【表紙、貼付け題箋】 疫病除之藥 【右丁】 【蔵書印「慶應義塾」」大學醫學」部之圖書」】 【左丁、本文は次コマ】 【付箋】九 【左丁】 【蔵書印「慶應義塾大學」醫學部之圖書」】    ●疫病除の薬  朝比奈五郎三郎殿傳之 毎年五月四日ニ百草ヲ取其日一日干候而直ニ其夜 一夜斗夜露ヲ當テ翌朝取込能包置テ 其翌六日ニ取出シ又候日々能干上ケ置是を 黒焼ニして施薬ニ出ス若大病ニ候ハヽしきみ の葉五枚ト松葉一握ヲ入茶碗ニ水 盃入 せんじ此ゆ【湯】ニ而右黒焼ヲ給る也   但つる出る草且又水草ハ少シも入不申候    ●小児虫の薬 蝉(セミ)のぬけがらヲせんじ七夜の内ニのませる也 きやう風ニ不成又十五才迄ハ虫気の者可_レ飲             四百八十二 【右丁】   薬氣根ヲ切る妙薬也 料【朱】●ゆかりの色法   梅漬の通りニ漬置候上々しそ能々日々   干上ケ又ほいろニかけ能干上りたる時   粉ニしてふるひ置候事      ●きやうふうの薬   若右やうの節者早速かる石ヲ粉ニして水を   井戸ゟくみ上ケ候釣のまゝ直ニ薬わんニ請入   此水ニ而右の粉を為呑べし是妙薬也      ●出生(あかご)の子見よふの事   赤子鳴く時男女ともニ口ヲ大キク明クは吉なり 【左丁】   口小クあくハ虫気有り随分心付毛ケ妙薬用べし   口を明キかね又聲小ク慥不成ハほふづき虫か又ハ   きやう風の類出るもの也是小児家之傳所也      ●毛虫を止る法   毛虫子之内巣ニ籠り居る時右巣の中へ   燈油をたら〳〵と少シ落入べし程なく   不残たへ申候 又方毛虫生じたる木の枝へ竹の筒ニ水ヲ入        此中へ生のするめヲさきて入枝々へ五ケ所程釣        置ば毛虫委【悉の誤記ヵ】ク去る事妙なり      ●蜘(くも)の巣を取たる跡ニ而又巣を掛       ざる法   くもの巣を取候ハヽ其跡江茄子の皮ヲ   水ニ漬置此あく出て赤く成たる水を 【右丁】    右巣の跡又其辺ニ懸置べし巣を懸る    事なし蛾ニは茄子のあく大敵薬也     ●歯(は)みがきの法  若林秀悦傳  大ク磨砂  中位肉桂  少シ丁子  中位はつか    右四味細末を求メ一ツニ能交ゼて袋ニ入又    箱ニ入て能ふたいたし置べし      但右四品合る時少し口ニ入かげんヲ見ニして      又かげんすべし袋ハ薬袋紙が賣物ニ吉 料【朱】●蓮葉田楽の法  中川吉右衛門傳之    蓮の壱巻葉を得とあぶり夫ゟ味噌を付る也 【右丁】 「濟」 ●蜂不_レ指咒    ごふどふみやうはちあびらうんけんそわか    如此三遍となへ候得者さゝれぬ也 「濟」 ●狐おとす法    市谷柳町ニ而薬王寺江行頼候得者    直ニ落シ呉申候代者請不申由     但是者護持院内日輪寺の隠居所也     尤落候印ニ一聲鳴て出行候様好候得者     右之通ニいたし候由       又方神代の哥の由      昔より人のわさにハ限有り刀【力】を添えよ天地(あめつち)の神   【「濟」は墨角印】 【右丁】    ●疝気妙薬 甲斐徳本直傳秘 一むきくるみ弐匁 一紅花壱匁 又方浅草並木道    〆弐味         一月寺番所ト傳法院                裏門際火の見との間                向なめし茶やニて                上刕屋ニ有こより也                代十二文に                又水道丁こ                より薬下谷                仲丁加藤殿【?】                うら門向裏                  に有り 右之通常のかげんニせんじ七日用る   但疝積有之人常ニ用るよし    ●吹出物 疾 水虫 田虫 鳫瘡 右之外万出来物ニ妙湯神田鎌倉河岸 地蔵屋敷ニ有之薬湯也   但是ハ伊豆国かづら谷朱禅寺出湯ニて   道法凡三十六里又同所こなト申所ニも少シ又 【左丁】   和らか成出湯も有之    ●百日咳の妙薬 又方ときといふ鳥ヲ黒焼ニして            度々呑べし黒焼屋ニ有之 三夫婦有之方の飯ヲ為給るが吉    ●吹出物せぬ法 又咒小石川春日町弓師            堀卯兵衛方ニ而いたし無代也 毎月々三日今ニ生豆腐ヲ上ケて鹿嶋様ヲ 可相願決而出来ぬもの也 又方正月飾の裏白ヲ             黒焼ニしてごま油ニ而付る   但万々一三日ヲわするゝ時ハ十三日ニ上る也    ●婦人巡りニ吉又懐妊なれば三ケ月     四ケ月位之分者下り候薬 【右丁】      くじきニも吉由   湯嶋天神男坂ゟ御成道江出ル辺ニ而   本因坊隣か御籏本屋敷長家より   出ス丸薬一包代百文の由  植村平右衛門之弟                藤次郎殿傳授也 料【朱】●浅草のり貯ふ法  又方石しやうの根ト水引草の                黄色成花ヲ指込もよし   ふらそこニ而も只の箱ニ而も宜候間米ヲ能いりて   此米ニ而右海苔を能まきてうづめ置べし   尤風いらぬよふニいたすべし是傳也     ●馬のいき相の薬人ニも用る吉 岩尾次郎右衛門殿家傳   梅の肉 黒砂 人参 右三味能すりまぜ   吞すべし是妙薬也 【左丁】     ●切レ類江金銀箔置やう法   姫のり ふのり 當分ニ入 しやうがのしほり汁ニ而   能クとき是ニ而附るべし傳也 但ちりめん斗へハ                 右箔置たる裏                 の所江斗裏のり                    いたし候     ●うんのまじない   毎月 辛(かのとの)土にあたる日ニ家の内西ニあたる   所の土を取て紙ニつゝミ封置てしん〴〵   すれバ三ケ年の内にうんをひらく事   うだか【たが】ひなし又右の土をむじん場へ   持行時ハあたるなり     ●ひゞ薬   文化十一戌年十月下旬            四谷右兵衛丁小普請奥田主馬支配            大岡治兵衛殿傳授也   もつやく 丁子 酒ニ漬置付而吉 【右丁】 料【朱】●くづあんねりやう  あわ雪みせの傳也    何成とも一器ニ 葛壱盃 酒ハ弐ツ    正ゆは三ツ 水は四ツ 但入物ハ猪口ニ而も               茶わんニ而も升ニ而も分料ハ               同事    右酒醤油水ヲ一所ニ入是江葛を入能々    かきまぜ夫ゟ火ニかけて煉る也     但よくねれたる時夫ゟハ湯せんニかけ置べし     何時迄置ても堅ク成る事なし     ●せんき幷      疾邪拂薬    やくもふそう にんどう 右當分ニして    せんじ用る 【左丁】     ●腰足痛テ不叶ニ妙薬 かさニも妙薬也          せんきにもよし    ひきがいるヲ皮ヲむき股の所斗取り正ゆ    付燒ニして弐三疋ヲ食ス其風味きじ    燒鳥ニ不違匂ひも同し是ハ文化年中比    御目付高井山城守殿家来是ヲ給テ治ス    其外ニも平愈せし人多シ妙薬なり     但蟇蛙の大ク腹赤キヲがまといふ都而     蟇の類ニ毒なし又かさの妙薬ニハ     ひきヲ丸ニ而ゆでぞうふともニ食ス也     ●痔の妙薬 又方五月五日朝日の出前に田の水ヲ           取て付る妙也    亀ヲ煑テ給テ吉七度程給る時ハ厳敷直る也                   尤身斗ニ而吉 【右丁】     ●安産の咒 又方毎年寺々ニてせがきニ上ケ有之           蓮飯を包テ詰たるわらを腹帯ニ入           〆て居べしけがなく安産也  一京大坂ニ而大御番衆部や之道具ニ遣イ候   すりこ木ヲ頼遣シ是ヲ箱ニ入置産之間ニ   釣置べし安産也    但右すりこぎハ女が手ヲ付候而ハ一切きゝ不申間    一寸ニも女ニ者手ヲ付させ候事無用也     ●加持の上手有之所 ろふがい               りういん 其外とも   本所大川橋向横丁ニ而原庭ト申所ニ而   真言宗幸徳寺毎月二七ノ日斗朝四ツ時限   十二銅斗上ル事文化十一戌年冬承之    但人ハ銅しんちうの品ニて湯茶ヲせんし吞ハ甚大毒也    りういんハ是ゟ生ス依之銀トからかねも無用也 【左丁】     ●物もらいヲ直ス法    物もらい出来たる當人ゟいふ わりや何ヲむすぶㇳ問   咒ニ懸る前に清キわらのみごヲ洗イ清メて手一そくに   三本切リテ置なり    咒ふ人口の内ニ而答て いもらいヲむすふト答なから此                  みごヲ壱度                   〳〵ニ一ツ結ぶ   此のことしく當人ゟ聞事三度咒人答も其度ニて   是又都合三度なり如此いたし済候ハヽその結びたる   みご三ツともニ火ニ入焼候へハばち〳〵とはねるト早速   直る物なり但真より出来する吹出来の物貰   もらいニ而不聞候事植村平右衛門殿養母傳之     ●のんどへとげ立テぬきの法               又方手の平ラ内江梶木一草ト書て              なめるべし妙也   はくてう木の葉ヲ生ニてのむべしぬける   こと妙なり 【右丁】     ●のんどの内江はれもの出来の時吹切薬   赤とんぼふ羽迄も赤キが吉黒燒ニしてさゆ   にて吞べし妙薬なり 植村平衛門殿母隠居傳     ●醫者の上手有所の事   加古良元といふて文化年中の比牛込神楽坂ニ居   其後者神田     轉宅いたし候事此比   四十才余の医者なり 植村平衛門殿弟藤次郎殿   傳之     ●洗ひ粉ニ妙薬   石原侍半次傳之   朝皃の種ヲ粉ニして遣ふべし最上也     ●そこまめニ薬 【左丁】   桑の木ヲ三ツ目きりのごとくニ拵是を以押べし   尤永く押シ候得者膿血不残出候事     ●犬ニ喰付れたるニ妙薬ゆずの花なり   早速薬種屋ニ而とこ柚を求メ常のごとく   せんじ出し吞てよし又此せんじたる湯ニて   度々洗ふべし毒氣去ル事妙なり     ●田虫の薬   極上々の樟脳をそくいニ而能おし少シ水ヲ入   とき付るへし      又至てかゆミ有之時ハ鉄ヲ押付居る      此つめたきニ而一たんのしのきニ成なり 【右丁】     ●烟入ふミ出シ形細工人   文化年中小普請組近藤左京殿支配柴山熊太郎   本所津軽越中守殿表門通ヲ先江東の方   二丁程行二ツ目ニ有之横丁右江二軒目之由   岩尾次郎右衛門殿文化十二亥年四月上旬   申聞候     ●無妙ゑんの能の次第 無名異(むめうい)也   是ハ石州ゟ出る無妙ゑん最上之品也是ヲ   御勘定所江たのミ石州の御代官ゟ取寄て   貰ふ也水どくヲけス又打身痛ニ酒ニ而解   付る 【左丁】     ●通ジ薬 又方竹の粉吞てよし          又方 大根しぼり汁江小豆を漬置テハ干             〳〵幾度も             して干上ケ仕廻置のみてよし   蝦夷地ニ而さりがにトいふ是ハおくりかんきりの   題ニ用る薬なり松前奉行支配小役人所持也     ●金はく置やうの傳   せしめうるしへ極上の弁がらヲ少シ入レ   能交置是ヲ下地江すり込置程よくかわく   時ニ金箔ヲ上より置方全わたニ而そろ〳〵と   おし付る也     ●引風の時熱早ク發る法   そば粉ヲ煎てそば湯ヲいたし中へ白砂糖   を入給る事度々ニ而妙也 【右丁】     ●おどり装束幷道具賣所   冨沢町橋を東の方へ渡り北より二三軒目   古着屋ニ而しろと賣いたし候直段ヲ申候ハヽ   半分直ゟ付テ段々少ツヽ付上ルなり 大和屋治兵衛傳    又久上ニ而おしへ候ニハ久松町堺橋通りにて    大黒屋清六方也尤向ニ鮨屋有之    又道具者芝口三丁目右かわ大尾屋ニ有之    又目白坂中程北かわニ細工人有之     ●雷除の法   山谷浄生院滿谷和尚口授雷除咒文    阿伽陀(あきやだ) 刹帝魯(せつていろ) 須陀皇(しゆだくわう) 蘇陀摩尼(そだまに) 【左丁】    くわんくわらいしん    くわんくわくらいしん     愚道之法孫(ぐだうのほうそん)      謹刻                弘道 湯川姓     ●年中諸薬ニ入飲妙薬 文化十二亥年七月二日                御留守居番万年七郎左衛門殿                より傳授之事   毎年八月三日ニ蓼(たで)を沢山取大釜ニ水壱斗入レ   五升ニせんじ詰此水斗を貯置四季ニ不構何   薬江入入テ吞べし其薬格別ニ功能甚敷能   功能有物なり尤右何薬の中江も少々入交   て用べし 【右丁】     ●腰ノ物彫物師遣候形ヲ押候土覚【朱筆】二千六百法   京都ゟ出ル キヨミ土が吉是ヲねり置候   目ぬき其外とも押べし此土大傳馬丁絵の具や   村田宗清方ニ有之     ●虫歯痛ニ虫ヲ取法 又方本郷壱岐坂御籏本衆               石川与次右衛門殿釘打咒妙也               又方湯嶋六丁目こま物屋ニ而               村尾忠兵衛方のるりの粉が吉                     白キ粉代廿文   土器ヲ火の上ニ置能々燒而瓦か杯の上ニ置   此中へねぎの種ヲ少シ入ごまヲいるごとくに   ぱち〳〵とはね燒る処江古きかさへ   筆のじくクヲ差右土器のふたニして中たね   燒る煙ヲ右くだゟ請虫歯痛方の耳へ   當テ暫居る夫ゟ跡ヲ見べし此中へ細き虫が   沢山出有之物なり 【左丁】     ●又方   榎ヲ切テ火ニおこし此火ニ而此火江韮の実ヲ燒此   煙をくだニ而口中へ請吸入其つわヲ右くだの中へ吐也   尤圖之ごとし    又方湯嶋六丁目北がわしつくいや    裏割たばこや甚兵衛咒も吉               鉢ニ水ヲ入火入ヲ中へ入置          「図 鉢に管を指して口元にあてる」     花井政蔵殿直傳     ●びんほう神を追出しテ入れぬ法   毎月朔日 十五日 廿八日 定式ニ小豆飯ヲたき   手前ニ而豆腐を取寄置たる其とふふヲ手前ニ而   燒とふふニいたし此にをひヲ家内中へちらし 【右丁】   候得者びんぼう神殊之外きらい恐るゝ也   又小豆飯も彼神大禁物也如此いたし   候時ハ其家江びんぼう神決而不来自然と   万事都合宜福貴ニ成る物也     諸事談三巻目 九十五ニ有丹後国竹野郡之内船木の廣            船木村うがの神といふハウガメの神也            同七十九ニも有分銅之事   又 一ツ本     好古真説の内八十四ニ有大国天の事     渕瀬物語の内八メニも有地福和合神の事     此妙薬帳弐百六十九ニも有之同帳二十九ニも有     同帳二百五十四メ初音草の事同三百七十五メ唐もろこしの事 【左丁】     ●突眼(つきめ)ニ妙薬   白砥石(しろといし)の粉細末ニして乳(ちゝ)ニて解付る妙薬也     ●白雲の薬 又方桃の皮をせんじ吞てよし   正月の餅青クかびたるヲ黒燒ニして酢ニ而解き   附る二度付れバ直る也     ●舌(した)江 出来(でき)物いたし候時                  又法昆布黒燒ヲくゝむ                  べし直る也   しうかいどうの根ヲ其根の大サ程飯ヲそくいニ押交ゼ   足の土ふまずへ張置妙薬也     ●くじき薬 【右丁】   からす瓜の根ヲ能干置て細末しごまの   油ニ而解付る若又日を経(へ)候ハヽきわだの粉ヲ   少シ交テよし 料【朱】●なめ物 羽田藤右衛門殿傳秘也   赤みそヲ能すり【抹消あり】此中へしそのミ   しやうが くるみ此三味ヲ能細ニきざミ能交ぜて   是をさとふみつニ而ゆるめる也ときわ味噌是也     ●持薬 せいきヲまし         たんの薬りういんニも吉田沢久左衛門殿傳之   黒ごま壱升是ハ摺鉢ニて能する尤ごまハ油のしとり        出てすれがたき物也咒ニハ米ヲ少シ入するなり   さんやく 唐かしう 白刀豆 各十六匁ツヽ 白砂糖廿匁   くこし【枸杞子】 【左丁】   燒塩二十部一入是ヲ何レも粉ニしてさゆニて常ニ   のむなり都合七味也    但少ツヽ拵候方直よし壱升之胡麻四分一之割合を以拵候ハヽ    ごま二合五勺江くこしさんやく唐かしう白なたまめ    各此四味壱両月ニ而吉 白砂糖後五匁 燒塩の割合准之     ●紙江書損したるヲぬく法  薬種屋ニ有之   木通の小口へ水ヲ付て書損たる字の所江斗   上下ゟ白紙ヲあて木通の小口へ水ヲ付そろ〳〵と   心永ニ打ぬくべし尤上下の紙江墨しみ込候ハヽ   新キニ又白紙ヲあてかへるべし     ●朱墨つやよく仕法 又法ところヲ寒中               水ニ漬置氷らぬよふニ               ほし上ケ堅メ置遣ふ也   右之木通がよし是ハ朱墨ヲ能すりたる 【右丁】   時朱墨ヲやめて夫ゟ右の木通の小口ニて   朱硯の中を能こすり夫ゟ認物ニ遣ふべし   至而つやよく出るもの也     ●ゑぞにべの事   是ハ蝦夷国ニて用るにべ也町鮫の腹ゟ出る   こはくの如く成る品ニて是ヲゆせんニ入熊【能】あたゝめ   とかし候へハさ水のごとく也是ヲ以竹か木成とも   継候ハヽ放れぬもの也但是ハ松前奉行衆幷ニ   吟味役其外下役人方ニも有之     ●歯薬の事 文化十二亥十月五日御腰物方           中村八十郎殿傳之   松のみどり 但みどり無之時ハ す桃の梅干         松かさニ而よし 【左丁】   右弐品當分ニして黒燒となし細末して   貯へ置常に毎朝口中へ含居其後うがい仕る   一生口中痛のうれいなし     ●銀燒付の傳 小石川戸崎町正運寺門前            鎗屋長左衛門傳之   しんちう銅の差別なく能みがき夫ゟ炭ニて   能とぎ上ケ能ふきて苗わらにて後とみがき   夫ゟ梅酢を能すり付其上へ水かねヲゆび   にてすり付其上へ銀はくヲ置べし是職人   の法也 但梅干ヲすり付ても出来候得ども       是にてハ跡ニて錆るもの也    又水かねハ沢山付るハ悪し少ツヽ程よくゆびニて    そろ〳〵とすり付べし 【右丁】     ●鮫さや幷木地ろいろとぎ出シ法   ろいろハ燈油ヲ少加へ上粉の糖ヲ交セ手ニて   そろ〳〵とぎこする也つや能出るまた   石持の石又ハ鮫等ハむくの葉て鮫も石も   そろ〳〵とぎ出ス     ●木櫛の色黄色ニ色能つや出ス法   木櫛の分は何木ニよらずくるみの油を以   切レニ包能念入てこすり其上ヲ上粉の   ふるいたる石灰ヲ以こする也 「濟」 ●来月朔日のヱトヲ早ク知方 【左丁】   大七 小六ト知べし たとへバ今月大の月ニハ   右大の月の朔日子ノ日なれバ子丑寅卯辰巳午と七日目午也                来月朔日午の日ト   知べし是ニ准シて小の月ニ来月朔日ヲ知ニは   其小の月の朔日亥の日なれハ亥子牛寅卯辰                来月朔日ハ辰ト可知   是右朔日亥の日ゟ六日目ニ當るなり     ●中氣大妙薬 又方駿河臺ニ而二万石松平備前守いし            文化年中勤居候若林秀悦            名灸いたし候事  深川辺   中木場藤店茶屋之向之方ニ而看板出有之   代三百銅ツヽ右者中氣ニ成三日之内に   用候得者速ニ直ル三日過候而も用候得者   段々快氣也 せんよふ幷用よふハ委細ヲ         のふ書ニ記有之 【「濟」は黒角印】 【右丁】 【上右、右手図】 疳筋(かんすじ) 男子ハ左より 血ヲ取初ル 右の手は 跡ニて取ル 【上左、左手図】 相印 △ 【朱筆】圖之通人さしゆびの一トふし     寸ヲ取是ヲ圖之ことくニ     折返シて一トふしの折目ヲ中の真ニ當テ左右へ点ス 【下、男児圖右】 寸尺取ルハ白キ 元結がよし 【男児圖下】 血ヲ取針の圖 【男児圖左】 此寸ハ ゆひ一トふし    相印△   くびニ當ル    寸ヲ取たる元結の先の    所の圖 【左丁】 一小児十五才迄五疳の名灸ニて何程成疳症ニても  不治といふ事なし委細圖ニ記置なり 一圖の如く小児しやんとかしこまり頭もしやんと  して座ス夫ゟ白キ元結を以圖の朱のごとく  ゑりニかけくるりと前江廻し胸ゟきうびニ  當テ切夫ゟ其切たる元結の先ヲ人さし  ゆび圖の朱のごとく一トふしゟ其一トふしの間ヲ  寸ヲ取其元結ヲ其長差サニ又今一ツ折返ス都合  二タ折ト成を印ヲして圖のごとく真中を  きうびニ當其左右へ点ヲして夫より又  うしろヲむかせ前のごとくのんどゟ右の  元結をうしろへ引下脊骨の真中へ 【右丁】   きうびの節のごとくニ當テ夫ゟ胸のごとく   左右へ点ヲいたし尤何レも灸数壱ケ所へ   十五火ツヽすへる也 一 圖ニ有之手の疳筋より血を取事都合   三度ニて三度目ニ跡ニ而灸点いたし扨又血を   取ニ者木綿針がよし男子ハ左ゟ取初メ跡ニ而   右手ゟ血を取ル但突たる穴より出るたけハ   何度も血をしぼり取ル病強キ程血多ク出る也 一 寸尺ヲ取ニハ白元結がよし 一 灸点いたし候ても不就成日が又ハ宅ニ而取込の   事あらバ翌日ニても吉 一灸数ハ一ケ所十五火ツヽ 【左丁】 一 忌中又ハ服中ニ而も構なし 一 寸を取たる元結ハ焼捨べし 一 乳をふきたる紙ハ雪隠ニ入べし 一 眼病の躰ニ見請候節者左のことく灸点いたし遣候  【小指、薬指を折った右手掌】尤何レか両眼之内あしき                方江点スべし又両目とも                不宜時ハ左右とも点ス灸                数右同断ツヽ日々一ト廻り也                此帳百三十六枚目ニも有之                おこりの灸点ニ似たり                 但法ハ本所逆井渡向四軒                 茶屋ゟ右江行徳海道半道程                 行左江西一の江村ニ而大杉                    権五郎方ニも有之由 【朱筆】圖のごとく小ゆびの先の      あたる所灸点スル也 【右丁】     ●ぬいもよふいたし法   糸類ハ何糸何色にてもぬいをいたすぬい糸をいふ   丸金糸幷大白糸等ヲぬい付るハふせ糸といふ   金糸ハかば色のふせ糸ニて是ニのりヲいたし   能干上ケて遣ふ   艸木の葉ニハもへぎ糸又ハひわもへぎ糸等也   水ヲ縫ふニハ大白糸二筋幷てふせ糸を以付る   但都而何糸ニてもよりヲ懸るハ悪しよりヲ   掛ると糸のつや不出   一切のもよふぬい上ケて枠(わく)ヲはづす前ニぬいもよふ   の裏ゟ薄キおしのりを以付る此のり能干上りて 【左丁】   わくよりはづすべし   下絵ハ水ヲ不入只の粉おしろいニ而書也   地の切レハ左右ともわくへからぬいニぬい付る   ぬうニハ上へよりハ左り手ニ而針ヲ遣ひ右の手ハ   下江入置下ゟ針ヲ上へ突出スべし   縫い初ハ糸の崎へ結び玉ヲいたしテぬい初メ仕廻ニハ   糸の先ヲ長クのこし置テ是ヲのりニ而付る也     ●虫歯其外歯薬 又方節分の柊葉ヲ             水ニ入置和らかニしてたゝミ             痛歯ニくわへ居るべし   青山宮様御門向横丁 かわ二軒目ニ而   御家人之由前田氏方ゟ出ス代三十二銅ツヽ    又方赤にしの貝塩ヲ詰て白燒ニして常々歯みがきニ遣ふ也