新版　化物とんだ茶釜　富川房信画　全 【右頁】 明和七庚寅年 　　　　　房信画 【左頁】 つちぐも せんせい　　　 　　　　　　　のかたへ 　　　　　　　ゆかずはなる 　　　　　　　　　　　　まい 　　　一明夜丑みつ 　　　　時北山の 　　　　古づかゑ化 　　　　物仲間申合 　　　　可参事 　　　　 なんのそう だんじやろ 【右頁上】 これは よい おも い つきた きたのゝおくふる つかにいくとしふり　しとも しれぬつぢくも　すんでばけものゝ 【左頁上】 せんせいととき めきけり みなをよふ ことよのき にあらす源の らいくわうのらうとう 四天王なとゝいゝて　ぶゆうにほこり ばけものを なん とも おもはす 【右頁下】 きんときめら きみがは【わ（ワ）】るい ばけものなか まのおやふん みこし入道 大ぜいの ばけもの ひきつれ ふるつかへき たりつち くもに たい めん 【左頁下】 われらいくわうを なやませこう たいに名を のこさんと おもふこれに よつてみ な〳〵も おもひ 〳〵 に ゑ て もの を ばけ 四天王　のゆ□ をくぢ　く□ がてんか〳〵【「合点か」を二度繰り返すのは決まり文句】 【右頁上】 つち くも女と ばけてゝ 人々をたふらかす 【左頁上】 うらへのすへたけ 女はおらは きらいものだ 御せんへつれて ゆくことは いらぬ もの じや すへ竹 　　　　坂田の 　　　　　きんとき 【右頁下】 　　　□□？ とふぞおとり なしてらい くわうさま に御めみへ かいたしたふ けんし【絹糸】 ます【。】まいも すこしは【舞いも少しは】 けんして【絹糸て】 　　おり 　　ます 【女＝土蜘蛛は糸売りで「存じ」と言うところに売り物の「絹糸」をかけた洒落を言っているようです。】 こりや〳〵女その ほうはまひかなるか わがきみ御しゆ 　　ゑんの 【左頁下】 おりから【折りから】よい さいわい〳〵 【枠外】 ちやかま 【右頁上】 源のらいくわうきた山 の花さかりをなかめんと 　　　　　四天王を めしつれ しゆゑんをな し給ふ ところへ いとうり の女き たり まいかなてけれは みな〳〵けうに いらせ給ひ 　　　ける 【左頁上】 びら しやうと あふらくさい おらはおも しろくもなん ともない 【左頁下】 いとうりの女五しきの いとをらいくわうにたて まつりおもしろく まいかなで 御きけんに あつかる 【右頁上】 さてもらいくわうきた山にていとうり の女さし　　　あけしいと 　　　　　　　　御てに 【右頁中】 ふれられしより 御こゝちあしく なやみ給ふ【23行目くらいへ】 【右頁下】 たとへんかた なき大 ちやかま □□□で きて□い所【台所】 のうち□こ ろけまはる りやうり人【料理人】 きもを つぶす【42行目くらいへ】 【左頁上】 それより 御やかたに さま〳〵のあ やしきはけ ものいてける ゆえ 四 天 王の 人々 とのい 申て はい かんの いた める【肺肝の傷める＝肺肝を砕く、苦心する】【11行目くらいへ】 【左頁中下】 ぜんだい みもんとんだ ちやかまだ そりやでたは ちうけん やつこおと ろきにける 四天王の人々ばけ　ものをいけとらん とこゝかしこにつめて　よふすをうかゝふ 中にもさかたのきん　ときまたゝきも せすようみつめそのい【其居＝其居所】申けるに【その居場所を（見切った）と申けるに】大きなる やくわんのばけも　のいつる ハヽア やくわん に ばけ おつ 　た はやく 　　ひつ 　こめ 　　〳〵 つかもないやくわん 　　　　　　　　だそ 絵師　富川房信 【左ページ、墨で手書き】 化物とんた茶釜　下 こゝに平の まさもりは かねてらい くわうを なきものにして われけんは【玄蕃】にならんとたく みしか此ころらいくわう ひやうき【病気】そのうへやかたのうちに ようくわいありときゝ大きに よろ 　こふ 【台詞】 わたくしきたうじや【祈祷者】と なりらいくわう をたばかり くひとつて まいらん 【左下の人物】 いのくま 　　入道 【すへたけの台詞】 いかにも〳〵ようくわい のくるじこく はよふこせんの【早ふ御前の】 御なやみを よくいたし 　　　　たい 【人物名】すへたけ 【人物名】さたみつ 【さだみつの台詞】 もはやうしみつ てこさろう 　　　　かの 【本文】 平のまさもりか けらいいのくま入道 きとうしやとなり らいくわうのやかたへ しりそけんとそらい のりをする　あつきこうぶく【悪鬼降伏】 おんてきたいさん〳〵 【そらいのり：空祈り、祈るフリ】 つち くも 　ても【土蜘蛛でも】 はいとり くもても【蝿取蜘蛛でも】 わがぎやう りきて はらいの けるそ 源の らいくわ 　　　　う つちくものよう くわひにおそれ給ひ 御なやみつかれ ねいり 給ふ さかたのきんときは きとうしやきめういん つらたましいあやしくおもい こゝろをゆるさす あと より つき きたりやう すをためし みる さてこ そしれものよ さて〳〵きものふと 　　　　　　い づく にう【木菟入：憎たらしい坊主】 めだ いのくま入道ひそかに らいくわうのねまへしの ひこみかくしもちたる九寸 五分にて御くびをかゝんとうかゝふ らいくわうさへぶつちめれば おらかたんなはふくとくの 三年めよし〳〵 【福徳の三年目：福徳の御利益は三年目にまわってくるという意味で、転じて思わぬ幸運が舞い込むこと】 人々もの 　おとにおとろき かけ つ ける 坂田のきんとき □□□□【きみやう】 いんを とつて ひつ 　ふせる 【きみやういん：前コマに見える偽祈祷者（猪熊入道）の偽名】 いのくま入道 すでに らいくわうの ■れまに【寝まに？】 　しのひいり きんときに いけ 　とら 　　れる 【左ページ上】 源のらいくわうつちくも まぢかくきた るをこゝろへた りとぬきうち にきりつけ給ふ すなはち此たちを くもきり丸と これよりかい めいある わたなへのつなを はしめ人〳〵 つちくもの のりを 　　したい きた山のふる 　つかへゆき 　　ついにつち 　　　くもをたい 　　　　　　し 　　　　　　　ける 【左ページし下、台詞】 あやしき けしやうの【化生の：化物の】 　　すかた 　　　　や 【本文】 さかたのきん ときてなれ し大まさ かりをひつ さけ まさ もりがけらい をうちひしく 【金時の台詞】 もの〳〵しや【こしゃくだ】うん さい【うんざい＝馬鹿、まぬけ】ともわがきみ をほろほさん とはとんた ちやかま じや 【左ページ上、本文】 平のまさもり いのくまかしけんじ【猪熊が修験者】 いけとられしと きゝことろ けんせぬうち【事露見せぬうち】 ふいを うたんと ようちに【夜討ちに】 おしよせる 【右ページ下、台詞】 やんらね 　　　　は 【左ページ下、台詞】 ありや 　〳〵 　　〳〵 なんでも ぶつちめたい きついことは ないなんの その せつつ のかみ源 のらいくわうつちくもたいしありて 御こゝろよく ならせ給ひ 四天王の人々 まさもりを いけとり 　　し こと 御ほう びある 四天王の 人々まさ もりを いけとりかち ときあけていさみ 　　　　　　　けり 【人物名】 うらへのすへ　た 　　　　　　　け 【まさもりの台詞】 ゑゝ むねん 　　〳〵 絵師　富川房信 【裏表紙】