御触書之写 一此節流行の暴瀉(ほふしや)病之療治種々ある趣に候  得共其中に素人か心得法を示すあらかじめ是を  防く物はすへて身を冷し事なくはらには木綿巻  大酒大食を慎み其外こなれがたき食物一切慎み  若此病受候はゝ早々寝床に入飲食を慎み惣身温め  左に記す芳香散といふ薬用ゆべし且又吐【「咄」は誤記と思われる。】瀉甚しき惣  身冷ゆる者は焼酎一二合の中に龍脳一二包入温め木綿  の切にしたし腹并手足温めからしをかきすりこむべし  芳香散上に桂皮細末益智細末乾姜細末故【右ヵ】調合  致し用べし辛の粉うんどん粉あつき湯にて堅くねり  木綿の切にのべはるべし但し間に合さる時はからし斗りねりてよし        又法 あつき茶にて三分一焼酎と和砂糖少々用べし但座敷 とち木綿え焼酎を付しきりに惣身えなするべし 但し手足の先并に腹冷ゆる所あたゝめ鉄又は温石を つゝみ湯を遣ふ如くの心持になる程すべし 右は此節流行病甚しく諸人難義致候に付其病に 不拘早速用候薬法諸人心得のため急度可相 達候事 右御書付之趣従町奉行所被 仰渡候事    八月廿二        【蔵書印】上田文庫