【表紙】 【右上】【蔵書ラベル:部門 往来物|類|番號】 【右下】【蔵書ラベル:5函のD|號 1042|數 1|贈 入  望月購入】     【四段ラベル:T1A0|62|22|】【ラベル:青山】 【左】 【付箋:様|金 八圓|諸職往来|本郷區本郷六丁目帝大赤門前|會場赤門倶楽部|絶版古書籍陳列會場|書舗 木内誠 電話小石川五五七三番】 【蔵書ラベルは付箋で一部隠れているが、請求記号 T1A0/62/21と対比すると、「5函のD|番號 1042|冊數 1|寄贈購入  望月購入」となる】 【付箋下部は次コマ折り返し部分も合わせ記載している】 【右丁】 増補職人往来 【蔵書印 東京学藝大學圖書】 【上余白手書 倉橋村六左衛門|T1A0|62|22】 【左丁】 ながき世の  とをの   ねふりの  みなめざめ なみのりふねの  おとの よき  かな 宝船(たからふね)の事は 古書(こしよ)に見へす といへども地(ち)は 大海(だいかい)にうかべる ものなり  としの初(はじ)めより   船にのりたるこゝろにて    ゆだんすべからずとのしめしなるべし 【絵図内】 錦森丸 寳 【右丁】 ○武家(ぶけ)は大名小名に至(いた)るまで との様(さま)といふつねに智仁勇(ちじんゆう)の 三ッをもつて国家(こくか)をおさめ文(ぶん) 道(どう)をまなび理非(りひ)のふん明(めい)を 正(たゞ)して慈愛(じあい)をもつて民(たみ)を 撫育(ぶいく)し天命(てんめい)をわきまへて敵(てき)を くだく事を要(よう)とすこれを良(りやう) 将(しやう)とも名将(めいしやう)ともいふなり ○百姓(ひやくしやう)とかきておんたからと読(よむ) ことなりあまたの民(たみ)をいふ事 なれども今は耕作人(くうさくにん)ばかり を百姓(ひやくしやう)と思へり此/業(わざ)はわきて 手(て)まめ心まめなる人の田畠(でんはた)は下(げ) 田(でん)にても上田(しやうでん)のごとく実(み)のり五(ご)こく 豊饒(ぶねう)のさうをあらはし天下(てんか)を おだやかになさしむる大/業(ぎやう)なり 【左丁】 ○士農工商(しのうこうしやう)みな職(しよく)人なれ共今 は工人(こうじん)ばかり職人といひならはせり 番匠(ばんしやう)鍛冶(かぢ)其外一さいの上手(じやうず)たる ものは上つかたの器用(きよう)をおさめ あるひは受領(じゆりやう)など給はるゆへに 其わざを称美(せうび)していふなるべし されば其家(そのいへ)に生(うまれ)たる人は能々(よく〳〵) 心をいれ後世(こうせい)に名(な)をてらすべし ○商人(あきうど)はそれ〳〵の品(しな)を職人(しよくにん)の こしらへたる物(もの)を買取(かひとり)てその あはひを取(とる)をもつて家職(かしよく)とす されば正直(しやうじき)をたてゝ高利(かうり)を貪(むさぼる) ことをせざるをよしとす偽(いつは)りを いひて人をたぶらかすをかしこし と思ふは欲(よく)といふものゝなす事 にて甚(はなはだ)あやふき世わたりなり 【右丁 上段】 明日(あす)といふ心(こゝろ)に ものゝさへられて けふもむなしく 暮(くれ)はてに    けり 【左丁 上段】 文章法式指南(ぶんしやうほうしきしなん)【四角に囲む】 人はその身(み)の分(ぶん) 限(げん)を知(し)るべき事 第一也/常々(つね〴〵)心に 懸(かけ)らるべし然(しかう)して おのが分限より 一 位(い)卑下(ひげ)して よろづを取(とり)行(おこな)ふ ときは身(み)終(おはる)まて 過(あやまち)あるまじきか 殊(こと)さら此事を 沙汰(さた)す此頃(このころ)は諸(しよ) 【5コマ目上段に続く】 【右丁 下段】  諸職往来(しよしよくわうらい) 夫(それ)士農工商(しのこうしやう)者(は)国家(こくか)之(の)至寶(しほう) 日用万物(にちやうばんもつ)調達(ちやうたつ)之(の)本源(ほんげんと)可(べき)_レ謂(いつつ)也(なり) 就(づく)_レ/中(なかん)武門(ぶもん)者(は)為(たる)_二国土(こくど)之(の)守護(しゆご)_一 間(あいだ)庶民(しよみん)之(の)最上(さいじやう)也(なり)故(かるがゆへに)能(よく)守(まもり)_二仁義(じんぎを)【注①】 礼智信(れいちしんの)五常(ごしやうを)_一以(もつて)_二文道(ぶんどうを)_一脩(おさめ)_レ身(みを) 【左丁 下段】 依(よつて)_二武道(ぶどう)者(は)孫呉(そんこに)_一逞(たしまし)【注②】忠孝(ちうこうを)示(しめし)_レ他(たに) 正(ただし)_二政務(せいむを)_一専(もつはらにす)斉(とゝのふること)_レ家(いへを)以(もつて)_二系図(けいづを)_一彰(あらはし)_二先(せん) 祖(ぞを)_一以(もつて)_二感状(かんじやうを)_一伝(つたふ)_二功名(こうめいを)_一是(これ)武家(ぶけ)之(の)所(ゆ)_二- 以(ゑん)尚(たつとび)冀(こひねがふ)_一也 扨(さて)勤役(きんやく)坐列(ざれつ)之(の)次第(しだい)者(は) 家老(からう)用人(やうにん)留守居(るすゐ)城代(じやうたい)目附(めつけ) 奉行(ぶぎやう)給人(きうにん)物頭(ものがしら)籏本(はたもと)近習(きんじゆ)側(そば) 【5コマ目下段に続く】 【注① 「を」は衍ヵ。「仁義礼智信の五常を守り」と思われる。】 【注② 「たしまし」は「たくまし」ヵ】 【右丁 上段】 家(け)ともに慇懃(いんぎん)の 礼をもちひらる おの〳〵其こゝろへ 肝要(かんよう)なり ▲高位(かうい)高/官(くわん)にし て禄(ろく)軽(かろ)き人と 下官(げくわん)下位(げい)にして 禄おもき人は相(あい) 対(たい)すべきなり又 当時(とうじ)微力(びりよく)たり共 筋目(すじめ)貴(たつと)き人は 賞翫(しやうくわん)あるべし 如何(いか)にといふにその 【左丁 上段】 人/先祖(せんぞ)の禄(ろく)官位(くわんい) を相続(さうぞく)して来(きた)らば人々 求(もとめ)媚(こび)せん事もち ろんなり然(しか)れども 其人/不幸(ふかう)にして 当時(とうじ)卑賎(ひせん)たり共 いかでか往日(わうじつ)をおもは ざらん又/当時(とうじ)とき めく人なり共 本性(ほんしやう) 下賤(げせん)の人はさせる 賞翫(しやうくはん)あらずこれ 先輩(せんはい)のさだめ置(おか) るゝ所なり 【6コマ目上段に続く】 【右丁 下段】 使(つかひ)扈従(こしやう)納戸(なんど)郡奉行(こほりぶぎやう)代官(だいくわん)作(さく) 亊(じ)小普請掛(こぶしんがゝり)与力(よりき)同心(どうしん)祐筆(ゆうひつ) 勘定方(かんぢやうかた)同朋(どうぼう)茶道坊主(さどうぼうす)歩徒(かち) 足軽(あしがる)若党(わかとう)中間(ちうげん)小者(こもの)等(とう)迄(まで)応(をうじ)_二 職分(しよくぶん)之(の)高下(こうげに)_一知行(ちぎやう)扶持方(ふちかた)切米(きりまい) 給金(きうきん)可(べし)_レ宛(あて)_二【-脱ヵ】行(おこなふ)之(これを)_一預(あづかる)_二其(その)役(やくに)_一生(うまれて)_レ家(いへに) 【左丁 下段】 者(は)其職(そのしよく)者(は)更(さら)也(なり)第一(だいいち)可(べき)_レ学(まなぶ)者(は)弓(きう) 馬(ば)剣術(けんじゆつ)兵法(ひやうはう)柔術(じうじつ)鉄砲(てつほう)書筆(しよひつ) 算勘(さんかん)無(なく)_二怠慢(たいまん)_一相励(あいはげむ)則(ときは)以(もって)_二其功(そのこうを)_一加(か) 増(ぞう)立身(りつしんせ)者(ば)父祖(ふそ)裔孫(ゑいそん)迄(まで)面目(めんぼく)何(なに) 事(ごと)乎(か)如(しかん)_レ之(これに)次(つぎに)農業(のうぎやう)者(は)春(はる)耕(たがやし)種(たね) 蒔(まき)苗代(なはしろ)水掛引(みずのかけひき)畔塗(くろぬり)畦立(うねたて)夏(なつ) 【6コマ目下段に続く】 【右丁 上段】 ▲字体(じてい)の真行草(しんぎやうさう) はすなはち上中下 なり/真行草(しんぎやうさう)をもつ て貴賤(きせん)をわかつ べきなり ▲書状(しよじやう)したゝめ終(おは)り てはかならずよみかへし 落字(らくじ)ならびに文(もん) 言(ごん)の相違(さうい)よく〳〵 吟味(ぎんみ)すべし ▲順儀(じゆんぎ)一へんの書 状(しやう)は文言(もんごん)くどか らぬやうにおなじ 【左丁 上段】 文言(もんごん)を書(かゝ)ざるやう に文をつゞりて短(みじか)く したゝむべし但(たゞし)用(やう) 事(じ)《振り仮名:有_レ之|これあり》状(じやう)に文(もん) 言(ごん)を綴(つゞ)りすぎて 文のあやどりたるは 【7コマ目上段に続く】 【左丁 上段 絵図内】 □□(わがみ)をは我ほど 誰(たれ)か思ふべき我と あんじてわれと    おしえよ 【右丁 下段】 者(は)田植(たうへ)草取(くさとり)雩(あまごひ)《振り仮名:𦳊打|こえうち》秋(あきは)猪番(しゝのばん) 鳥追(とりおひ)案山子(かゝし)引板(ひた)鳴子(なるこ)添水(そふず)苅(かり) 田(た)稲扱(いねこき)籾磨(もみすり)懸(かけ)_二扇風車(とうみ)万石篩(まんごくとふしに)_一 俵(たはらを)拵([こ]しらへに)尽(つくし)_二情力(せいりやくを)_一年貢(ねんぐ)収納(しゆのふ)未進(みしん)無(なし) _レ之(これ)様(やう)平生(へいぜい)可(べき)_二心掛(こゝろがく)_一事(こと)肝要(かんやう)也(なり)旱(かん)【左ルビ:ひ】 魃(ばつ)【左ルビ:でり】水損(すいそん)於(おいて)_レ有(あるに)_レ之(これ)者(は)以(もつて)_二庄屋(しやうや)年寄(としより) 【左丁 下段】 組中(くみぢうを)_一訴(うつたへ)_二代官所(だいくわんしよへ)_一願(ねがひ)_二検見(けんみを)_一以(もつて)_二毛付(けつけ) 坪苅(つぼがりを)_一田畠(でんはた)何町(なんてう)某反(なんだん)幾畝(いくせ)何歩(なんほと) 以(もつて)_二度竿(けんざほを)_一改(あらため)_二民図帳(みづてうを)_一吟味(ぎんみ)相済(あいすみ)之(の)上(うへ) 可(べし)_レ請(うく)_二免許(めんきよを)_一雖(いへども)_レ在(ありと)_二満作豊年(まんさくほうねん)或(あるひは) 風雨(ふうう)不順(ふじゆん)之(の)障(さゝはり)_一聊(いさゝか)以(もつて)_二私欲(しよくを)_一掠(かすむる)_レ 上(かみを)事(こと) 可(べき)_レ恐(おそる)_二 天道(てんとうを)_一也(なり)将(はた)農具(のうぐ)者(は)鋤(すき)鍬(くわ)犂(からすき) 【7コマ目下段に続く】 【右丁 上段】 用事(やうじ)きこへかね るものなり用事の おもむきは箇条(かでう)に 上て書べきなり ▲人のため然(しか)るべから ざる噂(うはさ)わが身にあづ からぬ人の悪事(あくじ)取(とり) あつかふ事は遠慮(ゑんりよ) 有べし反古(ほうご)まぎれ ちりて身(み)の災(わざは)ひ を求(もとむ)る中立(なかだち)となる 事/世(よ)に多(おほ)し反(ほう) 古(ご)をむさと取(とり)切ら 【左丁 上段】 して他人(たにん)に披見(ひけん)せ られ人の非(ひ)を世(よ) に流布(るふ)すること 不仁(ふじん)の至(いたり)り【重複ヵ】也さつ そくに火中(くわちう)すべし ▲手跡(しゆせき)は風(ふう)おほく して文字の畧(やつ)し やうもいろ〳〵あり 但(たゞ)しやつしやうに よりて字性(じしやう)異(い) 体(てい)になりてよみ にくき字(じ)有/順(じゆん) 儀(ぎ)までの状(じやう)はよめ 【8コマ目上段へ続く】 【右丁 下段】 鎌(かま)連枷(からさほ)水擔桶(みづたご)龍骨車(りうこし)戽桶(なけつるべ) 拮槹(はねつるべ)筒車(みづぐるま)畚(もつこう)筐(かたみ)碓(ふみうす)碾(からうす)《振り仮名:𣇃臼|つみうす》【注】 挽磨(ひきうす)千石掻篩(せんごくとうし)杵(きね)簸(ひる)簾(とをし)蓑(みの) 笠(かさ)籮(ふご)檋(がんじき)橇(そり)肥(こやし)者(は)《振り仮名:下𦳊|しもごえ》干鰯(ほしか) 馬糞(ばふん)雪花菜(きらず)糠油絞粕(ぬかあぶらのしぼりかす)乾(ほし) 苔(のり)藁灰(わらばい)此類(このるい)也(なり)応(をうじ)_二其土地(そのとちの)作(さく) 【左丁 下段】 物(もつ)之(の)品(しな)_一宜(よろしく)計(はからふ)_レ之(これを)誠(まことに)農業(のうぎやう)者(は)生(せい) 民(みん)之(の)大本(たいほん)与(と)可(べし)_レ謂(いつつ)扨又(さてまた)工匠(こうしやう)之(の)輩(ともがら) 者(は)先(まづ)為(する)_レ首(しゆと)_二番匠(ばんしやう[を])_一也(なり)棟梁(とうりやう)大工(だいく)小工(せうく) 釿始(てをのはじめ)之(の)式法(しきほう)有(あり)惣而(さうじて)以(もつて)_二水盛(みづもりの)規(き) 矩(く)準縄(じゆんじやうを)_一定(さだめ)_レ之(これを)柱立(はしらだて)棟上(むねあげ)者(は)撰(えらふ)_二吉(きち) 日(にち)良辰(りやうしんを)_一事(こと)也(なり)御殿(ごてん)神社(じんしや)拝殿(はいでん) 【8コマ目下段へ続く】 【注 「つみうす」は「つきうす」ヵ】 【右丁 上段】 ずとも扨(さて)有べし 若(もし)用事(やうじ)これある 状(じやう)にいたりては事 の害(がい)たるべし殊(こと) に貴人(きにん)へ奉る書(しよ) 状(じやう)には全(まつた)き字(じ)を 用ひらるべき也 ▲用事(やうじ)に付てとり かはす状はその用 事/落着(らくじやく)せざるう ちはとめ置(おき)わが 返事(へんじ)の趣(おもむき)をも書(かき) 留置(とめおく)べし又/遠国(ゑんごく) 【左丁 上段】 より来(きた)りし状は 相(あい)とゞきたる日をば 書付(かきつけ)をき返事(へんじ) せしむる時(とき)此よし を申遣すべし人の 思(おも)ひよりてさし越(こし) たるこゝろざしを 疎(おろそか)にせざる心也 ▲疎意(そい)すまじき 人に久しく無音(ぶいん) しては其/理(ことはり)を申 ひらく事/礼(れい)なり 然(しか)るをあるひは虚(きよ) 【9コマ目上段へ続く】 【右丁 下段】 花衣(とりゐ)随身門(ずいじんもん)神楽殿(かぐらでん)仏閣(ぶつかく)者(は) 四天門(してんもん)堂塔(どうとう)伽藍(がらん)庫裏(くり)客殿(きやくでん) 象鼻彫物(ぞうばなほりもの)廻廊(くわいらう)書院(しよいん)座敷圍(ざしきかこい) 之(の)物数寄(ものずき)萱葺(かやぶき)藁葺(わらぶき)杮瓦(こけらかはら) 見世店(みせたな)土蔵(どさう)文庫(ぶんこ)窖(あなぐら)任(まかせ)_二其(その)所(ところの)_レ望(のそむに)_一【注】 造営(ざうゑいす)又者(または)破損(はそん)等(とう)可(べき)_レ加(くはふ)_二修覆(しゆふく)_一也(なり)猶(なを)可(べし) 【左丁 下段】 _レ有(ある)_二勘弁(かんべん)_一持扱(もちあつかふ)道具(どうぐ)者(は)釿(てをの)鉋(かんな) 鑿(のみ)柊揆(さいつち)錐(きり)小刀(こかたな)鋸(のこぎり)挽廻(ひきまはし)《振り仮名:鼡|が■》 歯(り)斧(をの)鉄槌(かなつち)鐇(まさかり)玄翁(げんおう)鐁(やりかんな)曲尺(さしがね) 墨斗(すみつぼ)捻(すみさし)鑢(やすり)釘貫(くぎぬき)等(とう)也(なり)又(また)蓋屋(やね) 匠(ふき)者(は)檜皮(ひはだ)枌板(そぎいた)竹釘(たけくぎ)台切(だいぎり)片(へぎ) 包丁(ほうてう)谷(たに)之(の)取合(とりあい)破風(はふ)軒口(のきくち)惣而(さうじて) 【注 「望」にレ点があるため、「其(その)望(のぞむ)所(ところに)任(まかせ)」となる。レ点がなければ、「其(その)所(ところの)望(のぞむに)任(まかせ)」となる】 【右丁 上段】 病(びやう)をかまへあるひは 他事(たじ)に付ても偽(いつはり) をかまえんと怠(おこたり)を 申ひらくことゆめ〳〵 有(ある)まじきことなり 書状(しよじやう)には勿論(もちろん)常(つね) 〴〵仮(かり)にも偽(いつは)りを 忌(いみ)おそるべしいかに といふにその事を いつはるに依(よつ)て後日(ごにち) に其(その)人に参会(さんくわい)し 又/書通(しよつう)のごときも 已然(いぜん)の申わけを失(しつ) 【左丁 上段】 念(ねん)して大に相違(さうい) する事ありしからば 其人の心ざしも 推量(おしはか)られて無念(むねん) の事たるべし只(たゞ)廉(れん) 直(ちよく)のおもむきを以 て申ことはるべし 事のもれ安(やす)きを つねにおそれて其(その) 独(ひとり)をつゝしむべし ▲状面(じやうめん)墨次(すみつぎ)の事 常(つね)のことなれば鍛(たん) 煉(れん)あるべし状面(じやうめん) 【10コマ目上段へ続く】 【右丁 下段】 恰好(かつこう)可(べし)_レ揃(そろゆ)_レ之(これを)《振り仮名:壁𣏓|かべぬり》者(は)以(もつてし)_二鏝堅(こて) 單板(こていた)定木(でうぎを)_一漆喰(しつくひ)大津(おほつ)泥藍(どろあい) 沙壁(すなかべ)下地(したぢ)小舞(こまひ)/全(まつたく)用意(ようい)之(の)事(こと) 翠簾屋(みすや)者(は)畫簾(ゑすだれ)絵筵(ゑむしろ)華(はな) 毛氈(もうせん)芦簾(よしすだれ)管簾(くだすだれ)畳刺(たゝみさし)者(は)雲(うん) 限縁(げんべり)大紋小紋縁(だいもんせうもんへり)紺縁(こんへり)備後(びんご) 【左丁 下段】 表(おもて)琉球表(りうきうおもて)珠数(じゆず)挽牽鑚(ひきろくろ)之(の) 細工(さいく)七寶(しつほう)四天錺(してんのかざり)水晶(すいしやう)之(の)陀妻(だつま) 珊瑚珠(さんごじゆ)之(の)百八(ひやくはち)檀特(だんどく)金剛樹(こんごうじゆ) 菩提樹(ぼたいじゆ)/木患子(もくげんじ)薏苡仁(すゞだま)蓮肉(はすのみ) 各(おの〳〵)依(よつて)_二宗門(しうもんに)_一繋(つなぐ)可(べし)_レ有(ある)_二差別(しやべつ)_一佛(ぶつ) 師(し)者(は)従(より)_二法橋(ほうきやう)定朝(でうちやう)_一相続(あいつゞき)而(て)数(す) 【右丁 上段】 のあしきは其人の 行跡(ふるまひ)のほどをはか られあさましき ことなり其内(そのうち)墨(すみ)に 付て外(ほか)にならひ こと有(あり)といへば心に かくべきなり ▲我身(わがみ)の用事(やうじ)を たのみ遣(つかは)す書状(しよじやう) には常(つね)よりも文言(もんごん) を恭(うや〳〵)しく引(ひき)つく ろひしかるべし 是(これ)はあらためて諂(へつら) 【左丁 上段】 ふにはあらず其人 の心ざしを報(ほうず)る ところなり ▲貴人(きにん)に奉る書(しよ) 状(じやう)におのが分(ぶん)に過(すぎ) たる料紙(りやうし)あるひは 【11コマ目上段へ続く】 【左丁 上段 絵図内】 見も わかぬ 書籍(しよじやく)を つゞり 読(よま)んより 物(もの) しる  人の 雑談(ぞうだん)を  きけ 【右丁 下段】 代(だい)七条大宮流(しちでうおほみやりう)奈良流(ならりう)又(また)運(うん) 慶(けい)湛慶(たんけい)者(は)鎌倉仏師(かまくらぶつし)与(と)云(いふ)亦(また) 安阿弥(あんあみ)快慶(くわいけい)有(あり)須弥座(しゆみざ)唐(から) 座(ざ)岩座(いはざ)七重座(しちじうざ)舩後光(ふなごくはう)輪光(りんくわう) 細金(ほそがね)彩色(さいしき)箔佛(はくぶつ)泥像(でいぞう)宮殿(きうでん) 厨子(づし)任(まかせ)_二注文(ちうもんに)_一可(べし)_レ《振り仮名:彫-刻|てうこくす》_レ之(これを)板木屋(はんぎや) 【左丁 下段】 印判師(いんばんし)者(は)古文字(こもんじ)篆字(てんじ)隷(れい) 書(しよ)籒文(らうもん)【注】八分字(はつふんじ)真行草(しんぎやうさう)也(なり) 以(もつて)_二金銀(きん〴〵)銅(あかゞね)水晶(すいしやう)琥珀(こはく)蠟石(らうせき)黄(つ) 楊(げを)_一彫刻(てうこくす)宮大工(みやだいく)者(は)鎮守之祠(ちんじゆのやしろ) 禿倉(ほこら)者(は)向拝(ごはい)欄檻(らんかん)護朽(ぎぼうし)蔀(しとみ) 槅(こうし)階子(きざはし)神輿(みこし)者(は)鳥居(とりい)籬(まがき)瓔珞(ようらく) 【注 振り仮名は「ちうもん」ヵ】 【右丁 上段】 麁紙(あくし)あるひは色(いろ) 帋(がみ)半切(はんきり)の紙(かみ)すぎ はらにあらざる料(りやう) 紙(し)は用(もち)ゆべからず ▲和字(わじ)難字(なんじ)の事 ふだん心にかけて 吟味(ぎんみ)し本字(ほんじ)正(せう) 字(じ)をもつて認(したゝむ)べし 片言(かたこと)をあらため 本語(ほんご)をせんさく して書(かゝ)ざればその 人の常(つね)をはかられ あさまに思(おも)はるゝもの 【左丁 上段】 なり書中(しよちう)は勿論(もちろん) つねの詞(ことば)にもつゝし むべき事なり ▲文才(もんさい)ある輩(ともがら)は 其/才(さい)をはたらかせ て言(ことば)をたくみに古(こ) 語(ご)旧文(きうもん)を引(ひき)また 通例(つうれい)人のしら ざる文字(もんじ)并【注】物(もの)の 異名(いめう)を書(かく)をみづ から至(いた)れりと おもへり当流(とうりう)には これをもちひず 【12コマ目上段に続く】 【注 東京学芸大学教育コンテンツアーカイブ所蔵の異本(請求記号T1A0/62/21)には「(ならひ)に」と送り仮名・助詞あり】 【右丁 下段】 御前屋(おまへや)金佛壇(きんぶつだん)来迎柱 (らいこうばしら)透(すかし) 彫物(ほりもの)応(をうじ)_二其價(そのあたへに)_一而(て)結構(けつこう)無(なし)_レ限(かぎり)造(つくり) 花(はな)者(は)蝋引(らうびき)水打(みづうち)性摸(しやううつしは)誠(まことに)四季(しき) 目前(もくぜん)之(の)詠(ながめ)行人(いくひと)足(あしを)止(とゞむ)次(つぎに)碁局屋(ごばんやは) 局子(ごいし)碁奩(ごげ)象戯枰(しやうぎばん)【杵ヵ】駒(こま)双六(すごろく) 盤(ばん)采骰子(さいつゝ)等(とう)也(なり)琴師(ことし)者(は)筝(さう)和(わ) 【左丁 下段】 琴(ごん)者(は)海濵(うみはま)磯(いそ)龍角(りうかく)天人(てんにん)座(ざ) 柏葉(かしはば)鞠形(まりがた)三弦(さみせん)者(は)胴(どう)棹(さほ)猿尾(さるお) 根緒(ねを)天軫(てんじん)糸倉(いとくら)海老尾(かいらうび)琵琶(びは) 者(は)撥面(ばちめん)絡帯(らくたい)半月(はんげつ)兎眼(めんがん)【注①】覆手(ふくしゆ) 槽(こく)【注②】柱(ちう)皆(みな)一面中(いちめんちう)之(の)名所(めいしよ)也(なり)胡弓(こきう) 瑟(ひつ)阮(げん)等(とう)此職(このしよく)之(の)預(あづかる)所(ところ)歟(か)皆(みな)金銀(きん〴〵) 【12コマ目下段に続く】 【注① 振り仮名は「とがん」ヵ。「兎」を「免」に誤読ヵ】 【注② 「槽」は「胴の背面の板」の名称と思われる。読みは「そう」。別名「甲(こう)」とも】 【右丁 上段】 只(たゞ)なだらかに読(よみ)や すく言(ことば)のしりも いやしからぬを第一 とす去(さり)ながら昔(むかし) よりもちひ来(きた)り たる異名(いめう)古語(こご) をすつべきにも あらず其(その)人体(じんたい)に よるべきかたとへは 法体(ほつたい)の隠者(いんじや)【注①】風(ふう) 雅(が)の好士(こうず)などの かたへは訴状(そじやう)請(うけ)状 などのやうなる 【注① 「隠者(いんじや)」は難読につき東京学芸大学教育コンテンツアーカイブ所蔵の異本(請求記号T1A0/62/21)に依った。 【左丁 上段】 差別(しやべつ)有べし同(どう) 輩(はい)よりも以下(いげ)は 少(すこ)しこばしたるも にくむまじき なり只(たゞ)うやまひの 状(じやう)にはあまりかたく 有まじき事也 ▲書中(しよちう)の文字(もじ) づかひのことは音(こへ)にて 聞(きこ)ゆる字(じ)は行(ぎやう)に 書(かく)べし訓(よみ)にて聞(きこ) ゆる字(じ)は草(さう)に書 べしと有/夫(それ)にも 【13コマ目上段に続く】 【右丁 下段】 鍍金(めつき)に而 飾(かざる)_レ之(これを)糸組(いとくみ)者(は)総角(あげまき)花(け) 蔓(まん)胸紐(むなひも)練糸(ねりいと)縫糸(ぬひいと)以(もつて)【二点脱ヵ】籆(わく)■(かせ)【注②】 撥拊(はつふを)_一 五色(ごしき)之(の)巻分(まきわけ)天蝅糸(てぐす)者(は)漁(りやう) 者(し)之(の)所(ところ)_レ用(もちゆる)投網(たうあみ)打網(うちあみ)纚(さで)以(もつて)_二捻苧(ひねりそ)_一 合(あはせ)_レ糸(いとを)《振り仮名:透_二-立|すきたつる》之(これを)_一櫛挽(くしひきは)捙梳(さしぐし)【注③】扺子(か[う]がい)【注④】 笄(かんざし)櫛拂(くしはらい)鏡磨(かゞみときは)当世(たうせい)風流(ふうりう)之(の)菅(すげ) 【左丁 下段】 笠(がさ)編笠(あみがさ)網代笠(あじろかさ)綿帽子(わたぼうし)引綿(ひきわた) ■(はづ)【注⑤】塗桶(ぬりをけ)是(これ)女(をんな)童(わらべ)之(の)手業(てわざ)也(なり) 傘(からかさ)挑燈張(てうちんはり)轆轤挽(ろくろひき)木履(ぼくり)足(あし) 駄(だ)草履(ざうり)下駄(げた)籠(かご)筲(いかき)箕(み)水嚢(すいのう) 簣作(かたみつくり)鞢(ゆがけ)弓矢(ゆみや)師 ̄は漆籠(ぬりこめ)重藤(しげどう) 楊弓(やうきう)雀小弓(すゞめこゆみ)矢筒(やづゝ)矢箱(やばこ)胡籙(やなぐゐ) 【13コマ目下段に続く】 【注② ■は「糸+瞿」。字形は「繀」ヵ。物は「綛」ヵ】 【注③ 「捙」は「挿」の誤ヵ。天保刊本は「挿」】 【注④ 振り仮名「かうがい」は、天保刊本参照】 【注⑤ ■は「糸+筈」】 【右丁 上段】 よるべからずその内(うち) 文字(もじ)のやまひを よく弁(わきま)へて書べし 又/書中(しよちう)にかぎら す惣(そう)じて義理(ぎり) へんつくり冠(かふり)等の 点畫(てんかく)をよく〳〵 穿鑿(せんさく)して書(かく)べし 真(しん)にて各別(かくべつ)の 字(じ)を草(そう)に畧(りやく)せ ば混雑(こんざつ)する字(し)も あるなりこと〴〵く たゞし覚(おぼ)ゆべし 【左丁 上段】 是(これ)をあらためん とおもはゝ分毫字(ぶんごうじ)【注①】 語録字義(ごろくじぎ)といふ 書(しよ)ありこれを見(み)て よく〳〵熟讀(じゆくどく)すべし 【左丁 上段 絵図内】 老(おい)たるも  わかきも 人は うちばなれ 出(で)すぎものぞと  いはれては     うし 【右丁 下段】 指物(さしもの)細工(さいく)者(は)覃笥(たんす)【箪の誤】長持(ながもち)櫃(ひつ)手箱(てばこ) 檜物師(ひものし)者(は)木具(きぐ)三方(さんぼう)花足(けそく)嶋臺(しまだい) 柄杓(ひしやく)匙笥(かいげ)櫃(へぎ)之(の)類(るい)檜(ひのき)或(あるひは)杦(すぎ)桐(きり)造(つくり) 細工(さいく)尤(もつとも)物数寄(ものずき)奇麗(きれい)恰好(かつこう)専一(せんいち) 之(の)事也(ことなり)鍛工(たんこう)者(は)俗(ぞくに)鍛冶(かぢ)与(と)云(いふ)釼刀(けんとう) 打物作(うちものつくりを)為(なす)_レ 上(じやうと)工【注②】釼(つるぎ)者(は)亀文(すゞやき)漫(みだれ)理湾(やきのたれ) 【左丁 下段】 錵(にえ)匂(にほひ)瑕(きず)錆(さび)帽子(ぼうし)鎬(しのぎ)棟(むね)鋒端(きづさき) 刃渡(やきばわたし)鑠(うねわたし)備(そなへ)挫(へし)鍛(きたへ)束(つかね)銑(せん)透(すき)銘(めい) 中心(なかご)鑢子(やすり)鑽(たがね)利(とき)鈍(にぶき)者(は)監定(めきゝ)有(あり) 鉾(ほこ)薙刀(なぎなた)鏃(やのね)槍(やり)等(とう)迄(まで)打(うつ)也(なり)磨工(とぎし)者(は)麁(あら) 砥(と)中磨(なかど)精磨(うはとぎ)瑩(みがき)之(の)次第(しだい)有(あり) 此外(このほか)薄刃(うすば)出刃(でば)包丁(ほうてう)鋏(はさみ)鑷子(けぬき) 【14コマ目下段に続く】 【注① 「分毫字辨」ヵ】 【注② 異本は、「為(なす)_二 上工(じやうくと)_一」とあり】 【右丁 上段】 本朝三筆(ほんてうさんひつ)【矩形で囲む】 嵯峨天皇(さがてんわう)は 人皇(にんわう)五十二代の 聖主(せいしゆ)御いみ名(な)は 神野親王(かみのゝしんわう)と申 たてまつれり桓武(くはんむ) 天皇(てんわう)の第(だい)二の皇(わう) 子(じ)にてまし〳〵けり つねに経典(けいてん)を好(この) ませ給ひ文章(ぶんしやう)は 玉(たま)をのべ筆勢(ひつせい)は 龍虎(りやうこ)の勢(いきほ)ひし 【左丁 上段】 たまふ弘仁(こうにん)九年 四月 殿閣(でんがく)の諸(しよ) 門(もん)の額(がく)をこと〴〵く 書(かき)あらためらるゝ に北門(ほくもん)はすなはち 御宸筆(ごしんひつ)にて 東(ひかし)おもては橘(たちばな)の 速勢(はやなり)南西(みなみにし)なら びに應天門(をんてんもん)は 弘法大師空海(こうぼうたいしくうかい)に 書(かゝ)せらるなを 花(はな)の宴(ゑん)も此(この)御代(みよ) にはじまるとなり 【15コマ目上段に続く】 【右丁 下段】 小刀(こがだな)鉈(なた)釘(くぎ)鋲(びやう)等(とう)雑具(ざうひん)之(の)鉄匠(かぢ)銅(どう) 壷(こ)薬鑵(やくわん)類(るい)之(の)職方(しよくかた)飾金具師(かざりかなぐし) 彫物師(ほりものし)者(は)後藤氏(ごとううじ)代々(だい〳〵)家彫(いへぼり)与(と)云(いふ) 其外(そのほか)奈良鐫(ならぼり)横谷(よこや)大森(おほもり)柳川(やながわ) 濱野(はまの)等(とう)之(の)名家(めいか)有(あり)所謂(いはゆる)縁頭(ふちかしら)目(め) 貫(ぬき)鐔(つば)小柄(こづか)揥枝(かうがい)高彫(たかぼり)平彫(ひらぼり)片切(かたきり) 【左丁 下段】 彫(ほり)色繪(いろゑ)象眼(ざうがん)魚々子(なゝこ)金覆輪(きんふくりん) 各(おの〳〵)用(もちひ)_二槖籥(ふいごうを)_一造(つくる)_レ之(これを)冶工(やこう)者(は)俗(ぞくに)云(いふ)鋳(い) 物師(ものし)也(なり)錫(すゞ)道具(どうぐ)鍋(なべ)釜(かま)鑵子(くわんす)提飯(ひさげはん) 銅(どう)薬研(やげん)硫黄突(いわうつき)燈心引(とうしんひき)油絞(あぶらしぼり)仏(ぶつ) 像(ざう)佛具(ぶつぐ)等(とう)銅(あかあかがね)鉄(てつを)堝壷(るつぼに)盛(もり)以(もつて)_二踏鞴(たたらを)_一 鑠(とろかし)_レ之(これを)型(いがたに)流而(ながして)造立(さくりうす)秤屋(はかりや)者(は)於(おいて)_二東国(とうごくに)_一 【15コマ目下段に続く】 【右丁 上段】 橘逸勢(たちばなのはやなり) 尚書(しやうしよ)太夫(たゆふ)入居(いりすへ)の 御/子(こ)といえりその 才名(さいめい)もろこしの 書(しよ)にも書(かき)のせ たりもつとも 入木(じゆぼく)の道(みち)にくわ しくてありける 嵯峨天皇(さがてんわう)の召(めし) を承(うけたまはつ)て宮門(きうもん)の 扁額(がく)をしたゝめ 世(よ)のほまれを取(とり) ける桓武天皇(くわんむてんわう) 【左丁 上段】 の御宇(ぎよう)延暦(ゑんりやく)の すへに遣唐使(けんたうし)に したがひ藤原(ふぢはら)の 賀能(かのう)ともに唐土(もろこし) にいたりて学業(がくぎやう)を まなびとゞまる事 二年にして空海(くうかい) と同舩(どうせん)して帰(き) 朝(てう)すもろこし 人もその藝能(げいのう) をほめて橘秀才(きつしうさい) と称(せう)しけると いえり 【16コマ目上段へ続く】 【右丁 下段】 者(は)守随彦太郎(しゆずいひこたらう)西国(さいこく)者(は)神善四郎(かみぜんしらう) 此(この)両家(りやうけ)之(の)外(ほか)堅(かたく)御製禁(ごせいきん)也(なり)釐等(れてぐ) 杜秤(ちぎ)衡(さほ)錘(おもり)天秤(てんびん)針口(はりぐち)将(はた)分銅(ふんどう)者(は) 後藤(ごとう)今(いま)極(きはめ)是(これ)皆(みな)《振り仮名:権_二-糺|はかりたゝす》物之(ものゝ)軽重(けいぢうを)_一 之(の)具(ぐ)廉直(れんちよくに)可(べき)_二製作(せいさくす)_一所(ところ)也(なり)畫工(ぐわこう)者(は) 流儀(りうぎ)區々(まち〳〵)也(なり)和漢(わかん)今古(こんこ)之(の)差別(しゃべつ) 【左丁 下段】 有(あり)先(まづ)土佐流(とさりう)者(は)元祖(ぐはんそ)土佐守(とさのかみ) 経隆(つねたか)竹光(たけみつ)越前守光重(ゑちぜんのかみみつしげ)廣(ひろ) 周弾正(ちかだんじやう)光信右近将監(みつのぶうこんしやうげん)与(と)相(さう) 續(そくし)而(て)尓今(いまに)禁裡(きんり)御繪所(おんゑどころを)預(あづかる)也(なり) 狩野流(かのりう)者(は)越前守祐清正信(ゑちぜんのかみゆうせいまさのぶを) 爲(す)_レ祖(そと)其子(そのこ)永仙元信(ゑいせんもとのぶ)是(これ)世(よに)称(せうす)_二 【16コマ目下段へ続く】 【右丁 上段】 釋空海(しやくくうかい) 讃岐國(さぬきのくに)屏風浦(びやうぶうら) の住人(じゆうにん)佐伯直氏(さえきなをうじ) の子(こ)にて幼名(やうめう)貴物(きぶつ) といひしおさなき より才智(さいち)凢(ぼん)なら ず廿/歳(さい)にして釈(しやく) 門(もん)に入て仏教(ぶつけう)を まなび終(つい)に天下 の博識(はくしき)となり後 密教(みつけう)を宗(しう)と弘(ひろめ) し也ことさら書筆(しよひつ) 世に越(こへ)けり唐(もろこし)にて 【左丁 上段】 口(くち)両手足(りやうしゆそく)にて一時(いちじ) に五字(こじ)を書(しよ)す かるがゆへに五筆(ごひつ) 和尚(おせう)と称(せう)す帰朝(きてう) して弘仁帝(こうにんてい)の 勅(ちよく)にて應天門(をうてんもん) の額(がく)を書(かく)其(その)一点(いつてん) を闕(かき)しより空海(くうかい) 茟(ふで)をとりてこれを おぎなひ妙(めう)を あらはすすべて 不思儀(ふしぎ)のことども 世(よ)に知(し)る所(ところ)なり 【17コマ目上段に続く】 【右丁 下段】 古法眼(こほうがんと)_一也(なり)祐雪(ゆうせつ)松栄(しやうゑい)永徳(ゑいとく)右(う) 京(きやう)左近(さこん)右近孝信(うこんたかのぶ)之(の)三子(さんし)探(たん) 幽守信(ゆうもりのぶ)主馬尚信(しゆめなをのぶ)永真安信(ゑいしんやすのぶ) 此(この)三家(さんけ)連綿(れんめんし)而(て) 公儀(こうぎの)御繪所(おんゑところ) 也(なり)従(より)_レ此(これ)別家(べつけ)弟子家(でしけ)有(あり)此(この) 外(ほか)者(は)町絵(まちゑ)与(と)云(いふ)雪舟流(せつしうりう)元祖(ぐはんそ)者(は) 【左丁 下段】 非(あらず)_二畫家(ぐわかに)_一禅僧(ぜんそうにし)而(て)相国寺(さうこくじ)之(の)至(いたる)【二点脱ヵ】知(ち) 客(かくに)_一性質(うまれつき)画(えを)好(このみ)而(て)師(しとす)_二周文(しうぶん)如拙(ぢよせつを)_一後(のち) 大明國(たいみんこくに)渡(わたる)帰朝(きてうし)而(て)防州(ぼうしう)雲谷寺(うんこくじに) 住(じうす)雪村(せつそん)継(つぐ)_レ之(これを)今(いま)長谷川(はせがわ)雲谷(うんこく)等(とう) 苗氏(めうじは)此(この)畫裔(ぐわゑい)也(なり)其外(そのほか)仏繪師(ぶつゑし) 風俗絵師(ふうぞくゑし)等(とう)也(なり)筆匠(ふでゆひ)者(は)書画(しよぐわ)共(とも) 【17コマ目下段に続く】 【右丁 上段】 承和(しやうわ)二年三月廿一日 紀州(きしう)高野山(かうやさん)にて 入定(にうぜう)し給ふ後(のち)弘法(こうぼう) 大師(だいし)と諡(おくりな)を得(え) たまふとなり 【左丁 上段】 唐土(もろこし)の三筆(さんひつ)【矩形で囲む】 張芝(ちやうし)は字(あざな)を伯英(さくえい) といふ生質(うまれつき)書(しよ)を このみしかば家内(かない) のもの衣類(いるい)着類(ちやくるい)迄 こと〴〵く書(しよ)をなさ ずといふことなし 常(つね)に麗水(れひすい)乏(とぼし)く すゞりの水(みつ)に窮(きう)す 住(すむ)かたはらに臨(のぞん)と【てヵ】 其侭(そのまゝ)池水(いけみつ)を以て 書をまなびける 【18コマ目上段に続く】 【右丁 下段】 倭漢(わかん)雅俗(がぞく)各別(かくべつにし)而(て)可(べし)_レ應(をうず)_二其(その)流義(りうぎに)_一 染物屋(そめものや)者(は)紺搔(こんかき)也(なり)藍染(あいぞめ)第一(だいいち)也(なり) 浅黄(あさき)空色(そらいろ)花色(はないろ)萌黄(もえぎ)檳榔子(びんらうじ) 茜(あかね)蘇枋(すほう)欝金(うこん)兼房(けんぼう)鼠色(ねずみいろ)茶(ちや) 類(るい)者(は)数品(すひん)有(あり)定紋(でうもん)小紋(こもん)摸様(もやう)者(は) 時節(じせつ)之(の)流行(はやり)也(なり)紅染(べにぞめ)紫染(むらさきぞめ)屋(や)者(は) 【左丁 下段】 別職(べつしよく)也(なり)石工(いしく)者(は)穴太(あなふと)与(と)云(いふ)結砌(いしがき)礎(いしずへ) 甃(いしだゝみ)仏體(ぶつたい)灯籠(とうろう)水鉢(みづばち)塔(とふ)墳(はか)碑(いしぶみ)也(なり) 石(いし)者(は)諸國(しよこく)之(の)所産(しよさん)名品(めいひん)多(おほし)山谷(さんこく) 之(の)樵夫(きこり)炭焼(すみやき)獠者(かりうど)江河(こうが)之(の)漁(すな) 人(どり)潜家郎(かづきのあまにに)至(いたる)迄(まで)民業(たみのなりはい)若干(そこばくにし)而(て) 具(つぶさに)難(かたし)_二牧挙(かぞへあげ)_一【注】凡(およそ)諸職人(しよしよくにん)受領(じゆりやう)之(の)官(くわん) 【18コマ目下段に続く】 【注 「牧挙」は「枚挙」の誤記】 【右丁 上段】 となり此ゆへに筆(ひつ) 道(だう)を臨池(りんち)の《振り仮名:業|き■■》 といふ其昔(そのかみ)崔氏(さいし) が《振り仮名:肉|■■■■》張氏(ちやうし)が骨(ほね)と いふこれを兼備(かねそな)へ し人なり韋沖将(いちうしやう) といへる人/草聖(さうせふ)と ほめしとなり 鍾繇(しやうよう)字(あざな)は元常(けんじやう) 少(わか)くして劉勝(りうせう)に したがひて書(しよ)を まなふ事/三年(みとせ)に して終(つひ)に韋誕(いたん)と 【左丁 上段】 いふものに筆法(ひつぼう)を 学(まな)ぶことを乞(こ)ふと いへども是(これ)をおし みて与(あた)へさりしかば すなはち胸(むね)をうち て血(ち)をはきしを見(み)て 太祖(たいそ)あはれみ五(ご) 霊丹(れいたん)をもつて これをすくひける 其のち韋誕(いたん)は 鍾繇(しやうよう)ひそかに其 墓(はか)にゆき人を以て これをあばきて 【19コマ目上段に続く】 【右丁 下段】 名(めうを)申(まうし)賜(たまはり)名人(めいじん)上手(じやうず)器用(きやうの)顕(あらはす)_二名誉(めいよを)_一 事(こと)非(あらず)_二其(その)身計(みばかりの)手柄(てがらに)【一点脱】栄耀(ゑようを)傳(つたふる)に_二【注①】子(し) 孫(そんに)_一徳(とく)廣大(くわうだい)也(なり)旦暮(たんぼ)無(なく)_二油断(ゆだん)_一凝(こらし)_二工(く) 夫(ふうを)_一可(べき)_二励勤(はげみつとむ)_一者(もの)也(なり)扨(さて)商人(あきうど)者(は)諸物(しよぶつを)為(するが)_二 交易(こうゑき)_一家職(かしよく)也(なり)以(もつて)_二帳面(ちやうめんを)_一算盤(そろばんは)左(さ) 右(ゆう)之(の)如(ごとし)_二臣下(しんかの)_一又(また)爲(し)_二昼(ひるは)鑑(かがみと)_一爲(し)_二夜(よるは)枕(まくらと) 【左丁 下段】 毎日(まいにち)之(の)考(かんがへ)_二相場(さうば)与(と)時矦(じこうを)_一【注②】賣買(ばい〳〵の)可(べし) _レ有(ある)_二駈引(かけひき)_一利潤(りじゆん)者(は)常(つねに)所(ところ)_レ得(うる)故(ゆへ)早(はやく)知(しり)_二 損失(そんしつを)_一廻(めぐらし)_二氣転(きてんを)【一点脱】賣拂(うりはらひ)買入(かひいれ)専一(せんいち)也(なり) 問屋(とひや)者(は)諸國(しよこく)之(の)客方(きやくかた)荷主(にぬしを)不(ず)_レ致(いたさ)_二 疎畧(そりやくに)_一定(さだめ)口銭(こうせん)之(の)外(ほか)賣抜(うりぬき)買〆([か]ひしめ)等(とう)之(の) 謀計(ぼうけい)無(なき)_レ之(これ)様(やう)可(べし)_二相守(あいまもる)_一諸物(しよふつ)直段(ねたん)高(かう) 【19コマ目下段に続く】 【注① 「傳」の下に「に」が有り、訓点が不自然。「に」は衍、又は「傳」の送り仮名ヵ】 【注② 「矦(侯)」は「候(亻+矦)」の誤】 【右丁 上段】 書(しよ)を偸(ぬす)みとりて 法帖(てほん)とし昼夜(ちうや) おこたる事なく ならひしかばつひに 韋誕(いたん)が筆法(ひつばう)の 骨随(こつずい)【髄ヵ】をえて名(な) を天(あめ)が下(した)にほどこし 古今(ここん)に筆藝(ひつげい)の 高手(こうじゆ)となり和(わ) 漢(かん)ともに賞(しやう)とら るたれの人も好(この) める道(みち)はかくの ごとくありたし 【左丁 上段】 晋(しん)の王義士(わうぎし)【注】字(あさな) は逸少(いつしやう)晋(しん)の元帝(げんてい) のときに在(あつ)て大功(たいこう) をとげてつひに 三/公(こう)の司(つかさ)に至(いた)りしと也 【20コマ目上段へ続く】 【注 「士」の字形は「子」ヵ。正は「王羲之】 【右丁 下段】 下(げ)者(は)以(もつて)_二書状(しよしやうを)_一《振り仮名:通_二[-]達|つうだつし》之(これを)_一 中買(なかがい)直賣(じきうり)俵(ひやう) 物(もの)駄賣(だうり)計賣(はかりうり)玄米(げんまい)搗米(つきこめ)儲(まうけ)_二糠俵(ぬかたはらを)_一 現金(げんきん)無(なし)_二掛直(かけね)_一小判(こばん)者(は)六拾目(ろくじ[う]め)正味(しやうみ)又(また)者(は) 銀(ぎん)相場違(さうばちがひ)何割引(なんわりびけ)呉服(ごふく)太物(ふともの)製(せい) 薬(やく)名方(めいほう)之(の)大看板(おほかんばん)紙店(かみだな)鉄物(かなもの)者(は)銅(あかゞね) 鐡(てつ)唐金(からかね)薬種(やくしゆ)者(は)数品(すひんにし)而(て)不(ず)_レ遑(いとまあら)_レ計(かぞふるに) 【左丁 下段】 荒物(あらもの)者(は)白黒砂糖(しろくろさとう)染草(そめくさ)繪具類(ゑのぐるい) 者(は)紺青(こんじやう)緑青(ろくしやう)丹朱(たんしゆ)胡粉(こふん)生燕脂(しやうゑんじ) 藍蠟(あいらう)雌黄(しわう)阿膠(にかは)等(とう)也(なり)書肆(しよし)者(は)經(けい) 書(しよ)史子(しし)類(るい)之(の)儒書(じゆしよ)仏書(ぶつしよ)經巻(きやうぐはん)醫(い) 書(しよ)軍書(ぐんしよ)和書(わしよ)歌書(かしよ)物語(ものがたり)草紙(さうし)等(とう) 真名(まな)假名(かな)之(の)雑書籍(ざつしよじやくに)至(いたる)迄(まで)其(その)道々(みち〳〵) 【20コマ目下段へ続く】 【右丁 上段】 これ王導(わうどう)か従(いと) 弟(こ)なり義士(ぎし)【之】七 歳(さい)にして書(しよ)を よくし十三/歳(さい)にて 父(ちゝ)の秘(ひ)しおきたる 前代(ぜんだい)筆跡(ひつせき)の聖(せい) たるものをひそかに うかゞひ知(しつ)て今猶(いまなを) 善書(ぜんしよ)の名を遺(のこ) せりしかのみならず 文章(ぶんしやう)を玉(たま)をつら ぬかるがゆへに天(てん) 下(か)の人/奇才(きさい)を称(せう) 【左丁 上段】 歎(たん)す其頃(そのころ)三公(さんこう)の司(つかさ) にありし郗鑒(ちらん)【注①】といふ 人こふて女(むすめ)に婚(こん)す のちに右軍將軍(ゆうぐんせうぐん) 會稽(くわいけい)方の内夫(ないふ)と いえる官(くわん)に昇(のぼ)り しとなり古今(こゝん)に 能書(のうじよ)あまた有(ある)が 中(なか)に逸少(いつせう)をもつて 筆法(ひつほう)の神(しん)とす 將(また)息(そく)王献之(わうけん[し])父(ちゝ)に 次(つい)て能書(のうじよ)也/故(ゆへ)與(よ) に父子(ふし)を二/王(わう)と嘆賞(たんしやう)【注②】す 【注① 「鑒」の字形は「監」ヵ。振り仮名「らん」は「覧」との混同ヵ。「郗鑒」の読みは「ちかん」】 【注② 「珎賞(ちんしやう)」ヵ】 【右丁 下段】 可(べき)_レ随(したがふ)_二雅俗(がぞく)之(の)所(ところに)_一_レ好(このむ)也(なり)塗物(ぬりものゝ)器品(きひん) 商賣(しやうばい)者(は)膳椀(ぜんわん)坪皿(つぼさら)平皿(ひらさら)食次(めしつぎ)湯(ゆ) 桶(たう)片器(へぎ)折敷(をしき)盞臺(さんだい)盃(さかづき)吸物椀(すいものわん) 重箱(ぢうばこ)食籠(じきろう)提重(さげじう)行厨箱(べんとうばこ)行器(ほかい) 手箱(てばこ)文匣(ふみばこ)類(るい)黒塗(くろぬり)朱青漆(しゆせいしつ)蒔(まき) 繪(ゑ)溢掛(いつかけ)沈金彫(ちんきんぼり)等(とう)也(なり)瀬戸物屋(せとものや)は 【左丁 下段】 南京(なんきん)高麗(こうらい)唐津(からつ)平戸(ひらど)員部(いんべ)御(お) 室(むろ)等(とう)之(の)焼物(やきもの)也(なり)扨(さて)大路(おほぢ)徑([こ]みち)之(の)小商人(こあきんと) 手遊人形(てあそびにんぎやう)飴(あめ)粔粧(おこし)煎茶(せんじちや)餅菓子(もちぐわし) 枇杷(びは)鬼灯(ほうづき)桃(もゝ)瓜(ふり)西瓜(すいくわ)柿(かき)蜜柑(みかん)其外(そのほか) 時節(じせつ)之(の)品々(しな〴〵)或(あるひは)小間物(こまもの)魚類(ぎよるい)前栽(せんざい) 野菜(やさい)等(とう)之(の)擔賣(になひうり)又(また)者(は)籃輿舁(かごかき) 【右丁 上段】 筆(ふで)さかいの事 【矩形で囲む】 生字(いきじ)の筆さかい 【白抜きの文字】 死字(しにじ)筆さかい     なきなり 【黒字の文字】 筆(ふで)さかいといふ事 第一(だいいち)としるべし筆に さかいのなきはたゞ 筆の裏表(うらおもて)なく 曲(まがり)ばかりにては 死字(しにじ)となるなり 【左丁 上段】 うたがひを身に   きぬやうに     人はあれ   梨下(りか)のかふりを    耳(みゝ)にかふりて 【右丁 下段】 荷持(にもち)車力(しやりき)日雇掠(ひやうかせぎ)馬士(うまかた)舩頭(せんどう)駕(か) 工(こ)水主(すいしゆ)楫取(かんどり)舼乗(たかせのり)筏士(いかだし)渉人(わたしもの)之(の)輩(ともがら) 迄(まで)以(もつて)_二柔和(にうわを)_一誡(いましめ)_二邪欲(じやよくを)_一無(なく)_二欺(あざむき)犯(たぶらかすこと)_一偏(ひとへに)本(もとづき)_二 正路(しやうろに)_一而(て)自他(じた)相對(あいたい)和順(わじゆん)爲(なす)_二渡世(とせい)_一則(ときは) 永(ながく)不(ず)_レ来(きたら)_二災難(さいなん)_一而(して)家門繁栄(かもんはんゑい)之(の)【注】 基(もとい)天道(てんどう)照(てらし)_二正直(しやうじき)之(の)誠(まことを)_一陰徳(いんとく)陽(やう) 【注 28行目 折れ目により判読できない振り仮名は、異本を参照】 【左丁 下段】 報(はう)者(は)顕然(げんぜんと)而(して)無(なき)_レ疑(うたがひ)者(もの)也(なり)仍(よつて)如(ごとし)_レ件(くだんの) 諸職(しよしよく)往来(わうらい)《割書:|終》  松陰堂主人書 十幹【横書・矩形で囲む】甲(きのへ)乙(きのと)丙(ひのへ)丁(ひのと)戊(つちのへ)己(つちのと)庚(かのへ)辛(かのと)壬(みつのへ)癸(みつのと) 十二支【横書・矩形で囲む】子(ね)丑(うし)寅(とら)卯(う)辰(たつ)巳(み)午(むま)未(ひつし)申(さる)酉(とり)戌(いぬ)亥(い) 天保十一庚子年十二月再板        馬喰町二丁目 東都地本問屋    森屋治兵衛板 【裏表紙】