卯のとし   新版 納 奉 徳若水縁起金性(とくわかみづゑんぎのかねせう)上 【検索用:とくわかみずえんぎのかねしょう/とくわかみづゑんぎのかねせう】 【作者:樹下石上=樹下山人】 【刷りの違う同内容の本:https://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100062062/viewer/1 】 【右ページに手書きで】寛政七卯年 【左ページ】 七福神(しちふくじん)廻(めぐ)り順路(じゅんどう) 弁天(べんてん)しのはず池        中しま【現在も不忍池の中島にある】 毘沙門(ひしゃもん) 谷中     かんのう寺【現在は護国山天王寺と名前が変わっている】 寿老人(じゆらうじん) かんのう寺      うら門まへ【現在は谷中の長安寺にある】 ゑびす 日くらし      山のうへ【当時は大黒とともに道灌山にあったが明治7年ごろ道灌山が売却され青雲寺に移される】 大黒(だいこく) ゑびす     同社(どうしや)【現在は上野公園近くの護国寺が大黒とされている】 布袋(ほてい) どうくわん山【現在は修性院が布袋とされる】 福禄寿(ふくろくじゆ) 西が原 西行庵【田端の東覚寺の隣りにあった普門寺のこと。明治時代に廃寺になり東覚寺に移される】 右にしるす 七福神を めてたき世界(せかい)にさだめはんもと めてたいをつるわか【?】ゑひすの 西の宮へおくる事しかり 【このリストは現在では谷中七福神と呼ばれているもので「日くらしの山」「どうかん山」は道灌山のことで西日暮里公園周辺。西が原は北区西ケ原から田端あたりの一帯】 はるはあけぼのやう〳〵白く なりゆく山ぎはすこし あかりてむらさき 立たるくもの ほそくたなびきたると 清少なごんが まくらそうしに かきたしたる 初はるのけしきは 下かいの人の なすところも 天人といふおいらんのゐる くものうへも同し事にて 元日はもろ〳〵のほしたちかてんとうさまや【星たちが天道様や】 お月さまへねんしの御しうきを申上 二日は天人のねんれいはつ道中の きれい事しつけのまゝのあまの はころものいしやうつきよく そとはもんじ でゆりかければ ものみだかひ 天のならひ にて かみ なり なかま が ごろつけば 風のかみ がかね ひらを きつて ひかる 此日下かいへ金 はながふるゆへ 天(てん)の■■■は【せつくは=節句は?】 地の利(り)うんに して地の 里 運(うん)は人の くわほうに し  たり   と   いふ 花のごとくに きみたちが みへるは   〳〵 〽かれうひんが【迦陵頻伽=上半身が人、下半身が鳥の姿をした鳥】   下かいの  しやと【者=芸者と】  いふ  もの  にて  びはを【琵琶】   へれん〳〵【琵琶を弾く音、ペレンペレン】 【のれん】ころつき巴や 【天女たち】 〽そんな おくてんな しやれは  いゝつこ    なしさ 【鬼たち?の台詞】 あれて□【あれても】【別本で補う】 五すい□【五すいに/五寸いに】【別本で補う】 玉の かんさ  し   を まげる    ぜ 【鬼たちの名前】 風 雲 日 筑 ゑどふしの松の内の ぶんしやうにとこの 女郎しゆの下ひもか とんとおちなば なやたゝん これらは どうやら ありそう な事なり ありそふも ない事だか 天人の 下ひもが とけて さう した ひやう りか 下かいへ ひら〳〵 まひ下り つむじ風 にまき 上た 手ぬくひが 又下へまひ下る やうなを とうふやの むかうの やねを いところにして くまさかと なをとつた とびがどういふ まてか ちうで 引ッさらつて 下ひもだに よつて あなの いなりの もりの ほうへ もつて 行く 〽天人くものうへで  あれ〳〵と  きをもめど   とる事    ならず  ちよきで   手ぬくひを  おとした    やう也 〽いつそきざておすよ  まだ下ひもで   よふおさんす  なべやひもたと   うちんすよ 〽うつくしひわかしゆの  あげているたこへでも   ひつかゝればいゝよ  きのきかねへしれつ   たふおすよ 〽ヲヤ〳〵    とびが  さらひんした  あやまりん     すよ このふんとしか わが手に入とは  ありがた山の とんびだはヱヽ   このぬいの びじんてん上より  おちればいゝ   けをむしつて     やろうに とびは天人のひちりめんのふたのを【ふたの=腰巻き】 うをのわたかあふらけの やふにさらつてみたれど とんひとろゝのやうに【とんびとろろ=鳶の鳴き声】 ずる〳〵とのどへはいらねは【鳴き声のとろろと、とろろ芋をかけた洒落】 べんてんさまのみやの のきへ引かけて おきければ 天人のあかひ ふたのがべにの かんばんのやうに ひら〳〵するを ないぢんから べん天さまがみたまひてふつと 一しゆかうあんじがつきべにおしろいを うゑん【有縁】のむすめはもちろんむゑん ほうかい【無縁法界=無差別に】りんきふかひにやうぼうにも いろのくろひ女がゆきのやうに白くなり おたふくのほうが引つこんでゑくぼが あいきやうになるくらひの事なれは あばたやそばかすのよくなるは おちやのこにて丸ぼんに目はなを付た やうなのがうりざねかほのきん〳〵とした しろものになりければしたぢからうつくしい のはおにゝかなぼう〴〵まゆをおくと 十二ひと□□きせても【十二ひとへをきせても】 はつかしくなひきり やうに なり たま【玉揃い=美女ぞろい】 そろひで 御 れい まいりに きたるを べんてん さまは とり あへす 玉そろへの 中へほうしの【ほうしの玉=宝珠玉】 玉をなけて ひろはせ たま らず おもし ろがり  給ふも うつ くしい のは 人 の 目 に  つくものゆへ▲ ▲目のよるところへ たまがよるといふ    御あんじさ【目が寄れば瞳も寄る=似た者同士が集まる】 〽おいらは玉にみとれて玉をひろはすのいけだ 【谷中七福神の弁天社がある「しのばずの池」にかけた洒落】 〽十五とうし【童子】の中ても いたつらなじやう だんものとうのいもの かしらへひぼを【=紐を】  つけておもいれ       じらす 【十五童子は弁天に仕える十五人の童子のこと】 【唐の芋は里芋の品種で宝珠玉の形をしている】 〽かふした     身は ひやうばんの あまのつり舟と きているだろう 【文字通り「海人の釣り舟」に見えるというだけでなく、陸釣り(女漁り)にもかかっている】 〽善こうこんな   にこしが   ふな〳〵して   はすいけへ【蓮池へ】   すつほんと   はまつたら   いゝみせ    ものたぜ 【唐の芋で美女をじらしている童子は善財童子で善公と呼ばれているものと思われる】 なんぼ うつくし くつても おれには みんながへこむ【凹む=負ける、屈服する】 のさとべんてん いつはい にうぬ ほれ でい 給ふ 美人(びしん)に沈魚(ちんきよ)落雁(らくかん)の媚(こひ)ありとてうをもしづみ とりもおちるほどのけいきなものゝ 手かみなけらるゝらくがんや まつかぜ【干菓子の一種】に弁エベ【?】のみたらしの うをがうてうてんに【魚が有頂天に】 なつてくわしをばい合 すつほんが大ころはしを 丸のみにしてのどに つまり目を白く くろくして くびを出したり ひつこましたり して手あしを もがきはなし かめ〳〵と いわれてはしの うへにいるやうな みをすればこいが いしかげてはなを つけばふなつこや【つけば、鮒っこや】 めだかははすつはの【メダカは蓮っ葉の】 うへにはね上 られてまごつく やら大こんざつの あげくのはてに けんくわをおつはしめて 水しあい【水仕合】といふしうちをする 【水仕合:俳優が水を浴びたり、水中で演技をすること】 〽だくわしやのかゝァも だもちやのむすめも 上あんのうまひふう ぞくになつたうしろ すがたさかほは まへの一まいにどれも うつくしくかいて あるからこゝでは そのうしろ すがたさうしろ べんてんまへ ふどう【不動】といふ あやまる所は ない〳〵〳〵と しばいの おり介の へんじさ 女 〽わつちらに せん人が つうをうし なつて ぽちやりと いけへおち やうかと はしのうへに いるがくろうた 〽これはあの むすめの 手からくれた 松風【干菓子の一種】わいらに やつてなるか 〽おどれ なへぶたの【鍋蓋の】 うへでかうらを【甲羅を】 引つはな   される      な 〽おこし こめ を こつちへ よこさ ねへと どう 中を 引つ くゝつて はなし かめ 〳〵の うきめを みせるぞ 【かめかめ:おそらく、亀を裏返して地面に置き、もがくようすを面白がって見る子供の遊びであろう】 〽せんへいを わたせ〳〵 〽こいつをわたして なるものか 〽おいらが   たてに かぐらどうて きか  きひて いきな は中【?】   まち  でも くればいゝ 女 〽くわしをやる   ふりをして やらずに   じらして    やろうか 女 〽アレはくてうが くびをひつたてゝ わつちらを みるはな 七ふく神の 中ても 女といふは べん てんさま はかりなる     に はねた しゆ かうであて給ひしかば びしやもんさまもこの おとさたをきいてひと しゆかうなくては女に まけてなゝふくりのついた かいはなしとて五ぢうの とうにきつしりとたから つくしをつめておいてとみを ついてあたつたものへそれ〳〵の たからをさづけたまう 第一のとみは 百両といふ ばだがむかで【場だが、百足】 こばんであらふ【小判であらふ】 とのりきがある まひとおもつて おはつほの十二とうと【お初穂の十二灯と?/あるいは十二等?】 きてひねつたあんじて たからづくしとしやれた もんぱたびさ 【百足小判:金運のお守りにする本物ではない小判】 ひしやもんの たからのとみ にあたつて とつた たから ものを いゝ合て たい八くるまを かりてつみあげ て引てかへれば うちでの 小つちを とつた ものが たから づくしの 車のうへに のつてつちから きんぎんべいせんを うち出しながら まつりの はるたいこと いふきとりで 大いきみに いさんで行く 〽おれがなりは やろうの大こくと いふもんだ 大こくといふ 人は一にたからのとみを取 二ににくるまつみ上て【二に荷車積み上て】三に さく〳〵金をもち四つ よしはらへおして行五つ いゝかも【いつかも=五日も?】ゐつゞけして六つ むせうにつかひかけ七つ  何てもうん〳〵と八つやくそく まちがへす九つこくうによくされて十てとこ入り おさまつたこれでは大じんまいをみさいな【大尽舞を見さいな】といつていゝせりふだ たから つくしを ひくから くるま引     も かさだは  ウ□【ウン】 みのたはウン      と【笠だはウン、蓑だはウン】 ほうしの【宝珠の】 玉のやうな あせをかく 【笠と蓑は宝尽くしという紋様のモチーフになる縁起もの。宝尽くしを引いているので車引きが踏ん張る声まで縁起のよい言葉に聞こえるということ。】 じゆろうじんと いひながらわか いきにて人を うれしからせ るよひしゆ かうでおち をとらんと ひたいに しはを よせて こんきを くだきあんじ ぬいてやう〳〵とせかいを つかまへてとしはよつても りうかうにおくれはせぬと はりあふ きで び し や 門 のう ら門の まへにあん したくすりみせをだし あとへとしをとるくすりと 一生わづらはぬくすりを よの中の人へひろめ給ふ此二つの めうやくがあればおのゝ小まちも おもかけのかわらてとしのつもれかしと【注】 うぬほれのうたもよまずしんの しくわう【秦の始皇】もふろうふしのくすりを さかしてよくづらを引はるにも およはねどからにも日本にも これまでないめうな【妙な】くすりを 一文きなか【一文寸半=わずかの金も】出さずにしてやる事 ゆへまいにち〳〵ゑいとう〳〵と おしかけてあたつたみせ ものゝきどまへのやうで【当たった見世物の木戸前のようで】 まちふたをだしたひ        くらゐなり 【注:面影の変わらで年のつもれかしたとえ命に限りあるとも】 〽わかく   なる  くすりた    から じゆろう  しん   さまから    出ます わつらはぬ  くすりを   ください しかをみて薬を【鹿は寿老人が連れている動物】  おもちひなさい   しかをみて    おやすみなさい しかゞ云 〽おいらも秋は   つまとひの   しかといわ   れていろけ   のあるみの    うへさ 四五十年 あとへとし をとつて ほんだに ゆうつもり      た 〽わしも わかかへつて しまだに ゆうつもりだ 〽とてもの事に【いっそ】めいてうを【名鳥】 ごろふじませだてうを【駄鳥】 ごろうじておやすみ なさいといつたら  よからう 【寿老人と同一人物とされる福禄寿は鶴などの鳥を連れている】 【右側の看板】 あとへとしをとるくすり   玉顔子 一生わづらわぬくすり   延命丹 【左側の看板】  《割書:仙術|指南》長果老《割書:三八|出席》 しゆろうじんのひろめ給ひし あとへとしをとるくすりは しんのうも【神農も】かわいらしい ひめゆりからおにあざみ【ヒメユリからオニアザミ】 へびいちことくだみの【ヘビイチゴ、ドクダミの】 はなもちのならぬまで【鼻持ちならぬまで=我慢できなくなるまで】【神農は自ら食べて薬草の分類をしたとされる伝説上の帝王】 なめてみ給ひしかこの くすりのほうには てこずりしらがを くろくするくすりに いつしやうはの ぬけぬくすり くらゐの 事なるに きめう きたいな くすり とてよの 中の人か われも〳〵と のみければ 梅ぼしおやぢが さかりのわかひものになり しぶかみばゞァがやは〳〵 ぼちや〳〵とした うまひしゝあいに【肉合ひに=肉付きに】 わかかへれば四十から 五十くらゐなものが 十四五なむすこや むすめになり二十だいから 三十くらゐのものは六つか 七つの子どもになつて 子とろ〳〵をしたり そうりかくしをしたる とんだりはねたり かめ山のはけものゝ もちあそびを うれしかれは 十だいのものは三つ はかりになつて おかアさんちゝ のみたひといへは あんまり薬か きゝすぎて おきやァ〳〵と いふもあるのさ 〽人のしやうに【証に=体質に】 よつてあたま からわかく なるも あれば しり から わかく なるも あるその内 にははんしん わかくなつてくるも おりやまんずふさやちりめん しわののびるはめうでごせへす 【左ページで茶碗片手に足をさすっている老人】 〽おらァあし もとからわか くなつてきた こいつはおもく ろいな【注】なむあみだ これじやァ三つ ふとん【注2】の上へ てはな せるぞ 【注:面白いを面黒いと言い換える言葉遊びで職人がよく使った】 【注2:三枚重ねの敷き布団で最高位の遊女が使った。つまりこの爺さんは吉原で花魁とも遊べると言っている。】 なむおみとうふは【注3】 いやだにまめも かたいほうを かつてくふ風だ よたすけ給へ なむあみた     〳〵○ ○はんふん わかく なつてしや れとねん● ●ふつを ませて   申 【注3:南無阿弥豆腐と書いて「なむおみとうふ」と読む。僧侶が肉のかわりに豆腐を食べるのと、読経が「なむおみどう」と聞こえることから豆腐に繋げる洒落】 【右ページ背中にほうきをつっかえ棒にしている女】 〽あとへとしを とりわかく なつてとしが のびすごして うしろへ ばつかり かへるにより せなかへ つゝはりを【つっぱりを】 かつて をく 〽三十年あとへとしをとる内を  十五年あとへとつてはんしん   わかくなつたからもう   十五年あとへとしをとると    さつはりとわかくなるうれしや〳〵 【手鏡を持って足を見ている男】 おらァかみから【髪から】  わかくなつて  手なとは  ふつくりと   にくが  かゝつて ねりま  だいこの【練馬大根の】 ごまにと  きて   いるか あしは  ほし   大この  やうだ 【左ページ下で四つんばいで女性にすりよる男の台詞】 〽おかァさん  ぼうに   はやく  ちゝを   のませ     なよ 【鏡を見ながら髪を結っている女】 六七 ねん ぶりて しまだ にゆつた らくせ がついて いゝにくい【結いにくい】 どう せう のう 此女 四十くらゐ      で あとへ としを  とり 十七八に なつたと  みへたり 世の中の人が あんまり わかくなり こともに なつたも あるを てんとうさまが たかい所から みてゐ給ひ こゝは いちばん きを とつた しゆ かうの ある 所と かみ なりに うすを ひかせ いなづま ひめの やはらかひ てゞ たんごを まるめ させ あられの ふるやうに はら〳〵と ふらせ 給ふ ゆへ てん とう うまひ【注】    と あたまを たゝいて 子どもが うれし がる 【注:てんと旨い。実に旨いと舌鼓を打つこと。ここでは天道(てんとう)=太陽がそれを言う洒落】 〽さゝだんごの あらうち たんこの かけかつだんごのと めいぶつもあるが くわんめものは あさふのおかめ だんごさよく しつて いる だろう こゝが てんとう みとをしの   ところだ 【「てんと」は実に、全くの意味。ここでは「お天道様がお見通し」とかけた洒落】 【笹団子:笹で包んだ団子であろうがその他のことは不詳】 【かけかつ団子:不詳】 【荒打団子:寛政期に日本橋の中洲で名物になった団子】 【麻布のおかめ団子:ある男が珍しい亀を釣り上げたのが評判で見物客が大勢おしかけたので、妻が団子を作って売ったところ「亀団子」と評判になった。この夫婦も引退し、あとへ別の町人が入って団子を売ったが、妻が頬高く鼻低き女だったため亀団子に「お」をつけておかめ団子と評判になった。宝暦年間のことだという。】 【雷】 〽かみなりごろ〳〵と  うすをひく ごろつくのは  おれが   かぶだ【株=得意】 【いなづま姫】 〽此いし〳〵はさぞ【いしいし=美味しいという意味の女房詞】   おいしからふ 一つげびぞうと【下卑蔵=下品に】  いきたいが   おはもしひ【歯文字=恥ずかしい】 【兎】 月のうさぎやとはれて       たんごをつく ひやうばん     〳〵 すがたは玉の あられにていろは しらゆきふうみは かんろお子さまかた    にははなくすり    あめのふるよは   ひとしほうまし    おやもさ〳〵 〽天でこしらへ   るだんご      ゆへ ふりもの つくし   て   いふ 【三足烏】 三 そくの からす せいろうの 下をたく 三ぞくとい いへど二そくほか ねへ中の一足は さむひから ちゞこ まつて ゐやす ひたきも おもし   くも【面白くも】 ねへものた 女ゆの ゆくみ【湯汲み】  なら  よか   らう てんとうさまか たんごをふらせ 給へはお月さまも はねたしゆかうが なくてはならずと くふうをして みたまひしが かんろのふると いふはすいぶん うまひ事 なれどしろひ きじや かうらに じのある かめの出た じぶんから ある事にて かびのはへた しゆかう ことにけかいは あめが下とて いつて めぐろの あめや 中ばしの おぢいが あめだのと うまひ あめがあれば かんろくらひ ではおちの とれぬ事と きどつて あたらしひ あんじから はるのあめ さつきあめ あきのあめ ふゆのあめと いふうまひ あめを ねつて ふらせ 給ふゆへ あめか 下の人は あめの くひあさ をする 〽天はたかい 所でやう〳〵 このころ 地てはやつた あめうりの うたがきこへて おつかぶを やらかすこれ すなわちはやりうたが ゑどてすたつたじふん おうしうへんてはやる やうなものなり お月さま 大きなかさをめ       して   あめをふらせ      給ふ かううまひあめをふらせたら  しよこくかんろうとうふると【諸国甘露雨等降ると?】   ねんだいきにしるすであらふ 【屋台の垂れ幕】 十五屋 【近星】 おまへさんのかさの内に わたしがいると あめが ふると いふから てらさずと  ふらして     おく      れよ 【照らす=遊里語で客をほうっておくこと。ここでは月が照らすのとかけた洒落】 ちん〳〵 もが〳〵 おひやりこ    ひやり このあめかいな  ほうそが【疱瘡が】    かるひ かみなり たいこを たゝひて あめを ふら  せる 【人物説明】 近星 筑波 日光 ちんひやけしの【陳皮(蜜柑の皮)やケシの】 はいつたあめがふつて うまひよの中に なつてきてめしの さいやさけのさかなの うみ川からとれる もしけといふ【も、時化といふ】 事もなくやら へいとうに【平頭と有平糖(あるへいとう)の洒落か?】 とれてたいや ひらめがゑびざこの ねでかはれゝばこはだや このしろの下うをは【下魚は】 とびからすもはしを【鳶・烏もはし(くちばし)を】 つけず今でたといふ はつかつほも中おちは いぬもくはずねこも いやがるせんぎ      なり 〽世の 中の うまく なつた    も くま さかゞ天人の 下ひもを さらつて へんてんさまの のきへ引かけたからおこつた 事ゆへかのとびをばとり なかまでもうやまふ はと三つゆびでおいさつ するゆへにはとに       三指(さんし)のれいありといふ 【くまさか、鳶の名前。天女の腰巻きをさらう話とともにコマ4にあり】 【鳩に三指の…「鳩に三枝の礼あり」の駄洒落】 【鳩】 おかげで わたくし どもは まめの くひあきを     して ぢんきよを  しそうで    ござり      ます 【ここより下巻】 しちふくじんはとなたも中がいゝと いふ内にもゑひすと 大こくはとりわけむつ ましひゆへひとつ やしろにゐてどちらか やどろくかいそうろうか しれずうをと水との 中なりしがその うをと水との中の よいからあんじがつき うつくしくつて 手きゝて すそつはりでなく【裾っぱり=ふしだら】 極上々とびきりと いふしろものへ すつしりと【ずっしりと】 ぢさんをつけて よめにやり じつていで 大通でいひぶんの ないいろ男に これもみやけを しつかりと もたせて むこにやり たまはんと 千両ばこを おひたゝ    しく     つみ給ふ うのけてついたほとも【?】云ぶんの ないのにしつかり金をつけて やるとはかまひの ねときた しねんじよう       の【自然薯の】 でんがくで のみかけ山の けしきも いゝじやァ ござらぬか 〽せけんで めてたい   〳〵と いふも めでたいを だいている   からの しゆかう いろ男のこしらへに すいた事はねへ これでもふんどしは せうゆでにしめた       やうだ 〽にしめ〳〵と  たくさんそうに  いふでかまどの   なべ二つ 〽ゑひす 大こくの ぢさん金 まん〳〵両の かねもとを し た まふゆへ ぢさん きんの たかを【金額を】 のぼり    に そめ ふだに たてゝむこや よめの市が たつて わや〳〵 どや〳〵 びちやくちや する仲できに いつた花よめ花むこを みとりにする 〽うりものには 花をきかせろ といふから わつちやァ 花かんさ    しを  させば   よかつた すみよしに たからのいち【大阪住吉大社の宝之市】 あさくさに としの市【浅草の歳の市、現在の羽子板市】 まんさいに さいそう市【万歳の才蔵市、三河万歳の太夫が才蔵(相方)を雇うための市で文政のころまで年の瀬の日本橋南詰めに立ったといわれている】 ざい〳〵に【在々に=土地土地に?】 一いさいの市【?】 ふねに川いち さとうに めゝいち【?】 こん な いちは めつらしく もないが 花むこ はなよめ のいちと いふは それで いちご さかへたと いふはなしの やうな めでたひ 事なり 〽このとしまでおやきに つとめやしたおかへりてはないのさ 〽おらァ はなが たかひから 花むこの かんばん つきは いゝ  のさ 〽はやうよめにみたてゝが あれはようおす おちやをひかうかと くになりんすよ 【お茶を挽くのは買い手のない暇な遊女がする仕事。つまり売れ残るのは嫌だと言っている】 ほていも 大はづみに はづまんと しうちを あんじ 給ひしが はたかに して おしだすと みせ男の 大せきに なりかねぬ 【ここから汚れあり別本にて補う】 □てまへや【うでまへや】 □□ふくろ【はらふくろ】 ゆへ□ゑ【ゆへちゑ】 ふく□も【ふくろも】 【ここまで】 かしだに【?】 かつこう して いると みへて ちから もちと あんじか つき 千両 はこを いくつも 引からげて かつひ ほうたいに【担ぎ放題に】 かつひた ものに くれて やり給ふ 【布袋さんの台詞】 〽今まで   きん    たま    ばかり  もつて   ゐたとは    ちがふ  大金   もちになつた         そ   しんぼう     して    もて 【千両箱を担ぎに来た男たちの台詞】 〽おらァ   千両箱を  五つ六つ   引かつぐ      きで  三日   ぶりの  めしを  いちどに  くつて   きた わたくしが せうばいは ぼていさ【ぼてい=行商】 ほの じを にごら    ぬと ほていて  こざり    ます 〽かねはこがおもたくつて   しりからも     かねだまが    ぶい〳〵と        でる かぶきでも あやつりても 一日のしゆ かうの内 いつち おもしろひ ばを 山と いふゆへ ふく ろく じゆ は めて たひ しゆかうの 内での 山のばと いふ心 いまで ちうもんの あるにはを こしらへ きん〴〵の いさごは ひろひ ほうだい まんびやうの 米たはらは もつて いき ほう だい さや ちり めんの【紗綾縮緬の】 たん ものは より とりに し しだいと いふ 大し かけの たからの 山といふ ばを 出し給ふ 〽にはの もの すきは ふくろく じゆめう ちやう きうに あんした    とは  みへまい 〽たわら    の山 〽さけの   いづみ たん  ものゝ   はし せにがめ こかねの   つる きん  〴〵の    いさご めでたいに此うへもなき よの中になりしも 七ふく神さまかたの 御かげゆへおれい まいりに 七ふく神めぐりを するその内には べんてんのやうな うつくしひ女も あればびしや もんのごとく かほの こわひ 男も あり ほてい のやう に くらひ ふとつた ものに ふくろく じゆほと にはなし とも あた まの なかい もの にゑひ すの やうに にこ〳〵 とした かほのものに 大こくのやうに ゑご〳〵した ものに じゆらう人 めいたつきん【寿老人めいた=寿老人のような】 をかぶつた【頭巾をかぶった】 ものあつて しのうこう しやうつれ だつて 七ふく神 めぐりを するぞめてた かりける しだいなり めてたし〳〵    〳〵〳〵〳〵〳〵 うしのにへんの【?】 やうにどこまても ながめてたし     〳〵〳〵〳〵 【寿老人めいた頭巾の男】 〽しゆろう人    かたぎさ 【布袋顔の男の台詞】 〽二八そば   なら  十四五   はい つまる  大きな   はらふくろさ 【福禄寿ほどではないが頭の長い男】 おれがあたまは  はるのひと【?】   きている 【火縄と笠を持って恵比寿のような男】 ひなわにかさを だいたなりも   めてた     かろふ 【ひなわ=火縄。竹や木綿糸などをよった縄に硝石を吸収させたもので火持ちがいいので火を炊くときに使う】 【手ぬぐいのようなものを肩にかけた女】 わつちが   事を べんてん  〳〵と  いふが へひはきつい   きらいさ 世の中も  金生水や   華の暮【華の春?】 【裏表紙】