【表紙】 【題箋】 《題：家譜《割書：秀康公》《割書：従天正二年｜到慶長十二年》　一》 【見返し】 【左丁】 秀康様《割書：従天正二年甲戌至｜慶長十二年丁未》 【右丁・白紙】 【左丁】 　　　　　　越前世譜 　　　　　　　秀康様《割書：於結城暫被称｜秀朝又被復秀康》 　天正二年申戌 　　一　二月八日辰刻於遠江国敷智郡浜松庄宇布見村中村 　　　　源左衛門正吉宅　御誕生《割書：御本卦乾｜御性火》 【右丁】 　　　於義丸様与奉称《割書：御誕生前年十一月廿九日之夜御母浜松之｜御城ゟ宇布見村之郷士中村源左衛門宅江御移》 　　　《割書：御出生前後本多作左衛門｜重次万事取斗之》 　　　神君第二之御子御母永見氏《割書：於万方後薙髪号長勝院殿｜参州住人永見淡路守吉英女》 　一　九月十一日米大明神江　御宮参有之 【左丁】 　天正四年丙子 　一　正月中旬 　　　於義丸様遠州宇布見村ゟ参州岡崎之城 　　　三郎信康様御許江被為　移 　一　於義丸様御誕生被成候砌ゟ 　　　神君思召有之　御対顔無之段 　　　信康様ニハ兼々御存知之事故 　　　神君岡崎江被為　入候節能折柄ニ付本多作左衛門重次江 　　　被　仰含 【右丁】 　　　神君与　信康様御対座之節　御座之間之障子を 　　　於義丸様江為御敲被成候を 　　　神君御聞咎被成候ニ付 　　　信康様御座を被為　立 　　　於義丸様之御手を引　御前江御出被成私弟 　　　於義丸ニ御座候与被　仰上候得者 　　　神君初而　御対顔之御事故　御機嫌不斜 　　　御膝江御抱上被成丈夫成生立也与御喜悦之御様子ニ 　　　被為　在其節 【左丁】 　　　信康様致成長候ハヽ私力ニ茂可相成末頼敷存候与 　　　御取合被　仰上此時 　　　於義丸様 　　　神君ゟ来国光之御脇指御拝領被成 【右丁・白紙】 【左丁】 　天正七年己卯 　　一　四月七日 　　　　長丸様《割書：後｜秀忠様》御誕生《割書：御母｜西郷氏》 　　一　九月十五日 　　　　信康様於遠州二股城御自殺《割書：御年｜二十一》同所山上ニ奉葬 　　　　御法号 　　　　騰雲院殿 　　　　　　　但後年御埋葬之所ニ清滝寺を御建立　御法号 　　　　　　　　清瀧寺殿与御改 【右丁・白紙】 【左丁】 　天正八年庚辰 　　一　九月廿日 　　　　神君御四男福松丸様《割書：後称薩摩守忠吉｜尾張清須城主》御誕生《割書：御母｜西郷氏》 　　一　十一月 　　　　神君御女振姫君様御誕生《割書：御母｜穴山氏》 【右丁・白紙】 【左丁】 　天正十年壬午 　　一　四月十六日信長公武田四郎勝頼を討亡帰陣之 　　　　時遠州浜松之　御城江被立寄其節 　　　　於義丸ニ茂　御対面有之候処御才智御器量 　　　　被為勝候与御賞美有之 【右丁・白紙】 【左丁】 　天正十一年癸未 　　一　九月十三日 　　　　神君御五男万千代様《割書：後称武田五郎信吉｜常陸国水戸城主》御誕生《割書：御母｜穴山氏》 【右丁・白紙】 【左丁】 　天正十二年甲申 　　一　十一月先達而織田信雄　秀吉公与及矛楯被 　　　　相逼候ニ付信雄 　　　　神君江縋り援兵を被相乞依之為御加勢御出陣 　　　　於尾州小牧山御合戦御勝利之上御帰陣之処 　　　　其後亦復　秀吉公勢州羽津迄被打出候ニ付 　　　　神君ニ茂尾州清洲迄再　御出陣有之候処信雄 　　　　秀吉公与和睦相調候ニ付岡崎城江御引取被成其後 　　　　秀吉公ゟ 【右丁】 　　　　神君御親族之内御養子ニ被成度旨毎度以使者 　　　　御所望有之候得共御許容無之候処信雄再応依 　　　　被勧申御承知被成 　　　　於義丸様を可被遣旨　御返答有之 　　一　十二月十二日右同断御約定相済候ニ付 　　　　於義丸様遠州浜松之　御城　御発途摂州大坂江 　　　　被為赴右ニ付 　　　　神君ゟ石川伯耆守康昌《割書：初｜数正》被差添并康昌次子 　　　　勝千代数重《割書：後玄蕃頭｜康長》本多作左衛門重次子仙千代 【左丁】 　　　　《割書：後飛騨守｜成重》小栗大六重常牧野主殿盛富《割書：後｜易貞》等御附 　　　　被成 　　一　同月廿二日 　　　　於義丸様於大坂　秀吉公之御養子与被為成 　　　　秀之字御授り被成 　　　　秀康様与奉称　秀吉公ゟ為厨料於河内国 　　　　一万石被進之 【右丁・白紙】 【左丁】 　天正十三年乙酉 　　一　七月十一日　秀吉公被任関白 　　　　秀康様御元服従四位下侍従兼参河守御叙任 　　　　《割書：御年｜十二》 　　一　十一月十三日岡崎御城代石川伯耆守康昌 　　　　秀吉公ニ心を通し岡崎城致出奔候ニ付本多 　　　　作左衛門重次存念ニハ忰仙千代大坂ニ差置候而者 　　　　質子ニ相当世上之疑茂可有之哉与仙千代を竊ニ 　　　　呼返候ニ付其後為代 【右丁】 　　　　神君ゟ重次兄本多孫左衛門重富子源四郎《割書：後伊豆守｜富正》 　　　　を被遣 【左丁】 　天正十四年丙戌 　　一　五月 　　　　秀康様射術御稽古ニ付葛巻源八郎重氏《割書：後改｜吉田》 　　　　《割書：一水軒｜印西》御指南申上之 　　一　八月 　　　　秀康様大坂江御越被成候後茂 　　　　神君御上洛無之ニ付　秀吉公御憤り被成既ニ 　　　　秀康様を可被害与之浮説有之此由 　　　　神君被聞召参河守者秀吉江養子ニ指越候上者 【右丁】 　　　　 我子ニ而無之子を殺而も不苦儀ならハ可為勝手 　　　　次第事との仰也　此事於万様御聞及被成如何様共 　　　　秀康様与可為御一所与竊ニ参州を御出大坂江 　　　　御越被成村田意竹御附添罷越 　　一　十月十三日 　　　　神君浜松之御城御立被成十五日岡崎城江 　　　　御着暫御滞留之処十八日　秀吉公ゟ人質之趣ニ而 　　　　大政所《割書：秀吉公｜御母堂》　岡崎城江着ニ付廿日 　　　　神君岡崎城御立被成 【左丁】 　　一　同月廿七日 　　　　神君御上洛 　　一　十一月 　　　　神君聚楽亭江被為　入　秀吉公及 　　　　秀康様御対顔　御酒宴始り御盃為御取替 　　　　種々之御饗応有之候上秀吉公 　　　　秀康様江近頃謡之被致稽古候得者目出度被謡 　　　　候得与被仰候処無御遅々御謡被成其上諸事 　　　　御取廻宜ニ付 【右丁】 　　　　神君殊外御大悦被思召 　　一　十一月廿五日 　　　　禁裏《割書：御諱｜周仁》御即位《割書：十一月七日｜御受禅》 【左丁】 　天正十五年丁亥 　　一　三月朔日嶋津修理大夫義久為御征伐秀吉公九州江 　　　　御進発ニ付 　　　　秀康様《割書：御歳｜十四》御同道ニ而初而　御出陣 　　一　四月朔日嶋津修理大夫義久之加勢秋月長門守種長之 　　　　家臣熊井備中三千之精兵を以筑前国岩錯城【注】ニ楯籠を 　　　　一時責ニ可致旨　秀吉公被下知大手江者岐阜少将 　　　　秀信を為大将蒲生飛騨守氏郷を差添搦手江者 　　　　羽柴筑前守利家《割書：本姓｜前田》を為先手二之手ニ 【注　岩石城ヵ】 【右丁】 　　　　秀康様を為大将佐々内蔵助成政水野惣兵衛忠重を 　　　　被差添 　　　　秀康様御攻向山半分程御進ミ被成候処ニ而最早 　　　　落城ニ候間御勢を被向ニ不及旨利家氏郷ゟ被申越 　　　　秀康様此注進を御聞被成早ク及落城城攻之手筈ニ 　　　　御逢不被成御残念ニ被思召候哉御涙被為含候得者 　　　　成政忠重両将共ニ敵城之ケ様ニ早ク落去仕と申者 　　　　御大将之御武威強き故ニ候得者是以御手柄ニ而候と 　　　　奉申慰追而於　秀吉公御前 【左丁】 　　　　秀康様之御事を成政申出し流石ニ徳川殿之御子息程 　　　　御座候と大ニ致感賞候処　秀吉公夫者成政か心得 　　　　違也　秀康事ハ家康之子ニ而候を我等養子ニ 　　　　致候故弓矢形儀者此秀吉ニ似而其通り成ハと被仰候由 　　一　五月廿日野崎兵部丞楯籠候日向国山崎城を 　　　　秀康様諸軍ニ擢て夜中御責役被成城主兵部丞 　　　　致降参候ニ付山崎城を御受取此段御注進有之 　　　　候処秀吉公大ニ被感之 　　一　六月六日　秀吉公九州御出陣ニ付先達而 【右丁】 　　　　神君ゟ被遣候使節本多豊後守広孝を 　　　　秀吉公御前江被召此度秀康事於日向国山崎 　　　　城攻勇猛之次第広孝彼手に属せし上は其節之 　　　　様子見分之通り罷帰委細可致演説旨被　仰含 　　　　御暇被下《割書：広孝岩錯城攻之節先登之功有之又山崎城攻之時も｜秀康様に属し有功故御饗応之上拝領物被　仰付》 　　　　同月廿二日駿府に帰其旨 　　　　神君江申上候処　御喜悦被遊 【左丁】 　天正十六年戊子 　　一　四月 　　　　秀康様左近衛権少将御拝任《割書：御年｜十五》 　　一　同月十四日 　　　　主上秀吉公之聚楽亭江　行幸其節鳳輦之 　　　　御後に　秀吉公を初 　　　　秀康様にも諸大名と同被供奉 　　一　同月十六日於聚楽亭寄松祝之御題に而和歌之 　　　　御会席有之　秀吉公を始 【右丁】 　　　　秀康様にも御席に御連被成其節御詠歌 　　　　　　たまをみかくみきりの松は幾千とせ 　　　　　　　君かさかえんためしなるへし 　　一　同月十八日 　　　　主上聚楽亭ゟ　還幸 【左丁】 　天正十七年己丑 　　一　月日於聚楽之馬場　秀吉公乗馬見物之節 　　　　秀康様御乗馬被成候処　秀吉公馬役之士不伺而 　　　　致乗馬其上御馬前を妨候に付 　　　　秀康様御憤被成御馬上に而御手討に被成 　　　　秀吉公にも馬役之仕業非礼也と被思召 　　　　秀康様之御軽捷成を御賞美有之 【右丁・白紙】 【左丁】 　天正十八年庚寅 　　一　今春　結城左衛門督晴朝様《割書：下総国｜結城城主》御家臣多賀谷安芸守正広を 　　　　京都聚楽亭江被遣　晴朝様御老年班白にも御成被成 　　　　候得共御世継無之に付御先代政光様江従 　　　　右大将家《割書：頼朝｜公》　朝光様を被遣候古例を引而　秀吉公御氏族 　　　　之内御養子に被成度旨被相願候処　秀吉公被聞召結城は 　　　　無隠武門之名家ニ候得は尋常之養子は難指越幸 　　　　先達而秀康を養置候間可遣旨仰ニ付其段安芸 　　　　罷帰　晴朝様江申上之 【右丁】 　　一　三月二日　秀吉公大軍を率北条左京大夫氏政 　　　　父子御征伐之節 　　　　秀康様ニ茂御同道ニ而相州小田原江　御進発被成 　　一　五月廿四日　秀吉公小田原御長陣之中 　　　　晴朝様為御見舞御参陣被成候処先達而下野国 　　　　鹿沼小山榎本之三城御攻取被成候御手柄を 　　　　秀吉公御賞美被成種々被饗応弥 　　　　秀康様を御養子之御契約有之　晴朝様厚 　　　　其恩を被謝 【左丁】 　　一　月日 　　　　秀康様近々結城江御引越被成候ニ付 　　　　神君ゟ御教諭書左之通被進御附罷越御家来共江も 　　　　御誡書被下之 　　　　　　御教諭書 　　　　　　　結城は古き家也家法定式多かるへし 　　　　　　　新法を立てす務て古法を守り政法は 　　　　　　　旧臣と能相議し諫を納れ我意を立る 【右丁】 　　　　　　　事なく君は臣を疑はす臣は忠義を忘れ 　　　　　　　さるやうに礼を正ふし大臣に対し礼を 　　　　　　　守り土民には仁を以て是を恵み又旧臣に 　　　　　　　政務を任する時は主の威さかり其好む所を 　　　　　　　抑へるは器量なくてはならす其所に心を付 　　　　　　　人の善悪を知るへし今度随従し行く 　　　　　　　近臣と結城代々の近臣と隔なく遣ひ寵臣 　　　　　　　とて人を隔つる事勿れ士民は皆同し人也 　　　　　　　分る事あるへからす仁道を以賞罰を 【左丁】 　　　　　　　明かにするは士民を率るの大綱なり仁道を 　　　　　　　悪しとしては武家の正道を失ふ仁道は 　　　　　　　武の本体也其業は賞罰なり賞は有功を 　　　　　　　挙け罰は有罪を懲す是仁の根原也と 　　　　　　　覚ゆへし有功に数種あり忠勤の功才 　　　　　　　芸の功軍の功人毎にこれなきは稀也其功 　　　　　　　を能知るは我の正しきより是を知る其 　　　　　　　功を大小となく空くせさる処は賞の信也 　　　　　　　親族寵臣貴賤となく其罪を赦さゝるは 【右丁】 　　　　　　　罰の信也古語に両葉にして去らすんは 　　　　　　　斧鉞を用んとあれは能心を用ひ賞罰を 　　　　　　　正し執行るへし政務を怠り仁道の実を 　　　　　　　忘れ仏道の慈悲の意を遏そ【てヵ】斧鉞を用 　　　　　　　ゆるか如き大害を生する事多し故に 　　　　　　　賞罰は国家を治る釘大轄也俗に云家は 　　　　　　　末代主は一代と云は忠信の言也旧臣は諫を 　　　　　　　云ひ我意を捨れは家門長久なり 　　　　　　　　〆 【左丁】 　　　　　　御家来共江御誡書 　　　　　　　下として上を犯す事なく人も又礼を以て 　　　　　　　主を敬し遂には下も又礼に習て作法 　　　　　　　正しくなる者也其身正しからされは合すと 　　　　　　　雖も行はれすと云へは自ら守る処政道の 　　　　　　　第一也と思ふへし奢は生し易き者なれは 　　　　　　　命する処の目付は家の目付とのみ思ふ 　　　　　　　へからす目を付る所は我身の目付善悪の 　　　　　　　諫言及ひ士民の目付也朔望の勤に我に 【右丁】 　　　　　　　対する如き心を実にして毎月怠る事有 　　　　　　　へからす此は我家の定法也三たひ吾身を 　　　　　　　省みるの聖語此中にある也家臣目代の 　　　　　　　談話は近臣を退くるなれとも人先つ 　　　　　　　其事をしる類は武道に疎漏なる家に 　　　　　　　あり事は漏るゝを以て破れ謀は密を以て 　　　　　　　成るといふ然るに奸佞の臣は闇君幼主を 　　　　　　　誑らかし家臣目代の詞を証として推て 　　　　　　　沙汰に及事多し近臣等目代家臣の 【左丁】 　　　　　　　密事を探り知る輩は佞奸也と思ふへし 　　　　　　　密事の漏る事は近臣の悪心の者有と 　　　　　　　知るへし闇君幼主の行跡の非或は密事 　　　　　　　を語り玉ふを諫るは忠臣也常に心に 　　　　　　　応する事をなし君の心に協はんと思ふ 　　　　　　　者は不忠と思ふへし都而主には物を云ひ 　　　　　　　難き者なるに此所は君臣共に能思ひ 　　　　　　　覚ゆへし近臣は殊に旧臣に和し勤切 　　　　　　　忠臣の人をみるへし汝等も家中の鏡と 【右丁】 　　　　　　　ならんと思ひ勤むへし 　　一　八月 　　　　秀康様小田原御陣御引払夫ゟ下総国結城郡 　　　　結城之城江　御引越《割書：是ゟ先晴朝様ゟ多賀谷｜安芸守を御迎に被指越》 　　一　同月六日　晴朝様御隠居 　　　　秀康様結城之御家督拾万千石御相続有之 　　　　此日　晴朝様御養女　鶴姫様《割書：実水戸但馬守重通女｜晴朝様御外孫》と 　　　　　御婚姻被為整 　　一　同月　秀吉公右為御祝儀小田原ゟ直に結城江 【左丁】 　　　　御越三日御滞留有之夫ゟ奥州表江為一揆御退治 　　　　御向被成同十日黒川之城に至九月朔日京都聚楽江 　　　　御凱旋 　　一　十二月十日先達てゟ奥州葛西表之一揆九戸修理亮 　　　　政実を為将同類再相起候に付 　　　　秀康様御先手之御大将被蒙　仰榊原式部大輔康政を 　　　　為先鋒諸将を御率今日奥州白川江御出陣被成 　　　此以前 　　　　神君ゟ山川讃岐守晴重江御書を以白川江出陣可致旨 【右丁】 　　　　被　仰付亦復出陣中御書被下 　　　　　　　　　　　　　　御書 　　　　　　　　　　　　　　　急度申候仍奥州 　　　　　　　　　　　　　　　葛西表一揆等 　　　　　　　　　　　　　　　差起付而今度 　　　　　　　　　　　　　　　浅野弾正少弼殿 　　　　　　　　　　　　　　　被下候乍大儀白河 　　　　　　　　　　　　　　　迄被相移尤候聊 　　　　　　　　　　　　　　　不可有由断候謹言【斎之ヵ】 【左丁】 　　　　　　　　　　　　　　　十一月十四日　家康御花押 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　山川讃岐守殿 　　　　　　　　　　　　　　　奥口可有出 　　　　　　　　　　　　　　　陣之由申越候 　　　　　　　　　　　　　　　処に早々被罷 　　　　　　　　　　　　　　　立之段令祝着候 　　　　　　　　　　　　　　　寒気之時分 【右丁】 　　　　　　　　　　　　　　　苦身入候　 　　　　　　　　　　　　　　　猶期来信候 　　　　　　　　　　　　　　　謹言【得之ヵ】 　　　　　　　　　　　　　　　十二月二日　家康御花押 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　山川讃岐守殿 【左丁】 　天正十九年辛卯 　　一　正月五日先達而　秀吉公ゟ石田治部少輔三成を以 　　　　神君江奥州之一揆為御征伐御出馬被成候様被 　　　　仰遣依之今日武州岩槻迄　御出陣被遊候処 　　　　一揆相静候ニ付同十三日江戸江　御帰城山川讃岐守 　　　　晴重奥州江出陣中働之儀ニ付御書被下 　　　　　　　　　　　　御書 　　　　　　　　　　　　　今度結城少将至 　　　　　　　　　　　　　奥州表出陣之処 【右丁】 　　　　　　　　　　　　　人数召連被致供 　　　　　　　　　　　　　被入精儀於家康 　　　　　　　　　　　　　令祝着候此由於京都 　　　　　　　　　　　　　具可申上候委細者 　　　　　　　　　　　　　小栗五郎右衛門尉可申候 　　　　　　　　　　　　　謹言 　　　　　　　　　　　　　　正月十七日　家康御花押 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　山川讃岐守殿 【左丁】 　　一　四月《割書：日不｜詳》於結城　鶴姫様御安産御女子様《割書：御名｜不詳》 　　　　御誕生 　　一　秀吉公朝鮮征代【伐】御企ニ付諸将御手配其節 　　　　秀康様肥前国名護屋迄　御出陣之儀被蒙　仰 【右丁・白紙】 【左丁】 　文禄元年壬辰《割書：此年天正二十年｜十一月廿八日改元》 　　一　三月 　　　　秀康様肥前国名護屋迄　御出陣被成多賀谷 　　　　虎千代《割書：後左近｜三経》本多源四郎富正等従之其兵千 　　　　五百人 　　一　月日 　　　　神君御六男辰千代様《割書：後称越後少将忠輝｜越後国高田城主》御誕生 　　　　《割書：御母｜山田氏》 【右丁・白紙】 【左丁】 　文禄三年甲午 　　一　正月　秀吉公城州伏見ニ城を御築 　　　　秀康様ニ茂同所ニ御屋敷を被構 　　一　月日 　　　　秀康様肥前国名護屋ゟ伏見江　御帰陣有之 　　一　十一月九日　御女子様御逝去《割書：御年｜四》御法号 　　　　松樹院殿香誉梅心大童女 　　　　　　　但浄土宗江御葬送被成度　思召候処結城ニ浄土宗 　　　　　　　　之寺無之ニ付下総国飯沼弘経寺住僧存把檀誉 【右丁】 　　　　　　　　戦闘を避暫此地ニ罷在候を被招御葬送有之翌 　　　　　　　　文禄四年乙未一寺御建立存把を開基ニ被成 　　　　　　　　壽亀山弘経寺松樹院与号 　　一　月日 　　　　神君御七男松千代様御誕生《割書：御母｜山田氏》　 【左丁】 　文禄四乙未 　　一　二月《割書：日不｜詳》 　　　　神君御女松姫君様御誕生《割書：御母｜太田氏》 　　一　三月廿八日聚楽郭内 　　　　神君御邸江　秀吉公を御招請御饗応有之 　　　　神君　秀忠様ゟ品々御進物有之 　　　　秀康様ゟ茂小袖《割書：三｜十》被進之 　　一　六月十日 　　　　国丸様《割書：後参河守｜忠直様》於結城御誕生御母中川氏《割書：称岡｜山殿》 【右丁】 　　一　七月《割書：日不｜詳》 　　　　神君御八男仙千代様御誕生《割書：御母｜志水氏》 　　一　月日近年御軍用多御差支ニ付右御用為御取 　　　　調本多源四郎富正結城江被遣之 　　　　　　但源四郎結城江罷越役人ニ謀リ山林之竹木を 　　　　　　　売払判金拾枚を得且又御国政を申渡急き 　　　　　　　伏見ニ帰判金指上候処　御喜悦ニ而右之内一枚 　　　　　　　源四郎江被下之 【左丁】 　慶長元年丙申《割書：此年文禄五年｜》 　　一　十一月廿七日年号慶長と改元被　仰出 【右丁・白紙】 【左丁】 　慶長二年丁酉 　　一　九月廿八日 　　　　秀康様参議御拝任《割書：御年｜廿四》 　　一　十二月十四日　虎松様《割書：後伊予守｜忠昌様》於摂州大坂 　　　　御誕生《割書：御母｜国丸様と同》 【右丁･白紙】 【左丁】 　慶長三年戊戌 　　一　八月朔日　喜佐姫様於大坂御誕生《割書：御母三谷出雲守長基女｜於駒後号月照院》 　　一　同日　秀吉公御病気次第ニ御指重ニ付 　　　　秀頼卿幼弱之際者 　　　　神君伏見ニ　御在城天下之政務を御裁判被成 　　　　秀頼卿を御守護可有之且又 　　　　秀忠様　秀康様羽柴利勝《割書：後前田肥前守｜利長》之内 　　　　二将者大坂ニ在勤替々一将者帰国休息可有之旨 　　　　被　命 【右丁　】 　　一　八月十八日　秀吉公於城州伏見薨去葬同国　 　　　　阿弥陀峰《割書：京都｜東南》御法号　国泰院殿雲山俊龍大居士 　　　　後《割書：翌亥年｜四月十八日》　勅賜神号豊国大明神 　　一　十二月朔日　秀吉公御遺物五智則重之刀《割書：二尺七寸｜五分》 　　　　御拝受 【左丁】 　慶長四年己亥 　　一　正月十二日　松千代様御逝去葬参州岩津妙心寺 　　　　御法号　栄昌院殿 　　一　閏三月七日此度石田治部少輔三成之姦智我侭を 　　　　諸大名深悪ミ可誅之旨 　　　　神君江雖訴之故　秀吉公之依為寵臣御許容 　　　　無之三成ニ者居城江州佐和山江可致蟄居之旨被 　　　　仰聞候得共路次之難を気遣致遅滞候ニ付 　　　　秀康様江三成を御送被成候様被　仰出堀尾帯刀 【右丁】 　　　　吉晴中村式部少輔一氏被差添依之今日伏見ゟ 　　　　御送被成御途中為御用心御家臣何も腹巻胴 　　　　丸抔致着込足軽共ニ者鉄砲ニ火付火縄を添為 　　　　御持被成醍醐山科辺迄　御出之処此処彼処 　　　　木陰ニ五騎十騎程ツヽ人数相見へ候ニ付 　　　　秀康様御気配被成候処佐和山ゟ三成為迎罷越候 　　　　家来高野越中大山伯耆舞兵庫等にて彼是 　　　　五六十騎ニも相成江州勢多迄御出被成候得者又々 　　　　三成家来大場土佐柏原彦右衛門人数召連迎ニ罷出 【左丁】 　　　　候ニ付三成 　　　　秀康様江路次御送被下忝段致拝謝此処ゟ御帰 　　　　被下候様申上候得共　御聞入不被成佐和山迄御送届 　　　　可被成旨被　仰聞候処吉晴を以強而御断申上候者 　　　　家来共も追々迎ニ罷越候間偏ニ此処ゟ御帰被下候様 　　　　申上候ニ付御家臣土屋左馬助昌春を佐和山迄被 　　　　為送 　　　　秀康様ニ者此処ゟ伏見江　御帰被成吉晴一氏等も 　　　　御一所ニ罷帰り 【右丁】 　　　　秀康様御途中之次第且勢多ニ而御取斗之儀 　　　　御年若ニ候処万事御行届被成候儀と 　　　　神君江被申上候得者各方ニ左様ニ被思候者秀康身ニ 　　　　取而者本懐也と被　仰候由且又昌春者三成を居城 　　　　佐和山迄無難送届候ニ付三成謝之昌春を饗応し 　　　　刀《割書：正｜宗》一腰自身持出是ハ故太閤御秘蔵之御指料ニ候処 　　　　致拝領候由ニ而昌春江相渡若 　　　　秀康様入　御覧思召ニ応し御指料ニも相成候ハヽ 　　　　本懐之旨申述候ニ付昌春持帰指上之 【左丁】 　　一　九月七日今度 　　　　神君伏見ゟ大坂江　御下向被成候ニ付伏見之御城 　　　　御留守を 　　　　秀康様江被　仰付十二ヶ条之御条目を以被 　　　　仰含 　　　　　　　但右十二ヶ条之御条目諸書不相見 　　一　同月九日 　　　　神君為重陽之御祝儀大坂本城江　御出秀頼卿江 　　　　御対顔之節於殿中可奉害之由風説有之候処 【右丁】 　　　　御無難西丸江　御帰被成候得共直ニ伊奈図書を 　　　　伏見江為御使被遣 　　　　秀康様ニ者御城を御守伏見之諸兵者急き 　　　　大坂江可被指越旨被　仰遣依之 　　　　秀康様御下知ニ而翌十日未明伏見之諸兵を 　　　　大坂江被指向 　　　　秀康様ニ者御手勢を以本丸を御固被成所々 　　　　口々　御自身御巡見有之御留守御守衛被成右 　　　　御手配之次第逐一御認被成 【左丁】 　　　　神君江被指上候処其御気配之程を　御感心被成 　　　　秀康者天晴親ニ生れ勝れりと　上意有之候由 　　　　　　但神君翌年六月迄大坂西丸ニ被成御座候ニ付 　　　　　　　秀康様ニも同六月迄伏見御城御留守被成 　　一　十月八日 　　　　神君ゟ大野修理亮治長を下総国結城江配流被 　　　　仰付 　　　　秀康様江御預被　仰出 　　　　　　但先月九日 【右丁】 　　　　　　　神君大坂城江御出之節可奉害之風説大野 　　　　　　　修理亮土方勘兵衛所為之由増田右衛門尉長束 　　　　　　　大蔵大輔申上候ニ付修理亮勘兵衛両人共 　　　　　　　配流被　仰付由 【左丁】 　慶長五年庚子 　　一　正月朔日為年始之御祝儀 　　　　神君大坂本城江　御出秀頼卿江御対顔 　　　　秀康様ニも御同様被為　入秀頼卿江御対顔 　　　　六月八日今度奥州若松之城主上杉中納言景勝 　　　　為御征伐 　　　　神君江戸表江近々　御発途《割書：六月十六日大坂西丸御発途｜七月二日江戸表江御着》 　　　　可被成ニ付 　　　　秀康様ニ者御先ニ今日城州伏見　御首途 【右丁】 　　一　七月十九日上杉景勝為御征伐 　　　　秀忠様江戸表ゟ奥州会津江　御出陣ニ付 　　　　秀康様ニも　御出馬被成此時 　　　　神君ゟ常陸国水戸之城主佐竹右京大夫義宣江 　　　　御使者嶋田治兵衛重次を以会津江出陣可有之旨 　　　　被　仰遣候処大坂ニ妻子指置候ニ付難相勤旨御返答 　　　　申上之其後 　　　　神君奥州江　御出馬被成候ハヽ義宣乗其虚江戸 　　　　を可襲之風説有之ニ付先為水戸之押御家臣 【左丁】 　　　　水谷右京大夫勝俊居城常陸国下館を相守其甥 　　　　皆川山城守広照為加勢同城ニ被指置候処義宣却而 　　　　為救景勝奥州赤館江致出張之由注進有之ニ付 　　　　右京大夫勝俊等も御先手榊原式部大輔康政手江 　　　　相加リ下野国鍋掛之駅江出陣 　　一　七月廿四日 　　　　神君下野国小山江　御着陣之処石田治部少輔三成 　　　　奸謀を企畿内中国西国等之諸将を語らひ上方 　　　　騒乱之由追々依有注進御親族且股肱之臣を御本陣江 【右丁】 　　　　御招被成御軍議有之節本多佐渡守正信申候者 　　　　此度上杉景勝御征伐ニ従此表ニ罷在候諸大名 　　　　何も人質大坂ニ指置候得者心中も難斗候間 　　　　此輩者御返被成一旦関東を固メ候而時機を 　　　　御見斗可然と申上候得者諸人其儀可然と申候処 　　　　井伊兵部少輔直政進出天下之安危在此一挙と存 　　　　候得者早々御旗を被返上方之逆徒御誅戮可 　　　　被成儀ニ候処失其期徒ニ此地ニ被止候事存も不依 　　　　事也と申切而其座を立退候得者 【左丁】 　　　　秀康様ニ者直政申条尤と被　思召旨被　仰上候処 　　　　神君ニも可然　思召由ニ而直政を被　召返猶又御軍議 　　　　有之追而直政并本多中務大輔忠勝を以諸大名 　　　　被　召集此度上方逆徒御征伐之大議有之其節 　　　　上方表ニ人質指置候面々者無遠慮可被罷上旨 　　　　被　仰出候処福嶋左衛門大夫正則浅野左京大夫幸長を 　　　　初諸将御答ニ者何顧妻子而可存異心候哉何も 　　　　御出馬之御先手ニ進ミ共ニ逆徒を可討亡と申上 　　　　ニ付弥三成御征伐ニ相極右ニ付景勝押之儀者 【右丁】 　　　　秀康様被指置可然旨正信申上候故 　　　　秀康様を被為　召景勝押之儀を御頼被成度 　　　　仰有之候処 　　　　神君上方江　御馬を於被為向者御先手之儀者 　　　　是非共 　　　　秀康様御勤被成度旨被　仰上候処 　　　　神君被　仰聞候者老年ニ者候得共上方表之儀者 　　　　馬を向ケ退治可致事心易候景勝事者若年ゟ 　　　　勇猛之聞元【えヵ】有其上輝虎以来武辺馴候剛者共 【左丁】 　　　　生残候得者旁以剛敵ニ候間景勝押之儀者其方ニ而 　　　　無之候半【事ヵ】而者無心許候間此儀を偏ニ頼入と之 　　　　仰ニ付 　　　　秀康様暫御思案被成再応重キ　上意ニ候得者 　　　　身不肖ニ者候得共惣大将被　仰付候ハヽ宇都宮ニ止リ 　　　　屹度景勝を押可申候間御心易被思召候様被 　　　　仰上候処正信御傍二而承之偖も只今之御答智勇 　　　　兼備天下太平之基を含る御金言也ケ様之公達 　　　　被為持候者我君之御果報勇々敷御事と奉祝 【右丁】 　　　　神君ニ者御感涙を被流御喜悦不斜景勝押之 　　　　惣大将被　仰付其節御具足一領為御取出 　　　　御若年ゟ被為召一度も御後レを不被為取御具足ニ 　　　　候得者御譲被成候旨且御采幣稲葉義弘之御刀 　　　　をも御添御拝領被成此時関東ニ被相残諸将ニ者 　　　　出羽国山形ニ最上出羽守義光越後国春日山城ニ堀 　　　　左衛門督秀治陸奥国中村城ニ相馬長門守義胤 　　　　岩手沢城ニ羽柴越前守政宗《割書：本姓｜伊達》南部城ニ南部 　　　　信濃守利直下野国那須黒羽根城ニ大関左衛門佐資増 【左丁】 　　　　為加勢岡部内膳正康綱服部石見守正成太田原城ニ 　　　　太田原備前守晴清同出雲守政清《割書：備前守｜子》為加勢伊王野 　　　　又次郎資友《割書：下総守｜子》那須与市資景《割書：太郎｜資清子》福原安芸守 　　　　資保岡本宮内少輔義保烏山城ニ成田左馬允氏範臣 　　　　佐野城ニ佐野修理大夫信吉山川城ニ山川民部少輔朝信 　　　　上野国厩橋城ニ平岩主計頭親吉三蔵城ニ《割書：父之｜所領》松平 　　　　新次郎一生《割書：五左衛門｜近正子》下総国小美川城ニ《割書：父之｜所領》松平又八郎 　　　　忠利《割書：主殿助｜家忠子》矢作城ニ《割書：父之｜所領》鳥居左京亮忠政《割書：彦右衛門｜元忠子》佐倉城ニ 　　　　武田万千代信吉様之家臣府川城ニ松平勘四郎信一 【右丁】 　　　　上総国勝浦城ニ植村土佐守泰忠各其城を守て 　　　　景勝之兵を可拒旨被　仰付 　　一　月日此度上方及騒動候処　虎松様於万様岡山殿 　　　　大坂城内証人屋敷ニ被為　在候ニ付 　　　　秀康様小山御陣中ゟ戸田六兵衛を為御使大坂ニ 　　　　御附添罷在榊原六右衛門江御密書被遣候ニ付其後 　　　　虎松様御熱気有之御疱瘡ニも可被為　在候得者 　　　　秀頼卿江御遠慮も有之ニ付城外御屋敷江御開 　　　　被成度旨　於万様ゟ増田右衛門尉長盛江御達之上 【左丁】 　　　　右之御方々御出城被成此旨小山御陣所江六右衛門ゟ 　　　　申上之 　　一　七月廿八日多賀谷左近三経之父修理大夫重経在所 　　　　常陸国下妻ニ居心を■【變変ヵ】し佐竹右京大夫義宣ニ謀を通 　　　　加勢を乞而小山之御本陣江夜討之事を謀候得共 　　　　義宣加勢延引ニ付修理大夫ゟ為催促花沢某を 　　　　水戸《割書：義宣｜之居城》江遣候処某之父源太左衛門左近ニ従小山に 　　　　罷在候ニ付為対面立寄候趣左近聞及源太左衛門江子細 　　　　相尋候処水戸江為使者罷越帰路之由相答候ニ付 【右丁】 　　　　左近怪ミ持参之書翰竊為取出致披見候処 　　　　小山之陣江夜討可有由ニ付此方ゟも手を可合之旨 　　　　令承知候然共彼所不案内ニ依而夜討之駆引無 　　　　覚束候是よりも見分人を以方角案内を探得 　　　　其上ニ而共ニ夜討を可相働候間先夫迄者御延引 　　　　可然候近日是ゟ委細可申入之旨義宣ゟ之書翰ニ付 　　　　大ニ驚其旨早速 　　　　秀康様江申上候処直ニ 　　　　神君御本陣江被　仰上之 【左丁】 　　一　八月朔日 　　　　神君小山御陣所　御立同月四日江戸江　御帰城 　　一　八月廿四日 　　　　秀忠様上方表逆徒為御誅伐惣軍三万八百余人ニ而 　　　　下野国宇都宮　御発途二付 　　　　秀康様御馬上ニ而御供之士四五人被召連御見送 　　　被成候処 　　　　秀忠様御一人御軍列を御離被成御馬上ニ而御密語 　　　　有之御互ニ御別被成 【右丁】 　　　　秀康様ニ者上杉景勝押之為惣大将宇都宮本丸ニ 　　　　御在城輔翼ニ者内藤外記正重軍監ニ者松平出羽守 　　　　忠政二ノ丸ニ小笠原兵部大輔秀政総郭ニ羽柴藤三郎 　　　　秀行《割書：本姓｜蒲生》里見安房守義康内藤左馬介政長凡其兵 　　　　二万五千人士を練将を励し武威厳重ニ御警衛被成 　　　　且又騎卒を被召集候而今度景勝之押ニ相残候上者 　　　　景勝を於不亡者生而再帰城之存念無之何も其盟を 　　　　可成と被　仰出候ニ付夫々誓詞を申上此節 　　　　神君那須七党之人質を可収旨　上意ニ而那須大三郎資晴 【左丁】 　　　　大田原備前守晴清伊王野下総守資信大関左衛門佐資増 　　　　千本大和守通長福原安芸守資保芦野弥左衛門政泰之 　　　　人質を被取収置此時分松平右衛門大夫康寛《割書：信濃国佐久郡｜芦田城主》有故而 　　　　《割書：今春於大坂討御籏本｜之士小栗三助》高野山ニ致潜居罷在候処先頃ゟ井伊兵部少輔 　　　　直政を以御招被成候ニ付此度宇都宮之御陣所江罷出 　　　　秀康様江　御目見申上候処御懇之　御意有之日光口 　　　　相固候様被　仰付直ニ被指置之《割書：此時改氏名称｜加藤四郎兵衛》 　　一　九月朔日 　　　　神君上方表逆徒為御誅伐江戸　御出馬被成依之為御附使者 【右丁】 　　　　村田伝右衛門近氏《割書：御徒目付林三左衛門御徒真崎｜作兵衛山名与次兵衛被指添之》被指遣之 　　　　　　　　　但伝右衛門関ケ原合戦之節敵兵を討取　御実検ニ入 　　一　九月《割書：日不｜詳》下野国芦野大田原辺　御巡見之節上杉景勝ニも 　　　　為領内見分奥州白河迄罷越然処 　　　　神君之御留守を窺景勝七万余兵を引率し長沼江出 　　　　江戸江攻上旨風説致し諸軍不穏候ニ付 　　　　秀康様ゟ御使者水谷右京大夫勝俊を以此間其表江御出勢 　　　　之由定而御聞及も可有之候内府父子者上方之逆徒等誅伐之為 　　　　出勢ニ付手前儀留守を預リ相残斯の如く徒然ニ候処其元白川辺迄 【左丁】 　　　　御出勢之由相聞へ候幸之儀ニも有之候間此方江御勢を被差向 　　　　間敷候哉然におゐてハ手前儀も当城ゟ出馬致し野州□ 　　　　野間において一戦を相遂け可申旨被　仰遣景勝返答ニ者 　　　　今度内府御父子上方江出馬あられ候ニ付其元御留守□ 　　　　残られ御徒然に御暮之旨致承知候手前儀も諸方之 　　　　寄手共勢を引入候ニ付今程相手なしに罷成手透ニも 　　　　有之候得者縦令其元ゟ不被仰越候共致出勢度所趣【存ヵ】ニ 　　　　候得共亡父謙信以来人之留守をねらひ取掛候如き之儀ハ 　　　　決して不致家法ニ付我等心ニ難任残念之至候と返答 【右丁】 　　　　有之ニ付其後取沙汰も相止諸軍相静 　　一　九月《割書：日不｜詳》上杉景勝之兵越後国江致出張候ニ付同国長岡之 　　　　城主堀美作守親良出勢及防戦候処得勝利候趣宇都宮江 　　　　書翰を以注進有之ニ付 　　　　秀康様ゟ御返書ニ今月七日会津ゟ兵を出翌八日得利 　　　　首数級を被獲之事忠功毎度之事賞するに不堪忠志 　　　　不浅旨被　仰遣之 　　一　同月十五日於美濃国関ヶ原 　　　　神君石田治部少輔三成等と御合戦有之候処御勝利ニ付 【左丁】 　　　　即日 　　　　神君ゟ嶋田治兵衛重次を為御使宇都宮 　　　　秀康様御陣営江被遣其節　御自筆之御書被進之 　　　　　　　　御書 　　　　　　　　　今度濃州表之合戦ニ勝利得事　 　　　　　　　　　偏ニ其方奥州表手強被押関東 　　　　　　　　　静謐之故也一世之大慶不過之候 　　　　　　　　　恐々 　　　　　　　　　　九月　　家康 【右丁】 　　　　　　　　　　　　　　　　三河守殿 　　一　月日右同断二付 　　　　両御所様江御徒山本作兵衛棗八右衛門被指遣御祝儀被 　　　　仰上之 　　一　月日依 　　　　神君御下知 　　　　秀康様宇都宮之御陣所御引払有之 　　一　月日今度濃州関ヶ原御合戦之節 【左丁】 　　　　秀康様上杉景勝を御押被成候御勲功ニ付 　　　　神君ゟ播磨越前両国之内任御望可被進旨 　　　　秀忠様ゟ　御内意有之依之 　　　　秀康様御近臣等江御物語有之候処越前国者要害 　　　　堅固ニ付御拝領被成可然旨長谷部采女茂連等申上 　　　　候ニ付越前国御拝領被成度段被　仰上之 　　一　十一月《割書：日不｜詳》結城江以　上使越前国《割書：六拾八｜万石余》御拝領被 　　　　仰出《割書：関東筋未穏ニ付｜当分結城ニ御在城》依之為御礼大坂江《割書：西御所様｜大坂ニ而成　御座》御使者小栗 　　　　五郎左衛門兼友被差上之 【右丁】 　　一　十一月十八日 　　　　神君御九男五郎太様《割書：後尾張大納言｜義直卿》御誕生《割書：御母｜志水氏》 【左丁】 　慶長六年辛丑 　　一　正月四日旧冬越前国御拝領之為御礼被指上候御使者 　　　　小栗五郎左衛門兼友江 　　　　秀忠様ゟ　御自筆之御返書御渡被成 　　　　　　　御書 　　　　　　　　御状本望之至候仍越前国御拝領 　　　　　　　　御祝着之由ニ而以小栗五郎左衛門被仰上候段 　　　　　　　　尤存知誠目出度存候此方弥静謐御座候間 　　　　　　　　可御心易候尚期後音候恐々謹言 【右丁】 　　　　　　　　　　　　　　　　　中納言 　　　　　　　　　　正月四日　　　　　秀忠御花押 　　　　　　　　　　結城宰相様 　　一　二月　越前国足羽郡北庄城《割書：去年青木紀伊守秀以国被除保科｜肥後守正光ニ被預置ニ付早速御受取》 　　　　《割書：可然旨伊奈備前守忠次方ゟ｜御家老高木豊前守迄申来》為受取本多志摩守富正《割書：後｜伊豆守》被遣 　　　　御仕置等被　仰付之 　　一　七月 【左丁】 　　　　秀康様越前江　御入国ニ付結城　御発駕被成 　　　　此時結城御重代之御家臣共之内結城を立去候儀 　　　　惹情難堪者も有之相残候者江者　御城内之御器財 　　　　被分下之《割書：此子孫に｜今有之》　 　　　　　　　但結城之儀者養和元年閏二月廿八日小山七郎 　　　　　　　　朝光様《割書：後被称結｜城上野介》被封ゟ 　　　　　　　　秀康様御代ニ至迄十八代御在住年暦四百 　　　　　　　　二十一年《割書：御城ハ下野下総之国堺土地嚝平御城之｜東ニ大日沼ト云深淵あり御領地者下妻》 　　　　　　　　《割書：三十三郷下館三十九郷冨谷十七郷｜長沼十二郷山川十三郷合而百八郷也》且又 【右丁】 　　　　　　　秀康様御黒印被下寺社《割書：後　公儀｜御朱印与相成》四十 　　　　　　　七ヶ所有之右石高合而四百八拾三石六斗八升 　　　　　　　又地子　御免之地も有之《割書：此反畝歩二十｜一町二畝八歩》 　　一　七月廿四日上杉景勝帰服之事去年ゟ 　　　　秀康様江懇願ニ付 　　　　両御所様江被　仰上御宥免之事相調景勝上洛 　　一　同月廿八日 　　　　秀康様先達而伏見表御参着被成其後御国 　　　　許江之御暇被　仰出直ニ西近江路ゟ今日初而北庄 【左丁】 　　　　御城江　御着 　　　　国丸様　虎松様　喜佐姫様ニも御引移有之其節 　　　　多賀谷左近三経《割書：元常陸国｜下妻領主》山川菊松朝貞《割書：後讃岐守元下野｜国山川領主》 　　　　水谷右京大夫勝俊《割書：元常陸国下館領主右京大夫ハ道中濃州｜合戸之渡ゟ被　召返　神君江被　召出本領其儘》 　　　　《割書：被下其甥水谷｜織部政慶罷越》岩上左京朝吉等《割書：是を称｜結城四老》蒙 　　　　上意御国江罷越 　　一　御入国之上御家臣左之面々在所ニ被指置之 　　　　　　　《割書：南条郡》 　　　　　　　　府中城《割書：三万六千七百五十石｜内壱万六千八百石与力》　　本多志摩守富正 【右丁】 　　　　　　　　　但台命有之当城ニ被指置 　　　　　　　《割書：大野郡》 　　　　　　　　大野城《割書：三万五千石内｜壱万八千石与力》　　　　土屋左馬助昌春 　　　　　　　《割書：坂井郡》 　　　　　　　　丸岡城《割書：二万五千五十石内｜壱万五千五十石与力》　　　今村大炊之信 　　　　　　　《割書：坂井郡》 　　　　　　　　柿原《割書：三万二｜千石》　　　　　　　　多賀谷左近三経 　　　　　　　《割書：吉田郡》 　　　　　　　　花谷《割書：一万七｜千石》　　　　　　　　山川菊松朝貞 【左丁】 　　　　　　　《割書：敦賀郡》 　　　　　　　　津内《割書：一万千廿石｜内六千廿石与力》　　　　　　清水丹後孝正 　　　　　　　《割書：大野郡》 　　　　　　　　勝山《割書：九千八百四十石内｜六千八百四十石与力》　　　　林　長門定正 　　　　　　　《割書：大野郡》 　　　　　　　　木本《割書：五千｜石》　　　　　　　　　加藤四郎兵衛康寛 　　　　右之外諸士江夫々知行御加増被　仰付 　　　　　　　但往古十二郡之処後八郡ニ改今見易為依八郡記之 　　　　　　　　且又高禄ニ而も御城下ニ罷在面々ハ爰ニ不記之 　　一　月日御城下市町之地子米御免被成且百姓之収納幷 【右丁】　 　　　　村役等御緩め被成追々御仁恵之御改事被　仰出 　　一　八月朔日愛宕山江　御登御城下　御覧被成此時町人共 　　　　臂綿并鳥目若干致献上候処綿者御受被成《割書：以後八朔｜為嘉例》 　　　　鳥目者御返しニ相成 　　一　同月五日於江州伊香郡中河内　河内丸様《割書：又国麻呂出羽後称｜出羽守直政領雲州》 　　　　《割書：松｜江》御誕生《割書：御母｜喜佐姫様ニ同》 　　一　同月上旬　晴朝様　鶴姫様於万様結城ゟ越前江御引移 　　　　　　　但晴朝様ニ者暫く丹生郡片糟村仮御住居被成其後 　　　　　　　　北庄添御門向ニ御屋敷出来御移被成 【左丁】 　　一　八月十三日 　　　　秀忠様ゟ左之通　御自筆を以被　仰進之 　　　　　　　　　　　　　其許へ御下着 　　　　　　　　　　　　　可被成と存以飛脚 　　　　　　　　　　　　　申入候定而其 　　　　　　　　　　　　　地御仕置等可被 　　　　　　　　　　　　　仰付と察入候将又 　　　　　　　　　　　　　御目いかゝ御さ候 　　　　　　　　　　　　　哉千万無御心元 【右丁】 　　　　　　　　　　　　　存候不及申候へとも 　　　　　　　　　　　　　無御由断御養生専 　　　　　　　　　　　　　一候万事重而 　　　　　　　　　　　　　可申入候間不能具候 　　　　　　　　　　　　　恐々謹言 　　　　　　　　　　　　　　八月十三日　秀忠御花押 　　　　　　　　　　　　御上書 　　　　　　　　　　　　　越前宰相殿大納言 　　　　　　　　　　　　　　　　　人々御中　 【左丁】 　　一　九月北庄之御城御改築ニ付御普請初有之《割書：旧之｜本城ハ》 　　　　《割書：今之外曲輪添｜御門之内ニ而堀一周也》　御本丸二ノ丸者 　　　　神君御指図之御縄《割書：御天守台ニ名井有｜因而御本城之地与被定》三ノ丸其余之縄ハ 　　　　吉田修理義寛江被　仰付《割書：添御門■之石垣ハ｜旧之石垣を用と云》御普請惣奉行ハ 　　　　清水丹後孝正此時依　上意諸大名ゟ人夫を出し石垣等 　　　　被築之 　　一　此年結城御菩提寺之内天女山孝顕寺を北庄江摸シ 　　　　山号寺号共同様ニ而《割書：此砌賢ノ字相用｜後賢之字相用》一寺御建立其節 　　　　結城孝顕寺之住職舜国和尚を茂被召呼開山と 【右丁】　　 　　　　成し御菩提所と被定《割書：結城孝顕寺者政朝様御開基之処年経而｜破損ニ及候ニ付慶長四年之春　秀康様寺地を》 　　　　《割書：城西ゟ城南ニ移新ニ孝顕寺を被建《割書：今之結城｜孝顕寺是也》｜舜国其儘住職罷在候処今度北庄江被召連》其余結城ゟ罷越寺院 　　　　数多有之夫々寺地被下之 【左丁】 慶長七年壬寅 　　一　二月七日　仙千代様御逝去葬尾州名古屋高岳院御法号 　　　　高岳院殿 　　一　三月七日 　　　　神君御十男長福様《割書：後記伊大納言｜頼宜卿》御誕生《割書：御母｜正木氏》 　　一　去年御入国以来天下之諸大名中為御祝■【賀ヵ】自身被参 　　　　或者使者被指越其内福島左衛門大夫正則《割書：芸州広｜島城主》今春 　　　　国許ゟ江戸表江参府之序北庄江被参於御城御饗応 　　　　有之帰路之節年寄江茂為御礼被相廻其後前田 【右丁】　 　　　　肥前守利長《割書：加州金｜沢城主》池田三左衛門輝政《割書：播州姫｜路城主》等も被参是又於 　　　　御城御饗応有之《割書：此節利長ハ柿原多賀谷｜左近館江茂被立寄》 　　一　五月八日於伏見佐竹右京大夫義宣江常陸国八十万石被 　　　　召上於出羽国《割書：城地｜秋田》ニ拾万石余被下旨被　仰出候ニ付異心之儀茂 　　　　難斗ニ付其節 　　　　秀康様江御内命有之三千余之御人数御備被為置 　　一　八月廿九日　 　　　　神君御母公　伝通院様於江戸御逝去依之 　　　　秀康様伏見ゟ中山道通　御出府被成其節御行列 【左丁】 　　　　内ニ鉄炮《割書：百｜挺》為御持被成候処於上野国碓氷御関所 　　　　番士之者押留ニ付其旨達　御聴候処番人共我等を 　　　　聢与不存故ニ而可有之其段能申聞候様被　仰出候ニ付 　　　　具ニ申聞候処　公儀之於御関所御制禁之儀ニ付誰殿 　　　　彼殿与申儀無之抔口々難言申ニ付其難言を　御立腹 　　　　被成御供之者江切捨ニ可致旨被　仰付候得者番士之者驚 　　　　逃去候得共為御持之鉄炮ハ御国許江御返被成右番士共 　　　　江戸表江罷出達　上聞候処　 　　　　秀忠様被　聞召番士之人を不知者撰也不被殺者仕 【右丁】　　 　　　　合也与　上意有之由此以後御往来之節道中道橋 　　　　掃除御旅館等迄念入候様道中筋領主方江被　仰出 【左丁】 神君御代 　慶長八年癸卯 　　一　正月二十一日敦賀郡気比宮并常宮御再建被　仰出 　　一　月日足羽郡北庄神明《割書：弐拾｜石》同八幡《割書：三拾｜石》同愛宕山《割書：三拾｜石》 　　　　同心月寺《割書：拾六｜石》吉田郡永平寺《割書：弐拾｜石》大野郡白山平泉寺《割書：弐百｜石》 　　　　坂井郡豊原寺《割書：五拾｜石》丹生郡越知山《割書：五拾｜石》同郡織田大明神 　　　　《割書：三拾｜石》今立郡水落神明《割書：五拾｜石》南条郡大塩八幡《割書：三拾｜石》同郡 　　　　日長嶽《割書：三拾｜石》同郡慈眼寺《割書：弐拾｜石》敦賀郡気比《割書：百拾八石七｜斗壱升八合》 　　　　同郡常宮《割書：三拾五石弐｜斗弐升四合》同郡天神《割書：五｜石》同郡西福寺《割書：弐拾｜石》 【右丁】　 　　　　夫々被寄附之 《割書：往 石（◦）ヲ往 古（◦）ニシ》　但往石十二郡之処後八郡ニ改今見易為ニ依八郡記之　 　　一　二月十二日伏見御城江以　勅使 　　　　神君将軍　宣下有之其節 　　　　秀康様源三位之御座列被　仰出 　　一　同月廿五日 　　　　神君将軍　宣下御拝賀御参　内之節 　　　　秀康様御塗輿ニ而被　供奉 　　一　同日 【左丁】 　　　　秀康様従三位御叙位《割書：御年｜三十》 　　一　八月十日 　　　　神君御十一男鶴千代様《割書：後水戸中納言｜頼房卿》御誕生《割書：御母｜志水氏》 　　一　九月十一日武田萬千代信吉様《割書：常陸国｜水戸城主》御逝去葬常州 　　　　水戸浄鑑院御法号浄鑑院殿 【右丁・白紙】 【左丁】 　慶長九年甲辰 　　一　正月廿八日於御国　吉松様御誕生《割書：御母｜於房方》 　　一　三月廿五日於御国　五郎八様《割書：改七郎再改五郎八後｜称大和守直基領播州姫路》御誕生 　　　　《割書：御母三好越後守長虎女後号品量院　五郎八様御誕生之砌ゟ今継結城家之｜御内慮ニ而　晴朝様与御同居被成慶長十二年十一月廿八日依　台命結城家之》 　　　　《割書：御家系を｜被為継》 　　一　四月廿日 　　　　秀康様江戸江御参府被成其後江戸御立御上京 　　　　之節六月五日濃州岐阜ニ御止宿之処福島左衛門大夫正則 　　　　江戸江為参勤同所ニ止宿有之 【右丁】 　　　　秀康様御旅館江被参謁見之節被申候者卿者故 　　　　太閤御養子と被為成候得者秀頼卿と兄弟也今徳川家 　　　　大柄を雖被握卿者秀頼卿を補佐可被成事也於然者 　　　　正則力を尽シ忠を励可申旨被申是ゟ後正則と交を被 　　　　為絶 　　一　七月十七日於江戸西丸 　　　　竹千代様《割書：後家｜光公》御誕生《割書：御母｜御簾中》 　　一　同日城州伏見 　　　　秀康様之御屋敷江 【左丁】 　　　　神君被為　入種々御饗応之上相撲 　　　　上覧ニ被入其節貴戚及歴々之大名方御次ニ相伴有之 　　　　其外諸家之老臣庭上ニ並居相撲追々相済嵐追手 　　　　《割書：御家｜来》加賀之順礼《割書：前田利長之士｜松村惣次郎異名》と取組初番追手勝二番目 　　　　巡礼勝三番目之及取組之処双方天下名誉之力士成故 《割書：挙（◦）ヲ拳（◦）ニシ》見物之上下是稀代之壮観と一同挙を握難唾を 　　　　呑有之処追手秘術を揮而順礼を投候得者庭上之 　　　　見物　御前をも打忘れ褒賞之声雖制不相止 　　　　其時 【右丁】 　　　　秀康様御座を被為　立庭上を屹度　御見廻し 　　　　被成候得者諸人一同致平伏相静 　　　　神君還御之上御近習之面々江今日之相撲珍敷見物事 　　　　何も見候哉と　上意有之何も追手順礼と相撲 　　　　勝負之評申上候処 　　　　神君ニ者其儀ニ者無之 　　　　秀康様之御威風ニ而庭上之諸人相静リ候を 　　　　御感有之事ニ候由 　　一　十一月廿四日於御国　長光丸様《割書：又土佐守後称但馬守｜直良《割書：初直久直輝｜成政直富》領越前大野》御誕生 【左丁】 　　　　《割書：御母津田左衛門信益女｜於奈和方後号長寿院》 　　一　此年 　　　　秀康様以　台命被復御本姓被称徳川 【右丁・白紙】 【左丁】 秀忠様御代 　慶長十年乙巳 　　一　四月十六日　 　　　　秀忠様将軍　宣下有之 　　一　同日 　　　　秀康様権中納言可被任之旨　御内命有之 　　一　今度 　　　　秀忠様江　御政務被為　譲候ニ付 　　　　神君 【右丁】 　　　　秀康様を被為　召其方ニも以来江戸表江参勤 　　　　有之候様頼　思召之旨　上意有之候処御請ニ者 　　　　上意之趣奉畏候兄弟とハ乍申　御政務　御譲之上者 　　　　主君と可致尊敬儀者勿論之事ニ御座候間子孫ニ至迄 　　　　永勤仕可致旨被　仰上候得者 　　　　神君御満足被　思召 　　　　秀忠様ニも此以後尚以御礼譲厚格外之御取扱被 　　　　為　在候由 　　一　四月 【左丁】 　　　　長吉様《割書：初国｜丸様》御国ゟ江戸江初而御参府高木大膳《割書：老臣｜豊前守子》 　　　　御附被成 　　一　七月廿六日 　　　　秀康様権中納言御拝任《割書：御年｜三十二》 　　一　同月 　　　　秀康様御所労ニ付為御療養大野郡白山麓一瀬村 　　　　温泉江御湯治被成 【右丁・白紙】 【左丁】 　慶長十一年丙午 　　一　三月三日 　　　　長吉様御元服従四位下右近衛権少将ニ御叙任 　　　　奉称　三河守様《割書：御年｜十二》 　　一　七月 　　　　禁裏仙洞御手狭ニ付御築地御取広《割書：東北一｜町余宛》御普請 　　　　有之諸大名江御手伝被　仰付 　　　　秀康様総督被蒙　仰 　　一　九月廿一日 【右丁】 　　　　神君城州伏見　御発駕江戸表江　御下向ニ付 　　　　秀康様御留守被蒙　仰伏見ニ　御在城被成 　　一　北庄御城去ル丑年ゟ御普請有之処至今年悉 　　　　御成就 　　一　当冬駿河国府中御城 　　　　神君御隠居所ニ被定御建広御修築有之ニ付 　　　　本多伊豆守富正を御手伝ニ被遣候処於富士山 　　　　材木を為伐出候様　台命有之 【左丁】 　慶長十二年丁未 　　一　正月朔日 　　　　神君御女市姫君様御誕生《割書：御母｜太田氏》 　　一　同月本多伊豆守富正於富士山材木を伐沼津迄 　　　　曳出直ニ駿府江罷出及言上候処 　　　　神君御目見被　仰付　御手自大左文字之御腰物 　　　　拝領被　仰付関ヶ原御陣ニ被為指御秘蔵之御品ニ 　　　　候得共今般之御褒賞ニ被下旨　上意有之只今ゟ 　　　　長刀も為持候様　御免被成其節御料理頂戴 【右丁】 　　　　被　仰付之 　　一　神君御奥向御座之間壺之内江大石曳入候様本多 　　　　伊豆守富正江被　仰付伊豆守家士江申付為曳入候処 　　　　磯野茂之助と申者木遣之音頭を取曳入候を 　　　　神君御簾之内ゟ　上覧有之　御機嫌宜敷 　　　　大ニ御笑被遊直ニ於　御前伊豆守始侍共江も御餅 　　　　御酒被下置事畢而伊豆守江御暇被下時服拝領 　　　　被　仰付 　　一　三月朔日 【左丁】 　　　　秀康様伏見御城為御留守　御在城之処御不快ニ付 　　　　御帰国被成度旨御使者を以 　　　　神君江被　仰上今日伏見　御発途　御帰国被成 　　　　《割書：御着城｜日不詳》 　　一　同月廿八日下野守忠吉様《割書：尾張国｜清須城主》御逝去葬増上寺 　　　　御法号性高院殿 　　一　月日本多伊豆守富正嗣子無之ニ付御四男 　　　　吉松様を養子二被下 　　一　月日 【右丁】 　　　　秀康様当春ゟ御病気之趣を参州岡崎之城主 　　　　本多豊後守広重被聞及遥々越前江被参 　　　　秀康様御容体を被伺此事を同国西尾城主本多 　　　　縫殿助康俊被聞伝広重之帰城を待岡崎江被参 　　　　候処広重被及落涙被申候者黄門秀康卿ニ者 　　　　当世無類英将成ニ大病之趣天命と者乍申不及 　　　　是非痛敷残念之至ニ候と被申康俊西尾城江被帰 　　　　家臣共江被語候者豊後守之被致方当世ニ者遠慮も 　　　　可有儀過分ニ者存候得共黄門之違例日々増重キ 【左丁】 　　　　病体ニ聞候得者此侭打過候も不本意我等も黄門之 　　　　病気を尋問可申と無程越前江被参御容体を 　　　　被伺候処 　　　　秀康様御喜悦不斜御寝所江通可申と被 　　　　仰出康俊罷通節蔀遣戸破れ損障子古ひ煤 　　　　たる処を過御寝所江被罷出候処　御居間之 　　　　障子も一間ツヽ切張ニ而繕有之扨御席を隔御病 　　　　体を被伺候処 　　　　秀康様御側江御呼被成遠路尋来之段不浅 【右丁】 　　　　思召由ニ而近寄候而様子被見候様ニと康俊之手を 　　　　御取被成肌を撫被見候へ如此肉脱羸痩極リ候上者 　　　　本復之事存も不寄此度来訪之懇志謝ニ無期と 　　　　被　仰述候処康俊無辞涙ニ咽ひ　御居間退出 　　　　被致其後在所西尾江帰城之上家士等ニ被申候者 　　　　先達而豊州越前江被越黄門容体之趣相語被及 　　　　落涙候も宜なる哉黄門ニ者天下之貴族ニ而又 　　　　大国を被領候ニ殿中之質素無奢体世二難有事共也と 　　　　大ニ被致感激其後康俊も専倹約を守武辺をも 【左丁】 　　　　益被嗜候由 　　一　四月廿九日 　　　　秀康様先達而ゟ御違例ニ付京医成方院驢庵を 　　　　被召呼様々御療養被成候得共次第ニ 　　　　御病体不軽　思召候ニ付於佐局を駿府江被遣被 　　　　仰上候者私儀病気重存命不定之体ニ罷成候先達而 　　　　薩摩守死去之処又私迄御先立可申仕合不及是非 　　　　奉存候依之御暇乞申上候と之御口上之趣及言上候処 　　　　神君御驚被遊中納言事は度々之忠功不可勝計 【右丁】 　　　　然処越前一国宛行置候事残念ニ　思召之由被　仰出 　　　　御病中御慰労旁近江下野之内越前江相加都合 　　　　百万石之　御墨付於佐局江御渡被成候ニ付局持参 　　　　急キ帰路之処御逝去之儀参州岡崎ニおゐて致承知 　　　　大切成　御墨付ニ付御逝去之事乍承越前江持参 　　　　候事如何と存岡崎ゟ引返し駿府江罷出御逝去之段 　　　　及言上　御墨付奉返上候由 　　一　閏四月八日《割書：巳ノ｜下刻》 　　　　秀康様於北荘御城　御逝去《割書：御年｜三十四》天女山孝賢寺江 【左丁】 　　　　御葬送御法号 　　　　孝顕寺殿三品黄門吹毛月珊大居士《割書：御石塔ニ者｜孝賢寺殿吹毛月珊大居士と有之》 　　　　引続二夜三日之御法事御執行有之 　　一　右同断ニ付　鶴姫様御離縁ニ相成《割書：後長勝院様御取計｜ニ而烏丸光広卿江御再》 　　　　《割書：縁元和七年辛酉七月二十九日御逝去｜京都本満寺江御葬送御法号蓮乗院殿》 　　一　閏四月九日永見右衛門長次於大円山心月寺殉死 　　　　《割書：法名俊巌玉英家臣田村金兵衛｜為主殉死法名香岳浄運》同十一日土屋左馬助昌春於 　　　　天女山孝賢寺殉死《割書：葬大野桑折東雲寺法名閑窓道有｜家臣長沼長右衛門為主殉死法名豊山常安》 　　一　秀康様御逝去之儀達　台聴候処御用之旨被 【右丁】 　　　　仰含御国江為　上使近藤登之助秀用早駈ニ而被指越 　　　　其節本多伊豆守富正江　御内書被下殉死之儀御指留 　　　　被成 　　　　　　　　　　今度黄門可令 　　　　　　　　　　供之由達而存之旨 　　　　　　　　　　被聞食及候沙汰之 　　　　　　　　　　限候至三河守於取立者 　　　　　　　　　　忠節不浅思召之 　　　　　　　　　　間深可存其旨候也 【左丁】 　　　　　　　　　　　後卯月十六日　　御黒印 　　　　　　　　　　　　　　本多伊豆守とのへ 　　　　其後再殉死之者為御指留 　　　　神君より年寄江　御内書被下本多上野介正純ゟも 　　　　書翰来 　　　　　　　　　　　　家康　御花押 　　　　　　　　　　中納言死去付而追 　　　　　　　　　　腹切可令伴と申者共 【右丁】 　　　　　　　　　　在之由と及聞召候 　　　　　　　　　　致其死易立其主 　　　　　　　　　　難と有之若於有 　　　　　　　　　　左様之意越前肝 　　　　　　　　　　要之地候間別手置 　　　　　　　　　　可被仰付候中納言存 　　　　　　　　　　忠輩者加様之儀有 　　　　　　　　　　間敷候若於在之者子孫迄 　　　　　　　　　　可有御絶由御意旨候也 【左丁】 　　　　　　　　　　　閏四月廿四日　御黒印 　　　　　　　　　　　　　　越前年寄中 　 　　　　　　　本多上野介殿ゟ書翰 　　　　　　　　　一書申入候然者【？】中納言様御遠 　　　　　　　　　　行被為成候付而追腹被成御切衆有之 　　　　　　　　　　付而近藤登ニ御内書指遣候重而 　　　　　　　　　　追腹切被申候者十類共ニ御成敗 　　　　　　　　　　可被　仰付由御諚候弥其旨ニ御座候間 　　　　　　　　　　其心得可被成【？】候近藤登之介被上候 【右丁】 　　　　　　　　　　時分以書状可申入候処急被遣候付而 　　　　　　　　　　不申入候恐々謹言 　　　　　　　　　　　　　　　　　本　上野介 　　　　　　　　　　　後卯月廿五日　　　正純書判 　　　　　 　　　　　　　　　　　　今村大炊殿 　　　　　　　　　　　　本多伊豆殿 　　　　　　　　　　　　片山主水殿 　　　　　　　　　　　　由木左衛門殿 【左丁】 　　一　孝賢寺江御葬送之儀 　　　　神君被　聞召我家浄土宗之外他宗無之ニ付浄土宗江 　　　　可致改葬旨被　仰出京都知恩院満誉僧正を越前江 　　　　下向被　仰付依之北荘江浄土宗一寺御建立 　　一　閏四月廿七日 　　　　忠直様江戸御立《割書：今日御遺領御相続｜被　仰出候ニ付直ニ御発途》五月十日北荘江 　　　　御帰着被成此節大樹寺乗誉も 　　　　忠直様江従而参着満誉僧正も此程到着有之 　　一　五月十一日満誉僧正御導師ニ而今度御建立之御寺江 【右丁】 　　　　御改葬御法号 　　　　浄光院殿前黄門森巌道慰運正大居士《割書：御石塔ニハ前｜黄門之三字被除》 　　　　右御寺を号森巌山浄光院運正寺引続七昼夜之 　　　　御法会御執行有之 　　一　秀康様御遺物 　　　　　　　神君江 　　　　　　　　御腰物《割書：左文字》 　　　　　　　　古今和歌集《割書：定家卿筆》 【左丁】 　　　　　　　秀忠様江 　　　　　　　　御腰物《割書：貞宗》 　　　　　　　　伊勢物語《割書：俊成卿筆》 　　一　天女山孝賢寺江　御肖像御安置《割書：為御追善｜忠直様御安置》 　　一　紀州高野山ニ　御霊牌御安置　御石塔も御建立《割書：為御｜追薦》 　　　　《割書：忠直様｜御建立》 　　一　江戸三縁山増上寺ニ　御霊牌御安置《割書：後為御追薦｜忠昌様御安置》 【右丁】 　　　　　　　秀康様御在世中 　　一　江戸　御参府　御帰国之節々従 　　　　両御所様御鷹御犬等を御道中江被遣於所々 　　　　御遊猟被成　御着府之日従 　　　　神君御途中迄　上使被進 　　　　秀忠様ニ者御鷹野ニ被寄御事為御迎品川或者 　　　　板橋辺迄被為　成御同道ニ而　御城江被為 　　　　入《割書：秀康様ニも御玄関迄御駕ニ被為　召｜秀忠様御会釈ニ而御先江被為　入》夫ゟ於大奥御饗応 　　　　有之　御在府中二ノ丸ニ被為　入《割書：此頃江戸二御屋敷無之｜御供之面々者大久保加賀守》 【左丁・白紙】 【右丁】 　　　　《割書：忠常屋敷其外｜年寄中屋敷ニ被指置》五七日又者一両月ニ而　御帰国 　　一　秀康様御参府被成御滞留中二ノ丸ゟ　御本丸江 　　　　御登　城被成毎も夕御膳迄御料理被進候由或日 　　　　秀康様少々御不快ニ付俄ニ御下リ被成御玄関迄 　　　　御退出被成候処御供居合不申二ノ丸迄御供呼ニ遣候様 　　　　被　仰候得者御見送之年寄中指掛リ当番之御旗本衆 　　　　御供被致候様ニと御指図ニ付両御番衆を初其外小十人 　　　　御徒ニ至迄御供ニ而二ノ丸　御殿江　御引取被成 【左丁】 　　一　秀康様御代 　　　　　　御纏《割書：大四半》　　　白地朱ノ丸 　　　　　　御旗　　　　　　右同前《割書：結城ニ而之御旗者白地｜上ニ麾桐下ニ三ッ頭右巴》 　　　　　　御馬印　　　　　銀ノ棒《割書：巻絹与被号結城｜以来御用之》 【裏表紙】