昭和三三、一、二八、西日本【手書き】 《割書:高島|炭鉱》地震探鉱を計画   注目される漁業補償問題 [長崎]三菱高島鉱業 所では、三月いっぱい 長崎港外神の島付近の 沿岸一帯にかけて地震 探鉱を行う。付近は長 崎市と各漁協が浅海増 殖五カ年計画実施中の 海面でもあり、また三 月は魚類の産卵期直前 なので、補償問題を めぐって市、漁協、漁 民の間に関心を呼んで いる。  高島鉱業所からさいきん神の島  漁協に示された計画案によると  地震探鉱は三月ごろ約一カ月間  にわたり伊王島沖から西彼式見  村および長崎市福田、神の島に  いたる沿岸一帯にかけて行われ  るもので、ダイナマイト使用数  は二百八十発(一発九《割書:キロ|グラム》)水面下  一《割書:メー|トル》から二《割書:メー|トル》ていどのところで  爆発させ地震波によって海底の  鉱脈を測定しようとするもの。 ダイナマイト一発の影響範囲六十 《割書:メー|トル》(沿岸一帯の水深三十五《割書:メー|トル》てい ど)とされているが、これにたい する条件として炭鉱側から  ①爆破は短期間、魚類接岸に関  係せぬ時期を選ぶ②西部漁協内  の一本釣り、ハエナワで全くこ  れら水域に依存する者約十名に  たいし月八千円を十二カ月間、  最低百万円以上の補償を考慮す  る③十名の補償は漁場復旧が思  わしくない場合は、以後これを  補償する。 地震探鉱予定海面に関係のある 漁協は神の島、福田、式見、香焼 伊王島、深堀、土井首など七漁協。 十六日神の島で臨時総会を開き態 度を協議したが、基本的には石炭 は基幹産業だから認めるが、将来 長期にわたって影響がある場合は 絶対阻止する。沿岸近くで行われ ることは初めてのことであるし影 響がどのていどのものかわからな いので、もっと調査したい(神の 島漁協中ノ瀬専務談)といった段 階。三十日市および漁協で話合い 態度を決める。市では近く調査の うえ海区漁調委に報告書を出し意 見を求める。  なお同海区は、浅海増殖五カ年  計画の実施地域に当たっており  三十二年度市予算約四十五万円  でコンクリート造りの魚のアパ  ート、魚礁を作製中であるのを  はじめ、三十一年にはワカメの  増殖と伊勢エビ養殖(三カ年  禁漁区)を行った。ことしも宮  城県から購入した種カキ八イカ  ダ(七千二百万円)の養殖、真  珠貝の試験養殖(三カ年計画)  などが計画されている。市では  もし将来にわたって影響が考え  られる場合、魚礁設置は網場方  面に変更せねばならぬと語って  いるが、地震探鉱による補償問  題が、どのように解決されるか  こんごの成行きが注目される。