【表紙 題箋】 安政大地震絵【繪】 《割書:九十六枚|二十九枚》【「九十六枚」に打消し線】 【資料整理ラベル】 ぬ ̄ニ 25 ̄イ 【白紙】 雨(あめ)には  困(こま)り〼【ます(三枡紋)】 【右記の下側】 野(の)じゆく【野宿…雨に困り、も、外寝にもつながる】       《題:しばらくのそとね》          市中三疊            自作 東医(とうい) 南蛮骨(なんばんほね) 接外料(つぎぐわいりやう)日々(ひゞ)發(はつ) 行(かう)地震(ぢしん)出火(しゆつくわ)の その間(あいだ)にけが をなさゞ るもの あらん や 数(かず) 限(かぎ)り なき 仲(なか)の 丁先(ちやうまづ) 吉原(よしはら)が 随市川(ずいいちかは)つぶ れし家(いへ)の荒(あら) 事(ごと)に忽火事(たちまちくはじ)に 大太刀(おほだち)は強(つよ)くあたりし 地(ぢ)しんの筋隈(すぢぐま)日本堤(にほんづゝみ)の われさきと転(ころ)びつ起(おき)つかけ ゑぼしきやつ〳〵と騒(さは)ぐ猿若(さるわか)町 芝居(しばゐ)の焼(やけ)も去年(こぞ)と二度(にど)重(かさ)ね鶴菱(つるびし) 又(また)灰(はい)を柿(かき)の素抱(すほう)は何(いづ)れも様(さま)なんと 早(はや)ひじや厶【御座】りませぬか実(じつ)に今度(こんど)の大(たい) 変(へん)は噓(うそ)じや厶らぬ本所深川咄(ほんじやうふかかははなし)は築地(つきぢ)芝(しば) 山(やま)の手(て)丸(まる)の内(うち)から小川町(をがはまち)見渡(みわた)す焼場(やけば)の赤(あか)ッつら 太刀(たち)下(した)ならぬ梁下(はりした)に再(ふたゝ)び鋪(しか)れぬ其為(そのため)に罷(まか)り出(いで)たる某(それがし)□【ハ(は)か】〇 【右下側から】 〇/鹿島太神宮(かしまだいじんぐう)の 御内(みうち)にて磐石(ばんじやく) 太郎/礎(いしずへ)けふ 手始(てはじ)めに 鯰(なまづ)をば 要石(かなめいし)に て押(おさ)へし上は 五重(ごぢう)の 塔(とう)の九(く) 輪(りん)はお ろか一厘(いちりん)◎ 【左下側から】 ◎ たり共 動(うご)かさ ぬ誰(たれ) だと思(おもふ) アヽつがも 内證(ないしょ)の 立退(たちのき)藝(げい) 者(しや)の燗酒(かんざけ) 焼(やけ)たつぶれ た其中(そのなか)で 色(いろ)の世(せ)かいの繋(はん) 昌(じやう)は動(うご)かぬ御代(みよ)の 御恵(おんめぐみ)ありが太鼓(たいこ)に鉦(かね) の音(をと)絶(たへ)ぬ二日の大せが きホゝつらなつて坊主(ぼうず) 地震(じしん)一口(ひとくち)はなし かしまのかみ 江戸のおゝ ししんにて みまはりに まいられける とちうにて なにかあや しきぬら くらものに てあいけれは 〽(かしま)くせものまて ◯こなたはそれと みるよりもひつくり せしかよわみを みせしとせゝら わらいなにか とうしたと 〽(かしま)そのおちつき かほかふさ〳〵しい いつたいわれはとこへ ゆくのたトいわれて ししんはさしつまり 〽(ししん)アヽラさんねんやくやしやナ こんとゝいふ今度は しんしうをふるつても大江戸へ出て かみなしつきをさいわいにいちはん おゝあてにあてよふとおもつたに おやふんにみつかつてはもうかなわぬ さあこれからはしみ【に?】ものくるひたとへ このみはなへやきになりおゝくの人に くわるゝともいてこふんをまたすししんに【この前後意味不明】 ァ□□□くそことうせ〽(かしま)なにをこしやくな【?】▲ ▲ぬらくらものこのかしまの かみのめにいつては江戸はもち ろんしよこくまてゆるかぬ みよ  さわかすたいさいそこ【御代(を)騒がす大災?】 いつすんもうこくまいそ 《題:《割書:/諸客(おきゃく)ハ/八百万神(はつひやくばんじん)の/大一座(おおいちざ)|/馳走(ちくそう)ハ/鹿嶋(ていしゆ)が/地震(ぢしん)の/手料理(てれうり)》/鯰(なまづ)能かば焼(やき)大(おゝ)ばん振(ぶる)舞(まひ)》 鹿島(かしま)大/明神(みやうじん)出雲(いづも)の大社(おゝやしろ)に 出りて諸々(もろ〳〵)の神達(かみたち)とともに 氏子(うぢこ)の者(もの)の縁結(えんむすび)をして 居(い)給ひしに本国(ほんごく)より早飛脚(はやびきゃく)を もつて府内(えど)の大変(たいへん)を告(つげ)とし たるにぞ取(とる)ものもとりあへず神(じん) 通(つう)をもつて数百里(すひやくり)の道(みち)をその 夜(よ)のうちにとつてかへしすぐさま かの大鯰(おゝなまづ)をとつておさへ江戸(いど)の見せ しか【以後(いご)の見せしめ】なればきびしき/刑(けいばつ)■(ばつ)【労カ】におこなはんと せらるゝところへ日本六十余州大小(につほんろくしふよしうたいしよう)の/弁(じん) /祇(ぎ)【振り仮名に「じんぎ」とあるので「神祇」としか思われないのですが…】も/縁(えん)むすびはそこ〳〵にとりしまひ おの〳〵うちそろひて鹿(か)しまへと舞(まひ)ふ きたまひしがこのていを見てかしまの かみのはたらきをかんじまたなまつの いと強大(ぎやうだい)なるにおどろきしさり【「退り」=しりぞく】 た【「け」か】んしゐ入念ゑも【このあたりよく分からない】しばしやま ざりけりあるじの明神はゑんろ の所さつそくにお見まひくだ されしだんありがたくぞんずると いち〳〵にれいをのべさて諸神 たちへなにがな【何か】ちそうせんと おもはれしがめゝにはちのゝ【「あゝにはかの」では?】 きやくらい【客来】といひことに八百萬 の大きやくなればつらはせんと ゑびすこんひらの二神へだんかう せられしになにかにといはふより この大なまづをかばやきにして ふるまひなばよきもてなし ならんといふにげにも【その通りだ】とお もひにはへにそのかうゐ【行為】を なしてづから大なまづを さきてかばやきになし 八百萬神たち をもてなし 給ひしは神武 いらいはなし にもきかざる うそ八百を おみきの あまりに よふて のぶる 【図中文字】 西宮ゑび寿 さぬきこんぴら 鹿島大明神 〽しらみじやアあるめへし よくつぶしだりやひたり したなまづちうにん からぶつちめろ〳〵 〽るすをつけこみ ふらちのはたらき いごのみせしめ かくごしろ 〽《割書:アイ|タヽヽヽ》もふ こんだから うごき升 めへから アレサおち つひて とつくり はけを きいて 下せへ これさ〳〵 アイタヽヽ なまづたぶ〳〵〳〵 〽うらめしひ なまつどの ドロン〳〵 【中段右】 〽マア〳〵そんなにしねエでも はつちがいふことがあるから きいてくだせへ これさ〳〵 【上段左】 ゆるぐとも よし ひめ なほす 要石 末広  〳〵と あふぐ   御代とぞ 【右下】 「しよくにん   でへなんぞ    おもしろいことを     くれ〳〵〳〵 【図のほぼ中程】 「せゝ   この〳〵□  かいて    くん    ねへ 【右文の下】 「ちと  きが  おもくて  やれねへ  し 【右文の下】 ウか 「のじ  どうやらな   ふきさま    でも    あめさへ     もら      ねば      よい      とひ       な 【左の下側】 「なんぞ  おやんな   はいな 【左文の下側】 「大工さん  おめへが一ばん  ゑらからう  なんぞ  くりだし    ねへナ 【右上】 子朋               なまづ 〽おにいがかたきだにげるな〳〵     せうたん【小胆】で        なまづ子      いさいられ【咎められ】てはかなはぬ        〽もうこないなら    かんにん〳〵          かんにん〳〵 なまづの をくびに 〽なに かばやき こいつわ たまらぬ にげろ〳〵 【中央左より】 国侍〽くやどもか合かた【相方】迄も   かしま        にぬ         〽まい年の         びんた       事ゆへいづもへ          ぶちはな     旅立に一日出て           すぞ      このしまつ先■【「だ」か】       なまづ         つてこと信州 ̄ト いゝ        〽かん        大坂 ̄ト いゝ手まへ          にん〳〵     迄がこのしまつ                  のみすきとはいわせ                 ぬぞこのはきつと                  つゝしめ〳〵             女ら             〽ヲヤ             のめ〳〵【おめおめ】とよく               ぶらつきにきや                   がつた              をもいれぶち                くらしていやりよ                ふざけたやろう                     だ 【看板】 名ぶつ なまづかばやき  大入叶   あたりや 大平安心之為 去ル元禄十六年十一月廿ニ日夜宵ゟ 電【いなずま】強く八ツ時より地鳴事雷の如し大地俄 ̄ニ ふるゐ出し家 ̄ニは小船之大波 ̄ニ うこくか ことく地二三寸あるいは四五寸さけたる 所あり正保【四角の中に「正保」】四年慶安三【四角の中に「慶安三」】寛文二【四角の中に「寛文二」】 宝永三【四角の中に「宝永三」】天明二【四角の中に「天明二」】右江戸大地震 弘化四年三月廿四日信州大地震江戸モ 此夜少々地しんあり今年三月八日ゟ 善光寺開帳諸国ゟ参けい有然るに 浅間山 ̄ノ けむり常より減(へ)たるを あやしみゐたる處に 三月廿四日 ̄ノ夜四時 俄 ̄ニ地ふるい出し 立所に人家を たをし死する者 数しれず丹波川 水をし出し左右 湖の如し 安政二卯年     十月二日 江戸大地震夜夜四ツ時ゟ地ふるい 出し土蔵かたふき人家くづるゝ 事おひたゝしく老若男女おしに こたれて【「こだれて」=倒れかかって】死する者数をしらず此時 震【?】初新吉原ゟ出火初り程なく所ヽより 出火ありすへて火口三十八口たちまち 大火と成翌三日午 ̄ノ刻頃よふやく火 しづまる是か為 ̄ニ死する者又おびたゞし 翌日 ̄ニ成といへ共又ことやゆりかへしあらんかと 人々所々へかり小屋をしつらい夜をあかす事 七八日之間也其後雨ふり地震よふ やくしつまり人々あんとの 思ひをる頃始て事は 実 ̄ニ前代未聞也  ■抬■■【■の文字、『大漢和辞典』にも見当たらず】      此守を懐中      すればけがなし      家内取もはるべし   【紙面右下】 〽はりといきじがさとのならいだと申ンすが はりをしよつたのはこんどう初てゞおざりいス     〽はたヤア      うなぎは      好だか      なまづ      を見ると     身ぶるいが     出るよ其だ     ろよ地しんを      いこせるかもしれねへ         おあいだ【御間=相手にされないこと】な           やつだねへ 〽其方共 此度我等が 里よふ分【「妖氛(えうふん)=わざわいをおよぼす気」か】をさわがせ あまつさへ人民をそんぜし事 其つみかろからす右の とがによつて かばやきにもおこのふ可也 しかしじゝんの かばやきには かみ なり の 香の物 でも付 づは成 まいか 〽いやはや一とおそれ 入ました此度私共 のふらち申分はム【ござ】り ませんほいと申せば    じゝんの     仕出した     事ゆへ致     方かム【ござ】りません 【上段】 大都会不尽(おほつゑふし) 《割書:二上リ|〽》 大なまづゆ ̄ウ らく世間(せけん)は 大そう火事をけし御すくひは おたきだしにけ出す おやこは無事(ふじ)のさた 大どうのつゝはり丸太(まるた) あんまこ詠んで 仰(げう)てんし わらじの直(ね)を 上 ̄ケて御ふれに 番太(ばんた)【「番太郎」の略】もぞつとして かべふるひじやうだん所で ござりませんやつとの おもひでつぶれて 弁当(へんとう) 家根(やね)のうへ 【下段】 なき上戸   ゑんまの子 はらたち  上戸 ちしん   の子 わらひ上戸   地蔵の子 みな〳〵 〽︎このように大地しんがゆりますはこれも 天さいとあきらめてわおりますれど あきらめられぬはわれ〳〵しようばい まこと〳〵ひまになりてこまります とうかあなたさまの おひよりでわたくし どものせわしく なりますようにおねがい申します なむ天道さま とみな〳〵 一どうに ねがひける 天道 〽︎これ〳〵みなにそのように 地しんお【なカ】あんじるな たとへこうじひまで あろうともくよ〳〵 するなよこれを みよこのようにくわを てにもちさかんの てつだいにさいでれば しごとはつゞくしかねには なるしくよ〳〵せづに はやこれおもち よわたりな【お】せよと しめし給ふ みな〳〵 〽︎申しかしまさまあなた さま【「さま」の合字】 が御ぞんじでは ございませんか このようにゆらせ て下さりますとは まこと〳〵きこへません 地しんもせけん一とう でぜひもございません があなたにわ【ママ】 かなめいし といふ大丈ぶ な石がなんの ためでございます このようにゆりる くらいならなぜ 要石でありますよ そのようないし ならいりませんから ぶん■たおして しまうがいゝと みな〳〵一どうに かしまさまを くどきけるこそ どうりなり 神主 〽︎これ〳〵みな〳〵のいふ所 しごくどうりにはあれ どもそのよふにはら立で 下されては われ〳〵が 間事〳〵大ごまりに ぞんつるこれといふも 天さいのなす所とあきら めて下さりませ又そのように 大せつなる石お【ママ】こはされては 手前どもがしよくぶんが上る ゆへにどうかひらにごめん下さり ますと神主まことに迷惑そうに わひにける 【このテキストは、わ•は、を•お などの混同があり、又仮名遣いも現代風で驚きました。例、「やう」(正)を「よう」と記す】 【ナマズと雷の取組表 「天下泰平」の軍配を持つ行司の横に「かしま」の短冊 】 火出山 鯰ケ淵 要石 鹿嶋灘  崩藏 壁の山 御用小屋 焚出し 金竜山 塔ケ先 花廓 三ツ櫓 飯の峰 外ケ内 古木山 甲張 【上段】 十月の二日は 玉【至?】て吉日にて 二十八宿の虚蓿(きよしゆく)に あたり 時は亥の刻 なれば 仏説(ぶつせつ)には 此日(このひ)この時(とき)の 地震(ぢしん)を 帝釈動(たいしやくのゆり)と 申して そのしるし 大吉なりと ふるき書(ふみ)に ありしとかや なまづめを はなしうなぎの ぬら蔵をゆり くずしたる 金(かね)の 口(くち) あけ 【中段以下の会話文】 〽︎よいやら サアノ ヤア 引 〽︎ヤイ〳〵なまづまけて くれるな たのむぞ〳〵 〽︎だがもちつと やんはりやんなせへ またうごくと こまりやす ̄ゼ 〽︎かしまさま こゝは一ばんふつて やつてくだせえまし 〽︎いや〳〵おれがいづもへ いつてきやうとおもつて そこへでると このしまつ いごの みせしめ かんねん しろ ウン〳〵〳〵 〽︎まんざい らく〳〵 おかしなかほたねへ 【最下段】 〽︎ゑんやらヤア 〽︎ハヽア引 〽︎ゑんまの子の ヤア引 〽︎ドツコイ そううまくは いきやせん わしも ぬらくらしねへ やうにやけばで はいをつけ てきたは 〽︎ヤア ゑんまの 子があの なかへまちつて ゐやがる ヤへ はやしことば 〽︎そこで樋口(ひぐち)かまいります かみなりさんがたびへにげ あとでしあんのごゐんきよに【「ヲ」に見えますが】 けんのうた 〽︎酒のきげんか ちどりあしかみなり あきれてみひよこ〳〵 それぐら〴〵とんで 出(で)てまいりましやう なんじやかはやがね火事(くはじ)が あるぢしんがじいさまに しかられてさるははい死(し)ぬ とんだこつたなふ 夫(それ)乾坤(あめつち)の開(ひら)けてより 地(ち)を動(うご)かす挙(あげ)て数(かぞ)へがたし ト年代記で見たばかり 何(なん)にも知(し)らぬ夢助(ゆめすけ)も 今度はほんに目が さめて見廻す 四方(しはう)は火災(くわさい)の中(なか) 命(いのち)あやふく たすかりて 又かへり見る      ▲△ ▲△世(よ)の中(なか)は 大きな焼(やけ)より公(おほやけ)の 御手当(おてあて)あつき御国恩(ごこくおん) うすき袋(ふく)を持丸長者(もちまるちやうじや)米(よね)の 俵(たはら)のかず〳〵は施行(せきやう)の高(たか)の 八千 余(よ)町 豊(ゆたか)に見ゆる 張出(はりだ)しも黄金(こかね)の花を さかする如く実に ありかたき御代や 見よ〳〵 大黒(だいこく)の   つち   動(うご)かして    市中(いちなか)に   宝(たから)の    山を積(つみ)ぞ   めでたき        紀の長丸 〽モウ うごかぬから はなして  くだせへ   ヤレ   万ざい    らく    〳〵 〽これは〳〵  大そうまくぜ  こういふあんばい   ならことし    一ぱいでも     がまんが       できます 〽ぢしんも よつぼと いゝものだ よの中の うるほひに  なるくふ  うか   しら 〽もつと   ふれ〳〵 〽これは   ひろう    にも   ほねが    おれ     ます 〽こちら  へもたん   と〳〵【虫損】 【四角い縁取りの中に】 恵比寿天(ゑびすてん) 申訳(もふしわけ)【譯】之記(のき) 我等諸神に留守居をあづかり罷居候ところ あまりよきたいをつりしゆへ一 盃(はい)をすごし たいすい ̄ニ 【大酔】および候あいだをつけこみたちまち かなめいしをはねかへし大江戸へまかりいで 藏(くら)のこしまき【土蔵の外壁の下部の特に土を厚く塗りまわしてある部分】をうちくづしはちまき【土蔵の軒下で、横に一段厚く細長く土を塗ったところ】を はづし諸家(しよけ)をつぶし死亡(しぼう)人すくなからず 出火(しゆつくわ)いたさせはなはだぼうじやくふじんの しよぎやういたし候ゆへさつそくとりおさへ ぎんみ仕候ところ一とうのなまづは身ぶるひして 大 ̄ニ おそれ一言(いちごん)のこたへもなくこのときかしらだち たるとみゆるものつゝしんで申かよふ 〽おそれながら仰のおもむきかしこまり候也此たび大へんの ことは一とふり御きゝ遊されく下さるべし此義は申上ずとも御存の 義にしてはるなつあきふゆのうちにあついじふんにさむい日あり さむいときにあたゝかなる日ありかくのごとくきこうのくるひ 有てかんだんの順なるとしは少く候今年最ふじゆんなから ごゝくのよくみのり候は八百万神の御守遊され候 御力による所也さて天地にかんだんの順のさだまり ありてはるなつと其きのじかうことの外くるひ候ゆへ わたくしともくにのすまひにては以の外おもしろき じせつになりたりとわきまへなきものどもちん しんのごとくくるひまはり候ゆへわたくしども いろ〳〵せいとう【制統】をいたせどもみゝにもかけず らんぼうにくるひさはぎ候よりつひに思ひよら ざる日本へひゞき御しはいの内なる ところをそんじ 候だんいかなる つみにおこなわるともいはい【違背】 これなく候也され共わけて 御ねがひにはわたくしども のこりなく御うりつくし候とも そんじたるいへくらのたつにもあらねば まつ【まづ=とりあえず】しばらくのいのちを御あづけ 下されこれより日本のとちをまもり いかなるじかうちかひにてもこの たびのごときことはもうとう仕らず 天下たいへいごこくほうねんを 君が代をまもり奉り候べしと 一とうにねがひけるゆへわたくし より御わび申上候ところさつそく 御きゝすみ下されまことに もつてありがたく候 きやうこう【向後】十月のため よつて苦難(くなん)のことし   自身(じしん) 除之守(よけのまもり) 東方 西方 南方 北方 ■  ■  ■  ■【梵字と思われる文字が四文字】      右四方へはるべし ■【梵字と思われる文字】《割書:家の中なる|てん上にはる》又守に入置てもよし 大平の  御恩沢【澤】に 高き  まくらの   ふし戸を    やぶり     し  地震(なへ)は いつしか  しづまりてまた やごとなき【「やんごとなき」の「ん」の脱落。時代的にはこの形で通用。】   御恵に    つきせぬ  御代のかづ〳〵を    さゝれいしの   みうたに    ならひて 君が代は  千千に   八千代に かなめいしの  いはほは   ぬけじ  よし   ゆるぐとも ぢしんにてやけたる あとは浅草に やどをかるべき一つ 家もなし 【上段】 こゝに安政二年 十月二日の夜 大地震(おほぢしん)ゆりて 家(いへ)たをれ 藏(くら)くづるゝこと おびたゞしく 猶(なほ) 死亡(しぼう)の人(ひと) 多(おほ)かる 中(なか)にけがもなく あやうき命(いのち)を たすかりたる 人々(ひと〴〵)は伊勢(いせ) 太神宮(だいじんぐう)の 御たすけ也 その故(ゆゑ)は 彼時(かのとき)御馬 御府内(こふない)を はせめぐり 信心(しん〴〵)の輩(ともがら)を        すくひ玉ふにや たすかりし人々(ひと〳〵)の衣類(いるゐ)の袂(たもと)に 神馬(じんめ)の毛入(けいり)てある といふをきゝてその人々 あらため見るにはたして 馬(うま)の毛(け)出(いづ)る也 是(これ)こそ 大御神(おほんかみ)の守(まも)らしむる所なりと云ふ 【右下】 〽□□うまがでゝはおれ たちはかなわねへはやく にげだせ〳〵 【中央下】 〽アヽいてへ〳〵もふ〳〵 でませんごめん〳〵 〽どうもふだんからぬらりくなりとしてみたくても ねへやつだとおもつたがこんなことをするやつとは おもはなんだいま八百万(やをよろづ)【萬】の神〳〵はみな いづもへたゝれてわれひとり留守居(るすゐ)を すれとわがいちぶんでころすもならず ともかくもいけどりにしていづも おもてへさしのぼせとがのほとを さたむへし どつこい にけるな大 なまづたいとは ちがつてとりにくひ なんぼ神でも五尺 の身で大地のそこ にわだかまるこいつを だいていづもまでゆくには ゆかれすかつぐもならず なまづなまなか【なまじっか】とらへた うへはにがしてるすい【「ゐ」とあるところ】がすみは せぬアヽいゝところへきたうなぎや はやくこいつをつかまへていづものやしろへ やつてくれ《割書:うなきや|》〽どうして〳〵 このやうなおほきななまづを 神の手や人手でもつては まいられぬ 〽ハテそれはこまつた ものだアヽいゝことを かんがへた人手では やれぬなら〽どうして やりましやう  〽はやくむまにに   してやるがいゝわさ 《題:地震《割書:ぢ|しん》雷《割書:かみ|なり》》 《題:/過事(くはじ)/親父(おやぢ)》 【表題の下】 おや ぢか いふ 〽こいつらはわるくふざけるやつらた  どんなことをするかしれねへから  回禄《割書:火の|神也》加茂大明神《割書:かみ|なり》鹿島 《割書:地を|守る神》此御神に願ツてかみしばりに してもらはざア いく めへ 【表題左へ】 ◎火の印 ●かみ   なり ▲なまづ の印也 ◎ 〽ナント/雷(かみなり)さんおめへは/久(ひさ)しく/音(おと)がしね【字母は「年」】へぜへよくおと なしくしているぜ●〽ナアニ/私(わつち)もしかたなしさ▲〽ナゼ ●〽ソレ四年いぜん八月四日に大ふざけをしてツイ おつこちやした其時たいこは/打折(ぶちおつ)てしまふ其上 こしぼねを/強打(ひどくぶつ)て/天竺(てんぢく)へ/返(けへ)る こともできず今に /迷(まこつい)ているから /天竺(てんぢく)/浪人(ろうにん)だ なまづさん おめへは/時(とき〳〵) 〻 やけになるが 此間なざア ユサ〳〵ドロ〳〵と /直(すぐ)に/四方(しほう)が/花盛(はなざかり)だアリヤどふいふもんだ ▲ 〽ナアニ/私(わつち)は水の中のもので火はしらねへはナ ● 〽そんならアノ大ふざけはどふいふもんだねへ 大やけに成たもとはおめへから/起(おこつ)たことだせ ▲ 〽アリヤ/春夏(はるなつ)の/季(き)に/曲(くるひ)が有て/陰陽(いんやう)の/気(き)が /和順(わじゆん)せずソレ/私(わつち)が/世界(せけへ)で/面白(おもしろ)く成からツイ/曲(くる)ひ 出す所が/少(ちつと)で/濟時(すむとき)もあり又大ふざけをやる時も 有てソコはきまりなしさ◎〽そんなら/四季(しき)の/気違(きちごへ)から おこる所だかららんしんにでも成てなかまぢうがおどり ひつくりかへりなぞをするのかへ▲〽サアそこは/自身(じしん)に/考(かんかへ)ても/分(わから)ら((ママ))ねへ 金持を  ゆすりに   きたか 大地しん  なまつ      戯 【右上】 安政二年十月二日の夜 大地震おびたゞしく家くづれ  人おゝく死す内に  あやうき命をたすかりし人ハ  伊勢太神宮そのほか神〻  信心のともからハ  神馬御府内を  はせめぐり 【上辺中央】 人/袂(たもと)に 此毛出る也 /是(これ)神の  守ら  しむる也 ありがたや〳〵 【上辺左端】 神馬にのられてハ  もちやげる事も  いすぶる事も   でじきねへ〳〵 【右端下側】 「これごらんハたしのたもとにも  こんな毛があるよ   ふしきたねへ 【右端下】 「これは〳〵〳〵  めうだ〳〵〳〵 【右分の左】 「おやふしぎだねへ   わたしもみよや 【右分の左】 「こいつハめうだ〳〵〳〵 まことにふしぎだ /夫乾坤(それあめつち)の/開(ひら)けてより /地(ち)を/動(うご)かす/挙(あげ)て/数(かぞ)へがたし ト年代記で見たばかり /何(なん)にも知(し)らぬ/夢助(ゆめすけ)も 今度ハほんに目が さめて見廻す /四方(しはう)ハ/火災(くわさい)の/中(なか) /命(いのち)あやふく たすかりて 又かへり見る      ▲△ ▲△ /世(よ)の/中(なか)は 大きな/焼(やけ)より/公(おほやけ)の /御手当(おてあて)あつき/御国恩(ごこくおん) うすき/袋(ふく)を/持丸長者米(もちまるちやうじやよね)の /俵(たわら)のかず〳〵ハ/施行(せきやう)の/高(たか)の 八千/余(よ)町/豊(ゆたか)に見ゆる /張出(はりだ)しも/黄金(こかね)の花を さかする如く実に ありかたき御代や   見よ〳〵 /大黒(だいこく)の  つち  /動(うご)かして  /市中(いちなか)に  /宝(たから)の    山を/積(つみ)ぞ   めでたき       紀の長丸 【下辺右側】 「モウ うごかぬから はなして くだせへ ヤレ 万ざい らく〳〵 【下辺左側】 「これハ〳〵 大そうまくぜ こういふあんばい ならことし 一ぱいでも がまんが できます 【右文書の上側】 「ぢしんも よつぼと いゝものだ よの中の うるほひに なるくふ うか しら 【左端中央】 「こちら へもたん  と〳〵 【左端下辺】 「これは  ひろう  にも  ほねが  おれ   ます 鯰舞し  の酒落 まはし  たる その 天罰の むくひ  来て こよひも  女郎に 延されに   けり  外山人しるす 【本文は次28ページで翻刻しました】 【左側の下札を翻刻します】 【表札】 《割書:うち身|くじき》りやうじ所              ゑんま堂 【表札の右下から】 当分之内ほどこし致しんじ候 えんま 「いそくな〳〵おれか子になつてきたものよくせづにおくものかあをあかの 鬼どもやくすりをつけて早くまいてやれいたかろうかわいそうに〳〵 しやうつか 「地蔵さんのおいかりもゑんまさんのおなげきもおれが引合にだされて てつだうのもあのなまづゆへださてにくいやつだナしなれぬことハたいぎた〳〵 地蔵 「おれがまもる此地めんを度〻うごかされてハおしやかのまへゑすまぬ地蔵の かほも三度だそかしまとのへはなしてきたかくごしろふといやつだ 《題:地震冥途ノ圖》 【右上】 ばんづけハ しゆんに して いそぐな〳〵 又けがを するぞ やれ〳〵 いとしい 事だ のふ 【中央上側】 じぞうさんの 子にして おくれ 【左中央】 ノ【ソ?】レ えんま の子 地ぞう の子 【右隅側】 いまに なをる すこしの しんぼう だ 【下辺中程から左に】 こどう せんに スチヤ ラカ ポク〳〵 で ござり ます こりや〳〵〳〵 土方 の子 たのみ ます おんま の子      /地震方々人迯状(ぢしんほう〴〵にんにけじやう)之事 一/此(この)ゆり/苦労(くらう)と申/者(もの)生得(せうとく)/信濃国(しなのゝくに)/生須(なまづ)の/莊(しやう)  /搖初村(ゆりそめむら)/出生(しゆつしやう)にてふ/慥(たしか)なるふら附者に付荒魔ども  /失人(うせにん)に/相立(あいたち)/異変沙汰(いへんさた)へ/諸々(しよ〳〵)/方々(ほう〴〵)にゆり出し  申候処めつほう也/火災(くわさい)の/義(ぎ)ハ當卯十月二日夜より  /翌(よく)三日午の下刻迄と/相定(あいさだめ)困窮(こんきう)人の/義(ぎ)ハ/難渋無住(なんじうむぢう)と  相きハめ只今御ほどこしとしてさつま芋三俵はしたにてたべ  申候御救之義ハ七ヶ所へ御/建(たて)じま /御恵(おんめぐみ)に/逢目嶋(あ?めじま)  可被下候事 一鹿島様/御法度(ごはつと)の/義(ぎ)ハ申に不及お/家(いへ)の/八方(はつぽう)相/傾(かたむか)せ申間鋪候  /若(もし)此者お/台所(だいどころ)の女中方の/寝息(ねいき)を/考(かんが)へ/内證(ないしやう)の/地震(ぢしん)致候歟  又ハゆり/逃(にげ)壁落(かべおち)致候ハヽ/急度(きつと)したるかふばりの丸太を  以て早速らちあけ可申候 一/愁患(しうせう)の義ハ/一連(いちれん)たく/宗(しう)にて/寺(てら)は/夜中(よなか)ゆりあけ坂  /道性寺(どうしやうじ)市中(しちう)まつぱたか/騷動院(そうどういん)大火(たいくわ)に/紛(まぎ)れ御座  なく候御/發動(はつどう)のゆりしたん/宗(しう)にてハこれなく候  /若(もし)物音(ものをと)がたつきひめわひより/瓦(かはら)をふらし候義ハ  無之万一ゆりかへし等致候ハヽ/我等(われら)早速(さつそく)まがり出/要石(かなめいし)を  /以(もつ)てぎうと/押(をさ)へ/付(つけ)/野田(のでん)へ/宿労(しゆくらう)さしかけ申間敷候/地震(ぢしん)の  たびゆつてむざんの如し   /造作(そうさく)ざん年     /鹿島(かしま)の/神無(かみな)月二日                /半性大地割下(はんてうだいちわりげ)水                 家なしまご右エ門店                  つぶれやお土蔵                どさくさほんくらないけんのん橋                 みじめや難十郎店                  お小屋太助  /世並直四郎(よなみなほしろう)様 【この一ページは単独で掲示されています。】 《題:/生捕(いけどり)ました/三(さん)度の/大地震(じしん)》 だいく 「ヱヽモシだんなこのてへくのわるひ ところはとくといひきけやして とも〴〵おわびをいたしやしやうから まアともかくもわつちらにおあづけ なすつてくださいやしじつのことわつちら はじめでしやらうまで日壱分とつて すきなすゐをたらふくけづりやすのも このしゆうのおかげでごぜへやすから みにかへてもとのおわびをいたさにや なりやせんのヲかしら とびの者 「そうさ〳〵おめへのいふとをり こんなことでもなくつ ちやアあいつのつらア 見にゆくこともでぎ やせんモシ〳〵 こりア一ばん わつちらが つらアたてゝくだ せへましな 左くわん 「あのしゆうの申 ますとをり人の うれひをよろこぶ のではございませんが こんなことでもなけ りやア【「ナ」では?】はなのしたが ひあがりますのヲ やね屋さんおまへなん ぞもそふじやアねへか やね屋 「ほんとうにさ つくろひしごと ぐれいしてゐた 日にやアすきな こめの水がのめや せんこちとらが ためにやア いはばいの ちのおや どうぜんで ござり ます どうぞ△ 【下側中程】 △かんべんして やつてださい まし や師 「へヱ〳〵わたくし なんぞもぢしんさまの おかけで五ほんや六本のお あしはあさのうちにもとり升 からぢしんまへのこめ やのかりも五つき たまつたたな ちんもすつ はりすまし ました そこらこゝ らもおかんがへ なすつて とうかこんど(の) ところはお見 のがください まし て ならふ ことな(ら) たり なく なつた じふん おつか まへくだ さいまし またぜに もうげが できます からトてまへ がつてをなら だ□てゝビた 〳〵※ ※わびことを するにかしまの かみもこゝろにおか しくわらひをふくみ けるがわざとこゑをあららげ 「イヽヤならぬかゝるつみ あるやつをゆるしおき なば日本六十餘州の なまづどもよきことに こゝろへまた〳〵かやうに しよ人にふかなんぎをさせ /市中(しちう)を大 /家破(かば)やきになさんも はかられねばいごの見せしめに なべやきのけいにおこなふべしと さらにきゝいれゐ【「給」では】はざればせんかた なくみな〳〵ためいきをつきなが(ら) 「ユリせれアとろせう汁 し【く?】らひやした 八幡宮  我等も  遠方  注進  ニ付今帰り  これは  大へん〳〵 太神宮  江戸にてなまづ  どもうちより  さはき候よし鹿嶋  明神通りかけ  ちうしん  いたすゆへ  そふ〳〵【早々】欠附【「駆けつけ」の当て字】  諸人をたすけの  手当なきまゝ我  馬の毛を一本つゝあたへ候しづかに立のけ〳〵 鹿島大明神 是は大へん〳〵外の国とちかひ當所ニて なまづともかやうのそうだふいたす事 我等留主中と あなどり候だん 不届 至極 一人 □も その まゝに 致かたし諸人 もはや我帰る上は あんど致けかせぬ やうしづまれ〳〵 【上方左へ】 かしまさま くに〴〵の地しんどもの見せしめに まづ江戸のぢしんめを  てひどく打ち   のめししよにんの  あだをてきめんに   とるかよか       ろう 神 「ハイ〳〵かしこまり ましたこのあたまに さしたるかなめ石を  さん〴〵にうちこみ   そのうへでせびらきに  してなまづの大かばやきを  こしらへしよにんへ   ほどこし      ませう 江戸 「アヽいたや〳〵   このうへの おねがいには  いのちはかりを おたすけくだされ  そのかはりには いまよりして  なまずの けんくわや  じやりの うへゝでます   ことは  いたしません くわん八しう 「わたくしは  どのくにゝも   あしをとめませぬ  くわんとうすぢをのたくり   あるきましたが    これからはきつと     つゝしみます 【下方 右側】 しんしう 「わたくしのつみをゆるして   くださるならば信しうも  かまどもなつち【なづち】も       いらねへ 小田はら 「どうぞとがのせんぎは   をだはらになればいゝが ゑちご 「わたくしはゑつちりゑちごの   ぢしんゆへかくべゑのやうに    さかさになつておわびを        まうします 甲しう 「わたくしはかうしうの   うまれゆへ  ぶどうのやうな   ひやあせを  ながしておそれ    いります 大さか 「大坂をゆり   いだしてならの  はたごや   みわのちや屋  まですこしは  いたませましたること   いつわり    なく   まうしあげ     ます 【この頁文字無し】 【この頁文字無し】 【裏表紙にて文字無し】