《割書:新|板》天竺儲之筋(てんぢくもふけのすじ) 上 《割書:奥|村》 【新板の間に屋号紋あり。丸に巳?または己】 【検索用:てんじくもうけのすじ/市場通笑/勝川春英】 【刷りの違う別資料: https://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100053380/viewer/1 】 天の高 ̄サ五百七十八万四千丈 ̄ト壱尺三寸 弐分ありとんでもなく高ひ所なれはしつた 者はなし其くせ眼には見へ知れとは いれどもすこし遠方の事ゆへ御存知の 無ひも至極御尤千ばん作者なとゝ申ものは なんても委敷承知てなけれはまいらぬもの 是にて万事きついもんたと思召かよし さりながら数多の事天竺 ̄トてんちよく位の 間違はいつもの通御用捨【御容赦】あそはし 御一覧奉希候 【かすれは刷りの違う別資料で補う。URLはコマ1を見よ】 天ちくの 本町のけしき あきんどのき□【あきんどのきを/商人軒を】 ならべ日本□【ならべ日本の/並べ日本の】 あんばいに□□□も【あんばいになんにも/塩梅になんにも】 ち□□□□□【ちかう事なく/違う事なく】 と□のふうにて【とちのふうにて/土地のふうにて】 こつちにないものは とらのかわのふんどしの るいそのかわりに からかさやげたやが なしてんちくの 事なれはとこからか あめのふる事か なしやまとめぐり してさへ ものしり らしく しそを ふちあけ【始祖をぶち上げ?】 遠とくも 天ちくのものは どこでも □ぬ所は【見ぬ所は】 なく めいしよ きうせきは たゆふさしきの けんぶつなれども ゆうしよや【遊女屋】 しはいにやねの【芝居に屋根の】 あるにこまり まつりかあれは 子どもかうれしかり けんくわかあつても あんじもなし 今のよにも りちぎな人は こゝろへちかいにて あめをばおにの 小べんだなどと おもふているものあり なか〳〵じんじやぶつかく 御れき〳〵さまがおいでなされは そんなぶしつけな事を するとたちまちばちが あたるそんな事をして つまるものかとすいぶんつゝしんでいる 【通行人の台詞】 なまいた【ナンマイダ=南無阿弥陀仏ヵ】 〳〵  〳〵 い□□□ □い てんきた【いつでも よい てんきた】 天よりしたをみるに さんせんせかい【三千世界】の事なれは とほうもなくひろい 事なれども くもにのつて あるくものゆへ なんのぞふさも なくあるき さ□ら【さくら】 ばかりか くもかはなかと【雲か花かと】 見るくらいばかり そのほかは すきな事 ふうりうの ほふはきのない ものかおゝく とかくにぎやかな 所をおもに 見たがりさしづめ 江戸がおもしろいとて 日本ばしからさかい丁の ほうはきつい人だとおもへは あさくさのぐんじゆ人は ではらつたかとおもへはしはのほうも【芝の方も】 おしわけられぬにきわいとこを見ても めまくるしいほどの人よねんもなく おもしろかりうつくしいものを見ても くめのせんにん【久米仙人】のはなしをきいて いるゆへずいぶんようじんするゆへ かみなりさまのほ□【雷様のほか】 ひとりもおちたためし なしむすこかふを見ては【なし。息子株を見ては】 うらやましがりきかへたが とんだはやるはちしやうが【とんだ流行る。八丈が】 おゝかろふとなんほよく 見へるとはいふものゝ まがいもほんはちしやうも【紛いも本八丈も】 おなしやうに 見へるはづの事 ほんの見るが どくににて かんにんして いるものゝ はつかつうの こへにはみゝをふさき ほとゝきすのこへは ちやうふうにしている 【台詞、かすれ部分別本で確認】 きさま □ちは【たちは】 □ゝ【ゑゝ】 目た 四□【?】 □□【五十】 三はん    が いちに  でた ほう あふないぞ あれをかつて    くんな 【久米仙人:大和の竜門寺で飛行を修行していたが、吉野川で洗濯してる娘に見とれて空から落ちる。】 ふうきてんにありとは しらぬものはなしわけて かみなりなそは いなづま   とて ひやうばんの うつくし女ほうは ありそのうへに はらつふくれと【腹っぷくれ】 きていれは おびたゝしき いそうろう あそひにあるく      にも そのてやいに てまいのたいこを もたせけれは よの人これを たいこもち〳〵と いふかみなり さまと いつしよについてあるきしやれるゆへ ふみはづしておちる事ありかみなり さまがおちはなさらぬ□□しよにあるく【いつしよにあるく】 けだものだといふもきやつらの事なり【(太鼓持ちは)雷様と一緒に歩き洒落るゆえ踏み外して落ちる事あり。雷様が落ちはなさらぬ。一緒に歩くケダモノ(が落ちるの)だと言ふはきゃつらの事なり。】 なかにもとうせいはやる□□かた【紗綾形?】といふ小もんを はしめたぢよさいのないやくしやとりわけ おきにいり なれは かねもふけの くふうをあんじ はなしに来り けれはなんの ふそくも なけれと かね もうけの きらいと いふは てんぢくで さへなく いつも  より きけんよく もふかりそふな事なら ふうかう【風公/次コマに風神が出てくる】にも そうだんしていちばん □□てみやうとまへ【やつてみやうとまへ】 □□いにそばしりの□そ【いわいにそばしりのゐそ】 のでんかくみそすい ものではじ?めかける 【そばしり:不詳】 【ゐ?その田楽:不詳】 【味噌吸い物:味噌で作った汁の上澄みで作った吸い物。】 【台詞。屋根をふくは博打のこと。めくりはめくりカルタ】 〽むかしより このせかいに やねをふかうと いふなぐさみは ないゆへ いつはいのん たら めくりま しやうと いふ かみなり ふう神 かたへ来り かねもうけの そうたん ぬしもわしも へつに ほねのおれる 事てもなし あつらへにして あめかせ□【あめかせを】 ふらせうもの ならはぜにかねは つかみとりど□【つかみとりどう】 でもふきたい とき□□□□ゝ【ときとわがまゝ】 もなら□□□【もならねとも】 そのかわりには かのものさへ たく さんなれは またとんな おこりても てきる きかうが しやうち なれは ぐつと にぎやかな 所へでたなを【出店を】 たすつもり たとはなし けれはしこく おもしろい なにしやうちさと のみこみ 日よりの ほうが かつてが【勝手が】 よいからてんきさへよくは ちやふやうにして とんしやくはせま□【い】では ある まいかと おつりき【乙りき】    な 所へ こゝ  ろ づく 【乙りき:変わった様子】 【台詞。かすれは別資料で補う】 〽みせを だしても ちよく〳〵 見まわすは        なるまい □しが【わしが】 □□□□□【しまつたは】 人か いや かろう おにのよう□【た】のきじんだのとひとくちにはりこめとも なか〳〵そんな事ては なしやまとうたには つかもなくかんしんして いるきじんにおふどふ なし【鬼神に横道なし】のたといなにより たしかなたとへは 梅わかさまのこなんぎを うへから見てきのどくか□【り】 いくねんになる事かいま□【に】 二【三の上棒が欠損?】月十五日かゝさすなみたあめ そがきやうたいはとらかなみだのもらいなき いつまでもわすれぬ所 はなはだこ?がな しほうし?き ものなりきんねん てかわりのなみた あめとういふりやうけんか ちやにしてやめけるが けつこうじん【結構人】かと おもへはしよさいのない【如才のない】 所もあると 見へたり 【鬼神に横道なし:鬼神=天地の神霊は正道を外れることはしない。】 【梅若様:梅若は京都北白川の吉田少将の子だが、人買いに誘拐され、今の墨田区にある木母寺あたりで病死する。】 【二月十五日:梅若忌のことだと思うが、それなら三月十五日のはずなので、横棒が一本欠損しているかもしれない。】 【手替わり:前にしていた人とかわり、別の人がすること。】 【茶にする:馬鹿にする。】 【結構人:お人好し。】 【如才のない:ぬかりない。】 【ここで上巻が終わる。次コマより下巻】 《割書:新|板》天竺儲之筋(てんぢくもふけのすじ) 下 《割書:奥|村》 いづかたへもつかうのよき所へ 間口五けんのかふし つくりてんきで□□□【つくりてんきでもあめ/別資料で確認】 てもかせても御あつらへ 御のそみ次第と かんはんをいたしこれまて てうほうな事もしつくした あとなれともおにも おもひ つきは また かく へつな もんだと たち まちの うち ひやう ばん つよく おひ たゝ しき あつらい ある なり 【看板】 《割書:晴天|雨天》御誂所 【通行人の台詞】 なんだ 百両 とりかの どふも いへねへ いなかとはちかい はんくわな所ては あめのふらぬ ふんは とんしやく【とんじゃく=頓着】     も せねども はるの そう〳〵 しき【春の騒々しき】 ちふん【時分】しろの内 ねんれいでも【年礼でも】 しまうとおし めりをほしかり 弐百や三百は たし てもと われも〳〵と たのみてん ちくてはやじは きめいきん もつおにてやいも たい ていけむたい 事ては なし りやうほう のために なるゆへ すいふん おこゝろ もち しだいに まけれ とも おび たゝ しき 事ゆへ したゝか とりこみ さりな    から ふくろの くちさへ □けねば【あけねば/別資料で確認】 たのむものは なしなんでも す□□にして【すきにして/別資料で確認】 もふけたい よふに もふける 【台詞、別資料も汚れており解読が難しい】 五郎かやふ入も【薮入りも】 さつとあすは【?】 こゑんもんだ【?】 おふやさま【大家様】 おまへも 百五十おのり なさり ませ □し  たい? □□も はんだ から のつても  ゑゝ せつたやか【雪駄屋が】 三百だから げたやの【下駄屋の】 三 百 は ち□【ちと】 □□【あつ】 □□【かま】 □□【しか】 □□【ろふ】 【看板、別資料で確認】 かけねなし 下り【上方産の雪駄を、江戸では下り雪駄と言う】 あたり【?】 せつた品々 はんくわのちは かくへつ いなかよりの たのみおひたゝ しく【、】てんはたの【田畑の】 しつけしふん【仕付け時分=植え付けの頃】 とりこみしふんの ひより【日和】てふね【出船】 いりふね【入り船の】 かぜ  の たのみ なにから なにまて やらす のがさず うけこみ【請け込む=引き受ける】 かねは したゝか もふけ 人には うれし かられ いくらも しやうばいもあるものだが こんなまたにせもまねも【又偽も真似も】 できぬよいしやうはいも【出来ぬ良い商売も】 ねへものたとしたゝか【ねえものだと、したたか】 もふけなからみそを ふちあげるも【味噌を上げる=自慢する】 あやかりものなり【あやかり者=他人があやかりたいと思う幸せ者】 かまくらのさる 御大みやうひさしき おたのしみにて時後?十一日 おふねゆさんに【お船遊山に】 おいてなれは【おいでなれば】 一日てんきのよいよふにと 御たのみなれはずいぶん しやうちつかまつり ましたと十一日はきん ざいのしめりをうけ やつておりますがむまのせをわける と申このほうにもいたしかたが ござりますからちつともおきつかい はござりませぬはなびても御らん あそはしてゆるりとおかへり あそはしませかのほうはふらせ ますからゆうだちがせねはよい □【か】と後用心にはおよびませぬ 【客の台詞】 おまけに おかものへも【陸物へも=畑の作物へも】 たのみ申ます 【鬼の台詞】 七たんはんと【七反半と】 いふは  むらが  ちかい   ますの 【客の台詞】 いかさま やかたのあつい       も つまらぬものて ござる 【鬼の台詞】 かぜは しやう〳〵【少々】 ならは なり ます  まい 【かすれ・汚れ別資料で補う】 らいふうの二じん【雷風の二神】大かねもふけを するといふ事ほくとのほし【北斗の星】 きゝ給ひはくんせい【破軍星】のうち 一じん【一人】かちきやうしにあたり【?】 給ひらいふうしん【雷風神】のかたへ 来り給ひさて〳〵 おみたち【御身たち】はふらちせん ばんないたしかた□たい これまでわがまゝ ふりたいときは【降りたい時は】 いつまても ふつて人に あきはて られのらを こくときはやたてりにて せふもふ□□かゝつては【せふもふけにかゝつては】 てうほう□と【だと】 いわれ          ては このほうども まてかいふんか わるい【この方共まで(私達まで)外聞が悪い】 ごじつの かせに【期日の風?】 じうしつのあめか【終日の雨が?】 おさたまり それが そのほう たちか やくしや ここく しやう しゆ【五穀成就? コマ15にもあり】にとり おさめ させさへそれは ほかに なみたちのやういなくらくなものじや 事に きんきんはこくとのたからそれを【金銀は国土の宝、それを】 こつちへ しよしめてとらのかわのふんとしを どん すのまわしとおこ?りをつけても しよせん小の川谷風と いふおちもとられす よくしん【欲心】をやめ もふけたのは あつちへかへして しまつたりと おほしさまなとゝ いふものはてんても くつとうへにおいて なされはすこしも くもりかすみもなく あなをいつてきあつけ【?】 あふら【油?】をとりたまへは らいふうしん【雷風神】いちこんも【一言も】 なくいかさまふうきてんに有 なんのふそくもないにいかい たわけなてきこゝろと【出来心】 あやまりいる 【お星さまの台詞】 〽二人とも したいても【下ぃ(へ)でも】 おろされては【下ろされては】 つまるまい   【雷神・風神の台詞】 はい 〳〵 〳〵 おさよふ    て ご さり ます へい 〳〵 〳〵 【破軍星:北斗七星の柄杓の柄の先端の星と言われるが、ここでは「破軍星の星のうち一人」と書かれているので、北斗七星を構成する星全体を意味するか、あるいは破軍星が何人もいるという設定だろうか。】 【小野川・谷風:どちらも相撲の横綱の名前。】 もふけた やつをかへすつもりにしてみた所が すもふのしはいのふたうれたほとせにをかへし みるとたりねへもんたといふ事をきゝ およんているゆへかねをかへして たりぬ時は てこすり たすもの あんまり のろまな せんさく だと くふうをつけいつても の□【のんき?】なもの なれとも わけてほしかる 大晦日といふ所を はねにしてもふけた 金をいちふも【一分も】のこらすふらせけり よいくれでこさるとはかねの 事なれともこんな又よい くれもないもの日くれかた にはさつはりはらいを しまいかいたいものはこゝろ まかせきけんのわるい ものはひとりもなく よいくれて【良い暮れで】 ござりますと いふこへわらひこへ てんへひゞきらいふう じんの もふせんもすみて   よい正月をする 〽ふだんぢたいを【?】  だして  をく   かな 〽五両や十両    なんの      こつた 井戸へ   ふたを     しろよ ひきまとも  あけて  おきま   した これまてめつらしき 大みそかからあけの はるまだそのうへに ふふうの【風雨の】あんはい よくここくしやうしゆの【五穀成就の? コマ13にもあり】 うけやいはちがいなし てんにいつわりなき物 をとはころものうたいに【羽衣の謡いに】 ありてんの事を三?り【しり?】 いわねは長じやな?ると いふたとへあれとよい おてんきといわねは ならす田はたのために 二日もふるといま〳〵 しいひよりたのとあくたいを つくゆへおはらをおたち なされかみなりさまも やけをおこしいつかも〳〵【? 五日もを繰り返すのは不自然?】 いらぬほとおふりなさる そこてもつて天の事は いわぬものなりなんても あつちにしよさいはなし【如才はなし】 ■■通に御■■間【別資料もかすれ】 大極上々吉むるいの 春そ目出度     けれ 通笑作 春英画   【裏表紙】