《題:《割書:珍客(おきやく)は八百万神(はつひやくばんじん)の大一座(おゝいちざ)|馳走(ちそう)は鹿島(ていしゆ)が地震(ぢしん)の手料理(てれうり)》鯰(なまづ)のかば焼(やき)大(おゝ)ばん振舞(ぶるまひ)》 鹿島(かしま)大 明神(みやうじん)出雲(いづも)の大社(おゝやしろ)に おりて諸(もろ〳〵)の神達(かみたち)とともに 氏子(うぢこ)の者(もの)の縁結(えんむすび)をして 居(ゐ)給ひしに本国(ほんごく)より早飛脚(はやびきやく)を もつて府内(えど)の大変(たいへん)を告(つげ)こし たるにぞ取(とる)ものもとりあへず神(じん) 通(つう)をもつて数百里(すひやくり)の道(みち)をその 夜(よ)のうちにとつてかへしすぐさま かの大鯰(おゝなまづ)をとつておさへ以後(いご)の見せ しめなればきびしき刑罰(けいばつ)におこなはんと せらるゝところへ日本(につほん)六十余(ろくしふよ)■(しう)【州ヵ】大小(たいしよう)の神(じん) 祇(ぎ)も縁(えん)むすびはそこ〳〵にとりしまひ おい〳〵うちそろひて鹿(か)しまへ見舞(みまひ)ふ きたまひしがこのていを見てかしまの かみのはたらきをかんじまたなまつの いと強大(ぎやうだい)なるにおどろきしよう たんし給ふこと■ゑもしばしやま ざりけりあるじの明神はゑんろ の所さつそくにお見まひくだ されし段ありがたくぞんずると いち〳〵にれいをのべさて諸神 たちへなにがなちそうせんと おもはれしがかくにはかの きやくらいといひことに八百万 の大きやくなればいかゞはせんと ゑびすこんひらの二他【神ヵ】へだんかう せられしになにかにといはふより この大なまづをかばやきにして ふるまひなばよきもてなし ならんといふにげにもとお もひにはかにそのかうゐを なしてづから大なまづを さきてかばやきになし 八百万神たち をもてなし 給ひしは神武 いらいはなし にもきかざる うそ八百を おみきの あまりに よつて のぶる 【挿絵中の囲み文字】 西宮ゑひす さぬきこんひら 鹿島大明神