《題:江戸名所図会 十三》 大宮氷川神社(おほみやひかはのじんしや) 大宮駅(おほみやえき)の中(うち) 《割書:此所を氷川戸庄(ひかはとのしやう)|高鼻村(たかはなむら)といふ》 街道(かいたう)の右(みき)の方に鳥居(とりゐ)立石(たていし)あり  これより十八町 入(いり)て御本社(こほんしや)なり神領(しんりやう)三百石 神主(かむぬし)角井氏(つのゐうち)岩井氏(いはゐうち)  これを奉祀(ほうし)す祭神三座(さいしんさんさ)本社(ほんしや)の右は素盞雄尊(そさのをのみこと) 《割書:男体(なんたい)の宮(にや)と称(しやう)す|奥(おく)の社(やしろ)ともいふ》 同(おなしく)  左(ひたり)は奇稲田媛命(くしいなたひめのみこと) 《割書:女体(によたい)の宮(みや)と称(しやう)す|是(これ)も奥(おく)の社(やしろ)と唱(とな)ふ》 本宮(ほんくう)は大己貴尊(おほあなむちのみこと)を斎ひ奉る 《割書:簸王子宮|と称す》  これ即(すなはち)武蔵国第一宮(むさしのくにたいいちくう)にして延喜式(えんきしき)名神(みやうしん)大社(たいしや)大月嘗新嘗(おほつきなみにひなみ)に列する第一(たいいち)の宦舎(くわんしや)たる所なり  荒波々幾社(あらはゝきのやしろ) 《割書:本社の傍(かたはら)に在(あり)手摩乳(てなつち)足摩乳(あしなつち)二神を祀(まつ)る武蔵国風土記に|観松彦香殖稲(みまつひこかゑしねの)天皇御宇三年所祭とあるは此社をいへるにや》  宗像社(むなかたのやしろ) 《割書:同橋(おなしはし)の左(ひたり)の方にあり祭神(さいしん)田心姫(たこりひめ)湍津姫(おきつひめ)|市杵島姫(いちきしまひめ)等(とう)の三(み)はしらの女神を祀(まつ)る》  五山祇社(いつやまつみのやしろ) 《割書:本社(ほんしy)の後(うしろ)の方(かた)にあり大(おほ)-山(やま)-祇(つみ) 中山祇(なかやまつみ) 麓山祇(ふもとやまつみ)|正勝山祇(まさかやまつみ) 闇山祇(くらやまつみ) 以上五神を祀(まつ)る》  本地堂(ほんちだう) 《割書:神池(みたらし)の北(きた)にあり観音(くわんおん)を本尊(ほんそん)とす社僧(しやそう)五宇(こう)あり江戸|護持院末(こちゐんまつ)新義真言宗(しんきしんこんしう)にして本地供(ほんちく)を主務(しゆむ)すといへり》  《割書:延喜式神名帳曰武蔵国足立郡氷川神社名神大| 月次新嘗 云 云》  《割書:一宮記曰武蔵国足立郡氷川神社素盞烏命 云 云| 神名帳頭註曰武蔵国足立郡氷川社日本武尊東》  《割書: 征之時勧請素盞尊也 云 云|三代実録曰貞観十一年十一月十九日壬申授武》  《割書: 蔵国従四位下氷川神社正四位下 云 云|武蔵国風土記曰足立郡氷川神社神田百束十字》  《割書: 四囲田観松彦香殖稲天皇御宇三年戊辰所祭| 素盞烏尊大己貴奇稲田比咩合三座也 云 云》  《割書:東鑑曰治承四年庚子十一月十四日壬戌土肥次| 即実平向武蔵国内寺社是諸-人乱入清浄地致》  《割書: 狼藉之由依有訴可令停止之旨加下知之故也| 云 云》  《割書:同書曰安貞三年己丑十一月十日依去四日雷電| 為世上御祈近国一宮被立奉幣御使相模国駿》  《割書: 河守武蔵国武州御使 《割書:中略| 》 各被進神馬御剣等|又於社壇可転読大-般若経之由被仰別当等》  《割書:教師員源忠季氏等奉行之|慕景集 《割書:氷川(ひかは)の社(やしろ)奉納(ほうなふ)の和歌(わか)すめらきはへりて|残雪(のこんのゆき)といふことをよめる》》  老らくの身をつみてこそむさしのゝ草にいつまて残る白雪 持資  平貞盛願書(たひらのさたもりのくわんしよ)一通 《割書:前太平記(せんたいへいき)に上平太貞盛(しやうへいださたもり)およひ舎弟(しやてい)重盛兼任(しけもりかねたふ)と共(とも)に将門(まさかと)退(たい)|治(ち)として東国(とうこく)に発向(はつかう)ありし時(とき)当社(たうしや)に詣(まうて)ておの〳〵上差(うはさし)の鏑(かふら)》  《割書:一筋(ひとすち)つゝを願書(くわんしよ)にそへて宝殿(ほうてん)に篭(こめ)らるゝことあり又(また)其時(そのとき)の神職(しんしよく)兵部少輔(ひやうふのせふ)正範(まさのり)とあり|社記に兵部権大輔富則と云けるあり願書(くわんしよ)の文に曰く》  《割書:敬白 祈願事 夫以氷川大明神者本地冥慮之|月明晶于東方瑠璃之光垂跡化現之徳新利于南》  《割書:贍卒土之浜爰頃年之間有平賊将門恣取掠八州|悩乱万民自称親王私置諸司蔵如王道忽緒人望》  《割書:暴悪莫甚焉然愚父国香不忍見彼積悪起兵而欲| 》