《割書:大通|時代》狆の嫁入《割書:市場通笑著|完》 天明元年印本 《割書:大通|時代》狆の嫁入 そんぞそこの しんみちに こうしつくり にてなにせう ばいともしれ ずきれいな すまいだんな どのはついにみ た事もなけれ どもかみさまは うつくしくいきな なりにて ちんをかい かゝりきつてせはを しければその きんしよのせはしよ【近所の世話しよ】 かわかしめいぬゆへ よきところによめの くちありとて そうだんにきたりけり よく〳〵なせわやき ずきなり まづ ゑんの ものじや から めぐろ さまて みせませふ わたしが げいも よく しつけ やした やくそくの日にめくろ さまのにわにてみせ むこのほうもれつきと したるてうにんの□【ち?】ん なかふどくちとは いひながらかほが よくしやくんでいるの みゝのたれがよいのと とりなしければ □【其?】あらましそうだん きわまりければ せわやきはもちろん ちんもしつぽを ふつてよろこぶ 【右ページ人の足下】 いつそ かはいら しい ね 【右ページ旗のようなもの右から】 □□□□ 奉納 【奉納の間に】松 松通 芝壹丁目 【左ページ坊主の上】 あの しろ で ご ざります 【左ページ女性の上】 おやしきの ちん しろを みる 【左ページ黒い狆を抱く人の足下】 ひとりさへたい ぎじや いぬをつれて □□□じ □□□ 【左ページ柱】 願主 シ戸【江戸?】  門 いよ〳〵やるはづにそふだん きわめしに ついぞにわへおり たこともないめいぬひつさら われたかぬすまれたかと さかせども しれぬはづ もと五両貳分 にてかわれしいぬ こんどのこんれい にもたい ていなもの入ではなし そこてさき をかけおちして おやのところへかへり さきのせわにならぬ つもり しろいぬは ものをしつた ものと よくいふたものなり 【右ページ下】 とつとつま あかりなどが よろしう ござります いまの わかい しゆは わしらがこのみは きに入ませぬ 【右ページ右の包み】 大□上吾 □□□ 【右ページ左の包み】 本八丈三丈物 【左ページ上】 かみゆふにむすめの うちはひちりめんの きれにてゆひ これをくびたま むすびといふ いつのころ よりか 人までが いふよふに なり けり 【左ページ下】 むら さきの いたしめ とやらは たかい もの【以下破れている】 むこのちんも大きなあきんどにつとめて い□【た?】れどもおやのあとをとらねば ならずそふだんがすむとしんるいへ はなしふたおやながらよろこび きち日をゑらびしるしを おくらんとりつはに こしらへきど までかつぎ 出すとなり町の ぢいぬどもいつれも かい犬といふでも なしそこのうらやこゝの まへにいそふろうにて くまさかの【熊坂長範のことでは】 てしたの ものさへ こまらせる やつゆい のふをみると ほへ【吠へ】 出し さいりやう はじめ みな〳〵 しりをゝ【尻尾を】 さげても とをさず みなひたいは つがもなくぬき あげたるてやい やつこさまなぞの ひたいのぬきあけ たるをとうけん びたいとは このこと なり 【右ページ下】 これからかへるといふも こんれいにはさしやい わんとした ものしや 【右ページと左ページにかけて】 わん〳〵〳〵〳〵〳〵〳〵 わん わん〳〵〳〵〳〵 わあん〳〵 わん〳〵〳〵 〳〵〳〵 〳〵 〳〵〳〵 〳〵〳〵 〳〵〳〵 ゆひのふのさしつかへに こまりこのうへの事を あんじぢいぬの わかいものかしらを たのみもくろくのなんのと いやみなしにかほみせか そでとめのやうに せいろうをつみかけ ければわたりひきの わけさへのみこめば いざこざなし一ひきも ぐうといふものもなし きついものなり きやんといふ ことばも わんはくもの【腕白者?】と いふ事もこれが はじめなり いぬもあるけば ほうにあたると いへどもぶたれた うへでおとこ になり ほんの しらつこ【白っ子?】 ゆへもちい らるゝなり 【左ページ台詞】 たいへいらく しやあねいが わしがのみこんしやあ きづかいのきんのじも ござりやせぬ よろ しくおた のみ申ます 【右ページ下台詞】 まさに おゝべい 【右ページ箱】 新和泉町【現・日本橋人形町三丁目あたり】 虎屋高? 進上 □□ 佐?□□ とらや【とらやは日本橋の和菓子屋か?】 よめごのに もつ はなぶちの もんつきの【花菱紋の「はなびし」と犬の「鼻ブチ」の洒落?】 ゆたん【油単】にて 七千五か 二百つゝの しうぎに しても とほうも ないこと なり あすの ばんには そゝりに いこふ 【右ページ下】 みちを わすれぬ やうにみち〳〵 せうべんをして ゆく 【樽】 水 【左ページ】 せけんのふるまひとはこんだても大ちがい めしなともあたまからしるかけめしさけのほうより くわしがだいせんにてりやうりのしかたも むつかしくとかくなまさかなはけなみが わるくなるゆへにたものをおもに しゆこうするなり 【左ページ下】 うすぢやのくちとりも まんぢうでも あるまい なんぞござりま せふ いつそ けふは日が みぢかい 【左ページ箱】 南京 吸物椀十人前 拾人前 さい じやう きち日を ゑらひ てんきも よく はなよめの こし入なり みやわせ ませふ このけんぶつは つかもないもの みだかいことだ おびたゝしい おむかいしや さきの【しっぽに続く】 しつほ【尻尾】 を ふ む ま い ぞ おな かふどの【お仲人の】 おかごが はやい おま□【い?】様は は□【な?】付やが さぎむすめといふ こと【?】じや 【鼻突きはばったり出会う事なのでお見合いではないという意味か。それに犬の鼻が突き出していることもかかっているかもしれない。花嫁衣装で綿帽子をかぶっているから鷺娘。犬なのに鷺だねと言ってる】 あかいなことはしらず とふぼへをほへませ□【う?】 わん〳〵〳〵〳〵 あの 人 おさか つきを はじめ さつしやい よふに合た 御ふうふ じや こう〳〵にして □【下?】され しゆび よく こん れい とゝのい かないの もの ゆきの ふりし ことくに よろこび もち ろん よめの はつあい げいはなんでも ぬけめなく めしときにぜん まわりもせず しらぬきやくが あつてもほゆる ことなし しうとが わんといへと いふとわんといふ すなをもの これかゝ てら まいり にも つれて いきませふ と いぬの ねこなで ごへも おかしき 【右ページ下】 おさとのおつかい のついでに しもむらへ よせませう ぎん出は まつもくを とり ませふ 【左ページ下】 て□【な?】くわつ【お手のような芸をさせる時の言葉?】 〳〵 そのやうになじみ なさつては さぞお かはゆに ござり ま せふ あんじるより うむがやすい としかも たまのよふ なるおとこ ばかり 四ひき たんじやう むめわう まつわう さくらまる にしら 太夫【に、しら太夫】 ぐるみ にうみ お と し【産み落とし】 人けん なれば ひとりで さへかま けきれ ども さと人の とをり いぬのこの そだつよふに なんのくもなく よろこぶ 【右ページ下台詞】 たんなの 小ひき出しに ぞうしかや【雑司が谷】の おせんまい【お饌米?】が あつた しつほをこうしてもおなき なさらぬみんな いちもつだ あつ ぎ を させ まい ぞ むやう に いぢつ て ふとらせるが よい 【左ページ台詞】 ときに とんと おかぶりは ない わん〳〵 あづきは ずい ぶん おあげ なされ さとでも きつう よろこび ます おひとりは おあとゝり あら【と?】は ほう〴〵 からやく そくがござり ます くさめもせず四ひき いつしよにみやまいりみち にておびゑるのなんのと いふこともなくむしけ【虫気】も なしにじやうぶなり人げん のこのおびゑるを いんのこ〳〵といふことは いぬのこ〳〵といふりやく こ【略語】なりけりなにゝ つけてもそくさい【息災】ほど めでたきものはなしと いちがさかへ けり おんは【お乳母】どん しい【り?】は どふたの 【柱】 通笑作