【撮影ターゲット】 【表紙】 【題簽】 桐つほ はゝ木々 一 【見返し・白紙】 【蔵書印・東京学芸大学図書】 【鉛筆で書き込みあり・913.36 GEN】 【鉛筆で書き込みあり・10911789-1】 【左ページ・挿絵内】 【源氏香図】桐つほ      【源氏香図】箒木  きりつほ 此巻は光源氏の御母かう   【更衣】 衣の御つほねをきりつほ   【御局】 といへる詞をもちて名付 たる也此巻の中にけんし   【源氏 誕生】 たん生より十二才の御事 まて見へたり此君の御きさ きはあふひの上也源氏十三四五 【葵の上】 歳御事此まきのすへに    【巻の末に】 あり次のはゝきゝは十六 才の御事見へたり此時の 御みかとゑんぎのせいたい  【御帝延喜の聖代】 なり又一名きりつほと は御てんの名ともいへり   【御殿】 みかとの御うたに いときなき   はつもと  ち ゆひに   きる なかき     心は よを   むすひこめつや 【いときなき はつもとゆひに なかきよを ちきる心は むすひこめつや】  はゝ木々 此巻は歌の詞をとりて 名付たる也源氏十六才の 時いよの介かつまにうつせみと 申女有源氏忍はせ給ひ しにうつせみつれなくあひ たてまつらすその時けんし やり給ふ歌に〽はゝきゝの 心もしらてその原の道に あやなくまとひぬるかな此 はゝ木々といへるはみのとしな 【美濃と信濃の】 のゝ国のさかいにその原ふせ  【国の境に園原】 やといふ所に有木也遠く見   【伏屋という所】 れは帚をてたるやうにて 近くみれは木もなしうつせみ になそらへてあるなしの たとへ也此まきの名なれ とも此五十四帖におよほす 名也うつせみ     かへしに かすならぬ   はゝ   ふせやに   木々 あるにも おふるなの   あらて   うさに    きゆる 【かすならぬ ふせやにおふる なのうさに あるにもあらて きゆるはゝ木々】 【裏表紙】 【表紙】 【打線】 うつ蝉 夕顔 二 【見返し・白紙】 【蔵書印・東京学芸大学図書】 【鉛筆で書き込みあり・913.36 GEN】 【鉛筆で書き込みあり・10911789-2】 【左ページ・挿絵内】    【源氏香図・注】 夕かほ 【源氏香図】 空蝉 【注 図柄が異なるヵ】  うつせみ 此巻は歌を名とせり はゝきゝの末の事をかき つゝけたり源氏十六才の 夏のころうつせみの君に ふかく心をかけたまひうつ せみのまゝ子にのきはの  【軒端の荻】 荻といふありある時碁を うちしまひたるのち 荻とならひねたる所へ 源氏しのひ給ふおとをきゝ うつせみはきたるきぬを ぬきすてかくれぬ源氏はそ のきぬをとりてかへりて よみ給ふうたに うつせみの 人から  身をかへて   の    ける  なつ 木の     かし  もとに    き   なを   かな   【うつせみの 身をかへてける 木のもとに なを人からの なつかしきかな】  夕かほ 此巻は歌の詞を名とせり 源氏十六才の夏より十月 まての事をしるす源氏六 条のみやす所のもとへかよひ  【六条御息所】 給ふ時五条あたりのしつか   【賤家】 家に白く花のさけるを なん何の花そととひ給へは 内より歌を書て奉る 〽心あてにそれかとそ見る 白つゆのひかりそへたる夕 かほの花此心はおしあて に源氏の君とすいりやう したるといふ心なり  源氏の御うたに よりて   こそ  花の    それ  夕     かとも かほ ほの   見め  〳〵   たそ   みゆる  かれに 【よりてこそ それかとも見め たそかれに ほの〳〵みゆる 花の夕かほ】 【裏表紙】 【表紙】 【題簽】 若紫 末つむ花 三 【見返し・白紙】 【蔵書印・東京学芸大学図書】 【鉛筆で書き込みあり・913.36 GEN】 【鉛筆で書き込みあり・10911789-3】 【左ページ・挿絵内】 【源氏香図】 若紫    【源氏香図】 末摘花  若むらさき 此巻は歌の詞を名とせり 源氏十七才の三月より冬 まての事見へたり藤つほの めい子に紫の上と申女子有 源氏秋は物さひしく思召て 藤つほのゆかりなるゆへむかへ やしなひ給ひしと也若紫と つゝきたる詞はなし此紫の 上の事を此巻にはしめて かき給ふとなり     御うたに 手につみて   野辺  いつしかも   の     みむ  若 むらさきの    くさ    ねに     かよひける 【手につみて いつしかもみむ むらさきの ねにかよひける 野辺の若くさ】  末つむ花 此巻は歌と詞をもつて 名とせり源氏十七才の二月 より明る年の春まての事 あり末つむ花と申はひたち の宮の御むすめにてめはな あかき病ありべにの花は 末よりさき末よりつむに よりこれをたとへて末つむ 花といへるなり源氏思召やう は何とてかやうにかたちあし き人にあひなれけんとこう くはいのひとりによみ給ふ    御うたに なつかしき色とも なしになにゝこの 末つむ花を    そでに      ふれけむ 【裏表紙】 【表紙】 【題簽】 紅葉賀 花のゑん 四 【見返し・白紙】 【蔵書印・東京学芸大学図書】 【鉛筆で書き込みあり・913.36 GEN】 【鉛筆で書き込みあり・10911789-4】 【左ページ・挿絵内】 【源氏香図・注】 紅葉賀    【源氏香図】 花のゑん 【図柄が異なる・この図は「薄雲」・「薄雲」が載る十巻は欠巻】  もみぢ賀 此巻は詞を名とせり源氏 十七才の十月より十八才の 七月まての事見へたり仁明 天皇の嘉祥二年三月に 天皇四十にならせ給ひて 賀あり十月なれは紅葉 をもてなしもみちの賀 これなり紅葉の木のもと にてれい人のまひその外  【伶人の舞ヵ】 いろ〳〵のまひあり源氏 はせいがいはといふきよく をまひ給ふ源氏の    御うたに 物おもふに  しり   たちまふ  きや    へくも     あらぬ身の  心   袖うち       ふり        し 【物おもふに たちまふへくも あらぬ身の 袖うちふりし 心しりきや】  花のゑん 此巻は詞をもつて名とせり 此巻は南殿の桜のゑんなり 則花のゑん也もろこしには 花といふは牡丹日本にては さくら也此巻は紅葉賀の 次の年の春まての事なり 源氏十九才宰相中将正三 位なり古来花のゑんとは さくらをもてあそふ事を いひならはし侍ると也      御うたに         風も  ふけ   はらに こそ  小さゝが    わかんまに   露のやとりを いつれそと 【いつれそと 露のやとりを わかんまに 小さゝがはらに 風もこそふけ】 【裏表紙】 【表紙】 葵 榊 五 【右ページ・白紙】 【蔵書印・東京学芸大学図書】 【鉛筆で書き込みあり・913.36 GEN】 【鉛筆で書き込みあり・10911789-5】 【左ページ・挿絵内】 【源氏香図】 葵    【源氏香図】 榊  あふひ 此巻は歌をもつて名とせり 源氏廿一才より廿二才まて の事見へたり源氏の北のか たあふひ上といふ也かもの  【葵上】 まつりを見に出給ふに車 のたて所をあらそひ六条の みやす所の御車をうちそんし これよりかものまつりの車 あらそひといふ也みやす所 うらみにおもひ同年 八月にあふひの上をとり ころし給ふ也源氏の      御うたに はかりなき   千ひろのそこの     みるふさの おひ  ゆくすゑは    我のみそ見ん  さかき          【榊 一般的には 賢木 】 此巻は歌と詞とをもつて 名とせり源氏廿二歳の 九月より廿四才の夏まて の事見へたり六条のみ やす所の御むすめさいくう  【斎宮】 となりていせへくたり給ふに 【伊勢へ下り給う】 付みやす所も共に野々宮 にて物いみし給ふを源氏   【物忌み】 なこりおしみてのゝ宮まて まいり給ふ時みやすところ の御歌の心は三輪の古歌 に引合せける心也此巻一名 は松かうら嶋ともいへり   【松が浦島】      御うたに 神かきはしるしの  杉もなきものを いかにまかえて   【ワ行の「ゐ」は誤記ヵ】    おれる      榊そ 【裏表紙】 【表紙】 花ちる里 須磨 六 【右ページ・白紙】 【蔵書印・東京学芸大学図書】 【鉛筆で書き込みあり・913.36 GEN】 【鉛筆で書き込みあり・10911789-6】 【左ページ・挿絵内】 【源氏香図】 花ちる里    【源氏香図】 須磨  花ちる里 此巻は歌をもつて名とせり 源氏廿四才の五月の事也 榊の巻の末と同し夏の 事也花ちる里はきりつほの みかとの女御れいけいてん  【麗景殿の女御】 の御いもうとむかし源氏 のあい給ひし御方也御歌 の心は此人ならてむかしの 事かたりあふへき人なしと ほとゝきすの立花のかをなつ かしくきてなくと同し事也 とたとへたる歌也此君此巻に はしめて出たるゆへ花ちる里 といふなり御うたに たち花の   とふ  香をなつ   かしみ    ほとゝぎす     花ちる里を      たづねてそ  すま 此巻は歌の詞を名とせり 源氏廿四才の秋より廿五 才の春まての事あり 源氏御とかめにあひ給ひ  【咎め】 此浦へうつり給ふゆへすまの 巻といへる也此まきは仁義 五常朋友のなからひまて こと〳〵くこもる也此もの 語のさま妙なり此巻 は源氏壱部のかん文なり 六条のみやすところより おくり給ふ    御歌に うきめかる  もしほ  伊勢をの  たる あまを     てふ  おもひ   須磨の   やれ    浦         にて 【裏表紙】 【表紙】 明石 身をつくし 七 【右ページ・白紙】 【蔵書印・東京学芸大学図書】 【鉛筆で書き込みあり・913.36 GEN】 【鉛筆で書き込みあり・10911789-7】 【左ページ・挿絵内】 【源氏香図】 あかし      【源氏香図】 澪標  あかし 此巻は歌と詞を名とせり 源氏廿六才の三月より 廿七才の秋都へかへり給ふ事 まてあり源氏すまより あかしへうつり給ひ入道のむ すめあかしの上にあひなれ 給ふによりあかしの巻と いふなり此歌のこゝろは 源氏みやこのかたをこひ しく思召てよみ給ふ 歌なり源氏の    御うたに 秋の夜の    見  つきけの   む   こまよ    わかこふる     雲井を       かけれ 時の  まも  みをつくし 此巻は歌をもつて名と せり源氏廿七才明石より 帰京廿八才の十一月まて の事有廿七才は明石の 巻の末と同し事なり 源氏帰京の御悦ひにすみ  【住吉大社】 吉にまうて給ふ折ふし あかしの上にまいりあひよみ 給ふ御歌に 〽身をつくし こふるしるしにこゝまても めくりあひけるゑにはふ かしなあかしの上かへし の御うたに かすならて   なにはの      ことも かひ  なきに   なに身をつくし   おもひそめけん 【白紙ページ】 【裏表紙】 【表紙】 蓬生 関屋 八 【右ページ・白紙】 【蔵書印・東京学芸大学図書】 【鉛筆で書き込みあり・913.36 GEN】 【鉛筆で書き込みあり・10911789-8】 【左ページ・挿絵内】 【源氏香図】 よもきふ      【源氏香図】 せきや  よもきふ 此巻は歌にも詞にもつゝき たる語はなしよもきとは いはれぬによりて蓬生と いふ也生の字は付字也かやう に字を付ていふ事此もの かたりのならひ也源氏廿四才 の四月の事也此時花ちる 里へおはすとて末つむ花 のゐ給ふ所あれはてゝにわ によもぎしげりてつゆ ふかゝりけるをうちはら はせて入給ふとて源氏の 御うたに たづね   ふかき  ても    よもき われこそ      が とはめ     もとの  道も      心を   なく  せきや 此巻は詞をもつて名とす せきやより里をはづれ 出たるとあるによりて也 源氏廿八才の九月の事也 石山へまうて給ふ折ふし うつせみの君にせき山にて あひ給ひしかは弟の小君 がまいりたるに忍ひて御文 あり歌に 〽わくらはに ゆきあふみぢとたのみし もなをかひなしやしほ ならぬうみ   うつせみの     かへしに あふ坂のせきや いかなるせきなれは しけきなけきの 中をわくらん 【裏表紙】 【表紙】 絵合 松風  九 【右ページ・白紙】 【蔵書印・東京学芸大学図書】 【鉛筆で書き込みあり・913.36 GEN】 【鉛筆で書き込みあり・10911789-9】 【左ページ・挿絵内】 【源氏香図】 絵合      【源氏香図】 松風  ゑあわせ 此巻は詞をもつて名とす 此時のみかとは源氏のまう け給ふ藤つほの御子也絵合 とつゝきたるはなきにや 左右の御絵なとありみ かとゑをこのませ給ふに よりゑあわせといふ事也 源氏三十才のとき三月に ゑあわせ有源氏須磨にて かきおき給ひし御絵を むらさきの上にはしめ て見せ給ふと也源氏の       御歌に うきめ    なみた   みし      か    そのおり 過   よりも  にし  けふは   かたに   また     かへる  松かせ 此巻は歌と詞にて名と せる也源氏卅才の秋の事 有源氏あかしにてあひ 給ひし入道のむすめ姫 君をうみ給ひて三とせに 【三年】 なりたりけるを京にのほり 給へと仰つかはされけれはあか しの上御母君共に大井川 のあたりにしるへあれは家 つくりしてすみ給ふ時 ことをしらへ給ふに松風 のひゝきにあひたれはあ ま君のうたに 身をかへて   ひとりかへれる ふるさとに聞しに  にたる    松風そふく 【裏表紙】 【表紙】 乙女 玉かつら  十一 【右ページ・白紙】 【蔵書印・東京学芸大学図書】 【鉛筆で書き込みあり・913.36 GEN】 【鉛筆で書き込みあり・10911789-10】 【左ページ・挿絵内】 【源氏香図】 乙女      【源氏香図】 玉かつら  乙女 此巻は歌と詞をもつて 名とせり源氏卅二の四月 より卅四の十月まて見へ たり此乙女といふ事は 五節の舞姫也五せつとは むかし清見はらのてん王 ことをたんし給ふ時雲 の中に天女のすかたあら はれ御ことのしらへに合 【御琴の調べに】 せうたひ袖を五たひひる かへす也これをうつして 毎年十一月にまひ姫五 人出してまはせらるゝ事 なり源氏の御うたに     ふるきよの      とも 乙女子か  よはひ  神さひ   へぬ   ぬらし   れは    あまつそて  玉かつら 此巻は歌をもつて名と せり六条院卅五才の三月 より十二月まての事有 玉かつらとは夕かほの上 の御子也四才の時つくしへ  【筑紫へ下り】 くたり廿三の年京へ登り 給ふ夕かほの上に合せ給へ とはつせにきくはんをか   【初瀬に祈願をかけ】 け給へは夕かほのめしつかひ の右近といふ人に行あひ給ひ 右近源氏へ申てむかへ奉り ぬ後にひげぐろの北のかた になりて玉かつらの内侍 と申せし也御うたに 恋わたる   身はそれなれと 玉かつらいかなるすちを 尋  きぬらむ 【裏表紙】 【表紙】 初音 小蝶  十二 【右ページ・白紙】 【蔵書印・東京学芸大学図書】 【鉛筆で書き込みあり・913.36 GEN】 【鉛筆で書き込みあり・10911789-11】 【左ページ・挿絵内】 【源氏香図】 はつね      【源氏香図】 こてふ  はつね 此巻は歌と詞をもつて 名とす源氏卅六才の 正月の事也此はつねと いふはあかしの上の姫君を 紫の上の御子になして おはしましけるが久しく たいめんなきゆへこひしく 思召て何とそたいめんな く共せめて御返事のはつ ねをきゝたきとて正月 朔日にかの方へあかしの上 より御文まいらせ給ふ時の    御うたに 年月をまつに ひかれてふる人わ けふ鶯の   はつね     きかせよ  こてふ 此巻は歌と詞をもつて 名とす源氏卅六才の三 四月の事見へたり詞には てふとはかりあつて小てふ とつゝきたる詞はなしあん するにみやす所の御娘に秋 このむ中宮とて有中宮は 秋をこそ待給ふらめ秋待 むしといふ心はさためて春 のこてふをうとく見給ふら んよつてこてふと出たる もの歟    歌に 花そのゝ   こてふをさへや した草に秋まつ  むしは   うとく見るらん 【裏表紙】 【表紙】 蛍 とこなつ  十三 【右ページ・白紙】 【蔵書印・東京学芸大学図書】 【鉛筆で書き込みあり・913.36 GEN】 【鉛筆で書き込みあり・10911789-12】 【左ページ・挿絵内】 【源氏香図】 蛍      【源氏香図】 とこなつ  ほたる 此巻は歌と詞をもつて 名とす源氏卅六才の五月 の事也源氏玉かつらをむかへ 給ひ御かたちうつくしきを 兵部卿に見せ申さんとて ほたるをあつめほたる火の ひかりに付て見せ給ひけれ は兵部卿の御歌に〽なくこゑ もきこへぬ虫の思ひたに人 のけつにはきゆる物かは此 兵部卿と申は源氏の御おい 子也玉かつらの     かへしに 声はせて  なる  身をのみ  らめ    こかす ほたる   こそいふより    まさるおもひ   とこなつ  此巻は歌と詞をもつて 名とす源氏卅六才の夏 の事也詞にはなてしこと 有一物二名也玉かつらの すませ給ふ西のたいといふ  【西の対】 所の庭になてしこいろ〳〵 さきみたれたるに夕かほの事 を思召出し給ひてよみ給ふ 歌也なてしこは子といふ心也 玉かつらは子也夕かほは母頭 の中将の事をあらはしたら ばかならすたつね給ふへし との御事歟    うたに なてしこの  とこなつかしき 色を見ば  もとのかきねを    人や尋む 【白紙】 【裏表紙】 【表紙】 かゝり火 野分  十四 【右ページ・白紙】 【蔵書印・東京学芸大学図書】 【鉛筆で書き込みあり・913.36 GEN】 【鉛筆で書き込みあり・10911789-13】 【左ページ・挿絵内】 【源氏香図】 かゝり火      【源氏香図】 野分   かゝり火 此巻は哥と詞をもつて 名とす源氏卅六才の秋の 初の事見へたり源氏玉かつ らの君を御子にしてもて なし給ふといへ共まことの 御子ならねは夕かほの御かは りにと思召して御ことを まくらにそひふし給へり かゝり火は立やうなれ共 きゆるもの也源氏我か思 ひの火はきゆる時もなき といふ御心にてよみ給ふ     御うたに かゝり火に  たちそふ   恋のけふり 世には   こそ   たへせぬ    ほのほ成らん   野分 此巻は詞をもつて名とす 源氏卅六才の八月の事也 此巻の野分といふ事は巻 の詞に野分例の年より もおとろ〳〵しくなと あるをもつて名とす秋の 大風をも野分といふ也 源氏の御子夕きりの大将 御いとこ雲井のかりと申 姫君に御心をかけ給ひてか やうに野分の風さはかしき にもわするゝまもなしとの 御心にてよみ給ふ     御うたに 風さはき    むら雲まよふ 夕べにも    わするゝ      まなく わすら   れぬ君 【白紙】 【裏表紙】 【表紙】 御幸 藤はかま 十五 【右ページ・白紙】 【蔵書印・東京学芸大学図書】 【鉛筆で書き込みあり・913.36 GEN】 【鉛筆で書き込みあり・10911789-14】 【左ページ・挿絵内】 【源氏香図】 御幸      【源氏香図】 藤ばかま  みゆき 此巻は歌をもつて名とす 源氏卅六の十二月より卅七の 二月まての事也此行幸は大 原野の行幸也天子のをぎ やうがう院のをごかうといふ しかれともいつれもみゆきと よむへし出御なるさき〳〵 さいわいあるによりいふなり みかとせん例を思召御かり のみゆき也かゝるめてたき 行幸なりとて源氏の 御うたに をしほ山  みゆきつも  跡や    れる   なから 松はらに      ん  けふはかりなる   藤はかま 此巻は歌と詞を名とす源氏 卅七の八月九月の事あり詞 にはらにと有らんなれとも かならすはぬる字をにと書 也玉かつらの内侍西のたいに おはしける比らにの花おも しろきをみすのつまより さしいれてよみ給ふ歌也これ 藤はかまの事歟藤はかま は草也ふぢ衣はふくの内 の御衣也よみ合せの心に よみ給へり    御うたに 同し野ゝつゆにや ぬるるふぢはかま あはれはかけよ    かごと      はかりも 【白紙】 【裏表紙】 【表紙】 真木柱 梅かえ 十六 【右ページ・白紙】 【蔵書印・東京学芸大学図書】 【鉛筆で書き込みあり・913.36 GEN】 【鉛筆で書き込みあり・10911789-15】 【左ページ・挿絵内】 【源氏香図】 真木柱      【源氏香図】 梅かえ   まきはしら 此巻は歌をもつて名とす 源氏卅七才の十月より 卅八の秋まての事有まき はしらといふはひげぐろの北 のかたものゝけつきてさとへかへ り給はん時御むすめ十二三 におはせしか歌を書てまき のはしらにはさみ置給ふ これによつてまきはしらの 君といへる也今宿をはな れゆく共すみなれしはし らよわれをわするなと の心にてよめる      うたに 今はとて   宿かれぬ なれ   とも  きつる     まきの 我を   はしらよ   わするな   梅かえ 此巻は詞をもつて名とす 源氏卅九才の正二月の事也 源氏の君たきものあわせし 給ふ事有梅かへいふは弁の少 将ひやうしをとり梅かへを うたひ給ふ梅かへとは催馬楽 をうたへる事也又せんさいゐん 源氏にしたかひ給はぬ御かた ゆへ梅のかれ枝には匂ひとま るまし君の御うつしある そてにはふかくとまるへし とひけしてよみ給ふ 御うたに   袖に   ねと  らむ  とまら うつ  枝に    にし    めや   ちり    しま 花のかは  あさく 【左ページは中段、上段、下段の順に左上から右下へ読む】 【裏表紙】 【表紙】 【右ページ・白紙】 【蔵書印・東京学芸大学図書】 【鉛筆で書き込みあり・913.36 GEN】 【鉛筆で書き込みあり・10911789-16】 【左ページ・挿絵内】 【源氏香図】 藤のうら葉      【源氏香図】 若な上  藤のうら葉 此巻は詞をもつて名とす 源氏卅九の三月より十二月 まての事見へたり雲井のかり の姫君を源氏の御子夕霧 思ひ染給ひけれともちゝ のあせち大なこんゆるし 給はすさてしもあらはゆる し給はんものとも思召給ひ 藤の花さかりに中将との をよひ給ひて御さかつきの うへにて口すさひ給ふ     御うたに 【左ページ】 春日さす ふぢのうら ばのうらとけて   君しおもはゝ   われもたのまん  若な上 此巻は哥詞をもつて名とす 源氏卅九の春よりかけり 女三の宮裳着の事有四十 戈の賀の事《割書:幷|》明石中宮の くわいにんの事四十一戈の三月 中宮御さんの事以上三ヶ年の 事有三月廿三日子の日に玉 かつらの内侍御子たちを引 つれ源氏の院の御方へまいり 御年を悦ひ給ふ御うたに 〽若ばさす野への小松を引つ れてもとの岩根をいのるけふ哉 とよみ給ふ又若なまつり給ふ共 あり又源氏の御うたに 小松はら   すゑの     よはひに ひかれてや  野べの若なも   としを【注】つむへき 【この「を」は筆者の書き癖です。108コマ3行目、109コマ2行目などに見られます。】 【裏表紙】 【表紙】 わかな下 柏木 十八 【右ページ・白紙】 【蔵書印・東京学芸大学図書】 【鉛筆で書き込みあり・913.36GEN】 【鉛筆で書き込みあり・10911789-17】 【左ページ・挿絵内】 【源氏香図】 わかな下      【源氏香図】 柏木  若な下 此巻は詞をもつて名とす 此巻は上下に分てれとも若 なを本とする一つ事也下は 朱萑院の御賀也源氏四十 一の三月より四十七の末に いたれり然共四十二より五まて 此四ヶ年の事此物語に見へ す源氏の北の方女三の宮の かはせ給ふねこのつなにて 御みす上りそのひまより柏 木のゑもんかいまみへ小侍従と云 女房を頼ちきりをむすひ給ひ 柏木よりやり給ふ御文源氏 見付給ふ事あり御哥に 夕やみは道たと〳〵 し月まちて かへれ我せこ そのまにもみむ  かしは木 此巻は哥と詞とをもつて 名とす源氏四十八の正月より 秋の末までの事有此年に /薫(かほる)たんじやうし侍る柏木の ゑもん女三の宮の事ゆへ病 となり今をかきりとなり 身はつゆけふりとなりぬ共 宮におもひのあさからす まうしうのふかき事を 小侍従をよひみやへ歌 をかきてまいらせらる   御うたに    なをや残らん   たへぬおもひの 今はとて   もえんけふりも    むすほゝれ 【裏表紙】 【表紙】 夕きり 御法 廿 【右ページ・白紙】 【蔵書印・東京学芸大学図書】 【鉛筆で書き込みあり・913.36GEN】 【鉛筆で書き込みあり・10911789-18】 【左ページ・挿絵内】 【源氏香図】 夕きり      【源氏香図】 御法  夕きり 此巻は哥をもつて名とす 源氏五十才鈴虫は八月十五 夜まて也此巻は鈴虫の末 より十二月まてかけり夕 きりの大将おちはの宮のか たへ尋まいり此宮に心をかけ 帰ることをわすれてよめる 御哥に 〽︎山里のあわれを そふる夕きりにたち出んかた もなきこゝ地しておちはの 宮御かへし 〽︎山かつのまかき をこめて立きりも心そら成 人はとゝめすことはにはたゝ きりと計あり       して 山さとの   あはれをそふる 夕霧に立出んかたも     なきこゝち  御法 此巻は哥をもつて名とす 源氏五十一才の春より秋ま ての事有紫の上御わつらひ のため千部の法花経くやう たきゝのぎやうどうなと有 たきゝのきやうだうとは行 基菩薩の御哥僧たちと なへ花おけをおひて御法事 さま〳〵有紫の上かきり ちかきと思召花ちる里の 御方へ御哥ありほとなくむ らさきの上此秋うせさせ 給ふ   御哥に たえぬべき御法 なからそたのまるゝ 世々にとむ すふ中の契を 【裏表紙】 【表紙】 幻 匂みや 【右ページ・白紙】 【蔵書印・東京学芸大学図書】 【鉛筆で書き込みあり・913.36GEN】 【鉛筆で書き込みあり・10911789-19】 【左ページ・挿絵内】 【源氏香図】 幻      【源氏香図】 匂宮  まほろし 此巻は哥を名とす源氏五十 二才の正月より十二月まて しるせり源氏紫の上の事忘 かたき心を月日にそへて次第〳〵 にあらはし侍る源氏も紫上 の事をおもひてついにかくれさせ 給ふを雲かくれといへり幻とは 幻術(ケンシユツ)するをいふ幻術とは へんけしてこくうにひぎやうする 事をいふ唐の玄宗皇帝の使 道士幻術をもつて楊貴妃【妑は誤】のこん はくを求し事有源氏鳫の とふをみてかの道士か事を 思ひてよめる御うたに 大ぞらをかよふ    まほろし ゆめにだに    見えこぬ玉の  ゆくゑ     たつねよ  匂宮 此巻と幻の間に雲隠の巻 名計有て詞はなし源氏かくれ 給ふ事なれは心あり此巻は詞を もつて名とす匂宮は匂兵部卿 共又薫大将共いへり柏木ゑ もん女三の宮にかよひて出来 給ひし御子也幻の巻にては 五才也今年十四才にて元服 の事有六才より十三まての 事雲かくれの中にゆつりたる 也惣して宿木まての年記雑 乱せり此五十四帖皆亦有亦空 門の心也好色の道も終には仏道 に帰するなかたち也と天台 の法文にてかけりかほるは 源氏四十八の年子となし 給ふかほるの      御歌に     しらぬ我身そ    めもはても   いかにしてはし  たれにとはまし おほつかな 【左丁 白紙】 【裏表紙】 【表紙】 かう梅 竹川 廿二 【右ページ・白紙】 【蔵書印・東京学芸大学図書】 【鉛筆で書き込みあり・913.36GEN】 【鉛筆で書き込みあり・10911789-20】 【左ページ・挿絵内】 【源氏香図】 紅梅      【源氏香図】 竹川  かう梅 此巻は詞をもつて名とす のきちかき紅梅とあり此 巻は柏木の御おとゝ子にあ せち大納言とて代にさかへ 給へり此北のかたはひけくろの 御むすめほたる兵部卿の宮 に参り給ひしか宮かくれ給ひ し後大納言の北の方になり 給ふ蛍兵部卿の姫君一 ̄ト かた おはしける此御庭にうつくし き紅梅有まゝ父あせち 大納言此梅の枝を折て匂兵 部卿のもとへ文書て奉り 給ふ御うたに 心ありて風の匂はす そのゝ梅にまつ 鶯のとはすや あるへき  竹川 此巻は哥と詞をもつて名とす かほるの大将十四計と書て 次の年の正月より七月ま て書て又次の年の事有此 巻にかほる四位侍従十四五 計といへり十四の二月に侍従 に任せらる又中納言は廿二の 年也ひけくろうせ給ふ後玉 かつらかほるをむこにと思召 かほるの御かたち姫君にあわ せはやと思召折から姫君方 へかほるよりの御うたに 竹川の  はしうち   いてしひとふしに ふかき心のそこは しりきや 【裏表紙】 【表紙】 はし姫 椎本 廿三 【右ページ・白紙】 【蔵書印・東京学芸大学図書】 【鉛筆で書き込みあり・913.36GEN】 【鉛筆で書き込みあり・10911789-21】 【左ページ・挿絵内】 【源氏香図】 橋姫      【源氏香図】 椎本  はし姫 此巻は歌をもつて名とす 宇治といふ事/菟道(ウヂ)あり 応神天皇の皇子/大鷦鷯(ヲヽサヾキ) /命(みこと)と申をさしおき弟の 菟道を春宮に立給ふ兄の 大さゞきは父御定なれは 弟即位あれとて誰彼に引 籠給ふ弟菟道は兄に位に 付給へとて宇治へ引退き給ひ 久敷生て天下を煩はさしとて 然【態の誤ヵ】とかくれ給ふ是宇治の宮共 又一名うはそく共いふ以而大さゞ き終に位に付給ふを仁徳天皇 と申也此時かほるの御うたに はし姫の心をくみ てたかせさすさほ のしつくに袖そ    ぬれぬる  しゐか本 此巻は歌をもつて名とす 橋姫の次の年也かほる宰相 に成給ひて四年め也薫廿二 の春より廿三の夏まての 事也かほるは宇治の宮へ参り給へ は宮悦てなからん跡の事なと かす〳〵申置給へはかほるもか はらぬ心さしをとの給へは宮の 御かたに 〽︎われならて【注】草の 【注 「われなくて」とあるところ。】 廬はあれぬ共此一ことはかれ しとそ思ふ其後宮は念仏 せんとてしつか成山寺に籠つい にむなしく成給ふかほるはあれ たる跡を御らんしてかなしく 思召てよみ給ふ     御うたに 〽︎たちよらむかけとたのみ ししゐか本むなしき とこになりにけるかな 【裏表紙】 【表紙】 総角 さわらひ 廿四 【右ページ・白紙】 【蔵書印・東京学芸大学図書】 【鉛筆で書き込みあり・913.36GEN】 【鉛筆で書き込みあり・10911789-22】 【左ページ・挿絵内】 【源氏香図】 総角      【源氏香図】 早蕨  あけまき 此巻は歌と詞ともつてもつて名とす かほる廿三の秋より冬まて の事也あけまきといふは車に 糸にて組かけるをもいふ又童 のかみをからわけにゆひたる をもいふ也宇治の宮に姫君有 宮の御仏事をいとなみ給ふに かほるも参り名号のいと引 みたりてむすひあけたるを見 てよめる哥也名号の糸とは 名香糸と書て香机の四角 にかけたる糸也則あけまき 也かほるの       御うたに あけまきに   なかき契を    むすひこめ おなしところに    よりもあはなん  さわらひ 此巻は哥と詞を持つて名と すかほる廿四才の春の事也 宇治の宮うせさせ給ふ時ま てもたのみに思召ひじり のばうあり中の姫君あね 君におくれ給ひたゝひとり おはしけるにかのひしりわら ひつく〳〵しなとかこに入 奉るとて哥に 〽︎君にとて あまたの春をつみしかと つねをわすれぬはつわらひ なり姫君の御かへし この春は    さ  たれにか    わら    見せん    ひ      なき人の 峯      かたみに  の      つめる 【裏表紙】 【表紙】 やとり木 東屋 廿五 【右ページ・白紙】 【蔵書印・東京学芸大学図書】 【鉛筆で書き込みあり・913.36GEN】 【鉛筆で書き込みあり・10911789-23】 【左ページ・挿絵内】 【源氏香図】 宿木      【源氏香図】 東屋  やとり木 此巻は哥をもつて名とす薫 廿四の事有宇治のあね君 うせ給ひて後かほる大将なけ き忘給はす中の君は匂宮の 北の方に成京におはしませは 宇治のやとりあれはてん事な けきかの北の方と仰合寺に なし給ふ此時弁の君といひし人 姫君にわかれ給ひ尼に成て 有しを此寺もりになし給ふ有 時おはしてよみ給ふ哥也やとり木 とは木のほやといふ物也桑の木 生し又楓の木なと生す是宿る 木也つたの類を宿木といふは誤也 やとり木と   いかに  おもひ    さひ いですは    し 此もとの    から たひねも    まし  東屋 此巻は哥と詞をもつて名と す薫廿五の八九月の事有 東やとは/四阿(アツマヤ)四方へあまたり のおつるやうにしたる屋也ひた ちのかみといへる人有先はゝの 子五六人有中にうき舟の姫 君を左近の少将といひし人 のそみけれとひたちのまゝ娘 ゆへなかたちたへけれははゝ君 めのと二人共になけき姫君を 宇治の中の君にあつけ三 条のあたりに小家有忍は せ置けりかほる其所へおはし ける時よめる御うたに さしとむるむく らやしけきあつ ま屋のあまりほと ふるあまそゝき        かな 【裏表紙】 【表紙】 浮舟 かけろふ 廿六 【右ページ・白紙】 【蔵書印・東京学芸大学図書】 【鉛筆で書き込みあり・913.36GEN】 【鉛筆で書き込みあり・10911789-24】 【左ページ・挿絵内】 【源氏香図】 浮舟      【源氏香図】 蜻蛉  うき舟 此巻は哥をもつて名とす薫 二六才の正月より三月まて の事有匂宮はうき舟にあひ 給ひし事忘給はすかほるはう き舟の君と京にすませ はやと三条ちかき所に家作 らせ給へり匂宮の心に思召は かほるがうき舟をかくし置たる とてたつねきゝてかほるににせ て夜には入来り此たひはしつか 成所にてちきらんと舟にて 出給ひしれる所の家にてか たらひ給ふ     御うたに 立花の小島の   色はかはらじを 此うき舟ぞ 行衛しられぬ  かけろふ 此巻は歌と詞をもつて名とす 薫廿六才也うき舟はかす〳〵 のもの思ひよりゆくへしれすう せ給ふ宇治には匂宮あまりなけ きにしつみうき舟の召つかひ 侍■といふ女房を浮舟のかた みと思ひつかひ給ふ或夕くれにかけ ろふのとひちかふをみてよめる ■也かけろふとは蜉蝣蜻蛉(フユウセイレイ) 陽焔(ヤウヱン) 有此巻は蜉蝣を いふ也あしたに生し夕■に しすとういふはかなきたとへ也   御うたに ありとみて  手にはとられす みれは又行衛も  しらすきえし    かけろふ 【裏表紙】