文久二戌年       神喜板  しんぱん      ない物づくし 又もない〳〵ない物は      やぼと/化物(ばけもの)お江戸にない 御上のせいとにそつがない    今としのはしかはほうづがない【限りがない】 なれども此頃もうすへない    ふうふではしかはしようがない 女ぼがあつてもつまらない    七十五日はやられない やつたら大へん命がない     しくじるお方も/少(すくな)くない ていしゆすきならしがたがない  それでもせけんへみつともない しんるいゑんしやへめんぼくない がまんをするより外はない はしかのあけぐ【「あげく」ヵ】はくう物ない   おつけ【おつゆ】にたくわんむまくない さかなも当ぶんくわれない    お酒はなほさらのまれない やらかいやつてはたまらない   それではせがれもなさけない