痘瘡(ほうそう)麻疹(はしか)水痘(みづいぼ) 人間(にんげん)一世(いつしやう)の大厄(だいやく)なれども其(その)かろきに至(いた)りては服薬(ふくやく)をも用(もち)ひずして 治(ぢ)する其中(そのうち)に稍(やゝ)はげしく熱毒(ねつどく)さかんに足腰(あしこし)たゝず人事(じんじ)を失(うしな)ひ 夢中(むちう)の如(ごと)くなるも有(あ)り然(しか)れども養(やう) 生(じやう)をよく専(もっぱ)らにする人は第一食(たいいちしょく) 物(もつ)を用捨(ようしや)しておのづから全快(ぜんくわい) に至(いた)る はじめ熱有(ねつあり)と思(おも)はゞよく 風(かぜ)にあたらぬやう蚊帳(かや)又は紙帳(しちやう) を用(もちひ)て日中(ひる)も其内(そのうち)に居(ゐ)るべく 冷(ひやゝ)かなるものを食(しよく)せず渇(かは)くとも水(みづ)を 呑(のむ)こと大(おほい)にわろし白(しら)かゆ又は白湯(さゆ) 漬(づけ)寒晒(かんさらし)の粉(こ)道明寺(だうみやうじ)の粉(こ)など食(しよく)す べし大人(だいにん)は其心(そのこころ)を得(う)れども幼稚(おさなき)ものは わきまへもなくくるしきまゝに夜着(よぎ)をふみぬき 手足(てあし)を出(いだ)し冷(ひゆ)るをかまはざるものなれば看病人(かんびやうにん) よく〳〵心附(こころづけ)て介抱第一(かいほうだいゝち)なり 食(しよく)して悪(あ)しきもの  一 鳥類一切(とりるいいつさい)一 玉子(たまご)《割書:百日いむ》  一 青物(あをもの)油物(あぶらけ)は《割書:七十五日いむべし》  一 豆腐(とうふ) 一こんにやく一そら豆(まめ)  一 竹(たけ)の子(こ)一 餅(もち)   一 梅(うめ)ぼし  一 麺(めん)るい《割書:うんどんは|よろし》  一 梅漬(うめづけ)  一 柿(かき)  一 菌(きのこ)るい 一もみうり  一 茄子(なす)の生漬(なまつけ)《割書:百日いむべし》 肥立(ひだち)かゝりて怒(はらたつ)ことを忌(いむ)べし又 哀事(かなしむこと)【事は異体字】すべて気(き)をつかふ 事をまぎらせんと雑談(はなし)又は草双紙(くさぞうし)などよみてたいくつせぬことよろし 結髪(かみをゆひ)月代(さかやき)を剃(そる)こと大(おほひ)ひにあしく廿日又は三十日も過(すぎ)てざつと洗足(せんそく)し 【以下は見切れ部分のため確定文字のみ翻刻】 □        其後(そののち)沐浴(ゆあみ)髪月代(かみさかやき)し□□よろし