西行法師(さいぎやうほうし) な気(げ)ゝ とて 月(つき)やは ものを おもはする かこちかほ      なる    我なみたかな    八十五番 此心はおよそ物思ひをするはみなわれからなり 人のたのみたる事にあらずひるはまきれも してくらせどもよる月などながむれば一と しほにてなみださへこぼるゝをさながら月 の物思はするやうにおほゆたることはなけ れど我心のおろかなるより月にかこつ けてなみださへ出ることよと ひたすらおのれを かへりみたる うたなり