつれが出来 腹違ひお  はしかで後が ふところにはしかをのてこぎをおし 夕立ちにうまるゝはしかふびんなり 古河梨とよんで我か子ははしかこと はしかうちしやかと達磨■ はしかやみよし原町に■なしり 露の鳥はしかあらねは目も出せず 【右】           謹て申ス予が友 真山子 主(ヌシ)父君におくれ孤(ミナシコ)と成母公に仕へ天 道にそむかず花車風流は自(オノツラ)志深ク 友に交ツテ礼儀厚く其記爰云尽し 得べからず今歳麻疹を病マせられ しかして後脚気に関られしばらく病 床に座せられたりしがよりより柳風の狂句 を読せられて其員凡百四十余吟に及べり そを又えらみて書付てよとせちにせめさせ 玉へとも件より好道ながらどれを華とも紅 葉とも愚昧の庸服になさめともいなむに 御免し無からせは思ふまにまに書奉て 御笑をかふむるになん   于時文久二戌年閏八月   窓下に記之   玉川 【左】 つれなさは同じはしかも軒の下 世はなさけ旅ではしかの連が出来 縁遠ひおむすはしかで役が済み ふところにはしかを入てこぎを出し 夕立にうたるゝはしかふびんなり 古河梨とよんで我が子ははしかを仕 はしかから釈迦と達磨たんと出来 はしかやみよし原町が鰒になり 籠の鳥はしから跡は目も出せず 【右帖】 はしかか(から)むをむ様のはしか 出来 秋口てはしか武蔵に?逃れり 船頭のはしかかき寝に?しやれて居る 利(通or道)中で船頭はしかを 物(orお)ふしぎはしかで藝者花らをは はしか病を直言家で女ごときやし 栗を食ふはしか▪️代の年まへり か助ははしかの峠を いう()せん浦▪️のはしか びひしと糸取る形てふのはしか 【右】 はしかからかんをん様の出しが出来 秋口ではしか武蔵と逃て行 船頭のはしかうき寝としやれて居る 新造中で船頭はしかをし【新造船の船が欠落か】 扨ふしぎはしかで芸者花がおち はしか病み直言家で女どきやし 栗を喰ふはしかで戌の年まへり 蜘助ははしかの峠なれなれたもの いかにせん蒲小屋のはしか病み【蒲鉾小屋の鉾が欠落か】 びい/\と糸取る様に子のはしか 【左】 目くらのはしか見づ飴の御見舞 此せかいはしかかはしとさしか也 千人のはしかに鬼子母扨こまり お力角のくせにはしかに押されてる【角力の誤りか】 たぐすりやはし鹿(か)の角を売ており【きぐすりや?】 医師の子にここそとはしか喰ひ付 狩人ははし鹿(か)と聞て筒をむけ 力もちかるいはしかを重たかり はしかから上戸がいつか下戸とばけ はしかめよ覚ていよとふさこ郎 【右帖】 先生はまけてはしかのせいと云い 吉原へ夜はとはしかは喰(くら)ひこみ 咄しかは仲間だはしかかるくさせ 真中にやおかれぬはしかすみ【に】居り ちょんきなではしかちょんきてちょん寝ろと よくころぶ芸者はしかで寝たきり かるはさ【軽業】のくせにはしかは重はざし 芸者泣くいしゃはさかんに麻疹ます 僧さんも遣ひはてしか麻疹院し 麻疹ばら腹へりたやと小僧云い 【左帖】 ふたんから床に麻疹ます髪ゆいさん 思ひ切り兼てい出度はしか文 官女のはしかはんにゃの?に見へ 後家はしか勇???見舞いにき 神子はしか鈴がらがらとふるへてる お星様までなさったと下女はしか 下女はしか廉処えお馬ばらとなり 下女はしか出かねてご房屁まで出し 相模下女はしかにまでも穴取られ 女には兎角はしかも喰ひ込 【右帖】 はしかに廻し取られてる女郎衆 お祭りの気遣りはしかでいきが切れ 附木屋ははしかでこしか遣ひかね 一人リ物丈はれはれではしかを仕 栗はまだ七里けつばいはしか病み お手がるにはしかも済だお足がる い国人はしかにおそれ帰国人 此冬ははしかで獅子ッハナがあき 地蔵堂お門ちがひとはしか云い はしかも寿命千歳は大もうけ 【左帖】 はしかにてつくま祭りの鍋はへり【女が関係した男の数だけ鍋をかぶる奇祭】 よいいけんはしかで聞た呑だくれ 桃にごり毒で麻疹を喰てよふ 加半けの女房麻疹(チン)を喰いたがり 杣はしか天狗さんにもうつしたか 両?もはしかでなんぎ目をひらき くるしげに居ざりはしかで立て行 目立無ひはしかはおもに けんびしのしと寝ではしかおがんでる くりまでもはしかをするか大ぶのび 【右丁】 遣りてまではしかをするか遣るせなし 権兵衛ははしかたんべい寝たんべい 下女無異とはしかはかるし屁の字に寝 【題】麻疹題 【左丁】 御方便かるく済だるはしの下 結構なお米で目だつ舌のをん 親の慈悲つひ毒だても甘くなり 毒だてに口を酢くする親の慈悲 目立つまで一ㇳ人娘の母はやせ あどけなき乳は毒かと母に聞キ 立チ兼る旅も我が子は峠まへ かる過て又一ㇳ苦労親斗り 目だた無ひうちはふびんぞ越後獅子 黄金は蔵に満チてもぜひも無し 【右丁】 文久二文明三がまけている 文久二跡から天保八にされ 犀角が出来てさひかく買ひに行 薬礼の時の犀角まげて済 紫根を二たし六こんをしうじう 湯薬はふきににがしと呑て居る 死ニ曰桃のようよう樽にあり 民共々難儀を見ると儒者は云イ 代脈は格子の医者宿え遣り 長髪は元より御免松右衛門 【左丁】 長髪はおゆるし下乗はひつくり【びっくり】し びゃくへ長髪代脈の様にへ 長髪が親の名でくる御見舞 長髪が御免てきめう仕勤し 八朔の雪もことしは門をいで 出雲より梨が高まがはらとなり あつく無ひ瓜一ㇳ口てほうを焼 目だつほど目だつぬけ毛にふさぐ妻 よい中も七十五日はるくなり さ夜ふけて寝なまぢ物う御かん病 【右帖】 ちょん出ろハ今でハおそし御大もく おろしたり紫根だりするきぐすりや 公家難ぎ寝れば金づち持出され 御養生叶て跡で不養生 なり平が居たらば女また死のふ 犀角を呑あみたうと和尚云イ ぬけからのおこしを和尚餅につき おこしかたんとでにこにことお?さん あの医師の紋は雀と親父皆へ おかけ様じうどまへりと医者に礼 【左帖】 けんびしを着たるはしかハ死もせす 往来ハべた貞九郎斗りなり 大者ばん老と鼠と猫斗り かいを煮てをくやつかいに皆喰れ お祭りが済とみんなが寝しづまり 済だかへおとんとんならもふ二度ダ きまつてる一度で娘腰がぬけ 七十五にやァもふ三四日ねへあなた やせきつてよし原女郎衆土手が落 越かねる峠て娵ハ馬に乗り 【右帖】 峠から下りとなつて医者は駕 かるく共座頭峠はこりて居る 不養生峠で力餅をくひ つのばつたいしやとつりいともふ毛虫 うなぎやハふさぎ屋に成りぬらくらし 半日は湯屋でもとふもしかた無し 【重複】おこしがたんとでにこにことお住さん 【重複】出しがらのおこしを和尚餅につき 喰過てよはりもぞする不養生 居候こげ候をおかひ【おかゆ?】にし 【左帖】 医者の手ぬけで病人ハ腰かぬけ 薬千服と権助は屁て日だち 毒だてを聞ハけ無ひハ伜なり 丸もふけしたるは匕(さじ)とほつす【払子】也 うつるかと定斎屋ふるへふるへ行 うなぎかきはけがハるいと頭かき 犀角も南無阿弥たふと角かへし 三寸乃棒て毒だてつきやぶり 峠から下りに成って下女夜這イ さし込置て差込死めと云イ 【右】 【題】宿場 八兵衛と四郎兵衛こまり相談し お子種の薬千住でこまりきり 呑んどひてもふ死ン宿と泣て居る たまらんと小塚原へ一ㇳ思ひ 大もりはよしに品川ふりかへし つまみ喰腹板橋でとうとうねへ 玄妙廿有壱章 【左】 薬千服ト権助屁で肥たち 盲の麻疹見つ飴の見舞物 千人の麻疹に鬼子母扨困り 御手軽に麻疹も済んだ御足軽 白衣長髪代脈の様に見へ 能中【よいなか】も七十五日へたつ也 三寸の棒の毒断窓やふり 丸まうけしたのは匕と仏子也 毒断を聞別無いは伜也 【右】 居候こげ候を御粥にし 七十五日に二三日 麻疹から釈迦と達磨がドント出来 女には兎角はしかもくらい付 親の慈悲ツイ毒断も早く也 民共々難儀を見ると儒者は云イ さいかくが出来て犀角買に行 あつく無イ瓜一口の頬を焼 目出程目たつ抜毛にふさぐ妻 【左】 ?二両  ?? 剣菱を着ても麻疹てきもせず 大一両  人ノ位  毒断に口を酢くする     親の慈悲 大一両 巻頭  あとけなき乳は毒かと母に聞  【白紙】