【表紙】  器用【手書き 赤字】 【題簽】 《題:《割書:増補|頭書》訓蒙図彙大成 五》 【右丁】   十冊之内 【左丁】 《題:頭書増補訓蒙図彙(かしらがきぞうほきんもうづゐ)巻之九》    器用(きよう) 《割書:注前(ちうまえ)に見(み)へたり》 【上段】 ○幢(とう)は翳(ゑい)なり旗(き)?(き)のた ぐひなり楚(そ)には幬(とう)といふ 関(くはん)の東西(とうせい)には幢(とう)といふ ○銅雀幢(とうしやくとう)は幢(はた)のかしら に雀(すゞめ)を銅(あかゞね)にてつくりたる なり此(この)幢(はた)にてまねくとき ははやくきたること雀(すゞめ)のごと くなりとかや ○幡(はた)は兵家(けいか)に立(たつ)るはたなり 源家(けんけ)は白(しろ)平家(けいけ)は紅(もみ)藤氏(ふぢうち) は水色(もづいろ)橘家(たちばなけ)は黄色(きいろ)なり 其外(そのほか)は家々(いゑ〳〵)のこのみによるなり 【下段挿絵】 幢(とう)《割書:はた》 羽葆幢(うはうとう) 銅雀幢(とうじやくとう) 纛(たう)《割書:はた》 幡(ばん)《割書:はた》 兵幡(へいはん) 仏幡(ぶつはん) 【右丁上段】 ○纛(とう)は皂糸(しろいと)にてつくる 蚩尤(はうゆう)が首(くび)ににたり黄帝(くはうてい) のとき玄女(けんぢよ)これをつくる ○旗(き)ははたの惣名(さうしやう)なりと 黄帝(くはうてい)よりはじまる軍将(くんしやう) のたつる所なり幟(し)ははた じるし旒(りう)ははたあしなり ○冑(かぶと)は兜鍪(とうほう)といふ黄帝(くはうてい) これをつくり給ふ𩊱(しころ)の板(いた) の数(かず)にて何(なん)𩊱(まい)冑(かぶと)といふ ○鎧(よろひ)は金物(かなもの)は十三所/上座(しやうざ)上(あげ) 巻(まき)矢返(やがへし)志加(しか)の鐶(くはん)水呑(みづのみ)の 鐶(くはん)再幣付(さいはいづけ)等(とう)こと〴〵 くそなはれり故(ゆへ)に具足(ぐそく) といふ ○鉾(はう)は長(なが)さ二/丈(じやう)兵車(へいしや)に 【左丁上段】 たつるものなり矛(はう)同 ○鎗(やり)は応仁(おうにん)文明(ぶんめい)の比(ころ)より つくり始(はじめ)たり唐(もろこし)にては黄(くはう) 帝(てい)蚩尤(しゆう)たゝかひの時(とき)始(はじま)る ○鉞(ゑつ)は斧(をの)の大(をほい)なるものなり 重(おも)さ八/斤(きん)あり柯(え)大なり ○刀(かたな)は黄帝(くはうてい)首山(しゆさん)の銅(あかがね)を とつて始(はじめて)て鋳(い)て刀(かたな)とす ○短刀(たんたう)は能太知(のだち)今(いま)いふわき ざしなり ○楯(たて)は榎木(ゑのき)樟木(くすのき)等(とう)を もつて作(つく)るあつさ三四五 寸はゞ一二尺の内(うち)外(そと)長(ながさ)三 五尺/盾干(しゆんかん)樐牌(かつえい)並同 ○柄(へい)は剣頭(けんとう)なりつかといふ 鎗(やり)長刀(なぎなた)にてはゑといふなり 【右丁下段挿絵】 旗(き)《割書:はた》 幟(し)《割書:はたじるし》 冑(ちう)《割書:かぶと》 鎧(き)《割書:よろひ》 鉾(ほう)《割書:ほこ》 鎗(さう)《割書:やり》 鈇(ふ)《割書:をの》 鉞(ゑつ)《割書:まさかり》 【左丁下段挿絵】 刀(たう)《割書:かたな》 長刀《割書:ながたち》 短刀《割書:のだち》 楯(しゆん)《割書:たて》 柄(へい)《割書:ゑがら》 《割書:つか から え かひ》 䂎(さん)《割書:いしづき》 鐏《割書:そん》 鐓(けう) 戈(くわ)《割書:ほこ》  戟(げき)《割書:ほこ》 【右丁上段】 桿(かん)同 ○鐏(そん)は柄(え)の底(なみ)の鋭(するど)なるを云 ○鐓(たい)は柄(え)の底(なみ)の平(たいら)なるを いふともにいしつき ○戈(くは)は双(ならび)たる枝(ゑだ)あるを戟(げき)と し単枝(ひとつゑだ)を戈(くは)といふ ○戟(けき)は両辺(りやうへん)へよこに出(いで)たる刃(やいば) 長(なが)さ六/寸(すん)中(なか)の刃(やいば)長(なが)さ七寸 半(はん)よこの刃(やいば)柄(え)にまじはる 所/長(ながさ)四/寸(すん)半(はん)ひろさ寸(すん)半(はん) ○剣(けん)は葛天盧(かつてんろ)の山(やま)をあばひ て金(きん)を出(いだ)す蚩尤(しゆう)うけて 剣(けん)をつくるこれ剣(けん)のはじ めなり ○鞘(さや)は鞩(さや)とも遰(さや)とも書(かく)べし 刀室(とうしつ)なり𩍜(たく)䪝(ご)はをひとり 【左丁上段】 鏢(へう)はこじり ○鐔(たん)は剣鼻(けんび)人(ひと)のにきる所 の下にあるよこに出るもの也 鍔(がく)同 ○欛(は)は杷(つか)柄(つか)同/琫(こいぐち)鐺栗(こじりくり) 形(かた)切羽(こつは)反角(かへりつの)裏瓦(うらのかはら) ○矢(や)は牟夷(はうゐ)といふ人/初(はじめ)てつくる 箭(せん)同/矢(や)はたけ三/尺(しやく)羽(は)六/寸(すん) 箆(の)簳(から)筈(はづ) ○鏃(やじり)は鏑根(やしりね)等(とう)の名(な)あり そのほか鴈(かり)また蟇目(ひきめ)猪(ゐの) 目(め)等(とう)あり ○靫(うつぼ)は箭(や)をもる室(いへ)なり又 箭(や)を入(いる)る所を空(うつ)といふ上(うへ)に 穂(ほ)を付(つけ)たるゆへ空穂(うつぼ)と云 ○平箙(ひらやなぐひ)はかたち平(たいら)なるゆへ 【右丁下段挿絵】 剣《割書:けん|つるぎ》 鞘(せう)《割書:さや》 鐔(たん)《割書:つば》 欛(は)《割書:つか》 矢(し)《割書:や》 鏃(ぞく)《割書:やじり》 靫(た)《割書:うつぼ》 【右丁下段挿絵】 箙(ふく)《割書:やなぐひ》 《割書:ひらやなぐひ》 《割書:つぼやなぐい》 《割書:ゑびら》  垛(た)《割書:あづち》 的(てき)《割書:まと》 韘(てう)《割書:ゆがけ》 韝(こう)《割書:ゆごて》 弓(きう)《割書:ゆみ》 彇(ゆはづ) 弣(ゆづか) 弦(ゆづる) 幹(ゆがら) 弓袋(ゆぶくろ) 銃(しう)《割書:てつはう》 【右丁上段】 の名(な)なり弓矢(ゆみや)を入(いる)る ものなり ○壺箙(つぼやなぐゐ)は弓矢(ゆみや)をもる物 なりかたち壺(つぼ)のごとくな るゆへつぼやなぐゐと名(な) づくゑひらともいふ ○箙(ゑびら)は弓矢(ゆみや)をもるうつは 物(もの)なり獣皮(けだものゝかわ)をもつてつく る胡籙(やなぐゐ)も同(おな)じ箙(ゑびら)に矢(や) をさす事(こと)廿四すじ又五 筋(すぢ)もさすなり ○弓(ゆみ)は黄帝(くはうてい)つくり始(はじめ)給ふ 日本(につほん)にては神代(かみよ)より始(はじま)る ○的(まと)は堯(ぎやう)舜(しゆん)のときより はじまる大的(おほまと)小的(こまと)あり 𢁿(せい)臬(けつ)同し 【左丁上段】 ○韘(ゆがけ)は的(まと)韘(ゆがけ)は右(みぎ)の手(て)ばかりに かくるなり三/指(し)にさすは略(りやく) 用(よう)なり弽(せう)同 ○韝(ゆごて)は射(ゐる)とき左(ひだり)の臂(ひぢ)を つゝむ弦(つる)を利(り)するものなり 捍(かん)同 ○垛(た)は的(まと)をたつるあづち なり又/垜(だ)とも書べし 寸法(すんほう)射家(しやけ)に定(さだまり)あり ○銃(じう)は鉄炮(てつはう)なり鳥銃(てうじう)と いふ波羅多国(はらだごく)の仏来釈(ぶつらいしやく) 古(こ)といふものはじめて作(つく)る ○砲(はう)は機(き)をもつて石(いし)を発(はつ) して城(しろ)をせむるの具(ぐ)なり ○長剣(ちやうけん)今(いま)いふ長刀(なぎなた)なり 薙刀(なぎなた)とも偃月刀(なぎなた)眉尖刀(なぎなた) 【右丁下段挿絵】 砲(はう)《割書:いしはじき》 長剣(ちやうけん)《割書:なぎなた》 鋼叉(かうさ)《割書:十もんじ》 鉄把(てつは)《割書:つくぼう》 弩(と)《割書:おほゆみ》 鉄鞭(てつへん)《割書:かなむち》 火箭(くわせん)《割書:ひや》 【左丁下段挿絵】 鞍(あん)《割書:くら》 鐙(とう)《割書:あぶみ》 銜(かん)《割書:くつわ》 鑣(へう)《割書:くつわのかゞみ》 鞦(しう)《割書:しりがい》 䪊(りう)《割書:おもがい》 鞭(べん)《割書:むち》 【右丁上段】 とも書なり ○鋼叉(かうさ)今(いま)いふ十/文字(もんじ)の鎗(やり) なり又/鐺釵(とうさ)といふ ○鉄把(てつは)は釩棒(つくばう)鉄鈀(てつは)同 ○弩(と)は黄帝(くはうてい)つくり給ふ又 楚琴(そきん)氏(し)始(はじめ)てつくるともいへ り弓(ゆみ)をよこたへ臂(ひぢ)につけ機(き) をほどこし郭(くはく)をもふけ是(これ) に加(くはふ)る小/力(ちから)をもつてす ○火箭(ひや)は敵(てき)の陣屋(ぢんや)へ射(ゐ) てやぐらをやくものなり炮(はう) 樚(ろく)火矢(ひや)大国(たいこく)火矢(ひや)などゝて あるなり ○鉄鞭(てつべん)は雑色(ざうしき)のもつかな ぼうなりかなぶちといふ ○鞍(くら)は鞌(あん)【原文は安の代わりに穴冠】同/鞍橋(あんきやう)くらぼね 【左丁上段】 鞍(くら)は三/代(たい)のとき制(せい)す鞍(くら)に 名(な)所(ところ)多(おほ)し今(いま)略(りやくす)_レ之(これを)鞍褥(あんにく) くらしき鞍被(あんひ)は鞍(くら)おほひ 綏(すい)はしほてなり。 ○鐙(あふみ)は鐙(あぶみ)の頸(くび)逆靻(ちかしかわ)をかく る所を鉸具(かく)といふ頸(くび)の 輪(わ)を鉸具頭(かぐがしら)といふ ○銜(かん)はくゝみ又くつばみとも いふ馬銜(ばかん)なり又は馬勒(ばろく)啣(かん) 鉄(てつ)ならびに同し馬口(ばこう)の うちにあり俗(ぞく)にくゝみと云 ○鑣(せう)は馬口(ばこう)のほかにあり俗(ぞく) にくつわのかゞみといふ又/響(きやう) 鉄(てつ)ともいふ轡(ひ)同 ○鞦(しりがい)は馬(むま)の尾(を)の間(あいだ)をはさ むものなり䋺(しう)同/当胷(むなかい) 【右丁下段挿絵】 韁(きやう)《割書:たづな》 屧脊(せうせき)《割書:はだつけ》 障泥(しやうでい)《割書:あをり》 鉗(けん)《割書:くびがね》 枷(か)《割書:くびかし》 発頁(はつこう)《割書:いしびや》 【左丁下段挿絵】 笞(ち)《割書:しもと》 杖(ぢやう)《割書:つえ》 棒(はう)《割書:ぼう》 棒 棍(こん) 吾杖(ごじやう) 飄石(へうせき)《割書:づんばい》 鹿砦(ろくさい)《割書:さかもぎ》 碇(てい)《割書:いかり》 【右丁上段】 腹帯(はらおび) ○䪊(おもがい)は馬(むま)の頭(かしら)をまとふ飾(かざり) なり又/絡頭(らくとう)とも書(かく)べし ○鞭(むち)は策(むち)筴(むち)同又/檛(むち)と も書(かく)べし馬(むま)のむちなり ○韁(きやう)は手綱(たづな)なり口(くち)にある を鞿(き)といふ八/尺(しやく)又は九/尺(しやく)二 三/寸(すん)のものなり ○屧脊(せうせき)は鎧(よろひ)のしたにきる はだつけなり鉄(てつ)にてつくる ○障泥(しやうでい)は鞍(くら)のかざりなり韂(せん) 𩍲(し)同/熊(くま)鹿(しか)の皮(かわ)にて作(つく)る ○鉗(けん)枷(か)ともに罪人(つみひと)を禁(きん) 獄(ごく)する具(ぐ)梏(くびかせ)桎(てがせ)をくはへて 三 ̄ツ道具(どうぐ)といふ ○枷(か)はくびかしなり足械(そくかい)とも 【左丁上段】 いふ梏(こう)は手(て)がしなり、手械(しゆかい)と もいふ ○発頁(いしびや)は西漢(せいかん)といふ州(くに)より つくりはじむ南蛮(なんばん)より房(はう) 西(いう)といふもの日本(につほん)に献(けん)ず ○笞(ち)はしもとなり杖(じやう)はつえ なり ○棒(はう)棍(こん)も棒(ぼう)なり 吾杖(ごじやう)は今(いま)いふ切木棒(きりこのぼう)也 ○飄石(へうせき)は今(いま)いふづんばいなり 又/礫碆(がんばい)とも書(かく)べし ○鹿砦(ろくさい)は▢(いばらの)【木偏に棘】木(き)なり地(ち)に うへて人馬(にんば)のあゆみをさま たげて軍(いくさ)の要害(ようがい)とす ○碇(いかり)は舟(ふね)を鎮(しづ)むる石(いし)なり といへり𦩘(てい)同(おなじ)いかりなり 【右丁下段挿絵】 輿(よ)《割書:こじ》 兜(とう)《割書:たごし》 車(しや)《割書:くるま》 輦(れん)《割書:てぐるま》 《割書:きよ》 【左丁下段挿絵】 輞(まう)《割書:おほわ》 輪(りん)《割書:わ》 轂(こく)《割書:こしき》 軸(ちく)《割書:よこかみ》 轅(ゑん)《割書:ながえ》 桊(けん)《割書:はなぎ》 輻(ふく)《割書:や》 【右丁上段】 纜(ともづな)𥾣(ひさづな) ○車(くるま)は少昊(しやうかう)のとき牛(うし)を駕(か) し禹(う)のとき馬(むま)を駕(か)す今(いま) 図(づ)する所は日本(につほん)の五緒(ごしよ) 車(くるま)なり天子(てんし)女御(にようご)など乗(のり) たまふくるまなり ○輦(れん)は天子(てんし)ののり給ふ御(み) 輿(こし)なり御輦(ぎよれん)とも玉輦(ぎよくれん)と もいふ又/鳳輦(ほうれん)ともいふ ○輿(こし)は手輿(たこし)なり肩(かた)にのせ かくを肩輿(けんよ)といふ竹(たけ)にて あみたるを竹輿(ちくよ)といふ今(いま) いふかごなり ○兜(とう)は手(た)かしなり兜橋(とうきやう) とも腰輿(ようよ)ともいふ和尚(おしやう)上人(しやうにん) 国師(こくし)禅師(せんじ)などのる輿(こし)也 【左丁上段】 ○輞(まう)は車(くるま)の輪外(わのそと)のかこみ なり大輪(おほわ)なり輮牙(しうか)と云 ○輪(わ)車輪(しやりん)は古(いにしへ)の聖人(せいじん)転(てん) 蓬(ほう)を見て車(くるま)をつくる ○轂(こしき)は輻(や)の湊(あつまる)所/轂口(こくこう)の錧(てつ) をは釭(こう)といふ ○軸(ぢく)は車(くるま)の輪(わ)をもつもの なり轄(かつ)はくさひなり ○轅(ながへ)は車(くるま)の前(まへ)の曲(まがり)たる木(き)を いふ輈(しう)同 ○桊(けん)は牛(うし)の鼻(はな)をつらぬく ものなり牶(けん)▢(けん)【牶の牛の部分が石+廾】並同 ○輻(や)は轂(こしき)につく三十の木(き)也 ○軛(やく)は牛(うし)の頸(くび)にかゝる所なり 軛衡(やくかう)ならびに同 ○桟車(さんしや)今(いま)いふにぐるまなり 【右丁下段挿絵】 軛(やく)《割書:くびき》 桟車(さんしや)《割書:にくるま》 籃輿(かんよ)《割書:あんざ》 㯭(ろ) 棹(たう)《割書:かい》 柁(た)《割書:かぢ》 【左丁下段挿絵】 艇(てい)《割書:をぶね》 《割書:はやふね》 舟(しう)《割書:ふね》 舶(はく)《割書:ふね》 檣(しやう)《割書:ほばしら》 帆(はん)《割書:ほ》 艜(たい)《割書:ひらた》 【右丁上段】 役車(えきしや)を車なり ○籃輿(かんよ)は今(いま)いふあんだ あをだなり箯輿(べんよ)竹輿(ちくよ) 同し ○柁(だ)は舟(ふね)のかぢなり柂舵(だだ) 同又/櫂(かぢ)とも書(かく)べし ○㯭(ろ)は櫓(ろ)並同/縦(たて)に用(もちゆる)を 櫓(ろ)といふ横(よこ)に用(もちゆる)を槳(かぢ)と云 ともに舟具(ふねのぐ)なり ○棹(かい)【左振り仮名:さほ】は舟(ふね)をやる物なり篙(さほ) おなじ ○舟(ふね)は黄帝(くはうてい)の二/臣(しん)共鼓(くはうく) 貨狄(くはてき)舟(ふね)をつくる又/虞姁(ぐこう)舟(ふね) をつくる又/伯益(はくえき)つくる工倕(こうすい) つくるとまち〳〵説(せつ)おほし ○艇(てい)は船(ふね)のちいさくして 【左丁上段】 長(ながさ)をいふ又二百/斛(こく)以上を 艇(てい)といふ舸同 ○舶(はく)は海中(かいちう)の大舩(たいせん)なり 市舶(しはく)商人(あきんど)ぶね米(こめ)ぶね也 ○艜(たい)も小舩(しやうせん)なりひらたふ ね舩(ふね)ちいさくしてふかき物 舼(きよう)ともいふ俗にたかせといふ ○帆(ほ)は舟上(しうしやう)の幔(まん)なり風(かせ)に したがひて舩(ふね)をうかむるもの なり帆維(はんい)はほなはなり ○檣(しやう)は桅(き)帆(はん)竿(かん)ともに同 ほばしらなり○篷(とま)は𥴣(とま)同/竹(たけ)をとりて箬(たけ)をあみて船(ふね)をおほふものなり ○野航(やかう)は小舩(しやうせん)なりわたしぶね舴艋(そもう)同○筏(いかだ)は竹(たけ)を編(あむ)をいふ水(みづ)をわたるものなり木を ▢(ひ)【木偏に単の上部が竹冠】といふ竹(たけ)を筏(ばつ)といふう桴(ふ)同○番舶(はんはく)は南蛮(なんばん)ふねなり○䡄(き)はくるまのよこ木なり ○轄(くさび)は車(くるま)の輪(わ)にあるものなり ○車蓋(しやかい)は車(くるま)のやかたなり𨎐(こう)同一に黄屋(くはうをく)ともいふ蓋(かい)はきぬがさなり 【右丁下段挿絵】 筏(はつ)《割書:いかだ》 野航(やかう)《割書:わたしぶね》 番舶(ばんはく)《割書:ゑびすぶね》 篷(ほう)《割書:とま》 【左丁下段挿絵】 車蓋(しやかい)《割書:くるまのやかた》 轄《割書:くさび》 【右丁】 【文字無】 【左丁】 《題:頭書増補訓蒙図彙(かしらがきぞうほきんもうづゐ)巻之十》    器用(きよう) 《割書:注前(ちうまえ)に見(み)へたり》 【左丁上段】 ○犂(り)からすき o轅(えん)はとりくひ俗(ぞく)に是(これ)を ねりといふo底(てい)はのきり 俗(ぞく)にこれをとこといふ o梢(せう)はをひたてo箭(せん)はたゝ りがたo槃(はん)はしりがせ ○鑱(さん)は犂(からすきの)鉄(かね)なり ○鐴(つき)は犂(すきの)耳(みゝ)なり ○耙(は)むまぐは▢(は)【耒偏に罷】同 耖耙(さうは)なり馬杷(はい)同 【左丁下段挿絵】 犂(り)《割書:からすき》 梢《割書:おひたて》 耙(は)《割書:むまくは》 ▢(は)【耒偏に罷】《割書:同》 鐴(つき)《割書:からすきのへら》 箭(たゝりかた) 底(とこ) 轅(ねり) 鑱(さん)《割書:からすきのさき》 槃(はん)《割書:しりがせ》 鎌(れん)《割書:かま》 【右丁上段】 ○鎌(れん)はかま鍥(かま)なり 新月(しんけつ)似(にたり)_レ磨(みがくに)_レ鎌(かまを)と杜甫(とほ) が詩(し)にもつくれるなり ○鍤(さう)は鍫(くは)なり 臿(さう)?(さう)鍫(せう)鍬(せう)ならび に同じ ○钁(くわく)は大鉏(おほすき)なり 農具(のうぐ)は黄帝(くはうてい)これを つくり初(はじめ)て民(たみ)におしへ て田地(でんぢ)をうへしめ給ふ 鐯(ちやく)钃(そく)ならひに同 ○鏄(はく)はこぐはなり 【左丁上段】 これはせまき田地(でんぢ)の草(くさ) をさる具(ぐ)なり ○鏟(さん)はやすりなり 杴(けん)をこずきとよむ杴(けん)は 鏟(さん)のたぐひなり ○櫌(いう)はつちわりなり 耰(いう)堛(ふく)槌(つい)ならびに同じ o櫌(いう)は塊(つちくれ)をうつ槌(つち)なり又 田(た)を摩(する)器(き)なり ○杷(は)は田具(でんぐ)なり麦(むぎ)を おさむる器(き)なりこまざら ひなり木(き)にてつくる 【右丁下段挿絵】 鍤(さう)《割書:くは》 钁(くわく)《割書:すき》 鏄(はく)《割書:こぐは》 鏟(さん)《割書:こずき》 櫌(いう)《割書:つちわり》 朳(はつ)《割書:えぶり》 【左丁下段挿絵】 杷(は)《割書:さらひ》 竹杷(ちくは)《割書:こまさらひ》 鉄搭(てつたう)《割書:くまで》 木杷(もくは)  杈(さ)《割書:またぶり》 火又 擔(たん)《割書:あふご》 輭擔(せんたん) 揔擔 【右丁上段】 ○鉄搭(てつたう)は塔(たう)はつくともかゝると もよむ俗(ぞく)にくまでといふ ○竹把(ちくは)はこまさらひといふ木(この) 葉(は)をかくものなり竹(たけ)にて作(つく)る ○朳(はつ)は㭭(はつ)同えぶりなり朳(はつ)は 杷(さらひ)に歯(は)なきものなり土(つち)を かきよするものなり ○檐(たん)はになふなり背(せなか)を負(おふ)と いふ荷(になふ)を檐(たん)といふ檐杖(たんしやう)輭(せん) 檐(たん)はやまあふご匾檐(へんたん)はたび あふごなり 【檐は前ページでは擔】 ○杈(さ)は岐枝木(またゑごのき)なりまたぶり ○蓑(さ)は雨衣(うい)なり田夫(でんふ)の服(ふく)也 みのなり ○笠(かさ)は箬(たけのこ)笠(がさ)なり天(てん)のかた ちは笠(かさ)のごとしよつて敗(やぶれ)笠 【左丁】 を破天公(はてんこう)といふ ○籠(かご)は土(つち)をあぐる器(うつはもの)なり竹(たけ) にてつくる ○畚(ふご)は土(つち)をもる器(うちはもの)なり藁(わら) にて作(つく)るふごといふ ○蓧(あじか)は草(くさ)を去(すつる)うつはものなり わらにてつくる ○簣(あじか)は土(つち)をもるかごなり 竹(たけ)にてつくる ○連耞(からさほ)は麦(むぎ)粟(あわ)などをうち て穂(ほ)をくだく具(ぐ)なり ○礱(ろう)はもみすりうすなり土(つち) あるひは木(き)にてつくる?(らい)【竹冠+畾】 礧(らい)ならびに同し ○磨(うす)はみがくともするとも よむよくすりみがきて精(くはしく)す 【右丁下段挿絵】 蓑(さ)《割書:みの》 笠(りつ)《割書:かさ》 籠(ろう)《割書:かご》 畚(ほん)《割書:ふご》 蓧(でう)《割書:あじか》 簣(き)《割書:あじか》 連耞(れんか)《割書:からさほ》 【左丁下段挿絵】 礱(ろう)《割書:すりうす》 磨(ま)《割書:いしうす》 榨(さ)《割書:うちひ》 石鏨(せきせん)《割書:いしきりのみ》 碓(たい)《割書:からうす》 【右丁上段】 るなりすりうすなり?(ま)磑(ぎ) いしうす幹(かん)はひきゞなり ○銀剪(ぎんせん)ははさみなり俗(ぞく)に こみばさみといふ夾剪(けうせん)同 ○榨(うちひ)は醡(さ)と同(おな)し酒(さけ)又は油(あぶら) をしぼる具(ぐ)なりしめ木(ぎ)なり ○石鏨(せきせん)は石(いし)をきるのみなり 石匠(せきしやう)これをもつ ○碓(からうす)は宓犠(ふつき)杵臼(きねうす)を制(せい)す後(のちの) 世(よ)に巧(たくみ)をくはへ身(み)を借(かり)て碓(からうす) をふむ利(り)十/倍(ばい)す ○機(き)ははたなり織(をる)なり経(たて) をもつものを榺(ちきり)といふ緯(ぬき) をもつものを杼(をさ)といふ椱(いしあし) 臥機(くつひき)機躡(まねき)【躡の偏は止】 ○綜(そう)は機(はた)をおるへなりまた 【左丁上段】 紉綜(しんそう)とも書(かく)べし ○杼(ちよ)はひなり梭(さ)同/機(はた)を織(をる) とき緯(ぬき)をもつものなり ○筬(せい)はをさなり紉(しん)梳(じよ)同し 簆框(こうきやう)は今いふおさかまち ○筟(ふ)は筳(てい)と同/繀(さい)はくだいと ○篗(わく)は籰(わく)𧤽(わく)榬(わく)同し わくの柄(え)を柅(ち)といふ又/檷(ぢ) 鑈(ぢ)ならひに同 ○績纏(せきでん)は苧(お)をうみためて 丸(まる)くまきたるが臍(へそ)のごと くなるより名(な)づく ○紡錘(はうすい)はつむなり又は楇(くは) とも瓦(くは)とも書(かく)へし ○撥柎(はつふ)はわくのめくり舞(まふ) ものなり蟠車(はんしや)とも撥車(はつしや) 【右丁下段挿絵】 機(き)《割書:はた》 綜(そう)《割書:へ》 杼(ちよ)《割書:ひ》 筬(せい)《割書:をさ》 筟(ふ)《割書:くだ》 篗(わく) 績纏(せきでん)《割書:へそ》 紡錘(はうすい)《割書:つむ》 【左丁下段挿絵】 撥柎(はつふ)《割書:まひば》 絡柅(らくち)《割書:たゝり》 布機(ふき)《割書:しもはた》 績桶(せきとう)《割書:おごけ》 【右丁上段】 ともいふ ○絡柅(たゝり)は糸(いと)をくる台(だい)なり 絡垜(たゝり)とも書(かく)なり ○布機(ふき)は布(ぬの)をおるはたなり 機(はた)に上(うえ)はた下(しも)はたあり これは下はたなり ○績桶(せきとう)はをおけなりあやま りておごけといふ茶釜(ちやがま)を ちやまがといふたくひなり ○繰車(さうしや)は蚕(かいこ)をにて糸(いと)をとる 具(ぐ)なり繅車(さうしや)同又/縿車(さうしや)と も書なり ○蠶連(さんれん)は蚕種紙(さんしゆし)なりかい こたねをいふ ○蠶薄(さんはく)は蚕(かいこ)をうくる具(ぐ) なり筁(きよく)同じえびら 【左丁上段】 ○繀車(さいしや)は糸(いと)を筟(わく)につくる 具(ぐ)なり緯車(いしや)同 ○紡車(はうしや)は糸(いと)よりくるま也 綿筒(めんとう)を俗(ぞく)にあめといふ ○撹車(かうしや)は木綿(きわた)をくりて 核(さね)を撹(かき)とる車(くるま)なり ○搗砧(とうちん)はきぬ巻(まき)をうつを いふ臥杵(くはしよ)はよこづちなり ○火熨(くはい)は火(ひ)をもつてしは を熨(のす)なり鈷(こ)▢(まう)【金偏に共の上部+介】鈷鉧(こもう)な らびに同し ○針(はり)物(もの)ぬふと病(やまひ)を治(ぢ)する と同(おなし)く通(つう)じ用(もち)ゆ医者(いしや)鍼(はり) をもつて病(やまひ)を治(ぢ)すよつて人(ひと) をいましむるを箴(しん)といふ視(しの) 箴(しん)聴(ていの)箴(しん)のごとし 【右丁下段挿絵】 繰車(さうしや)《割書:おほが》 蠶簿(さんはく)《割書:えびら》 蠶連(さんれん)《割書:かひこだね》 繀車(さいしや)《割書:ぬきかぶり》 【左丁下段挿絵】 紡車(はうしや)《割書:いとよりくるま》 撹車(かうしや)《割書:きわたくり》 搗砧(たうちん)《割書:きぬた》 火熨(くわい)《割書:ひのし》 《割書:ひのし》 針(しん)《割書:はり》 【右丁上段】 ○矩(く)は方(けた)なるをつくるもの也 匠人(しやうじん)の具(ぐ)なり曲尺(きよくしやく)なりま がりがねといふ ○規(き)は円(まとか)なるをつくるもの也 俗(ぞく)にいふぶんまはし ○凖(じゆん)【上段では凖、下段では準】は水をもつて高下(かうげ)をは かるものなり水(みつ)もりさげず み垂凖(すいじゆん)同じ ○縄(じやう)はなわを引(ひい)て物(もの)の高下(かうけ)を はかるものなり番匠(ばんしやう)のもつ すみつほなり墨斗(ぼくと)といふ ○/𣖯(しん)は竹筆(ちくひつ)なり▢(しん)【竹冠+侵】同じ 番匠(ばんしやう)のすみさしなり ○釿(きん)は手斧(てをの)なり ○鐁(し)は木(き)を平(たいらか)にするものなり つき鐁(かんな)やり鐁(かんな)あり 【左丁上段】 ○鋸(つきかんな)【「のこぎり」の誤ヵ】は刀鋸(とうきよ)なり大(をほい)なるを前(まへ) 引(びき)といふのこぎりなり ○鉋(つきかんな)は木(き)を平(たいらか)にする具(ぐ)なり 推刀(すいたう)敲刀(かうたう)同 ○鑿(さく)は鏨(のみ)なり三/分(ぶ)鑿(のみ)五/分(ぶ) のみとてあり刻刀(こくたう)はくはのみ捲(けん) 鑿(さく)はまるのみ ○錐(すい)は円錐(ゑんすい)はつきとをし方(はう) 錐(すい)は四方(しはう)ぎり ○鑽(さん)は物(もの)をうがつ錐(きり)なりとを しぎり三ツめぎりといふ ○槌(つい)はうつとよむ又かけやといふ もあり柊楑(さいづち)椓撃(あいつち) ○鑢(りよ)は摩錯(まさく)の器(き)なりやすり なり錯(さく)鏟(さん)ともに同 ○鏨(せん)は金石(きんせき)をきるたがねなり 【右丁下段挿絵】 矩(く)《割書:まがりがね》 規(き)《割書:ふんまはし》 準(じゆん)《割書:さげずみ》 縄(じやう)《割書:すみつぼ》 𣖯(しん)《割書:すみさし》  鐁(し)《割書:かな》 《割書:やりがんな》 釿(きん)《割書:てをの》 鋸(きよ)《割書:のこぎり》 鉋(はう)《割書:つきかんな》 【右丁下段挿絵】 鑿(さく)《割書:のみ》 鑽(さん)《割書:きり》 錐(すい)《割書:きり》 《割書:四方きり》 槌(つい)《割書:つち》 椓鑿(たくげき)【撃ヵ】《割書:あいづち》 柊楑(しうき)《割書:さいづち》 木(もく)槌《割書:こづち》 鑢(りよ)《割書:やすり》 鏨(せん)《割書:たがね》 鏝(まん)《割書:こて》 鎚(つい)《割書:かなづち》 【右丁上段】 ○鏝(まん)は壁(かべ)をぬる具(ぐ)なり釫(う) 𣏓(う)圬(う)同じこてなり ○鎚(つい)は鉄槌(かなづち)なり ○鋏(けう)はかなばさみ火鉗(くはけん)火鈐(くはげん)同 ○鑕(しつ)は鉄砧(てつちん)なり鉄鍖(てつちん)鉄鉆(てつちん) 同かなしきなり ○削刀(さくたう)は小刀(こがたな)なり ○裁刀(さいたう)図(づ)のごとしものたちこが たななり ○鐇(はん)は刀斧(とうふ)なり斧(よき)の刃(は)ひ ろきなり ○斧(をの)は神農(しんのう)始(はじめ)てつくり給ふ 木(き)をきる具(ぐ)なり柯(か)はをのゝ柄(え) ○釘(てい)はくぎなり物(もの)にうつて はなるゝを閉(とづ)るものなり【「釘」は本文では「金偏に亍」と彫っている。挿絵中は「釘」】 ○楔(せつ)は木釘(きくぎ)なり又/栓(せん)といふ字(じ) 【左丁上段】 の音(こゑ)をもつてよぶ ○索(さく)は大(おほひ)なるを索(さく)といひ小(すくしき) なるを縄(じやう)といふ ○浮漚釘(ふをうてい)はのがたのくぎなり 俗にいふくわんかう鐶甲(くわんかう)なり 砲頭丁(はうとうてい)は俗(ぞく) ̄ニいふべう ○堝(くわ)はるつぼなり甘堝(かんくわ)とも云 壦(けん)同/型(けい)摸塑(ほさく)は並(ならび)にいかた ○鞴(ふいかう)は槖籥(たくやく)とも書(かく)べし蹈(たう) 鞴(はい)はたゝら ○橛(けつ)は木段(もくたん)なり杙(くゐ)なり橜(けつ) 樁(さう)ならびに同くゐなり ○鉸具(かうぐ)は蝶(てう)つがひ鍱(えう)▢(えう)【金偏+棄】同 ○釣鉤(てうこう)はつりばりなり釣(てう) 竿(かん)はつりざほ釣線(てうせん)はつりいと 餌(じ)はゑ泛子(はんし)はうけなり 【右丁下段挿絵】 鋏(けう)《割書:かなばし》 鑕(しつ)《割書:かなしき》 削刀(さくたう)《割書:こがたな》 裁刀(さいたう)《割書:ものたちがたな》 鐇(ばん)《割書:まさかり》 斧(ふ)《割書:をの》 釘(てい)《割書:くぎ》 浮漚釘(ふをうてい) 砲頭丁(はうとうてい) 楔(せつ)《割書:くさび》 【左丁下段挿絵】 索(さく)《割書:なは》 堝(くわ)《割書:るつぼ》 鞴(はい)《割書:ふいがう》 橛(けつ)《割書:くひ》 鉸具(かうぐ)《割書:てふつがひ》 釣鉤(てうこう)《割書:つりばり》 鉄束(てつそく)《割書:かなわ》 篾箍(べつこ)《割書:たけわ》 箍束(こそく)つ 【右丁上段】 ○鉄束(てつそく)かなわなり鉄篐(てつこ)【注①】同 ○箍(こ)束(そく)は桶(をけ)の輪(わ)なり竹に てつくる篾箍(べつこ)ともいふ ○砧(ちん)はあてなり枮(ちん)碪(ちん)同共 に衣(きぬ)をうつ具(ぐ)なりきぬたと もいふ ○桔槹(けつかう)ははねつるべなり𣚃(けつ)【注②】 槹(かう)同し ○轆轤(ろくろ)は水(みづ)をくむ (補)つるべにかゝ る具(ぐ)なりくるまきといふ独楽(かま)【注③】 ざいくに轆轤(ろくろ)といふ物(もの)あり ○瓦竇(ぐはたう)かはらにてつくれる樋(ひ) なり陰溝(いんかう)むめみぞ又/暗溝(あんかう) とも書(かく)なり ○綿弓(めんきう)は木(き)わたをうつゆみ なり弓(ゆみ)に唐(たう)ゆみ小弓あり 【左丁上段】 ○牽鑚(けんさん)はろくろかな錫(すゞ)又/角(つの) などをひく物(もの)なり車鑚(しやさん)同 ○旋盤(せんはん)は茶碗(ちやわん)天目(てんもく)をつくる くるまなり釣(きん)■(〳〵)【注④】ならびに同 すへものつくりのくるま ○木梃(もくてい)はてこなり鉄梃(てつてい)はかな てこなり。 ○攩網(たうまう)は俗(ぞく)にすくひだまと いふなりながれ川(かわ)の小魚(こうを)を すくふあみなり (補)たまさでと もいふ ○弰(さく)は鯨(くじら)鱉(すつほん)などをつく物(もの) なりもろこしにては馬上(ばしやう)に もつほこを弰(さく)といふ𥯜(く)同 一名(いちめい)魚叉(ぎよさ)という ○絞車(かうしや)はまきろくろ大石(たいせき)又は 【右丁下段挿絵】 砧 桔槹(けつかう)《割書:はねつるべ》  轆轤(ろくろ)《割書:くるまき》 瓦竇(くわたう)《割書:かわらび》 綿弓(めんきう)《割書:きわたゆみ》 【左丁下段挿絵】 牽鑚(けんさん)《割書:ろくろかな》 木梃(もくてい)《割書:てこ》 鉄梃(てつてい)《割書:かなてこ》 旋盤(せんはん)《割書:すへものゝぐ》 攩網(とうまう)《割書:すくひだま》 矟(さく)《割書:やす》 絞車(かうしや)《割書:まきろくろ》 【注① 「篐」は「箍」の誤】 【注② 「𣚃槹」は「㮮槹」の誤】 【注③ 「かま」は「こま」の誤ヵ】 【注④ ■は「冫+匀」・「均」の誤ヵ】 【右丁上段】 家(いゑ)蔵(くら)堂(たう)などをひくろく ろなり ○趕網(かんまう)攩網(たうまう)ともに魚(うを)を とる具(ぐ)なり俗(ぞく)に左手(さで)と云 ○罾(そう)はうをとるあみなり又 方張(はうちやう)といふ此たぐひのあみ 数品(すひん)あり此図(このず)は四つでといふ あみなり ○網(もう)はあみなり庖犠氏(ふつきし)の つくりはじめ給ふ罟(こ)同し 俗(ぞく)にとうあみ又かちあみと いふなり ○羅はとりあみなり芒氏(ばうし) はじめて羅(あみ)をつくる鳥罟(とうこ)也 絹糸(きぬいと)又/麻糸(あさいと)にてつくる也 かすみといふ有又たちこし 【左丁上段】 ○囮(おとり)はなれたる鳥(とり)をつな いで外(ほか)の鳥(とり)をいざなひ来(きた) らしむるを囮(おとり)といふなり 㘥(くわ)媒鳥(はいてう)同 ○雀竿(じやくかん)は黐竿(ちかん)同ゑさ しさほなり黐(ち)はとりもち なり ○笯(ど)はとりかごなり庭篭(にはこ) 丸篭(まるこ)などあり ○炉工台(ろくだい)は釜(かま)をかけて火(ひ) をたく台(だい)なり俗(ぞく)にをき へついといふ ○鷹架(たかほこ)は鷹(たか)のとまる 木なり ○弶(りやう)は罟(あみ)をみちにもふけて 狐(きつね)兎(うさぎ)などをとるものなり 【右丁下段挿絵】 趕網(かんまう)《割書:さで》 罾(そう)《割書:よつで又はうちやう》 網(まう)《割書:あみ》 羅(ら)《割書:とりあみ》 囮(くわ)《割書:おとり》 【左丁下段挿絵】 雀竿(じやくかん)《割書:とりざほ》 笯(ど)《割書:とりこ》  炉工台(ろくだい) 弶(りやう)《割書:わな》 鷹架(ようか)《割書:たかのほこ》 【右丁上段】 陷阱(かんせい)おとしあななり ○石籠(せきろう)は水(みづ)ふせきなり 竹(たけ)を (補)あみかことし中(なか)へ石(いし)を 入て堤(つゝみ)の水(みづ)をよけるもの也 臥牛(くはぎう)ともいふ俗(そく)にいふじや かごなり ○撒網(さんもう)は魚(うを)をとるあみなり 罨(あう)罩(さう)同俗にうちあみと云 又とうあみともよぶ ○魚簄(ぎよこ)は海中(かいちう)にて魚(うを)を とる竹(たけ)なり俗(ぞく)にえりといふ 魚箔(ぎよはく)なり槮(しん)ふしづけ ○籞(いけす)は池(いけ)のうち (補)又/川(かは)などに 竹(たけ)がきをあみて魚(うを)をやし なふものなり簖(たん)同 【左丁上段】 ○翻車(はんしや)は龍骨車(りうこしや)なり 日(ひ)でりのとき田地(てんぢ)に水(みづ)を とる具(ぐ)なり (補)ひきく所(ところ)の水(みつ) を高(たか)き田(た)へ入(いる)るに用(もち)ゆ ○筒車(とうしや)はみづぐるまなり 淀河(よどかは) (補)そのほか所々(しよ〳〵)にあり これもひきく所(ところ)の水(みづ)を高(たか) き田(た)へとるものなり又/水(みづ)の力(ちから) をかりて米穀(べいこく)をしらげは たくの具(ぐ)なり ○水筧(すいけん)はかけひ山より水(みづ)を とるものなり連(れん)筒(とう)同/梘(けん) はとゐなり又/槽(さう)につくる ○案山子(かがし)は鳥(とり)おどしなり 人(ひと)かたをつくりて田(た)の中(なか)に 立(たて)て鳥(とり)けだものをおどす物也 【右丁下段挿絵】 石籠(せきろう)《割書:じやかご》 魚簄(ぎよこ)《割書:えり》 撒網(さつまう)《割書:うちあみ》 籞(ぎよ)《割書:いけす》 【左丁下段挿絵】 翻車(はんしや)《割書:りうこつしや》 水筧(すいけん)《割書:かけひ》 筒車(とうしや)《割書:みづぐるま》 案山子(かがし)《割書:とりおどし》 【右丁上段】 ○戽斗(こと)は桶(をけ)になわをつけ て田(た)へ水(みづ)を入るものなり是(これ) もひでりのときもちゆる具(ぐ) なり戽(こ)桶(よう)同 ○魚梁(ぎよりやう)は海中(かいちう)に竹(たけ)の簀(す) を入(いれ)て魚(うを)をとるものなり 罶(りう)同/俗(ぞく)にやなといふこれ なり筍(じゆん)同 ○塘網(たうあみ)は引(ひき)あみといふ (補)大海(だいかい)に て魚(うを)をとるあみなり方一里(はういちり) にうけの桶(おけ)をつけて大(おほ)ぜい の人/引(ひき)よするなり ○榰柱(しちう)は家(いゑ)のゆがみたるを なをすつかへなり牮(たい)は今(いま) いふうしなり ○楨幹(ていかん)は両題(りやうたひ)を楨(てい)といふ 【左丁上段】 両傍(りやうはう)を幹(かん)といふついぢいた なり ○水平(すいへい)はみつはかりなり 水(みつ)なわを引(ひき)て高下(かうけ)を はかるものなり (補)番匠(ばんしやう)に もちゆる具(ぐ)なり度竿(とかん) 同じ ○土圭(とけい)は図景(とけい)とも時計(とけい)とも 書(かく)なり昼夜(ちうや)十二/時(とき)を はかるうつはものなり  (補)しやくどけいといふあり時(と) 計(けい)に大小(だいしやう)あり ○障子(しやうじ)は障(しやう)の字(し)へだつ るとよむ風(かせ)をへたてふせく のこゝろなり子(じ)は付字(つけし)也 あかり障子(しやうし)腰障子(こししやうじ)あり 【右丁下段挿絵】 戽斗(ことう)《割書:なげつるべ》 塘網(たうまう)《割書:ひきあみ》 魚梁(ぎよりやう)《割書:やな》 【左丁下段挿絵】 榰柱(しちう)《割書:つかへ》 楨幹(ていかん)《割書:ついぢいた》 水平(すいへい)《割書:みづばり》 【右丁上段】 ○戸(と)はひらき戸(ど)たて戸引(とひき) 戸妻戸(どつまど)あり杉戸(すぎど)まいら 戸(ど)などその品(しな)多(おほ)くありいら 戸(と)といふあり ○縄車(じやうしや)はろくろ縄(なわ)幕(まく)の 縄(なわ)なとをよる車(くるま)なり 【右丁下段挿絵】 土圭(とけい) 障子(しやうじ) 戸(と) 縄車(じやうしや)《割書:なはなひ》 【左丁】 《題:頭書増補訓蒙図彙(かしらがきぞうほきんもうづゐ)巻之十一》    器用(きよう) 《割書:注前(ちうまへ)に見(み)へたり》 【左丁上段】 ○屏(へい)は屏風(べうぶ)なり畫屏(ぐはべう) 繍屏(しうべう)金屏(きんべう)石屏(せきへう)硯屏(たんへう) 格子屏(かうしへう)あり又/圍屏(ゐべう)と云 ○簾(れん)はすだれ箔(はく)同/翠(すい) 簾(れん)みすなり簾/鈎(かう)はつり ばりなり ○枕(しん)は珊瑚(さんご)の枕(まくら)瑪瑙(めのふ)の 枕など有/貉枕(かくしん)などゝいふ もあり ○杌子(ごし)はこしかけなり ○椅子(ゐす)は方椅(はうゐ)あり円椅(ゑんゐ) あり交椅(かうゐ)あり椅踏(ゐたう)は今(いま) 【左丁下段挿絵】 屏(へい)《割書:びやうぶ》 簾(れん)《割書:すだれ》 圍屏(いびやう)《割書:をりびやうぶ》 枕(しん)《割書:まくら》 杌(ごつ)《割書:こしかけ》 【右丁上段】 いう承足(ぜうそく)なり ○席(せき)はむしろなり筵(ゑん)同 蒲席(ほせき)莞席(くはんせき)竹席(ちくせき)あり ○牀(しやう)は榻(しち)なりゆかともとこ ともいふ八尺を牀(しやう)といふ身(み) を安(やすん)ずる物(もの)なり牀几(しやうざ) ○匜(い)ははんざうなり柄(え)のな かに水(もづ)のいづる道(みち)あり柄(え)の 半(なか)ばその内(うち)に挿(さしはさ)むよつて 半挿(はんざう)といふか ○盥(くわん)はたらひなり盥盤(くわんはん) 盥盆(くわんぼん)同又/頮(くはん)につくる匝盤(いはん) はみゝたらひ角盤(かくはん)はつのだらひ ○墩(とん)は腰(こし)かけなり坐墩(ざどん)とも いふ又は草墩(さうどん)といふもあり ○鏡(かがみ)は天照太神(てんせうだいじん)のかげをう 【左丁上段】 つしてゐ給ふより初(はじま)る今の内(ない) 侍所(しどころ)といふは神鏡(しんきやう)なり手鏡(しゆきやう) は柄付(えつき)のかゞみ円鏡(えんきやう)はまるかゞみ 鏡匲(きやうれん)はかゞみの▢【虫食い】なり ○鏡台(きやうたい)は鏡架(きやうか)ともいふ又 粧台(さうたい)ともいふなり今/按(あん)ずる にかゞみかけ ○粉匣(ふんかう)はおしろいばこなり ○剪(せん)ははさみ剪刀(せんとう)なり 剪子(せんし)剤刀(せいたう)ならびに同今 按(あん)ずるに夾剪(けうせん)摺剪(らうせん)有 ○鑷(でう)はけぬきなり鼻鑷(びてう)は はなげぬきなり ○笄(かんざし)は女(をんな)の髪(かみ)にさす具(ぐ) なり楴(てい)同/抿(みん)子かうがい ○櫛(せつ)はくし総名(さうみやう)なり梳(しよ)は 【右丁下段挿絵】 椅子(いす) 椅踏(ゐたう) 席(せき)《割書:むしろ》 牀(しやう)《割書:ゆかとこ》 匜(い)《割書:はんざう》 匜盤(みゝたらひ) 盥(くわん)《割書:たらひ》 角盤(つのだらい) 墩(とん)《割書:こしかけ》 【左丁下段挿絵】 鏡(きやう)《割書:かがみ》 鏡架(きやうか) 鏡台(きやうだい)《割書:かがみかけ》 剪(せん)《割書:はさみ》 夾/剪(せん) 摺(らう)剪 鑷(てふ)《割書:けぬき》 粉匣(ふんかう)《割書:おしろいばこ》 笄(けい)《割書:かんざし》《割書:かうがい》 櫛(せつ)《割書:くし》 梳《割書:すきぐし》 枇(ひ)《割書:ほそぐし》 挿《割書:はさしぐし》 【右丁上段】 すきぐし枇(ひ)はほそぐし挿(さう) 梳(しよ)はさしぐしなり ○髲(ひ)は髢(てい)と同かづらなり 𩫹(しゆ)鬙(くわい)もとゆひ ○壺(つぼ)は酒(さけ)をいるゝうつは物也 又/陶(とくり)ともいふ ○樽(たる)は酒(さけ)をいるゝうつはもの なり木樽(もくそん)あり漆樽(しつそん)あり 瓦樽(くはそん)あり陶樽(たうそん)あり榼(かつ)同 ○瓶(へい)はかめなり水瓶(すいひん)酒瓶(しゆひん) 尿瓶(しひん)あり鉼(へい)同 ○注子(ちうし)は水(みづ)さし湯盥(たうくはん)湯(たう) 釜(ふ)に湯(ゆ)のあつきとき水を うめる具(ぐ)なり ○櫑(らい)は酒(さけ)をいるゝたるなり 雲雷(うんらい)のかたちをゑがくよつ 【左丁上段】 て櫑といふ ○盃(はい)は盞(さん)ともにさかづき也 𨢩(しやう)とも書(かく)べし又/鸚鵡盃(あふむはい) 椰子盃(やしはい)瑪瑙盃(めなふはい)など有 ○琖(さん)は猪口(ちよく)とも書(かく)なり ○巵(し)はさかづきなり玉巵(ぎよくし)と いへり𨢩(しやう)同 ○爵(しやく)はさかづきなり爵(すゞめ)は 淫乱(いんらん)なるものなり酒(さけ)を のめば淫乱(いんらん)になるゆへに さかづきに爵(すゞめ)をほり付 ていましめとすその盃(さかづき) を爵(しやく)といふ又/爵炉(しやくろ)は香(かう) 炉(ろ)のかたち爵(すゞめ)に似(に)たれは なり ○鼎炉(ていろ)は香(かう)をたくもの 【右丁下段挿絵】 髲(ひ)《割書:かつら》 壺(こ)《割書:つぼ》 樽(そん)《割書:たる》 瓶(へい)《割書:かめ》 注子(ちうし)《割書:みづさし》 櫑(らい)《割書:もたひ》 盃(はい)《割書:さかづき》 琖(さん)《割書:ちよく》 【左丁下段挿絵】 巵(し)《割書:さかづき》 爵(しやく)《割書:すゝめかうろ|さかづき》 鼎炉(ていろ)《割書:かうろ》 鼎(てい)《割書:あしかなへ》 甑(そう)《割書:こしき》 鍋(くわ)《割書:なべ》 鑊(くわく) 鏊(かう) 砂鍋(さくは) 釜(ふ)《割書:かま》 筯(ちよ)《割書:はし》 火筯(くはちよ)《割書:ひばし》 【右丁上段】 なり ○鼎(てい)はあしかなへなり五 味(み)を煮(に)和(くわ)するうつはもの なり方鼎(はうてい)あり円鼎(ゑんてい)あり ○甑(そう)は物(もの)をむすこしき也 鬵(しん)同/箄(へい)はこしきのすだれ 炊巾(すいきん)はこしきぬのなり ○鍋(くわ)大なるなべを鑊(くわく)といふ あさきなべを鏊(かう)といふ又/砂(さ) 鍋(くわ)はいりかはら ○釜(ふ)はかまなり鬴(ほ)▢(てん)【金+奠】鍑(ふ)な らびに同じ瓦釜(ぐわふ)はつち がまなり ○筯(ちよ)箸(ちよ)櫡(ちよ)ならびに食(しよく) 筯(ちよ)なりはしなり 火筯(くはちよ)は火ばし 【左丁上段】 ○碗(わん)は食碗(しよくわん)茶碗(ちやわん)あり木(もく) 椀(わん)磁椀(じわん)あり大なるを盂(う)と いふ深(ふかき)を甌(おう)といふ今(いま)いふ天(てん) 目(もく)建盞(けんさん)な▢【虫食い:り】 ○碟(せう)は土(つち)の皿(さう)を磁碟(じせう)といふ木(き) の皿(さら)を漆楪(しつせう)といふ碟(さう)は皿(さら)也 又/木(き)ざら楪子(ちやつ) ○香匙(きやうじ)は香(かう)すくひ ○飯匙(はんじ)は律僧(りつそう)禅家(ぜんけ)に 用(もちゆ)るものなり飯(はん)をすく ひくふ物なり ○茶匙(さじ)は茶(ちや)𣏐(しやく)なり ○薬匙(やくし)は医家(いか)に用(もち)ゆる 茶匙(さじ)なり ○飯(はん)𢆍(さう)は今(いま)いふいゐがひ也 𣠺(さう)同し 【右丁下段挿絵】 碗(わん) 盂(う) 茶碗(ちやわん) 木椀(もくわん) 碟(せう)《割書:さら》 匙(し) 飯匙(はんし) 茶匙(さじ) 薬匙(やくじ) 香匙(きやうし) 飯(はん)𢆍(さう)《割書:いひかゐ》 盤(ばん) 托(たく)《割書:ちやだい》 盞盤(さんはん)《割書:さかづきだい》 台盤(だいばん) 鉢(はち) 【左丁下段挿絵】 盒(がう)《割書:じきろう》 盆(ぼん)《割書:ほとぎ》 磁盆(じほん)《割書:さはち》 甕(おう)《割書:もたひ》 瓿(ほう) 汲桶(きうとう)《割書:つるべ》 缶(ふ)《割書:つるべ》 桶(とう)《割書:をけ》 浴桶(よくとう)《割書:ゆぶね》 提桶(ていとう)《割書:てをけ》 酒桶(さけをけ) 【右丁上段】 ○盤(ばん)はすべて物(もの)の台なり 円(まとか)なるを盤(ばん)といふしかれ ども方(けた)なるをも通(つう)じて 盤(ばん)といふ事もあり ○台盤(だいばん)は今いふ三方(さんばう)なり ○托(たく)は茶碗天目(ちやわんてんもく)の台(たい)也/托子(たくし) 托盤(たくばん)並同又/槖(たく)につくる ○鉢(はち)は仏氏(ぶつし)の盂(ほとぎ)なり鉄(てつ) 鉢(はち)あり銅鉢(どうはち)あり木鉢(もくはち)有 仏(ほとけ)のもち給ふは鉄鉢(てつはち)なり ○盞盤(さんばん) さかづきの台(だい)なり ○盒(がう)は合子(がうし)なり今いふ食篭(じきろう) なり本(もと)円(まろ)き器(うつはもの)なり今は方(けた)に もするなり ○盆(ぼん)はまるきうつはものゝ名(な) 盎(あう)同/磁盆(じぼん)はさはちなり 【左丁上段】 ○甕(おう)もたい▢(をう)【雍+ム+巫】瓮(をう)▢(たん)【金+曇】鐔(たん) 共(とも)に同大なるを甕(をう)といひ小(すくしき)なるを 瓿(ほう)と云ともに酒(さけ)を入るつぼなり ○桶(とう)はおけなり提桶(ていとう)は手(て)をけ 浴桶(よくとう)はゆぶね杆同 ○酒桶(さかをけ)は五/石入(こくいれ)十/石(こく)入ありよく 口(くち)をふうじてたくはう ○缶(ふ)はつるべなり瓦(かはら)にてつくり 水をくむものなり綆(きやう)つるべなわ 繘(きつ)汲(きう)索(さく)ならびに同し ○汲桶(きうとう)は木(き)にて作(つく)りたるつるべ也 ○酒槽(しゆさう)はさかぶねなりこの槽(ふね)に 酒袋(さけぶくろ)を入しぼりて桶(おけ)に入たくはふ ○馬槽(ばさう)はむまふねなり馬(むま)の 四/足(そく)するふねなり槽櫪(さうれき)は むまだらいなり 【右丁下段挿絵】 槽(そう)《割書:ふね》 酒槽(しゆそう)《割書:さかぶね》 馬槽(ばそう)《割書:むまぶね》  杓(しやく)《割書:ひしやく》 筅(せん)《割書:ちやせん》 筅帚(せんさう)《割書:さくら》 竃(さう)《割書:かまど》 篩(し)《割書:ふるひ》 燧(すい)《割書:ひうち》 火(くわ)《割書:ひ》 炉(ろ)《割書:ひたき》 【左丁下段挿絵】 升(せう)《割書:ます》 合(がう) 筲(さう)《割書:いかき》 籃(らん)《割書:かご》 箕(き)《割書:み》 臼(きう)《割書:うす》 杵(しよ)《割書:きね》 【右丁上段】 ○杓(しやく)は水をくむもの勺(しやく)瓢(へう)なら びに同/俗(そく)にひしやくといふ ○筅(せん)は茶(ちや)を泡(あは)だつるものなり 悪茶(あくちや)を茶筅(ちやせん)にてふりたつる を蟹眼(かいかん)【左振り仮名:かにのめ】といふ ○竃(そう)はかまどなり灶(さう)同/行(ぎやう) 竃(さう)はくどなり烓(けい)同 ○篩(し)は簁と同又/籭(さい)とも書(かく) へしふるひなり ○燧(すい)は木(き)をもみ石(いし)をすりて 火(ひ)をもとむるなり火鑽(くわさん)同 ○爐(ろ)はひたきなり火函(くはかん)火牀(くはしやう) ならびに同/地炉(ちろ)はすびつ俗 にいろり地炕(ちかう)同/焙炉(ほいろ)火橽(こたつ) ○火(ひ)は煨(わい)煻(たう)ならひにおき也 燼(じん)もへくひ焔(えん)炎(えん)ならびに 【左丁上段】 ほのほ灰(くわい)はい煙(えん)けふり煤(はい)すゝ ○升(せう)は一/升(しやう)ます斗(と)はとます 十/龠(やく)を合(がう)とし十/合(がう)を升(しやう) とし十/升(しやう)を斗(と)とし十/斗(と)を斛(こく) とす槩(がい)はとかきともますか きとも又/斗格(とかく)と書(かく)べし ○筲(さう)は竹器(ちくき)なり俗にいふ いかき䈰(さう)▢(をく)【竹+奥】淘(たう)籮(ら)並(ならびに)同 ○籃(らん)は竹器(ちくき)なり篭(かご)なり 筐(きやう)同かたみともいふ ○箕(み)は物を簸(ひる)ものなり ○臼(きう)はつきうすなり ○杵(しよ)はきねなり味噌(みそ)又は 餅(もち)をつく杵(きね)なり細腰杵(さいえうきよ) は手(て)ぎねなり ○唾壺(だこ)は痰(たん)はきなり今按 【右丁下段挿絵】 唾壺(だこ)《割書:ぢんこ》 温壺(うんこ) 觶(たん)《割書:さかつき》 觚(こ)《割書:さかづき》 櫑(らい)《割書:もたひ》 鐺(たう)《割書:さしなべ》 湯婆(たうは)《割書:たんほ》 漏斗(ろと)《割書:じやうご》 【左丁下段挿絵】 尊(そん)《割書:たる》 彛(い)《割書:たる》 笥(し)《割書:はこ》 湯鑵(たうくはん)《割書:やくはん》 洗(せん)《割書:はんだう》 簠(ほ) 【右丁上段】 するに塵壺(ぢんこ)の事か ○温壺(うんこ)はいにしへ湯(ゆ)を入て手(て) 足(あし)をあたゝむるものなり今 は花瓶(くはひん)にもちゆ ○觶(たん)はいにしへのさかづきなり 今は花瓶(くはひん)にもちゆよつて花(くは) 觶(たん)といふなり ○觚(こ)はいにしへのさかづきなり 唐音(たうゐん)にこれをこつふと云 今(いま)花瓶(くはひん)にもちゆ ○罍(らい)はもたいなり酒(さけ)を入る ものなり雲雷(うんらい)のかたちを ゑがくゆへ罍(らい)といふ ○鐺(たう)はなへのたくひ耳足(みゝあし)有 酒鐺(しゆたう)薬鐺(やたう)などあり ○湯婆(とうば)はたんほなり桐(きり)銅(あかゞね) 【左丁上段】 陶(つち)などにて作(つく)り湯(ゆ)を入て足(あし) をあたゝむるもの也/脚婆(きやくは)湯媼(たうあう) ともいふ今は酒器(しゆき)に用(もち)ゆ ○漏斗(ろと)は今いふ上戸(じやうご)なり酒(さけ)を うつすものなり ○尊(そん)はいにしへの酒(さけ)を入るたる なり今は花瓶(くはひん)にもちゆ ○彛(い)は古(いにしへ)の酒尊(しゆそん)なり今(いま)香(かう) 炉(ろ)とす彛炉(いろ)といふ ○笥(し)はげなり箱(はこ)の通称(つうせう)なり 食物(しよくもつ)又は衣類(いるい)を入るはこなり ○洗(せん)は古(いにしへ)の盥洗(くわんせん)のすて水(みづ)をうくる の器(き)也/俗(ぞく)にこれを飯銅(はんとう)といふ ○簠(ほ)は古(いにしへ)の祭(まつり)のうつはもの なり黍(あわ)稷(きび)をもるものなり ○湯鑵(たうくはん)は湯(ゆ)をわかすなべなり 【右丁下段挿絵】 耳壺(じこ) 鍑(ふ)《割書:さかり》 簋(き) 樏(るい)《割書:わりご》 風炉(ふうろ) 水罐(すいくはん)《割書:みづかめ》 【左丁下段挿絵】 銅銚(とうてい)《割書:てうし》 銅提(とうてい)《割書:ひさげ》 提炉(ていろ)《割書:ちやべんたう》 提盒(ていがう)《割書:さげじう》 雪洞(せつたう) 嚢(なう)《割書:ふくろ》 吹筒(すいとう)《割書:ひふき》 鎖(さ)《割書:じやう》 【右丁上段】 銅(あかゝね)にてつくるを銅鑵(とうくはん)といふ今 は薬鑵(やくはん)といふ ○耳壺(じこ)はいにしへの酒(さけ)を入る つぼなり今は花瓶(くわひん)とす ○鍑(ふ)ははがまなり又くはんす なり茶(ちや)を煮(にる)かまなり ○簋(き)は簠(ほ)と同し祭器(さいき)也 食物(しよくもつ)を入て先祖(せんぞ)にそなへ まつるものなり ○樏(るい)は食物(しよくもつ)を入る物なり 今いふわりごなり ○風炉(ふろ)は茶炉(ちやろ)薬炉(やくろ)とも に同又は釜櫓(ふろ)とも書(かく)べし塗(ぬ) 師(し)のふろは蔭室(ふろ) ○水罐(すいくはん)はみづを入るかめなり 罐(くはん)は鑵(くはん)と同 【左丁上段】 ○銅銚(とうてう)は今いふ銚子(てうし)なり 酒(さけ)をいるゝものなり ○銅提(とうてい)は今いふ提子(ひさげ)也 酒(さけ)をくはゆるものなり ○提炉(ていろ)は今いふ茶弁当(ちやべんたう) なり又/携炉(けいろ)ともいふ ○提盒(ていがう)は今いふ提重(さげぢう)なり 又/行厨(あんちう)ともいふ ○雪洞(せつとう)は一に育(いく)とも云/茶(ちや) 炉(ろ)をおほふものなり竹に 紙(かみ)をはりてつくる ○嚢(のう)は袋(たい)帒(たい)ならひに同 ○吹筒(すいとう)は火(ひ)ふきなり篍(しう)火(くは) 管(くはん)ともいふ今すつほんと いふ火(ひ)ふきあり ○鎖(じやう)は音(こゑ)未(いまだ)【左送り仮名:す】_レ詳(つまびらかなら)ひつを鎖(さ) 【右丁下段挿絵】 絹篩(けんさい)《割書:きぬぶるひ》 擂盆(らいぼん)《割書:すりばち》 豆(とう) 薑擦(きやうさつ)《割書:わさびおろし》 砧板(ちんはん)《割書:まないた》 割刀(かつたう)《割書:はうてう》 麺杖(めんぢやう)《割書:むぎをし》 【左丁下段挿絵】 天平(てんへい)《割書:てんびん》 法馬(はうば)《割書:ふんどう》 秤(せう)《割書:はかり》 錘(つい)《割書:はかりのおもし》 糊刷(こせつ)《割書:のりはけ》 槖(たく)《割書:おびぶくろ》 【右丁上段】 管(くはん)といふはねを鎖須(さじゆ)と云 ○絹篩(けんし)はきぬふるいなり 今(いま)按(あん)するに薬(くすり)をふるふを 羅合(らがう)といふ麺粉(めんこ)をふるふを 羅斗(らと)といふ ○擂盆(らいぼん)はすりばちなりおと 雷(らい)のごとしよつて擂盆(らいぼん)と云 擂木(らいき)擂槌(らいつい)はともにすりぎ也 ○豆(とう)は祭(まつり)に肉(にく)をのするもの なり仏氏(ぶつし)には菓子(くはし)をのす ○薑擦(きやうさつ)はわさびおろし也 ○砧板(ちんはん)は今(いま)いふまないた也 又/▢(けい)【木+刑】几(き)とも書(かく)べし肉机(にくき) 魚盤(きよはん)ならびに同 ○割刀(かつたう)は今(いま)いふ庖丁(はうてう)なり魚(うを) をきる刀(かたな)なり菜刀(さいたう)はながたな 【左丁上段】 ○麺杖(めんじやう)は今いふ麺棒(めんばう)なり 一に衦麺杖(かんめんじやう)ともいふ ○天平(てんびん)は今(いま)いふはり口(ぐち)なり 平は秤(ひん)の字(じ)の略(りやく)なりそら につりたる秤(はかり)なり ○法馬(はうば)は今(いま)いふ分銅(ふんどう)なり 法子(はうし)鋾馬(とうば)ともいふ ○秤(せう)は𨤲等(れてぐ)なりさうを 盤(はん)といふさほを衡(かう)といふおも りを権(けん)とも錘(つい)ともいふなり 杠秤(こうせう)はちぎなり ○錘(つい)ははかりのおもしなり鎚(つい) 権(けん)ならびに同/衡(かう)ははかりの さほ梁(りやう)同 ○糊刷はのりばけなり ○槖(たく)は底(そこ)なきふくろなり 【右丁下段挿絵】 𨰉(さつ)《割書:くすりきざみ》 碾(てん)《割書:やげん》 櫃(き)《割書:ひつ》 橱(ちう)《割書:づし》 鑰(やく)《割書:かぎ》 帚(しう)《割書:ははき》 【左丁下段挿絵】 檯(だい) 箱(さう)《割書:はこ》 傘(さん)《割書:からかさ》 杖(じやう)《割書:つえ》 柱杖 枴(かい)《割書:かせづえ》 【右丁上段】 俗(そく)にうちがへといふ ○/𨰉(さつ)は薬刀(やくたう)なりもとは草(くさ)を きる具(ぐ)なり今(いま)はくすりきざ みにもちゆ ○碾(てん)はもと農具(のうぐ)なり今は薬(くすり) を粉(こ)にする具(ぐ)とすよつて薬(やく) 碾(てん)とも薬研(やげん)ともいふ ○櫃(き)はひつなり書物(しよもつ)衣服(いふく)を 入るものなり唐櫃(からひつ)半櫃(はんびつ)長(なが) 櫃(びつ)あり ○橱(ちう)は厨子(づし)なり書厨(しよちう)なり 又/衣厨(いちう)といふもあり ○鑰(やく)は鍵(けん)鎰(えき)ならびに通(つう)じ もちゆかぎなり ○帚(しう)は箒(しう)同/條帚(てうしう)はわら はゝき掃帚(さうしう)はたけばゝき独(どく) 【左丁上段】 帚(しう)ははゝき木(き)はゝき棕帚(そうしう)は すろはゝきなり ○檯(たい)は几案(きわん)のたぐひなり 食物(しよくもつ)の檯(たい)を飯檯(はんだい)といふ ○箱(はこ)は篋(けう)匣(かう)ともに同じ筥(はこ) とも書(かく)なり屧(ちう)はかけご抽匣(ちうかう)は 引(ひき)だしなり蓋(かい)はふたなり ○傘(さん)はからかさなり雨傘(うさん)は あまがさ凉傘(りやうさん)はひがさ ○杖(じやう)鳩杖(はとのつえ)は鳩(はと)は物(もの)にむせぬ 鳥(とり)なりよつて老人(らうじん)の物に むせぬためとて杖(つえ)のかしら に鳩(はと)のかたちをきさみたるを 鳩杖(はとのつえ)といふなり ○蓋(かい)はもろこしには車上に たつるかさなり 【右丁下段挿絵】 蓋(かい)《割書:きぬがさ》 梯(てい)《割書:はしご》 凳(とう)《割書:くらかけ》 炬火(こくは)《割書:たいまつ》 燎火(れうくは)《割書:にはび》 唧筒(そくとう)《割書:みづはじき》 【左丁下段挿絵】 爼(そ)《割書:つくえ》 胡床(こしやう)《割書:あぐら》 竿(かん)《割書:さほ》 標榜(へうはう)《割書:ふだ》 署扁(しよへん)《割書:がく》 【右丁上段】 ○梯(てい)は俗(そく)にいふのぼりはし なり又はしご ○凳(とう)はくらかけなり踏凳(たつとう) ともいふ ○炬火(こくは)はたいまつなりたち あかしともいふ松明(せうめい)同 ○燎火(りやうくは)はにはびなり庭燎(ていりやう) とも門燎(もんりやう)ともいふ神代(じんだい)より はじまる禁中(きんちゆ)節会(せちゑ)に有 ○唧筒(そくとう)は今いふ水はじき なり火事(くはじ)のときもちゆ 又は庭(には)の樹木(じゆもく)に水をうつに もちゆるなり ○爼(そ)は祭(まつり)にいけにへをのす るものなりまないたと訓(くん) ずつくえなり 【左丁上段】 ○胡床(こしやう)は俗(そく)にこれを床(しやう) 机(ぎ)といふ又あぐらといふ ○竿(かん)はさほなり笐(かう)は物 ほしさほ𥮕(かう)同 ○標榜(へうはう)はふだなりまた 簡版(かんはん) ○署扁(しよへん)は今いふ額(がく)なり 扁額(へんがく)扁牌(へんはい)ならひに同 ○渾儀(こんぎ)は渾天儀(こんてんぎ)又は璇(せん) 璣玉衡(きぎよくかう)ともいふ日月の運(うん) 行(かう)をはかる物なり ○磁針(じしん)は磁石(ししやく)に針(はり)をさし て東南(とうなん)をしるものなり広(くはう) 野(や)海上(かいしやう)にたづさゆる物也 ○仏龕(ぶつがん)は今いふ仏像(ぶつざう)を いるゝ厨子(づし)なり 【右丁下段挿絵】 渾儀(こんぎ)《割書:こんてんぎ》 磁針(じしん) 仏龕(ぶつがん)《割書:づし》 仏座(ぶつざ) 華鬘(けまん) 錫杖(しやくじやう) 【左丁下段挿絵】 椸(い)《割書:みそかけ いかう》 木魚(もくぎよ)  鈴杵(れいしよ) 鈴(れい) 《割書:独鈷(とくこ) 三鈷(さんこ) 五鈷(ごこ)》 手炉(しゆろ)《割書:えがうろ》 数珠(すうじう)《割書:じゆず》 宝(はう)▢(ら)【片+票】《割書:ほらのかい》 筁(きよく)《割書:を》 【右丁上段】 ○仏座(ぶつざ)は蓮座(れんざ)なり獅子(しし) 座(ざ)須弥座(しゆみざ)荷葉座(かようざ)岩(いわ) 座(ざ)唐座(からさ)等(とう)なり ○華鬘(けまん)は西城(さいいき)の女(をんな)の首(かしら) のかざりなり瓔珞(やうらく)なり頸(くび) のかさりなり ○錫杖(しやくじやう)は梵(ぼん)には隙棄(げきき) 羅(ら)といふなり ○椸(い)は衣服(いふく)をかくるものなり 又/衣桁(いかう)とも衣架(いか)ともいふ ○木魚(もくぎよ)は木(き)にて鯨魚(くじら)のかたち をつくりその声(こゑ)の大(おほい)なるにとれ りよつて鐘(つりがね)を鯨(げい)といふ禅家(ぜんけ) にもちゆ ○鈴(れい)は口金舌(こうきんぜつ)なり真言(しんごん)修(しゆ) 法(はう)の具(く)なり 【左丁上段】 ○杵(しよ)は独鈷(とくこ)三/鈷(こ)五/鈷(こ)の三色 ありともに真言家(しんごんけ)の具(ぐ)なり ○手炉(しゆろ)はえがうろ和尚(おしやう)上人(しやうにん) 是(これ)を持(ぢ)して仏前(ぶつぜん)にむかふ ○数珠(じゆず)は念珠(ねんじゆ)なり諸宗(しよしう)かは りあり ○宝(はう)▢(ら)【片+票】はほらのかいなり海中(かいちう) の梭尾螺(さひら)をふくなり法螺(はうら)と も梵貝(ほんはい)ともいふ修験(しゆげん)の家(いゑ)又 は軍陣(ぐんぢん)にふく ○筁(きよく)はおいなり山伏(やまぶし)のおふ ものなり笈(おい)とも書(かく)べし ○押桶(をしおけ)は産(さん)のとき胎衣(ゑゐ)を 入る桶(おけ)なりまげ物にじて鶴(つる) 亀(かめ)をゑがく ○石灯(せきとう)は仏神(ぶつじん)の前(まへ)にあり 【右丁下段挿絵】 押桶(をしおけ) 石灯(せきとう)《割書:いしどうろ》 魚箸(ぎよちよ)《割書:まなばし》 交椅(かうゐ)《割書:きよくろく》 摺畳椅(しうでうい) 神主(しんしゆ) 霊牌(れいはい)《割書:いはゐ》 【左丁下段挿絵】 羽子板《割書:はごいた》 酒帘(しゆきん)《割書:さかばやし》 鎹(そう)《割書:かすがい》 石碑(せきひ)《割書:いしぶみ》 鎖(さ)《割書:くさり》 𣞙(さう)《割書:つゞみのだう》 和卓(くはしよく)《割書:おしき》 草薦(さうせん)《割書:こも》 竹席(ちくせき)《割書:あじろ》 【右丁上段】 又/在家(さいけ)手水鉢(てうづばち)の前(まへ)にも立る いしどうろ ○魚箸(ぎよちよ)はまなばし也/魚鱠箸(まなばし) 又は肉箸(すなばし)とも書(かく)べし ○交椅(かうい)は今(いま)いふ曲彔(きよくろく)のこ となり字(し)未詳(いまだつまびらかなら)【「未」の送り仮名「ず」が欠けているか?】 ○摺畳椅(しうでうい)はたゝみ曲彔(きよくろく)なり ○神主(しんしゆ)は廟主(べうしゆ)なり儒者(じゆしや) のいはゐなり神主(しんしゆ)をおほ ふさやを櫝(とく)といふ ○霊牌(れいはい)は仏者(ぶつしや)のいはゐ也 かたちさま〴〵かはりあり ○石碑(せきひ)は墓所(むしよ)にたつる石(せき) 塔(たう)なりいしぶみといふ碑(ひ)に 銘(めい)を書(かく)なり ○羽子板(はごいた)は正月に羽(はね)をつく 【左丁上段】 ものなり胡鬼板(こきいた)ともいふ ○酒帘(しゆうん)はさかばやしなり 一に望子(ばうし)ともいふ酒望子(さかばうし) といふをあやまりてさかばや しといふ ○鎹(そう)はかすがいなり鉄(てつ)にて これをつくる鈌(けう)同 ○鎖はくさりなり鉄鎖(てつさ)銅(とう) 鎖(さ)ならびに同又/鋃鐺(らうたう)とも 書(かさ)【「かく」とは読めない】べし ○/𣞙(さう)はつゞみのたうなり又 𣐎(くは)とも書なり ○和卓(くはしよく)はこゑをあやまりて をしきといふよつて折敷(をしき) とも書なり ○草薦(さうせん)はこもなりわら 【右丁下段挿絵】 㡠褙(とうほい) 紙手(かうで) 短冊(たんさく) 要(かなめ) 啄木(たくぼく) 柳筥(やないばこ) 抽匣(ちうかう)《割書:ひきだし》 土瓶(どびん) 滴器(てきき)《割書:げすい》 煙盃(ゑんはい)《割書:きせる》 皺皮(すうひ)《割書:ひきはだ》 【左丁下段挿絵】 宝蓋(ほうかい)《割書:てんがい》 棺(くわん)《割書:ひつき》 輀(し)《割書:ひつきぐるま》 龕(がん) 【右丁】 にておりたるむしろなり○竹席(ちくせき)は今(いま)いふあじろなり簟(たん)同し篾席(べつせき)も同し たかむしろ○㡠褙(とうほい)はかけ物に小べりなき表具(ひやうぐ)をいふ道背(たうほ)㡠補(とうほ)絵(ゑ)とも書(かく)なり へりほそきを輪補(りんほ)といふ○紙手(りうで)は物を入る紙(かみ)のふくろなりかうでんといふはあやまり也 紙(し)▢(らう)【糸+娄】はかうより○短冊(たんざく)は一に短籍(たんしやく)とも探索(たんさく)とも書(かく)べし色紙(しきし)○要(かなめ)はあふきのかな めなり一に鹿目(かなめ)とかく○啄木(たくほく)は表具(ひやうぐ)の紐(ひも)なり組糸(くみいと)のかたち鳥(とり)の木(き)を啄(つゝき)たるあとに にたれは啄木(たくぼく)といふ○柳筥(やないばこ)はをくり経歌(きやううた)の題(だい)又は硯(すゞり)鞠(まり)冠(かふり)などのする台(たい)なり木(き)の数(かす) 丁半(てうはん)のわかちあり○抽匣(ちうかう)は箱(はこ)のひきだしなり又は抽斗(ちうと)とも書(かく)なり○土瓶(どひん)は陶(つち)に てつくり茶(ちや)を煮(にる)器(き)なり○滴器(てきき)はげすいなり下水(けすい)とも書(かく)べし水(みづ)こぼしなり ○煙盃(えんはい)はたばこをのむきせるなり但(たゝ)し和字(わじ)なるべし○皺皮(ひきはた)はしぼみかわなり 刀(かたな)わきざしのすふくろなり蟇皮(ひきはだ)同○宝蓋(はうかい)は天蓋(てんがい)なり仏(ほとけ)のうへにおほふものなり ○棺(くはん)はひつきなり死人(しにん)をいるゝはこなり柩(すう)【「すう」は○囲み】同/棺(くはん)をいるゝ外(そと)を槨(くわく)といふ寸法(すんほう)さだな【㊟】り あり○輀(じ)は喪車(そうしや)なり今(いま)は大轝竹格(たいよちくかく)をもちゆ僧家(そうけ)にこれを龕(がん)といふ     拾冊之内 【左丁】 【裏表紙裏:文字無】 【㊟「ま」の誤ヵ】 【34と全く同じ 翻刻は略す】