【表紙 題箋】 《割書:増補|頭書》訓蒙(花草)図彙大生 九 【注 「花草」は朱書き】 【朱の手書き】 花草 【右下部の資料整理ラベル】 TIAB  11 164 日本近代教育史   資料 【右丁】 【手書きのメモ】拾冊之内 【蔵書印】東京学芸大学蔵書 【左丁】 頭書(かしらがき)増補(ぞうほ)訓蒙(きんもう)図彙(づゐ)巻之二十 花草(くはさう)《割書:此部(このぶ)にはもろ〳〵の草(くさ)|花(ばな)をしるす》 【上段】 ○牡丹(ぼたん)はふかみ ぐさともはつかく さともいふ花(はな)の 王(わう)とす紫花(しくは)多(おゝ) し紅白(こうはく)あり紅(べに)を 上 品(ひん)とす尤(もつとも)花の 富貴(ふうき)なるものな りと古人(こじん)も賞(しやう)ぜ り一名 花王(くはおう)又 木(もく) 芍薬(しやくやく)といふ牡丹(ほたん) 皮(ひ)とて薬に用(もち)ゆ 【挿絵】 はつか  ぐさ 牡丹(ぼたん)  《割書:ふかみ| ぐさ》 【頭部の整理番号】 TIAB  11 164 【上下部に黒の丸印】  駿州 山【▢で囲む】中屋  大宮 【右丁 上段】 ○芍薬(しやくやく)は三 枝(し)五 葉(よう)なり花 牡丹(ぼたん)に 似(に)てすこし小(ちい)さ し夏(なつ)の初(はじめ)に花 さく紅白(こうはく)紫(むらさき)あり 花相(くはしやう)将離(〳〵り)といふ也 根(ね)を薬(くすり)に用ゆ ○桜草(さくらさう)は葉(は)蕪(ぶ) 菁(せい)の如(ごと)くにしてこ はし花 紫(むらさき)白(しろ)なり 三月花さく 【左丁 上段ここに注記を書きます】 ○葵(あふひ)は惣名(さうみやう)なり 葉(は)大にして花は 紅(べに)又 紫(むらさき)あり五月 花さく実(み)は大さ 指(ゆび)のごとくかわう すくして扁(へん)なり ○蜀葵(しよくき)はからあふ ひなり花 千重(せんえ)に して濃紅(こきへに)別(べつ)して うるはし菺葵(けんき)同又 戎葵(しうき)ともいふ ○錦葵(きんき)はこあふひ なり又 銭葵(ぜにあふひ)とも云 荊葵(けいき)同 【右丁 下段挿絵】 芍(しやく)  薬(やく)  《割書:かほ| よ| ぐさ》 桜草(さくらさう) 【左丁 下段挿絵】 錦葵(きんき)《割書:こあふひ》 葵(き)《割書: あふひ》 蜀葵(しよくき)  《割書:からあふひ》 【上段】 ○芙蓉(ふよう)は葉(は)葵(あふひ) のごとく花 紅白(こうはく)有 一重(ひとへ)千重(せんゑ)ありひと ゑは木槿(もくげ)似(に)て大 なり清(きよ)く美(び)なり 七月花さく ○龍肝(りうたん)は花 桔梗(きやう) の花の色(いろ)のごとく 葉(は)は笹(さゝ)のごとし 九月のすへ花さく 俗(そく)にりんだうといふ ○秋葵(しうき)は一名 黄蜀(くわうしよく) 葵(き)といふ又 側金盞(そくきんさん) 葉(は)とがりせばくきざ あり秋うす黄(き)なる 花さく俗(ぞく)にとろゝ ○莠(はくさ)は稷(ひへ)に似(に)て 実(み)なし一名 狗尾(くび) 草(さう)と禾粟(あわ)の中(なか)に 生ず俗(ぞく)にゑのころ 草(ぐさ)といふ ○金銭花(きんせんくは)は午時(ごじ) 花(くは)ともいふ秋花さく こい紅(べに)にてうるはし 一名 子午花(しごくは) 【挿絵】 芙蓉(ふよう) 龍肝(りうたん) ゑやみぐさ 秋葵(しうき) かうそ 莠(いう) はくさ 金銭花(きんせんくは) ごしくは 【右丁 上段】 ○蘭(らん)は茎(くき)むら さきに葉(は)みどり なり水沢(すいたく)のほと りに生ず花 黄(わう) 白(はく)にしてかうばし 蘭(らん)は品類(ひんるい)多(おほ)し ○風蘭(ふうらん)は一名を 桂蘭(けいらん)とも吊蘭(てうらん) ともいふ此 類(るい)に 岩蘭(いはらん)岩石蘭(がんぜきらん) なといふあり 【左丁 上段】 ○鶏冠(けいくわん)は葉(は)莧(ひゆ) に似(に)て少(すこ)し長(なが) く茎(くき)赤(あか)し花は 赤(あか)黄(き)又は交(まじ)り有 六七月花さき霜(さう) 後(ご)まであり鶏頭(けいとう) 花(げ)とも書(かく)なり ○秋海棠(しうかいどう)は秋 花さくうす紅色(べにいろ)也 茎(くき)葉(は)ともに少(すこ)し あかみあり 【右丁 下段挿絵】 蘭(らん)《割書:ふじ| ばかま》 風蘭(ふうらん) 【左丁 下段挿絵】 秋海棠(しうかいだう)【右から横書き】 鶏冠(けいくわん)《割書: |けいとうげ》 【右丁 上段】 ○剪秋羅(せんをうけ)は花(はな) 石竹(せきちく)のごとく朱(しゆ) 色(いろ)にて美(び)なり 六月花 咲(さく)ふし 黒(ぐろ)といふも此 類(たぐひ)也 ○剪春羅(がんひ)は花 の色(いろ)せんをうより 薄(うす)く黄みあり ○薏苡(ずゞた[ま])は子 白(しろ)と 黒(くろ)有 薏苡子(よくいし)と いふ五膈(ごかく)を治(ぢ)す 【左丁 上段】 ○百合(ゆり)は品類(ひんるい)多(おほ)し 此花三月 末(まつ)より咲(さく) 紅うす紅あり ○巻丹(おにゆり)は六七月に 花さく大にして黄(き) 赤(あか)し五六尺もたち のびて花多くさく 葉の間にくろき実(み) を生す一名 番山丹(ばんさんたん) ○山丹(ひめゆり)は四月 初(はじめ)に 花さく小(ちいさ)くして赤(あか) 白有赤は極(こく)朱(しゆ)也 うるはし渥丹(をくたん)同 此外(このほか)類(るい)多くあり 【右丁 下段挿絵】 剪秋羅(せんしうら) せんをうげ  剪(せん)   春(しゆん)    羅(ら)《割書: |がんひ》 薏苡(よくい)《割書:ずゞ| だま》 【左丁 下段挿絵】 百合(ひやくかう)《割書:ゆり》 巻丹(けんたん) 《割書:おに| ゆり》 山丹(さんたん)  《割書:ひめ| ゆり》 【上段】 ○他偷(えびね)は四月の 末(すへ)より花さく其(その) 品(しな)多し花 黄(き)なる あり紫(むらさき)有花色に 種々(しゅ〴〵)かはり有又秋 さく花もあり ○麗春(びしんさう)は三月に 花さく一重(ひとへ)は本紅(ほんへに)也 千重(せんゑ)は紅にしてつま 白し一名 仙女蕎(せんぢよけう) 又 御仙花(ぎよせんくは)といふ ○金盞花(きんさんくは)は花 のかたち盞(さかづき)の如(ごと) し色(いろ)赤(あか)し三月 花さく今(いま)誤(あやま)りて 金銭花(きんせんくは)といふ金 銭花は別種(べつしゆ)なり ○春菊(かうらいぎく)は花 白(しろ)く にほひ黄(き)なり三 月花さく蒿菜(かうさい) 花(くは)といふはだへの 時(とき)食(しよく)す 【挿絵】 他偷(たゆ) ゑびね 麗春(れいしゆん) びじんさう 金盞花(きんさんくは) きんせんくは 春菊(しゆんきく) かうらいぎく 【上段】 ○蒲公英(たんほゝ)は花 白き大(おゝい)なり黄(き)成(なる) は小(しやう)なり二三月に 花さく葉(は)をとり て食(しよく)す ○菫菜(すみれ)は一名 箭(せん) 頭草(とうさう)と云すも とりぐさなり花紫 白花(はくくは)又うす紫(むらさき)の もの葉(は)丸(まる)く小(しやう)也 ○虎杖(いたどり)は月水(くわつすい)を 通利(つうり)し瘀血(おけつ)を破(やぶ)る 渇(かつ)をやめ小便(しやうべん)を利(り)し 腹はり満(みつ)るを治(ち)す ○萱草(わすれぐさ)は花 巻丹(おにゆり)のごとく黄(き) 赤(あか)く初夏(しよか)に咲(さく) 春(はる)若葉(わかば)を取(とり)て 食(しよく)す水気(すいき)乳(にゆう)よ うはれ痛(いたみ)を治(ぢ)す 食(しよく)を消(せう)すこのん でくらば悦(よろこび)てうれ ひなし花 千重(せんゑ) のものは毒(どく)ありあや まりて喰(くら)ふべからず ○酢漿(かたばみ)は一名 酸(さん) 草(さう)といふ俗(ぞく)に云 すいものぐさ 【挿絵】 蒲公英(ほこうゑい) たんほゝ 菫菜(きんさい) すみれ 虎杖(こぢやう) いたどり かたばみ 酢漿(さしやう) わすれぐさ 萱草(くわんざう) 【上段】 ○射干(からすあふぎ)はひあふぎ ともいふ葉(は)のかたち 檜扇(ひあふぎ)に似(に)たり花は 黄赤(きあか)し五六月花 さく烏扇(うせん)烏翣(うさう) ならびに同 ○蝴蝶花(こちうくは)は射干(からすあふぎ) の類(るい)なり三月白き 花 咲(さく)黄(き)み中(なか)にあり 俗(ぞく)にやぶらんといふ しやがは射干(しやかん)の音(おん) を誤(あやまり)しものなりと ○夏枯草(かこさう)は野(の)に 多(おほ)し薄紫(うすむらさきの)花 咲(さく) ○鴟尾(いちはつ)は葉(は)は射(からす) 干(あふぎ)ににたり花は むらさきなり花 を紫羅傘(しらさん)と いふ四月花さく ○馬藺(ばりん)は沢辺(たくへん) に生(しやう)ず気(き)くさし 花はあやめににて 細(ほそ)し色もうすし 馬棟(ばれん)ともいふ夏(なつ) の初(はじめ)に花さく 【挿絵】 射干(しやかん) からすあふぎ 蝴蝶花(こてうくは) しやが 夏枯草(かこさう) うつほくさ 鴟尾(しひ) いちはつ 鴨脚花(わうきやくくは) 馬藺(ばりん) 【上段】 ○杜若(かきつばた)は水中(すいちう)に 生(しやう)ず花大にして 色(いろ)桔梗(ききやう)の花の色 にてうるはし夏(なつ) のはじめに花さく ○菖蒲(あやめ)は花 杜(かき) 若(つばた)に似(に)て小(ちい)さく 葉(は)も細(ほそ)し又 菖(しやう) 蒲(ふ)と云は別種(べつしゆ)也 花なし又花菖 蒲と云物 一種(いつしゆ)有 ○様錦(もみぢぐさ)は六七月 葉(は)紅(くれなゐ)なり黄緑(きみどり) 色(いろ)をかぬるを十様(しうやう) 錦(きん)といふ又 雁(かん)来(きたつ)て 紅(くれない)なるを雁来紅(けんらいこう) といふ俗(ぞく)に葉鶏頭(はげいとう) といふなり ○桔梗(ききやう)は花 紫(むらさき)有 白あり一重(ひとへ)有かさ ね有六月にひらく 又 梗草(かうさう)となづく 【挿絵】 杜若 かきつばた 菖蒲(しやうぶ) あやめ 様錦(やうきん) もみぢぐさ 桔梗(けつかう) ききやう 【上段】 ○烏頭(とりかぶと)は花きゝ やうの花の色(いろ)なり かたち烏(からす)の頭(かしら)の如(ごと) し亦とりかぶと のかたちに似(に)たり 九月花さく ○鳳仙花(ほうせんくは)は花 紅(こう) 白(はく)あり七月はな さく又 金鳳花(きんほうくは)と いふ花に 黄(くわう)紫(し)碧(へき) ありと ○番椒(たうがらし)はせんき を治(ぢ)し虫(むし)をこ ろす人にどく也 ○丈菊(てんがいばな)は一名は迎(けい) 陽花(やうくは)といふ日輪(にちりん) にむかふ花なりよ つて日車(ひぐるま)とも云 花 菊(きく)に似(に)て大(おゝい)也 色(いろ)黄(き)又 白(しろ)きも あり ○杜蘅(とかう)は葉(は)は馬(ば) 蹄(てい)に似(に)たり紫(むらさき) の花 咲(さく)馬蹄(ばてい)香(かう) 土(ど)細辛(さいしん)といふ 【挿絵】 烏頭(うづ) とりかぶと 鳳仙花(ほうせんくは) 番椒(ばんせう) たうがらし 丈菊(じやうきく) てんがいばな 杜蘅(とかう) つぶねぐさ 【上段】 ○薔薇(しやうび)は花 紅白(こうはく) 黄(き)薄紅(うすべに)有 千重(せんゑ)の ものを牡丹(ぼたん)いばら といひ一重(ひとへ)なるを蕀(いばら) 薔薇(しやうび)と云一名 月々(げつ〳〵) 紅(こう)又 長春(ちやうしゆん)ともいふ ○慎火(いはれんげ)は一名 景天(けいてん) 又は戒火(かいくは)ともいふ小(しやう) なるを仏甲草(ぶつかうさう)と いふなり ○苔蘚(こけせん)同 水(みづ)に有 を陟釐(ちよくり)と云 石(いし)に生(はゆ) るを石濡(せきしゆ)瓦(かはら)に有 を屋游(をくいう)墻(かき)を垣衣(ゑんい)と云 ○酸漿(さんしやう)は五月に 白き花 咲(さき)実(み)赤(あか) くとうろうのごとし よつて金灯篭(きんとうろう)と云 ○旋覆(をぐるま)は葉(は)長(なが)み 有花は黄(き)にして 菊(きく)ににたり六月に 花さく又九月にむ らさきの花さくを 紫苑(しをん)といふ是(これ)は 見事(みごと)成(なる)花なり 【挿絵】 薔薇(しやうび) いばらしやうび 慎火(しんくは) いはれんげ 仏甲草(ぶつかうさう) 苔(たい) こけ 酸漿(さんしやう) ほうつき 旋覆(せんふく) をぐるま 【上段】 ○藤(ふぢ)は三月の末(すへ) に花さく色(いろ)紫(むらさき)は おそく花の長(たけ)三 四尺に及(およ)ぶ白花(はくくは)は 早(はや)くさきて短(みじか)し 一名 招豆藤(せうづとう) ○石斛(せきこく)は石上(せきじやう)に 生ず胃(ゐ)の気(き)を 平(たいらか)にし皮膚(ひふ) の邪熱(じやねつ)をさる一 名 石蓫(せきちく) ○棣棠(やまぶき)は花黄にし て一重(ひとへ)有 八重(やゑ)有 三月花さくあるひ は地棠花(ぢたうくは)となつく ○巻栢(いはひば)は一名を地(ち) 栢(はく)と云 石間(せきかん)に生(しやう)す 生(しやう)にて用(もちゆ)れば血(ち) を破(やぶり)炙(あぶ)れは血(ち)を止(とむ) ○玉栢(まんねんぐさ)は一名 万年(まんねん) 松(せう)とも云 長(なが)きを石(せき) 松(せう)又 玉遂(ぎよくすい)ともいふ 【挿絵】 藤(とう) ふじ 石斛(せきこく) いはくすり 棣棠(ていたう) やまぶき 巻栢(けんはく) いはひば 玉栢(ぎよくはく) まんねんぐさ 【上段】 ○葦(あし)は水辺(すいへん)に 生(しやう)ずいまた秀(ひいで)ざ るを芦(ろ)といひ長(ちやう) 生(せい)するを葦(い)と云 葉(は)は竹(たけ)に似(に)て花 は荻(おぎ)のごとし ○蓮(はちす)は花 紅白(こうはく)有 葉(は)を荷(か)といひ根(ね) を藕(くう)といひ花を 芙蓉(ふよう)といひ実(み)を 蓮菂(れんてき)といふ ○菖(しやう)は一寸九 節(せつ) なるものを菖(しやう) 蒲(ぶ)と名付(なつく)冬至(とうじ) の後(のち)五十七日にし てはじめて生(しやう)ず ○菰(まこも)は水辺(すいへん)に生(しやう) ず菖(あやめ)にゝたり一名 茭草(かうさう)又 蒋草(しやうさう)ト云 ○蒲(がま)は水辺(すいへん)に生 す筵(むしろ)に織(をる)べし蒲(ほ) 槌(つい)がまほこ花上(くはじやう)の 黄粉(くわうふん)を蒲黄(ほくわう)と云 ○萍(うきくさ)は水上(すいじやう)にあり て根(ね)なし血色(けつしよく)の如(ごと) 【挿絵】 葦(い) あし 蓮(れん) はちす 菖蒲(しやうぶ) 萍(へい) うきくさ 菰(こ) まこも 蒲(ほ) がま 【上段】 くなるを紫萍(しへい)ト云 ○薛(すげ)は水辺(すいへん)に生ず 香附子(かうぶし)の苗(なへ)ににたり 一名 莎白薹(さはくたい) ○藺(ゐ)は沢地(たくち)に生ず 茎(くき)円(まとか)に細(ほそ)く長(なが)し 痳病(りんびやう)に煎(せん)じ用(もち)ゆ ○芡(みづぶき)は中(うち)を補(おぎな)ひ気(きを) ます多(おほ)く喰(くらへ)は風(ふう) 気(き)をうごかす実(み) を芡実(けんじつ)といふ ○藎(かりやす)は九月十月に とる緑色(みとりいろ)也 絹(きぬ)を染(そむ) 一名 黄草(わうさう)菉竹(りよくちく)王芻(わうすう) ○莕(あさゝ)は水底(すいてい)に生す 茎(くき)は釵(かんざし)のごとし上 青(あをく) く下白し花(はな)黄(き)に 葉(は)紫(むらさき)にまるし荇(かう) おなじ ○葒(けたで)は茎(くき)ふとく毛(け) あり葉(は)に赤(あか)みあり 実(み)□大きなり ○蘇(しそ)はくき方(かた)にし て葉(は)まるく歯(は)有 色(いろ)紫(むらさき)なり桂荏(けいしん)同 実(み)も葉(は)も薬種(やくしゆ) にもちゆ ○蓼(たで)はくわくらんを やめ水気(すいき)面(おもて)うそばれ たるを治(ぢ)し目(め)を明(あきらか)にす ○萹蓄(うしぐさ)は三月に ちいさき赤(あか)き花を 生(しやう)ず和名(わみやう)にわやな き扁竹(へんちく)同 【挿絵】 薛(せつ) すげ 莕(きやう) あさゝ 藺(りん) ゐ 芡(けん) みづぶき 藎(じん) かりやす 萹蓄(へんちく) うしぐさ 葒(こう) けたで 蘇(そ) のらえ しそ 蓼(れう) たで 水蓼(すいれう) いぬたで 【上段】 ○菊(きく)は百種あり 花も数品(すひん)あり頭(づ) 痛(つう)目(め)を明(あき)らかに し年(とし)をのぶると いへり薬(くすり)には黄色(きいろ) なる菊(きく)に一 種(くせ)あり ○莣(おばな)は茅(ちがや)にゝたり 皮(かわ)は縄(なわ)又は履(くつ)につ くるなり大を石芒(せきばう) 小を芭芒(はばう)といふ ○荏(え)は白蘇(はくそ)とも いふ山野(さんや)に多(おほ)く 生(しやう)ず油(あぶら)おほし えのあぶらといふ ○牽牛(あさがほ)は葉(は)三 尖(とがり)あり花はむらさ き白はむかしより 有 近頃(ちかごろ)新花(しんくは)出 て紅(べに)絞(しほり)飛入(とびいり)花(くは)形(きやう) も品々(しな〳〵)あり ○鼓子(ひるがほ)は花のかた ち軍中(ぐんちう)に吹(ふく)鼓子(くし) のごとし故(ゆへ)に鼓子(くし) 花といふ又 旋葍(せんふく) 花(くは)ともいふ ○蒴藋(そくづ)は枝(えだ)ことに 五 葉(よう)花白く実(み) 青(あを)く緑豆(ふんどう)のことし 痛(いたみ)所(しょ)に葉(は)を付 煎(せん)じ洗(あら)ふてよし 一名 接骨草(せつこつさう) 【挿絵】 女節(ちよせつ)花 菊(きく) かわらよもぎ 莣(はう) おばな すゝき 荏(じん) え はくそ 鼓子(くし) ひるがほ 牽牛(けんご) あさがほ 蒴藋(さくてき) そくつ 【上段】 ○水仙花(すいせんくは)は冬(ふゆ)の 初(はじめ)より花ひらき 初春(しよしゆん)まで花有 かたち酒盃(しゆはい)の如く 黄(き)なる物有花び らは白しよつて金(きん) 盞(さん)銀台(きんだい)といふ 葉(は)は石蒜(せきさん)にゝたり ○麦門冬(せうがひけ)は四月 にうすむらさきの 花ひらく実(み)緑(みとり)に して珠(たま)のごとく丸(まる) し秋(あき)の頃(ころ)みのる此 根(ね)を薬(くすり)に用(もち)ゆ ○瞿麦(なでしこ)は花の色(いろ) 薄紫(うすむらさき)六月にさく 河原(かはら)に多(おほ)し近(ちか) 頃(ごろ)は新花(しんくは)あり色 も品々(しな〳〵)あり ○石竹(せきちく)は撫子(なでしこ)によく 似(に)て花 紅白(こうはく)又は絞(しほり) など種々(しゆ〳〵)あり又六 月に花さく一重(ひとへ)千(せん) 重(ゑ)あり ○玉簪(ぎぼうし)は葉(は)大なり 秋花さく色うす紫(むらさき) 数品(すひん)ありて色もかは れり一名 白鶴仙(はくくわくせん) 【挿絵】 水仙花(すいせんくは) 麦門冬(ばくもんう) せうがひけ 瞿麦(くばく) なでしこ 石竹(せきちく) 玉簪(ぎよくさん) ぎぼうし 【上段】 ○蒼朮(さうじゆつ)は花うす 赤(あか)し脾(ひ)をすこやか にし湿(しつ)をかわかし中(うち) をゆるくす山薊(さんけい)と もいふ花白きは白朮(ひやくしゆつ)也 ○木賊(もくぞく)は目(め)のかすみ を退(しりぞけ)積塊(しやくくわい)を消(せう)す 和名(わみやう)とくさ板(いた)など おろし磨(みがく)に用(もち)ゆ ○山葱(さんさう)は一名を隔(かく) 葱(さう)とも又 鹿耳(ろくに) 葱(さう)ともいふ俗(ぞく)に いふぎやうしやにん にくなり ○石荷(ゆきのした)は一名 虎耳(こし) 草(さう)といふ水湿(すいしつ)の地(ち) に生す五月花 咲(さく) ○馬勃(ばぼつ)は湿地(しつち)くち 木のうへなとに生 ずのどのいたみを 治(ぢ)す灰菰(くわいこ)牛尿(ぎうし) 菰(こ)となつく ○石韋(ひとつば)は湿地(しつち)に 生ず葉(は)大にして かたく皮(かわ)のごとし枝(えた) なく一 葉(よう)づゝ生ず 労熱(らうねつ)邪気(じやき)をつかさ とり痳病(りんびやう)を治(ぢ)す ○螺厴(まめづる)は一名 鏡面(きやうめん) 草(さう)といふ石上に生す かゞみぐさ又 豆(まめ)ごけ 【挿絵】 蒼朮(さうじゆつ) おけら 木賊(もくぞく) とくさ 山葱(さんさう) きやうじやにんにく 馬勃(ばほつ) おにふすべ 石荷(せきか) ゆきのした 石韋(せきい) ひとつば 螺厴(らゑん) まめづる 【上段】 ○芭蕉(ばせを)は葉(は)落(おち) ず一 葉(よう)のふる時は 一 葉(よう)焦(こがる)よつてこ れを芭蕉(ばせを)といふ ○苧皮(まをかわ)をはぎて 布(ぬの)を織(をる)さらし布(ぬの)は これなり紵(ちよ)同から うしともいふ ○艾(よもぎ)は春(はる)苗(なへ)を生し 秋 小(ちいさ)き花さく艾(かい) 蒿(かう)なり又 蓬蒿(はうかう) といふ ○薢(かい)は腰(こし)背(せなか)いた みこはりたるを治(ぢ)し 腎(じん)をおぎなひ筋(すぢ) をかたくし精(せい)を まし目(め)を明(あきらか)にす ○華鬘草(けまんそう)はは なのかたちけまんの かざりによく似(に)たり 薄紅色(うすべにいろ)なり三月 花さく ○鼠麹(はゝこくさ)は小(ちいさ)く黄(き)な る花さく鼠(ねずみ)の耳(みみ) の毛(け)のことくなる実(み)を 生す又 鼠耳草(そじさう)と もいふ ○羊蹄(きし〳〵)は一名 禿(とつ) 菜(さい)とも又 牛舌菜(ぎうぜつさい) ともいふ実(み)を金蕎(きんけう) 麦(ばく)といふ 【挿絵】 芭蕉(はせを) 薢(かい) ところ 苧(ちよ) まを 艾(がい) よもぎ 華鬘(けまん) 鼠麹(そきく) はゝこぐさ 羊蹄(ようてい) ぎし〳〵 【上段】 ○陵苕(のうせんかつら)は木(き)にま とふ夏(なつ)より秋まて 花 咲(さく)色(いろ)赤(あか)し又 陵霄花(れうせうくは)といふ ○藍(あひ)は葉(は)蓼(たで)に 似(に)て大(おほい)なりいぬた での如(ごと)く葉(は)の中(なか)に 黒(くろ)きてん有五六月に 紅(くれない)の花さく葉を 染色(そめいろ)にもちゆ ○茜(あかね)はあかき色(いろ)を そむる草(くさ)なり一 名 地血(ぢけつ)といふ又 染(せん) 緋草(ひさう)ともいふ ○山薑(いぬはじかみ)は葉(は)姜(はじかみ)に 似(に)て花あかし子(こ)は 草豆蔲(さうづく)にゝてね は杜若(かきつばた)にゝたり一名 美草(びさう) ○沢漆(たうだいくさ)は葉(は)馬歯(すべり) 莧(ひゆ)に似(に)たり円(まとか)にし てみどり青(あを)き花 さく毒草(どくさう)なり ○蓖麻(たうごま)は葉(は)瓢(ひさご)の 葉(は)のごとく中(うち)空(むなしう) して五また有 秋(あき) 花さき実(み)をむす ぶ実(み)に刺(はり)あり 【挿絵】 藍(らん) あひ 陵苕(れうてう) のうぜんかづら 茜(せん) あかね 山薑(さんきやう) いぬはじかみ 沢漆(たくしつ) たうだいぐさ 蓖麻(ひま) たうごま 【上段】 ○蒼耳(をなもみ)は葉(は)茄子(なすび) のごとし風湿(ふうしつ)づつう 気(き)をまし目(め)を明(あきらか) にししびれを治(ぢ)す ○車前(おほばこ)はながきほ を出す七八月の比(ころ) 実(み)をとる芣苡(ふい)牛(ぎう) 舌(せつ)同 ○龍芮(うしのひたい)は四五月に 黄(き)なる花さき実(み) をむすぶ大さ豆(まめ)の ごとし一名 地椹(ぢしん) ○防風(ばうふう)は正月に 葉(は)を生(しやう)じ五月 に黄(き)なる花さき 六月にくろき実(み)を むすぶ ○紅花(こうくは)は血(ち)をやぶ り瘀血(をけつ)のいたみを とめ大べんを通(つう)ず 花をとりて紅(へに)とす ○積雪(かきどをし)は本名(ほんみやう)つぼ くさといふ葉(は)まるく して銭(ぜに)のごとくつる なり連銭草(れんぜんさう)胡(こ) 薄荷(はつか)並同 ○苦参(くらゝ)は葉(は)槐(えんじゆ)に似(に) たり花 黄色(きいろ)にして 実(み)はさや有 根(ね)甚(はなは)だ にがし水槐(すいくはい)地槐(ぢくはい)同 ○蛇牀(じやしやう)は気(き)をくだし 中(うち)をあたゝめ瘀(を)を おい風をさる虺牀(きしやう) 蛇栗(じやりつ)同 【挿絵】 車前(しやぜん) おほばこ 蒼耳(さうふ) をなもみ 龍芮(りうぜい) うしのひたい 防風(ばうふう) はまにがな 苗(なへ)を珊瑚菜(さんごさい)といふ 紅花(こうくは) べにのはな 積雪(しやくせつ) かきどをし 苦参(くじん) くらゝ 蛇牀(じやしやう) ひるむしろ 【上段】 ○鼠莽(しきみ)は実(み)は天(また) 蓼(たび)の実(み)のごとし 毒(どく)あり ○葛(くず)は粉(こ)は渇(かつ)を止(やめ) ゑづきをとめ胃(ゐ)を ひらき酒(しゆ)どくを解(げ) し大小 便(べん)を利(り)し 熱(ねつ)をさる ○紫草(しさう)は九竅(きうけう)を つうじ水(みづ)を利(り)しは れを消(せう)すほうさ うによし一名 芘(し) 䓞(れい)といふ ○鴨跖(かうせき)は野外(やぐはい)に生 ず花あをし 碧蝉花(へきせんくは)笪竹花 並同 ○南星(なんせう)は風疾(ふうしつ)を治(ぢ) し身(み)をやぶりこわ ばりたるによし又 虎(こ) 掌(しやう)鬼蒟蒻(きくにやく)といふ ○防已(ばうい)は風湿(ふうしつ)脚気(かつけ) の痛(いたみ)を治(ぢ)し癰(よう)はれ 痛(いたむ)を治(ぢ)す解離(かいり)共云 ○牛膝(ごしつ)湿(しつ)にてしびれ なへ腰(こし)脚(あし)いたむを治(ぢ)す 山 莧菜(けんさい)対節菜(たいせつさい) となづく ○水莨(たからし)はおこりに此 葉(は)を寸口(すんこう)に付れはお つるなり大毒(だいどく)あり ○絡石(ていかかづら)は葉(は)橘(たちばな)の如(ごと) く花白く実(み)くろし 石をまとふ 【挿絵】 しきみ 鼠莽(そまう) 葛(かつ) くず 紫草(しさう) むらさき 鴨跖(かうせき) ついくさ 天南星(てんなんせう) おほそみ 絡石(らくせき) ていかかづら 防已(ばうい) つゞらふぢ 牛膝(ごしつ) ゐのこづち 水莨(すいらう) たからし 【上段】 ○茴香(ういきやう)は疝気(せんき)を のぞき腰(こし)はらのい たみをやめ胃(ゐ)を あたゝむ蘹香(くわいかう)同 ○𦻎薟(めなもみ)は花 黄(き) 白なり一さいの毒(どく) 虫(むし)のさしたるに此 葉(は)をもみて汁(しる)を 付てよし ○天茄(こなすび)は一名 龍葵(りうき) といふ葉(は)茄(なすび)ににて 小なり五月のすへ 小(ちいさ)き白花をひら き小(ちいさ)き青(あを)き実(み)のる ○蒿(かう)は青蒿(せいかう)又 蓬(ほう) 蒿(かう)といふ藾蕭萩 同邪気を払う ○𦯇蔚(じゆうい)は益母草(やくもさう) といふ湿地(しつち)に生ず ○茵蔯(ゐんちん)は葉(は)のう ら白くまた有九 月にほそき黄(き)な る花さく ○玄及(げんきう)は実(み)を五 味子(みし)といふ枝(えだ)を切(きり) 水につけ置(をけ)はね ばり出る油(あぶら)のかはり に髪(かみ)に付る ○地膚(ちふ)は若葉(わかば)をく らふ落帚(らくしう)独帚(とくしう)同じ 此木(このき)を帚(はうき)とす 【挿絵】 茴香(ういきやう) くれのおも 𦻎薟(きけん) めなもみ 天茄(てんか) こなすび 青蒿(せいかう) かはらよもぎ 𦯇蔚(じやうい) めはしき 玄及(げんきう) さねかつら 茵蔯(ゐんちん) かはらよもぎ 地膚(ちふ) はゝきゞ 【上段】 ○忍冬(にんとう)は木にま とふ葉(は)青(あを)く毛(け)有 三四月花さく初(はじめ)は白(しろ) く後(のち)に黄(き)なり以為(よって) 金銀花(きん〴〵くは)といふ ○茅(ばう)は水をくたし血(ち) を破(やぶ)り小 腸(ちう)をつうじ 消渇(せうかつ)鼻血(はなぢ)下血(げけつ)を 治(ぢ)す又 荑(てい)といふ ○萍蓬(かうほね)は水沢(すいたく)に 生す葉(は)慈姑(おもだか)に にたり水栗(すいりつ)骨(こつ) 蓬(はう)同 ○藻(も)は水に有 葉(は) 大なるは馬藻(ばさう)葉(は)の ほそきは水蕰(すいうん)とす 馬尾藻(ばびさう)ほだはら ○菝葜(えびついばら)は山野(さんや)に 多(おほ)し茎(くき)かたくし て刺(はり)あり葉(は)丸(まる)く 大(おゝい)にして馬(むま)の蹄(ひつめ) のごとし秋あかき 実(み)のる ○萩(はぎ)は郊野(かうや)に生 ずるを野萩(のはぎ)と云 葉(は)さきとがり花 小(ちいさ) き也 宮城野(みやぎの)といふは 花 紅白(こうはく)有て大(おゝい)なり 【挿絵】 忍冬(にんどう) すいかづら 茅(ばう) 菅茅(くわんはう) かや 白茅(はくばう) つばな 藻(さう) も 萍蓬(ついはう) かうほね 萩(しう) はぎ 菝葜(はつかつ) えびついばら 【上段】 ○建蘭(けんらん)は今いふ 白蘭(はくらん)なり一に 蕙花(けいくは)ともいふ又 鉄脚蘭(てつきやくらん)ともいふ ○金燈(きつねのかみそり)は石蒜(せきさん) といふしびとばな也 一名 鬼燈檠(きとうけい)又 蔓殊沙花(まんじゆしやけ)とも いふ秋の末(すへ)赤(あか)き 花さく茎(くき)は矢(や)から の如しよつて一枝箭(いつしせん) ○石帆(うみまつ)は石上(せきじやう)に生(しやう)ず ○茎(くき)はくきなり 𦼮(かん)【草冠+幹】同 茎(き)の衣(ころも)を 苞(はう)といふはかま也 草根(くさのね)を荄(かい)といふく さのねなり ○薹(たい)はふき萵(ちさ)な どのたうなり葶(てい) 同 ○葩(は)ははなびらなり 花片(くはへん)花弁(くはべん)並同 【挿絵】 建蘭(けんらん) しうくき 金燈(きんとう) きつねのかみそり 茎(きやう) くき 石帆(せきはん) うみまつ 葩(は) はなびら 薹(たい) たう 【上段】 ○蔓(まん)はつるなり 木(き)の本(もと)を藤(ふぢ)といふ 草(くさ)の本(もと)を蔓(つる)と云 ○苞(はう)はつぼみなり 蓓蕾(ばいらい)同 ○蕋(ずい)は花のしべ なり蕊(ずい)蘃(ずい)な らひに同又 花心(くはしん) ともいふ ○萼(がく)ははなぶさ なり花蔕(くはたい)花(くは) 柎(ふ)ならびに同 【挿絵】 蔓(まん) つる 苞(はう) つぼみ 萼(かく) はなぶさ 蕋(ずい) しべ 【手書き】 拾冊之内 【裏表紙】