当時 流(はやり)行 病(やまひ)療(りやう)養(じ)妙伝(みやうでん) 一夫すてに腹いたみ出しなば  釜(かま)にて塩(しほ)湯をわかし有て  茶わんにていつぱいのみ釜の  ゆはたらゐへとり二ッの手ぬぐひ  にひたしとりかへ引かへいく  度(たひ)もへそにあて腹(はら)中(ぢう)を  あたゝめべし 但(たゝし)しぬるき湯  にてはきか須(ず)【須に「”」が付く】と知(しる)るべししかるうちに  そう身(しん)よりあせの出ること瀧(たき)の如し  やがて腹いたみやむなり後又々  いたみだしなば又々前の如く  してあたゝめべし病のおもき  かろきにかゝわらず少しも  はやく是を用ひたまへばさんじ  に気分よく効能 眼(がん)ぜんなり右は    しかるべき御 方(ほう)様之御 伝授(でんしゆ)なるよし  なればかろしめなげやり給ふこと  なかれ是にて全快いたし助る人  多かりければ諸人の助にも相なり  候間こゝに記す   ▲まじないのうた是を門口へ張置べし     〽いかでかわ身(み)もすそ川の流(なが)れくむ           人にたよらじゑきれいの神(かみ) 【下段】 右しほゆの中へ やぶからしと申草 を入れ用ゆべし なほ〳〵きゝめよし 九死たりとも助命 する霊草なり 此うた   ついでなれば      こゝにあらわす也