【表紙】 【右上】【蔵書ラベル:部門 往来物|類|番号】 【右下】【蔵書ラベル:第5函のD|番号 1135|冊数 1|寄贈購入 望月購入】 【右下】【四段ラベル:T1A0|62|21|】【ラベル:青山】 【右丁左上】【所蔵記号:T1A0|62|21】 【蔵書印:東京学芸大学図書】 増補 職人 往来 西村永寿 堂梓 此書(このしよ)は元禄(げんろく)年中(ねんぢう)予(よが)本店(ほんだな)にて開版(かいはん) し世(よ)に弘(ひろ)めしが板行(はんこう)磨滅(まめつ)をし紙/其(その)儘(まま) に年(とし)を経(ふ)りけるが此頃(このごろ)しきりに人々の 尋(たつね)求(もとむ)るといえども其本(そのほん)を得(う)る事(こと)かたし 然(しか)るに家蔵(かぞう)の匣底(こうてい)に一/本(ほん)を得(う)幸(さひはひ)に 梓(あづさ)に刻(こく)せんとつら〳〵□(□□)するに誠(まこと)に 諸職(しよしよく)のことを具(つぶさ)に書(かき)あらは□しなり されど漏(もれ)たる事もあるれは一/老人(らうじん)に補(ふ) と増(ぞう)とを乞(こう)て小冊(せうさつ)とし再(ふたゝ)び桜木(さくらき)に 鐫(ほり)て童学(だうかく)の一/助(じよ)となすものなり なかき世のとをの ねふりの みなめさめ 浪のり舟の をとの よきかな 【絵図内:永寿丸】 宝船(たからふね)の事は 古書(こしよ)に見えず といへども地(ち)は 大海(だいかい)にうかべる 物(もの)なりとしの初(はじ)め より船(ふね)にのりたる心にて ゆだんすべからずとのしめしなるべし 【右丁】 〇/武家(ぶけ)は大名小名に至(いた)るまで との様(さま)といふ常(つね)に智仁勇(ちじんゆう)の 三つをもつて国家(こくか)をおさめ文(ぶん) 道(どう)をまなひ理非(りひ)のふんみやう を正(たゞ)して慈愛(じあい)をもつて民(たみ)を 育(いく)し天命(てんめい)をわきまへて敵(てき)を くだく事を要(よう)とすこれを良(りやう) 将(しやう)とも名将(めいしやう)ともいふなり 〇/百姓(ひやくしやう)とかきておんたからと読(よむ) ことなりあまたの民(たみ)をいふ事 なれども今は耕作人(くうさくにん)ばかり を百姓(ひやくしやう)といへり此/業(わざ)はわきて手 まめ心まめなる人の田畠(てんはた)は下田(げてん) も上田(じやうてん)のごとく能(よく)実(み)のり五(ご) 穀(こく)豊穣(ぶねう)のさうを顕(あらは)し天下(てんか) をおたやかになさしむる大/業(ぎやう)なり 【左丁】 〇/士農工商(しのうこうしう)みな職(しよく)人なれと今 は工人(こうじん)ばかり職人といひならはせり 番匠(ばんしやう)鍛冶(かち)其外一さいの上手(しやうす)たる ものはつかたの器用(きよう)をおさめ あるひは受領(しゆりやう)など給はるゆへに 其わざを称美(せうび)していふなるべし されは其家(そのいへ)に生(うまれ)たる人は能々(よく〳〵) 心をいれ後世(こうせい)に名(な)をてらすべし 〇/商人(あきんど)はそれ〳〵の品(しな)をして人 のこしらへたる物(もの)を買取(かひとり)て其(その) あたひを取をもつて家職(かしよく)とす されは正直(しやうぢき)をたてゝ高利(かうり)を貪(むさほる) ことをせざるをよしとすいつはりを いひて人をたぶらかすをかしこし と思ふは欲(よく)といふものなす事 にて甚(はなはだ)あやふき世わたりなり 【上段】 明日(あす)といふ心(こゝろ)に 物(もの)のさはかれて けふもむなしく 暮(くれ)はてにけり 文章方式指南(ぶんしやうほうしきしなん) ▲人は其(その)身(み)の分(ふん) 限(げん)を知(しる)べき事 第一なり常々(つね〳〵)心 に懸(かけ)らるべし然(しかう) してをのが分限 より一位/卑下(ひげ)し て萬(よろつ)を取(とり)行(おこな)ふ ときは身(み)終(おはる)まで 過(あやまち)あるましきか 殊(こと)さら此/事(こと)を 沙汰(さた)す此頃(このころ)は諸(しよ) 【5コマ目上段に続く】 【下段】  諸職(しよしよく)往来(わうらい) 夫(それ)士農工商(しのこうしやう)は国家(こくか)の至宝(しほう) 日用万物(にちようばんもつ)調達(ちやうたつ)の本源(ほんげんと)可(へき)_レ謂(いひつ)也(なり) 就(づく)_レ/中(なかん)武門(ぶもん)は為(たる)_二国土(こくど)の守護(しゆご) 間(あいだ)庶民(しよみん)の最上(さいじやう)也(なり)故(□るがゆへに)能(よく)守(まもり)_二仁(じん)義(ぎ) 礼(れい)智(ち)信(しんの)五常(ごじやうを)_一以(もつて)_二文道(ぶんどうを)修(おさめ)_レ身(みを) 依(よつて)_一武道(ぶどう)は孫呉(そんごに)_一逞(たくまし)忠孝(ちうこうを)示(しめし)_レ他(たに) 正(ただし)_二政務(せいむを)_一専(もつはらにす)_レ齋(とゝなふること)_レ家(いへを)以(もつて)_二系図(けいづを)_一彰(あらはし)_二先(せん) 祖(ぞを)_一以(もつて)_二感状(かんじやうを)_一伝(つたふ)_二功名(こうめいを)_一是(これ)武家(ぶけ)の(の)所(ゆ)|_二 以(ゑん)尚(たつとび)冀(こひねがふ)_一也(なり)扨(さて)勤役(きんやく)座列(ざれつ)の次第(しだい)は(は) 家老(からう)用人(ようにん)留守居(るすゐ)城代(じやうたい)目付(めつけ) 奉行(ぶぎやう)給人(きうにん)物頭(ものがしら)旗本(はたもと)近習(きんじゆ)側(そば) 【5コマ目下段に続く】 【上段】 家(け)ともに慇懃(いんきん)の 礼(れい)をもちひる おの〳〵其(その)こゝろ え肝要(かんよう)なり ▲高位(かうい)高/官(くはん)にし て禄(ろく)軽(かろ)き人と 下官(げくはん)下位(げい)にして 禄(ろく)おもき人は相(あい) 対(たい)すべきなり又 当時(とうじ)微力(びりやく)たりは 筋目(すいじめ)貴(たつと)き人は 賞翫(しやうくはん)あるべし 如何(いか)にといふに其(その) 人/先祖(せんそ)の禄(ろく)官位(くはんい) を相続(そうそく)し来らば人 と求(もとめ)媚(こび)せん事/勿(もち) 論(ろん)なり然(しか)れども 其人/不幸(ふこう)にして 当時(とうし)卑賎(ひせん)たりは いかでか往日(わうしつ)をおもは づらん又/当時(とうし)とき めく人なりとも本(ほん) 性(しやう)下賤(げせん)の人はさせる 賞翫(しやうくはん)あらずこれ 先輩(せんはい)のさだめ置(おか) るゝ所なり 【6コマ目上段に続く】 【下段】 使(つかひ)扈従(こしやう)納戸(なんど)郡(こほり)奉行(ぶぎやう)代官(だいくわん)作(さく) 吏(じ)小普請掛(こぶしんがゝり)与力(よりき)同心(どうしん)祐筆(ゆうひつ) 勘定方(かんぢやうかた)同朋(どうぼう)茶道(さどう)坊主(ぼうず)歩徒(かち) 足軽(あしがる)若党(わかとう)中間(ちうげん)小者(こもの)等(とう)迄(まで)応(をうじ)_二 職分(しよくぶん)の(の)高下(こうげに)_一/知行(ちぎやう)扶持方(ふちかた)切米(きりまい) 給金(きうきん)可(べし)_レ宛(あて)_二行(おこなふ)之(これを)預(あづかる)_一其(その)役(やく)_一/生(うまれて)_レ家(いへ) は(は)其(その)職(しよく)は更也(さりなり)第一(だいいち)可(べき)_レ学(まなぶ)は(は)弓(きう) 馬(ば)剣術(けんじゆつ)兵法(へいほう)柔術(じうじゆつ)鉄砲(てつほう)書筆(しよひつ) 算勘(さんかん)無(なく)怠慢(たいまん)こうを相(あい)励(はげむ)則(ときは)以(もつて)_二其(その)功(こうを)_一加(か) 増(ぞう)立身(りつしん)は(せば)父祖(ふそ)裔孫(えいそん)迄之(までの)面目(めんぼく)何(なに) 事乎(ごとか)如(しかん)_レ之(これに)次(つぎに)農業(のうきやう)は(は)春(はる)耕(たかやし)種(たね) 蒔(まき)苗代(なはしろ)水(みずの)掛引(かけひき)畔塗(くろぬり)畦立(うねだて)夏(なつ) 【6コマ目下段に続く】 【裏表紙】