【表紙】 寺子躾方 【右丁】 【裏表紙】文字無 【左丁】   寺子躾方  手習を。始て稽古其  仕やう。先つくゑをば。まつ  直にをき。硯の水は。八分 【右丁】 に。墨の上下に。気をつ けて。まからぬやうに。摺 なかし。うすひか。こひか。 すみの色。かけん見さた 【左丁】 め。筆をそめ。臂を。う かめて。篤ともち。手 本に向て。文字ことに。 大きゐ。小さひ。長。みち 【右丁】 か。広とせまひ。片つくり 冠。点 にう。夫〳〵に。夫 さうをうを。能見わけ。 筆のはこびに。浮し 【左丁】 つみ。一を引にも。うつ てんも。心をくはり。や わらかに。筆のいき ほひ。たるみなく。一字 【右丁】 なり共。合点して。手 本の文字に似やうに。 一字。かきては。高くよみ。 心をとめて。書ぬれば。 【左丁】 人にまさりて手ぞ あかる扨清書をは すみくろ〳〵とならび《割書: |よく》 まからぬやうに書習 【右丁】 べし 夫人のおしへは。兎角 幼少の時より。をしひ 馴れぬれば。さのみ格 【左丁】 別。六ヶ鋪。事にもあらず。 そのたとひ。大木とな る。松か枝も。若木の 時に。枝をため作れば。 【右丁】 つくる品かたち。行儀 正しく。なりぬべし。 おさなき。ころより。父 母の。仰そむかす。志た 【左丁】 かへよ先朝をきて機 嫌能。手水をつかひ。目を さまし、膳□【にヵ】へすわりて。 礼をのべ。たべを□□【わるヵ】迄 【右丁】 余所見せづ。料理。好 のすきぶすき。きらいな 物は。たべぬやう。必く【〳〵、々?】。 食このみ。いうば。見くる 【左丁】 し。たしなめよ。友たち。 よせて。遊とも、わるあ がきせす。髪かたち。衣 類。そこなひ。よこすなよ。 【右丁】 氏より。そたち。しとや かに。起居(たちゐ)ふるまひ。気 をつけよ。心におほひ。 口きかつ知ても。しらぬ。 【左丁】 ふりはよき。まして。我 より。としはいの。人の する事。もとくまじ。 しらぬ事をも。しりか 【右丁】 ほに。取計ぞ。見くるし き問は。当座の恥(はぢ)にして。 とわぬ。こゝろは。末代の。恥 と。おもひて。尋(たつ)ぬべし。 【左丁】 客のあいしらい。受。こた へ。詞の。くずの。なき。やう にあとさき。篤(とく)とかん かひて。万(よろず)。うちはに。す 【右丁】 るぞよき。縦令。男子(おのこ)。た りとも。殊に女はやわ らかに足。をと。たかく あるくまし。戸障子不 【左丁】 ふらず。へりくだり。夫 と。大切。親に孝。舅姑(しうと〳〵め) に。よくつかひ。一家。一門。 むつましく。我より。 【右丁】 下のものなりと。老たる 人は。会釈して。目上。 年上。敬(うや)まうを。これが。 誠の。道と。しるべし。 【左丁】 我儘に。育つる。親の。御 慈悲は。子の。あたとな り。成身するに。随て。 次第〳〵に気すいにて。 【右丁】 後は。我まゝ。無理いふ て。むりとも。しらづ。 ゑせりくち。ひとつ。ゆう にも。とがり声(こひ)問わづ 【左丁】 語(かたり)の。差出口。人の咄の 腰を折。しらぬ事をも。 しり顔に。そしり話 の。言葉くづ。とがめ。ら 【右丁】 れては。負をしみ。非 を理に。せんと。顔(かを)。いか め。扨者。悪口。雑言を。 聞が。いやさに。夫なり 【左丁】 に。よけて。通せば。足 元も見す。蹴(け)ちらか し。戸障子。ふすま。 うしろ手にしりの 【右丁】 しまらぬ。育から。人 のいやがる。わるざれて。 すきな。ことには。夜を ふかし。常はよひ 【左丁】 をとなしく。我と。わ が。身を。かゐり見て。身 持。正しく。育べし と有。ければ小児 【右丁】 たりとも。起(き)びし く。をしゆ。べし 【左丁】 一御客の。前は。不及申。家  内の者。たりとも。前を。  すべる。時は腰(こし)を。折べし。  増(まし)て。御客の。前/後(ご)。無作(ぶさ) 【右丁】 法(ほう)に。かけ廻(まわ)る。べから ず。其外。食物(しよくもつ)。諸し な。またげ。通る。べ からず 【左丁】 一夫女は。髪(かみ)の結(ゆひ)やう。衣裳(いしやう) の。もやうに。気(き)を。つくれば。あし き。所(ところ)をも。直(なを)る。道理(どうり)にて。風/俗(そく) の。たしなみ。女中の。第一。ゆへに。 【右丁】 兼好(けんこう)法師(はうし)も。女は。髪(かみ)の。目 出た。からんこそ。人の。目たつ。 へけれと。いわれけり 【左丁】 北総香取神領    追野村    一荷庵無一筆 【裏表紙】