【表紙】 文久二壬戌七月出板 はしか/毒(どく)いみ/心得(こころえ)艸    福岡屋右兵衛板 /麻疹流行(はしかりうこう)年紀 ○天平九丁丑 人多く死す ○享保十五庚戌 ○延暦九庚午       ○宝暦三癸亥 人多くしす ○長徳四戊戌       ○安永五丙申 ○文明三辛卯       ○享和三癸亥 ○永正三丙寅       ○文政七甲申 ○慶安二己丑       ○天保八丁酉 ○元禄三庚午   よく四年はるまでに 至り人多くしす 【下頁】   【印】○はしかのこゝろ得 一はしかまへにむらさき草の根せんじてのめばかるくする  こと妙なり 一はしかの気ざし有としらばふきの根をせんじのむべし  はしかのんどの穴へてきずまたしほ漬のきんかんをまる  飲にしてもよし 一はしかをやむと思はヾ俗にごりう柳またには柳などゝ  となゆる木のはをせんじ飲べし妙薬なり 一はしかのねつにて手足だるくとも身うちをもみ按  摩をとらすることはなはだ悪しなでこすりするもよろし  からず堅くいむべし 一はしかをやみ早くはつしさせんとするにも極寒の時ぶんは  ひとへものを一まい着綿入くらいをおほひ寝てゐるがよし餘りに  あつぎをして汗(あせ)をしぼればしやうかん【傷寒 注①】おこり【瘧 注②】などに成なり  ただし風のあたらぬやうにたてこめて置べし 一はしかは餘の病より後のやうじやう至てむづかしくもしふやう  じやうにするときは種々の病とへんじ身命をそこなひ五体をふ  ぐにするをてきめん也よつて今食してよろしき品をえらみ 【注① 昔の、高熱を伴う疾患。いまのチフスの類。】 【注② 間欠熱の一種。悪寒、発熱が隔日または毎日、時を定めておこる病気。マラリア性の熱病。】 【上頁】 そのあらましをこゝにしるす   病はじめてよりおわりまで食してよろしきもの 一大こん  一かぶ   一にんじん 一小かぶ   一ながいも 一じねん生 一むかご  一さつま芋 一かんひやう 一しそ 一ゆり   一ぜんまい 一くわい  一いんげん  一ふき 一ゆば   一くず   一ふ    一ほし大こん 一さゝげ 一やへなり 一冬瓜   一大豆   一小豆    一むぎ 一うんどん 一しろ瓜  一なし   一ごぼう 《割書: 出そろいて|のちはいむべし》 一かつをぶし 《割書: 出そろいてのちには|せう〳〵ならばよし》   十二日すぎてよろしき品 一菜   一ちさ   一つく芋  一とうふ  一はすのね 魚るい  一きす   一さより  一あいなめ 一石もち  一小だい 一小がれい 一酒しほ 《割書:廿一日後ねつ|  さめてのちはよし》   三十日過てより宜しき品 一ねいも 一なすび《割書:つけたのは|わろし》一のり 一めうがたけ 一木のめ 一つけな 一こんぶ  一水こんにやく 一しいたけ 一しようろ 一みかん 一くねんぼ 魚るい 一なまだい  一小びらめ 一いしがれい 一むしがれい                        ○三 【下頁】 一あこふ 一もうを 一ほうぼう   五十日過てより宜しき品 一せり    一ずいき  一わさび  一生が  一さといも 一えだ豆   一あらめ  一ひじき  一けし  一さんしよ 一梅ぼし   一かちぐり 一きくらげ 一ゆず  一りんご 一まるづけ瓜 一すいくわ 一そば   一そうめん 魚るい    一せいご  一しらうを 一わらさ 一あじ 一かさご   一ひしこ  一こひ   一ふな  一赤がい 一しじみ   一きんこ  一かき   一いか  一あんこう   七十五日過ぎてより宜しき品 一生椎たけ  一生松たけ 一たで  一唐がらし 一からし 一かき    一桃    一びわ  一ぶどう 魚るい    一大だい  一ふつこ 一いなだ 一こち 一かながしら 一たこ   一さざい 一あわび   百日過てより宜しき品 一じゆんさい 一こんにやく 一そらまめ  一きうり 一唐もろこし 一くり    一ごま    一まくわうり 一ねぎ  一はまぐり  魚るい    一なまこ   一すゞき   一いな  一あゆ                        四 一いせゑび 一しばゑび  一さわら 一たら 一いさき 一いわし  一なまりぶし 一するめ 一酢せう〳〵はよろし   なるたけ長くいむべき品 一竹の子 一かに   一むつ  一赤にし 一からすみ 一どぜう 一鮭    一まぐろ 一ふぐ  一くじら 一ぼら 一がん。かも 一油るい 一もちるい 一たまご 一酒  一房事 人々の症によりて何事なしといへどあたるときには必害あり一口ものゝ 為に百年の寿をそこなふことあらば後悔のなからんや穴覧々々