牡丹餅棚有 通笑作【市場通笑】 政美画【北尾政美】 合三冊 【刷りの違う資料: https://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100053393/viewer/1 】 《割書:新|板》 《割書:富貴(ふうき)|有(てん) ̄ニ天(あり)》 牡丹餅(ぼたもち)棚(たな) ̄ニ有(あり) 《割書:奥|[中]|村》 本所いしわらのへんに かたやま 太郎左衛門と いふものあり ゆへあつて らう〳〵の 身となり ちうしんぢくんに つかへすと すこしの たくわへにて くらしきんこしらへの 大小をもとてにしても あきないもできつ 事?に?せんぞよりもちつたへ てはなしもされず なにゝつけてもむめかへか【梅が枝が】 せりふのとふり【台詞の通り】かねが ほしいなあとおもへとも きりどりこうどうは【切取強盗は】 ふしのならい【武士の習い】とは四五ひやく ねんもさきいくさのあつたじふん そのときてもわかもの事に な■■■よいほふなれは そんなことはなくたゝほしいとおもふ 【梅が枝:ひらがな盛衰記の登場人物で「金がほしいなァ」が名台詞。】 【切取強盗は武士の習い:人を切り殺して金品を奪うことも武士には珍しくない、という意味。】 あるよねしつまりしおり すさましきものおとに おとろきおきあがり みればたなより ぢうばこがおち ゆふべあけておきし ほたもちなり ちばこへひろい こまんとするに もやはすこし きているにおひ しうしのゆび さすところしうもくの【十指の指さすところ、十目の見るところ】 見る所たなからおちた すへほたもちといゝ つたへほたもちは たなへあけすとも よさそふなものと こゝろ■き ふうきてんにあり ぼたもちは たなにあり ほたんは花の ふうきなるもの しぜんとふうきの ゑんによつてたかみへ あかると見へたり たなからおちた ほたもちのごそくさいて ないよりかんしんして いよ〳〵ふうきは てんにある事うそはねへと さとりを ひらき このほたもちも たかいものだ     なども かりにもいわぬが        よし ときとして かゝるはかり事の たねともなる      なり 【台詞】 はておもしろの ほたもちじや      ナア   それより太郎左衛門ふうきてんにありと しりちつともたかみにいたくおもひ 本所よりやまのてへひきこし にかいへばかりあがりひよりが よけれはやねへのぼり とびやからすが うらやましく はねもほしいが かねも   ほしいと やねにばかり      いれば きんじよでも ふしきに おもひ まい日 やねに いるは いつほん ざして やねやでも     なし てんもんを かんかへるのか たゝしひの見ばんの【ただし(それとも)火の見番の】 けいこかなにかわからぬと あやしみしももつとも          なり とゝうしててんぢくまでとも【渡唐して天竺までとも】 気(き)はつかず ちかみちの ほうを くふうして ふじが   たかかろふか つくばがたか   かろふかと 一寸もてんへ ちかよりたく にちやこゝろを       くだく 【台詞】 なに   か とんと すめ?   ぬ 【台詞】 そうさ 太郎左衛門 やむ事を ゑず たか やまと こゝろ がけ いづる いわふね つくは さん 日光山を はいし 大山のせきそんからみのけ【石尊から蓑毛】 とふりを【通りを】ふじへのほり こふふ【甲府】へおりてちゝぶのほう みやうぎはるな【妙義・榛名】からきそぢの【かすれを別資料で確認】 山みちうすいとうげから のびあがりてそらを見たり はこねのほうを見たり 京とへでもつゝかけて あたごへのぼりおもひのほかの ものまいりなまけたろくぶは およびもない事それより くらまへかゝりどこまても山ふかく いりけれはさもさかなやのかしのにおひ まつりのかなぼうひきか ごふくやのたなしたにいる人かと いふものをはきわい〳〵 てんのふとは はなのふうの ちかつた    なりて いてければ かのやく    しや     たと こゝろづき おまへさまの おじぶつさまと いんぎんに あやなし     て   見る 【台詞】 ひがくれた やうだが なんどきて ござり   ます 【台詞】 まづいつふく すいつけさつ     しやい それよりかのひとのあんないにて くらまのおくそうじやうが たに【僧正ガ谷】までつれゆきおやたま はじめそのほかかんばん いつわりなしのてやい くるまざにな□いそのほ□ なにやらあつて やまふかくいり たるそとたつぬれは おはづかしながらふうき てんにありともふせいてんへ のほりたきねがいにてこれまて さんじやういたしましたといへはみな〳〵 くつ〳〵とわらひ■た事がらうにん【浪人?】 らしくもみへすひつさはかせる わるいものでもなし事に しよこくのれいふつれいじやうへ さんけいしたるき□□ふうきの所は てんとうさましたいせつかくきた こゝろゆかしたれ■ひとつ はしりたいき な□□おくつてやれと いゝつけたまへは おふきによろこひ てんへもあがる こゝちとは この事なり 【台詞】 ありかたうそんじ        ます おれいには    のほりでも めんても   あけましやう 【かすれ汚れ等を別資料で確認:https://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100053393/viewer/7 】 大てんくなんのくもなく つれてあがり てんへのぼりたるか でやいにあだな ものはなしぞくぶつの のぼりたるははじめて これをてんぢく らう人といふなり てんぢくひはろい事ゆへ ひとりてはまごつけども くらまからのそへてがみ かふじやうにも【?】 このものはねがい ござるものよろしう おたのみまふしますと わたしてんぐなどは みかけは おそろしい ものなれと おもひのほか きどくなものなり ふうしんはふくろひとつ にてじゆうしざいを はたら?き【、】にしても【西でも】 ひかしてもすきな ほうへくちをあけて ふかせてんじやうが ふくろに いつはいなれと たいせんを【大船を】 せんそうでも まんぞうでも いちどにうごかす いきおひ てんぢくのいちまいかんばん てんぐてやいおり〳〵 たのみのすじあるゆへ ふうじんなそ?よつほと はむいておくゆへ こゝろやすく それゆへふうしんの なあてゞてかみか【名宛てで手紙が】 きたりけり 【台詞】 はなはたかくは   ないか ね?の はなてこさります 【別資料:https://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100053393/viewer/8】 ふうしんは かみなりに わけをはなし 太郎左衛門に あいとふゆふ【会い、どふ言ふ】 のぞみかあつて きたのたとたとよふす をきゝけれはふう きてんにありとも まふすう□□【うんは】 てんにあるとも みなひやうばん【富貴天にありと申す。運は天にあるとも皆評判いたします。】 いたしますいづれも よろしうごさります ちつとあつかましいが みぎのりくつで まいりましたといへは らいしんふうしん かほみあわせゑゝ事をいふやつだとおもひ ふうしんといふてもらいじんといふても つうしん【通人】にちかいものなれは しよさいなくなるほと それは うそはねへ うぬしか ほしかる ものは いくらも ある うんの事 ならこつちが とんやさ とふなりと して やろうから しばらく こつちに いたかゑゝ と  いふ 【台詞】 とき【ときに、の「に」が欠損か】 おいらか ひやう ばんは かう   た 【かすれや汚れで読めない部分は別の資料で補っています: https://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100053393/viewer/9 】 それより太郎左衛門を とめおきてんちくの かいふんなれは【外聞なれば】 こうきにおこりかけ【剛毅に奢りかけ】 てんにんのなかでも ひつこぬきの うつくしいほちや〳〵と【ぽちゃぽちゃと】 したのばかりよひ【したのばかり呼び】 しやうしちりきの【笙篳篥(楽器)の】 くわげんといふ所をは【調(かげん)といふ所をば】 ぬきにしてめりやすと しやれかけてんふらのとんぶり【てんぷらの丼】 へそのきよ でんは【臍の魚田は?】らい【雷】 しんがすきやしよくのうどんは【神が好き夜食のうどんは】 ふうしんかゑてものにて【風神が得てものにて】 さへつおさへつてんしるしに【天印(天人のこと)に】 あいをたのみ かみなり なとは つかもなく のむゆへ 太郎左衛門も あとて ころ〳〵【ゴロゴロ(雷の音)】 いわねは よいよ【よいと?】 おもふ 【天女たちの歌】 〽あしたか  やまや   ふしの     たかね  かすみにまきれて    うせにけり 【右ページ下、台詞】 おらの ひいきの □□□□ いよ  □□□    もの あり  かたい 〳〵 【左ページ、お膳の下、天女の台詞】 ほめ なさる もんた【褒めなさるもんだ(おそらく右ページの台詞を受けての発言)】 【かすれ汚れで読めない部分を別の資料で補いました:https://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100053393/viewer/10】 太郎左衛門をゆるりと とうりうさせあんないをつけて けんふつにあるかせあめを ふらせるなとのたいそうさ よく水もあるもの だとおもふほと ていねいにふるいて ふるいひるは もちろんよなべ みづをくむものはくむ ふらせるものは      ふらせる たはこにしたり めしのうちが あまやいといふのにて【あまやい=雨あい、雨の合間】 それからかゝると ひとしきり とんでもない おふふりなり 日よりに したりと ひやうしぎを たゝくまてふらせる そのときくんだみづを みんなこぼす こふつかいふりては あがりませうと いふのはなるほと ちがいなし やすむおりは ひさしく あそふものゆへ       よし なんほおふても たび〳〵は ふらぬと    いふ 【台詞】 みなこたいぎ 江戸の おきやく しんか 太郎左衛門はたん〳〵おにどもと こゝろやすくなりけふは てんのふさまのおまつり あめをやめてごろうしろ たいてい子どもころこふ 事てはこさらぬといへは おにどものそて見る なるほとどんだうれしかると いへばおまへかたにたのむ事が              ある まつりのときはてんきにして くたされましのびては おふめいわく【大迷惑】 せつかくしたく       した こわめしは    かつ〴〵 いくらの そんかしれ ませぬ むめわかさまの なみだあめも ひさしいもんたといゝます あれもてんきのほうか いくらよい事か しれませぬ きつねのよめいりの ひでりあめおふきに おせわな事てござり         ます おまへかたとこゝろやすく なつたから人にわるく いわせたくない正月も れいをしもふまては てんきよくかのましないでも するときはしつほりと ぬらせごせつくはてんきよくさへ してやりなされはわるく いふものはひとりも なしくさめは でぬから ためして ころうしろ 【台詞】 それ ころふ  じろ【別資料を見ても「くろくしろ」としか見えないが、2行目の「こゝろ」などを見ると、この上の横棒がほとんどない癖字なので、やはりここは「ころふじろ」だと判断した】 【別の資料: https://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100053393/viewer/12 】 かせはなつおゝくふかぬ 事はなつのうちはふうじんの やすみかみなりは ふゆをやすむゆへ おゝくならす よつてなつは とりわけあつし そよ〳〵かせても あれははなはた よろこふとはなし けれはためしのため あふきうちはにて あおいてみれは ふとついやうは いふにおよはす あらよいかせか くるとよろこべは おにてやい むしやうにあおいて おかしがる らいふうの二じん ひさしく太郎左衛門を とめおきしぢうは【始終は:最後には】 かへさづはなるまいと そうだんしてふうき てんにありとあてにして こられてはちつといた事 おにかしまでもりうぐう でもこんなときには いちはんづゝはりこんだ れいもあれはにぶや三ふで【二分や三分で】 つきだしてもやられまい たいぎながら ふたりして 五十めづゝ百両では いざござなしおもひもよらぬ とんでもないやつがきておふいた 事しかしながら たいきはしても ふうきてんにあり とはせけんへはよつほど よいかふだ□□へ ほふをいふて そうたんする 【台詞】 かゝあ どんいつ ぱい あげ さつしやい 太郎左衛門ほう〳〵をけんふつして かへりくつとかふまんにゆきも とふねんははやくい?ふらせ なさりませ はやくなけれは おちがまいり ませぬ おしつめては とんとこむかふと【?】 いつはいをいへば【いっぱい:言いたい放題、我がまま】 あめかせの事□ おいらかしゆうに なるものか しよせん人の くちには かなわん いちねんに いちとくらいの てらまいり おれか てると ふるの■■ おごりのふなゆさんて けふはてんきにしてもらいたいのとかつてな 事ばかり三百六十日たひうとが【たびうど=旅人】 とうれは一日でもふつてよいといふ ひはなし十日もふらねはごみだつとて【?】 こゞとをぬかしさりとは あんまりてまへかつてそんな 事はたなへあげてあめかぜは ごろうじやうじゆのとうぐ【?】 にておいらがりやうけんでは いかぬこゝがたいじの りくつだか どふか そんな事 きあまに いけんする よふで わるいからなかして おきませうさり       とは 人けんといふ ものはとふ おもつて□【も/別資料で確認】 てまい□【の】かつてな   ものたそ 【別の資料:https://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100053393/viewer/14】 よほどひさしくとうりうすれは やとてもあんじておりませうと いへばひとりではかへられまい くらまからむかいのくるを まつがよいなんそみやげに やりたいかうちにくかろう【?】 こればかりはしやまにも なるまいとのしとかいて 百両いたしければさて〳〵 おせわになりまして なんぼたんとおれいはとて おびたゝしく ありかとふそんじますと おやのこゝろこしらすくらいに よろこびどふかあつかま しくなにとかおほし めしましやうがとてもの 事にうんをおつけ なされてくだされ ませといへはふたり ともにおふきに てこすりこのへんへんとうにゆきくれてと くちのうちてきたゆふをかたり よふ〳〵かみなりかんがへ きかうころう人の事だから ばいやくをおうりなされ うちみのくすりを でんじゆいたそふと いへはふうしんも かせのくすりを てんしゆして ふたいろ ともに てんちく ぶそうの みやうやく きつとうれる ちがいなし それとも ずいぶん ひきふだと ぢよさい なく おしへけり 【台詞】 これが ほんの くつたり とつたりて ござり    ます ■ゝ〳〵    〳〵 おとも  ても あれは いたし かたも あれと 太郎左衛門くらまのむかいを まてともさたもなし ふところはあたゝかになる かへりたくおもひわたくしも あまりおせわになり ます明日あたりは かへりとふこざります どうぞからかさを いつほんくださりませ きよみつのやうに とびおりましやうと いへばてんぢくには かさといふものはない とつからもあめの ふる所がないこしへ なわをつけておろす つもりにしても ほそびきが十万 五せんひろもなければ ならずとてもの事に わしがおふつておちて やりましやうと かみなりが いへばあまり はゝかりで ござります おたのみ 申ますと いでゆく 【台詞】 おぢいか のゝさまへ ゆく たば〳〵【?】 うちの けんとうを【献灯を?】 みやれ かみなりさま太郎左衛門がうちのけんとうをみて さいわいあたりにくわの木も なしいつもはふみはつ せとわざ〳〵ほう〳〵 ひつしやりとをち きを ひつかいててんへあがり給ふ よう〳〵くもはれてしつかになりまさしく そこらへおちなさつたろふとくわんおん きやう【観音経】をよみなからおかみなりさまおけがでも あそはしはなされぬかとへそをおさへてそらを 見れはおふきなる木をかきさばきたるあと ありさてこそと大ぜいいでゝ見れはそのしたに 太郎左衛門きをうしないているゆへきもをつふしそれ おいしやさまよもくさよとさわぎさつそくきかつき よふすをきけばてんぢくより かみなりさまに おくられてかへりました とはなせばものまいりにでも ござつたとおもひました とんてもない所へごさつて そう〳〵しいかへり やうてきもをつぶし ました しかし ながら そく さいで みちも なく めでたいと 女ほうは そのはづ なかや【長屋】 ぢうも よろこぶ 【台詞】 ずいぶん よし〳〵 やれ〳〵  〳〵 つがも   ない ねがいからのぞみのとふりにかねもできそれを もとてにみせをだしはごろものうたいの こじをひきてんにいつわりなきものと てん じゆ の うち みの くすり かぜ くすりを うりけれは ま事に かふのふ しんのごとし しだい〳〵に おふうれにて わづかのあいだに うんをひらき こゝろのまゝに よをわたりこれより うんつく太郎左衛門と みやうじをあらため うんはてんにありとは うそは   ねへなり 【台詞】 おかけ さまで たつ□□   □□   □ふ こさ  り ます 北尾政美画 通笑作 【別資料:https://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100053393/viewer/18】 【裏表紙】