安政二年十月二日夜の四 時神々 出雲(いづも)へ大一座のるすを付込(つけこみ) 例の大鯰(おゝなまつ)ね入ばなゆへねがへりをする所(ところ)江戸十里四方あのめき〳〵 ピシヤリゆへ自身(じしん)もしよげになつて塞(ふさい)てゐる所へ江戸中の鎮守(ちんじゆ) 立合にて吟味(ぎんみ)ある 地震共でたらめに【▢げ囲む】 近頃(ちかごろ)はとつの奴等(やつら)度々(たひ〳〵)此国(このくに)へ参(まい)り地の下で もうるさく存(ぞん)じ日本の後(うしろ)を力(ちから)任(まかせ)せ【衍】に動潰(ゆりつぶ)したる尻尾(しりを)はづみに乗(のつ)て 江戸 表(おもて)へ持出(もちだ)し候 段(たん)幾重(いくゑ)にもお免(ゆるし)〳〵と地の下で手を合せたるは九 太夫といふ身振(みぶり)なり 諸神【▢で囲む】 こいつ要石(かなめいし)位(ぐらゐ)の甘(あま)口ではいかぬ奴(やつ)今度(こんと) は柳川(やながは)の板前(いたまへ)へ申付 蒲焼(かばやき)すつぽん煮(に)にすると甚(はなは)だいかり 力身(りきま)【ママ】せ給ふ 山王【▢で囲む】 神田【▢で囲む】 二ヶ 所(しよ)の氏子 怪我(けが)少(すくな)きゆへ今度(このたび)は仲(ちう)人に 成(なり)給ひ此(この)以後(いご)急度(きつと)動(うご)き申 間鋪(ましき)の一札(いつさつ)を月番 深川(ふかがは)の蛭子(ゑひす)の 宮(みや)へとられ鯰共ふるへながら判(はん)をおす日々 少(すこ)しヅヽ動(うご)きたる は大方(おゝかた)此時(このとき)なるべし【印】《割書:この判は彼奴(きやつ)が証文(しようもん)の印形(いんきやう)なれば|これを懐中(くわいちう)する者(もの)は地震の難(なん)を免》 【挿絵中の囲み文字】 深川恵比寿の宮            江戸地震 信州地震   越後地震         小田原地震