《題:《割書:百|鬼》徒然袋    上》 百器徒然袋序 【印】 嘗以私?椾?。為俳謔也。遠望 之。峨々拂青天。就而視之。 其様?■藁?■此託。相當此 語其。石燕間其人也。■天 台之西。隠十一社之六?。而依?■■ 万鬼図画怪状。■■■俗。 天明四甲辰春     元洲勝?武?幹 画図百器徒然袋巻之上 ○宝船(たからふね)   ○塵塚怪(ちりつかくはい)王 ○文車妖妣(ふくるまようひ) ○長冠(おさかうふり) ○沓頬(くつほう)   ○化皮衣(ばけのかはころも) ○絹狸(きぬたぬき)   ○古籠火(ころうくは) ○天井嘗(てんしやうなめ)  ○白溶(しろうねり) ○骨傘(ほねからかさ)   ○鉦五良(しやうごらう) ○払子守(ほうすもり)  ○栄螺鬼(さゞえおに) なかき 世のとをの ねふりの 《題:塵塚(ちりつか)》 《題:怪(くはい)王》 それ森羅(しんら) 萬象(ばんぞう)およそ かたちをなせる ものに長たる ものなきこと なし麟(りん)は 獣(けもの)の長/鳳(ほう)は 禽(とり)の長たる よしなれば このちりつか 怪王はちりつもりて なれる山/姥(うば)とうの 長なるべしと夢の うちにおもひぬ 《題:文車妖妃(ふくるまようび)》 歌に古しへの文見し 人のたまなれやおもへは あかぬ白魚(しみ)となりけり かしこき聖(ひじり)のふみに 心をとめしさへかくの ごとしましてや執着(しうぢやく)の おもひをこめし 千束の玉/章(つさ)には かゝるあやしき かたちをもあら はしぬべしと 夢の中に    おもひぬ 【右丁】 《題:長冠(おさかうふり)》 東都の城門に かけて世を のかれし賢人の 冠にはあらで このてかしはの ふたおもてありし 侫(ねぢけ)人のおもかけ ならんかしと夢こゝちに おもひぬ 【左丁】 《題:沓頬(くつつら)》 鄭瓜州(ていくはしう)の瓜田(くはでん)に怪(くはい)ありて瓜(ふり)を 喰(くろ)ふ霊隠寺(れいいんじ)の僧(そう)これをきゝて 符(ふ)をあたふ是を瓜田におくに 怪ながくいたらずのち其符を ひらき見るに李下(りかに)不(かふり)_レ正(をたゞ)_レ冠(さず)_レの 五字ありと かつてこの 怪(くはい)にやと 夢(ゆめ)のうちに おもひぬ 【右丁】 《題:ばけの 皮衣(かはころも)》 三千年を経(へ)たる狐 藻艸(もくさ)をかぶりて 北斗(ほくと)を拜し美女と 化するよし唐(もろこし)のふみに 見へしはこれ なめりと夢のうちに おもひぬ 【左丁】 《題:絹狸(きぬたぬき)》 腹(はら)つゞみをうつと言へる より衣うつなる玉川の 玉にゑんある八丈の きぬ狸とは化(ばけ)しにやと ゆめの中に おもひぬ 《題:古籠火(ころうくは)》 それ火に陰火(いんくわ)陽火(やうくは)鬼(き)火さま〴〵 ありとぞわけて古戦場(こせんじやう)には汗血(かんけつ) のこりて鬼火となりあやしきかたちを あらはすよしを聞はべれどもいまた灯篭(とうろう)の火(ひ)の 怪(くはひ)をなすことをきかずと夢の中におもひぬ 【左丁】 《題:天井嘗(てんぜうなめ)》 天井の高は燈(ともしび)くろうして冬さむしと 言へどもこれ家さくの故にもあらず まつたく此/怪(くわい)のなすわざにて ぞつとするなるへしと 夢のうちに おもひぬ 【右丁】 《題:白容裔(しろうねり)》 白うるりは 徒然(つれ〴〵)のならいなる よしこの白うねりは ふるき布巾(ふきん)のばけたる ものなれども外に ならいもやはべると 夢のうちに おもひぬ 【左丁】 《題:骨(ほね)傘(からかさ)》 【下へ】 北海(ほくかい)の鴟吻(しふん)と言へる魚ありかしらは龍のごとく からだは魚に似(に)てよく雲をおこし雨をふらすと このからかさも雨のゑんによりて かゝる形をあらはせしにやと 夢のうちにおもひぬ 【右丁】 《題:鉦(しやう)五郎》 金(こがね)の鶏(にはとり)は淀屋(よどや) 辰五郎か家の たからなりし よし此かねも 鉦五郎と言へる からは金にてや ありけんと 夢のうちに おもひぬ 【左丁】 《題:拂子守(ほつすもり)》 趙州(でうしう)無(む)の則(そく)に狗子(くし)にさへ仏性(ぶつしやう)ありやと まして傳燈(でんとう)をかゝぐる坐禅(ざせん)の床に 九年が間うちふつたる払子 の精(せい)は結加趺坐(けつかふざ)の相(さう)をもあらはすべしと 夢のうちに おもひぬ 《題:栄螺鬼(さゞえおに)》 雀海中に入て はまぐりとなり 田鼠(でんそ)化(け)して 鶉(うづら)となるためしも あれは造化(ぞうくは)の なすところ さゞえも鬼に なるまじき ものにもあらずと 夢心におもひぬ 【裏表紙】