《割書:増補|頭書》訓蒙図彙大成 八 【手書き】 菜蔬 ■竹【樹竹か】 頭書(かしらがき)増補(ぞうほ)訓蒙(きんもう)図彙(づゐ)巻之十七 菜蔬(さいそ) 此 部(ぶ)にはもろ〳〵の野菜(やさい) 苑蔬(ゑんそ)のたぐひをしるす 【上段】 ○蕪菁(あをな)は食(しよく)を消(せう)し気(き)を くだし嗽(せき)をやむつねにくらへば 中(うち)を通(つう)じ人をこへすこやか ならしむ ○萊菔(だいこん)は気(き)をくだし食(しよく)を消(せう) し痰咳(たんがい)を治(ぢ)し中をあたゝ め大小 便(べん)を利(り)す ○芹(せり)は頭中(づちう)の風熱(ふうねつ)をさり 酒後(しゆご)の熱(ねつ)をさまし大小 腸(ちやう)を利(り)し血(ち)をとめ気を益(ます) ○葱(ひともじ)は汗(あせ)を発(はつ)し風を去(さり) 【挿絵】 蕪菁(ふせい)な 萊菔(らいふく)たいこん 蘿蔔 同 芹(きん)せり 水斬(すいさん)同 【手書き】 拾冊之内 【印】 駿州 山中屋 大宮 【上段】 小べんをつうじ魚肉(ぎよにく)の毒(どく) をころし中をあたゝめは なぢをとむ ○韮(にら)は胃熱(ゐねつ)をのぞき中を あたゝめ虚(きよ)をおぎなひはら のいたみによし ○蒜(にんにく)は脾胃(ひゐ)に帰(き)し中を あたゝめくはくらん腹中(ふくちう)やす からざるを治(ぢ)す ○薤(らつきよ)は水気(すいき)をさり中をあ たゝめ不足(ふそく)をおぎなひ久(ひさ)し きくだり腹(はら)によし気(き)を くだす ○菠薐(はうれんさう)は酒毒(しゆどく)を解(げ)し 胸(むね)をひらき気(き)をくだしか わきをうるほす ○胡葱(あさつき)は中をあたゝめ気(き) をくだし食(しよく)を消(せう)し虫(むし) をころしはれを治(ぢ)す ○芋(いも)は腸胃(ちやうゐ)をゆるかし肌(はだへ)を みち熱(ねつ)をさり渇(かつ)をやめ胃(ゐ) をひらき宿血(しゆくけつ)をやぶる ○著蕷(やまのいも)は虚(きよ)をおぎなひ 気力(きりよく)をまし陰(ゐん)をつよくし 腰(こし)のいたみをとめ腎をます ○牛房(ごぼう)は中風(ちうふう)はのいたみ脚(かつ) 気(け)風(ふう)どくせんきによし面目(めんもく) はれいたむにもよし ○胡蔔(にんじん)は気をくだし中を おぎなひ腸胃(ちやうゐ)を利(り)し五 臓(ざう)をやすんずこれをくらふ に益(えき)ありて損(そん)なし 【挿絵】 葱(そう) ひともじ ねぎ 葱針(かりぎ) 凍葱(わけぎ) 蒜(さん) にんにく ひる 葫蒜(おほひる) 山蒜(のびる) 韮(きう) にら 豊本(はうほん)同 薤(がい) おほにら 䪥(かい)同 からな 菠薐(はれう) ほうれんさう 胡葱(こそう) あさつき 芋(う) いも 芋魁(いもがしら) 蹲鴟(いもがしら) 牛房(ごぼう) 薯蕷(しよよ) やまのいも 胡蔔(こふく) にんじん 【上段】 ○苣(ちさ)は胸腷(むね)をひらき筋(すぢ) 骨(ほね)をかたくし目(め)をあきら かにし乳汁(にうじう)をつうじむしを ころす ○芥(からし)は腎経(じんけい)の邪気(じやき)をのぞ き上気(じやうき)せきを治(ぢ)し胃(ゐ)を ひらき胸(むね)を利(り)し九 竅(けう)を 利(り)す ○薺(なづな)は肝(かん)を利(り)し中をや はらげ胃(ゐ)をまし五ざうを 利(り)す ○莙薘(たうぢさ)はすぢほねをおぎ なひ胸(むね)のふさがりをひら き熱(ねつ)を解(げ)す ○天蓼(またゝび)は中風(ちうぶう)口ゆがみけんべ きかたまり女子(によし)の虚労(きよらう)を治(ぢす) ○蕗(ふき)は葉(は)あふひにゝてひろ じ茎(くき)は煮(に)てくらふべし 款冬(ふき)と和訓(わくん)同(おなじ)きがゆへに あやまる事 多(おほ)し ○蘘荷(めうが)は蠱(こ)にあたり沙虫(しやちう) 蛇毒(じやどく)を解(げ)す多(おほ)くくらへば 脚(あし)に利(り)あらず ○莧(ひゆ)は気(き)をおきなひ熱(ねつ)を のぞき九 竅(けう)をつうじ大小 腸(ちやう) を利(り)し癜(なまず)を治(ぢ)す ○独活(うど)は痛風(つうふう)を治(ぢ)し中風(ちうぶう) 湿冷(しつれい)逆気(ぎやくき)皮膚(ひふ)かゆく手(て) 足(あし)ひきつるを治(ぢ)す ○瓢(なりひさご)は脹(はれ)を消(せう)し虫(むし)をころ し痔(ぢ)下血(げけつ)を治(ぢ)し血崩(けつばう) 赤白(しやくびやく)の帯下(こしけ)を治(ぢ)す 【挿絵】 苣(きよ) ちさ 苦苣(せんば) 萵苣(きじのを) 薺(せい) なづな 芥(かい) からし 莙薘(くんたつ) たうちさ 天蓼(てんれう) またゝび 蕗(ろ) ふき ふきのとう 蘘荷(めうが) めうがのこ 莧(けん) ひゆ 野莧(やけん) くさひゆ 独活(どくくわつ) うど 【上段】 ○瓠(いふがほ)は口中のただれいたむ を治(ぢ)し水道(すいだう)を利(り)し心(しん) 熱(ねつ)をさり心肺(しんはい)をうるほす ○瓜(うり)はすべて小 便(べん)をつうじ 渇(かつ)をとめ熱(ねつ)をのぞき大 腸(ちやう)をゆるくす羊角瓜(あさうり) ○冬瓜(かもうり)は小 便(べん)を利(り)し渇(かつ) をやめ気(き)をましむねのつかへ をのぞき熱(ねつ)をさる ○蕈(たけ)は気(き)をまし風(かぜ)を治(ぢ) し血(ち)をやぶる地(ち)に生(しやう)ずる を菌(きん)といふ木(き)に生(しやう)ずるを 蕈(たん)といふ ○胡瓜(きうり)は熱(ねつ)をすゞしうし 渇(かつ)を解(げ)し水道(すいだう)を利(り)す 小児(せうに)はいむ ○醤瓜(あをうり)は水道(すいだう)を利(り)し中 をおぎなひはれを消(せう)す ○絲瓜(へちま)は皮(かは)をほしてたゝみ をふき踵(くびす)のあかをとるに よし熱(ねつ)をのぞき腸(ちやう)を利(り)す ○山葵(わさび)はひへばらのいたみ を治(ぢ)し食(しよく)をすゝめむね を利(り)し痰(たん)をひらく ○茄(なすび)は血(ち)をさんじいたみを とめ腫(はれ)を消(せう)し腸(ちやう)をゆる くし痰(たん)をおふ銀茄(ぎんか)しろ なすびなり ○鶏腸(よめがはぎ)は毒腫(どくしゆ)を治(ぢ)し忘(わす) れていばりするによし 人(ひと)に益(ゑき)あり ○薊(あざみ)は宿血(しゅくけつ)をやぶり胃(ゐ)を 【挿絵】 瓠(こ) ゆふがほ 瓜(くは) うり 瓢(へう) なりひさご 蒲盧(ひやくなう) 冬瓜(とうくは) かもうり 蕈(きん) たけ 松蕈(まつたけ) 香蕈(かうたけ) 醤瓜(しやうくは) あをうり 胡瓜(こくは) きうり 山葵(さんぎ) わさび 山姜(さんきやう)同 絲瓜(しくは) へちま 【上段】 ひらき食(しよく)をくだし吐血(とけつ) 衂血(ぢくけつ)をとめ熱(ねつ)をしりぞく ○藜(あかざ)は虫(むし)をころしむし くひばを治(ぢ)す脾胃(ひゐ)虚(きよ) 寒(かん)の人には用(もちゐ)べからず ○馬莧(すべりひゆ)はりんびやうを治(ぢ) し血(ち)をさんじはれを消(せう) し腸(ちやう)を利(り)すはらみ女は くらふべからず ○薑(はじかみ)は胃(ゐ)をひらき血(ち)をや ぶり風邪(ふうじや)をさる菌(くさびら)の毒(どく) を解(げ)し神明(しんめい)に通(つう)ず ○蔏陸(やまごぼう)は五さうをすか し水気(すいき)をさんず色(いろ) あかきものは人を害(かい)す 食(しよく)すべからず ○蒟蒻(こんにやく)は消渇(せうかつ)をとめ血(ち)を くだしはれを消(せう)し癰(よう) を治(ぢ)し労(らう)を治(ぢ)す疱瘡(はうさう) せざる小児(せうに)にはいむべし ○繁蔞(はこべ)は年(とし)のひさしき悪(あく) 瘡痔(さうぢ)愈(いゑ)ざるに血(ち)をやぶり 乳汁(にうじう)をつうずさんの女くら ふべからず ○蒲英(たんほゝ)は乳癰(にうよう)水腫(すいしゆ)に汁(しる) にしてくふべし食毒(しよくとく)を消(せう) し滞気(たいき)をざんず ○蕨(わらび)は熱(ねつ)をさり水道(すいだう)を 利(り)し五ざうの不足(ふそく)をおぎ なふなり ○狗脊(くせき)はぜんまいなり俗(ぞく)に いぬわらびといふ疝気(せんき)を 【挿絵】 藜(れい) あかざ 茄(か) なすび 水茄(みづなすび) 馬莧(ばけん) すべりひゆ 鶏腸(けいちょう) よめがはぎ  薺蒿(せいかう)同 薊(けい) あざみ 薑(きやう) はじかみ 姜(きやう)同 はこべ 蔞蒿(ろうかう)同 繁蔞(はんろ) 蔏陸(しやうりく) やまごぼう 蒟蒻(こんにやく) 蒲英(ほゑい) たんぼゝ 【上段】 治(ぢ)し帯下(こしけ)をによし ○蓴(ぬなは)は腸胃(ちやうゐ)をあつくし気(き)を くだし嘔(ゑづき)をやめ下焦(げしやう)を安(やすん)ず ○瓣(べん)はうりのへたなり薬(くすり) に用(もちひ)て膈噎(かくいつ)嘔逆(さくり)を治(ぢ)す ○瓤(じやう)はうりのなかごなり㼓(れん) 犀(せい)同 橘油(きつゆ)の肉(にく)をも瓤(じやう)と云 ○芝(し)は渇(かつ)をやめ人の顔色(かんしよく) をまし神(しん)につうし智をまし 気(き)をすこやかにしるいれきに ○鹿角(ひぢき)は風気(ふうき)をくだし小(せう) 児(に)の骨蒸(こつしやう)労熱(らうねつ)を治(ぢ)し 麺(めん)の熱(ねつ)を解(げ)す ○石花(ところてん)は上焦(しやうせう)の浮熱(ふねつ)を去(さり) 下部(げぶ)の虚寒(きよかん)をはつす ○昆布(こんぶ)は水道(すいだう)を治(ぢ)し面(おもて) はれ悪瘡(あくさう)を治(ぢ)しこぶ結(けつ) 核(かく)陰(いん)はれいたみによし ○海帯(あらめ)は風(かぜ)をさり水(みづ)をくだ し女のやまひを治(ぢ)しさん のはやめによし ○紫菜(あまのり)は煩熱(はんねつ)をさりこぶ 脚気(かつけ)をうれふる人はこれを くらふべし多(おほ)くくらへばはら いたむなり ○水松(みる)は水腫(すいしゆ)のやまひを治(ぢ) しさんのはやめに用(もちひ)てよし ○燕窩(ゑんす)は虚(きよ)をおぎなひ 労痢(ろうり)をやむ ○石耳(いわたけ)は目(め)をあきらかに し精(せい)をまし人をして うゑず大小べんすくな 【挿絵】 鹿角(ろくかく) ひぢき 鹿尾菜(ろくびさい) 海鹿草(かいろくさう)並同 芝(し) れいし 蕨(けつ) わらび 瓣(へん) うりのへた 瓤(じやう) うりのなかご 狗脊(くせき) ぜんまい 石花(せきくは) こゝろぶと ところてん 蓴(じゆん) ぬなは じゆんさい 蒓同 水松(すいせう) みる 昆布(こんぶ) ひろめ 海帯(かいたい) あらめ 【右丁】 【上段】 からしむ ○苔菜(あをのり)は乾苔(かんたい) ともいふむしをこ ろし痔(ぢ)くわくらんゑ づきを治(ぢ)す ○木耳(きくらげ)は気(き)をま し身(み)をかるくし こゝろざしをつよく し痔(ぢ)を治(ぢ)す ○萆薢(ひかい)はところ なり黄薢(おうかい)とも いふ又 野老(やらう)といふ 味(あぢ)にがしよく疝(せん) 気(き)のむしをころ すなり 【挿絵】 燕窩(えんす) 紫菜(しさい) あまのり 苔菜(たいさい) あをのり 萆薢(ひかい) ところ 木耳(もくに) きくらげ 石耳(せきじ) いわたけ 【左丁】 頭書(かしらがき)増補(ぞうほ)訓蒙(きんもう)図彙(づゐ)巻之十八 果蓏(かくは) 此 部(ぶ)にはくだものゝ たぐひをしるす 【上段】 ○杏(あんず)はほしさらしてくらへ は渇(かつ)をとめ冷熱(れいねつ)の毒(どく)をさる 仁(にん)はせきをとむ ○梅(むめ)は生(なま)は多(おゝく)くらへば歯(は)を損(そん) ず仁(にん)は目(め)をあきらかにし白 梅(ばい)は痰(たん)をのぞく ○桃(もゝ)は生(なま)は顔色(がんしよく)をまし仁(にん)は瘀(を) 血(けつ)をさんじ大 便(べん)をつうず ○李(すもゝ)は労熱(らうねつ)をさり肝病(かんびやう)に 食(しよく)すべし麦(むぎ)じゆくして 実(み)なるを麦李(ばくり)といふ 【挿絵】 杏(きやう) からもゝ あんず 梅(はい) むめ 桃(たう) もゝ 李(り) すもゝ 【上段】 ○梨(なし)は熱嗽(ねつさう)をやめ渇(かつ)をと め痰(たん)を消(せう)し火(ひ)をくだし 肺(はい)をうるほす ○柰(からなし)は中焦(ちうせう)もろ〳〵の不(ふ) 足(そく)の気(き)を補(おぎな)ひ脾(ひ)を和(くは)し 気(き)ふさがるを治(ぢ)す ○棗(なつめ)は脾胃(ひゐ)をやしなひ津(しん) 液(えき)を生(しやう)し心腹(しんふく)の邪気(しやき)を さり心肺(しんはい)をうるほす ○栗(くり)は気(き)をまし腸胃(ちやうゐ)を あつくし腎(しん)を補(おぎな)ひ腰脚(こしあし)かな はざるを治(ぢ)す茅栗(しばぐり)杭子(さゝぐり) ○柚(ゆう)は食(しよく)を消(せう)し酒毒(しゆどく)を解(げ) し腸胃(ちやうゐ)の悪気(あくき)をさり婦(ふ) 人(じん)孕(はらみ)て食(しよく)をおもはず口(くち)淡(あはき)を 治(ぢ)す ○柑(くねんほ)は腸胃(ちやうゐ)のうちの熱 毒(どく)を 利(り)し俄(にはか)に渇(かつ)をやめ小便を利(りす) ○枳(からたち)は大 便(べん)をつうしむねのつかへ をさり痰(たん)を消(せう)す脾胃(ひゐ)よ はきものは用ゆべからず ○橘(たちばな)は消渇(せうかつ)をやめ胃(ゐ)をひらき 膈中(むねのうち)のふさがりをのぞく ○榧(かや)は寸白虫(すんばくちう)を治(ぢ)し食(しよく)を消(せう) し目(め)を明(あき)らかにし咳嗽(がいさう)白濁(びやくだく) をやめ痔(ぢ)を治(ぢ)す ○柿(かき)は水(みづ)を利(り)し酒毒(しゆどく)を解(げ)し 胃中(ゐちう)の熱(ねつ)をさる ○椎(しい)は腸胃(ちやうゐ)をあつくし人をし て肥(こへ)すこやかならしむこれを くらへばうへず ○榛(はしばみ)は気力(きりよく)をまし腸胃(ちやうゐ)を実(しつ) 【挿絵】 梨(り) なし 柰(たい) からなし 棗(さう) なつめ 栗(りつ) くり 柚(いう) ゆ 柑(かん) くねんほ からたち 枳《割書:き|し》 きこく 橘(きつ) たちばな みかん 椎(すい) しい 榧(ひ) かや 柿(し) かき 榛(しん) はしばみ し人をしてすこやかにし胃(い)を ひらく ○楉榴(ざくろ)は喉(のど)のかわくを治(ぢ)し三 尸(し) 虫(ちう)を制(せい)す味(あぢは)ひ酸甘(すくあまき)の二 品(ひん)有(あり) ○来禽(りんご)は気(き)をくだし痰(たん)を消(せう) し霍乱(くわくらん)腹(はら)の痛(いたみ)消渇(せうかつ)を治(ぢ)す ○葡萄(ぶたう)は痳病(りんびやう)しひれを治(ぢ)し 腸間(ちやうかん)の水をのぞき久(ひさ)しく くらへは身(み)をかろくす ○金柑(きんかん)は気(き)を下(くだ)し胸(むね)をこゝろよ くし渇(かつ)をやめ二日酔(ふつかえい)を治(ぢ)す ○銀杏(ぎんあん)は生(なま)にては酒(さけ)を解(げ)し 痰をくたし虫(むし)をころす熟(じゆく)し くらへは小 便(べん)をしゞむ ○枇杷(びは)は吐逆(ときゃく)をとめ上 焦(せう)の熱(ねつ) をつかさどり気(き)を下(くだ)し肺気(はいき)を利(り)ス ○枳椇(けんほのなし)は五 臓(さう)をうるほし大小 便(べん)を利(り)し酒毒(しゆどく)を解(げ)す ○楊梅(やまもゝ)は気(き)をくだし腸胃(ちやうい)をそゝ ぎ渇(かつ)をやめ痰(たん)をさりゑづき をとめ食(しよく)を消(せう)す ○茘支(れいし)は渇(かつ)をやめ顔色(がんしよく)をまし 煩(いきれ)を除(のぞ)き頭(かはち)おもきを治(ぢ)す ○苺(いちご)は気(き)をまし身(み)を強(つよ)くし虚(きよ)を 補(おぎな)ひ男(おとこ)は陰(いん)なへ女(をんな)は子(こ)なきによし ○仏手柑(ぶしゆかん)は気(き)をくだし痰(たん) 水(すい)をのぞき酒(さけ)に煮(に)てのめば 痰咳嗽(たんがいさう)を治す ○胡桃(くるみ)は肌(はだへ)をうるほし髪(かみ)を黒(くろく) し多(おゝく)食(くら)へば小 便(べん)を利(り)す ○榲桲(まるめろ)は中をあたゝめ気(き)を下(くだ) し食(しよく)を消(せう)し胸(むね)の間(あいだ)の酸水(さんすい) 【挿絵】 楉榴(じやくりう) ざくろ 金柑(きんかん) ひめたちばな 盧橘(ろきつ)同 来禽(らいきん) りんご 葡萄(ほどう) ぶとう えび 鴨脚樹(いてう) 銀杏(ぎんきやう) ぎんあん 枳椇(しく) けんほのなし 苺(ほ) いちご 樹苺(きいちご) 覆盆子(つるいちご) 蛇苺(へびいちご) 枇杷(びは) 一名 炎果(えんくは) 楊梅(やうばい) やまもゝ 茘支(れいし) 離支(りし)同 香櫞(かうゑん) ぶしゅかん 仏手柑(ぶしゆかん)同 【上段】 をのぞき水瀉(すいしや)を治(ち)し酒 気(き)を散(さん)ず ○木瓜(ぼけ)は脚気(かつけ)筋(すぢ)ひきつり くわくらんを治(ぢ)す ○菱(ひし)は中を安(やすん)じ五 臓(ざう)を補(おぎな)ひ 酒毒(しゆとく)を解(げ)し渇(かつ)をやめ丹石(たんせき)の どくを解(げ)す ○茶(ちや)は小 便(べん)を利(り)し痰熱(たんねつ)を さり渇(かつ)をやめねむりすくな く食(しよく)を消(せう)し目(め)を明(あき)らかにす ○椒(さんせう)は風邪(ふうじや)の気(き)を除(のぞ)き中 をあたゝめ女人の経水(けいすい)を通(つう)ず ○胡頽(ぐみ)は水痢(すいり)を治(ぢ)す寒(かん) 熱(ねつ)の病(やまひ)には用(もちゆ)ゆべからず ○葧臍(くわい)は風毒(ふうどく)を消(せう)し耳目(みゝめ)を 明(あきらか)にし胃(ゐ)をひらき腸胃(ちやうゐ)をあ つくし血 痢(り)をつかさどる ○慈姑(しろくわい)は産後(さんご)にむねをせめ 死せんとし難産(なんざん)ゑな下(くだら)さるを治(ぢす) ○梬棗(さるがき)は心(たん)をしづめ熱(ねつ)をとめ 消乾(せうかつ)をとめ久(ひさ)しく服(ふく)すれば 顔色(かんしよく)をよろこばしむ ○松子(まつのみ)は諸風骨(しよふうほね)ふし痛頭(いたみかしら) ふらめきがいさうによし ○龍眼(りうがん)は胃(ゐ)をひらき脾(ひ)をまし 虚(きよ)を補(おぎな)ひ智(ち)をます久(ひさ)しく 服(ふく)すれは志(こころさし)をつよくし身(み)をかる くして老ず ○甘蔗(かんしや)はさたうの木(き)なり よく脾胃(ひゐ)をおぎなふ ○胡椒(こせう)は中をあたゝめ痰を去(さり) 腹痛(はらのいたみ)をやめ胃口虚冷(ゐこうきよれい)を治(ぢ)す 【挿絵】 核桃(かくたう) 核果(かくくは)同 胡桃(こたう) くるみ 菱(れう) ひし 榲桲(うんぼつ) まるめろ 茶《割書:た|さ》 ちや 椒(せう) さんせう 木瓜(もくくは) ぼけ 胡頽(こたい) ぐみ 梬棗(ゑいさう) さるがき 葧臍(ほつせい) くわい 慈姑(じこ) しろぐわい おもだか 茨菰(じこ)同 松子(せうし) からまつのみ 【上段】 ○鴉瓜(からすうり)は火をくだし咳(せき)を治(ぢ)し 痰(たん)をそゝぎのどを利(り)す ○燕覆(あけひ)は膀胱(ばうくわう)を治(ぢ)し癰(よう)を 消(せう)し腫(はれ)をさんじ能(よく)乳汁(にうじう)を通(つう)ス ○甜瓜(からうり)は熱(ねつ)をのぞき小 便(べん) を利(り)し煩渇(はんかつ)をとむ暑(しよ) 月(げつ)にくらへば暑(しよ)にあてられず ○苦瓜(つるれいし)は邪熱(じやねつ)をのぞき労(らう) 乏(ぼく)をおぎなひ心(しん)をきよく し目(め)をあきらかにす 錦茘支(きんれいし) 癩葡萄(らいぶだう) ○烏柿(うし)はあまほしなり 火柿(くはし)同 醂柿(りんし)はさはしがき 烘柿(そうし)つつみがき白柿はつり がきなり ○蔕(てい)は瓜(うり)の蔕(へた)柿(かき)の蔕(へた) なり又 蒂(てい)につくる㚄(てい)同 柿(かき)茄(なすび)などのへたなり ○莍(きう)は櫧(かし)櫟(いちゐ)などの実(み)を もる房(はう)なり俗(ぞく)にかさと云 ○仁(にん)はくだものゝ核(さね)のうち にあるものなり 梅仁(ばいにん)桃仁(とうにん)杏仁(きやうにん)なり 薬(くすり)にもちゆ ○核(かく)は梅桃(むめもゝ)補その身すべて くだもの又は瓜茄(うりなすび)のさね也 核(さね)の中(うち)薬(くすり)にもちゆるもの あまたあるなり ○紫糖(くろざたう)はおほく食(くら)へば心(しん) 痛(つう)し長虫(ちやうちう)を生(しやう)す 【挿絵】 龍眼(りうがん) 円眼(えんかん) 茘奴(れいぬ) 同 胡椒(こせう) まるはじかみ 一名 木奴(もくぬ) 鴉瓜(あくわ) からすうり 甘蔗(かんしや) さたうだけ 燕覆(ゑんふく) 一名 桴棪 又 あけび まくはうり 甜瓜(てんくは) からうり にがうり 苦瓜(くくは) つるれいし 白柿(はくし) つりがき 烏柿(うし) あまぼし 蔕(てい) ほぞつた 【右丁】 【上段】 ○沙糖(さたう)は 心肺(しんはい)をうる ほし 大小 腸(ちやう)の 熱をさり 酒毒を解(げ)す ○氷糖(こほりさたう)は 心脹(しんてう)の熱(ねつ)を さまし 目(め)をあきら かにす 【挿絵】 氷糖(へうたう) こほりざたう 沙糖(さたう) しろざたう 紫糖(したう) くろざたう 核(かく) さね 莍(きう) かさ 仁(にん) 【左丁】 頭書(かしらかき)増補(ぞうほ)訓蒙(きんもう)図彙(づゐ)巻之十九 樹竹(じゆちく) 此 部(ふ)にはうへ木(き)竹(たけ)のるいをしるす 【上段】 ○松(まつ)は久(ひさ)しく服(ふく)す れば身(み)を軽(かる)くし て老(おい)ず年(とし)をのぶる といへり 補 五 葉(よう)を俗(ぞく) に唐松(からまつ)といふ ○楓(ふう)はかいでなり又 鶏冠木(かいで)とも書(かく)也 もみぢの事なり 補 紅葉(こうよう)は諸木(しよぼく)に多(おゝ)ク あり楓(かいで)は中(なか)にも勝(すぐれ)たり 【挿絵】 ○松(しやう) まつ ○楓(ふう) かいで 【上段】 ○檜(ひのき)は深山(しんざん)あり て補 大木(たいぼく)となる白木(しらき) の木具(きぐ)曲物(まげもの)など みな此木を用(もち)ひて 最上(さいじやう)とす又 楫(かぢ)に つくるなり ○補 圓柏(いぶき)は葉(は)栢(かや)にゝ て実(み)は松に似(に)たり 尖(とが)りかたし但(たゞ)し 葉(は)檜(ひのき)に類(るい)して 色黒(いろくろ)く皮(かわ)あらし 檼柏(いんはく)同 ○檉(むろ)は補 檉柳(ていりう)なり 一名 雨師(うし)といふ 皮(かわ)あらし ○杉(すぎ)は補 深山(しんさん)に生(しやう) ずるもの大木と なる木立(こだち)直(すぐ)に て枝葉(ゑたは)しげる也 煎(せん)して毒瘡(どくさう)を 洗(あら)ひ水に浸(ひた)し て脚気(かつけ)腫満(しゆまん)を 治(ぢ)す ○仙栢(いぬまき)は補 槙(まき)のは に似(に)たり実(み)の形(かたち) 手(て)を合(あは)せたるか如(こと)し 一名 羅漢松(らかんしやう) 【挿絵】 檜(くわい) ひのき 圓柏(ゑんはく) いぶき 檉(てい) むろ 仙栢(せんはく) いぬまき 杉(さん) すぎ 【上段】 ○南燭(なんてん)は 補 五月に 少(ちいさ)き白き花さき 実(み)のり霜後(さうご)に 紅(くれない)になるその色 美(び)なり 補 此木(このき)悪(あし) き夢(ゆめ)を見たる時 此木(このき)をみればその 夢(ゆめ)きゆるといふ事 ゆへ多(おほ)く手水所(てうづどころ) のむかふに植(うへ)をく なり ○山茶(さんさ)は 補 品類(ひんるい)多(おほ) し俗(ぞく)にさゞんくは といふ冬(ふゆ)花 咲(さく)うす 紅(べに)白花(はくくは)なりつばき は春さく花葉(はなは)共 に大にして色品(いろしな〴〵)有 ○桜(さくら)は一名 朱桃(しゆとう)又は 麦英(ばくゑい)ともいふ 補 むかしは 梅(むめ)にかきりて花(はな)と称(しやう) じき今は花(はな)といへは桜 にかぎる実(み)を桜桃(おふとう)と いふ桜(さくら)は一重(ひとへ)なるもの成 しが後(のち)に八重桜(やゑさくら)の種(しゆ) 類(るい)多(おほ)くなり今は 百 種(しゆ)に及(およ)べり ○海棠(かいだう)は 補 花白く 紅色(へにいろ)の所(ところ)ありて 尤(もつとも)美(ひ)なり葉(は)はな しのことく三月に 花さく一名 海紅(かいこう) 花(くは)といふ 【挿絵】 南燭(なんしよく) なんてん 山茶(さんさ) つばき 桜(ゑい) さくら 海棠(かいだう) 【上段】 ○躑躅(つゝじ)は類(たぐひ)多し 紫花(しくは)は 補 二月に花 さく赤(あか)つゝじは三月 花さくれんげつゝじは 少し遅(おそ)く花大に して見事なり霧(きり) 島(しま)は花 濃紅(こいへに)にして 美(び)なりもちつゝじは 薄紫(うすむらさき)四月花さく りうきうつゝじは白花 と紫(むらさき)の花大にし ておそし杜鵑花(さつき)は 五月花さく紅紫(へにむらさき) 又は白紅交(はくこうまじ)り種々(しゅ〴〵)有 ○辛荑(こふし)は葉 細(ほそ) 長(なが)し花白くして 少し赤(あか)みあり花 を木筆花(もくひつくは)といふ也 春花さく ○木蘭(もくらん)は香蘭(からん)に 似(に)て花は蓮(はす)のごと くうち白く外かわ むらさきなる 補 花を 木蓮花(もくれんげ)といふ ○厚朴(こうぼく)は春葉(はるは)を 生し四季しほま ず花くれないに実(み) あをし一名 榛(しん) 【挿絵】 羊躑躅(やうてきちよく) れんげつゝじ 映躑躅(えいてきちよく) あかつゝじ 杜鵑花(とけんくは) さつき 辛荑(しんい) しでこぶし 木蘭(もくらん) もくれんげ 厚朴(こうぼく) ほうのき 【上段】 ○補 槿(むくげ)は芙蓉(ふよう)のは なに似(に)て小(ちい)さし 薄紅白(うすべにしろ)あり八重(やゑ) ひとへあり七月花 さく一名 日及(じつきう) ○芙蓉(ふよう)は水に生 するを水芙蓉(すいふよう) といふ荷花(かくは)なり木 を木芙蓉(もくふよう)といふ 補 きばちすともいふ 七八月花ひらく ○蜀漆(くさき)は秋 紫(むらさき)の 花さく花中(くはちう)に黒(くろ) き実(み)有 根(ね)を常(じやう) 山(ざん)といふ六月 頃(ころ)葉(は) とり食(しよく)すれども 毒(どく)ありともいふ ○女貞(ねづもち)は冬(ふゆ)をしのぎ てしぼまずよつて女 の貞節(ていせつ)に比(ひ)して名 づく一名 蝋樹(らうしゆ) ○冬青(もちのき)は冬月 青(あを) くみどりなりよつて 冬青(とうせい)といふ葉少(すこ) しまるし 【挿絵】 槿(きん) むくげ 芙蓉(ふよう) きはちす 一名 拒霜(きよさう) 蜀漆(しよくしつ) くさぎ 冬青(とうせい) もちのき 女貞(ぢよてい) ねづもち 【上段】 ○粉団(てまり)は葉(は)まるく 花白くして手毬(てまり) のごとし四月花さ く玉繍花(ぎよくしうくは)とも繍(しう) 毬花(きうくは)ともいふ 補 かん木(ぼく) といふ木も粉団(てまり)に似(に) たる花なり大てま り小でまり二 種(しゆ)有 ○紫陽(あぢさい)は 補 五月花 さく粉団(てまり)似たり色(いろ) はるり又うす紅白 あり葉てまりに 似(に)て葉(は)さき尖(とか)る 木の長(たけ)三四尺 ○薜荔(まさきのかつら)は一名を 木饅頭(もくまんちう)といふ又 鬼饅頭(きまんぢう)といふ 補 秋 のすゑに青(あを)き実(み) のる中あかし ○梔(くちなし)は 補 花白く五 月にさく実(み)は黄(き) なる染色(そめいろ)に用ゆ 上 焦(しやう)の熱(ねつ)をくだし 痰(たん)を治(ぢ)す花を 薝匐(せんふく)【簷は誤 注】といふ 【注 くちなしの漢名は薝匐(たんふく或はせんふく)で「せん」の字は竹かんむりではなく艸冠なので筆者の誤と思われる。】 【挿絵】 粉団(ふんたん) てまり 紫陽(しやう) あぢさい 薜荔(へきれい) まさきのかづら 梔(し) くちなし 【上段】 ○錦帯花(やまうづき)は四月に 花さく楊櫨(うつぎ)に似(に) て花 葉(は)ともに大 なり花 開初(ひらきはしめ)には 白く後(のち)に赤(あか)く成 ○楊櫨(うつぎ)は葉(は)こま かく花も小(ちいさ)く木(き)は 黄色(きいろ)をそむるによ し実(み)は莢(さや)をなす 空疏(くうしよ)同 ○棘(いばら)は 補 山野(さんや)に多し はり多(おゝ)く群(むらが)り生(しやう) ず五月白き花 咲(さく) 棘刺(きよくし)棘鍼(きよくしん)並同 ○角楸(あづさ)はかはらひさ ぎといふ 補 実(み)はさゝげ のごとく細長(ほそなが)くふさ をなす冬(ふゆ)葉(は)落(おち) て角(つの)なお有 ○木槵(つぶのき)は五六月に 白き花さく実生(みしやう) は青(あを)く熟(じゆく)すれば 黄(き)なり 【挿絵】 錦帯花(きんたいくは) やまうつぎ 楊櫨(やうろ) うつぎ 棘(きよく) いばら 角楸(かくしう) あづさ かはらひさき 木槵(もくりん) つぶのき 【上段】 ○棕櫚(しゆろ)は六七月に 黄白(きしろき)花さき八九 月に実(み)をむすぶ かたち魚(うを)の子(こ)の如 し此木(このき)の毛葉(けは) を帚につくる ○黄楊(つげ)は葉こま かくかたし花さか ず実(み)ならず四 季(き) しぼまず 補 木(もく)め細(こまか) くかたし色(いろ)黄(き)也 ○衛矛(くそまゆみ)は三月に 茎(くき)を生す高(たか)さ 三四尺ばかり 補 秋の すへ紅葉(こうよう)す茎(くき)に 箭(や)の羽(は)の如(ごと)き物 あり今いふにしきゞ 一名 鬼箭(きせん) ○鉄蕉(てつしやう)は蘇鉄(そてつ) なり一名 鳳尾焦(ほうびせう) となつく琉球(りうきう)より 出るを番焦(ばんせう)と云 【挿絵】 棕櫚(しゆろ) 黄楊(わうやう) つげ 衛矛(ゑいほう) くそまゆみ にしきゞ 鉄蕉(てつせう) そてつ 【上段】 ○備木(ぬるで)は実を塩(えん) 麩子(ふし)といふ虫(むし)あり て房(ばう)をむすぶを 五倍子(ごばいし)といふ是 ふしなり ○楮(かぢ)は皮(かわ)を製(せい)し て紙(かみ)につくるなり かうそといふ穀(こく) 構(こう)ならびに同 補 七月七日 児童(じどう) 此 葉(は)に詩歌(しいか)を 書(かき)二星(じせい)にそなふ ○漆(うるし)は 補 葉(は)ぬるで に似たり秋(あき)こま かき実をむすふ 此 木(き)より器物(きぶつ)を ぬるうるしをとる みだりにゐらへはま けるなり ○木樨(もくせい)は一名 岩(がん) 桂花(けいくは)といふ花白(はなしろき) を銀桂(ぎんけい)といひ黄(き) なるを金桂(きんけい)と云 補 香(か)つよき花なり 【挿絵】 備木(びぼく) ぬるで 楮(ちよ) かぢ 漆(しつ) うるし 木樨(もくせい) かつらのはな 【上段】 ○桐(きり)は琴(こと)につくる 四月花さく白く 薄紫(うすむらさき)なり大木(たいぼく) あり箱(はこ)などつくる に此木を用ゆ ○梧桐(ごとう)は皮(かわ)青(あを)く ふしなし実(み)は 胡椒(こせう)のごとくかわ にしわあり花は 小にして黄(き)なり 櫬(しん)同 ○櫟(くぬぎ)は 補 葉はかしわ に似(に)てうすし 又 栗(くり)に類(るい)す実 を橡実(しやうじつ)といふ俗(ぞく) にどんくりといふ也 木かたく薪(たきゞ)とし て最上(さいじやう)なり ○槲(かしわ)は一名 樸樕(ぼくそく) といふ実を櫟橿(れききやう) 子(し)といふ 補 俗(ぞく)にかし といふ品類(ひんるい)多し 木かたくして棒(ばう) につくるなり 【挿絵】 桐(とう) きり 梧桐(ごとう) きり 櫟(れき) くぬぎ 槲(こく) かしわ 【上段】 ○檗(きわだ)は葉(は)呉茱萸(こしゆゆ) に似(に)たり冬(ふゆ)しぼま ず皮(かわ)そと向くうら 黄(き)なり黄檗(わうばく)と いふきわだなり ○紫荊(しけい)は葉(は)こま かにして花(はな)むらさ きなり春(はる)花ひら き秋(あき)実(み)のる実を 紫珠(しじゆ)といふ ○石南(しやくなんげ)は石(いし)の間 陽(ひ) に向(むか)ふ所に生(しやう)ずる よつて石南(しやくなん)と云 葉(は)枇杷(びわ)のごとし ○狗骨(ひいらぎ)は木のはだ へ白くして狗(いぬ)の骨(ほね) の如(こと)し依(よつ)て狗(く)こ つといふ又 柊木(とうほく)とも 書(かく)なり ○瑞香(ぢんてうけ)は葉(は)厚(あつ)く 春(はる)花(はな)さくかたち丁(てう) 香(かう)のごとく色(いろ)黄(き)白(しろ) 紫(むらさき)なり ○接骨(にわとこ)は小便(せうべん)を 通(つう)じ水腫(すいしゆ)を治(ぢ)ス 一名 木蒴藋(もくさくてき)と いふ手足(てあし)の痛(いたみ)つり 煎(せん)じ洗(あら)ふてよし 【挿絵】 檗(はく) きわだ 紫荊(しけい) 石南(せきなん) しやくなんげ 瑞香(ずいかう) ぢんてうけ 狗骨(くこつ) ひいらぎ 猫児刺(めうにし) 杠谷(こうこく)並同じ 接骨(せつこつ) にわとこ 【上段】 ○桑(くわ)は一切(いつさい)の風気(ふうき) を治(ぢ)し中(うち)を調(とゝの)へ 気(き)をくだし痰(たん)を 消(せう)し胃(ゐ)をひら き食(しよく)を下す 補 楝(あふち)は葉(は)槐(えんじゆ)のごと く三四月に花さく 薄紫色(うすむらさきいろ)なり俗(そく)に せんだんと云 実(み)を 金棟子(きんれんし)といふ ○五加(うこぎ)は蔬(そ)につく りてくらへは皮膚(ひふ) の風湿(ふうしつ)をさる五 佳(か)五 花(くわ)同 ○枸杞(くこ)は皮膚(ひふ)骨(こつ) 節(せつ)の風(かぜ)をさり熱(ねつ) 毒(どく)をさりかさの腫(はれ) をさんず ○紫薇(しひ)は花 紅色(へにいろ) なり七月さく百日(ひやくじつ) 紅(こう)といふ 補 俗(ぞく)にさるす へりといふ ○樟(くす)は楠(くすのき)に似(に)たり 四 季(き)しぼまず夏 細(ほそ)き花さく 補 楠木(なんぼく)も 此類(このたぐひ)なり大木と なる数年(すねん)をへて 其木(そのき)石(いし)となる 【挿絵】 桑(さう) くわ 楝(れん) あふち せんだん 五加(ごか) うこぎ 枸杞(くうき) くこ 樟(しやう) くす 紫薇(しひ) 【上段】 ○石檀(とねりこ)は葉(は)槐(えんじゆ)に似(に) たり樳木(じんぼく)苦櫪(くれき)並 同 皮(かわ)を秦皮(しんひ)といふ ○合歓(ねむのき)は五月に 花さく色(いろ)紅白(こうはく)也 実にさやあり 補 葉(は) 昼(ひる)ひらきて夜(よる)しぼ むよつて一名 夜合(やがう) 樹(じゆ)といふ ○楡(にれ)は赤白(しやくびやく)二 種(しゆ)有 三月に莢(さや)を生(しやう)すか たち銭(ぜに)の如し色(いろ)白 し実を楡莢(ゆけう)楡銭(ゆせん) といふ ○葉(よう)は木のはなり 嫰葉(どんよう)わかば紅葉(こうよう)も みぢば落葉(らくよう)おちば 病葉(ひやうよう)わくらは ○株(しゆ)はくるぜなり俗(ぞく) にいふかふなり土(つち)に 入を根(ね)といひ土を出 るを株(しゆ)といふ ○蘖(かつ)は木のわかば への事なり枿(かつ)丕(かつ) ならびに同 ○芽(げ)は草(くさ)のめざし いつるをいふ萌芽(ばうか)と もいふ又さしめを云 【挿絵】 石檀(せきたん) とねりこ 合歓(がうくわん) ねむのき 楡木(ゆぼく) にれ 葉(えう) は 株(しゆ) かぶ 蘖(かつ) ひこばへ 寄生(きせい) やどりき 芽(け) ぬきざし 【上段】 ○楊(やう)は黄(くわう)白(はく)青(せい) 赤(しやく)の四 種(しゆ)あり白(はく) 楊(やう)は葉(は)まるく青(せい) 楊は葉(は)ながし赤(しやく) 楊(やう)は霜(しも)くだりて 葉(ば)赤(あか)くそむ水(すい) 楊(やう)は川(かわ)やなぎなり 水辺(すいへん)に生(しやう)ず ○寄生(やどりき)は諸木(しよぼく)に あり枝(えだ)の間(あいだ)木(き)のま たに生(はゆ)る木をいふ 木によりて名(な)かはれ り又 寓木(ぐうほく)ともいふ ○柳(あをやき)は垂條(すいでう)の小 楊(やう)なり花白し柳(りう) 絮(ぢよ)は柳(やなぎ)のまゆなり ○槐(えんじゆ)は葉(は)ほそく花 は黄(き)にして色(いろ)をそ むるに用ゆ又 宮槐(きうくわい) さやを槐角(くわいかく)といふ ○椋棶(むくのきらい)同一名 郎(らう) 来(らい)といふ葉(は)はほし て物をみがきてつや をいだす ○栴檀(せんだん)は葉(は)槐(えんじゆ)のご とく皮(かわ)青(あを)し黄檀(わうたん) 【挿絵】 白楊(はくやう) はこやなき 水楊(すいやう) かわやなぎ 柳(りう) したりやなぎ あをやぎ 【上段】 白檀(びやくだん)紫(し)檀 赤檀(しやくたん) 黒檀(こくたん)のわかちあり 伽羅(きやら)沈香(ぢんかう)はこの木(き) 朽(くち)てなるなり ○皂莢(さいかし)は葉(は)槐(えんじゆ)に 似(に)たり枝(えだ)にはり有 夏(なつ)ほそく黄(き)なる 花 咲(さく)皂角子(さいかし)共 書(かく) ○柴(しば)は小木(しやうぼく)散財(さんざい) なり俗(ぞく)にしば ○薪(たき)は粗(あらき)を薪(しん)と云 こまかなるを蒸(せう)と といふ又つまぎ ○竹(たけ)は六十一 種(しゆ)あり 六十年にして一 度(たび) 花さき実(み)のり枯(かる)る 補 是をじねんこ入(いる)と いふ花をさゝめぐり といふ枯(か)れ尽(つく)れは又 生ず ○筍(たかんな)は笋(たかんな)同 食(しよく)すれは膈(むね)を利(り)し 痰(たん)を消(せう)し胃(ゐ)をさは やかにし水道(すいどう)を通(つう) 【挿絵】 皂莢(さいけう) さいかし 椋(りやう) むく 槐(くわい) えんじゆ 栴檀(せんだん) 伽羅(きやら) 柴(さい) しば 薪(しん) たきぎ 【上段】 し気をます ○篠(しのざゝ)は小竹(こだけ)なり竹 の根(ね)より生(はゆ)る小さゝ をいふなり ○箬(じやく)は山に生ずる さゝなり葉(は)大にして長(たけ) 二尺ばかり有此 葉(は)にて 粽(ちまき)をつゝむ篛(じやく)同 ○篁(たかむら)は竹の苗(なへ)なり たかむらともいふ ○蘆竹(なよたけ)は葉(は)大にし て芦(あし)に似(に)たるまた 秋芦竹(しうろちく)ともいふ ○棕竹(しゆろちく)は一名 実(じつ)竹 葉(は)棕櫚(しゆろ)に似(に)たり 杖(つえ)又 拄杖(しゆちやう)につくる也 ○扶竹(ふちく)はふたまた竹 なり双竹(さうちく)とも天親(てんしん) 竹(ちく)とも又 相思(さうし)竹とも いふなり ○紫竹(しちく)は斑(はん)竹とも いふ舜(しゆん)のきさき娥(か) 皇(おう)女英(ぢよゑい)のなみだが かゝりてまだらにそ 【挿絵】 篠(でう) しのざゝ 筍(しゆん) たかんな たけのこ 竹(ちく) たけ 淡竹(はちく) 苦竹(まだけ) 箬(じやく) さゝ 篁(くわう) たかむらだけ 蘆竹(ろちく) なよたけ しのびだけ 【上段】 みたるとなり ○無節(むせつ)竹はきせる のらうにもちゆる 竹なり ○/ 𥳇(ふく)はさゝめぐりと いふ竹の実(み)なり一名 竹米(ちくべい)といふ  (補) 俗(ぞく)にいふ じねんことて竹の病(やまひ) なりと実(み)の中(なか)に米(こめ) のごとき物あり ○籜(たく)は竹のかわなり 又 竹皮(ちくひ)とも筍皮(じゆんひ)と もいふ ○筒(とう)はたけのつゝ 筩(よう)同 竹節(ちくせつ)たけ のふしなり ○蔑(べつ)【篾の誤ヵ】はたけのあを かわ俗(ぞく)にいふかづらう □(へつ)【竹+蜜】筠(きん)同 ○幹(かん)は木(き)の心(しん)なり 俗(ぞく)にいふみきなり ○根(こん)は木(き)の根(ね)なり 柢(てい)同 本(ほん)とも ○枝(し)は木(き)のゑだなり 【挿絵】 棕竹(そうちく) しゆろちく 扶竹(ふちく) ふたまただけ 紫竹(しちく) むらさきだけ 𥳇(ふく) さゝめぐり 無 節竹(せつちく) らうだけ 筒(とう) たけのつゝ 籜(たく) たけのかは 篾(べつ) たけのあをかは たけのかづら 【上段】 柯(か)同ほそきゑだを 條(でう)といふすはえ樹(き)の またを椏(あ)といふ ○梢(せう)は木(き)のこずへなり 杪(しやう)同 ○炭(たん)はあらずみなり 烏銀(うぎん)ともいふ桴炭(ふたん) はけしずみ ○杮(し)はこけら榾柮(こつとつ)は きのはし鋸末(きよまつ)は おがくずなり 【挿絵】 枝(し) えだ 幹(かん) から みき 根(こん) ね 炭(たん) すみ 杮(し) こけら 梢(せう) こずへ 【手書き】 拾冊之内 【裏表紙】