《割書:地震|津浪》末題代噺の種□【全カ】 《題:地震《割書:幷|》津浪之/説(わけ)》 地震(ぢしん)                    西南海       日本六十余州     東               西       /其余(そのよ)外国(ぐわいこく)【國】異国(いこく)【國】     国【國】             国【國】       皆此上に有と云 之図(づ)【圖】                  北氷海 夫(それ) 地震(ぢしん)といふは其 象(かた)ち別に地底(ちてい)にあるにあらず陽気(やうき)【氣】 陰(いん)の下に伏(ふく)して陰気に迫(せま)り昇(のぼ)ること能(あた)はず陽気 渋滞(とゞこふり)て 歳月を経(ふ)るに随(したが)ひ地裂(ちさけ)て陽気天に発【發】せんとして振動(しんどう)する なり又 津浪(つなみ)といふて別に地中より水を発(はつ)【發】するの謂(いひ)にあらず 天地の間(あいだ)陽陰につゝまれて動発(どうはつ)【發】する事 大底(たいてい)地震に等(ひと)し故(ゆへ)に 地震(ぢしん)に依(よつ)て起(をこ)り或は大風雨に就(つい)て起(をこ)る其発【發】する所一ならざるを以(もつて)知(しる)べし 《題:大地震(おほぢしん)末代(まつだい)噺種(ばなし)》 一嘉永七甲寅年十一月四日  /朝(あさ)五ツ時過より大地震(おほぢしん)  それより昼夜(ちうや)少々(しやう〳〵)づゝ  ゆり五日 昼(ひる)七ツ過又〳〵  大ゆり夜(よる)五ツ半時/頃(ころ)又  大ゆり夫(それ)より格別(かくべつ)の   大震(おほゆり)は無之(これなく)候へども   大底(たいてい)人家(じんか)崩(くづ)れ破損(はそん)   図(づ)【圖】のごとく且(かつ)大道(だいだう)へ  たゝみを敷(しき)あるひは  小屋を掛(か)け夜(よ)を   明(あか)し申候事/前代(ぜんだい)   未聞(みもん)の事ども也 《題:大地震末代噺種》 【上段】 座摩(ざま)宮 鳥居門 石どうろう 絵【繪】馬堂崩る 本社無事 怪我(けが)人なし △本町心斉ばし筋東へ入  うら長や惣くづれ △北久太郎町丼池町北へ入所  西側家二軒崩る △本町狐小路東側寺の  高塀崩る △同所南の辻角より北へ  七八軒大そんじ △南本町心さい橋筋東へ入  北がわ人家壱軒大そんじ 【下段】 △南御堂北西手の塀(へい)少々  そんじ南の門大ゆがみ  井戸やかた崩る △博労町いなりの鳥居大  ゆがみ石燈篭 倒(たふ)れる △御霊(ごれう)社内井戸屋かた崩る △塩町さのや橋筋角より  北へ半丁ばかり壱丈余【餘】の   高塀(たかへい)西手へくづれ落(を)ち         死人三人あり 《題:大地震末代噺種》 【上段】 ◯道修町せんだんの木筋  高塀十間ばかり崩る ◯順慶町丼池東南角人家  二軒大損じ 天満   不動寺(ふどうじ) 大そんじ 本尊(ほんぞん) 菱形(ひしなり)に    なる 右の近辺【邊】ゆがみ倒れ破(は) 損等おびたゝし ◯堀川の夷境内少〳〵の  いたみ此辺【邊】東西南北  少々づゝの損じあり ◯天満妙見絵馬堂崩る 【下段】 ◯淡路町西の土蔵(どぞう)くづれる ◯長ほりさのや橋北詰の  裏長屋七八軒大崩れ ◯天満天神井戸屋かた  土蔵大崩れ夫より東シ  寺町寺院門塀崩れ損じ  多し内【近カ】辺【邊】少々づゝの  いたみ家倒れかけ候処【處】  あまた有之住居ならず 天満 西寺町 金毘羅(こんぴら)の 絵馬堂(ゑまだう) 大くづれ其外 損じ数ヶ所    あり 《題:大地震末代噺種》 【上段】 ○福嶋上の天神表門崩る ○汐津(しほつ)橋南詰凡長さ十  五間の大蔵惣壁落柱  ばかり残る ○堂嶋 桜(さくら)ばし南詰西へ  入所人家五六軒崩る ○天満梅がえ寺町の行  あたり正覚寺 境内(けいだい)金毘(こんぴ)  羅の船【舩】絵馬堂くづる 【下段】 ○福嶋中の天神本社残り  境内の建物(たちもの)のこらず倒(たふれ)る ○同下の天神絵馬堂崩  その外少々の損じあり ○同光智院の玄関(げんくはん)大崩レ ○同人家大体一町に付  七八軒づゝ崩れ有之 ○同五百羅漢堂大損し ○大二村人家凡三十けん  ばかり崩る ○汐津ばし北詰東へ入  所の風呂屋大崩れ ○右向ひの人家八軒計リ  大くづれに相成 ○梅田橋東へ入所の高塀(たかへい)砕(くだけ)ル 《題:大地震末代噺種》 【上段】 ◯北の新地みどりはし北詰  西角 煮(に)うりやより西へ  四五軒大そんじ ◯梅田橋北詰西へ入裏町  の家二けん崩る ◯常安ばし南詰西角の  人家往来へ 倒(こけ)る ◯ 服部(はつとり)天神大損じ同所  寺二軒くづれそのほか  人家十軒ばかり崩る ◯願教寺【(注)】裏手の長屋二  十軒ばかり崩る ◯阿波座岡崎ばし南詰  半丁東へ入所の人家五  六軒くづれる 【(注)大阪市鶴見区に願教寺の名称の寺院がある。】 【下段】 北の新地 下ばら   辺【邊】 人家 凡四十 けん ばかり   倒(たふ)れる ◯高原牢窂やしき前の家  一軒崩る ◯野ばく蝋納屋(らうなや)十三げん  ばかり崩る ◯上本町御はらひすじ  近辺【邊】少々づゝの損じ  あまたあり ◯川西願教寺 対(たい)【對】 面(めん)所大  くづれ前すじ北へ入 練(ねり)   塀(へい)大ゆがみ 《題:大地震末代噺種》 【上段】 ◯京町ぼり紀伊国【國】ばし南詰  西へ入 裏長屋(うらながや)二三げん  大崩れ ◯新町(しんまち)問屋橋角人家  七八軒大損じ 新町井戸の辻(つぢ) 南東角大崩れ 夫より少し 東の 寺 大 ゆ がみ ◯奈良屋ばし筋おくび町  角人家 倒(たふ)れかけ住居  ならず ◯北江戸ぼり壱丁目の   高塀(たかへい)十間計崩る 【下段】 ◯江戸堀 犬斎(けんさい)ばし人家  四五軒崩る ◯堀江 橘通(たちばなどふり)三丁目人家  半丁ばかり大損しこの  近辺【邊】人家土蔵そんじ  所々有之 ◯同いなり御旅所(おたびしよ)境内   神楽所(かぐらしよ)角力場(すまふば)大損じ  座敷くづるゝ ◯白髪(しらが)町く は(ママ)んおん横町   高(たか)へい崩る ◯ざこ場石津町角崩る ◯堀江あみだ池裏門筋  の辻南東角高塀四間  ばかり崩る 大昔(おほむかし)《割書:宝永|四年》地震津浪聞書 宝永四年《割書:嘉永七寅迄|百四十八年に成》十月四日未上刻大坂大地震 に付舟に而内川に遁(のがれ)居候所 俄(にはか)に津波に而 破船(はせん)シ皆 〻 死(しに)申候   地震にて 《割書:南組|北組》 潰家(つぶれいえ)     六百 二(ママ)拾軒   同 南組  押打(おしにうたれ)死人  三千六百弐拾余【餘】人 北組 同       弐千三百三拾壱人   つなみにて 南組  水死(すいし)     壱万弐千人 北組 同       壱万弐千三拾人 落橋(おちたるはし) 弐拾弐   折橋(をれたるはし) 四ツ 道頓ぼり汐込(しほごみ)にて廻船【舩】大小百二十七 艘(そう)日(につ) 本(ほん)ばし迄いやがうへに押来り此処【處】にて留り微塵に成 死人惣合弐万九千九百八拾壱人 枚方(ひらかた)に而川船【舩】数艘(すそう)打破人家押流し此所に而津浪止る 《割書:大地震|大津浪》忠臣蔵九段目抜文句 【上段】 寒空(さむそら)といひ    此度の  おもひがけない   ぢしん ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 仕(し)よふを爰(こゝ)に   大屋の  見せ申さん    小やがけ ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 風雅でもなく    大道のかこ い(ママ)で しやれでなく    酒のんでゐる人 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー とんと絵(え)に    大黒はしのふね   書(かい)たとふり    はんこうに引合            してゐる人 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 折角(せつかく)おもしろふ  ちして茶屋から え(ママ)ふた酒      とんで出る客(きやく) ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー たすきはづ      昼(ひる)めし前の して飛(とん)で出る     ゆさ〳〵 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 是上られいと     用意(ようい)の  さし出(いだ)す       気(き)【氣】つけ ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 飛脚(ひきやく)が来(き)たらば   遠方(えんほう)へ  しらせいよ      出(だ)す手かみ ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー おまへなり     大工方 わたしなり      手伝 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 是は〳〵       往来(わうらい)で瓦(かはら)が  いたみ入     おちてけがした人 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー わたしが役(やく)の   大地しんで    二人(ふたり)まへ   にはかに男世帯(をとこせたい) ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー いかにやくそく   津なみで  なればとて      死(しん)だ人 【下段】 様子(やうす)に依(よつ)ては   諸方の きゝ捨(すて)られぬ     大つなみ ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー おやの欲目(よくめ)か   新たち  しらねども    家にゐる人 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー そりや真実(しんじつ)か   大こくはしの  まことかと     噂(うはさ)を聞(きく)人 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 家(いへ)にも身にも    銘々(めい〳〵)にかねを かへぬ重宝(てふほう)    もたして             逃【迯】す人 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 途方(とはう)にくれし    在所(さいしよ)の親(しん)るいより をりからに      むかひに来(き)た人 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー がてんがゆかぬ   つなみで止(やん)だと コリヤどふじや   おもふに又ゆさ〳〵 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 遊興(ゆうきよう)に耽(ふけ)り大(おゝ)  見舞かこつけ 酒(ざけ)に性根(しやうね)を乱(みだ)し  茶やへ行 息子(むすこ) ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 日本一の       外(そと)へも出すじまん あほふの鑑(かゞみ)      顔(がほ)でへたつてゐる人 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 嘸(さぞ) 本望(ほんもう)で     材木屋 こざらふ ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー かういふ事が    年より子共を  いやさに      在所(ざいしよ)へ預(あつけ)た人 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 絵面(えめん)にくはしく    遠方(えんはう)へ手紙に   書付(かきつけ)たり      封(ふう)じ込(こむ)はんかう ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 移(うつ)りかはるは    ぢしんも納(おさま)り   よのならひ     春(はる)のしこみ 嘉永七年甲寅十一月【この月に安政へ改元】 大地震相撲取組《割書:頭取 世直シ震蔵|世話人白米安右衛門》 巳ノ時    二度目    堂崩レ     永来(えらい)目ニ 震(ゆり)出シ    仰天     土煙     阿武松 浪花泻【かた】 清水     大道     西ノ方 大恵【惠】羅  舞台【臺】飛  夜明シ    黒雲 大 震(ゆり)     座摩ノ宮   伝【傳】法泻  馬場 肝潰     鳥居倒    蔵倒     人ノ山         【こけ】  【へたり】 大破損    材木矢【屋誤カ】吹(ふ)イ子(ご)   夜通シ 変宅     大悦     大不寄    逃支度                     【にげ】 普請方    南御堂    高塀      神仏(しんぶつ) 幸ヒ     門斜     皆倒     大祈       【いがみ】   【こけ】    【いのり】 瀬戸物     起番(おきばん)    用心     尼ヶ崎 大割レ    酒はつみ   軒丸太    半崩レ             【のき】 都方     伊勢海    四日市    商ヒ 静カ     大荒レ    夏通リ    半休日                     【はんやすみ】 大津浪末大噺種(おほつなみまつだいばなし) 一嘉永七甲寅十一月五日七ツ時過 大地震後(おほぢしんご)沖合  鳴出し夜五ツ半時 頃(ころ)大津なみと相成高さ一  /丈余(じやうあま)【餘】りの大浪矢よりも早く打来り天保山の  人家 惣崩(そうくつ)れ泉尾新田今木新田月正嶋木津  難波新田勘介嶋寺嶋一面の白海と相成田地は  /勿論(もちろん)人家不残流れ死人数を知らす千石二千石  或は五百石の大船木津川安治川両川口に繋居(かゝりおり)候  処【處】右の津浪にて両川口へ分れ 逆巻(さかまく)ごとく内川へ  矢よりもはやく突上候故 剣先上荷茶舟押潰(けんさきうわにちやふねおしつぶ)され  ある ひ(ママ)は大船の下敷に相成荷物は勿論乗込の人〻  /溺死幾(できしいく)千人といふ数を知らす大船も五百石千石抔の  船の上へ 弥(いや)が 上(うへ)に乗上候事故互ひに打砕け是亦死  人数しらず夫故内川の浜【濱】側掛造りの家は勿論(もちろん)蔵 【文章はありません】 納(な)屋抔に至るゝ迄 悉(こと〳〵)大船【舩】の為に打砕(うちくた)【碎】かれ且 道頓堀川筋は日吉橋 汐見(しほみ)橋 幸(さいわい)橋住吉橋この 四ツの橋 押落(おしをと)し其音百雷の落来ることし漸 大黒橋にて水勢三方へわかれ候事故此所にて 船【舩】止る込合居候船【舩】千石已上已下の船【舩】凡三百余【餘】 艘 剣先(けんさき)以下の小舟凡千艘 崩(くず)れて形(かた)ち無之 舟数を知らず又安治川は同様の勢いなれ共(とも) 川はゞひろく道頓堀川筋よりは死人 破船(はせん)【舩】抔も すくなく橋は安治川橋亀井橋二ヶ所落ち堀 江川筋落橋水分橋黒金橋長堀川高橋落る 道頓堀西横堀金屋橋 帆柱(ほばしら)にて半崩れ実(しつ)に あわれ成は地震 最中(さいちう)に上荷茶舟抔の小舟 にておもひ〳〵に地震を 除(よけ)んとて内川に 舟住居(ふなすまい)致し且は浜(はま)【濱】側(かは)の明地(あきち)へ逃(にけ)【迯】 出(いた)し居候 男女老若右の津浪にて一人ものこらのこらす水 死(し)いたし候恐るべし〳〵 《題:大津波末代噺種》 志州 鳥羽(とば) の湊(みなと)大 津浪(つなみ)にて 御家中町家とも惣 くづれ又みなと川口に かゝり有之大船小ふね 陸(くが)へ打上あるいは海中へ 捲(まき)こみ死人何千とも 相わからす目も 当【當】られぬ次第也 ○淡州福良(だんしうふくら)は惣家数三百余【餘】軒の処【處】大つなみ  にてのこらず流れ此嶋跡かたもなく相成申候 ○勢州山田松坂津白子四日市 桑名(くわな)すべて  浜辺【濱邊】の人家は大体 鳥羽(とば)におなし ○摂州尼ヶ崎つなみ内川水壱丈余【餘】り増す船  人家の損し夥(おびたゝ)しく死人百余【餘】人あり 《題:大津浪末代噺種》 十一月五日夕 大津波(おほつなみ) 突来(つきく)る前に大坂の西 前垂嶋(まへだれじま)といふ処【處】へ丈(た)け 二丈ばかりの高坊主(たかぼうず) 出たり人々是を見て 肝(きも)を潰(つぶ)しアレヨ〳〵と いふうち海に又 陸(くが)に 向ひ手にて水を かける如くして 姿(すがた) 見へず 成(なる)と 間(ま)もなく 大 津浪(つなみ) 突(つき)来る 是此 変(へん)を告しならんと 後(のち)に思ひ合しける 嘉永七甲寅十一月【この月に安政へ改元】 大津浪相撲取組《割書:頭取 港荒右衛門|世話人響難浪之助》 沖 鳴    大津浪    早浪     大浪 雷の音    逆巻     落橋     破船【舩】       【さか】           【やふ】 大黒橋    新田     小舟皆    荒湊 船【舩】誥り  白海     微塵     家無シ   【詰誤カ】       【みぢん】 問屋泻    川材木    荷主山    勘助嶋 皆損ン    大流シ    大泣     大漬リ                      【つか】 住ノ江    割茶舟    /跡(あと)残リ     荷流シ 静カ     人流シ    橋台【臺】   大損ン 【しつ】 金屋橋    天保山    船【舩】持   西ノ浜【濱】 半崩レ    家流シ    大弱リ    肝潰シ 【くつ】           【よは】  【きもつふ】 出水川    掛造リ    水勢     浜【濱】納屋 割リ舟    大破損    町流     蔵崩 鳥羽ノ浦   紀伊ノ海   大群集    多人力 惣崩     大荒     人の山    引船 《割書:大地震|大津浪》大功記十段目 抜文句 【上段】 しあん投首(なけくび)   津なみては船【舩】          した荷(に)主 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー おもひせくこと  よういして  さらになし   ばんばへ出た人 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 早本国へ     遠方てつなみ  引とり給へ   の噂(うはさ)聞人 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー あはやと見ゆる  ふる家急に 表(をもて)口数ヶ所の手 疵(きす) 宿かへする人 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 顕(あら)はれ出(いて)たる  まいはん           西に黒雲 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ぬき足(あし)     へたり掛たる家へ  さし足     忘物取に這入人 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー わつと玉(たま)ぎる   地(ち)しん最中(さいちう)産(さん)  女のなき声(こゑ)【聲】 の気(け)の付(つい)た人 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 聞(きこ)ゆるもの音(おと)   大道(だいだう)畳敷(たゝみしい)て  こゝろえたりと  内にゐる人 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 互(たかい)の身(み)の     注文物(ちうもんもの)船(ふね)【舩】へ  しあはせ     つまなんた人 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 水あげかねし    大地しん   風(ふ)ぜいにて     蔵仲仕(くらなかし) ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 末世(まつせ)の記録(きろく)に   大黒(たいこく)ばしへ のこしてたべ   つまつた船【舩】 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 操(みさほ)の鏡(かゞみ)    住よしの浜(はま)【濱】  くもりなき   つなみなし 【下段】 他家へ縁付     大はそんした して下され     家ぬし ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 祠はゆるかぬ   大坂の  大はん石      御城 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー しるしは目前   家ちんの  これを見よ    やすい古家 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 追〳〵都へ    諸国よりの  はせのほる    見舞状 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 高名手がら紙   普請方  見るやうな     ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 我(われ)又 孫呉(そんご)が   大道へ素人細工の  秘術をつくし   小家たてる人 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー とかふ言内    かんばん出した  時こくが延る  道頓堀の芝居 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー まだ祝言の    地しんて  さかつき紙     延(のひ)たこん礼 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー あたりまば    下中きへ逃(にけ)【迯】る  ゆき出立は    北辺の御寮人(これうにん) ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 行方しらす    津なみて  なりにけり    おちた橋〳〵 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー さやうなれは   明地のある所へ  御遠慮なし    とまりに行人 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー めでたい〳〵   家内に           けがのないの 《割書:大地震|大津浪》世直し万歳(まんざい) 時は嘉永寅の冬みなもさはぎまし升そうどう ありけるあらましの飛出(とびだ)しさはぐわれらよりたれもおど ろき皆目をさましあはてけるは誠に手ひどふさアはぎ けるけふのゆさ〳〵は安座でとふも御家にゐられぬ皆も 大事おれもモウ出るかゝも逃【迯】よ夜通しゆさ〳〵とうらや 住の者共が【歌の記号カ】霜月四日辰の下刻にゆり出し長い事まじ な い(ママ)神をいのられ給ふあふないなんぞと気もませ給ふは まことにねぶたふそふらひける【歌の記号カ】つなみ〳〵とつとこんだる つなみ打たる浪の大ゆりうろたへこはい内の大ゆりあはて騒(さはい)で はまがはこ わ(ママ)いはまがは〳〵〳〵こわいなとゆつたる度に気をもめそこを 打捨せと物屋をみたればらんちくさはぎ皿やかんちろりん疵(きず)ひゞ ぎ皆 疵(きず)しやびん色々 結構(けつこう)かざり立てあぶないしが忽(たちまち)ににけ しや落して破(われ)たる雑(ざう)ばち迄ゆりこうなる様(さま)野にも集(あつま)る皆よれ これよれ諸方(しよはう)の御蔵もどつさり〳〵〳〵〳〵〳〵瓦(かはら)も傾(かたむ)く世上には取沙(とりさ)た 門(かど)には集(あつま)るどつちもこつちもいかれんのこわいことは後(のち)の世直(よなを)し 《割書:大地震|大津浪》 継づく志 【上段】          こゝろは 清水寺とかけて   ぶたい飛(とひ) しはんばうの散財ととく じや ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 霜月五日の夕かた  沖なり 直【値】のたかい質   じや ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー つなみの大ふね   はし折て なんこのけん     じや ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 道頓堀川の大ふね  大黒で すぼらな和尚    留つてゐる ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ひろちの小家がけ  ゆすつても よいしゆのむすこ  気【別冊「が入ぬ」】 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 天王寺のたう    【別冊「こけそふても」】 しやう【ずカ】のせき取  こけぬ ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 気のよわひ女中   杓おこして あら物屋の歳暮    じや ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 瀬戸物町      高いもの けいこのかねつけ  割てじや ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 大地しんの念仏   しんから 香の物の口あけ   出してじや ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 住よしのとうろう  大かた すぼらなげいこ   こけてる ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 大つなみ      剣先引 茶屋のつき出し   さいてじや ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 今度の大つなみ   志摩 しゆんく は(ママ)んそうづ なかしじや 【下段】 おき番のさけ    利に入て えらい借きん    しまふ ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー つなみ地しん    二度びつ ふきりやうな嫁さん くりじや ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー しばゐのかんばん  出した儘で 正月のにらみ鯛   手がつかぬ ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 町〳〵の板行(はんこ)や  づを出して きせるのそうじ    じや ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 今度のつなみ    紀州が 【別冊「やすいおやま」】【別冊「ゑらい」】 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 地しん【別冊「なかばの小便」】【別冊「こは〴〵」】 きむすめの色事   してじや ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー くつれかけた橋   人とめて はたごや       じや ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 鳥羽浦のつなみ   皆潰れて かほのわるいたのもし ゐる ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー へたりかけた家    突張(つゝはり)して 流れかけた質    留てしや ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 大道の夜あかし   星が 春先のもち     見へる ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー へたり掛たいえ   丸太で 馬場さき近辺の茶や 持てゐる ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 道頓堀川の引ふね  をい〳〵 米相場       【別冊「さげる」】 【付箋朱印】 国分学研究資料館【裏字】 182940【裏字】 平成24【(2012)】年2月6日【裏字】 《題:淀(よと)の川瀬(かはせ)かへ歌》 四方(よも)のあわてのなアけし からぬ音(おと)にこけてこまるやね 【印影不鮮明、別冊で「なんじうしごく、ひどきつな」】 みが打夜(うちよ)のなんぎ【歌の記号カ】ひゝく家 ごとにみんなみな出升【歌の記号カ】出した 門口(かどぐち)かこうて住(すめ)ば【歌の記号カ】夜風吹(よかせふく)ので こまつたはつらい惣(そう)よつた所(ところ)で げんきますヲイ〳〵〳〵ヲイ〳〵□【別冊「イヨル」】 【画面左下】 名□屋  常松   所持