【撮影ターゲット】 【表紙】 永島 福太郎 しん編輯 新 板(ばん) なぞ〴〵合(あはせ)  加々         吉        壹 版 新ぱん なぞ〳〵 合  永しま 福太郎 作      青盛どう はん      【蔵書印 : 東京学芸大学蔵書】 【見たままの改行ではなく読みやすいよう一枠内を一行にして入力し、縦三枠分をひとつのなぞかけとしてまとめています。】 まけくじとかけて       ねごにかんふくろととく    心はだん〴〵あとじさり 【負け公事 : 訴訟に負ける事ヵ】 【猫に紙袋 : 童謡の山寺の和尚さんに出てくる毬の代わりに袋に入れて蹴られた猫の事ヵ】 ヵ 日と月が一処に出るとかけて  けいあん太平記ととく    心はちうやのさはぎ 【慶安太平記 : 由井正雪の乱を扱った歌舞伎や講談ヵ】 【由井正雪の乱の首謀者の一人の丸橋忠弥と昼夜がかけてあるヵ】 原告のつよいさいばんとかけて  九州のさはぎととく   心は四こくがあぶない 【九州の騒ぎ : 明治六年の西南戦争ヵ】 【裁判の被告(江戸の発音では しこく?)と九州の動乱が四国に飛び火することがかけてあるヵ】 目のつぶれたはかりととく 【かけて の間違いヵ】  女郎の夫婦やくそくととく   心は あてにはならない  【目のつぶれた : 目盛りがすり減って読めない棹秤ヵ】 【見たままの改行ではなく読みやすいよう一枠内を一行にして入力し、縦三枠分をなぞかけひとつとしてまとめています。】 おゐしきのもちとかけて  しら藤源太ととく    色をとる 【居敷き : 尻のこと。おいしきのもちで尻もちのことヵ】 【白藤源太 : 歌舞伎などに登場する伝説の力士】 【力士が色をとる、で黒星の事ヵ】 大通りのみちとかけて  三味せんととく   心は三すじにわかる  【昔と違って大通りの道が三車線に別れているということヵ】 諸方のはし〴〵とかけて  松浦小夜ひめととく    心は石となる 【松浦小夜姫 : 悲しみのあまり石になった佐賀の伝承】 【今までの木橋が明治になって石橋に代わってきたことヵ】 としを経たいたちととく 【かけて の間違いヵ】  しめだいこのおとととく   心はてんとなる   【長生きのイタチが貂という妖怪に成ることと〆太鼓がテンと鳴る事をかけている】 こしぬけのぎやうずいとかけてヵ  ざしきてじなととく   心はすわつてつかう 【座敷手品 : 座敷で座ってする手妻ヵ。西洋の立ってする手品とくらべているヵ】 すばらしいべつぴんとかけて  たいわんせいばつとかけて 【とく の間違いヵ】   みなしたがへる 【台湾征伐 : 明治四年の征台の役ヵ】 のらくらものとかけて  あさぶととく   心はきがしれぬ 【麻布で気が知れない : 六本木という地名はあるがそれらしい木が見当たらないという慣用句】 谷合のさくらとかけて  おかめのめんととく   心ははながひくい  【花と鼻】 なすばかりのまつもどきとかけて   いさみのかみのけとゝく   心は あぶらげがない 【松擬 : 茄子を細かく切り油を加えて煮た料理ヵ】 【勇み : 任侠の人たちヵ。鬢付け油を使わず髪の毛をまとめることが多かったらしい】 かうもりとかけて  ぐはすとうのくち火さしととく 【ガス灯】   心は日ぐれからいでる 海うんばしの五かいととく 【かけて の間違いヵ】  大ゆきしはすととく    心は 菜(な)がたかい 【海運橋の五階 : 海運橋横の明治六年開業の第一国立銀行。変則的な五階建ての和洋折衷建築】 【立派な高層建築で名が高いと、大雪の師走で菜の値段が高いをかけている】 むしつのかきぞめとかけて   てんぼうのしつかきととく   心は かきたくてもかけぬ 【むしつ : 無筆、文字の読み書きができないひと】 【てんぼう : 手ん棒、けがなどで手や指がないひと】 【しつかき:湿掻、疥癬(かいせん)のできている人。また、梅毒を病んでいる人(日本国語大辞典)】 あそび人とかけて  ふうりんととく   ねんぢうぶら〳〵してゐる むかしばなしとかけて  ゆみはまととく 【破魔弓ヵ】   心はぢゞいばゞあがつきもの 【ゆみはま:弓破魔、「はまゆみ(破魔弓)」に同じ(日本国語大辞典)】 いんらんのだうらくむすめ【淫乱の道楽娘】とかけて  つみのふかいゆうれいととく   心はぢごく【地獄 : 遊郭、売春宿の別称】へおつる あいそづかし【愛想尽かし】とかけて  洋ふくととく   心は そでない【袖にする : つれなくする、より転じて「つれない扱いを受ける」の意】 ぐはすとうとかけて 【ガス灯】  日雇ひ人足ととく   心はくうき【喰う気、ヵ】のはたらき 人力車の欠声とかけて   官員のめかけととく   心はごんさい〳〵   【人力車の欠声 : 車夫のごっさい(ごめんなさい)という威勢の良い掛け声】 【めかけ : 明治初期頃は本妻に対して権妻と言っていた】 すご六とかけて  軍の惣大将ととく   さいがなくてはできぬ   【双六の賽子と戦で大将の持つ采配をかけてある】 やぶれたからかさとかけて  手のある【手練手管に優れた】女郎ととく   させそうでもさせぬ 雷神と風神のかけ合とかけて  きのきかない居候ととく   ふうらいごろつき はりこのだるまととく 【かけて の間違いヵ】  いざりととく   しりにつちがつく 【いざり : 足の不自由な人】 わんぱくむすめとかけて  べんけいの七ツ道具   一生のしよいもの よい〳〵のかるわざとかけて   井戸のはたのちやわんととく   おちそうであぶない 【よいよい : 手足の麻痺した人】 きれぶみとかけて   玉手ばこととく   あけてくやしい 【きれぶみ : 切れ文・縁切りの文】 小ぐらのしきしとかけて   源平藤橘【げんぺいとうきつ : 日本の名流氏族、源氏・平氏・藤原氏・橘氏をまとめた言い方】ととく   心は名家より出る 【小ぐらのしきし : 小倉百人一首の書かれた色紙ヵ】 ふうふとかけて  あんどんととく   よるになるとともす【共寝する、の意】 しはい人【しわいひと : けちん坊】とかけて  とうがらしととく   心はからくてくへぬ 【せちがらくずる賢いので油断ならない】 いけのさうじとかけて  うれるあきうどみせととく    心はもをかります    【池の掃除で藻を刈る・売れる商人店は儲かる】 きつねをむまへのせたとかけて  やみのよのてつぽうととく   心は なんだかくうでわからぬ 【狐を馬に乗せたよう : 動揺して落ち着きがない事。いいかげんで信用できないこと】 たまてばことかけて  ふくまのでんととく 【伏魔殿ヵ】   心はあけてはわるい むらさきじゆすのおびとかけて   ひあたりのゆきととく   心はそらどけがする 【むらさきじゆすのおび : 繻子の帯。空解け(自然にほどける)しやすい】 びんぼう人の■【福ヵ物ヵ】の節句とかけて  やみのからすととく   心はこゐばかり   【鯉のぼりと鳴き声ヵ】【「乞い」と「鯉」の掛詞?】 くすりのにんじんとかけて    はしのうへのこま下駄ととく   心はから〳〵わたる 【くすりのにんじん : 唐渡の朝鮮人参ヵ】 きのぬけた人とかけて  あぶらのすくないあんどんととく   心はぼんやりしている 上るりのしうたんばとかけて  【浄瑠璃の愁嘆場】  きゝのいゝわさびととく   心はなみだがこほれる しんとみざのしんきやうげんとかけて   名人のうらないととく    心はきつとあたる 【新富座 : 江戸時代の森田座が明治初期に新富町へ移転して作った劇場】 いゝべつかうとかけて    まけしやうぎととく     心はふがない     【良いべっ甲に斑がない・負け将棋の駒に歩がない】 ざんぎりのひなさまとかけて  きりやうのいゝいなかむすめととく   ひなにはめつらしいものだ   【髷を落とした断髪の雛・田舎の鄙】 十五夜の月見ととく  【かけて の間違いヵ】  あさきのきのじととく   あきのまんなか 【あきの真ん中なので、あさきの「き」でなく「さ」の字と解くが本来だが、書き手が間違っている模様】 ゆでたまごとかけて  御居間のみすととく   心はなかにきみがある 【卵の黄身・御簾の奥にいる高貴な君】 しくじつた人とかけて  つかまつたかめのこととく   心はくびをちゞめる 下女のしゆつせととく  【かけて の間違いヵ】  てんぐととく   心ははなかたかひ 火のないこたつとかけて  とりのけむじんととく   心はあたりてがすくない 【とりのけむじん : 取除無尽・江戸時代にはやった無尽講。くじに当たって金をもらった人は退会するが、賭博に近いものだったらしい】 やましとかけて  法印ととく    心は ほらをふく 【山師がほら話をする・法印(山伏)がほら貝を吹く】 みちならぬかねとかけて  大かぜにころもととく   心は身につかぬ 【道ならぬ金 : まっとうでない手段で手に入れた金ヵ】 はりこのつりがねとかけて  山ぶきの実(み)ととく   心はならない 【音が鳴らない・実が生らない】 しりおしのあるそしようととく  【かけて の間違いヵ】  おてらのぢゆうしよくととく   小しようが尻おしをする 【尻押しのある訴訟 : 後ろ盾のある訴訟ヵ】 まじりのやぶとかけて  とりあつめたきものととく   心は木竹そろはぬ 【木や竹が入り混じって生えている・着丈が揃わない】 のらくらぼうづとかけて  おうしのうぐいすととく   心はほけきようもてきぬ 【おうしのうぐいす : 王子の鶯ヵ。名所の鶯谷の鶯のようにうまく鳴けないということか?】 【おうしのうぐいす : 唖の鶯ヵ。日本国語大辞典では「おうし」は「おし(唖)」に同じとあり】 七ふくじんのすごろくとかけて  こんれいのばんととく   心はめでたくします おしのかるいかうのものとかけて  しめつたほくちととく   心はめつたにつかぬ 【かうのもの : 香の物・つけもの】 【ほくち : 火口・火打石などで起こした火を移す燃えやすい素材】 ふじのうしろとかけて  おびのむすびめととく   心はかひのくち 【甲斐の国の入り口・貝の口結び】 あづまのもりとかけて  太平記の南てうととく   心はくすの木がしんぼく 【あづまのもり : 吾嬬の森、同地の吾嬬権現社に日本武尊が地面にさした箸が成長したと伝わるクスノキが存在する、江戸名所図会の「吾嬬森・吾嬬権現・連理樟」にも記載あり】 【太平記の南てう : 南朝に仕えた臣僕の楠木正成】 やぶれたかざだまとかけて  さみだれととく   なか〳〵あがらぬ 【かざだま : 風船ヵ】 せかれたきやくとかけて  四月の一足とびととく   あはせない 【せかれたきやく : 遊女と会うことを禁止された客ヵ】 【四月の一足飛び : 四月があっという間に過ぎて暑くなり袷を着る間がなかった意味ヵ】 あきの野山とかけて  いやひぬきの引出しととく   おちばあつまる 【いやひぬきの引出し : 居合抜きの引き出しヵ。刀の手入れ道具が入っている? 欠けた刃が取ってある?】 びんぼうぐらしとかけて  おれたすりこ木ととく   心はまわしにくい ばくらう市とかけて  すきなものゝちそうととく   心はうまかった〳〵 【牛馬の売買をする馬喰市で馬買った・食事のもてなしが旨かった】 ふぐじるとかけて  ちかめのひく揚弓とかけて 【とく の間違いヵ】   心はとき〴〵あたる 【ちかめ : 近眼】 【揚弓 : ようきゅう。小さい弓で的当てする遊戯】 くじよはひ人のむじんとかけて  とうふやととく   心はからをとる 【むじん : 無尽講。複数人が一定の掛金を持ち寄り、抽選等で順番にまとまった掛金をうけとる庶民金融】 【空クジを取る・おからを取る】 かごしませんさうのにしきゑとかけて  わたりものゝ小鳥ととく   心はめづらしがつてかう 【かごしませんさうのにしきえ : 西南戦争の錦絵ヵ】 【わたりもの : 渡り物、舶来のことヵ。】 【珍しがって 錦絵を買う・小鳥を飼う】 おゝかみとかけて  のりのきゝすぎたきものととく   心はきたらこはからふ 【狼が来たら怖い・糊のきつい着物は着たら強い】 みじかい道中すご六とかけて  なつのあめととく   ふりだすかと思へばぢきに上る 江戸まへのうなぎやとかけて  女郎のあしととく   心はたびかない 【ウナギ屋のたびがないは旅ウナギでない・遊女は足袋を履かない習慣なので足袋がない】 【日本国語大辞典によれば、旅ウナギは江戸前に対して他の地方から仕入れてきたウナギのことで、味が悪く二級品とされた】 きつねのおならとかけて  しやうじんののしととく 【精進の熨斗】   心はこんぶう 【一般的な熨斗はアワビだが、精進の熨斗なので昆布だ、の意】 ふじの下りくちとかけて  おぼこのしゆつせととく   心はすばしり 【ふじの下りくち : 富士山の東側の登山口の須走】 【おぼこの出世 : 出世魚ボラの呼び名のひとつ。オボコ→スバシリ→イナ→ボラ】 かけひとかけて 【掛樋】  ひさうのうゑ木ととく 【秘蔵の植木ヵ】   心はみづをかける ばかのいろきちがいとかけて  大工さんととく   いろ〳〵にきどる 【木取り : 用材として材木を切ること。特に、丸太から角材をつくること】 口さきのうまいげいしやとかけて  なまゑひととく   心はころびそうに見へてもやうゐにころばぬ 【なまゑひ : 生酔い。酔っ払いのこと】 上手なしやうぎ【将棋】とかけて  どく【毒】ととく   きゝめがはやくわかる 【効き目=駒の有効性を熟知しているので最短の詰手がわかる、の意】 せつたとかけて  はしととく   心は下に川がある 【せつた : 雪駄。草履の裏に皮が貼ってある】 さけのないとくりとかけて 【酒のない徳利】  はりこのすゞととく   【張り子の鈴】   ふつてもおとがせぬ 矢口の戦死とかけて  てじなのまくらととく   心はふなぞこに穴をあける 【矢口の戦死 : 太平記より。南朝側の武将の新田義興(義貞次男)が多摩川の矢口の渡を渡る時、底に穴をあけた船に乗せられ沈みかけるなか、両岸からは矢を射かけられ陸に戻れず戦死する。】 【江戸時代の箱枕は、挿絵のように下の土台の箱の部分の底面に丸みを持たせた船底型が多かったらしい。手品のタネを仕込むために底に細工したという意味ヵ】 はやいたけのことかけて  二十四かうの一人ととく   心はもうそう 【二十四孝 : 孝行をした二十四人をまとめた中国の書物。】 【孟宗が母の為に真冬の雪の中たけのこを探した逸話から孟宗竹の名が付いているので、なぞかけとしてどうなのか?】 糸目の切た凧とかけて  かぢをうしなつた舟ととく   どこへ行かわからない 【左ページ・白紙】 【裏表紙】 【手書き書込み・必用】 【整理ラベル・ 807.9 / NAG / 日本近代教育史資料】