此世(このよ)から奈落(ならく)へ沈(しづ)むあびきや うかん野宿(のじゆく)する身(み)の苦(く)は病(やまひ) 五七が雨(あめ)と降(ふり)かゝる涙硯(なみだすゞり)の水(みづ) ぐきに地震(ぢしん)の歌(うた)をしか〴〵と 柿(かき)の素袍(すほう)や大太刀(おほだち)と借(かり)の 衣裳(いしやう)の成田屋(なりたや)もどき罷出(まかりいで)たる 某(それがし)は鹿島(かしま)要之助(かなめのすけ)石座(いしずへ)といふ 神童(かんわらは)南瞻部台(なんぜんふたい) 一ぱいに尾鰭(をひれ)はばする のらくら者(もの)鯰坊主(なまづほうづ)は吉例(きちれい)の顔見世(かほみせ) 近き十月二日 㝡(もふ)是(これ)からは盤石(ばんじやく)と踏(ふみ) 堅(かた)めたるあしはら皇国(みくに)ゆるがぬ御代(みよ)の万(まん) 歳楽(ざいらく)此後(このゝち)さまたげひろない筋骨抜(すしほねぬき)の 蒲焼(かばやき)にして凡夫(ぼんぶ)口へほふり込(こむ)と《割書:ホヽ》納(おさまつ)てもふす 聖代要石治  万歳楽(まんざいらく)の   つらね 東西南北(とうざいなんぼく)四(し) 夷(ゐ)八荒(はつくわう)天地(てんち) 乾坤(けんこん)の其(その)間(あいだ)に 何(いづ)れの土地(とち)も 動(ゆら)ざらんや遠(とほ)からん 国(くに)は便(たより)にきけ近(ちか)くはゆつて 眼(め)に泪(なみだ)神無月(かみなしづき)を幸(さいは)ひに家(いへ) 蔵(くら)堂社(どうしや)をゆりこわし大地(だいぢ)が裂(さけ)て